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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-03
(45)【発行日】2023-10-12
(54)【発明の名称】回転電機及び絶縁テープ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/30 20060101AFI20231004BHJP
【FI】
H02K3/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022556629
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2022010036
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 優
(72)【発明者】
【氏名】岡本 徹志
(72)【発明者】
【氏名】謝 錦霞
(72)【発明者】
【氏名】今井 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏光
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/002971(WO,A1)
【文献】米国特許第6359232(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と、
前記固定子に対して回転可能な回転子と、
前記固定子と前記回転子とのうち少なくとも前記固定子に設けられ、導電体と、前記導電体を覆った絶縁テープと、を有したコイルと、
を備え、
前記絶縁テープは、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有したベース層と、
ナノサイズのシリカ粒子を含み、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに重ねられた二つの接着層と、
前記第1面と前記第2面とのそれぞれに対して設けられ、前記接着層によって前記ベース層に接着された二つの補強層と、
を有し、
前記接着層と前記補強層とは別々の層であり、
前記補強層は、前記接着層に対して前記ベース層とは反対側で前記接着層に重ねられた、
回転電機。
【請求項2】
前記絶縁テープは、互いに重ねられた部分を有し、
前記コイルは、ナノサイズのマイカ粒子を含み、互いに重ねられた二つの前記部分の間に介在するとともに前記導電体を覆った被覆部を有した、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
回転電機のコイルの導電体を覆う絶縁テープであって、
前記絶縁テープは、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有したベース層と、
ナノサイズのシリカ粒子を含み、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに重ねられた二つの接着層と、
前記第1面と前記第2面とのそれぞれに対して設けられ、前記接着層によって前記ベース層に接着された二つの補強層と、
を備え、
前記接着層と前記補強層とは別々の層であり、
前記補強層は、前記接着層に対して前記ベース層とは反対側で前記接着層に重ねられた、
絶縁テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び絶縁テープに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機、発電機等の回転電機に用いられるコイルには、コイル内の導電体に流れる電流が外部に漏洩することを防止する絶縁構造が設けられる。
【0003】
上記のような絶縁構造として、導電体に絶縁テープを巻回する構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2013/0131218号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の絶縁テープの絶縁性の寿命の長期化をすることができれば有益である。
【0006】
本発明の課題の一つは、絶縁テープの絶縁性の寿命の長期化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態の回転電機は、固定子と、前記固定子に対して回転可能な回転子と、前記固定子と前記回転子とのうち少なくとも前記固定子に設けられ、導電体と、前記導電体を覆った絶縁テープと、を有したコイルと、を備え、前記絶縁テープは、第1面と、前記第1面の反対側の第2面と、を有したベース層と、ナノサイズのシリカ粒子を含み、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに重ねられた二つの接着層と、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに対して設けられ、前記接着層によって前記ベース層に接着された二つの補強層と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態の回転電機および絶縁テープによれば、絶縁テープの絶縁性の寿命の長期化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る回転電機の構成を示す断面図である。
