(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】疎水性表面コーティング層及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/505 20060101AFI20231004BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20231004BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20231004BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231004BHJP
C23C 16/02 20060101ALI20231004BHJP
C23C 16/511 20060101ALI20231004BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20231004BHJP
【FI】
C23C16/505
B32B9/00 Z
B32B27/26
B32B27/30 D
C23C16/02
C23C16/511
H05K3/28 B
(21)【出願番号】P 2022501166
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 CN2020096722
(87)【国際公開番号】W WO2021017674
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】201910680686.6
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910712672.8
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010112882.6
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010112881.1
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521497279
【氏名又は名称】チャンスー フェイヴァード ナノテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ゾン ジアン
(72)【発明者】
【氏名】カン ビシャン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ インジン
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519219(JP,A)
【文献】特開2005-015851(JP,A)
【文献】特開平11-092175(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0130591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/505
B32B 9/00
B32B 27/26
B32B 27/30
C23C 16/02
C23C 16/511
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数種のフルオロアルコール化合物及び架橋剤を反応ガス原料として、プラズマ強化化学気相成長法により基体の表面に形成されることを特徴とする、疎水性表面コーティング層
。
【請求項2】
前記フルオロアルコール化合物は構造式:C
nF
2n+1-C
mH
2m-OH(ここで、nは1~12の整数であり、mは0~4の整数である。)を有する、請求項1に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項3】
前記フルオロアルコール化合物は第一級アルコールである、請求項1に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項4】
前記フルオロアルコール化合物は構造式:OH-C
nH
mF
2n+1-m(式中、n>m+1)を有する、請求項1に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項5】
前記フルオロアルコール化合物は、パーフルオロヘキシルエタノール、パーフルオロブチルエタノール、パーフルオロブチルプロパノール、パーフルオロヘキシルプロパノール、1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキサン-1-オール、3-(ジフルオロメチル)-2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-1-オールからなる群より選択される1種又は複数種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項6】
前記架橋剤は以下の構造式を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
(ここで、R
1
、R
2
、R
3
、R
5
、R
6
、R
7
は、水素、アルキル基、アリール基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基から選択され、j、kは0~10の整数であり、且つ同時に0であることができなく、R
4
は結合、-CO-、-COO-、アリーリデン基、脂環アルキリデン基、ヒドロキシ基置換脂肪アルキリデン基である。)
【請求項7】
前記架橋剤は、エステル基、エーテル、エポキシ基、シアノ基の少なくとも1つを含む多官能基化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項8】
前記架橋剤は、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルビニルジメトキシシラン、エンブクリラートからなる群より選択される1種又は複数種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項9】
前記疎水性表面コーティング層を調製する場合には、最初に前記反応ガス原料の化学成長反応を活性化するためにプラズマ源ガスを導入する、請求項1~5のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項10】
前記プラズマ源ガスは不活性ガスから選択される1種又は複数種である、請求項
9に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項11】
前記基体はガラス基板である、請求項
4~10のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項12】
プラズマの作用下で、前記基体の表面にシラノール基が形成される、請求項
4~10のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層。
【請求項13】
プラズマ装置の反応チャンバーに1種又は複数種のフルオロアルコール化合物及び架橋剤の反応ガス原料を導入し、前記プラズマ装置での基体の表面にプラズマ強化化学気相成長を実行して疎水性表面コーティング層を形成するステップを含むことを特徴とする、疎水性表面コーティング層の製造方法
。
【請求項14】
前記フルオロアルコール化合物は構造式:C
nF
2n+1-C
mH
2m-OH(ここで、nは1~8の整数であり、mは2~3の整数である。)を有する、請求項
13に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項15】
前記フルオロアルコール化合物は第一級アルコールである、請求項
13に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項16】
前記フルオロアルコール化合物は構造式:OH-C
nH
mF
2n+1-m(式中、n>m+1)を有する、請求項
13に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項17】
