IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人理化学研究所の特許一覧 ▶ 独立行政法人放射線医学総合研究所の特許一覧

特許7360577ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物
<>
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図1
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図2
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図3
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図4
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図5
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図6
  • 特許-ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び双性イオンリガンド化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/10 20060101AFI20231005BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20231005BHJP
   C07C 309/13 20060101ALI20231005BHJP
   C07D 211/34 20060101ALI20231005BHJP
   C07D 211/62 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K49/10
C07C211/63
C07C309/13 CSP
C07D211/34
C07D211/62
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020562470
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051354
(87)【国際公開番号】W WO2020138389
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2018245927
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】山田 弘美
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 博希
(72)【発明者】
【氏名】藤川 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】吉村 誠司
(72)【発明者】
【氏名】菊池 重俊
(72)【発明者】
【氏名】宮島 大吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 黎明
(72)【発明者】
【氏名】相田 卓三
(72)【発明者】
【氏名】青木 伊知男
【審査官】松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/009060(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/10
C07C 211/63
C07C 309/13
C07D 211/34
C07D 211/62
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の式(I)で表される双性イオンリガンドが配位結合した、酸化鉄を含有する金属粒子を含むナノ粒子。
【化1】
(式中、
【化2】
双性イオンリガンドが、
が、式(a)又は式(b)で示される基であり、R が、H又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、更にR が式(a)で示される基のときX はエチレンであってもよく、
は、C 1-5 アルキレンであり、更にR が式(b)で示される基のときX は結合であってもよく、
及びR は、いずれもメチルであり、
は、SO 又は、CO であり、
及びR は、同一又は互いに異なって、H、C 1-3 アルキル、又はハロゲンであり、
nは1であり、
更に、
i)R が式(a)で示される基であり、且つ、X がメチレンであるとき、R とR またはR とが一体となってエチレンを形成してもよい。)
【請求項2】
双性イオンリガンドが、Rが式(a)で示される基であり、且つ、RH又はハロゲンである、双性イオンリガンドである、請求項記載のナノ粒子。
【請求項3】
双性イオンリガンドが、
がH又はハロゲンであり、
が結合、メチレン又はエチレンであり、
がC2-4アルキレンであり、
及びRがいずれもメチルであり、
及びRが同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル又はハロゲンであり、
更に、Xがメチレンであるとき、RとRもしくはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
双性イオンリガンドである、請求項記載のナノ粒子。
【請求項4】
双性イオンリガンドが、
がHまたはFであり、
がエチレン又はプロピレンであり、
及びRがいずれもHである、
双性イオンリガンドである、請求項記載のナノ粒子。
【請求項5】
双性イオンリガンドが、
がHであり、
が結合又はエチレンであり、
双性イオンリガンドである、請求項記載のナノ粒子。
【請求項6】
双性イオンリガンドが、
が、下式(b-1)で示される基であり、
【化3】
が、H又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、
は、C1-5アルキレン又は結合であり、
がメチルであり、
がSO 、又は、CO である、
双性イオンリガンドである、請求項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
酸化鉄を含有する金属粒子が、酸化鉄のみを含有する金属粒子である、請求項1~のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