図2図2は、実施形態に係る絶縁コイルの構成を示す斜視図である。
図3図3は、実施形態に係る絶縁コイルの構成を示す断面図である。
図4図4は、実施形態に係る絶縁テープの構成を模式的に示す断面図である。
図5図5は、実施形態に係る主絶縁部の内部構造を模式的に示す断面図である。
図6図6は、実施形態に係るマイカ粒子による効果を模式的に示す主絶縁部の断面図である。
図7図7は、実施形態に係るシリカ粒子による効果を模式的に示す絶縁テープの断面図である。
図8図8は、実施形態に係る絶縁コイルの絶縁構造の製造方法における手順を示すフローチャートである。
図9図9は、実施形態に係る絶縁構造の製造方法に使用される含浸装置の前半段階における状態を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る絶縁構造の製造方法に使用される含浸装置の後半段階における状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0011】
<回転電機の構成>
【0012】
図1は、実施形態に係る回転電機1の構成を示す断面図である。
【0013】
回転電機1は、回転子10及び固定子20を有する。回転子10は、固定子20に対し回転可能である。回転電機1は、例えば、電動機、発電機等の構成要素となるものである。
【0014】
回転子10は、ロータシャフト11及び回転子鉄心12を有する。ロータシャフト11は、その両端付近が軸受5により回転可能に軸支されている。軸受5は、回転電機1の外郭を構成するフレーム6と一体に設けられた軸受ブラケット7に固定されている。回転子鉄心12は、ロータシャフト11の外周面に固定され、ロータシャフト11と共に回転する。
【0015】
固定子20は、固定子鉄心21及び絶縁コイル22を有する。固定子鉄心21は、回転子鉄心12の径方向外側に隙間をあけて配置されている。絶縁コイル22は、固定子鉄心21に組み込まれ回転電機1に必須となる磁界を生じさせる部材であり、その外周部には後述する絶縁構造が設けられている。絶縁コイル22は、固定子鉄心21内を貫通するように組み付けられる。絶縁コイル22は、コイルの一例である。
【0016】
<絶縁コイルの構成>
【0017】
図2は、実施形態に係る絶縁コイル22の構成を示す斜視図である。図3は、実施形態に係る絶縁コイル22の構成を示す断面図である。
【0018】
絶縁コイル22は、積層導体31(導電体)、ターン絶縁部33、及び主絶縁部35を有する。ターン絶縁部33及び主絶縁部35により、絶縁コイル22の絶縁構造が構成される。
【0019】
積層導体31は、複数の導線31Aが積層されて構成されている。本実施形態に係る積層導体31は、14本(積層数7、列数2)の導線31Aが束ねられて構成されている。なお、積層導体31の構成はこれに限定されるものではなく、使用状況に応じて適宜設計されるべきものである。積層導体31は、例えば、14本より多くの導線31Aから構成されてもよいし、1本の導線31Aのみを積層し構成されていてもよい。
【0020】
各導線31Aの外面には、ターン絶縁部33が設けられている。その結果、積層導体31の外面は、ターン絶縁部33により覆われた状態となる。ターン絶縁部33の外側には、主絶縁部35が設けられている。主絶縁部35は、巻回された絶縁テープ40(テープ状部材)を含む。
【0021】
本実施形態に係る絶縁テープ40は、ハーフラップ方式により螺旋状に巻回されている。絶縁テープ40の幅をWとするとき、螺旋のピッチはW/2となる。すなわち、絶縁テープ40は、前回のターンで巻かれた絶縁テープ40と半分重なるように巻回されている。積層導体31の長手方向全体への巻回が一通り完了した後、更にその上に重ねるように絶縁テープ40を巻回してもよい。これにより、絶縁テープ40を多層状に形成できる。絶縁テープ40の層数が増加するほど絶縁性能を向上させることができる。絶縁テープ40の巻回数は求められる絶縁性能等に応じて適宜選択されればよい。
【0022】
図4は、実施形態に係る絶縁テープ40の構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
絶縁テープ40は、ベース層41と、二つの補強層43A,43Bと、二つの接着層,42A,42Bと、を有する。以後、二つの補強層43A,43Bの総称として補強層43を用い、二つの接着層,42A,42Bの総称として接着層を用いる。ベース層41は、主絶縁層とも称され、接着層42は、重合体層とも称され、補強層43は、繊維強化層とも称される。
【0024】
