(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】鉄道車両に関するブレーキ制御メカトロニクス装置の列車に沿った位置の認識システム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/171 20060101AFI20231004BHJP
B61K 13/00 20060101ALI20231004BHJP
B61C 17/12 20060101ALI20231004BHJP
G06K 7/14 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
B60T8/171 Z
B61K13/00 Z
B61C17/12
G06K7/14 013
G06K7/14 017
(21)【出願番号】P 2021539685
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(86)【国際出願番号】 IB2019057841
(87)【国際公開番号】W WO2020058858
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】102018000008688
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ステファノ・セッリ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・シーカ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ティオーネ
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6012681(US,A)
【文献】特開2015-174468(JP,A)
【文献】特開2018-007464(JP,A)
【文献】特開昭61-067110(JP,A)
【文献】実開昭54-088236(JP,U)
【文献】独国特許発明第10004988(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/171
B61K 13/00
B61C 17/12
G06K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車の鉄道車両に関連するブレーキ制御メカトロニクス装置の列車に沿った位置の認識システムであって、
-鉄道車両に設置された支持及び固定サポート(200)と、
-支持及び固定サポート(200)において報告される、列車に沿った位置の識別バイナリコーディング(203)と、
-支持及び固定サポート(200)に固定されるように適合したメカトロニクスブレーキ制御装置であって、識別バイナリコーディング(203)を検出するように配置された光学読み取り装置(301)を備えた、メカトロニクスブレーキ制御装置(300)と、
を備え、
メカトロニクスブレーキ制御装置(300)は、光学読み取り装置(301)によって読み取られたバイナリコーディング(203)によって列車に沿ったその位置を決定する、
認識システム。
【請求項2】
識別バイナリコーディング(203)は、光学的バイナリ記号(204、205)で構成され、識別バイナリコーディング(203)は、ベクトル又は行列の形態である、請求項1に記載の認識システム。
【請求項3】
メカトロニクスブレーキ制御装置(300)は、マイクロプロセッサ回路を含み、光学読み取り装置(301)は、マイクロプロセッサ回路の論理入力ポートに電気的に接続されている、請求項1又は2に記載の認識システム。
【請求項4】
光学読み取り装置(301)は、識別バイナリコーディング(203)を読み取るようにメカトロニクスブレーキ制御装置(300)のスロットに固定されている、請求項1から3のいずれかに記載の認識システム。
【請求項5】
識別バイナリコーディング(203)は、読み取りエラーの検出を可能にするように配置された少なくとも1つの追加の記号を含む、請求項1から4のいずれかに記載の認識システム。
【請求項6】
エラー検出用の追加の記号の数、及びそれらの符号化プロセスは、規格EN50126、EN50128によって記載された安全レベルSIL≧1に従って、読み取りプロセス中にエラー認識を可能にする、請求項5に記載の認識システム。
【請求項7】
認識システムは、完成した設置状況に位置するいくつかのメカトロニクス装置のセットにおけるメカトロニクスブレーキ制御装置(300)の位置を識別するために使用される、請求項1から6のいずれかに記載の認識システム。
【請求項8】
識別バイナリコーディング(203)は、列車の種類及び/又は列車が属する車両団を示すようにさらに配置され、認識システムはまた、列車の種類及び/又は列車が属する車両団を識別するように使用される、請求項1から7のいずれかに記載の認識システム。
