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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
G01L3/14 L
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022508303
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2021009960
(87)【国際公開番号】W WO2021187342
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020049389
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508319990
【氏名又は名称】株式会社グローセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 亮二
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203645(JP,A)
【文献】特開2006-220574(JP,A)
【文献】特開2016-070673(JP,A)
【文献】特開2020-012657(JP,A)
【文献】特開2019-184466(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04208522(DE,A1)
【文献】特開2019-066373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10
G01L 3/14
G01L 5/16-5/173
B25J 17/00
B25J 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪部と、
外輪部と、
前記内輪部と前記外輪部とを接続する複数の接続部と、
歪を抵抗値の変化として捉える複数の歪センサと、
を備える、トルクセンサであって
前記複数の接続部は、
前記内輪部の内輪中心を通る第1仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、前記内輪中心に対して互いに反対側に配置された第1接続部および第3接続部と、
前記内輪部の前記内輪中心を通る第2仮想線であって前記第1仮想線と直交する前記第2仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、前記内輪中心に対して互いに反対側に配置された第2接続部および第4接続部と、
を有し、
前記複数の歪センサは、
前記第1接続部上に配置された第1歪センサと、
前記第2接続部上に配置された第2歪センサと、
前記第3接続部上に配置された第3歪センサと、
前記第4接続部上に配置された第4歪センサと、
を有し、
前記複数の歪センサのそれぞれは、
平面視において第3仮想線と重なる半導体基板と、
前記半導体基板に形成された複数の抵抗素子と、
を有し、
前記複数の抵抗素子は、
第1抵抗素子と、
第2抵抗素子と、
を含み、
前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子とのなす第1角度は、直角であり、
前記第3仮想線は、前記第1角度を二等分する方向に延在し、
前記複数の歪センサのうちの前記第1歪センサは、前記第3仮想線が前記第1仮想線と一致するように前記第1接続部上に配置され、
前記複数の歪センサのうちの前記第2歪センサは、前記第3仮想線が前記第2仮想線と一致するように前記第2接続部上に配置され、
前記複数の歪センサのうちの前記第3歪センサは、前記第3仮想線が前記第1仮想線と一致し、かつ、前記内輪中心に対して前記第3歪センサの前記第1抵抗素子が前記第1歪センサの前記第1抵抗素子と点対称になり、かつ、前記内輪中心に対して前記第3歪センサの前記第2抵抗素子が前記第1歪センサの前記第2抵抗素子と点対称となるように前記第3接続部上に配置され、
前記複数の歪センサのうちの前記第4歪センサは、前記第3仮想線が前記第2仮想線と一致し、かつ、前記内輪中心に対して前記第4歪センサの前記第1抵抗素子が前記第2歪センサの前記第1抵抗素子と点対称になり、かつ、前記内輪中心に対して前記第4歪センサの前記第2抵抗素子が前記第2歪センサの前記第2抵抗素子と点対称となるように前記第4接続部上に配置され、
前記複数の抵抗素子は、
第3抵抗素子と、
第4抵抗素子と、
を含み、
前記第3抵抗素子と前記第4抵抗素子とのなす第2角度は、直角であり、
前記第3仮想線は、前記第2角度を二等分する方向に延在し、
前記トルクセンサは、前記複数の歪センサからの出力に基づいて、前記半導体基板の主面に対する法線軸回りのトルクを算出する算出部を有し、
前記算出部は、
前記第1歪センサにおける前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との差分と前記第1歪センサにおける前記第3抵抗素子の抵抗値と前記第4抵抗素子の抵抗値との差分とを加算した第1合計と、
前記第2歪センサにおける前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との差分と前記第2歪センサにおける前記第3抵抗素子の抵抗値と前記第4抵抗素子の抵抗値との差分とを加算した第2合計と、
前記第3歪センサにおける前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との差分と前記第3歪センサにおける前記第3抵抗素子の抵抗値と前記第4抵抗素子の抵抗値との差分とを加算した第3合計と、
前記第4歪センサにおける前記第1抵抗素子の抵抗値と前記第2抵抗素子の抵抗値との差分と前記第4歪センサにおける前記第3抵抗素子の抵抗値と前記第4抵抗素子の抵抗値との差分とを加算した第4合計と、
を加算した合計出力に基づいて、前記内輪部に垂直な法線軸回りのトルクを算出する、トルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサおよびロボット関節構造に関し、例えば、ロボット関節構造の構成部品となるトルクセンサに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-80841号公報(特許文献1)には、ロボットアームの関節で他軸干渉により生じたセンサの検出誤差を補正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-80841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の労働人口の減少を受けて、様々な分野で多関節ロボットを活用することが見込まれている。ところが、多関節ロボットを人間の労働力に置き換えるためには、克服すべき様々な課題が存在するのが現状である。
【0005】
例えば、人間の傍で人間と共同作業させるための多関節ロボット、すなわち、協働ロボットと呼ばれるロボットを活用しようとする場合、人間と多関節ロボットとの接触を高感度に検知する必要がある。なぜなら、多関節ロボットが誤って人間と接触することによって人間を傷つけることを防止するために、人間とのわずかな接触反力を検知して、多関節ロボットの動作を急停止させる必要があるからである。
【0006】
したがって、人間と共同作業させるための多関節ロボットには、人間とのわずかな接触反力を検知するために、特に、ロボットアームに作用する力(トルクも含む)のうち駆動軸回りに作用するトルクを検出するトルクセンサが搭載されている。
【0007】
このトルクセンサには、人間とのわずかな接触反力を検知するために、駆動軸回りに作用するトルクを高感度に検出することが要求されるが、現状の技術では、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音を充分に低減することが困難である結果、駆動軸回りに作用するトルクを高感度に検出するトルクセンサが望まれている。つまり、駆動軸回りに作用するトルクを検出するトルクセンサにおいて、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音を小さくする工夫が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、駆動軸回りに作用するトルクを高感度に検出することができるトルクセンサを提供することにある。
【0009】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態におけるトルクセンサは、内輪部と、外輪部と、内輪部と外輪部とを接続する複数の接続部と、歪を抵抗値の変化として捉える複数の歪センサとを備える。
【0011】
ここで、複数の接続部は、内輪部の内輪中心を通る第1仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心に対して互いに反対側に配置された第1接続部および第3接続部と、内輪部の内輪中心を通る第2仮想線であって第1仮想線と直交する第2仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心に対して互いに反対側に配置された第2接続部および第4接続部とを有する。
【0012】
そして、複数の歪センサは、第1接続部上に配置された第1歪センサと、第2接続部上に配置された第2歪センサと、第3接続部上に配置された第3歪センサと、第4接続部上に配置された第4歪センサとを有する。
【0013】
このとき、複数の歪センサのそれぞれは、平面視において第3仮想線と重なる半導体基板と、半導体基板に形成された複数の抵抗素子とを有し、複数の抵抗素子は、第1抵抗素子と、第2抵抗素子とを含む。第1抵抗素子と第2抵抗素子とのなす第1角度は、直角であり、第3仮想線は、第1角度を二等分する方向に延在する。
【0014】
ここで、複数の歪センサのうちの第1歪センサは、第3仮想線が第1仮想線と一致するように第1接続部上に配置され、複数の歪センサのうちの第2歪センサは、第3仮想線が第2仮想線と一致するように第2接続部上に配置されている。
【0015】
一方、複数の歪センサのうちの第3歪センサは、第3仮想線が第1仮想線と一致し、かつ、内輪中心に対して第3歪センサの第1抵抗素子が第1歪センサの第1抵抗素子と点対称になり、かつ、内輪中心に対して第3歪センサの第2抵抗素子が第1歪センサの第2抵抗素子と点対称となるように第3接続部上に配置され、複数の歪センサのうちの第4歪センサは、第3仮想線が第2仮想線と一致し、かつ、内輪中心に対して第4歪センサの第1抵抗素子が第2歪センサの第1抵抗素子と点対称になり、かつ、内輪中心に対して第4歪センサの第2抵抗素子が第2歪センサの第2抵抗素子と点対称となるように第4接続部上に配置されている。