前記フルオロアルコール化合物は、パーフルオロヘキシルエタノール、パーフルオロブチルエタノール、パーフルオロブチルプロパノール、パーフルオロヘキシルプロパノール、1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキサン-1-オール、3-(ジフルオロメチル)-2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-1-オールからなる群より選択される1種又は複数種である、請求項
13~16のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項18】
前記架橋剤は以下の構造式を有する、請求項13~17のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
(ここで、R
1
、R
2
、R
3
、R
5
、R
6
、R
7
は、水素、アルキル基、アリール基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基から選択され、j、kは0~10の整数であり、且つ同時に0であることができなく、R
4
は結合、-CO-、-COO-、アリーリデン基、脂環アルキリデン基、ヒドロキシ基置換脂肪アルキリデン基である。)
【請求項19】
前記架橋剤は、エステル基、エーテル、エポキシ基、シアノ基の少なくとも1つを含む多官能基化合物である、請求項13~17のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項20】
前記架橋剤は、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルビニルジメトキシシラン、エンブクリラートからなる群より選択される1種又は複数種である、請求項13~17のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項21】
前記反応ガス原料を導入する前に、最初に前記反応ガス原料の化学成長反応を活性化するためにプラズマ源ガスを導入するステップを含む、請求項
13~20のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項22】
前記プラズマ源ガスは不活性ガスから選択される1種又は複数種である、請求項
21に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項23】
前記プラズマ装置の作動電力は1~500wの範囲である、請求項
13~22のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項24】
前記基体はガラス基板である、請求項
13~22のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【請求項25】
プラズマの作用下で、前記基体の表面にシラノール基が形成される、請求項
13~22のいずれか1項に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面コーティング層の分野に関し、さらに、プラズマ強化化学気相成長法により形成される疎水性表面コーティング層に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術レベルの向上や市場規模の拡大につれて、防水処理は、例えば、金属、印刷回路基板(PCB基板)、織物、電子デバイスなどの様々な表面に適用されることができ、それに性能を付与して表面に水、液体、雨などの破壊を防止し、使用寿命を延ばし、余分なコストを削減する。
【0003】
このような防水効果を達成できるための単量体材料は、フルオロカーボン材料が最も多い。フルオロカーボン材料は、低表面エネルギー、強固な共有結合、ジグザグ型炭素鎖構造、及びらせん構造を有するため、界面に負電荷による保護が形成されることができるので、紡績、軍需産業、電気電子などの分野でよく適用されている。現在、最も多く適用されているフルオロカーボン材料は、長鎖Rf(フルオロカーボンの鎖長(炭素数)≧8)のパーフルオロアクリレート系であり、CN101370975Aには、パーフルオロアクリレート系単量体、好ましく、アクリル酸1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルを選択して服などの織物表面にポリマーコーティング層を形成する新規製品が開示されている。
【0004】
長鎖Rfのパーフルオロアクリレート系材料は、異なる表面に優れた性能を付与できるが、原材料によって制限されているので、パーフルオロアクリレート系フルオロカーボン材料が、主に少ない地域に集中しているとともに、主にフルオロアルコールとアクリル酸などが一連のプロセスを経て合成されることにより得られ、プロセスが複雑で、生産コストが高くなる。
【0005】
一方、パーフルオロアクリレート系フルオロカーボン材料に比べて、蛍石の埋蔵量が比較的に豊富で、次は冷媒業界、特にテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン分解技術及びHFC-134a合成技術の発展につれて、フルオロアルコールの原料コストが急速に低下し、生産方法が最適化され、フルオロアルコール製品の世界市場での競争力が増強され、比較的に完全なフルオロアルコール産業チェーンが形成されている。これは、ある程度の経済的なコストの問題を解決することができる。
【0006】
プラズマ化学気相成長技術は、損傷から表面を保護するために異なる表面にポリマーコーティング層を形成するのに広く使われている。該技術は、プラズマを利用して反応ガスを活性化し、基材が存在する場合にこのステップを行うと、プラズマ状態にある化合物の基は、基材表面又はそれに近い表面で重合する。該技術は、湿式化学法と比較して乾式成膜プロセスになり、成長された薄膜と基材との結着性が良く、コーティング層の構造の設計が容易であり、汎用性が良いと考えられる。形成されたポリマーコーティング層の性質は、単量体の性質、基材及び膜の蒸着条件に関連する。
【0007】
さらに、表面コーティング層の性能は、コーティング層自体の材料及び形成方式に関連するだけでなく、基体自体の性質にも関連する。同様な表面コーティング層が異なる基材に付着すると、異なる性能を示す可能性があるが、同じ基材に対して、より適合な表面コーティング層が存在する可能性がある。
【0008】
ガラス基板は、スマートフォン、タブレットなどの各種の電子機器のディスプレイ画面に広く適用されているが、ガラス自体の性能を改善するために、一般に加工プロセス中に表面にコーティング層を形成することが必要とし、但し、現在のコーティング材のうち、多くのコーティング材は、複数種の基材に適用できる材料であり、特別な基材、例えば、ガラス基板のコーティング層に対応するものは比較的に少ないため、コーティング層材料自体の性能発現に一定の制限があり、ガラス基板の性能の最適化にも限界がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、パーフルオロアクリレート系フルオロカーボン材料の代わりに、フルオロアルコール化合物を用い、製造コストを低減させる疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを優位点とする。
【0010】
本発明は、1種又は複数種のフルオロアルコール化合物からプラズマ強化化学気相成長法により形成され、製造手順が簡便化される、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0011】
本発明は、フルオロアルコール化合物から基体表面に形成される表面コーティング層が良好な疎水性能を有する、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0012】
本発明は、架橋剤を添加することにより、ガス原料が直接に重合蒸着中に架橋され、緻密性が高く、機械的な性質が良く、大規模生産中の熱焼鈍処理工程及びこれによる費用を節約する、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0013】
本発明は、疎水性表面コーティング層が高疎水性、耐薬品性・腐食性、優れた耐候性を有する、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0014】
