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特許7360547熱接着性繊維及びそれを含む自動車内外装材用繊維集合体
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  • 特許-熱接着性繊維及びそれを含む自動車内外装材用繊維集合体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】熱接着性繊維及びそれを含む自動車内外装材用繊維集合体
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/14 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
D01F8/14 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022521375
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2020013670
(87)【国際公開番号】W WO2021071250
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0124051
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イム ソン ス
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0079347(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0061561(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0050980(KR,A)
【文献】特開昭63-203818(JP,A)
【文献】特開2004-107860(JP,A)
【文献】特開2018-184043(JP,A)
【文献】特表2017-513965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F8/00- 8/18
D01F1/00- 6/96
9/00- 9/04
C08K3/00- 13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系成分及びリン系難燃剤が含まれた芯部と、
テレフタル酸を含む酸成分、及びエチレングリコールと下記化1で表される化合物及び化2で表される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合したコポリエステルを含み、前記芯部を取り囲む鞘部と、を含み、
前記芯部のポリエステル系成分は前記コポリエステルより高い融点または軟化点を有し、
前記ジオール成分のうち化1で表される化合物と化2で表される化合物との含量の総和が30~45モル%で含まれ、化1で表される化合物の含量が化2で表される化合物の含量より大きい、熱接着性繊維。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記ジオール成分のうち前記化1で表される化合物は20~40モル%、前記化2で表される化合物は0.8~10モル%で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の熱接着性繊維。
【請求項3】
前記芯部は、下記化3で表されるリン系難燃剤をリン含量基準5500ppm~6500ppm含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱接着性繊維。
【化3】
このとき、化3において、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、nは、1~20の整数であり、mは、1~80の整数である。
【請求項4】
熱接着性繊維の鞘部は、前記化3で表されるリン系難燃剤をさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の熱接着性繊維。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載の熱接着性繊維と、
融点が250℃より高いポリエステル系支持繊維と、を含む、自動車内外装材用繊維集合体。
【請求項6】
前記熱接着性繊維及び支持繊維は、70:30~30:70重量比で含まれることを特徴とする、請求項に記載の自動車内外装材用繊維集合体。
【請求項7】
下記条件(1)~条件(3)を満たす、請求項に記載の自動車内外装材用繊維集合体。
(1)炭化距離0~15cm
(2)熱接着性繊維に対するMS300-55方法に基づくアセトアルデヒド(AA)発生量が1600ppb以下
(3)高温たるみが20mm以下
【請求項8】
請求項に記載の自動車内外装材用繊維集合体を含む、自動車内外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着性繊維に関し、より詳細には、肌触り、吸音率、接着強度、難燃性及び加工性に非常に優れており、優れた耐熱性により経時変化が最小化され、VOCsの放出が著しく低減されて密閉された環境が具現される自動車に特に適した熱接着性繊維及びそれを含む自動車内外装材用繊維集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に合成繊維は融点が高いので、用途が制限される場合が少なくない。特に、繊維などの接着用途において芯などの用途やテープ上の織物の間に挿入して加圧接着する接着剤として使用される場合には、加熱により繊維織物そのものが劣化することがあり、高周波ミシンなどの特殊な装置を使用しなければならない煩わしさがあるため、このような特殊装置を用いずに通常の簡単な加熱プレスにより容易に接着することが望まれている。
【0003】
従来の低融点ポリエステル繊維は、マットレス、自動車用内装材または各種不織布パッティング用途で製造時に使用される相互繊維構造物において、異種の繊維を接着する目的でホットメルト(Hot Melt)型バインダー繊維が幅広く使用されてきた。
【0004】
例えば、米国登録特許第4,129,675号には、テレフタル酸(terephthalic acid:TPA)とイソフタル酸(isophthalic acid:IPA)を用いて共重合された低融点ポリエステルが紹介されており、また、韓国登録特許第10-1216690号には、接着性を改善させるためのイソフタル酸、ジエチレングリコールを含んで具現された低融点ポリエステル繊維を開示している。