【0016】
また、変形例におけるトルクセンサは、内輪部と、外輪部と、内輪部と外輪部とを接続する複数の接続部と、歪を抵抗値の変化として捉える複数の歪センサとを備える。
【0017】
ここで、複数の接続部は、内輪部の内輪中心を通る第1仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心に対して互いに反対側に配置された第1接続部および第4接続部と、内輪部の内輪中心を通る第2A仮想線であって第1仮想線と内輪中心で交差する第2A仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心に対して互いに反対側に配置された第2接続部および第5接続部と、内輪部の内輪中心を通る第2B仮想線であって第1仮想線と内輪中心で交差する第2B仮想線上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心に対して互いに反対側に配置された第3接続部および第6接続部を有する。
【0018】
そして、複数の歪センサは、第1接続部上に配置された第1歪センサと、第2接続部上に配置された第2歪センサと、第3接続部上に配置された第3歪センサと、第4接続部上に配置された第4歪センサと、第5接続部上に配置された第5歪センサと、第6接続部上に配置された第6歪センサを有する。
【0019】
このとき、複数の歪センサのそれぞれは、平面視において第3仮想線と重なる半導体基板と、半導体基板に形成された複数の抵抗素子とを有し、複数の抵抗素子は、第1抵抗素子と、第2抵抗素子とを含む。第1抵抗素子と第2抵抗素子とのなす第1角度は、直角であり、第3仮想線は、第1角度を二等分する方向に延在する。
【0020】
ここで、複数の歪センサのうちの第1歪センサは、第3仮想線が第1仮想線と一致するように第1接続部上に配置され、複数の歪センサのうちの第2歪センサは、第3仮想線が第2A仮想線と一致するように第2接続部上に配置され、複数の歪センサのうちの第3歪センサは、第3仮想線が第2B仮想線と一致するように第2接続部上に配置されている。
【0021】
一方、複数の歪センサのうちの第4歪センサは、第3仮想線が第1仮想線と一致し、かつ、内輪中心に対して第4歪センサの第1抵抗素子が第1歪センサの第1抵抗素子と点対称になり、かつ、内輪中心に対して第4歪センサの第2抵抗素子が第1歪センサの第2抵抗素子と点対称となるように第4接続部上に配置され、複数の歪センサのうちの第5歪センサは、第3仮想線が第2A仮想線と一致し、かつ、内輪中心に対して第5歪センサの第1抵抗素子が第2歪センサの第1抵抗素子と点対称になり、かつ、内輪中心に対して第5歪センサの第2抵抗素子が第2歪センサの第2抵抗素子と点対称となるように第5接続部上に配置され、複数の歪センサのうちの第6歪センサは、第3仮想線が第2B仮想線と一致し、かつ、内輪中心に対して第6歪センサの第1抵抗素子が第3歪センサの第1抵抗素子と点対称になり、かつ、内輪中心に対して第6歪センサの第2抵抗素子が第3歪センサの第2抵抗素子と点対称となるように第6接続部上に配置されている。
【発明の効果】
【0022】
一実施の形態におけるトルクセンサによれば、駆動軸回りに作用するトルクを高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ロボットシステムの一例を示す模式図である。
図2】ロボット関節構造を模式的に示す図である。
図3】関連技術におけるロボット関節構造を示す模式図である。
図4】座標軸の設定例を示す模式図である。
図5】実施の形態におけるトルクセンサの構成を示す平面図である。
図6図5のA-A線で切断した断面図である。
図7】実施の形態における基本思想をわかりやすく説明する表である。
図8】実施の形態における歪センサを示す平面図である。
図9】4個の歪センサの配置を示す平面図である。
図10】トルクセンサにy軸回りのy軸トルクが加わった場合の4個の歪センサのそれぞれに形成されている抵抗素子に加わる歪を示す模式図である。
図11】トルクセンサにy軸方向の力が加わった場合の4個の歪センサのそれぞれに形成されている抵抗素子に加わる歪を示す模式図である。
図12】トルクセンサにz軸回りのz軸トルクが加わった場合の4個の歪センサのそれぞれに形成されている抵抗素子に加わる歪を示す模式図である。
図13】算出部の機能ブロック図である。
図14】算出部の動作を説明するフローチャートである。
図15】y軸回りのy軸トルクを加えた際における4個の歪センサのそれぞれからの出力を示すグラフである。
図16】y軸回りのy軸トルクを加えた際における4個の歪センサからの合計出力を示すグラフである。
図17】z軸回りにz軸トルクを加えた状態で、さらにy軸回りのy軸トルクを加えた際における4個の歪センサからの出力の平均値の変化を示すグラフである。
図18】実施の形態におけるトルクセンサを適用したロボット関節構造を模式的に示す図である。
図19】実施の形態におけるトルクセンサを適用したロボット関節構造の変形例を模式的に示す図である。
図20】実施の形態におけるトルクセンサを適用したロボット関節構造の変形例を模式的に示す図である。
図21】実施の形態におけるトルクセンサを適用したロボット関節構造を模式的に示す図である。
図22】トルクセンサとリンクとの接続部位の拡大図である。
図23図22の矢印方向から見た模式図である。
図24図23のA-A面から見た模式図である。
図25図23のB-B面から見た模式図である。
図26】面圧と静止摩擦係数との関係を定性的に示すグラフである。
図27】(a)は、トルクセンサにトルクや力が加わることにより、ボルトが変形する様子を示す図であり、(b)は、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生する様子を示す図である。
図28】(a)および(b)は、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生すると、トルクセンサでの駆動軸回りのトルクの検出精度が不安定となるメカニズムを説明するための図である。
図29】トルクセンサでのトルク検出精度の安定性を向上させるための工夫点を説明するための図である。
図30】変形例におけるトルクセンサの構成を示す平面図である。
図31】変形例への基本思想の適用例を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0025】
<ロボットシステム>
図1は、ロボットシステムの一例を示す模式図である。
【0026】
図1に示すように、ロボットシステム1は、例えば、多関節ロボットアームとして構成されたロボットアーム10と、ロボットアーム10の動作を制御するロボット制御部11とを備えている。ロボットアーム10は、回転可能な複数の関節構造を有しており、これらの複数の関節構造は、ロボット制御部11で制御されるように構成されている。そして、ロボットアーム10の先端部には、例えば、電動ハンドなどから構成されるエンドエフェクタが接続されている。このように構成されているロボットシステム1においては、ロボット制御部11によって、ロボットアーム10の関節構造の動作とエンドエフェクタとの動作が制御される。これにより、ロボットアーム10でワークを操作することができる。
【0027】
<ロボット関節構造>
次に、ロボットアーム10に含まれるロボット関節構造について説明する。
【0028】
図2は、ロボット関節構造を模式的に示す図である。
【0029】
図2において、ロボット関節構造20は、ロボットアーム10のリンク21Aとロボットアーム10のリンク21Bとを連結する構造である。具体的に、リンク21Aの内部には、モータ22が配置されており、モータ22には、減速機23が接続されている。このモータ22と減速機23とがロボット関節構造20の駆動部24を構成している。そして、減速機23には、トルクセンサ30が接続されており、このトルクセンサ30には、リンク21Bが接続されている。また、減速機23とトルクセンサ30との間には、潤滑部材25が設けられている。このように構成されているロボット関節構造20では、駆動部24を構成するモータ22を回転させることにより、駆動部24を構成する減速機23と接続されたトルクセンサ30とリンク21Bとが一体的に駆動軸回りを回転する。
【0030】
<改善の検討>
ここで、トルクセンサ30は、駆動軸回りにリンク21Bを回転させたときの駆動軸回りのトルクを検出する機能を有している。具体的に、トルクセンサ30は、駆動軸回りにリンク21Bを回転させたときに変形するように構成されており、この変形に基づく歪を電気抵抗値の変化(電圧の変化)によって検出し、検出した電気抵抗値の変化に基づいて駆動軸回りのトルクを算出するように構成されている。
【0031】
しかしながら、トルクセンサ30の変形は、駆動軸回りのトルクだけでなく、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力によっても生じる。このことは、トルクセンサ30で検出した電気抵抗値の変化には、駆動軸回りのトルクに基づく歪に由来する変化だけでなく、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に基づく歪に由来する変化も含まれていることを意味する。つまり、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に基づく歪に由来する電気抵抗値の変化は、駆動軸回りのトルクを算出する際の雑音となる。したがって、トルクセンサ30において、駆動軸回りのトルクを高感度に検出するためには、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音を充分に低減する必要がある。すなわち、駆動軸回りに作用するトルクを高精度に検出するためのトルクセンサ30には、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音を小さくすることが望まれている。
【0032】
この点に関し、例えば、以下に示す関連技術がある。本明細書でいう「関連技術」は、新規に発明者が見出した課題を有する技術であって、公知である従来技術ではないが、新規な技術的思想の前提技術(未公知技術)を意図して記載された技術である。
【0033】
図3は、関連技術におけるロボット関節構造を示す模式図である。
【0034】
