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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】判定システム
(51)【国際特許分類】
   G06V 40/10 20220101AFI20231004BHJP
   A01K 11/00 20060101ALI20231004BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231004BHJP
   G06V 10/70 20220101ALI20231004BHJP
   G06V 40/16 20220101ALN20231004BHJP
【FI】
G06V40/10
A01K11/00 E
G06T7/00 350B
G06V10/70
G06V40/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022061251
(22)【出願日】2022-03-31
(62)【分割の表示】P 2021069375の分割
【原出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022164589
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】小泉 亮人
(72)【発明者】
【氏名】大越 美江
(72)【発明者】
【氏名】菊地 了
(72)【発明者】
【氏名】岸田 滋史
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071895(JP,A)
【文献】特開2011-019013(JP,A)
【文献】特開2009-110421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 40/10
A01K 11/00
G06T 7/00
G06V 10/70
G06V 40/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
ヒトを除く動物の顔画像及び個体識別情報を記憶したデータベースと、
学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段と、を備える個体識別システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであり、
前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である
ことを特徴とする個体識別システム。
【請求項2】
ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
品種判定用の学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の品種を判定する判定手段と、
ヒトを除く動物の顔画像及び個体識別情報を品種ごとに記憶したデータベースと、
個体識別用の学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段と、を備える個体識別システムであって、
前記品種判定用の学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の品種とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の品種判定とする学習済みモデルであり、
且つ、前記個体識別用の学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであり、
前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である
ことを特徴とする個体識別システム。
【請求項3】
入場又は退場しようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の入退場管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、入力を複数枚の動物の顔画像とし、出力を複数枚の動物の顔画像が同一の個体を撮影したものであるか否かの判定とする学習済みモデルであり、
前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である
ことを特徴とする入退場管理システム。
【請求項4】
動物病院において診察を受けようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであり、
前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である
ことを特徴とする動物の管理システム。
【請求項5】
ペットサロンにおいてトリミング又はシャンプーを受けようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであり、
前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である
ことを特徴とする動物の管理システム。
【請求項6】
捜索対象となっている動物の候補となる動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、備える動物の管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであり、