【請求項9】
コーディング及び位置の知識は、メカトロニクスブレーキ制御装置の正しい働きに必要なソフトウェアパラメータを自己構成するためにメカトロニクスブレーキ制御装置によって使用される、請求項1から8のいずれかに記載の認識システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には鉄道ブレーキシステムの分野にあり、特には、鉄道車両に関するメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の世界では、マイクロプロセッサに基づいて機械的、空気圧的、電子的な部分を統合し、ソフトウェアを備えたメカトロニクス装置が一般的に使用されている。これらのメカトロニクス装置がブレーキに使用される場合、それらは、列車を構成する鉄道車両の数に少なくとも等しい数で、すなわち、鉄道車両ごとに1つ、鉄道車両ごとに最大2つの装置まで、存在する。
【0003】
通常、ソフトウェアコードは、値が列車に沿った装置自体の位置に特有であるパラメータがある場合を除き、同じ列車に設置される全てのメカトロニクス装置で同じである。
【0004】
本明細書において、「列車に沿った装置自体の位置」とは、列車全体に対して、装置が設置された鉄道車両の位置を意味する。例えば、10両の鉄道車両で構成される列車を考えたとき、位置の決定は、例えば進行方向に従い、他の鉄道車両に対して装置がどの車両に設けられているかを決定することにある。例えば、装置は、進行方向に従い列車の1両目、2両面、3両目等の鉄道車両に配置することができる。さらに、複数の装置が同じ列車の一つの車両に存在してもよく、例えば、ボギー台車ごとに1つでもよく、よって、装置の位置の定義は、どのボギー台車及びどの車両が、列車に沿った装置自体の直線状の位置に対応するかに依存するだろう。
【0005】
パラメータの排他的でない包括的な例は、次の通りである:
-装置が設置されている列車の鉄道車両の車両重量及び全荷重値、これに基づいて要求された減速を達成するためのブレーキ力が計算される、
-併用曲線の、つまり空気圧ブレーキ力と電気力学的回生ブレーキ力との併用の、パラメータ、
-通信プロトコルの構成に関連するパラメータ、及び
-アンチロックシステムの操作に関連するパラメータ。
【0006】
さらに、メカトロニクスブレーキ装置は、同じソフトウェアコードを使用するが異なる構成において異なる列車に設置してもよい。例えば、同じ列車が異なる数の鉄道車両で構成されてもよく、この場合、同じソフトウェアが異なって構成されねばならないであろう。
【0007】
ソフトウェア構成パラメータの幾つかは、ソフトウェアモジュールによって使用され、その機能は、ヨーロッパ規格EN50126、EN50128、EN50129に従い、SIL≧1の安全レベルに従って分類されてもよい。この場合、列車に沿った装置の位置を認識するプロセスは、同じレベルの安全性に適合されねばならない。言い換えると、認識に使用されるコーディングは、コーディングエラー又は読み取りエラーの可能性が、識別されたSILレベルに関する確率で認識されることを保証するために、複数の追加の記号が設けられねばならない。
【0008】
ブレーキ装置が列車に沿ったその位置を識別可能にする最先端の解決策が既に存在する。
【0009】
図1は、それらの既知の解決策の1つを示している。特に、例えばメス形のコネクタ101は、メカトロニクス装置の固定サポート102に固定され、この固定サポートは、通常、車体に取り付けられ、対応するオス形コネクタ103は、メス形コネクタ101の位置で、メカトロニクス装置104に固定される。
【0010】
この例では、メカトロニクス装置104は、マイクロプロセッサシステム106に基づく。オス形コネクタ103は、マイクロプロセッサシステム106のデジタル入力ポート105に電気的に接続され、オス形コネクタのピン107は、1つを除いて全て、マイクロプロセッサシステムの電源に結合されたプルアップ抵抗108に接続され、オス形コネクタのピン109は、マイクロプロセッサシステムのアース端子に接続されている。
【0011】
列車における固定サポート102に恒久的に取り付けられたメス形コネクタ101は、バイナリモードで位置情報をコード化し、「論理0」を示すピンは、接地されたオス形コネクタのピンに対応するメス形コネクタのピンに接続される。ここでは、「論理1」を示すピンは、切断されたままであり、オス形コネクタに接続されたプルアップ抵抗が「論理1」レベルを生成可能にする。
【0012】
記述した内容に基づいて、
図1は、例示として、上から下に1001110、つまり10進数で142に等しいバイナリコーディングを示している。
【0013】