図3に示すように、関連技術におけるロボット関節構造20Aでは、駆動部24を構成する減速機23とトルクセンサ30との間にベアリング部材26が設けられている。このベアリング部材26は、トルクセンサ30とともに駆動軸回りに回転可能である一方、トルクセンサ30を固定支持するように構成されている。すなわち、関連技術において、トルクセンサ30は、ベアリング部材26によって固定支持されていることによって、駆動軸回り以外に変形しにくくなるように構成されている。この結果、関連技術では、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因するトルクセンサ30の変形が起こりにくくなることになる。このことは、関連技術によれば、トルクセンサ30で駆動軸回りのトルクを検出する際、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音を低減することができることを意味する。すなわち、関連技術によれば、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができると考えられる。
【0035】
ただし、関連技術では、トルクセンサ30を固定支持するベアリング部材26を新たに設ける必要があることから、ロボット関節構造20Aの質量が大きくなる。つまり、ロボット関節構造20Aの質量は小さいことが望ましいが、関連技術では、ロボット関節構造20Aの質量が大きくなってしまい、ロボット関節構造20Aの動作が鈍くなるおそれがある。さらには、ベアリング部材26を新たに設ける必要があるため、ロボット関節構造20Aの部品コストが上昇することになる。したがって、関連技術では、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができる一方で、ロボット関節構造20Aの動作機敏性の向上と部品コストの低減の観点から改善の余地が存在することがわかる。
【0036】
そこで、本実施の形態では、ベアリング部材26を用いることなく、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができるトルクセンサ30を実現するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想について説明する。
【0037】
<座標軸の設定>
まず、座標軸の設定例について説明する。
【0038】
図4は、座標軸の設定例を示す模式図である。図4に示すように、3次元座標として互いに直交するx軸とy軸とz軸とを設定する。そして、x軸方向に働く力を「Fx」で表し、y軸方向に働く力を「Fy」で表し、z軸方向に働く力を「Fz」で表す。さらに、x軸回りの回転に起因するx軸トルクを「Tx」で表し、y軸回りの回転に起因するy軸トルクを「Ty」で表し、z軸回りの回転に起因するz軸トルクを「Tz」で表す。
【0039】
ここで、本明細書では、駆動軸をz軸とする。したがって、駆動軸回りのトルクは、z軸回りのz軸トルクであり、本実施の形態におけるトルクセンサ30では、z軸回りのz軸トルクを高精度に検出することが目的となる。
【0040】
一方、このように座標軸を設定すると、駆動軸以外の他軸回りのトルクは、x軸トルク「Tx」やy軸トルク「Ty」であり、各軸方向に加わる力は、x軸方向の力「Fx」やy軸方向の力「Fy」やz軸方向の力「Fz」である。
【0041】
<トルクセンサの構成>
続いて、本実施の形態におけるトルクセンサの模式的な構成について説明する。
【0042】
図5は、本実施の形態におけるトルクセンサの構成を示す平面図である。図5に示すように、トルクセンサ100は、円形リングから構成される内輪部110と、内輪部110よりも径の大きな円形リングから構成される外輪部120と、内輪部110と外輪部120とを接続する複数のスポーク(接続部)130とを備えている。ここで、複数のスポーク130には、内輪部110の内輪中心CPを通る第1仮想線VL1上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心CPに対して互いに反対側に配置されたスポーク130Aおよびスポーク130Cと、内輪部110の内輪中心CPを通る第2仮想線VL2であって第1仮想線VL1と直交する第2仮想線VL2上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心CPに対して互いに反対側に配置されたスポーク130Bおよびスポーク130Dとが含まれる。
【0043】
このように構成されているトルクセンサ100には、歪を電気抵抗値の変化として捉える複数の歪センサ200が搭載されている。具体的に、トルクセンサ100には、4個の歪センサ200が搭載されている。詳細に説明すると、4個の歪センサ200には、スポーク130A上に配置された第1歪センサ200Aと、スポーク130B上に配置された第2歪センサ200Bと、スポーク130C上に配置された第3歪センサ200Cと、スポーク130D上に配置された第4歪センサ200Dとが含まれている。
【0044】
図6は、図5のA-A線で切断した断面図である。図6に示すように、内輪部110と外輪部120とは、スポーク130Bとスポーク130Dで接続されており、スポーク130B上に第2歪センサ200Bが配置され、かつ、スポーク130D上に第4歪センサ200Dが配置されていることがわかる。
【0045】
以上のようにして、本実施の形態におけるトルクセンサ100が構成されていることになる。このトルクセンサ100は、各軸回りのトルクや各軸方向の力が加わると変形する。特に、トルクセンサ100のスポーク130は、各軸回りのトルクや各軸方向の力が加わると変形し、スポーク130上に配置されている歪センサ200には、スポーク130の変形によって歪が発生し、歪センサ200は、発生した歪を抵抗素子の電気抵抗の変化として捉えるようになっている。
【0046】
<実施の形態における基本思想>
次に、本実施の形態における基本思想について説明する。
【0047】
本実施の形態における基本思想は、歪センサ200に形成されている複数の抵抗素子の配置を工夫するとともに、第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200Dからなる4個の歪センサ200の配置を工夫することにより、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出する一方、駆動軸以外の他軸回りのトルクに起因する歪や各軸方向に加わる力に起因する歪を相殺する思想である。
【0048】
すなわち、本実施の形態における基本思想は、駆動軸回りのトルクだけでなく、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向の力が加わっている場合でも、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出し、それ以外の歪を相殺するように、歪センサ200に形成されている複数の抵抗素子の配置を工夫するとともに、4個の歪センサ200の配置を工夫する思想である。例えば、以下に基本思想のコンセプトを説明する。
【0049】
図7は、本実施の形態における基本思想をわかりやすく説明する表である。
【0050】
図7において、第1歪センサ200Aでは、第1歪センサ200Aに形成される抵抗素子の配置を工夫するとともに第1歪センサ200Aの配置を工夫することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「ゼロ」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「εTy」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「εFx」、y軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0051】
また、第2歪センサ200Bでは、第2歪センサ200Bに形成される抵抗素子の配置を工夫するとともに第2歪センサ200Bの配置を工夫することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「εTx」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「ゼロ」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」、y軸方向の力に起因する歪は「εFy」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0052】
さらに、第3歪センサ200Cでは、第3歪センサ200Cに形成される抵抗素子の配置を工夫するとともに第3歪センサ200Cの配置を工夫することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「ゼロ」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「-εTy」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「-εFx」、y軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0053】
同様に、第4歪センサ200Dでは、第4歪センサ200Dに形成される抵抗素子の配置を工夫するとともに第4歪センサ200Dの配置を工夫することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「-εTx」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「ゼロ」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」、y軸方向の力に起因する歪は「-εFy」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0054】
そして、本実施の形態における基本思想では、第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200Dのそれぞれで発生した歪を加算する。すると、例えば、x軸回りのx軸トルクに起因する合計歪は「ゼロ」、y軸回りのy軸トルクに起因する合計歪は「ゼロ」、z軸回りのz軸トルクに起因する合計歪は「4εTz」、x軸方向の力に起因する合計歪は「ゼロ」、y軸方向の力に起因する合計歪は「ゼロ」、z軸方向の力に起因する合計歪は「ゼロ」となる。
【0055】