ナノ粒子が、酸化鉄を含有する金属粒子の外表面に双性イオンリガンドが1つ以上配位結合して形成された粒子であり、該双性イオンリガンドによって当該金属粒子が被覆されている、ナノ粒子である請求項1~のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
ナノ粒子が、1つ以上の双性イオンリガンドが配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子、及び、1つ以上の双性イオンリガンド、からなる複合体である、請求項1~のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
ナノ粒子が、
2以上の双性イオンリガンド化合物、及び、2以上の「1つ以上の双性イオンリガンド化合物が配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」、からなるクラスターである、請求項1~のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、磁気共鳴イメージング用造影剤。
【請求項12】
陽性造影剤である、請求項11記載の磁気共鳴イメージング用造影剤。
【請求項13】
下式(I)で表される化合物又はその塩。
【化4】
(式中、
【化5】
が、式(a)又は式(b)で示される基であり、Rが、H又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、C1-5アルキレンであり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、いずれもメチルであり、
は、SO 又は、CO であり、
及びR は、同一又は互いに異なって、H、C 1-3 アルキル、又はハロゲンであり、
nは1であり、
更に、
i)R が式(a)で示される基であり、且つ、X がメチレンであるとき、R とR またはR とが一体となってエチレンを形成してもよい。)
【請求項14】
4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート、
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート
-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ペンタノアート、
{1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム-4-イル}アセタート、
1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム-4-カルボキシラート、
4-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタノアート、
2-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート、及び
3-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート
からなる群から選択される請求項13記載の化合物又はその塩。
【請求項15】
{1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム-4-イル}アセタート、及び
2-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート
からなる群から選択される請求項14記載の化合物又はその塩。
【請求項16】
4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート、及び
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート
からなる群から選択される請求項14記載の化合物又はその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なナノ粒子、これを含む磁気共鳴イメージング用造影剤及び当該ナノ粒子の製造に用いられる双性イオンリガンド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic resonance imaging、MRI)は、臨床画像診断において重要な役割を果たしており、また生物医学研究分野においても重要なツールとなっている。
【0003】
画像診断法及びこれに用いる造影剤は、生体の臓器及び組織等の検査に使用される技術である。このうち、MRIは原子の磁気的性質に基づき、強い磁場と高周波無線信号とを使用して生体内の組織及び臓器の精巧な断面画像及び三次元画像を作出する技術である。
【0004】
MRIは、水を含有している全ての組織及び臓器の2次元又は3次元画像を得るのに効果的な手法である。
【0005】
電磁波パルスが対象の組織内の磁気によって配向した水素原子核に入射されると、それらの水素原子核は核磁気共鳴を生じ、その後プロトン緩和の結果として信号を返す。様々な組織からの信号の僅かな差により、MRIで、臓器を識別し、良性の組織と悪性の組織とを潜在的に対照させることができる。MRIは腫瘍、炎症、出血、浮腫等を検出するのに有用である。
【0006】
ここでMRI用造影剤は、生体組織中の水の緩和時間(T、T)を主に短縮させることによって変化させ、異なる組織間のコントラストを増強することによって、病変部位の検出、又は血管内の血流あるいは各器官の機能等の調査を可能にする薬剤を指す。
【0007】
MRI用造影剤は、投与後に迅速に造影効果が得られ、生体に悪影響を及ぼさず、且つ全量が排出される性質を有することが望まれる。MRI用造影剤は、例えば静脈内投与により、血中及び細胞外液に分布し得る。そして、好ましくは血中の造影剤半減期は3時間以内、より好ましくは2時間以内に経腎的に尿中に排泄される。細胞外液に分布する造影剤は、それ自体が直接MRIで画像化されるのではない。造影剤は分布した周辺の組織のプロトンの緩和を促進させる。これは主としてT短縮効果と呼ばれる。この効果によって、造影剤はT強調画像で造影効果を発揮する(信号が増強される)。造影剤はそれが占める組織の緩和時間を変化させる。
【0008】
造影剤濃度が一定濃度以上に高くなると、T、T 短縮効果により信号は逆に減衰する。よって、信号強度を高めるための至適濃度は造影目的に応じて異なる。
【0009】
磁性体のT及びT緩和の短縮効果の大きさ、すなわち、プロトンの緩和時間を短縮する効率は、緩和率(relaxation rate)(R)として表される。ここで、緩和率R及びRは、それぞれMRIの縦緩和時間T及び横緩和時間Tの逆数で表される(R=1/T、R=1/T)。また単位濃度あたりの緩和率を緩和能(relaxivity)(r)として表され、縦緩和能はr、横緩和能はrと表記される。R/R比及びr/r比は、MRI用造影剤の緩和能を評価するためのパラメータの1つとして用いられる。