本発明は、フルオロアルコール化合物と架橋剤とが結合して基体の表面に成長されることにより、疎水性表面コーティング層と基体の結合性能がより強く、より強固になり、耐塩水噴霧・腐食性能を増強させる、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0015】
本発明は、上記疎水性表面コーティング層がガラス基体の表面に成長され、ガラス基体の表面性能を改善するのにより適している、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0016】
本発明は、上記疎水性表面コーティング層の材料特徴とガラス基板の材料特徴とを互いに配合することにより、上記疎水性表面コーティング層がガラス基板と結合するときに全体性能がより優れた、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0017】
本発明は、架橋剤を添加することにより、ガス原料が重合蒸着中に直接架橋され、緻密性が高く、機械的な性質が良く、大規模生産中の熱焼鈍処理工程及びこれによる費用を節約する、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0018】
本発明は、疎水性表面コーティング層が良好な疎水性、光透過率及び耐摩耗性を有する、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0019】
本発明は、フルオロアルコール化合物と架橋剤とが結合されて基体の表面に成長されることにより、疎水性表面コーティング層と基体との結合性能がより強く、より強固になる、疎水性表面コーティング層及びその製造方法を提供することを他の優位点とする。
【0020】
上記優位点の少なくとも1つを達成するために、本発明は、1種又は複数種のフルオロアルコール化合物を反応ガス原料として、プラズマ強化化学気相成長法により基体表面に形成される、疎水性表面コーティング層を提供する。
【0021】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記フルオロアルコール化合物は化学式:CnF2n+1-CmH2m-OH(ここで、nは1~12の整数であり、mは0~4の整数である。)を有する疎水性表面コーティング層。
【0022】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記フルオロアルコール化合物の反応中にメチレン基弱結合部位が存在する、疎水性表面コーティング層。
【0023】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記フルオロアルコール化合物は第一級アルコールである、疎水性表面コーティング層。
【0024】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記フルオロアルコール化合物は、パーフルオロヘキシルエタノール、パーフルオロブチルエタノールからなる群より選択される1種又は複数種である、疎水性表面コーティング層。
【0025】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記反応ガス原料はさらに以下の構造式を有する架橋剤を含む、疎水性表面コーティング層。
(式中、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7は、水素、アルキル基、アリール基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基から選択され、j、kは0~10の整数であり、且つ同時に0であることができなく、R
4は結合、-CO-、-COO-、
アリーリデン基、脂環
アルキリデン基、ヒドロキシ基置換脂肪
アルキリデン基である。)
【0026】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記反応ガス原料はさらにエステル基、エーテル、エポキシ基、シアノ基を含む多官能基化合物である架橋剤を含む、疎水性表面コーティング層。
【0027】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記反応ガス原料はさらにメタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルビニルジメトキシシラン、エンブクリラートからなる群より選択される1種又は複数種である架橋剤を含む、疎水性表面コーティング層。
【0028】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記疎水性表面コーティング層を調製する場合には、最初に上記反応ガス原料の化学成長反応を活性化するためのプラズマ源ガスを導入する、疎水性表面コーティング層。
【0029】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記プラズマ源ガスは不活性ガスから選択される1種又は複数種である、疎水性表面コーティング層。
【0030】
本発明は、他の側面で、プラズマ装置の反応チャンバーに1種又は複数種のフルオロアルコール化合物の反応ガス原料を導入し、上記プラズマ装置での基体の表面にプラズマ強化化学気相成長を実行して疎水性表面コーティング層を形成するステップを含む、疎水性表面コーティング層の製造方法を提供する。
【0031】
本発明の一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層の製造方法において、上記フルオロアルコール化合物は化学式:CnF2n+1-CmH2m-OH(ここで、nは1~8の整数であり、mは2~3の整数である。)を有する、疎水性表面コーティング層の製造方法。
【0032】
本発明は、他の側面で、1種又は複数種の構造式:OH-CnHmF2n+1-m(式中、n>m+1)を有するフルオロアルコール化合物を反応ガス原料として、プラズマ強化化学気相成長法により基板の表面に形成され、ここで、上記フルオロアルコール化合物はプラズマの作用下で、上記基板表面にシラノール基が形成される、疎水性表面コーティング層を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の説明は、本発明を当業者が達成できるように開示するためのものである。以下の説明での好ましい実施例は例示のみであり、当業者によって他の明らかな変更が容易に想到できるものである。以下の説明で定義された本発明の基本的な原理は、他の実施形態、変更形態、改良形態、同等形態、並びに、本発明の精神及び範囲を逸脱しない他の技術的形態に適用できる。
【0034】
本発明は、疎水性表面コーティング層を提供しており、上記疎水性表面コーティング層は、1種又は複数種のフルオロアルコールから原材料として形成される。さらに、上記疎水性表面コーティング層は、1種又は複数種のフルオロアルコールから原材料としてプラズマ強化化学気相成長法により基体の表面に形成される。
【0035】
上記疎水性表面コーティング層は、良好な疎水性、及び良好な耐化学的腐食性、優れた耐候性を有する。
【0036】
さらに、上記疎水性表面コーティング層は、良好な疎水性を有し、水が上記防水ナノ膜に付着される場合には、水の静的接触角は90°を超え、例えば、静的接触角は、90°~100°、100°~110°、110°~120°、120°~130°の範囲である。上記疎水性表面コーティング層は良好な耐食性を有し、例えば、上記疎水性表面コーティング層が基体表面に成長されて長時間の塩水噴霧試験を経た後に、基体表面が腐食されていないか、又は少量の腐食点しか存在しなく、後の具体的な実施例に示すようになる。
【0037】
上記疎水性表面コーティング層は、小さな厚さを有し、基体の表面使用に影響を及ぼさず、その厚さが例えば10~1000nmの範囲であるが、これに限定されない。例えば、上記厚さが、150nm~170nm、170nm~190nm、190nm~210nm、210nm~230nm又は230nm~250nmの範囲から選択される。
【0038】
本発明の実施例によれば、上記疎水性表面コーティング層はプラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスにより上記基体表面に形成される。つまり、製造中に、上記基体表面がプラズマ装置の反応装置の反応チャンバーに暴露され、該チャンバーにプラズマが形成されるとともに、反応原料であるフルオロアルコール及び/又は他の反応物の成長反応により上記疎水性表面コーティング層が上記基体の表面に形成される。