つまり、図7に示すように、z軸回りのz軸トルクに起因する合計歪以外の合計歪は「ゼロ」となる。このことは、本実施の形態における基本思想を採用すると、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出する一方、駆動軸以外の他軸回りのトルクに起因する歪や各軸方向に加わる力に起因する歪を相殺することができることを意味している。したがって、本実施の形態における基本思想によれば、駆動軸回りのトルクだけでなく、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向の力が加わっている場合でも、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出し、それ以外の歪を相殺することができる結果、駆動軸回りのトルクを高精度に算出することができることがわかる。
【0056】
<基本思想の具現化>
そこで、以下では、本実施の形態における基本思想を具現化する工夫について説明する。具体的に、この工夫には、歪センサ200に形成される複数の抵抗素子の配置に対する工夫と、4個の歪センサ200(第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200D)の配置に対する工夫が存在する。
【0057】
<<複数の抵抗素子の配置に対する工夫>>
図8は、本実施の形態における歪センサを示す平面図である。
【0058】
図8において、本実施の形態における歪センサ200は、矩形形状の半導体基板210を有している。この半導体基板210は、例えば、シリコン(Si)から形成されている。そして、半導体基板210には、複数の抵抗素子300が形成されている。具体的に、半導体基板210には、抵抗素子300Aと抵抗素子300Bと抵抗素子300Cと抵抗素子300Dからなる4個の抵抗素子300が形成されている。これらの複数の抵抗素子300のそれぞれは、例えば、半導体基板210に導電型不純物を導入することにより形成された拡散抵抗素子である。ここで、例えば、抵抗素子300Aと抵抗素子300Dのなす第1角度は直角であり、半導体基板210と重なる第3仮想線VL3は、第1角度を二等分する方向に延在している。同様に、抵抗素子300Aと抵抗素子300Bとのなす角度も直角であり、抵抗素子300Bと抵抗素子300Cとのなす角度も直角であり、抵抗素子300Cと抵抗素子300Dのなす角度も直角である。すなわち、4個の抵抗素子300は、互いになす角度が直角となるように配置されていることになる。なお、本明細書でいう「直角」とは、意図的に直角にする思想が含まれている場合を意味しており、実際の値が90度から誤差でずれている場合であっても、根底に直角にする思想が含まれていれば、本明細書でいう「直角」に含まれるものとする。数値の具体例を挙げれば、例えば、角度が88度から92度であれば、根底に直角にする思想が存在すると考えることができることから、本明細書でいう「直角」に含まれるということができる。
【0059】
また、抵抗素子は4個だけに限定されるものではない。例えば、第3仮想線VL3に対して、第1角度を二等分する方向に延在しており、且つ、構成する抵抗素子同士のなす角度が直角である抵抗素子の組が複数組あっても、これらの複数組の合成回路が、最終的に図8に示す形態と等価であればよい。
【0060】
<<4個の歪センサの配置に対する工夫>>
図9は、4個の歪センサ200の配置を示す平面図である。
【0061】
図9に示すように、4個の歪センサ200のうちの第1歪センサ200Aは、第3仮想線VL3(図8参照)が第1仮想線VL1と一致するように配置されている。一方、4個の歪センサ200のうちの第2歪センサ200Bは、第3仮想線VL3(図8参照)が第2仮想線VL2と一致するように配置されている。また、4個の歪センサ200のうちの第3歪センサ200Cは、第3仮想線VL3(図8参照)が第1仮想線VL1と一致し、かつ、内輪中心CPに対して第3歪センサ200Cの抵抗素子300Aが第1歪センサ200Aの抵抗素子300Aと点対称になり、かつ、内輪中心CPに対して第3歪センサの抵抗素子300Bが第1歪センサ200Aの抵抗素子300Bと点対称となり、かつ、内輪中心CPに対して第3歪センサ200Cの抵抗素子300Cが第1歪センサ200Aの抵抗素子300Cと点対称になり、かつ、内輪中心CPに対して第3歪センサの抵抗素子300Dが第1歪センサ200Aの抵抗素子300Dと点対称となるように配置されている。さらに、4個の歪センサ200のうちの第4歪センサ200Dは、第3仮想線VL3(図8参照)が第2仮想線VL2と一致し、かつ、内輪中心CPに対して第4歪センサ200Dの抵抗素子300Aが第2歪センサ200Bの抵抗素子300Aと点対称になり、かつ、内輪中心CPに対して第4歪センサ200Dの抵抗素子300Bが第2歪センサ200Bの抵抗素子300Bと点対称となり、かつ、内輪中心CPに対して第4歪センサ200Dの抵抗素子300Cが第2歪センサ200Bの抵抗素子300Cと点対称になり、かつ、内輪中心CPに対して第4歪センサ200Dの抵抗素子300Dが第2歪センサ200Bの抵抗素子300Dと点対称となるように配置されている。
【0062】
以下では、歪センサ200に形成される4個の抵抗素子300の配置に対する工夫および4個の歪センサ200の配置に対する工夫によって、本実施の形態における基本思想が具現化される。具体的に、図8に示す4個の抵抗素子300が形成された4個の歪センサ200において、これらの4個の歪センサ200を図9に示すように配置することにより、本実施の形態における基本思想(図7参照)が具現化されることについて説明する。
【0063】
<<歪を相殺する具体的説明>>
図10は、トルクセンサ100にy軸回りのy軸トルク(「Ty」)が加わった場合の4個の歪センサ200のそれぞれに形成されている抵抗素子300に加わる歪を示す模式図である。図10において、引張歪を「+」、圧縮歪を「-」とし、それぞれの歪センサ200に形成されている4個の抵抗素子300に加わる歪に基づく歪センサ200からの出力歪を「(抵抗素子300Aの歪+抵抗素子300Cの歪)-(抵抗素子300Bの歪+抵抗素子300Dの歪)」とする。
【0064】
図10において、第1歪センサ200Aに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに引張歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに圧縮歪が発生する。この結果、第1歪センサ200Aから出力される出力歪を「+εTy」とする。
【0065】
続いて、第2歪センサ200Bに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Bと抵抗素子300Cと抵抗素子300Dに同じ引張歪が発生する。この結果、第2歪センサ200Bから出力される出力歪は「0」となる。
【0066】
次に、第3歪センサ200Cに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに圧縮歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに引張歪が発生する。この結果、第3歪センサ200Cから出力される出力歪は「-εTy」となる。
【0067】
さらに、第4歪センサ200Dに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Bと抵抗素子300Cと抵抗素子300Dに同じ引張歪が発生する。この結果、第4歪センサ200Dから出力される出力歪は「0」となる。
【0068】
以上のことから、図10に示す4個の歪センサ200(第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200D)によって、図7に示すy軸回りのy軸トルクに起因する歪が実現されていることがわかる。
【0069】
図11は、トルクセンサ100にy軸方向の力(「Fy」)が加わった場合の4個の歪センサ200のそれぞれに形成されている抵抗素子300に加わる歪を示す模式図である。図11において、引張歪を「+」、圧縮歪を「-」とし、それぞれの歪センサ200に形成されている4個の抵抗素子300に加わる歪に基づく歪センサ200からの出力歪を「(抵抗素子300Aの歪+抵抗素子300Cの歪)-(抵抗素子300Bの歪+抵抗素子300Dの歪)」とする。
【0070】
図11において、第1歪センサ200Aに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Bと抵抗素子300Cと抵抗素子300Dに同じ引張歪が発生する。この結果、第1歪センサ200Aから出力される出力歪は「0」となる。
【0071】
続いて、第2歪センサ200Bに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに圧縮歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに引張歪が発生する。この結果、第2歪センサ200Bから出力される出力歪を「+εFy」とする。
【0072】
次に、第3歪センサ200Cに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Bと抵抗素子300Cと抵抗素子300Dに同じ引張歪が発生する。この結果、第3歪センサ200Cから出力される出力歪は「0」となる。
【0073】
さらに、第4歪センサ200Dに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに引張歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに圧縮歪が発生する。この結果、第4歪センサ200Dから出力される出力歪は「-εFy」となる。
【0074】
以上のことから、図11に示す4個の歪センサ200(第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200D)によって、図7に示すy軸方向に加わる力に起因する歪が実現されていることがわかる。
【0075】
図12は、トルクセンサ100にz軸回りのz軸トルク(「Tz」)が加わった場合の4個の歪センサ200のそれぞれに形成されている抵抗素子300に加わる歪を示す模式図である。図12において、引張歪を「+」、圧縮歪を「-」とし、それぞれの歪センサ200に形成されている4個の抵抗素子300に加わる歪に基づく歪センサ200からの出力歪を「(抵抗素子300Aの歪+抵抗素子300Cの歪)-(抵抗素子300Bの歪+抵抗素子300Dの歪)」とする。
【0076】
図12において、第1歪センサ200Aに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに圧縮歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに引張歪が発生する。この結果、第1歪センサ200Aから出力される出力歪を「+εTz」とする。