前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である
ことを特徴とする動物の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定システム及び判定方法に関し、詳しくは、動物の顔の画像から、動物の個体を識別するシステム及び方法、動物の品種を判定するシステム及び方法、動物の毛色を判定するシステム及び方法、動物の性別を判定するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫、ウサギを始めとする愛玩動物、牛や豚を始めとする家畜は、人間にとってかけがえのない存在である。近年、愛玩動物いわゆるペットが人間と同じように扱われることが増えており、ペットの個体識別へのニーズが高まっている。
【0003】
例えば、ペット用のトリミングサロン、ペットが同伴できるペットカフェ、ドッグラン、ペットとともに宿泊できる宿泊施設など、ペットが利用できる店舗やサービスが身近になってきている。このようなペットが利用できる店舗やサービスを運営しようとする場合、ペットの個体ごとに料金を徴収したり、ペットの個体を登録し、過去のサービス提供履歴を参照しながらサービスを提供するというように、ペットの個体を識別し、判別することに対するニーズがある。
【0004】
また、ペットが行方不明になった場合、ペット捜索サービスに依頼することがあるが、行方不明になったペットを探す場合、飼い主から提供されたペットの写真を元に、ペットの捜索が行われるのが一般的であり、当該写真に映った個体と、捜索対象の動物であると疑われている個体との同一性判断が問題となることから、ペットの写真からの個体識別が求められる。
【0005】
また、ペット保険を提供する場合、保険がかけられているペットとそうではないペットとを識別する必要がある。例えば、ペット保険の保険証を契約者に提供し、契約者が当該保険証を動物病院の窓口で提示することで保険金の支払いを受けられるようにするためには、当該保険証に記載されているペットの個体が、実際に診療を受けたペットの個体と同一でなくてはならない。現状では、このようなペット保険を提供しようとする場合、ペット保険運営会社がペットの顔写真付きの保険証を契約者に発行し、契約者が、動物病院の受付において、当該保険証を提示し、動物病院が、保険証に掲載されているペットの写真と診察を受けたペットとを目視で比較し、個体の同一性を判断せざるを得ない。
【0006】
そこで、簡易な方法で、ペットの個体を識別できる手段が求められている。
【0007】
特許文献1には、ネットワークカメラと、そのカメラにより撮影した野生動物が、未だ捕獲設備の内部に現存するか否かを検知する現存検知センサーと、上記ネットワークカメラから受信した電子メールを閲覧できるスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどのユーザー情報端末とを備え、捕獲設備の据付け現場から遠く離れた遠隔地に居る監視者が、上記ネットワークカメラから1回だけ又は1枚だけ受信した電子メールの静止画を閲覧しつつ、ネットワークカメラや捕獲設備を遠隔操作できる個体識別式の野生動物捕獲システムが開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、ユーザ端末が撮影の際に撮影対象が振り向く周波数の音を出す撮影手段を有し、動物識別情報登録手段が、撮影手段により撮影された写真の写真データをユーザ端末から受信して、受信した写真データを動物識別情報として管理DBに登録し、通知手段が、写真の画像を比較して類似度を算出するマッチングにより特定された前記動物関連情報を前記ユーザ端末に通知する動物探索システムが開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1や2には、学習済みモデルを用いて、動物の写真から、品種、毛色、性別を判定する手段や、個体を識別する手段は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2019-4703号公報
【文献】特開2016-224640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、簡易な方法で、動物の写真から、動物の品種、毛色や性別を判定することのできる判定システムや判定方法、又は、簡易な方法で、動物の写真を用いて個体を識別する手段を備える判定システムや判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
動物を対象とする健康保険、いわゆるペット保険を運営する保険会社には、膨大な数の動物の写真と、その動物の個体に関する情報が蓄積されており、本発明者らは、これらを用いて上記課題が解決できないかを検討してきた。その結果、動物の写真とその動物の品種、毛色、性別を教師データとして人工知能を学習させると、動物の写真からその動物の品種、毛色、性別を判定する学習済みモデルを生成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。また、同一個体の動物の複数の顔画像を教師データとして用いることで、複数の動物の顔画像が同一の個体を撮影したものであるかを判定する学習済みモデルを生成できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の[1]~[12]である。