【0039】
プラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスは、既存の他の成長プロセスと比較して多くのメリットがある。(1)乾式成膜では、有機溶剤を使用する必要がなく;(2)基体表面へのプラズマのエッチング効果により、成長された薄膜と基体との結着性が良好になり;(3)不規則な基体の表面に蒸着膜を均一に成長でき、気相浸透性が非常に強く;(4)コーティング層は、意匠性が良く、液相法によるミクロンレベルの制御精度に比べて、化学気相法では、ナノレベルでコーティング層の厚さの制御が可能であり;(5)コーティング層の構造の設計は容易であり、化学気相法では、プラズマの活性化を使用し、異なる材料の複合コーティング層について、特定の開始剤を設定して開始する必要がなく、入力エネルギーのコントロールにより複数種の原材料を複合化することができ;(6)緻密性は良く、化学気相成長法では、プラズマの開始中で複数の活性サイトを活性化することが多く、溶液反応で1つの分子に複数の官能基があり、分子鎖の間に複数の官能基を介して架橋構造が形成されることに類似し;(7)膜蒸着の処理技術手段として、その汎用性が極めて良く、膜蒸着の対象、膜蒸着で使用される原材料の選択の範囲はいずれも広い。
【0040】
上記プラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスは、グロー放電によりプラズマを生成し、放電の方法には、高周波放電、マイクロ放電、中間周波放電、電気火花放電などを含む。
【0041】
さらに、本発明の実施例によれば、反応原料である上記フルオロアルコール化合物は一般式CnF2n+1-CmH2m-OH(式中、nは1~12の整数であり、mは0~4の整数であり、さらに、nは1~8の整数であり、mは2~3の整数である。)を有する。
【0042】
例えば、上記フルオロアルコール化合物反応原料は、パーフルオロブチルエタノール、パーフルオロヘキシルエタノールから選択される1種又は複数種である。
【0043】
本発明の一実施態様において、上記フルオロアルコール化合物の反応原料にはメチレン基弱結合部位が存在する。
【0044】
本発明の一実施態様において、上記フルオロアルコール化合物の反応原料は第一級アルコールである。
【0045】
上記フルオロアルコール化合物の反応ガス原料は架橋剤と気相成長反応して上記疎水性表面コーティング層を形成する。つまり、フルオロアルコール化合物と架橋剤はいずれも反応ガス原料であり、ともに基体の表面に成長して上記疎水性表面コーティング層を形成する。
【0046】
上記架橋剤化合物は、下式のような構造を有する。
(式中、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基から選択される。j、kは0~10の整数であり、且つ同時に0であることができない。R
4は結合、-CO-、-COO-、
アリーリデン基、脂環
アルキリデン基、ヒドロキシ基置換脂肪
アルキリデン基であってもよい。架橋剤は、エステル基、エーテル、エポキシ基、シアノ基を含む多官能基化合物であってもよい。)
【0047】
一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記架橋剤は、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルビニルジメトキシシラン、エンブクリラートからなる群に由来する疎水性表面コーティング層。
【0048】
さらに、本発明の幾つかの実施態様によれば、上記疎水性表面コーティング層を作製する際に、上記反応ガス原料の化学成長反応を活性化するように、反応装置にプラズマ源ガスを導入する。上記プラズマ源ガスは、例えば、不活性ガスであるが、これに限定されなく、不活性ガスは、例えば、He、Arであるが、これに限定されなく、上記プラズマ源ガスは、単一のガスであってもよく、2種以上のガスの混合物であってもよい。上記プラズマ源ガスは、上記反応ガスとともに導入されてもよく、前後に導入されてもよい。上記プラズマ源ガスを導入した後に、さらに上記反応ガス原料を導入することが好ましい。本発明の一実施態様において、上記プラズマ源ガスがなくてもよく、即ち、上記反応ガス原料であるフルオロアルコール化合物及び/又は他の反応ガス原料から上記基体表面に直接成長され、その場合に必要な反応ガス原料の量が増加し、ある程度で反応速度に影響を与えることは勿論である。
【0049】
さらに、本発明の実施例によれば、上記疎水性表面コーティング層の製造手順は、PECVDプロセスを利用して基体表面に疎水ナノコーティング層を作製し、基体を真空又は低圧の反応チャンバーに置いて、最初にプラズマ源ガス、例えば、不活性ガスを導入し、グロー放電によりプラズマを発生させ、その後、上記フルオロアルコール化合物のような反応ガス原料を導入し、反応ガス原料を活性化させて基体表面に化学気相成長反応を生じることができる。このような反応性原料は、常温常圧下でガスとなる化学物質であってもよく、常圧下で沸点350℃未満の液状物質が減圧、加熱などを経て形成される蒸気であってもよい。
【0050】
本発明の実施例によれば、上記疎水性ナノコーティング層が上記プラズマ装置により作製される手順には、以下のステップを含む。
【0051】
1)基体準備
基体に化学気相成長する前には、基体に洗浄処理する必要がある。基体表面のダスト、水分、油脂等は、成長効果に悪影響を及ぼす。最初に基体をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、次にオープンに入れて乾燥する。
【0052】
2)基体への化学気相成長によるナノコーティング層の作製
(1)表面がきれいな基体を上記プラズマ装置又は設備の反応チャンバーに入れ、次に反応チャンバー内での真空度が1~2000mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気する。
【0053】
(2)プラズマ源ガスを導入し、チャンバーで高周波放電又はマイクロ波、紫外線放射等の手段を採用し、チャンバーでプラズマを発生させ、基体に前処理する。
特に,上記プラズマ源ガスが不活性ガス又は反応しにくいガスである場合には、上記プラズマ源ガスは成長して上記疎水性表面コーティング層を形成することがなく、つまり、上記プラズマ源ガスは上記疎水性表面コーティング層の組成部分にならないが、上記プラズマ源の表面での相互作用により、微細なエッチングなどの現象が生じるので、上記基体の表面をよくきれいにし、上記反応ガス原料の成長に良好な成長条件を与え、成長された上記疎水性表面コーティング層をより強固に上記基体の表面に結合させることができる。
【0054】
(3)真空反応チャンバーの圧力、温度を設定し、反応ガス原料及び/又は架橋剤を導入し、反応ガス原料及び架橋剤は、同時に導入されてもよく、前後に導入されてもよい。プラズマ発生電力を1~500Wに調整し、チャンバー温度を10~100℃に調整し、プラズマ化学気相成長を行い、反応終了後、単量体の導入を停止し、チャンバー圧力を常圧に戻す。
【0055】
反応ガス原料は、プラズマ源とともに導入されてもよく、プラズマ源が導入された後に、最初に基体に1~1200sの前処理を行い、次いでプロセスパラメーターの要求に従って反応ガス原料及び架橋剤又は反応ガス原料を導入する。
【0056】
好ましくは、プラズマ源ガスは、不活性ガス、例えば、ヘリウムガスを選択する。
【0057】
上記反応ガス原料は、1種又は複数種のフルオロアルコール化合物である。
【0058】
処理される上記基体は、金属、PCB基板、織物、電子デバイスの表面などであることができる。
【0059】
さらに好ましくは、上記プラズマ装置は、作動電力が1~500wの範囲であり、圧力が10mtorr~500mtorrの範囲であり、温度が30℃~60℃の範囲である。
【0060】
実施例1