【0077】
続いて、第2歪センサ200Bに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに圧縮歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに引張歪が発生する。この結果、第1歪センサ200Aから出力される出力歪は「+εTz」となる。
【0078】
次に、第3歪センサ200Cに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに圧縮歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに引張歪が発生する。この結果、第1歪センサ200Aから出力される出力歪は「+εTz」となる。
【0079】
さらに、第4歪センサ200Dに着目すると、抵抗素子300Aと抵抗素子300Cに圧縮歪が発生する一方、抵抗素子300Bと抵抗素子300Dに引張歪が発生する。この結果、第1歪センサ200Aから出力される出力歪は「+εTz」となる。
【0080】
以上のことから、図12に示す4個の歪センサ200(第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200D)によって、図7に示すz軸回りのz軸トルクに起因する歪が実現されていることがわかる。
【0081】
図10図12に基づくと、図8に示す4個の抵抗素子300が形成された4個の歪センサ200において、これらの4個の歪センサ200を図9に示すように配置することにより、本実施の形態における基本思想(図7参照)が具現化されることがわかる。
【0082】
<算出部の構成>
トルクセンサ100は、上述した4個の歪センサ200からの出力に基づいて、内輪中心CPを通り、かつ、内輪部110に垂直な法線軸回りのトルクを算出する算出部を有している。すなわち、トルクセンサ100は、第1歪センサ200Aの出力と第2歪センサ200Bの出力と第3歪センサ200Cの出力と第4歪センサ200Dの出力とに基づいて、駆動軸回り(z軸回り)のz軸トルクを算出する。
【0083】
以下では、z軸回りのz軸トルクを算出する算出部の構成を説明する。
【0084】
図13は、算出部500の機能ブロック図である。図13において、算出部500は、第1電圧値入力部501と、第2電圧値入力部502と、第3電圧値入力部503と、第4電圧値入力部504と、電圧値加算部505と、駆動軸トルク算出部506と、出力部507と、データ記憶部508とを有している。
【0085】
第1電圧値入力部501は、第1歪センサ200Aからの出力電圧を入力するように構成されている。具体的に、第1歪センサ200Aは、トルクや力に基づくトルクセンサ100の変形に起因して歪むように構成されており、この歪を内部に設けられている4個の抵抗素子300の抵抗値変化として捉え、抵抗値変化を電圧値に変換して出力するように構成されている。第1電圧値入力部501は、この第1歪センサ200Aからの出力電圧を入力することができるように構成されている。そして、第1歪センサ200Aからの出力電圧である第1電圧値は、データ記憶部508に記憶される。
【0086】
なお、例えば、第1電圧値入力部501に入力される第1電圧値は、第1歪センサ200Aにおける抵抗素子300Aの抵抗値と抵抗素子300Bの抵抗値との差分と第1歪センサ200Aにおける抵抗素子300Cの抵抗値と抵抗素子300Dの抵抗値との差分とを加算した第1合計値に対応する。
【0087】
第2電圧値入力部502は、第2歪センサ200Bからの出力電圧を入力するように構成されている。具体的に、第2歪センサ200Bも、トルクや力に基づくトルクセンサ100の変形に起因して歪むように構成されており、この歪を内部に設けられている4個の抵抗素子300の抵抗値変化として捉え、抵抗値変化を電圧値に変換して出力するように構成されている。第2電圧値入力部502は、この第2歪センサ200Bからの出力電圧を入力することができるように構成されている。そして、第2歪センサ200Bからの出力電圧である第2電圧値は、データ記憶部508に記憶される。
【0088】
なお、例えば、第2電圧値入力部502に入力される第2電圧値は、第2歪センサ200Bにおける抵抗素子300Aの抵抗値と抵抗素子300Bの抵抗値との差分と第2歪センサ200Bにおける抵抗素子300Cの抵抗値と抵抗素子300Dの抵抗値との差分とを加算した第2合計値に対応する。
【0089】
第3電圧値入力部503は、第3歪センサ200Cからの出力電圧を入力するように構成されている。具体的に、第3歪センサ200Cは、トルクや力に基づくトルクセンサ100の変形に起因して歪むように構成されており、この歪を内部に設けられている4個の抵抗素子300の抵抗値変化として捉え、抵抗値変化を電圧値に変換して出力するように構成されている。第3電圧値入力部503は、この第3歪センサ200Cからの出力電圧を入力することができるように構成されている。そして、第3歪センサ200Cからの出力電圧である第3電圧値は、データ記憶部508に記憶される。
【0090】
なお、例えば、第3電圧値入力部503に入力される第3電圧値は、第3歪センサ200Cにおける抵抗素子300Aの抵抗値と抵抗素子300Bの抵抗値との差分と第3歪センサ200Cにおける抵抗素子300Cの抵抗値と抵抗素子300Dの抵抗値との差分とを加算した第3合計値に対応する。
【0091】
第4電圧値入力部504は、第4歪センサ200Dからの出力電圧を入力するように構成されている。具体的に、第4歪センサ200Dは、トルクや力に基づくトルクセンサ100の変形に起因して歪むように構成されており、この歪を内部に設けられている4個の抵抗素子300の抵抗値変化として捉え、抵抗値変化を電圧値に変換して出力するように構成されている。第4電圧値入力部504は、この第4歪センサ200Dからの出力電圧を入力することができるように構成されている。そして、第4歪センサ200Dからの出力電圧である第4電圧値は、データ記憶部508に記憶される。
【0092】
なお、例えば、第4電圧値入力部504に入力される第3電圧値は、第4歪センサ200Dにおける抵抗素子300Aの抵抗値と抵抗素子300Bの抵抗値との差分と第4歪センサ200Dにおける抵抗素子300Cの抵抗値と抵抗素子300Dの抵抗値との差分とを加算した第4合計値に対応する。
【0093】
次に、電圧値加算部505は、第1電圧値入力部501に入力された第1電圧値と、第2電圧値入力部502に入力された第2電圧値と、第3電圧値入力部503に入力された第3電圧値と、第4電圧値入力部504に入力された第4電圧値とを加算した合計電圧値を算出するように構成されている。この電圧値加算部505による合計電圧値の算出は、例えば、図7に示す合計を算出することに対応する。つまり、電圧値加算部505によって算出された合計電圧値は、他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する歪が相殺されて、駆動軸回りの駆動軸トルクにのみ起因する歪に対応する電圧値となる。
【0094】
続いて、駆動軸トルク算出部506は、電圧値加算部505で算出された合計電圧値に基づいて、駆動軸回りの駆動軸トルクを算出するように構成されている。このとき、本実施の形態では、電圧値加算部505によって算出された合計電圧値は、他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する歪が相殺されて、駆動軸回りの駆動軸トルクにのみ起因する歪に対応する電圧値であることから、合計電圧値に基づいて算出された駆動軸トルクは高精度である。例えば、歪と電気抵抗値には相関関係があり、この電気抵抗値に基づく電圧値と歪も相関関係がある。そして、歪とトルクとも相関関係があることから、電圧値とトルクも相関関係があることになる。この電圧値とトルクとの間の相関関係を示す式やテーブルをデータ記憶部508に記憶されている。この結果、駆動軸トルク算出部506は、データ記憶部508に記憶されている式やテーブルに基づいて、電圧値加算部505で算出された合計電圧値から駆動軸トルクを算出することができる。
【0095】
出力部507は、駆動軸トルク算出部506で算出された駆動軸トルクの値を外部に出力するように構成されている。例えば、出力部507から出力された駆動軸トルクの値は、図1に示すロボット制御部11に入力されて、ロボット制御部11によるロボットアーム10の動作制御に利用することができる。
【0096】
<算出部の動作>
本実施の形態における算出部500は、上記のように構成されており、以下に算出部500の動作について図面を参照しながら説明する。
【0097】
図14は、算出部の動作を説明するフローチャートである。
【0098】
図14において、第1電圧値入力部501は、第1歪センサ200Aからの出力電圧である第1電圧値を入力するとともに、第2電圧値入力部502は、第2歪センサ200Bからの出力電圧である第2電圧値を入力する。同様に、第3電圧値入力部503は、第3歪センサ200Cからの出力電圧である第3電圧値を入力するとともに、第4電圧値入力部504は、第4歪センサ200Dからの出力電圧である第4電圧値を入力する(S101)。次に、電圧値加算部505は、第1電圧値と第2電圧値と第3電圧値と第4電圧値とを加算して合計電圧値を算出する。その後、駆動軸トルク算出部506は、電圧値加算部505で算出した合計電圧値に基づいて、駆動軸トルクを算出する。そして、駆動軸トルク算出部506で算出された駆動軸トルクの値は、出力部507から出力される。
【0099】
以上のようにして、算出部500の動作が実現される。
【0100】
<効果の検証>
次に、本実施の形態における効果の検証結果について説明する。
【0101】
図15は、y軸回りのy軸トルク(「Ty」)を加えた際における4個の歪センサのそれぞれからの出力を示すグラフである。
【0102】
図15において、横軸はy軸トルク(「Ty(N・m)」)の大きさを示している一方、縦軸は各歪センサの出力「歪量(με)」を示している。
【0103】
図15において、第1歪センサの出力に着目すると、y軸トルクを大きくするにしたがって第1歪センサからの出力(絶対値)が大きくなっていることがわかる。例えば、y軸トルクが「100N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「15με」であり、y軸トルクが「200N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「35με」である。また、y軸トルクが「400N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「60με」であり、y軸トルクが「600N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「90με」である。