[1]ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の品種を判定する判定手段と、を備える判定システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の品種とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の品種判定とする学習済みモデルであることを特徴とする判定システム。
[2]ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の毛色を判定する判定手段と、を備える判定システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の毛色とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の毛色判定とする学習済みモデルであることを特徴とする判定システム。
[3]ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の性別を判定する判定手段と、を備える判定システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の性別とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の性別判定とする学習済みモデルであることを特徴とする判定システム。
[4]前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼及びその周囲を含み、耳、鼻及び口を含まない画像である[1]~[3]のいずれかの判定システム。
[5]前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である[1]~[3]のいずれかの判定システム。
[6]ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
ヒトを除く動物の顔画像及び個体識別情報を記憶したデータベースと、 学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段と、を備える個体識別システムであって、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とする個体識別システム。
[7]前記教師データとして用いられる顔画像が、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像である[6]の個体識別システム。
[8]入場又は退場しようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の入退場管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とする入退場管理システム。
[9]動物病院において診察を受けようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とする動物の管理システム。
[10]ペットサロンにおいてトリミング又はシャンプーを受けようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とする動物の管理システム。
[11]捜索対象となっている動物の候補となる動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、
動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、
前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、
備える動物の管理システムであって、
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、
前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とする動物の管理システム。
[12]ヒトを除く動物の複数の顔画像が、同一の個体を撮影した画像か否かを判定する学習済みモデルの生成方法であって、教師データとして、ヒトを除く動物の画像であって、動物の眼及びその周囲を含み、耳、鼻及び口を含まない画像を人工知能を含むコンピュータに入力し、人工知能に学習させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、簡易な方法で、動物の写真から、動物の品種、毛色や性別を判定することのできる判定システムや判定方法や、簡易な方法で、動物の写真を用いて個体を識別する手段を備える判定システムや判定方法を提供することが可能となる。また、本発明の判定システムを利用して、動物の入退場管理システムや保険管理システム等を提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】好適な動物の顔画像の一例を表す図である。
図2】好適な動物の顔画像の一例を表す図である。
図3】本発明の入退場管理システムの一実施態様を表す構成概略図である。
図4】本発明の入退場管理システムによる入退場管理の流れの一例を表すフローチャート図である。
図5】実施例で用いた動物の顔画像の一例である。