この方法は広く普及しているが、いくつかの欠点を有する。
【0014】
第1の欠点は、長期間において接点が酸化する可能性があり、これは時間の経過とともに誤った読み取りにつながる。
【0015】
第2の欠点は、オス形コネクタの脆弱性であり、そのピンがメカトロニクス装置の設置中に損傷することがある。よって、設置中の嵌合公差を吸収するために、2つのコネクタの一方は、その公称位置に対して部分的に浮いていなければならない。
【0016】
第3の欠点は、この種の適用で使用されねばならないコネクタのピン数が少ないことである。このことは、認識されないエラーの確率10-9に対応する安全レベルSIL4に適したエラー検出ビットの追加数を加えることを実質的に不可能にする。
【発明の概要】
【0017】
本発明の1つの目的は、経時的及び摩耗でさえも誤った読み取りを低減し、これはシステムの設置中に起こり得る損傷を低減し、及び、適切なSIL4の安全レベルを達成できるようにエラー検出用のビットを追加可能にする、解決策を提供することである。
【0018】
要するに、提案されるシステムは、該システムが設置される列車、及び/又はそれが属する車両を認識できるようにしてもよい。このようなシステムは、メカトロニクスブレーキシステムに使用されてもよく、それが装備されるパラメトリックソフトウェアを自己構成してもよい。
【0019】
提案されるシステムは、言い換えれば、ソフトウェアコードに基づく非接触システムである。
【0020】
前述の及び他の目的及び利点は、本発明の一態様によれば、請求項1に規定された特徴を有する鉄道車両に関するメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムによって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において規定され、その内容は、本明細書の不可欠な部分として意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明による鉄道車両に関するメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムのいくつかの好ましい実施形態の機能的及び構造的特徴が記述される。添付の図面が参照される。ここで:
【
図2A】
図2Aは、例示によって、正面図及び側面図において、鉄道車両に関連付けられたメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムの支持及び固定サポート、及びバイナリコーディングの例を示している。
【
図2B】
図2Bは、例示によって、正面図及び側面図において、鉄道車両に関連付けられたメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムのメカトロニクスブレーキ制御装置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の複数の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記述に表される又は図面に示される部品の詳細及び構成に限定されないことを明確にすべきである。本発明は、他の実施形態を想定してもよく、実際には、異なる方法で実施又は達成されてもよい。また、表現及び用語は、説明的な目的を有することを理解されるべきであり、限定的なものとして解釈されるべきではない。「含む」及び「備える」の使用、及びそれらの変形語は、その後に記載される要素及びそれらの同等物、並びに、追加の要素及びその同等物を包含するものとして理解されるべきである。
【0023】
一実施形態において、列車の鉄道車両に関連するメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムは、鉄道車両に設置された支持及び固定サポート200を備える。この支持及び固定サポート200は、例として
図2Aに示されている。
【0024】
この認識システムは、列車に沿った位置の識別バイナリコーディング203をさらに備え、これは、支持及び固定サポートにおいて報告される。本明細書において、「サポートにおいて報告される」という表現は、コーディングが支持及び固定サポートで直接に取得され得るか、又は、例えば固定手段202によって、この支持及び固定サポートに次に接続されるであろう別のエレメント201で取得され得ることを意味する。
【0025】
図2Bを参照して、認識システムは、支持及び固定サポート200に固定されるように適合されたメカトロニクスブレーキ制御装置300をさらに備える。
【0026】
メカトロニクスブレーキ制御装置300は、識別バイナリコーディングを検出するように配置された光学読み取り装置301を備える。光学読み取り装置301は、例えば、固定手段303によってメカトロニクスブレーキ制御装置300に取り付けられてもよい。