【0005】
しかし、前記のような従来の低融点ポリエステル繊維は、一定水準以上の紡糸性及び接着性を有してもよいが、剛直な改質剤の環構造により熱接着後に硬い感触の不織布または織物構造体が得られるという問題点がある。
【0006】
また、バインダー特性の発現のために低い融点や、低いガラス転移温度を有する方向で開発が進むにつれて、具現されたポリエステルの耐熱性が劣悪となり、夏季の40℃を超える貯蔵条件においても経時変化が著しく発生し、貯蔵中に発生するポリエステル繊維間結合が発生し、貯蔵安定性も著しく低下するという問題点がある。特に、夏季に屋外駐車された自動車の室内温度は60℃以上に上がることがあるが、このような条件で耐熱性に劣るポリエステル繊維の使用時に具現された内装材の経時変化も問題になり得る。さらに、自動車の外装材もエンジンルーム付近の高温や、夏季の高温の屋外温度に持続的に露出されることにより、外装材の経時変化などのような耐熱性の問題は、当該用途において非常に敏感な事案である。
【0007】
一方、自動車は、通常外部と密閉された状態で運行され、特に最近の微細粉塵などの影響でさらに密閉された状態での運行が増加する傾向にある。このため、自動車の室内空間の空気の質が重要であるが、室内空間に搭載される内装材から揮発性有機化合物(VOCs)の放出問題が報告されており、放出された揮発性有機化合物によって搭乗者の健康を害する問題が浮上しているのが実情である。
【0008】
したがって、肌触り、吸音率、接着強度、難燃性及び加工性が改善され、経時変化が最小化され、VOCsの放出が著しく低減される自動車内装材の開発が急がれるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような点に鑑みて案出したもので、肌触り、吸音率、難燃性、接着強度及び加工性が非常に優れており、優れた耐熱性により経時変化が最小化され、VOCsの放出が著しく低減されて密閉された環境が具現される自動車に特に適しており、優れた耐熱性により高温の環境が造成される自動車エンジンルームの周囲に副資材として応用できる熱接着性繊維及びこれを含む自動車内外装材用繊維集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、ポリエステル系成分及びリン系難燃剤を含む芯部、及びテレフタル酸を含む酸成分、及びエチレングリコールと下記化1で表される化合物及び化2で表される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合されたコポリエステルを含み、前記芯部を取り囲む鞘部を含む熱接着性繊維を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記化1で表される化合物と化2で表される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分のうち30~45モル%で含まれてもよい。
【0014】
また、前記ジオール成分のうち化1で表される化合物の含量(モル%)が、化2で表される化合物の含量(モル%)より大きくてもよい。
【0015】
また、前記ジオール成分は、ジエチレングリコールを含んでいなくてもよい。
【0016】
また、前記酸成分は、イソフタル酸を酸成分を基準に1~10モル%さらに含まれてもよい。
【0017】
また、前記ジオール成分のうち前記化1で表される化合物は、1~40モル%、前記化2で表される化合物は、0.8~20モル%で含まれてもよく、より好ましくは、前記ジオール成分のうち前記化1で表される化合物は、20~40モル%、前記化2で表される化合物は、0.8~10モル%、さらに好ましくは、前記化1で表される化合物は、30~40モル%、前記化2で表される化合物は、0.8~6モル%で含まれてもよい。
【0018】
また、前記コポリエステルは、ガラス転移温度が60~75℃、より好ましくは、65~72℃であってもよい。
【0019】
また、前記コポリエステルは、固有粘度が0.500~0.800dl/gであってもよい。
【0020】
また、前記芯部は、下記化3で表されるリン系難燃剤をリン含量基準で5500ppm~6500ppm含んでもよい。
【0021】
【化3】
【0022】
このとき、化3において、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、nは、1~20の整数であり、mは、1~80の整数である。
【0023】
また、前記鞘部は、前記化3で表されるリン系難燃剤をさらに含んでもよい。
【0024】
また、本発明は、本発明による熱接着性繊維及び融点が250℃より高いポリエステル系支持繊維を含む自動車内外装材用繊維集合体を提供する。
【0025】
本発明の一実施例によれば、前記熱接着性繊維及び支持繊維は、70:30~30:70重量比で含まれてもよい。
【0026】
また、下記条件(1)~条件(3)として、(1)炭化距離0~15cm、(2)MS 300-55方法に基づく熱接着性繊維単独でのアセトアルデヒド(AA)発生量1600ppb以下、(3)高温たるみが20mm以下の条件を満たすことができる。
【0027】
また、本発明は、本発明による自動車内外装材用繊維集合体を含む自動車内外装材を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明による熱接着性繊維を用いて製造される繊維集合体は、肌触り、吸音率、難燃性、接着強度及び加工性に非常に優れている。また、優れた耐熱性により経時変化が最小化されることにより、夏季の屋外駐車時に高温の室内温度が形成される自動車内装材用途や、エンジンルーム周辺の高温環境が造成される部分の自動車外装材用途に最適である。さらに、VOCの放出が著しく低減されて密閉された環境での運行が増加する自動車内装材に最適であることから、関連分野に広く応用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施例に含まれる熱接着性繊維の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。本発明は、様々な異なる形態で具現されてもよく、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0031】