図6】実施例で用いた動物の顔画像の一例である。
図7】実施例で用いた動物の顔画像の一例である。
図8】実施例で用いた動物の顔画像の一例である。
図9】実施例のラベル付けの対応を表す図である。
図10】実施例の結果を表す図である。
図11】実施例のラベル付けの対応を表す図である。
図12】実施例の結果を表す図である。
図13】実施例のラベル付けの対応を表す図である。
図14】実施例の結果を表す図である。
図15】実施例のラベル付けの対応を表す図であり、図15(a)~(e)は、各個体の画像を示し、図15(f)は各個体の画像とID(ラベル)との対応を示す。
図16】実施例の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<品種判定システム>
本発明の判定システムは、ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の品種を判定し出力する判定手段と、を備える。
【0017】
[受付手段]
本発明の受付手段は、品種を判定したい動物の顔画像の入力を受け付ける手段である。動物としては、犬、猫、ウサギ、フェレット等の哺乳類、鳥類、爬虫類、愛玩動物が挙げられ、哺乳類が好ましく、犬及び猫がより好ましい。画像の受付方法は、スキャン、画像データの入力、送信、その場で撮影しての画像取り込みなどいずれの方法であってもよい。顔画像のフォーマットは特に限定されないが、顔画像は、動物の顔を正面から撮影した写真であることが好ましく、図1に表すような動物の顔が大きく写っている写真がより好ましい。そのような写真として、ヒトの運転免許証の写真のような写真が挙げられる。図2のように、動物の健康保険証に用いられる画像も好ましい。
【0018】
画像は、白黒、グレースケール、カラーのいずれであってもよい。動物の顔全体が写っていない画像、画像編集ソフトウェアで形状が編集された画像、複数の動物が写っている画像、目や耳が判別出来ないほど顔が小さく写っている画像あるいは不鮮明な画像は好ましくない。画像については、ノーマライゼーションが施され、解像度等が統一されたものが好ましい。
【0019】
[判定手段]
本発明の判定手段は、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の品種とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の品種の判定とする学習済みモデルを含む。品種とは、生物の種以下の生物集団の単位である。例えば、犬でいうと、犬の品種は犬種とも呼ばれ、具体的には、トイプードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフント、柴犬、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、パピヨン、マルチーズ、ラブラドール、ダルメシアン、チャウチャウ等が挙げられる。猫でいうと、猫の品種は猫種とも呼ばれ、スコティッシュ・フォールド、アメリカン・ショートヘア、ノルウェージャン・フォレストキャット、ロシアンブルー、ブリティッシュ・ショートヘア、ラグドール、メイン・クーン、ペルシャ等が挙げられる。ウサギでいうと、ネザーランドドワーフ、ホーランドロップ、ロップイヤー、ミニレッキス、ドワーフロップ、アメリカンファジーロップ等が挙げられる。
【0020】
前記学習済みモデルとしては、人工知能(AI)が好ましい。人工知能(AI)とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムであり、具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいう。人工知能としては、汎用型、特化型のいずれであってもよく、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等のいずれであってもよく、公開されているソフトウェアを使用することができる。
【0021】
学習済みモデルを生成するために、人工知能を教師データを用いて学習させる。学習としては、機械学習とディープラーニング(深層学習)のいずれであってもよいが、ディープラーニングが好ましい。ディープラーニングは、機械学習を発展させたものであり、特徴量を自動的に見つけ出す点に特徴がある。
【0022】
学習済みモデルを生成するための学習方法としては、特に制限されず、公開されているソフトウェアを用いることができる。例えば、NVIDIAが公開しているDIGITS (the Deep Learning GPU Training System)を用いることができる。その他、例えば、「サポートベクターマシン入門」(共立出版)等において公開されている公知のサポートベクターマシン法(Support Vector Machine法)等によって学習させてもよい。
【0023】
学習のための教師データは、動物の顔画像とその動物の品種である。教師データとしての動物の顔画像は、上記受付方法で説明した顔画像と同様であっても異なっていてもよい。当該動物の品種についての情報は、例えば、保険加入申請時に提供される情報として、動物病院あるいは保険をかけようとする当該動物の飼い主等から入手可能である。また、予め、画像を見て、当該画像に係る動物個体の品種が何かを人が目視で判断し、ラベル付けしてもよい。また、教師データとして用いる動物の顔画像としては、動物の眼及びその周囲を含み、耳、鼻及び口を含まない画像であることが好ましい。眼は両目が映っていても、片目のみ映っていてもよい。動物の顔画像として動物の眼及びその周囲を含み、耳、鼻及び口を含まない画像である場合、個体識別において、トリミングや体毛の汚れなどの影響が少なくなる。