本発明にかかるPCB基板用疎水性表面コーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にPCB基板の基体をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたPCB基板を300L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が20mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量20sccmで導入し、高周波放電を開始してPCB基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が120Wであり、放電時間が100sである。
反応ガス原料であるパーフルオロヘキシルエタノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量が150μL/minであり、導入時間が2500sであり、放電電力が200Wであり、放電時のパルス幅が100μsである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、PCB基板を取り出した。これにより、PCB基板には疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0061】
実施例2
本発明にかかる銅片用疎水性表面コーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初に銅片の基体をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥された銅片を500L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量20sccmで導入し、マイクロ波プラズマ放電を開始して銅片に前処理を行い、前処理段階では放電電力が500Wであり、600s持続的に放電した。
反応ガス原料であるパーフルオロブチルエタノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長してナノコーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量が350μL/minであり、マイクロ波プラズマ放電を開始し、放電電力が500Wであり、600s持続的に放電した。
コーティング層の製造終了後に、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、銅片を取り出した。これにより、銅片には疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0062】
実施例3
本発明にかかる織物用疎水性表面コーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初に織物といった基体をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥された織物を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量40sccmで導入し、高周波放電を開始して織物に前処理を行い、前処理段階では放電電力が50Wであり、放電時間が300sである。
最初に1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン(架橋剤)を流量320μL/minで導入し、導入時間を2000sとし、終了後に、さらに反応ガス原料であるパーフルオロヘキシルエタノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長してナノコーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ150μL/minであり、導入時間が3000sであり、放電電力が100Wであり、放電時のパルス幅が200μsである。
コーティング層の製造終了後に、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、織物を取り出した。それにより、織物に疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0063】
実施例4
本発明における電子デバイスに適用する疎水ナノコーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経る:
最初にアセトン又はイソプロパノールで電子デバイス基体に洗浄し、無塵布で拭いて、次に乾燥オープンに入れ24h乾燥する。
乾燥された電子デバイスを1000Lプラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気する。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを導入し、流量が40sccm、高周波放電を開始して電子デバイスを前処理し、前処理段階で放電電力が50W、放電時間が300sとする。
1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン(架橋剤)、反応ガス原料であるパーフルオロヘキシルエタノールを気化した後に同時に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製する。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ320μL/min、150μL/minであり、導入時間が3000sであり、放電電力が100Wであり、放電時のパルス幅が200μsである。
コーティング層製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ,チャンバーを開け、取出電子デバイス。これにより、電子デバイスには疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0064】
実施例5
本発明にかかるPCB基板用疎水ナノコーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にPCB基板といった基体をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたPCB基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量40sccmで導入し、、高周波放電を開始してPCB基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が300Wであり、放電時間が100sである。
最初に1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン(架橋剤)を流量300μL/minで導入し、導入時間を2000sとし、終了後に、さらに反応ガス原料であるパーフルオロブチルエタノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ200μL/minであり、導入時間が3000sであり、放電電力が300Wであり、放電時のパルス幅が200μsである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ,チャンバーを開け、PCB基板を取り出した。これにより、PCB基板には疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0065】
実施例6
本発明にかかるPCB基板用疎水ナノコーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にPCB基板といった基体をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたPCB基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量40sccmで導入し、高周波放電を開始してPCB基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が300Wであり、放電時間が100sである。