図1を参照して説明すると、本発明による熱接着性繊維10は、芯部11及び前記芯部11を取り囲む鞘部12を含む。
【0032】
前記鞘部12について先に述べると、前記鞘部12は、テレフタル酸を含む酸成分、及びエチレングリコールと下記化1で表される化合物及び化2で表される化合物を含むジオール成分が反応したエステル化化合物が重縮合したコポリエステルを含む。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
まず、前記酸成分は、テレフタル酸を含み、その他にテレフタル酸ではない炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸や、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸及び/またはスルホン酸金属塩をさらに含んでもよい。
【0036】
前記炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために使用される酸成分として公知のものを制限なく使用してもよいが、好ましくは、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸及びジメチルイソフタレートからなる群から選ばれたいずれか1つ以上であってもよく、より好ましくは、テレフタル酸との反応安定性、取り扱いの容易性及び経済的な側面でイソフタル酸であってもよい。
【0037】
また、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために使用される酸成分として公知のものを制限なく使用してもよいが、これに対する非制限的な例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、クエン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸及びパルミチン酸からなる群から選ばれたいずれか1つ以上であってもよい。
【0038】
また、前記スルホン酸金属塩は、ソジウム3,5-ジカルボメトキシベンゼンスルホネートであってもよい。
【0039】
一方、前記酸成分としてテレフタル酸の他に備えられてもよい他の成分は、コポリエステルの耐熱性を低下させることがあるので、好ましくは、含まない方がよい。特に、イソフタル酸や、ジメチルイソフタレートなどの酸成分がさらに含まれる場合、コポリエステルの重縮合過程で発生するVOCsの含量、一例としてアセトアルデヒドの含量が増加し得る反面、コポリエステルの融点はさらに低下し、熱処理などによる後工程を通じて重合過程で発生したアセトアルデヒドを気化させて除去することも難しいため、結果として製造された繊維でアセトアルデヒドの含量が高くなり得る。これにイソフタル酸をさらに含む場合、酸成分を基準に1~10モル%で備えられてもよく、10モル%を超えて備えられる場合にアセトアルデヒドの含量が過度に増加するおそれがあり、これにより具現された熱接着性繊維は、自動車内装材用途に適していないことがある。
【0040】
次に、前記ジオール成分は、エチレングリコールと下記化1で表される化合物と化2で表される化合物を含む。
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
まず、前記化1で表される化合物は、製造されるコポリエステルの結晶化度、ガラス転移温度を下げて優れた熱接着性能を発現させることができる。また、繊維状に製造された後、染色工程において常圧の条件で染色を可能にして染色工程をより容易にし、染着特性に優れているため、洗濯堅牢度が向上し、繊維集合体の肌触りを向上させることができる。好ましくは、前記ジオール成分のうち前記化1で表される化合物は、好ましくは、20~40モル%、より好ましくは、30~40モル%で含まれてもよい。特に化1で表される化合物が20モル%以上備えられる場合、後述する化2で表される化合物とともに具現したコポリエステルが低温での熱接着特性がさらに上昇して向上されることができ、コポリエステルをチップとして製造時に乾燥時間が著しく短縮され、熱接着性繊維から放出されるVOCsの含量減少に上昇した効果を発現できるという利点がある。
【0044】
もし、化1で表される化合物がジオール成分基準20モル%未満で含まれる場合、紡糸性は優れているが、接着可能温度が高くなるか、または熱接着特性が低下し、使用される用途が制限されるおそれがある。または、具現される熱接着性繊維から放出されるVOCの含量が増加するおそれがある。また、もし、化1で表される化合物が40モル%を超えて備えられる場合、熱接着性繊維への紡糸性が良くないため、常用化が困難な問題点が発生することがあり、むしろ、結晶性が増大して熱接着特性が低下するおそれがある。
【0045】
前記化2で表される化合物は、前記化1で表される化合物とともに製造されるコポリエステルの熱接着特性をさらに向上させながらも、化1で表される化合物のガラス転移温度が著しく低下することを防止し、優れた熱的特性を発現させる。一例として40℃以上の貯蔵温度、夏季60℃以上に上がる自動車の室内温度にもかかわらず、経時変化を最小化し、エンジンルームのような高温の環境が作られる部分の外装材として活用でき、貯蔵安定性を向上させることができる。熱接着性に関連して化2で表される化合物は、化1で表される化合物との混合使用されることにより具現されるコポリエステルを用いた熱接着性繊維に適切な収縮特性を発現させ、このような特性発現により熱接着時に点接着性をさらに増加させることにより、より上昇した熱接着特性を発現させることができる。
【0046】
好ましくは、前記ジオール成分のうち前記化2で表される化合物は、好ましくは、0.8~10モル%、より好ましくは、0.8~6モル%で含まれてもよい。
【0047】
もし、化2で表される化合物がジオール成分基準0.8モル%未満で含まれる場合、目的とする耐熱性の向上が困難であり、貯蔵安定性が良くなく、経時変化が非常に大きくなるおそれがある。さらに、具現される熱接着性繊維から放出されるVOCsの含量が増加するおそれがある。
【0048】
また、化2で表される化合物が10モル%を超えて含まれると、前記化1で表される化合物とともに使用されることを考慮すると、熱接着性繊維への紡糸性が良くないので、常用化が困難な問題点が発生することがある。また、場合によっては、酸成分としてイソフタル酸までさらに含む場合には、結晶性が十分に低下して接着性の向上が微々たるものであり、追加されるイソフタル酸の含量が増加すると、むしろ結晶性が増大し、目的とする温度での優れた熱接着特性が著しく低下することがあるなど、発明の目的を達成できないおそれがある。また、繊維状で具現するとき、収縮性が著しく大きく発現して繊維集合体や内外装材への加工が困難である。