ベース層41は、非導電性の材料から構成され、絶縁テープ40の絶縁機能を実現するための主要な部分である。補強層43は、ベース層41を支持し、絶縁テープ40全体としての強度を確保する機能を有する部分である。接着層42は補強層43をベース層41に接着させる機能を有する部分である。
【0025】
ベース層41は、第1面41aと、第1面41aの反対側の第2面41bと、を有する。ベース層41は、例えば、マイカ、石綿、磁器粉末等の無機質を主成分として含む。ベース層41の厚みは、例えば、補強層43および接着層42のそれぞれの厚みよりも厚く、例えば100μm程度である。
【0026】
二つの接着層42のうち接着層42Aは、第1面41aに重ねられ、接着層42Bは、第2面41bに重ねられている。
【0027】
接着層42は、接合用高分子等を含む。例えば、接着層42は、エポキシ樹脂及びナノサイズのシリカ粒子44を含む。
【0028】
二つの補強層43は、第1面41aと第2面41bとのそれぞれに対して設けられて、接着層42によってベース層41に接着されている。具体的には、補強層43Aは、第1面41aに対して設けられて、接着層42Aによって第1面41aに接着されている。補強層43Bは、第2面41bに対して設けられて、接着層42Bによって第2面41bに接着されている。
【0029】
補強層43は、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維等を主成分として含み、通常は網目状に編み込まれている。また、補強層43は、繊維に限らず、不織布として構成される場合や、ポリエステル、ポリイミド等の高分子フィルムから構成される場合もある。接着層42は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を主成分として含む。
【0030】
<主絶縁部の内部構造>
【0031】
図5は、実施形態に係る主絶縁部35の内部構造を模式的に示す断面図である。
【0032】
図5において、積層導体31(導線31A)の長手方向に沿った断面が示されている。図5は、絶縁テープ40の巻回が2回なされ、主絶縁部35に第1回目の巻回によるテーピング層Aと第2回目の巻回によるテーピング層Bとが含まれる場合を示している。
【0033】
主絶縁部35は、絶縁テープ40及び被覆部50を有する。テーピング層A及びテーピング層Bのそれぞれにおいて、長手方向に互いに隣接するベース層41同士は、幅の半分ずつ互いに重なり合っている。これは上記ハーフラップ方式の巻き方によるものである。被覆部50は、含浸部とも称される。
【0034】
被覆部50は、絶縁テープ40をターン絶縁部33に接着(接合)させるとともに絶縁テープ40において互いに重ねられた部分40a,40b同士を接着させるものである。また、被覆部50は、積層導体31を覆っている。
【0035】
被覆部50は、後述のレジン47が固化したマイカ粒子55を含むレジンを有する。マイカ粒子は、ナノフィラーの一例である。図5においては、被覆部50を強調するために、絶縁テープ40の厚さが薄く表現されている。図5に示すように、絶縁テープ40の周囲は、マイカ粒子55が分散された被覆部50で覆われた状態となる。
【0036】
マイカ粒子55は、非導電性のナノオーダーの粒子であり、例えば、金属酸化物を含む粒子である。マイカ粒子55の粒径は、50nm以下であることが好ましい。マイカ粒子55を構成する具体的な物質例については後述する。
【0037】
図6は、実施形態に係るマイカ粒子55による効果を模式的に示す主絶縁部35の断面図である。図7は、実施形態に係るシリカ粒子44による効果を模式的に示す絶縁テープ40の断面図である。
【0038】
図6において、被覆部50に電気トリーTが発生している状態が示されている。電気トリーTは、積層導体31と固定子20とに加わる電圧により生じる電気的な劣化現象である。電気トリーTが進展して主絶縁部35の表層部にまで達すると、絶縁破壊が起き、回転電機1はその運転を停止することになる。
【0039】
被覆部50内に分散しているマイカ粒子55は、電気トリーTの直線的な進展を抑制し、電気トリーTの進展速度を低下させる進展抑制効果を有する。これにより、主絶縁部35の絶縁性能を向上させることができる。このような進展抑制効果は、マイカ粒子55の含有量だけでなく、分散性に強く依存して変化する。進展抑制効果は、被覆部50内におけるマイカ粒子55の分散性(分散の均一性)が高い程大きくなる。従って、進展抑制効果(絶縁性能)を向上させるためには、マイカ粒子55の分散性が高いレジンを使用することが重要となる。
【0040】
また、図7に示されるように、電気トリーTは、絶縁テープ40においては、ベース層41の第1面41a及び第2面41b上を進みやすい。すなわち、電気トリーTは、絶縁テープ40においては、接着層42中を進む。このとき、接着層42のシリカ粒子44が電気トリーTの進展を抑制する。なお、ベース層41の第1面41a及び第2面41bは、ベース層41と接着層42との界面と言うこともできる。
【0041】
<絶縁構造の製造方法>
【0042】