1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン(架橋剤)、反応ガス原料であるパーフルオロブチルエタノールを気化した後に、同時に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ300μL/min、200μL/minであり、導入時間が3000sであり、放電電力が300Wであり、放電時のパルス幅が200μsである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ,チャンバーを開け、PCB基板を取り出した。それにより、PCB基板に疎水ナノコーティング層を蒸着した。
【0066】
特に、上記実施例において、それぞれPCB基板、銅片、織物、電子デバイスを基体として明細書に記載の疎水性表面コーティング層の形成過程を例示するが、本発明の他の実施例において、他の基体にプラズマ強化化学気相成長し、上記疎水性表面コーティング層を形成してもよく、本発明はこの点で限定されない。
【0067】
さらに、上記実施例のパラメーターを検出した。
疎水性表面コーティング層の厚さは、米国フィルメトリクス F20-UV-膜厚計を使用して検出した。
疎水性表面コーティング層の水接触角は、GB/T 30447-2013規格に従って測定された。
耐塩水噴霧試験は、GB/T 2423.18-2000に記載の電気電子製品環境試験方法に従って測定された。
【0068】
表1:実施例1~6の各性能パラメーター
注:実施例3では、織物であり、耐塩水噴霧試験が行っていない。
【0069】
本発明の技術によれば、異なる基材表面に適用できる疎水性表面コーティング層を得ることができる。プラズマ化学気相成長法により、パーフルオロアクリレート系の適用による効果と類似する疎水ナノ膜を得た。架橋剤を加えることにより、コーティング層の耐塩水噴霧性能を向上させることができる。
【0070】
本発明は、疎水性表面コーティング層を提供しており、上記疎水性表面コーティング層は、1種又は複数種のフルオロアルコールを原材料として形成される。さらに、上記疎水性表面コーティング層は、1種又は複数種のフルオロアルコールを原材料としてプラズマ強化化学気相成長により基体の表面に形成される。
【0071】
さらに、上記疎水性表面コーティング層は、ガラス基体の表面に成長され、ガラス基体の表面性能を改善するのにより適している。
【0072】
上記疎水性表面コーティング層は、良好な疎水性、光透過率及び耐摩耗性を有する。さらに、上記疎水性表面コーティング層は、良好な疎水性・疎油性を有し、水が上記防水ナノ膜に付着される場合は、水の静的接触角は、100°を超え、例えば、静的接触角は、100°~105°、105°~110°、110°~115°、115°~120°の範囲である。例えば、水の静的接触角は、107°、109°、110°、114°、115°、116°、120°である。上記疎水性表面コーティング層は、良好な耐食性を有し、例えば、上記疎水性表面コーティング層が基体表面に成長された後に、基体が良好な耐摩耗性を有し、後の具体的な実施例に示すようになる。
【0073】
上記疎水性表面コーティング層は、小さな厚さを有し、基体の表面使用に影響を及ぼさず、その厚さが例えば10~1000nmの範囲であるが、これに限定されない。例えば、上記疎水性表面コーティング層の厚さが、150nm~170nm、170nm~190nm、190nm~210nm、210nm~230nm又は230nm~250nmの範囲から選択される。例えば,上記疎水性表面コーティング層の厚さが、170nm、185nm、190nm、195nm、200nm、220nm、235nmである。
【0074】
本発明の実施例によれば、上記疎水性表面コーティング層がプラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスにより上記基体表面に形成される。つまり、製造中に、上記基体表面がプラズマ装置の反応装置の反応チャンバーに晒され、該チャンバーにプラズマが形成されるとともに、反応原料であるフルオロアルコール及び/又は他の反応物の成長反応により上記疎水性表面コーティング層を上記基体の表面に形成される。
【0075】
プラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスは、既存の他の成長プロセスと比較して多くのメリットがある。(1)乾式成膜では、有機溶剤を使用する必要がなく;(2)基体表面へのプラズマのエッチング効果により、成長された薄膜と基体との結着性が良好になり;(3)不規則な基体表面に蒸着膜を均一に成長でき、気相浸透性が非常に強く;(4)コーティング層は、意匠性が良く、液相法によるミクロンレベルの制御精度に比べて、化学気相法では、ナノレベルでコーティング層の厚さの制御が可能であり;(5)コーティング層の構造の設計は容易になり、化学気相法では、プラズマの活性化を使用し、異なる材料の複合化コーティング層について、特定の開始剤を設定して開始する必要がなく、入力エネルギーのコントロールにより複数種の原材料を複合化することができ;(6)緻密性は良く、化学気相成長法では、プラズマ発生開始中で複数の活性サイトを活性化することが多く、溶液反応で1つの分子に複数の官能基があり、分子鎖の間に複数の官能基を介して架橋構造が形成されることに類似し;(7)膜蒸着の処理技術及び手段として、その汎用性が極めて良く、膜蒸着の対象や膜蒸着で使用される原材料の選択の範囲はいずれも広い。
【0076】
上記プラズマ強化化学気相成長(PECVD)プロセスは、グロー放電によりプラズマを生成し、放電の方法には、高周波放電、マイクロ波放電、中間周波放電、電気火花放電などを含む。
【0077】
さらに、本発明の実施例によれば、反応原料である上記フルオロアルコール化合物は一般式OH-CnHmF2n+1-m(式中、n>m+1)を有する。
【0078】
特に、一般式OH-CnHmF2n+1-m(ここで、n>m+1)を有するフルオロアルコールは、プラズマ強化化学気相成長によりガラス基板の表面に成長されて適用されるのにより適して、成長中に、プラズマがガラス表面に作用し、その表面にシラノール基を形成させ、原料であるフルオロアルコール中のヒドロキシ基と作用しやすく、上記疎水性表面コーティング層と基体表面との結合がより強固になるため、より優れた表面性能を示す。一方、上記基体の材料構造は処理された後にヒドロキシ基の性質を示すと、上記一般式を満たすフルオロアルコール化合物と上記基体とは、より優れた上記疎水性表面コーティング層を形成しやすくなる。
【0079】
例えば、上記フルオロアルコール化合物反応原料は、パーフルオロヘキシルエタノール、パーフルオロブチルエタノール、パーフルオロブチルプロパノール、パーフルオロヘキシルプロパノール、1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキサン-1-オール、3-(ジフルオロメチル)-2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-1-オールから選択される1種又は複数種である。
【0080】
幾つかの実施態様において、上記フルオロアルコール化合物の反応ガス原料は架橋剤と気相成長反応して上記疎水性表面コーティング層を形成した。つまり、フルオロアルコール化合物及び架橋剤はいずれも反応ガス原料であり、ともに基体の表面に成長して上記疎水性表面コーティング層を形成した。
【0081】
上記架橋剤化合物は、下式のような構造を有する。
(ここで、R
1、R
2、R
3、R
5、R
6、R
7はそれぞれ独立して、水素、アルキル基、アリール基、ハロゲン、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基から選択される。j、kは0~10の整数であり、且つ同時に0であることができない。R
4は結合、-CO-、-COO-、
アリーリデン基、脂環
アルキリデン基、ヒドロキシ基置換脂肪
アルキリデン基であってもよい。架橋剤は、エステル基、エーテル、エポキシ基、シアノ基を含む多官能基化合物であってもよい。)
【0082】
一実施態様に記載の疎水性表面コーティング層において、上記架橋剤が、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロへキサン、3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルビニルジメトキシシラン、エンブクリラートからなる群に由来する疎水性表面コーティング層。
【0083】