【0104】
一方、第3歪センサの出力に着目すると、y軸トルクを大きくするにしたがって第3歪センサからの出力(絶対値)も大きくなっていることがわかる。例えば、y軸トルクが「100N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「-15με」であり、y軸トルクが「200N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「-35με」である。また、y軸トルクが「400N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「-60με」であり、y軸トルクが「600N・m」のとき、第1歪センサからの出力は「-90με」である。
【0105】
したがって、第1歪センサからの出力と第2歪センサからの出力を加算すると、第1歪センサの出力と第3歪センサからの出力の合計出力は「0」となることがわかる。つまり、第1歪センサからの出力と第3歪センサからの出力は相殺することがわかる。
【0106】
また、第2歪センサからの出力と第4歪センサからの出力に着目すると、y軸トルクの大きさに依らず、いずれの歪センサからの出力もほぼ「0」であることがわかる。
【0107】
図16は、y軸回りのy軸トルク(「Ty」)を加えた際における4個の歪センサからの合計出力を示すグラフである。
【0108】
図16において、横軸はy軸トルク(「Ty(N・m)」)の大きさを示している一方、縦軸は4個の歪センサからの合計出力「歪量(με)」を示している。
【0109】
図16に示すように、y軸トルクの大きさに依らず、4個の歪センサからの合計出力がほぼ「0」であることがわかる。すなわち、図16から、例えば、駆動軸回りの駆動軸トルク(z軸トルク)以外の他軸回りのトルクの一例であるy軸回りのy軸トルクが加わっても、y軸トルクに基づく第1歪センサからの出力と第2歪センサからの出力と第3歪センサからの出力と第4歪センサからの出力を加算すると、出力の合計がほぼ「0」になることがわかる。つまり、図15および図16に示す結果から、4個の歪センサからの合計出力がy軸トルクに起因する歪の影響を受けないことが裏付けられていることがわかる。
【0110】
図17は、z軸回りに一定量のz軸トルクを加えた状態で、さらにy軸回りのy軸トルクを加えた際における4個の歪センサからの出力の平均値の変化を示すグラフである。
【0111】
図17において、横軸はy軸トルク(「Ty(N・m)」)の大きさを示している一方、縦軸は4個の歪センサからの出力「歪量(με)」の平均値を示している。さらに、各ポイントは、z軸トルク(「Tz」)の大きさを示す。たとえば「*」はz軸トルクが時計回りであり、600(N・m)である。「点線」は、z軸トルク(「Tz」)が反時計回りであり、-600(N・m)である。
【0112】
例えば、図7を参照すると、第1歪センサ200Aからの出力は、y軸トルクに起因する歪量「εTy」とz軸トルクに起因する歪量「εTz」とを加えた歪量に対応する出力となる。一方、第2歪センサ200Bからの出力は、y軸トルクに起因する歪量「εTy」とz軸トルクに起因する歪量「εTz」とを加えた歪量に対応する出力となる。ただし、第2歪センサ200Bでは、「εTy」はゼロとなる。また、第3歪センサ200Cからの出力は、y軸トルクに起因する歪量「-εTy」とz軸トルクに起因する歪量「εTz」とを加えた歪量に対応する出力となる。さらに、第4歪センサ200Dからの出力は、y軸トルクに起因する歪量「-εTy」とz軸トルクに起因する歪量「εTz」とを加えた歪量に対応する出力となる。ただし、第2歪センサ200Dでは、「-εTy」はゼロとなる。したがって、4個の歪センサ200のそれぞれの出力は異なることになるが、4個の歪センサ200の出力の平均値は、z軸トルクに起因する歪量以外は相殺される結果、歪量「εTz」となる。このことが図17に示されている。すなわち、4個の歪センサ200の出力の平均値は歪量「εTz」となることから、y軸トルクの大きさに依らず、z軸トルクの大きさにだけ依存し、一定値になる。図17からz軸トルクの大きさを大きくすると、4個の歪センサ200の出力の平均値は大きくなり、y軸トルクが増加しても変化しないことがわかる。これは、4個の歪センサ200の出力の平均値が歪量「εTz」となることから理解できる。
【0113】
<ロボット関節構造への適用>
本実施の形態におけるトルクセンサ100は、例えば、ロボットアームのロボット関節構造に適用することができる。例えば、図18は、本実施の形態におけるトルクセンサ100を適用したロボット関節構造20を模式的に示す図である。図18において、本実施の形態におけるトルクセンサ100は、モータ22と減速機23とを含む駆動部24と接続されているとともにロボットアームの一部を構成するリンク21Bと接続されている。このように構成されているロボット関節構造20によれば、トルクセンサ100によって駆動軸回りの駆動軸トルクを高精度に検出することができる。
【0114】
さらに、トルクセンサ100を適用したロボット関節構造20によれば、以下に示す利点も得ることができる。例えば、図3に示す関連技術では、駆動部24とトルクセンサ30との間にベアリング部材26を設けている。これは、トルクセンサ30をベアリング部材26によって固定支持することによって、駆動軸回り以外に変形しにくくなるようにするためである。すなわち、関連技術におけるトルクセンサ30では、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因してトルクセンサ30が変形すると、この変形に起因する歪もトルクセンサ30で検出する結果、トルクセンサ30では、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音の影響を受けやすくなる。このことから、関連技術では、トルクセンサ30が駆動軸回り以外に変形しにくくなるようにベアリング部材26でトルクセンサ30を固定支持している。これにより、関連技術によれば、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因するトルクセンサ30の変形が起こりにくくなるため、トルクセンサ30で駆動軸回りのトルクを検出する際、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音を低減することができる。すなわち、関連技術によれば、ベアリング部材26でトルクセンサ30を固定支持することによって、トルクセンサ30を駆動軸回り以外に変形しにくくすることで駆動軸回りのトルクを高精度に検出するようにしている。
【0115】
ただし、関連技術では、トルクセンサ30を固定支持するベアリング部材26を新たに設ける必要があることから、ロボット関節構造20Aの質量が大きくなる。つまり、ロボット関節構造20Aの質量は小さいことが望ましいが、関連技術では、ロボット関節構造20Aの質量が大きくなってしまい、ロボット関節構造20Aの動作が鈍くなるおそれがある。さらには、ベアリング部材26を新たに設ける必要があるため、ロボット関節構造20Aの部品コストが上昇することになる。したがって、関連技術では、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができる一方で、ロボット関節構造20Aの動作機敏性の向上と部品コストの低減の観点から改善の余地が存在することがわかる。
【0116】
この点に関し、本実施の形態におけるトルクセンサ100は、たとえ、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因してトルクセンサ100が変形したとしても、トルクセンサ100に設けられた4個の歪センサ200によって、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する歪が相殺される。すなわち、本実施の形態におけるトルクセンサ100によれば、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因してトルクセンサ100が変形したとしても、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する雑音は発生しにくくなる。このため、本実施の形態におけるトルクセンサ100は、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因するトルクセンサ100の変形を抑制しなくても、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができる。このことは、本実施の形態におけるトルクセンサ100によれば、図3に示す関連技術のトルクセンサ30のようにベアリング部材26で固定支持する必要がなくなることを意味する。言い換えれば、本実施の形態におけるトルクセンサ100は、ベアリング部材26で固定支持しなくても、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因する歪が相殺される結果、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができるのである。したがって、本実施の形態によれば、ベアリング部材26が不要となることから、ロボット関節構造20自体の質量の増大を抑制できる。このことから、本実施の形態によれば、トルクセンサ100を採用することにより、ロボット関節構造の動作機敏性を向上できる。さらには、ベアリング部材26という新たな部品の追加が不要となることにより、ロボット関節構造20の部品削減を実現することができ、これによって部品コストを削減できるという利点も得ることができる。
【0117】
なお、本実施の形態におけるトルクセンサ100を採用すると、図18に示すロボット関節構造20だけでなく、例えば、図19に示すロボット関節構造20Bや図20に示すロボット関節構造20Cも実現することができる。この場合も、ロボット関節構造の動作機敏性および部品コストを犠牲にすることなく、駆動軸回りの駆動軸トルクの検出精度を向上することができるという顕著な効果が得られる。
【0118】