また、教師データとして用いる動物の顔画像として、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像を用いることも好ましい。
【0024】
[出力]
本発明の判定手段は、入力情報として、動物の顔画像を受け付けると、上記学習済みモデルによって、当該動物の品種の判定を行う。
出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンの画面上において、「トイプードル」、あるいは、「チワワ」、「パピヨン」といった表示をすることで予測判定を出力することができる。また、付随的な情報として、品種の判定の確実性を同時に出力してもよい。例えば、「トイプードル(信頼度:80%)」といった具合である。
本発明の判定システムは、判定手段から判定結果を受信し、判定結果を出力する出力手段を別途有していてもよい。
【0025】
<毛色判定システム>
本発明の判定システムは、ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の毛色を判定し出力する判定手段と、を備える。
【0026】
[受付手段]
本発明の受付手段は、上記品種判定システムと同様である。
【0027】
[判定手段]
本発明の判定手段は、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の撮影時の毛色とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の撮影時の毛色の判定とする学習済みモデルを含む。毛色とは、黒、黒&シルバー、ブラウン、クリーム、白、チョコレート、イエローなどが挙げられるがこれらに限定されない。動物の種や品種毎に毛色の種類を設定することもできる。
【0028】
学習のための教師データは、動物の顔画像とその動物の撮影当時の毛色である。教師データとしての動物の顔画像は、上記受付方法で説明した顔画像と同様であっても異なっていてもよい。当該動物の毛色についての情報は、例えば、保険加入申請時に提供される情報として、動物病院あるいは保険をかけようとする当該動物の飼い主等から入手可能である。また、予め、動物の種や品種毎に毛色の分類を作成しておき、画像を見て、当該画像に係る動物個体の毛色が何色が人が目視で判断し、ラベル付けしてもよい。学習済みモデルのその他の点については上記品種判定システムと同様である。
【0029】
[出力手段]
本発明の判定手段は、入力情報として、動物の顔画像を受け付けると、上記学習済みモデルによって、当該動物の顔画像撮影時の毛色の判定を行う。
出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンの画面上において、「黒」、あるいは、「ブラウン」、「クリーム」といった表示をすることで予測判定を出力することができる。また、付随的な情報として、毛色の判定の確実性を同時に出力してもよい。例えば、「ブラウン(信頼度:80%)」といった具合である。
本発明の判定システムは、判定手段から判定結果を受信し、判定結果を出力する出力手段を別途有していてもよい。
【0030】
<性別判定システム>
本発明の判定システムは、ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の性別を判定し出力する判定手段と、を備える。
【0031】
[受付手段]
本発明の受付手段は、上記品種判定システムと同様である。
【0032】
[判定手段]
本発明の判定手段は、ヒトを除く動物の顔画像とその動物の性別とを教師データとして用いて学習を行い、入力を動物の顔画像とし、出力をその動物の性別の判定とする学習済みモデルを含む。
【0033】
学習のための教師データは、動物の顔画像とその動物の性別である。教師データとしての動物の顔画像は、上記受付方法で説明した顔画像と同様であっても異なっていてもよい。当該動物の性別についての情報は、例えば、保険加入申請時に提供される情報として、動物病院あるいは保険をかけようとする当該動物の飼い主等から入手可能である。学習済みモデルのその他の点については上記品種判定システムと同様である。
【0034】
<個体識別システム>
本発明の個体識別システムは、ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、ヒトを除く動物の顔画像及び個体識別情報を記憶したデータベースと、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段と、を備える。
【0035】
[受付手段]
本発明の受付手段は、上記品種判定システムと同様である。
【0036】
[データベース]
本発明のデータベースは、動物の顔画像と当該顔画像に係る動物の個体の個体識別情報を紐付けて記憶、格納する。個体識別情報としては、例えば、当該動物の種、品種、性別、年齢、体重、体長が挙げられる。その他、各動物ごとにIDナンバーを付してもよい。さらに、当該動物の通院歴、手術歴、薬の投与歴といった健康に関する情報や、トリミング履歴、シャンプー履歴、爪切り履歴といったペットサロンの利用履歴に関する情報などを個体識別情報に付してもよい。データベースは、データベースサーバーの形で管理してもよく、クラウドサーバー上で管理してもよく、分散データベースとしてもよい。