さらに、本発明の幾つかの実施態様において、上記疎水性表面コーティング層を作製する際に、反応装置に上記反応ガス原料の化学成長反応を活性化するためのプラズマ源ガスを導入した。上記プラズマ源ガスは、例えば、不活性ガスであるが、これに限定されなく、不活性ガスは、例えば、He、Arであるが、これに限定されない。上記プラズマ源ガスは、単一のガスであってもよく、2種以上のガスの混合物であってもよい。上記プラズマ源ガスは、上記反応ガスとともに導入されてもよく、前後に導入されてもよい。上記プラズマ源ガスを導入した後に、さらに上記反応ガス原料を導入することが好ましい。本発明の一実施態様において、上記プラズマ源ガスがなくてもよく、即ち、上記反応ガス原料であるフルオロアルコール化合物及び/又は他の反応ガス原料から上記基体表面に直接成長され、その場合に必要な反応ガス原料の量が増加し、ある程度で反応速度に影響を与えることは勿論である。
【0084】
さらに、本発明の実施例によれば、上記疎水性表面コーティング層の製造手順は、PECVDプロセスを利用して基体表面に疎水ナノコーティング層を作製し、基体を真空又は低圧の反応チャンバーに置いて、最初に不活性ガスのようなプラズマ源ガスを導入し、グロー放電によりプラズマを発生させた後、上記フルオロアルコール化合物のような反応ガス原料を導入し、反応ガス原料を活性化させて基体表面に化学気相成長反応を生じることができる。このような反応性原料は、常温常圧下でガスとなる化学物質であってもよく、常圧下で沸点350℃未満の液状物質が減圧、加熱などを経て形成される蒸気であってもよい。
【0085】
本発明の実施例によれば、上記疎水性ナノコーティング層が上記プラズマ装置により作製される手順には、いかのステップを含む。
【0086】
1)基体準備
基体に化学気相成長する前には、基体を洗浄処理する必要がある。基体表面のダスト、水分、油脂等は成長効果に悪影響を及ぼす。最初にアセトン又はイソプロパノールで基体を洗浄し、次にオープンに入れて乾燥した。
【0087】
2)基体に化学気相成長してナノコーティング層を作製した。
(1)表面がきれいな基体を上記プラズマ装置又は設備の反応チャンバーに入れ、次に反応チャンバー内の真空度が1~2000mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
【0088】
(2)プラズマ源ガスを導入し、チャンバーで高周波放電又はマイクロ波、紫外線放射等の手段を採用し、チャンバーでプラズマを発生させ、基体に前処理を行った。
特に、上記プラズマ源ガスが不活性ガス、又は反応しにくいガスである場合には、上記プラズマ源ガスは、成長して上記疎水性表面コーティング層を形成することがなく、つまり、上記プラズマ源ガスは、上記疎水性表面コーティング層の組成部分にならないが、上記プラズマ源の表面での相互作用により、微細なエッチングなどの現象が生じるので、上記基体の表面をよくきれいにし、上記反応ガス原料の成長に良好な成長条件を与え、成長された上記疎水性表面コーティング層を上記基体の表面により強固に結合させることができる。
【0089】
(3)真空反応チャンバーの圧力、温度を設定し、反応ガス原料及び/又は架橋剤を導入し、反応ガス原料及び架橋剤は、同時に導入されてもよく、前後に導入されてもよい。プラズマ発生電力を1~500Wに調整し、チャンバー温度を10~100℃に調整し、プラズマ化学気相成長を行い、反応終了後,単量体の導入を停止し、チャンバー圧力を常圧に戻した。
【0090】
反応ガス原料は、プラズマ源とともに導入されてもよく、プラズマ源が導入された後に、基体に1~1200sの前処理を行い、次いでプロセスパラメーターの要求に従って反応ガス原料及び架橋剤又は反応ガス原料を導入した。
【0091】
プラズマ源ガスは、不活性ガス、例えば、ヘリウムガス、アルゴンガスを選択することが好ましい。
【0092】
上記反応ガス原料は、1種又は複数種のフルオロアルコール化合物である。
【0093】
処理された上記基体は、ガラス基板であることが好ましい。
【0094】
上記プラズマ装置は、作動電力が1~500wの範囲であり、圧力が10mtorr~500mtorrの範囲であり、温度が30℃~60℃の範囲であることがさらに好ましい。
【0095】
実施例a1
本発明にかかるガラス基板用疎水性表面コーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にガラス基板をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたガラス基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるアルゴンガスを流量20sccmで導入し、高周波放電を開始してガラス基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が50Wであり、放電時間が300sである。
反応ガス原料であるパーフルオロブチルエタノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量が260μL/minであり、放電時間が3300sであり、放電時のパルス幅が3msであり、放電電力が100Wである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、ガラス基板を取り出した。これにより、ガラス基板に疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0096】
比較例a1
実施例a1と同様の条件下で、ガラス基板の代わりにPCB基板を使用して、膜蒸着工程を行った。
【0097】
実施例a2
本発明にかかるガラス基板用疎水性表面コーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にガラス基板をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたガラス基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が100mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるアルゴンガスを流量20sccmで導入し、高周波放電を開始してガラス基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が200Wであり、600s持続的に放電した。
反応ガス原料であるパーフルオロヘキシルエタノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、ガラス基板の表面に化学気相成長してナノコーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量が500μL/minであり、放電電力が300Wであり、放電時間が2500sであり、放電時のパルス幅が100usである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ,チャンバーを開け、銅片を取り出した。これにより、ガラス基板に疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0098】
比較例a2
実施例a2と同様の条件下で、ガラス基板の代わりにPCB基板を使用して、膜蒸着工程を行った。
【0099】
実施例a3
本発明にかかるガラス基板用疎水性表面コーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にガラス基板をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたガラス基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が40mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量40sccmで導入し、マイクロ放電を開始してガラス基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が500Wであり、放電時間が600sである。