【0010】
特にT緩和を利用し、T強調画像上での信号を増強する目的で使用されるものをT短縮造影剤又は陽性造影剤(positive contrast agent)と呼ぶ。陽性造影剤は、当該
造影剤が占める組織に信号上昇をもたらす。またT緩和を利用し、T強調画像上での信号を減衰する目的で使用される造影剤をT短縮造影剤又は陰性造影剤(negative contrast agent)と呼ぶ。陰性造影剤は、当該造影剤が占める組織に信号減少をもたらす。
強調MRIとT強調MRIは医療の診断において標準的に用いられる画像法である。T強調MRIにおける陽性造影剤は、陰性造影剤と比較して、信号減少による組織の欠損が生じず、正常組織の情報を欠損することなく病変のコントラストを向上させることができるため診断における有用性が高く、画像診断において陽性造影剤の使用が不可欠である。
【0011】
特に、造影剤のr/r比は、陽性造影剤の評価にとって重要な値であり、陽性造影剤としての高いr/rは、良好なコントラストのT強調MR画像をもたらす。
【0012】
ガドリニウム(Gd)ベースのキレート化合物は、臨床での陽性造影剤として使用することができ、高いr及び低いr(すなわち高いr/r)を有し優れたTコントラストを示す。しかしながら、Gdベースの化合物は、高齢者や腎機能不全患者など腎臓からの排出能が低下した患者に対して、深刻な毒性を示すことが知られている。
【0013】
一方、酸化鉄系はGdに比べると毒性は非常に低い。したがって、現在市場で主流となっているGdに代わる材料として、酸化鉄系のナノ粒子の研究開発が進められている(非特許文献1)。
【0014】
これまでに、診断用又は治療用等の医療用の用途に使用するためのナノ粒子が研究開発されてきた。金属材料からなるコア粒子表面にポリマー等の種々の分子を被覆させたナノ粒子は、生体に適用するためのナノ粒子の構成の1つとして知られている。例えば、4nm以下の酸化鉄粒子(ESIONs)の製造方法と、これをポリエチレングリコールホスフェート(PO-PEG)で被覆したナノ粒子を用いたMRI用陽性造影剤が報告されている(非特許文献2)。更に、酸化鉄ナノ粒子をコア粒子とし、双イオン性ドーパミンスルホネート(zwitterionic dopamine sulfonate、ZDS)を酸化鉄ナノ粒子表面に結合させた構造を有するナノ粒子が報告されている(非特許文献3及び特許文献1)。また、当該ナノ粒子(ZDS-SPIONs)を陽性造影剤として用いた場合の性能についても報告されている(特許文献2及び非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】国際公開第WO2013/090601号公報(2013年6月20日公開)
【文献】国際公開第WO2016/044068号公報(2016年3月24日公開)
【非特許文献】
【0016】
【文献】Corot et al., Advanced Drug Delivery Reviews, 58, 1471-1504, 2006
【文献】Byung Hyo Kim et al., J Am. Chem. Sci., 133, 12624-12631, 2011
【文献】He Wei et al., Integr. Biol., 5, 108-114, 2013
【文献】He Wei et al.,Proc. Natr. Acad. Sci., 114(9), 2325-2330, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
依然として、優れた陽性造影能(すなわち、高いr/r)を有しつつ、生体内で安定した挙動を示し、且つ、生体に対して毒性が低く、良好な保存安定性を有するという条件を十分に満たす、新規なナノ粒子及び当該ナノ粒子を被覆するためのリガンド化合物が望まれている。さらには、該ナノ粒子を用いた磁気共鳴イメージング用造影剤の開発が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の何れかの一態様を包含する。
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
<1>
1つ以上の式(I)で表される双性イオンリガンドが配位結合した、酸化鉄を含有する金属粒子を含むナノ粒子。
【化1】
(式中、
及びRの一方は、式(a)又は式(b)で示される基であり、他方は、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンであり、
【化2】
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となって5又は6員含窒素飽和ヘテロ環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、-O-C1-3アルキル又はハロゲンであり、
nは0~2の整数であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、
ii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがエチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってメチレンを形成してもよく、及び
iii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
但し、Rが式(a)で示される基であり、R及びRがメチルであり、Xが結合であり、Xが、C1-4アルキレンであり、且つ、R、R及びRがいずれもHであるとき、YはHPO 、又は、CO である。)
<2>
下式(I)で表される化合物又はその塩。
【化3】
(式中、
及びRの一方は、下式(a)又は式(b)で示される基であり、他方は、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンであり、
【化4】
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となって5又は6員含窒素飽和ヘテロ環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、-O-C1-3アルキル又はハロゲンであり、
nは0~2の整数であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、