【0037】
[判定手段]
本発明の判定手段は、学習済みモデルを含む。
【0038】
学習のための教師データは、動物の顔画像である。教師データとしての動物の顔画像は、上記受付方法で説明した顔画像と同様であっても異なっていてもよい。
学習方法としては、例えば、各個体ごとに同一日に撮影した複数枚の顔画像と、他の個体を撮影した顔画像を用意し、各顔画像に個体識別IDを付与し、写真に対する答えをIDとして学習させる方法が挙げられる。
また、3枚の画像を1セットにし、その中の一つの画像(Query)と似ている方をPositive、似ていない方をNegativeという風に3枚ごとにラベル付けを行ういわゆるtriplet trainingでもよい。
教師データとして用いる動物の顔画像としては、動物の眼及びその周囲を含み、耳、鼻及び口を含まない画像、或いは、動物の眼、鼻及び口を含み、耳及び顔の輪郭を含まない画像が好ましい。
【0039】
判定手段は、例えば、データベースに記憶されている動物の顔画像を読み出し、受付手段から入力された動物の顔画像との比較を行う。そして、データベースに記憶されている画像と、受付手段から入力された画像が、同一の個体を撮影したものであるか否かの判定を行う。この判定は、繰り返し行うことができ、データベースに記憶されている同一種の動物の画像全てに対して行ってもよいし、一部の画像についてのみ行ってもよい。
【0040】
[出力]
出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンの画面上において、「同一個体」、あるいは、「同一個体ではない」といった表示をすることで判定を出力することができる。また、受付手段から入力された動物の顔画像が、データベースに記憶されている特定の個体と同一の個体であるという判定がなされた場合には、当該特定の個体の個体識別情報を合わせて出力してもよい。また、受付手段から入力された動物と同一の個体である可能性が高いものから順に、データベースに記憶されている動物の画像を複数枚提示してもよい。
【0041】
また、本発明の個体識別システムを利用して、動物の片眼の画像を受付手段に入力し、その片眼にかかる個体を識別したり、あるいは、もう一方の片眼の画像の持ち主を判定するシステムに応用することができる。
【0042】
また、本発明の個体識別システムを利用して、動物の片眼の画像を受付手段に入力し、左右どちらの眼であるのかを判定するシステムに応用することができる。
【0043】
<入退場管理システム>
本発明の入退場管理システムは、入場又は退場しようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、備える動物の入退場管理システムであって、前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とするものである。
【0044】
本発明の入退場管理システムは、例えば、ペットホテル、ドッグラン、ペットカフェなど、特定の領域や部屋への動物の入退場を把握、管理したい場合に使用することができる。
【0045】
受付手段は、限定されず、例えば、室内に固定された監視カメラ、ネットワークカメラ、スマートフォンに備え付けのカメラ等の撮影手段によって撮影された画像をネットワークを通じて受け付けることができる。
【0046】
データベース、判定手段、出力手段については上記と同様である。
【0047】
本発明の入退場管理システムの実施形態の一例を図3によってペットホテルの事例で説明する。
まず、ペットホテルの利用者は、端末13を通じてペットホテルのウェブサイト上で会員登録を行い、ペットホテルに宿泊させたいペットの種、品種、名前、生年月日、体重、性別、予防接種の有無等の個体識別情報とともに、ペットの顔画像を登録する。登録されたペットの個体識別情報は、ペットホテルが管理するデータベース12に格納される。
次に、利用者は、端末13を通じてウェブサイト上でペットホテルの予約を行い、予約された日時にペットを連れてペットホテルを訪れる。
ペットホテルの従業員が、ペットホテルに備え付けられたカメラ等の撮影手段16によって、ペットを撮影する。そうすると、撮影された画像がネットワークを通じて受付手段15に入力される。
処理演算部17は、データベース12を参照し、データベース12に記憶されているペットの顔画像と当該受け付けられた画像について、判定手段11を用いて、同一の個体であるか否かを判定する。データベース12に記憶されているペットの顔画像それぞれについて、判定を繰り返し、同一の個体であると判定された場合には、当該ペットの顔画像とともに、当該ペットの個体識別情報を出力手段14(パソコンの画面)により出力する。
このとき、ペットホテルの従業員は、出力された判定結果とペットの個体識別情報を利用して、ペットホテルを利用しようとするペットが、会員登録されたペットと同一の個体であることを判断し、当該ペットを入場させることができる。
【0048】
図3中、端末13は、利用者(ユーザ)が利用する端末である。端末13は、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末などが挙げられる。端末13は、CPUなどの処理部、ハードディスク、ROMあるいはRAMなどの記憶部、液晶パネルなどの表示部、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力部、ネットワークアダプタなどの通信部などを含んで構成される。