なお、これらの効果は、トルクセンサ100の剛性が高く、x軸、y軸、z軸のモーメントによって、過大な変形をしないことが必要である。トルクセンサ100の剛性を高くするには、図5に示すスポーク130の厚み、幅を大きくしなければならない。そうすると、z軸トルクによって発生するひずみが小さくなり、計測すべきz軸トルクの分解能が低減する。すなわち、検出できる限界のz軸トルクが大きくなってしまう。しかし、図8に示す歪センサ200は、一般的な金属の抵抗変化に基づいて計測する歪ゲージに対して、格段に大きい感度を有する。歪センサ200をシリコンで作成した場合、歪を検出する感度を示すゲージ率が、一般の金属性の歪ゲージに比較して、約25倍となることが知られている。したがって、歪センサ200を用いることで、トルクセンサ100の剛性を高くすることができ、その結果、ベアリング部材26を省くことができる。
【0119】
<さらなる検討>
本実施の形態におけるトルクセンサ100は、駆動軸回り以外の他軸回りのトルクや各軸方向に加わる力に起因するトルクセンサ100の変形を抑制しなくても、駆動軸回りのトルクを高精度に検出することができる点で有用であり、例えば、ロボット関節構造20に適用して有効である。ただし、本発明者が検討したところ、トルクセンサ100をロボット関節構造20に適用するにあたっては、トルクセンサ100とリンク21Bとの接続構造を工夫することが重要であるという知見を得たので、この知見を説明する。
【0120】
<本発明者が見出した新規な知見>
図21は、本実施の形態におけるトルクセンサ100を適用したロボット関節構造20を模式的に示す図である。図21において、領域RAは、トルクセンサ100とリンク21Bとの接続部位を示している。そして、図22は、領域RAで示されるトルクセンサ100とリンク21Bとの接続部位の拡大図である。図22に示すように、トルクセンサ100には貫通部THが形成されているとともに、リンク21Bには、ネジ山が形成された開口部OPが形成されている。そして、トルクセンサ100に形成された貫通部THとリンク21Bに形成された開口部OPとは連通しており、貫通部THと開口部OPには、ボルト600Aが挿入されている。そして、このボルト600Aとナット600Bを使用することにより、トルクセンサ100とリンク21Bとは接続されている。このとき、ボルト600Aには、軸力「P」が加わることになる。
【0121】
次に、図23は、図22の矢印方向から見た模式図である。図23に示すように、トルクセンサ100とリンク21Bは、ボルト600Aとナット600Bで接続されている。そして、図24は、図23のA-A面から見た模式図を示しており、図25は、図23のB-B面から見た模式図を示している。ここで、A-A面を「ボルト・外輪部面」と呼び、B-B面を「外輪部・リンク面」と呼ぶことにする。
【0122】
図24において、トルクセンサ100の外輪部120にボルト600Aが固定されており、ボルト600Aと外輪部120との接触面が「S1」で示されている。このとき、ボルト600Aと外輪部120との間の面圧「σ1」は、「σ1=P/S1」で与えられる。ここで、「P」は、ボルト600Aに加わる軸力を示しており、「S1」は、ボルト600Aと外輪部120との接触面積を示している。図24に示すように、ボルト600Aと外輪部120との接触面積「S1」は小さいことから、ボルト600Aと外輪部120との間の面圧「σ1」は大きくなる。
【0123】
図25において、トルクセンサ100の外輪部120とリンク21Bとがボルト600Aで固定されており、外輪部120とリンク21Bとの接触面が「S2」で示されている。この「S2」は、外輪部120の全面に相当する。このとき、外輪部120とリンク21Bとの間の面圧「σ2」は、「σ2=P/S2」で与えられる。ここで、「P」は、ボルト600Aに加わる軸力を示しており、「S2」は、外輪部120とリンク21Bとの接触面積を示している。図25に示すように、外輪部120とリンク21Bとの接触面積「S2」は大きいことから、外輪部120とリンク21Bとの間の面圧「σ2」は小さくなる。
【0124】
続いて、図26は、面圧と静止摩擦係数との関係を定性的に示すグラフである。図26において、横軸は面圧「σ」を示している一方、縦軸は静止摩擦係数「μ」を示している。図26に示すように、図24に示す軸力(「P」)と図25に示す軸力(「P」)が等しい場合、面圧「σ」が大きくなると、静止摩擦係数「μ」は小さくなる傾向があることがわかる。すなわち、面圧「σ」が大きくなると滑りやすくなることがわかる。
【0125】
ここで、ボルト600Aと外輪部120との接触面積「S1」は、外輪部120とリンク21Bとの接触面「S2」に比べて非常に小さいことから、ボルト600Aと外輪部120との間の面圧「σ1」は、外輪部120とリンク21Bとの間の面圧「σ2」に比べて非常に大きくなる。このことは、ボルト600Aと外輪部120との界面である「ボルト・外輪部面」は、外輪部120とリンク21Bとの界面である「外輪部・リンク面」よりも滑りやすくなることを意味している。
【0126】
図27は、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生する様子を示す模式図である。図27(a)には、例えば、トルクセンサ100にトルクや力が加わることにより、ボルト600Aが変形する様子が示されている。なお、図27(a)では、わかりやすくするために、ボルト600Aの変形を大きく描いている。ここで、ボルト600Aの変形が大きくなり過ぎて静止摩擦力の限界を超えると、図27(b)に示すように、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生する。そして、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生すると、トルクセンサ100での駆動軸回りのトルクの検出精度が不安定となることを本発明者は新規に見出した。
【0127】
以下では、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生すると、トルクセンサ100での駆動軸回りのトルクの検出精度が不安定となるメカニズムについて説明する。
【0128】
図28(a)および図28(b)は、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生すると、トルクセンサ100での駆動軸回りのトルクの検出精度が不安定となるメカニズムを説明するための図である。まず、図28(a)において、トルクセンサ100にトルクが加わって、このトルクが内輪部110から外輪部120にせん断力として伝わる力線が矢印で示されている。図28(a)に示すように、せん断力の力線は、内輪部110からスポーク130を通って「ボルト・外輪部面」を介してボルト600Aの内部を伝わる(第1経路)。さらには、第1経路以外に、せん断力の力線は、「外輪部・リンク面」を介してリンク21Bに伝わる(第2経路)。このように、せん断力の力線は、第1経路と第2経路の両方を流れ、第1経路に滑りが発生しやすい「ボルト・外輪部面」が存在する。したがって、「ボルト・外輪部面」に滑りが発生すると、スポーク130を流れるせん断力の力線が乱れることになる。ここで、スポーク130上には、歪センサ200が配置されており、この歪センサ200は、スポーク130上でのせん断力の流れを計測することから、スポーク130を流れるせん断力の力線が乱れると、スポーク130上に配置されている歪センサ200からの出力も乱れることになる。これにより、トルクセンサ100でのトルク検出精度が不安定となる。この知見は、本発明者が新規に見出した知見である。
【0129】
そこで、本発明者は、この知見に基づいて、トルクセンサ100でのトルク検出精度の安定性を向上させるための工夫をさらに施している。以下では、この工夫点を説明する。
【0130】
<工夫点の説明>
図29は、トルクセンサでのトルク検出精度の安定性を向上させるための工夫点を説明するための図である。図29において、工夫点は、トルクセンサ100の外輪部120に設けられている貫通部THにねじ山を形成して、トルクセンサ100とリンク21Bをボルトではなくネジ700で締結している点にある。すなわち、トルクセンサ100の外輪部120には、ネジ穴が形成されており、この外輪部120は、ネジ穴にネジ700を螺合することにより、外輪部120と一体的に回転可能な部材(リンク21B)と締結可能に構成されている。これにより、トルクセンサ100でのトルク検出精度の安定性を向上することができる。以下に、この理由について説明する。
【0131】
図29に示すように、トルクセンサ100とリンク21Bとをネジ締結する場合、トルクセンサ100の外輪部120に設けられたなネジ穴とネジ700とは、ネジ山とネジ谷の全面において摩擦力によって固定されることから、力学的にトルクセンサ100とリンク21Bとは一体品とみなすことができる。したがって、図29において、せん断力の力線は、内輪部110からスポーク130を通って、ネジ700を含む外輪部120に伝わった後、「外輪部・リンク面」を介してリンク21Bに流れる。このとき、「外輪部・リンク面」は、外輪部120全体で接触するため、面圧「σ」が小さくなり、これによって、静止摩擦係数「μ」は大きくなる。このことは、この工夫点によれば、外輪部120とリンク21Bとの間で滑りが発生しにくいことを意味する(第1利点)。さらに、この工夫点では、滑りが発生しやすい「ボルト・外輪部面」が存在しない(第2利点)。このように、本実施の形態における工夫点によれば、上述した第1利点と第2利点との相乗要因によって、スポーク130を通るせん断力の力線の流れは安定する結果、トルクセンサ100でのトルク検出精度の安定性を向上することができる。
【0132】
<変形例>
基本思想は、トルクセンサに備わる複数の歪センサの配置に対する工夫と、複数の歪センサのそれぞれに形成されている複数の抵抗素子の配置に対する工夫によって、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出する一方、駆動軸以外の他軸回りのトルクに起因する歪や各軸方向に加わる力に起因する歪を相殺する思想である。この基本思想は、実施の形態では、図5に示すような4つの歪センサ200を備えるトルクセンサ100の構成を採用し、かつ、図8に示すような歪センサ200に形成されている複数の抵抗素子300のレイアウト配置を採用することにより実現されている。
【0133】
ただし、基本思想は、実施の形態で説明した構成だけでなく、さらに、図30に示すような6つの歪センサ200を備えるトルクセンサ100Aの構成を採用し、かつ、図8に示すような歪センサ200に形成されている複数の抵抗素子300のレイアウト配置を採用するという本変形例の構成によっても実現することができる。
【0134】