ii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがエチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってメチレンを形成してもよく、及び
iii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
但し、Rが式(a)で示される基であり、R及びRがメチルであり、Xが結合であり、Xが、C1-4アルキレンであり、且つ、R、R及びRがいずれもHであるとき、YはHPO 、又は、CO である。)
【発明の効果】
【0019】
本発明は、良好な陽性造影能を有し、細胞毒性を示さない新規なナノ粒子及びこれを含む磁気共鳴イメージング用造影剤を提供するという効果を奏することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は実施例6の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの肝臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(b)は実施例6の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの腎臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(c)は実施例6の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの膀胱における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。
図2】(a)は実施例6の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの肝臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(b)は実施例6の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの腎臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(c)は実施例6の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの膀胱における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なMRI測定結果の画像を示す。
図3】(a)は実施例7の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの肝臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(b)は実施例7の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの腎臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(c)は実施例7の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの膀胱における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。
図4】(a)は実施例7の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの肝臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(b)は実施例7の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの腎臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(c)は実施例7の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの膀胱における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。
図5】(a)は実施例25の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの肝臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(b)は実施例25の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの腎臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(c)は実施例25の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの膀胱における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。
図6】(a)は実施例25の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの肝臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(b)は実施例25の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの腎臓における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。(c)は実施例25の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスの膀胱における投与前(pre)、投与直後(post)、投与後0.5時間(0.5hour)、1時間(1hour)及び1.5時間(1.5hour)の経時的なT強調MRI測定結果の画像を示す。
図7】実施例6、7及び9の3K精製粒子の磁化の300Kにおける磁場依存性を示す。横軸に印加磁場、縦軸に重量あたりの磁化をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0022】
〔用語の定義〕
「低級アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数が1から6(以後、C1-6と略す)のアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。別の態様としては、C1-4アルキルであり、さらに別の態様としては、C1-3アルキルであり、さらに別の態様としては、メチル、エチル、n-プロピルであり、またさらに別の態様としては、メチルである。また、「C1-3アルキル」のある態様としては、メチル、エチル又はn-プロピルであり、ある態様としては、メチルである。