図8は、実施形態に係る絶縁コイル22の絶縁構造の製造方法における手順を示すフローチャートである。図9は、実施形態に係る絶縁構造の製造方法に使用される含浸装置60の前半段階における状態を示す図である。図10は、実施形態に係る絶縁構造の製造方法に使用される含浸装置60の後半段階における状態を示す図である。
【0043】
先ず、積層導体31に絶縁テープ40を巻回し(図2参照)、レジン含浸前の絶縁コイル22を形成する(S101)。その後、レジン含浸前の絶縁コイル22を、固定子鉄心21内に挿入して組み付け、固定子ユニット90(図9参照)を形成する(S102)。その後、含浸装置60内に固定子ユニット90を設置し(S103)、含浸装置60内を真空引きする(S104)。
【0044】
図9に示すように、含浸装置60は、気密容器61、排気配管62、排気弁62A、供給配管63、供給弁63A、及び処理槽64を有する。ステップS103において、気密容器61内に載置された処理槽64内に固定子ユニット90が設置される。その後、ステップS104において、気密容器61内が真空引きされる。真空引きを行う際には、供給弁63Aを閉じ、排気配管62に接続された吸引装置により気密容器61内の空気を吸引する。この結果、絶縁コイル22の内部は、ターン絶縁部33及びその周囲に巻回された絶縁テープ40内の空間も、全て真空状態となる。
【0045】
上記のように真空引きを行った後、図10に示すように、処理槽64内の固定子ユニット90をレジン47で浸漬する(S105)。このとき、排気弁62Aを閉じ、供給配管63から処理槽64内にレジン47を供給する。レジン47は、固定子ユニット90全体が浸漬されるように供給される。
【0046】
上記のようにレジン47で固定子ユニット90を浸漬した後、含浸装置60(気密容器61)内を加圧する(S106)。加圧は、図10に示すように、供給弁63Aを開き、供給配管63から気密容器61内に加圧ガス65を供給することにより行われる。加圧ガス65は、レジン47と反応しない物質であることが好ましく、例えば、窒素ガス、乾燥空気等の不活性ガスであることが好ましい。このように気密容器61内を加圧することにより、マイカ粒子55を含むレジン47が絶縁コイル22のターン絶縁部33及び絶縁テープ40の重なり部に含浸される。
【0047】
その後、含浸装置60から固定子ユニット90を取り出し(S107)、絶縁テープ40を含む絶縁コイル22の内部に含浸されたレジン47を固化させる(S108)。レジン47を固化させる方法は、利用するエポキシ樹脂の性質に応じて決定されるが、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂を利用する場合には、固定子ユニット90を所定温度の乾燥炉内に所定時間収容する方法等が行われ、最終的に固定子20となる(図1参照)。その後、固定子20は、外郭を構成するフレーム6に取り付けられる。なお、回転電機1の仕様によっては、フレーム6に予め取り付けられた固定子鉄心21内に絶縁コイル22を組み付ける場合もある。この場合、フレーム6と固定子鉄心21と絶縁コイル22とが組み付けられたものを固定子ユニット90として扱う。
【0048】
<レジンの構成>
【0049】
本実施形態に係るレジン47は、エポキシ樹脂、ナノフィラー、反応性希釈剤、及び酸無水物系硬化剤(硬化剤)を混合させて生成される組成物である。
【0050】
エポキシ樹脂は、炭素原子2個と酸素原子1個からなる三員環を1分子中に2個以上含み硬化し得る化合物を含む。エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等を主成分として含む。エポキシ樹脂は、これらの化合物を単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。特に、エポキシ樹脂は、反応性希釈剤との化学親和性の観点から、脂環式エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0051】
ナノフィラーは、非導電性の金属酸化物等を含む。ナノフィラーは、例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化マグネシウム、三酸化ビスマス、二酸化セリウム、一酸化コバルト、酸化銅、三酸化鉄、酸化ホルミウム、酸化インジウム、酸化マンガン、酸化錫、酸化イットリウム、酸化亜鉛等を主成分として含む。ナノフィラーは、これらの化合物を単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。ナノフィラーの表面は、エポキシ樹脂中での分散性の向上、再凝集の防止、接着性の向上等を目的として、カップリング剤により改質されてもよい。
【0052】