以下では、まず、本変形例にトルクセンサ100Aの構成を説明する。
【0135】
図30は、本変形例におけるトルクセンサ100Aの構成を示す平面図である。図30において、トルクセンサ100Aは、円形リングから構成される内輪部110と、内輪部110よりも径の大きな円形リングから構成される外輪部120と、内輪部110と外輪部120とを接続する複数のスポーク(接続部)130とを備えている。
【0136】
本変形例では、複数のスポーク130は、6つのスポーク130であるスポーク130A、スポーク130B、スポーク130C、スポーク130D、スポーク130Eおよびスポーク130Fから構成されている。
【0137】
具体的に、スポーク130Aおよびスポーク130Dは、第1仮想線VL1上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心CPに対して互いに反対側に配置されている。スポーク130Bおよびスポーク130Eは、仮想線VL2A上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心CPに対して互いに反対側に配置されている。スポーク130Cおよびスポーク130Fは、仮想線VL2B上にそれぞれ配置され、かつ、内輪中心CPに対して互いに反対側に配置されている。
【0138】
第1仮想線VL1、仮想線VL2Aおよび仮想線VL2Bは、内輪部110の内輪中心CPで交差し、およそ60度の交差角度をなしている。つまり、本変形例では、第1仮想線VL1、仮想線VL2Aおよび仮想線VL2Bが互いに直交していない。そして、図30において、第1仮想線VL1と直交する仮想線を第2仮想線VL2とすると、この第2仮想線VL2は、仮想線VL2Aと仮想線VL2Bとの二等分線となっている。
【0139】
次に、図30に示すように、6つのスポーク130上には、それぞれ歪センサ200が搭載されている。具体的に、スポーク130A上には、第1歪センサ200Aが搭載されており、スポーク130B上には、第2歪センサ200Bが搭載されている。また、スポーク130C上には、第3歪センサ200Cが搭載されており、スポーク130D上には、第4歪センサ200Dが搭載されている。さらに、スポーク130E上には、第5歪センサ200Eが搭載されており、スポーク130F上には、第6歪センサ200Fが搭載されている。
【0140】
6つのスポーク130のそれぞれに搭載されている歪センサ200は、図8に示すように、複数の抵抗素子300が形成されている。この点において、本変形例は、実施の形態と同様である。
【0141】
図30において、第1歪センサ200Aと第4歪センサ200Dは、内輪中心CPに対して点対称である。同様に、第2歪センサ200Bと第5歪センサ200Eは、内輪中心CPに対して点対称である。また、第3歪センサ200Cと第6歪センサ200Fは、内輪中心CPに対して点対称である。
【0142】
このようにして、トルクセンサ100Aが構成されている。
【0143】
図31は、変形例への基本思想の適用例を説明する表である。
【0144】
図31において、第1歪センサ200Aでは、図30に示す構成を採用することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「ゼロ」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「εTy」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「εFx」、y軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0145】
第2歪センサ200Bでは、図30に示す構成を採用することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「ε´Tx」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「ε´´Ty」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「ε´Fx」、y軸方向の力に起因する歪は「ε´´Fy」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0146】
第3歪センサ200Cでは、図30に示す構成を採用することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「-ε´Tx」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「-ε´´Ty」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「-ε´Fx」、y軸方向の力に起因する歪は「-ε´´Fy」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0147】
第4歪センサ200Dでは、図30に示す構成を採用することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「ゼロ」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「-εTy」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「-εFx」、y軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0148】
第5歪センサ200Eでは、図30に示す構成を採用することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「-ε´Tx」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「-ε´´Ty」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「-ε´Fx」、y軸方向の力に起因する歪は「-ε´´Fy」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0149】
第6歪センサ200Fでは、図30に示す構成を採用することにより、x軸回りのx軸トルクに起因する歪は「ε´Tx」、y軸回りのy軸トルクに起因する歪は「ε´´Ty」、z軸回りのz軸トルクに起因する歪は「εTz」、x軸方向の力に起因する歪は「ε´Fx」、y軸方向の力に起因する歪は「ε´´Fy」、z軸方向の力に起因する歪は「ゼロ」となる。
【0150】
そして、本変形例でも、第1歪センサ200Aと第2歪センサ200Bと第3歪センサ200Cと第4歪センサ200Dと第5歪センサ200Eと第6歪センサ200Fのそれぞれで発生した歪を加算する。すると、例えば、x軸回りのx軸トルクに起因する合計歪は「ゼロ」、y軸回りのy軸トルクに起因する合計歪は「ゼロ」、z軸回りのz軸トルクに起因する合計歪は「6εTz」、x軸方向の力に起因する合計歪は「ゼロ」、y軸方向の力に起因する合計歪は「ゼロ」、z軸方向の力に起因する合計歪は「ゼロ」となる。
【0151】
つまり、図31に示すように、z軸回りのz軸トルクに起因する合計歪以外の合計歪は「ゼロ」となる。このことは、本変形例でも、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出する一方、駆動軸以外の他軸回りのトルクに起因する歪や各軸方向に加わる力に起因する歪を相殺することができることを意味していることになる。したがって、本変形例においても、駆動軸回りのトルクだけでなく、駆動軸以外の他軸回りのトルクや各軸方向の力が加わっている場合でも、駆動軸回りのトルクに起因する歪だけを抽出し、それ以外の歪を相殺することができる結果、駆動軸回りのトルクを高精度に算出することができることがわかる。
【0152】
以上のように、基本思想は、例えば、図5に示す実施の形態におけるトルクセンサ100の構成によって実現できるだけでなく、図30に示す本変形例におけるトルクセンサ100Aの構成によっても実現できることがわかる。
【0153】
特に、実施の形態におけるトルクセンサ100を採用する利点は、本変形例のように6つの歪センサ200よりも少ない4つの歪センサ200で基本思想を実現できる点でコスト削減を図ることができる点が挙げられる。
【0154】
一方、本変形例におけるトルクセンサ100Aを採用する利点は、実施の形態では駆動軸回り(z軸周り)のトルクに起因する歪の合計が「4εTz」であるのに対し(図7参照)、本変形例では、駆動軸回り(z軸周り)のトルクに起因する歪の合計を「6εTz」にすることができる結果、検出信号の大きさを大きくできる点を挙げることができる。
【0155】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0156】
例えば、図8に示すように、本実施の形態における歪センサ200には、互いに直交配置される4個の抵抗素子300(抵抗素子300Aと抵抗素子300Bと抵抗素子300Cと抵抗素子300D)から構成する例について説明しているが、本実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、図8において、互いに直交配置される2個の抵抗素子300(抵抗素子300Aと抵抗素子300D)から歪センサ200を構成する場合にも幅広く適用することができる。
【符号の説明】
【0157】
1 ロボットシステム
10 ロボットアーム
11 ロボット制御部
20 ロボット関節構造
20A ロボット関節構造
20B ロボット関節構造
20C ロボット関節構造
21A リンク
21B リンク
22 モータ
23 減速機
24 駆動部
25 潤滑部材
26 ベアリング部材
30 トルクセンサ
100 トルクセンサ
110 内輪部
120 外輪部
130 スポーク
130A スポーク
130B スポーク
130C スポーク
130D スポーク
200 歪センサ
200A 第1歪センサ
200B 第2歪センサ
200C 第3歪センサ
200D 第4歪センサ
300 抵抗素子
300A 抵抗素子
300B 抵抗素子
300C 抵抗素子
300D 抵抗素子
500 算出部
501 第1電圧値入力部
502 第2電圧値入力部
503 第3電圧値入力部
504 第4電圧値入力部
505 電圧値加算部
506 駆動軸トルク算出部
507 出力部
508 データ記憶部
600A ボルト
600B ナット
700 ネジ
CP 内輪中心
OP 開口部
TH 貫通部
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