【0027】
メカトロニクスブレーキ制御装置301は、光学読み取り装置301によって読み取られたであろう識別バイナリコーディング203に従って、列車に沿ったその位置を決定する。
【0028】
換言すれば、メカトロニクスブレーキ制御装置300による識別バイナリコーディング203の検出は、非接触符号化システム、特に光学走査システムに基づいてもよい。
【0029】
コーディングは、鉄道車両に取り付けられた支持及び固定サポート200に提供される光学コードを備えてもよい。非排他的な例では、そのような光学コードは、「論理0」及び「論理1」から構成されてもよく、これらは、例えば、
図2Aに示すように、「論理0」を表す反射記号204によって、及び「論理1」を表す非反射不透明記号205によって得られてもよい。これらの光学コードはまた、ベクトル又は行列の形態を有してもよい。
【0030】
不透明及び反射の記号(マーク)は、例として、固定サポートへ直接に機械加工することによって、あるいは、例として、固定サポートに適切に固定された印刷板201によって、又は、再び例として、印刷され穴のあいたプレートで、穴が、例えば、しかしこれに限定されない「論理1」を表したものによって、得られてもよい。後者の場合は、
図2Aに示されているものであり、8x2マトリックスに基づく解決策が示されている。
【0031】
メカトロニクスブレーキ制御装置は、マイクロプロセッサ回路を含んでもよい。この場合、光学読み取り装置301は、そのようなマイクロプロセッサ回路の論理入力ポートに電気的に接続され得る。
【0032】
さらに、
図2Bに示されるように、光学読み取り装置は、支持及び固定サポート200に示される識別バイナリコーディングを読み取ることができるような方法において、メカトロニクス装置のスロット302に固定されてもよい。
【0033】
スロット302からの、固定サポートにおいて報告されたベクトル又はマトリックスによってコード化されたビット数に対応する数において、照明及び光感受性装置304のベクトル又はマトリックスは、報告されたコードを照明し及び読み取ることができる。光学的干渉を回避するために、ベクトル又はマトリックス管理ソフトウェアは、一度に1つの光感受性照明装置を作動させてもよい。光感受性照明装置の早期老化を回避するために、スキャンは、例えば、限定的ではないが、列車の電源投入状態の間のみ実行されてもよく、また、おそらく非常に長い期間により繰り返されてもよい。
【0034】
バイナリコーディングを識別することは、有利には、読み取りエラーの検出を可能にするために提供される少なくとも1つの追加の記号(マーク)を含んでもよい。エラー検出用の追加の記号の数、及びそれらのコーディングプロセスは、規格EN50126、EN50128、EN50129に記述されるSIL≧1の安全レベルによる読み取りプロセス中にエラーを認識可能にするかもしれない。
【0035】
認識システムは、限られた設置状況において配置された複数のメカトロニクス装置のセット内のメカトロニクス装置の位置を識別するように使用されてもよい。言い換えれば、認識システムのメカトロニクス装置は、複数であり、同じ列車に設置されてもよい。
【0036】
識別バイナリコーディングはまた、列車に沿った装置の位置を示すことに加えて、又はその代替として、列車の種類及び/又はその列車が属する車両団(fleet)を示すように提供されてもよい。よって、認識システムもまた、列車の種類及び/又は列車が属する車両団を識別するように使用されてもよい。
【0037】
コーディング及び位置の知識は、メカトロニクスブレーキ制御装置の正しい働きに必要なソフトウェアパラメータを自己構成(self-configure)するために、メカトロニクスブレーキ制御装置によって使用されてもよい。
【0038】
例えば、パラメータは、例示によって、とりわけ、既に上述したものであってもよい。即ち、
-装置が設置されている列車の鉄道車両の車両重量及び全荷重値、
-併用曲線のパラメータ、
-通信プロトコルに関するパラメータ、
-アンチロックシステムの働きに関するパラメータ。
【0039】
本解決策の利点は次のとおりである。即ち、
-設置中に損傷する可能性のある露出した機械部品が存在しない、
-酸化して不正確な読み取りを引き起こす可能性のある接点が存在しない、
-このタイプの使用に関して、従来のコネクタよりも非常に多くの記号、符号が達成可能である。
【0040】
本発明による、鉄道車両に関連するメカトロニクスブレーキ制御装置の列車に沿った位置の認識システムの様々な態様及び実施形態が説明された。各実施形態は、他の任意の実施形態と組み合わせてもよいことが理解される。さらに、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。