【0049】
本発明の好ましい一実施例によれば、前記化1で表される化合物と化2で表される化合物の含量の総和は、前記ジオール成分のうち30~45モル%で含まれることが好ましく、より好ましくは、33~41モル%で含まれてもよい。もし、30モル%未満でこれらが含まれる場合、コポリエステルの結晶性が増加して高い融点が発現するか、または軟化点を低い温度で具現しにくくなり、熱接着可能温度が著しく高くなり、低い温度では優れた熱接着特性が発現しないことがある。また、具現される熱接着性繊維から放出されるVOCsの含量が増加するおそれがある。
【0050】
また、もし、化2で表される化合物が45モル%を超えて含まれる場合、重合反応性と紡糸性が著しく低下するおそれがあり、製造されるコポリエステルの結晶性がむしろ増加し、目的とする温度での高い熱接着特性を発現しにくいことがある。
【0051】
このとき、前記ジオール成分のうち上述した化1で表される化合物が、化2で表される化合物よりも大きな含量(モル%)で含まれてもよい。もし、化1で表される化合物が化2で表される化合物より少ないか、または同量で含まれる場合、目的とする熱接着特性を発現しにくく、高温で接着されなければならないので、展開される製品の用途に制限があり得る。また、過度な収縮特性の発現により、展開される製品、一例として自動車内外装材への加工や活用が困難となるおそれがある。
【0052】
一方、前記ジオール成分は、上述した化1で表される化合物、化2で表される化合物及びエチレングリコール以外に他の種類のジオール成分をさらに含んでもよい。
【0053】
前記他の種類のジオール成分は、ポリエステルの製造に用いられる公知のジオール成分であってもよく、本発明は、これに対して特に限定されるものではないが、これに対する非制限的な例として、炭素数2~14の脂肪族ジオール成分であってもよく、具体的には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、トリメチルグリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ウンデカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール及びトリデカメチレングリコールからなる群から選ばれるいずれか1つ以上であってもよい。
【0054】
ただし、目的とする水準の熱接着特性とともに耐熱性を備えるためには、前記他の種類のジオール成分は、さらに含まないことが好ましく、特にジエチレングリコールは、前記ジオール成分に含まれていなくてもよい。もし、ジエチレングリコールがジオール成分に含まれる場合、ガラス転移温度の急激な低下を招き、化2で表される化合物を備える場合でも、目的とする水準の耐熱性を達成できないことがある。また、使用中に放出されるVOCsの含量が大幅に増加するおそれがある。一方、前記ジオール成分にジエチレングリコールが含まれないという意味は、コポリエステルの製造のためのモノマーとして意図的にジエチレングリコールを投入しないことを意味し、酸成分及びジオール成分のエステル化反応、重/縮合反応において副産物として発生するジエチレングリコールまで含まないことを意味するものではない。ジエチレングリコールは、副産物として自然発生することがあるため、本発明の一実施例によれば、コポリエステルを含んで形成された鞘部には、副産物として発生したジエチレングリコールが含まれてもよく、含まれたジエチレングリコールの含量は、コポリエステルチップまたはコポリエステル単独からなる鞘部の重量を基準に4重量%未満であってもよい。一方、副産物として発生するジエチレングリコールの含量が適正水準を超える場合、繊維に紡糸時にパック圧を増加させ、頻繁な糸絶を誘発して紡糸性が著しく低下することがあり、放出されるVOCsの含量、特にアセトアルデヒドの放出量が著しく増加するおそれがある。
【0055】
上述した酸成分及びジオール成分は、ポリエステル合成分野の公知の合成条件を用いてエステル化反応及び重縮合を経てコポリエステルとして製造されてもよい。このとき、酸成分とジオール成分は、1:1.0~5.0、好ましくは、1:1.0~2.0のモル比で反応するように投入されてもよいが、これに制限されるものではない。前記モル比率が酸成分を基準にジオール成分が1倍未満である場合、重合時に酸度が過度に高くなって副反応が促進されることがあり、前記モル比率が酸成分を基準にジオール成分が5倍を超える場合、重合度が高くならないことがある。
【0056】
一方、前記酸成分及びジオール成分は、前記のような適正なモル比で一度に混合された後、エステル化反応及び重縮合を経てコポリエステルとして製造されるか、または酸成分とジオール成分のうちエチレングリコールと化1で表される化合物間のエステル化反応中に化2で表される化合物を投入してエステル化反応及び重・縮合を経てコポリエステルとして製造されてもよく、本発明は、これに対して特に限定されるものではない。
【0057】
前記エステル化反応において触媒をさらに含んでもよい。前記触媒は、通常、ポリエステルの製造時に使用される触媒を使用してもよく、これに対する非制限的な例として、金属アセテート触媒下で製造されてもよい。
【0058】
また、前記エステル化反応は、好ましくは、200~270℃の温度及び1100~1350トル(Torr)の圧力下で行われてもよい。前記条件を満たさない場合、エステル化反応時間が長くなったり、反応性の低下により重縮合反応に適したエステル化化合物を形成できないという問題が発生することがある。
【0059】
また、前記重縮合反応は、250~300℃の温度及び0.3~1.0トル(Torr)の圧力下で行われてもよく、もし、前記条件を満たさない場合、反応時間の遅延、重合度の低下、熱分解の誘発などの問題点があり得る。また、前記重縮合反応は、反応条件によって反応時間が変動されてもよいが、一例として、150~240分間行われてもよい。
【0060】
このとき、重縮合反応時に触媒をさらに含んでもよい。前記触媒は、ポリエステル樹脂の製造に使用される公知の触媒の場合、制限なく使用してもよい。ただし、好ましくは、チタン系重合触媒であってもよく、さらに具体的には、下記化4で表されるチタン系重合触媒であってもよい。