【0049】
利用者は、申込み時や会員登録時に、その場でスマートフォンのカメラを使って対象となる動物の顔写真を撮影し、それを入力、送信するという態様であってもよい。例えば、ユーザは、端末13の画面上に表示される指示に従って保険対象となる動物の顔写真を撮影し、適切な写真が撮れたらそれをデータベース12に送信する。このとき、サーバが、別途、画像判定プログラムからなる写真撮影補助手段を備え、写真撮影補助手段が、動物の顔全体が撮像されていること、動物の顔の正面からの写真であるといった、個体の同一性判定に好適な写真であるかどうかを判定し、その判定結果をインターフェースや端末を通じてユーザに伝達するという構成を備えていてもよい。
【0050】
本実施形態においては、サーバはコンピュータによって構成されるが、本発明にかかる機能を有する限りにおいて、どのような装置であってもよい。サーバは、クラウド上にあるサーバであってもよい。
【0051】
記憶部10は、例えばROM、RAMあるいはハードディスクなどから構成される。記憶部10には、サーバの各部を動作させるための情報処理プログラムが記憶され、特に、判定手段(学習済みモデル)11が記憶される。
【0052】
判定手段(学習済みモデル)11は、上記のように、ペットホテルが入力した動物の顔画像を入力とし、当該画像に含まれる動物が、データベースに記憶されている動物の顔写真と同一の個体であるか否かの判定を出力するものである。本実施形態における判定手段(学習済みモデル)11は、例えばディープニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークを含んで構成される。
【0053】
処理演算部17は、記憶部に記憶された判定手段(学習済みモデル)11を用いて、同一性判定を実行する。
【0054】
インターフェース部(通信部)は、受付手段15と出力手段14を備え、例えば撮影手段から、動物の顔画像を受け付け、端末に対して、同一性の判定結果や、撮影された個体と同一の個体に関する個体識別情報を出力する。
【0055】
本実施形態の入退場管理システムにより、ペットホテルは、簡易な方法で、利用者が連れてきたペットが会員登録されたペットと同一の個体であることを判断することができ、ペットホテルの受付をスムーズに行うことができる。
【0056】
本発明の入退場管理システムの実施態様に基づく個体識別のフローチャートを図4に示す。ペットホテルの従業員が撮影手段を用いて、利用者が連れてきたペットの顔写真を撮影し、それを端末を用いて、サーバの受付手段に入力する(ステップS1)。サーバの処理演算部は、判定手段(学習済みモデル)を用いて、アップロードされた顔画像と、予めデータベースに登録された動物の顔画像との比較を行い、同一の個体であるか否かを判定する(ステップS2)。出力手段は、判定結果を端末画面に表示するなどして出力し、ペットホテルの従業員に提示する(ステップS3)。
【0057】
<管理システム>
本発明の動物の管理システムは、動物病院において診察を受けようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、備える動物の管理システムであって、前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とするものである。
【0058】
本発明の動物の管理システムは、例えば、ペット保険の提供者が、ペット保険の対象となっているペットが診察を受けたかどうかを把握したい場合に使用することができる。
【0059】
<管理システム>
本発明の管理システムは、ペットサロンにおいてトリミング又はシャンプーを受けようとする動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、備える動物の管理システムであって、前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とするものである。
【0060】
本発明の動物の管理システムは、例えば、ペットサロンが、サービスの対象となるペットが会員登録されているペットかどうかや、過去のサービス提供履歴を把握したい場合に使用することができる。
【0061】
<管理システム>
本発明の管理システムは、捜索対象となっている動物の候補となる動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と動物の顔画像と個体識別情報とを記憶するデータベースと、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像に映った個体が、データベースに記憶された個体と同一の個体であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果を出力する出力手段とを、備える動物の管理システムであって、前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、前記受付手段により受け付けられた動物の顔画像が、データベースに記憶された動物個体と同一の個体の画像であるか否かを判定する判定手段であり、前記学習済みモデルが、ヒトを除く動物の顔画像を教師データとして用いて学習を行い、各顔画像には個体ごとのID情報を付与し、入力をある個体の動物の顔画像又は別の個体の動物の顔画像とし、出力を、各顔画像が、ある個体の顔画像であるか別の個体の顔画像であるかの判定とする学習済みモデルであることを特徴とするものである。