反応ガス原料であるパーフルオロブチルプロパノールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長してナノコーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ400μL/minであり、マイクロ放電電力が500Wであり、放電時間が1200sである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、織物を取り出した。これにより、ガラス基板に疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0100】
比較例a3
実施例a3の同一条件で、ガラス基板の代わりにPCB基板を使用して、膜蒸着工程を行った。
【0101】
実施例a4
本発明にかかるガラス基板用疎水ナノコーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にガラス基板をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたガラス基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が40mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量40sccmで導入し、マイクロ放電を開始してガラス基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が500Wであり、放電時間が600sである。
反応ガス原料であるパーフルオロヘキシルプロパノールを気化した後に同時に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ350μL/minであり、マイクロ放電電力が500Wであり、放電時間が1200sである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、ガラス基板を取り出した。これにより、ガラス基板に疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0102】
比較例a4
実施例a4と同様の条件下で、ガラス基板の代わりにPCB基板を使用して、膜蒸着工程を行った。
【0103】
実施例a5
本発明にかかるガラス基板用疎水ナノコーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にガラス基板をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたガラス基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が300mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるアルゴンガスを流量80sccmで導入し、高周波放電を開始してガラス基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が500Wであり、放電時間が3000sである。
反応ガス原料である1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ウンデカフルオロヘキサン-1-オールを気化した後に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ1000μL/minであり、持続放電時間が3000sであり、放電電力が500Wである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、ガラス基板を取り出した。これにより、ガラス基板に疎水性表面コーティング層を蒸着した。
【0104】
比較例a5
実施例a5と同様の同条件下で、ガラス基板の代わりにPCB基板を使用して、膜蒸着工程を行った。
【0105】
実施例a6
本発明にかかるガラス基板用疎水ナノコーティング層及び製造方法であって、以下のステップを経たものである。
最初にガラス基板をアセトン又はイソプロパノールで洗浄し、無塵布できれいに拭いて、次にオープンに入れて24h乾燥した。
乾燥されたガラス基板を1000L プラズマ真空反応チャンバーに置いて、真空度が80mtorrになるように反応チャンバーを連続的に排気した。
プラズマ源ガスであるヘリウムガスを流量300sccmで導入し、高周波放電を開始してガラス基板に前処理を行い、前処理段階では放電電力が500Wであり、放電時間が3000sである。
反応ガス原料である3-(ジフルオロメチル)-2,3,4,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン-1-オールを気化した後に同時に反応チャンバーに導入し、基材表面に化学気相成長して疎水性表面コーティング層を作製した。コーティング層の製造中には、単量体の蒸気流量がそれぞれ1000μL/minであり、持続放電時間が3000sであり、放電電力が500Wである。
コーティング層の製造終了後、圧縮空気を導入し、反応チャンバーを常圧に戻させ、チャンバーを開け、ガラス基板を取り出した。これにより、ガラス基板に疎水ナノコーティング層を蒸着した。
【0106】
比較例a6
実施例a6と同様の条件下で、ガラス基板の代わりにPCB基板を使用して、膜蒸着工程を行った。
【0107】
実施例a7
実施例a6と同様の条件下で、反応ガス原料に架橋剤である3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピルビニルジメトキシシランを添加し、膜の蒸着過程を行う。
【0108】
実施例a8
実施例a6と同じ条件で、反応ガス原料に架橋剤であるメタクリル酸グリシジルを添加し、膜蒸着工程を行った。
【0109】
さらに、上記実施例にかかるパラメーターを検出した。
疎水性表面コーティング層の厚さは、米国フィルメトリクス F20-UV-膜厚計を使用して検出した。
疎水性表面コーティング層の水接触角は、GB/T 30447-2013規格に従って測定された。
疎水性表面コーティング層の耐摩耗性は、XM-860耐摩耗試験机を使用して検出した。
疎水性表面コーティング層の光透過率は、イギリスLambda950紫外可視分光光度計を使用して検出した。
【0110】
表1:実施例a1~a8及び比較例a1~a6の各性能パラメーター
【0111】
上記実施例a1~a6では、それぞれに好ましい、異なるフルオロアルコール系フルオロカーボン化合物を反応ガス原料として、プラズマ強化化学成長法により、特定の条件下でガラス基板の表面に上記疎水性表面コーティング層を成長しており、検出結果から、各実施例において、ガラス基体の表面に形成された上記疎水性表面コーティング層は、全体として水の静的接触角が大きくなり、即ち、良好な疎水性能を有し、良好な耐摩耗性も有することを示した。
【0112】
比較例a1~a6と、対応する実施例a1~a6とは条件が一致する場合には、それぞれにPCB基板を基体として成長して疎水性表面コーティング層を形成し、対応する実施例と比べて、同様の反応ガス原料、基本的に一致する条件下で、PCB基材を選択する時に、その疎水性及び耐摩耗性はいずれも低減され、即ち、該反応ガス原料がガラス基板への成長により適しているか、或いは、それをガラス基板と配合するときに性能がより良くなることを示した。
【0113】
実施例a7及びa8は、それぞれ実施例a6と一致する条件下で異なる架橋剤を添加したものであり、実施例a6とa7とa8の比較から、架橋剤の添加では、ある程度で上記疎水性表面コーティング層の性能をさらに最適化できることを示した。
【0114】
本発明の技術的形態において、プラズマ強化化学気相成長法により、特定の一般式を満たすフルオロアルコール系から反応ガス原料として、ガラス基板の表面に成長され、上記疎水性表面コーティング層が形成され、フルオロアルコール系の特性に応じてガラス基板と互いに配合し、性能のより優れた表面コーティング層が形成されており、他の成長材料又は他の基体よりも優れた表面改質効果を有し、しかも、幾つかの実施態様において、架橋剤を添加することによりコーティング層の性能をさらに改善できる。
【0115】
当業者は、上記説明に示される本発明の実施例は単なる例であり、本発明を限定するものではないことを理解すべきである。本発明の優位点は、十分かつ効果的に達成された。本発明の機能及び構造原理は実施例に示され、説明されており、上記原理から逸脱することなく、本発明の実施形態に任意の変更又は修正があることができる。