【0061】
【化4】
【0062】
前記化4で表されるチタン系重合触媒は、水分子の存在下でも安定である。このため、水が多量に副生するエステル化反応の以前に添加しても失活しないため、従来より短縮された時間内にエステル化反応及び重縮合反応が進行し、これにより黄変による着色を抑制しうる。前記触媒は、得られるコポリエステルの全重量でのチタン原子換算で5~40ppmとなるように含まれてもよく、これによりコポリエステルの熱安定性や色調がより良好になって好ましい。もし、チタン原子換算で5ppm未満で備えられる場合、エステル化反応を適切に促進させることが困難であり、もし、40ppmを超えて備えられる場合、反応性は促進されるが、着色が発生するという問題点があり得る。
【0063】
一方、重縮合反応時に熱安定剤をさらに含んでもよい。前記熱安定剤は、高温で熱分解による色の変色を防止するためのものとして、リン系化合物を用いてもよい。前記リン系化合物は、一例として、リン酸、モノメチルリン酸、トリメチルリン酸、トリエチルリン酸などのリン酸類及びその誘導体を用いてもよく、その中でも特にトリメチルリン酸またはトリエチルリン酸が効果に優れているため、より好ましい。前記リン系化合物の使用量は、最終的に得られるコポリエステルの全重量に対して、リン原子換算で10~30ppmを用いることが好ましい。もし、リン系熱安定剤が10ppm未満で使用される場合、高温熱分解を防止しにくく、コポリエステルが変色することがあり、もし、30ppmを超える場合、製造コストの面で不利になることがあり、重縮合反応の際、熱安定剤による触媒活性の抑制により反応遅延現象が発生するという問題点があり得る。
【0064】
また、コポリエステルは、補色剤をさらに含んでもよい。前記補色剤は、繊維に紡糸された後に行われる染色工程において染着される染料の色をより強く、良くするための色調調整のためのもので、繊維分野において公知のものを添加してもよく、これに対する非制限的な例として、原着用染料、顔料、建染染料、分散染料、有機顔料などがある。ただし、好ましくは、ブルー及びレッド染料が混合されたものを用いてもよい。これは補色剤として一般的に使用されるコバルト化合物の場合、人体有害性が大きいため、好ましくなく、一方、ブルー及びレッド染料が混合された補色剤は、人体に無害であるため、好ましい。また、ブルー及びレッド染料を混合して使用される場合、色調を細かく制御できるという利点がある。前記ブルー染料は、一例として、solvent blue104、solvent blue122、solvent blue45などであってもよく、前記レッド染料は、一例として、solvent red111、solvent red179、solvent red195などであってもよい。また、前記ブルー色素とレッド染料は、1:1.0~3.0重量比で混合されてもよく、これにより目的とする微細な色調制御に顕著な効果を発現するのに有利である。
【0065】
前記補色剤は、コポリエステルの全重量を基準に1~10ppm備えられてもよく、もし、1ppm未満で備えられる場合、目的とする水準の補色特性を達成しにくく、10ppmを超える場合、L値が減少して透明性が低下し、暗い色を呈するという問題点があり得る。
【0066】
上述した方法を通じて製造されたコポリエステルは、固有粘度が0.5~0.8dl/gであってもよい。もし、固有粘度が0.5dl/g未満の場合、繊維に紡糸された後、断面形成が容易でない場合があり、固有粘度が0.8dl/gを超える場合、パック(Pack)圧力が高く、紡糸性が低下するおそれがある。
【0067】
また、前記コポリエステルは、ガラス転移温度が60~75℃であってもよく、これにより本発明の目的を達成するのにより有利である。もし、ガラス転移温度が60℃未満の場合、コポリエステルを含んで具現された熱接着性繊維やこれを含んで具現された物品が夏季のような例えば10℃を超える温度条件でも経時変化が大きく、特に、夏季の自動車の室内温度や、高温のエンジンルーム付近の温度を考慮するとき、経時変化が著しく増加することがある。また、熱接着性繊維を製造するとき、コポリエステルチップ間結合の発生が増加し、これにより紡糸不良を引き起こすこともある。さらに、繊維などで具現された後、収縮特性が過度に発現し、むしろ接合特性が低下するおそれがある。さらに、チップ形成後の乾燥工程、繊維に紡糸された後の後加工の工程などに要する熱処理の限界により、工程所要時間の長期化または当該工程を円滑に行うことができない問題があり得る。
【0068】
また、もし、ガラス転移温度が75℃を超える場合、熱接合特性が著しく低下するおそれがあり、接合工程の遂行温度が高温に制限されるおそれがある。
【0069】
一方、上述した鞘部12は、難燃性を増加させるためにリン系難燃剤を含んでもよい。前記リン系難燃剤は、繊維に備えられる公知のリン系難燃剤の場合、制限なく使用されてもよい。好ましくは、前記リン系難燃剤は、後述する化3で表される化合物を含んでもよい。または、上述した鞘部12にリン系難燃剤が含まれる場合、鞘部の融点が高くなり、これにより接着強度が多少低下するおそれがある。特に化2で表される化合物の場合、他の種類の改質モノマーに対してリン系難燃剤の含有による融点増加が大きくなり、これにより接着強度が低下するおそれがある。したがって、本発明の他の一実施例によれば、前記鞘部12は、リン系難燃剤を含まなくてもよい。ここで、リン系難燃剤を含まないということは、鞘部に備えられたコポリエステル共重合体内の主鎖や、側鎖に結合される成分及び/または前記コポリエステルとともに鞘部に含まれる成分としてリン系難燃剤を含まないという意味である。
【0070】
一方、下記化3で表される化合物が鞘部12に含まれる場合、リン含量基準5500ppm~6500ppmの含量で備えられてもよい。もし、前記化合物がリン含量基準5500ppm未満で備えられる場合、目的とする水準で十分な難燃性を具現することが困難である。また、もし、前記化合物がリン含量基準6500ppmを超えて備えられる場合、難燃性向上の程度が微々たるものである反面、紡糸性が低下し、融点が増加して接着強度の低下及び熱接着性繊維の強度など機械的物性が著しく低下するおそれがある。
【0071】
次に、前記芯部11は、ポリエステル系成分及びリン系難燃剤を含む。前記ポリエステル系成分は、上述した鞘部12に備えられるコポリエステルの融点または軟化点より高い温度を融点または軟化点として有するポリエステル系成分の場合、制限はなく、一例としてポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0072】