【0062】
本発明の動物の管理システムは、例えば、迷子になったペットを捜索する際に、見つかった動物が捜索対象となっているペットかどうかを確認したい場合に使用することができる。
【0063】
<年齢帯判定システム>
本発明の年齢帯判定システムは、ヒトを除く動物の顔画像の入力を受け付ける受付手段と、学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の顔画像からその動物の年齢帯を判定し出力する判定手段と、を備える。
【0064】
年齢帯とは、その動物の大まかな年齢である。例えば、幼年、若年、壮年、老年といった分類でもよい。
【0065】
受付手段及び判定手段については、上記品種判定システムと同様である。
【実施例
【0066】
[実施例1]
トイプードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフント、柴犬、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュアシュナウザー、シーズー、フレンチブルドッグ、パピヨン、マルチーズの11犬種それぞれについて100枚の顔画像(眼とその周囲のみが映った画像。一例として、図5図8の写真(用いたのはカラー写真)。256×256ピクセルに統一した。)と、各画像に係る犬種情報(図9に示すように各犬種に番号を振った)を教師データとして用いて、ディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。
AnacondaでのTensorFlow環境下にて、畳み込みニューラルネットワークを用いてディープラーニングを行った。
生成された学習モデルを用いて、テストとして、上記学習済みモデルの生成に用いた画像とは別の画像(眼とその周囲のみが映った画像)を各犬種毎に40頭分ずつ用意し、判定を行った。
その結果を図10に示す。犬種を正確に回答した正答率は、全体として、71.6%であった。
【0067】
[実施例2]
毛色が異なるトイプードルの顔写真を各色ごとに40枚ずつ用いてディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。使用した顔写真は、眼とその周囲のみが映った画像であり、黒&シルバーの毛色の画像が40枚、ブラウンの毛色の画像が40枚、クリームの毛色の画像が40枚、白の毛色の画像が40枚であった。
AnacondaでのTensorFlow環境下にて、畳み込みニューラルネットワークを用い、写真データを、図11に示すように、黒&シルバー、ブラウン、クリーム及び白のそれぞれの毛色に対応する番号でラベル付けをしてディープラーニングを行った。
生成された学習モデルを用いて、テストとして、上記学習済みモデルの評価に用いた顔写真とは別の顔写真(眼とその周囲のみの画像)を用いてテストを行った。テストに使用した顔写真は、眼とその周囲のみが映った画像であり、黒&シルバーの毛色の画像が40枚、ブラウンの毛色の画像が40枚、クリームの毛色の画像が40枚、白の毛色の画像が40枚であった。
その結果を図12に示す。毛色を正確に回答した正答率は、全体として、85.0%であった。
【0068】
[実施例3]
毛色が異なるラブラドールの顔写真を各色ごとに40枚ずつ用いてディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。使用した顔写真は、眼とその周囲のみが映った画像であり、黒の毛色の画像が40枚、チョコレートの毛色の画像が40枚、イエローの毛色の画像が40枚であった。
AnacondaでのTensorFlow環境下にて、畳み込みニューラルネットワークを用い、写真データを、図13に示すように、黒、チョコレート、イエローのそれぞれの毛色に対応する番号でラベル付けをしてディープラーニングを行った。
生成された学習モデルを用いて、テストとして、上記学習済みモデルの評価に用いた顔写真とは別の顔写真を用いてテストを行った。テストに使用した顔写真は、眼とその周囲のみが映った画像であり、黒の毛色の画像が40枚、チョコレートの毛色の画像が40枚、イエローの毛色の画像が40枚であった。
その結果を図14に示す。毛色を正確に回答した正答率は、全体として、86.7%であった。
【0069】
[実施例4]
5匹のトイプードルそれぞれについて40枚ずつ顔画像を用意した。各顔画像は、眼、鼻、及び口を含み、耳や顔の輪郭は含まないものであった。
5匹のトイプードルそれぞれ24枚の画像を使ってディープラーニングを行い、学習済みモデルを生成した。5匹のトイプードルの画像には、それぞれ、図15(a)~(e)に示すように、「個体A」、「個体B」、「個体C」、「個体D」、「個体E」に応じてID(ラベル)を付した。
AnacondaでのTensorFlow環境下にて、畳み込みニューラルネットワークを用い、写真データを、図15(f)に示すように、「個体A」、「個体B」、「個体C」、「個体D」、「個体E」のそれぞれの個体に対応する番号でラベル付けをしてディープラーニングを行った。
生成された学習モデルを用いて、テストとして、上記学習済みモデルの評価に用いた顔写真とは別の顔写真(眼と鼻と口が映っている画像)を用いてテストを行った。テストに使用した顔写真は、各個体ごとに8枚ずつであった。
その結果を図16に示す。毛色を正確に回答した正答率は、全体として、95%であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16