反応性希釈剤は、エポキシ樹脂と反応することでエポキシ樹脂の粘度を低下させるものである。反応性希釈剤は、分子骨格に反応基を持つことで、熱硬化性樹脂組成物の硬化物における骨格の一部となることができる化合物を含む。反応性希釈剤は、例えば、ブチルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、アルキレンモノグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、アルキレンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,12-ドデカンジオールジグリシジルエーテル、o-クレジルグリシジルエーテル、1,2-エポキシテトラデカン等を主成分として含む。反応性希釈剤は、これらの化合物を単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。特に、反応性希釈剤は、エポキシ樹脂に脂環式エポキシ樹脂が含まれる場合には、ブチルグリシジルエーテルを含むことが好ましい。
【0053】
酸無水物系硬化剤は、例えば、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサハイドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水メチルハイミック酸等を主成分として含む。酸無水物系硬化剤は、これらの化合物を単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0054】
なお、レジン47を乾燥炉等で固化(硬化)させる工程における反応を速めるために、硬化促進剤を使用してもよい。硬化促進剤は、例えば、エポキシ化合物と酸無水物系硬化剤との架橋反応を加速できる化合物を含む。硬化促進剤は、例えば、金属キレート化合物、アンモニウムイオン化合物、イミダゾール化合物等を主成分として含む。硬化促進剤は、これらの化合物を単独で含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
【0055】
レジン47は、例えば、エポキシ樹脂、ナノフィラー、反応性希釈剤、及び酸無水物系硬化剤を下記割合で含む。
エポキシ樹脂:30wt%~60wt% …(1)
酸無水物系硬化剤:30wt%~60wt% …(2)
反応性希釈剤:5wt%~30wt% …(3)
ナノフィラー:(1)~(3)の混合物全体に対し2wt%~30wt%
【0056】
<実施形態の効果>
【0057】
以上のように、本実施形態では、回転電機1は、固定子20と、回転子10と、絶縁コイル22と、を備える。回転子10は、固定子20に対して回転可能である。絶縁コイル22は、固定子20と回転子10とのうち少なくとも固定子20に設けられている。絶縁コイル22は、積層導体31(導電体)と、積層導体31を覆った絶縁テープ40と、を有する。絶縁テープ40は、ベース層41と、二つの接着層42と、二つの補強層43と、を有する。ベース層41は、第1面41aと、第1面41aの反対側の第2面41bと、を有する。二つの接着層42は、ナノサイズのシリカ粒子44を含み、第1面41aと第2面41bとのそれぞれに重ねられている。二つの補強層43は、第1面41aと第2面41bとのそれぞれに対して設けられ、接着層42によってベース層41に接着されている。
【0058】
このような構成によれば、ナノサイズのシリカ粒子44を含む接着層42が、ベース層41の第1面41aと第2面41bとの両方に設けられているので、接着層42が第1面41aと第2面41bとの一方だけに設けられている構成に比べて、電気トリーTの進展を抑制することができる。よって、上記構成によれば、絶縁テープ40の絶縁性の寿命の長期化を図ることができる。
【0059】
また、絶縁テープ40は、互いに重ねられた部分40a,40bを有する。絶縁コイル22は、ナノサイズのマイカ粒子55を含み、互いに重ねられた二つの部分40a,40bの間に介在するとともに積層導体31を覆った被覆部50を有する。
【0060】
このような構成によれば、被覆部50のマイカ粒子55によって電気トリーの進展を抑制することができる。よって、上記構成によれば、絶縁テープ40の絶縁性の寿命の長期化を図ることができる。
【0061】
なお、絶縁テープ40は、固定子と回転子との両方に設けられていてもよい。
【0062】
上述の本発明の実施形態は、発明の範囲を限定するものではなく、発明の範囲に含まれる一例に過ぎない。本発明のある実施形態は、上述の実施形態に対して、例えば、具体的な用途、構造、形状、作用、及び効果の少なくとも一部について、発明の要旨を逸脱しない範囲において変更、省略、及び追加がされたものであっても良い。
【符号の説明】
【0063】
1…回転電機、10…回転子、20…固定子、22…絶縁コイル(コイル)、31…積層導体(導電体)、40…絶縁テープ、40a,40b…部分、41…ベース層、41a…第1面、41b…第2面、42,42A,42B…接着層、43,43A,43B…補強層、44…シリカ粒子、50…被覆部、55…マイカ粒子。
【要約】
絶縁テープは、ベース層と、二つの接着層と、二つの補強層と、を有する。ベース層は、第1面と、第1面の反対側の第2面と、を有する。二つの接着層は、ナノサイズのシリカ粒子を含み、第1面と第2面とのそれぞれに重ねられている。二つの補強層は、第1面と第2面とのそれぞれに対して設けられ、接着層によってベース層に接着されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10