また、前記リン系難燃剤は、難燃特性を向上させるため、高分子化合物とともに混合される公知のリン系難燃剤の場合、制限なく使用されてもよい。好ましくは、前記リン系難燃剤は、下記化3で表される化合物を含んでもよく、これにより加工時の難燃剤加水分解による繊維物性の低下を防止しうる。
【0073】
【化3】
【0074】
このとき、化3において、Rは、炭素数1~5のアルキレン基であり、好ましくは、炭素数2~4のアルキレン基である。そして、前記nは、1~20の整数、好ましくは、5~10の整数である。また、前記mは、1~80の整数、好ましくは、20~40の整数である。
【0075】
前記化3で表される化合物は、芯部11にリン含量基準5500ppm~6500ppmの含量で備えられてもよい。もし、前記化合物がリン含量基準5500ppm未満で備えられる場合、目的とする水準で十分な難燃性を具現することは困難である。また、もし、前記化合物がリン含量基準6500ppmを超えて備えられる場合、難燃性向上の程度が微々たるものである反面、紡糸性が低下し、熱接着性繊維の強度などの機械的物性が著しく低下するおそれがある。
【0076】
前記熱接着性繊維は、一例として8:2~2:8の重量比で芯部と鞘部を複合紡糸したものであってもよいが、これに制限されるものではなく、目的に応じて割合を適切に調整して紡糸してもよい。前記熱接着性繊維に対する紡糸条件、紡糸装置及び紡糸後の複合繊維に対する冷却、延伸などの工程は、当該技術分野の公知の条件、装置及び工程を通じて、またはこれを適宜変形して行ってもよいので、本発明は、これに対して特に限定するものではない。また、一例として、前記熱接着性繊維は、270~290℃の紡糸温度で紡糸されたものであってもよく、紡糸後、2.5~4.0倍延伸されたものであってもよい。
【0077】
上述した製造方法で具現される本発明の一実施例による熱接着性繊維は、単独で自動車内外装材用繊維集合体を具現しうる。ただし、好ましくは、ポリエステル系支持繊維とともに自動車内外装材用繊維集合体を具現しうる。
【0078】
前記熱接着性繊維は、ポリエステル系支持繊維間を熱融着を通じて付着させる役割を果たし、それ自体としても繊維集合体の形状の具現及び機械的強度を担保する繊維として使用されてもよい。
【0079】
前記熱接着性繊維は、具現される繊維集合体の物性を考慮して繊度や繊維長が適宜選ばれてもよいが、一例として繊度が1~15デニールであり、繊維長は、一例として1~100mmであってもよい。
【0080】
また、前記支持繊維は、前記熱接着性繊維との相溶性のためにポリエステル系成分を含んで具現されたものであって、繊維集合体の機械的強度、形状保持、耐熱性を担保する役割を果たす。この目的のため、前記ポリエステル系成分は、融点が250℃より高い成分であってもよく、これにより本発明の目的を達成するのにより有利である。
【0081】
前記支持繊維は、一例として繊度が2~15デニールであり、繊維長は、10~80mmであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0082】
また、前記支持繊維は、融点が250℃を超える公知のポリエステル系成分である場合、制限なく使用されてもよく、一例としてポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0083】
上述した熱接着性繊維と支持繊維は、30:70~70:30の重量比で繊維集合体を形成してもよい。もし、前記支持繊維が前記重量比から外れて熱接着性繊維よりも多くの重量で備えられる場合、繊維集合体の接合強度が減少することがある。また、前記支持繊維が前記重量比から外れて熱接着性繊維より少ない重量で備えられる場合、繊維集合体の吸音率、肌触り、形態安定性が著しく低下し、初期の開面性やカーディング性のような作業性が著しく低下するおそれがある。
【0084】
前記熱接着性繊維と支持繊維を含む繊維集合体は、公知の生地の形態、例えば、織物、編物または不織布であってもよく、一例として繊維長手方向を基準とした方向性のない不織布であってもよい。前記不織布は、乾式または湿式の公知の不織布の製造方法によって製造されたものであってもよく、本発明は、これに特に限定されるものではない。
【0085】
一例として、前記熱接着性繊維と支持繊維は、所定の長さを有する短繊維から製造された後、短繊維を混繊及び開繊後、熱処理を経て繊維集合体として具現されてもよい。前記熱処理は、100~180℃、より好ましくは、120~180℃であってもよく、これにより、より向上した接着特性を発現しうる。
【0086】
本発明の一実施例による自動車内外装材用繊維集合体は、下記条件(1)~条件(3)を満たすことができる。
【0087】
まず、条件(1)として、繊維集合体の炭化距離が0~15cmであってもよい。これにより優れた難燃性を発現しうる。もし、炭化距離が15cmを超える場合、高温のエンジンルーム周辺の外装材として活用されにくく、火災発生時に内部に火災が拡散する問題があり得る。このとき、前記炭化距離は、熱接着性繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)とポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(繊維長51mm、繊度7.0de)を5:5で混繊及び開繊した後、180℃、15分の条件で熱処理して坪量が1250g/mで製造された横、縦及び厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmの繊維集合体の試片を対象として評価した。
【0088】
次に、条件(2)として、繊維集合体に備えられた熱接着性繊維は、MS300-55方法に基づくアセトアルデヒド(AA)発生量が2400ppb以下、より好ましくは、1950ppb以下、さらに好ましくは、1600ppb以下であってもよく、これにより自動車内部のような密閉された環境内の人体に対する有害成分の発生量が著しく少ないので、自動車内装材として非常に有用であり、内装材の臭いを減らすことができる利点がある。
【0089】
次に、条件(3)として、下記測定方法で測定された高温たるみが20mm以下であってもよく、これにより高温の発熱源に近接して使用される場合でも形状の変形を最小化することができ、夏季の高温の環境でも形態の変形を予防できる利点がある。このとき、前記高温たるみは、熱接着性繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)とポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(繊維長51mm、繊度7.0de)を5:5重量比で混繊及び開繊した後、180℃、15分の条件で熱処理して坪量が330g/mで製造された横、縦及び厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmの繊維集合体の試片を90℃の環境で2時間露出させた後、試片の長手方向の両端を固定した後、たるみ部分のたるみ幅を測定した。このとき、たるみ幅は、両端の下面を基準に測定し、最大値を高温たるみ値とした。
【0090】
また、条件(4)として、繊維集合体の残炎時間が3.0秒以下であってもよく、これにより優れた難燃性を発現しうる。もし、残炎時間が3.0秒を超える場合、高温のエンジンルーム周辺の外装材として活用されにくい場合があり、火災発生時に内部に火災が拡散する問題があり得る。
【0091】
一方、上述した自動車内外装材用繊維集合体は、単独またはPET単独の繊維集合体などをさらに含んで自動車内外装材として具現しうる。前記自動車内外装材は、公知の種類の内外装材であってもよく、好ましくは、優れた吸音率、接着強度、難燃性、耐熱性及び低いVOCs放出量を考慮して自動車の下部、例えばエンジンやミッションなどの部位を保護するためのアンダーカバーなどに特に適している。
【0092】
[実施例]
下記実施例を通じて本発明をさらに具体的に説明するが、下記実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、これは本発明の理解を助けるためのものとして解釈されるべきであろう。
【0093】
<実施例1>
ジオール成分として下記化1で表される化合物38モル%と下記化2で表される化合物3モル%及び残りのジオール成分としてエチレングリコール59モル%を投入し、酸成分としてテレフタル酸100モル%を投入して前記酸性分とジオール成分を1:1.2の割合で250℃で1140トル(torr)圧力下で、エステル化反応させてエステル反応物を得ており、その反応率は、97.5%であった。形成されたエステル反応物を重縮合反応器に移し、重縮合触媒として下記化4で表される化合物15ppm(Ti元素基準)、熱安定剤としてトリエチルリン酸25ppm(P元素基準)を投入し、最終圧力0.5Torrとなるように徐々に減圧しながら285℃まで昇温し、縮重合反応を行ってコポリエステルを製造し、以後、前記コポリエステルを通常の方法により横、縦、高さがそれぞれ2mm×4mm×3mmのポリエステルチップに製造した。
【0094】
以後、前記コポリエステルを鞘部とし、固有粘度が0.65dl/gのポリエチレンレテフタレート(PET)を芯部とする芯鞘型複合繊維を製造するため、前記コポリエステルチップ、及びPETチップと下記化3のリン系難燃剤をホッパーにそれぞれ投入して溶融させて芯鞘型紡糸口金にそれぞれ投入した後、275℃にて1000mpm紡糸速度で芯部と鞘部が5:5重量比となるように複合紡糸し、3.0倍延伸して繊維長が51mmであり、繊度が4.0deである下記表1のような芯鞘型熱接着性繊維を製造した。このとき、芯部に含まれたリン系難燃剤の含量は、リン含量を基準に5700ppmであった。
【0095】
【化1】
【0096】
【化2】
【0097】
【化3】
【0098】
このとき、化3において炭素数3の直鎖状アルキレン基であり、前記nは、10の整数であり、mは、40の整数である。
【0099】
【化4】
【0100】
<実施例2~14>
実施例1と同様に行って製造するが、下記表1、表2または表3のようにコポリエステルの製造のためのモノマーの組成比を変更させ、下記表1、表2または表3のような芯鞘型複合繊維である熱接着繊維を製造した。
【0101】
<比較例1~4>
実施例1と同様に行って製造するが、下記表3のようにコポリエステルの製造のためのモノマーの組成を変更させ、下記表3のようなポリエステルチップ及びそれを用いた芯鞘型複合繊維である熱接着繊維を製造した。
【0102】
<実験例1>
実施例及び比較例により具現された熱接着繊維の製造中に中間物であるコポリエステルチップや、熱接着性繊維、またはこれを用いて製造された繊維集合体に対して下記物性を評価し、その結果を下記表1~表3に示した。
【0103】
このとき、繊維集合体は、熱接着性繊維とポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)を5:5重量比で混繊及び開繊した後、それぞれ120℃、140℃及び160℃の温度条件で熱処理し、坪量が35g/mの計3種類の繊維集合体を対象とした。
【0104】
1.固有粘度
コポリエステルチップに対してオルトークロロフェノール(Ortho-Chloro Phenol)を溶媒として110℃、2.0g/25mlの濃度で30分間溶融後、25℃で30分間恒温してキヤノン(CANON)粘度計が連結された自動粘度測定装置で分析した。
【0105】
2.ガラス転移温度、融点
示差熱量分析器を用いてコポリエステルのガラス転移温度及び融点を測定し、分析条件は、昇温速度を20℃/minとした。
【0106】
3.コポリエステルチップ乾燥時間
重縮合したコポリエステル樹脂をチップ(chip)化後、真空乾燥機で55℃、4時間間隔で水分率を測定し、測定結果水分率100ppm以下で測定されたときの時間を乾燥時間で示した。
【0107】
4.短繊維貯蔵安定性
製造された芯鞘型複合繊維500gに対して温度40℃、相対湿度45%のチャンバーで圧力2kgf/cmを加えて3日間放置し、繊維間の融着状態を専門家10人が肉眼で観察し、その結果、融着が発生しない場合を10点、すべて融着が発生した場合を0点を基準として0~10点と評価した後、平均値を計算した。その結果、平均値が9.0以上の場合は、非常に優秀(◎)、7.0以上9.0未満の場合は、優秀(○)、5.0以上7.0未満は、普通(△)、5.0未満は、悪い(×)で示した。
【0108】
5.紡糸作業性
紡糸作業性は、実施例及び比較例別に同じ含量で紡糸された芯鞘型複合繊維に対して、紡糸加工中にドリップ(口金を通過する繊維鎖が一部融着するか、または糸絶後に糸どうしが不規則に融着して形成された塊を意味する)発生数値をドリップ検知器でカウントし、準備例1におけるドリップ発生数値を100を基準として残りの実施例及び比較例で発生したドリップ個数を相対的な百分率で表した。
【0109】
6.染着率評価
芯鞘型複合繊維重量を基準に2重量%のブルー(blue)染料を含む染液に対して、浴比1:50で90℃で60分間染着工程を行った後、日本のクラボウ(KURABO)社の色彩測定システムを用いて染色された複合繊維に対する可視領域(360~740nm、10nm間隔)の分光反射率を測定した後、CIE 1976規格に基づく染着量の指標であるTotal K/S値を算出し、染料の色収得率を評価した。
【0110】
7.接着強度
3種の繊維集合体のそれぞれを横、縦及び厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmの試片で具現し、KS M ISO 36方法に基づいてUTM(universal testing machine)を用いて接着強度を測定した。
【0111】
一方、熱処理時に過度な収縮により形態が変形した場合、接着強度を評価せず、「形態変形」と評価した。
【0112】
8.ソフト肌触り
3種の繊維集合体のうち140℃の温度条件で熱処理して製造された繊維集合体に対して、10人の同種業界の専門家からなるグループによる官能検査を行い、評価結果、8人以上がソフトであると判断した場合、優秀(◎)、6~7人は、良好(○)、5~4人は、普通(△)、4人未満は、不良(×)と区分した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
表1~表3から確認できるように、比較例は、乾燥時間が著しく延長されるか(比較例1~3)、または紡糸作業性が著しく良くないか(比較例2、比較例3)、または短繊維貯蔵安定性が非常に悪くなるか(比較例2、比較例3)、または温度別接着強度評価において形態が変形(比較例4)されたことが確認でき、すべての物性を同時に満足させることができないことが確認できるが、実施例は、すべての物性を優れた水準で発現していることが確認できる。
【0117】
一方、実施例でも化1で表される化合物より化2で表される化合物の含量がより多く含まれた実施例15は、他の実施例に比べて温度別接着強度評価において形態が変形し、目的とする物性を達成するのに適していないことが確認できる。
【0118】
<実施例15~27>
実施例1と同様に行って製造するが、下記表1のようにコポリエステルの製造のためのモノマーの組成比を変更させてコポリエステルを製造し、複合繊維を紡糸するとき、芯部のみに含まれた化3で表されるリン系難燃剤をコポリエステルチップとともに鞘部に紡糸し、鞘部と芯部も同じ含量でリン系難燃剤を備えた下記表4のような熱接着性繊維を製造した。
【0119】
一方、表4において酸成分及びジオール成分の含量単位は、モル%であり、ジオール成分の残量は、エチレングリコール(EG)である。
【0120】
<実験例2>
実施例15~27により具現された熱接着性繊維またはそれを用いた繊維集合体に対して下記物性を評価し、その結果を下記表4に示した。
【0121】
1.熱接着性繊維強度評価
Textechno社のFAVIMAT Fiber Test設備を用いて繊維強度を測定し、分析条件は、分析時の治具の移動速度を600mm/minとした。
【0122】
2.難燃性測定
防火度試験法KS K 0585:2014垂直法に基づいて繊維集合体の難燃性を測定して評価した。このとき、前記繊維集合体は、熱接着性繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)とポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(繊維長51mm、繊度7.0de)を5:5で混繊及び開繊した後、180℃、15分の条件で熱処理し、坪量が1250g/mで製造された繊維集合体を対象とした。
【0123】
3.熱接着性繊維のアセトアルデヒド(AA)発生量
MS 300-55 Methodに基づいて、熱接着性繊維のアセトアルデヒド発生量を測定した。
【0124】
4.耐熱性
熱接着性繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)とポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(繊維長51mm、繊度7.0de)を5:5重量比で混繊及び開繊した後、180℃、15分の条件で熱処理して製造された坪量330g/mであり、横、縦及び厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmの試片を90℃の環境で約2時間露出させた後、試片の長手方向の両端を固定させた後、たるみ部分のたるみ幅を測定した。このとき、たるみ幅は、両端の下面を基準に測定し、最大値を高温たるみ値とした。
【0125】
【表4】
【0126】
表4から確認できるように、化1で表される化合物と化2で表される化合物のジオール成分内の総含量が多少少なく含まれる場合、実施例21のようにAA発生量が過度に増加することが確認できる。また、リン系難燃剤が多少多く含まれる場合、実施例20のように繊維強度が低下するおそれがある。
【0127】
<実験例3>
実施例15~20による熱接着性繊維を用いて製造された繊維集合体に対して下記方法で接着強度を評価し、その結果を下記表5に示した。
【0128】
繊維集合体は、熱接着性繊維(繊維長51mm、繊度4.0de)とポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維(繊維長51mm、繊度7.0de)を5:5重量比で混繊及び開繊した後、180℃、15分の条件で熱処理して坪量が330g/mで製造された繊維集合体を対象とした。
【0129】
接着強度は、Instron(登録商標)(引張速度500mm/min、Load-Cell2kN、Grip 5kN)装置を用いて該当条件で試片の接着強度を12回測定し、結果値のうち最小値及び最大値を除いた10個のデータの平均値を計算した。このとき、試片は、横、縦及び厚さがそれぞれ100mm×20mm×10mmであった。
【0130】
【表5】
【0131】
表5から確認できるように、熱接着性繊維の鞘部に多少多くリン系難燃剤が備えられた実施例20の場合、接着強度が低下していることが分かる。
【0132】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施例を容易に提案できるが、これも本発明の思想範囲内に入るであろう。
図1