【0023】
「C1-5アルキレン」とは、直鎖又は分枝状のC1-5アルキレン、例えばメチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、プロピレン、ブチレン、メチルメチレン、エチルエチレン、1,1-ジメチルエチレン、2,2-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン、1-メチルブチレン等である。ある態様としては、C1-3アルキレンであり、別の態様としてはC1-2アルキレンであり、更に別の態様としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン又はブチレンである。また、「C1-5アルキレン」及び「C1-4アルキレン」としては、前記のうち、それぞれC1-3又はC1-2のアルキレンであり、ある態様としてはメチレン又はエチレンである。
【0024】
及びRが、それらが結合する4級窒素原子と一体となって形成する「5又は6員含窒素飽和ヘテロ環」とは、4級窒素原子を環構成原子として含む、環員数5又は6の非芳香族へテロ環、即ち、ピロリジン環又はピペリジン環である。ある態様としては4級窒素原子を環構成原子として含むピロリジン環である。
【0025】
「ハロゲン」とは、F、Cl、Br、及び、Iを意味する。別の態様としてはF及びClであり、更に別の態様としてはFであり、また更に別の態様としてはClである。
【0026】
本願明細書において「ナノ粒子」とは、ナノメートルスケールもしくはそれ以下の粒子径を有する粒子をいう。一実施形態において100nm未満、別の実施形態において10nm未満、更に別の実施形態において5nm未満、また更に別の実施形態において3nm未満の粒子径を有する粒子をいう。また更に別の実施形態において1nm未満の粒子径を有する粒子をいう。ここで粒子径の詳細については、以下の粒子径の項目において説明する。
【0027】
本願明細書において「クラスター」とは、複数の同一又はそれぞれ相違する粒子が集まり、一つの塊となった集合体をいう。一実施形態において双性イオンリガンドが配位結合した微小金属粒子と双性イオンリガンドとの集合体をいう。
【0028】
「双性イオンリガンド」又は「双性イオンリガンド化合物」とは、分子内に正電荷と負電荷の両方を持つ基を有する化合物であって、金属粒子表面において金属原子と配位結合しうる基を別途有する、金属粒子を安定に水中に分散させるための粒子表面の修飾剤として用いられる化合物を意味する。本明細書において、「双性イオンリガンド」又は「双性イオンリガンド化合物」というときは、該化合物が、金属粒子表面に配位結合される前の化合物である場合又は配位結合された後の分子構造を有する場合のいずれか、あるいはその両方を意味する。
【0029】
「被験体」とは、本発明のMRI用造影剤、ナノ粒子又はナノ粒子を含む組成物を、例えば、実験、診断、及び/又は治療目的のために投与され得る任意の生物を指す。一例としてはヒトである。
【0030】
以下、本発明に係るナノ粒子、MRI用造影剤及び双性イオンリガンド化合物について説明する。
【0031】
〔1.ナノ粒子〕
本発明に係るナノ粒子は、前記式(I)で表される双性イオンリガンドが1つ以上配位結合した、酸化鉄を含有する金属粒子を含む、ナノ粒子である。配位結合している双性イオンリガンドの実施態様については次項以降で説明する。
一態様としては、本発明に係るナノ粒子は、酸化鉄を含有する金属粒子の外表面に双性イオンリガンド化合物が1つ以上配位結合して形成された粒子であり、該双性イオンリガンド化合物によって当該金属粒子が被覆されている、粒子である。
一態様としては、本発明に係るナノ粒子は、その中心部(コア)に金属粒子を有しており、当該金属粒子の外表面に双性イオンリガンド化合物が1つ以上配位結合することによって、当該双性イオンリガンド化合物が当該金属粒子を被覆したコア-シェル構造を有する、粒子である。
一態様としては、本発明に係るナノ粒子は、1以上の「1つ以上の双性イオンリガンドが配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」、及び、1以上の双性イオンリガンド化合物からなる複合体である、粒子である。
一態様としては、本発明に係るナノ粒子は、2以上の双性イオンリガンド化合物と、2以上の「1つ以上の双性イオンリガンド化合物が配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」からなるクラスターである、粒子である。
一態様としては、本発明に係るナノ粒子は、2以上の双性イオンリガンド化合物と、2以上の「1つ以上の双性イオンリガンド化合物が配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」とが不規則に結合したクラスターである、粒子である。
【0032】
本発明の双性イオンリガンド化合物が配位結合したナノ粒子であれば、ナノ粒子同士が凝集することが抑止され、例えばナノ粒子を高濃度で含有する溶液中でも粒子性状が安定している。このようなナノ粒子であれば、低い飽和磁化を確保し、明瞭なコントラストのT強調画像を得ることができると共に、腎排泄が容易となるので良好な腎クリアランスを示すことが期待できる。
【0033】
(金属粒子)
金属粒子は、酸化鉄を含有する。一実施形態では、金属粒子は、酸化鉄のみを含有する酸化鉄粒子であり、別の一例としては、金属粒子は、酸化鉄に加え鉄を含有する金属粒子である。本願明細書における「金属粒子」は、原料である「表面に疎水性リガンドが配位結合した酸化鉄ナノ粒子」における「酸化鉄ナノ粒子」、並びに、本発明の双性イオンリガンドを金属粒子に配位結合させる製造法、例えば後述のMEAA法を実施した結果、原料の酸化鉄ナノ粒子から何らかの変化が生じた、「酸化鉄を含有する金属粒子」を包含する。ここで、何らかの変化とはコア-シェル構造から複合体やクラスターへの構造的な変化、粒子径の変化、組成の変化等が挙げられるが、これらに限定されない。即ち、本願明細書における「金属粒子」は、少なくとも、本明細書に記載の式(I)で示される双性イオンリガンドを金属粒子に配位させる製造法であるMEAA法や後述のTMA(OH)法又は相間移動触媒法によって得られる、酸化鉄を含有する金属粒子を全て包含する。
【0034】
一実施形態において、酸化鉄を含有する金属粒子は、更に、少なくとも一種の酸化鉄以外の金属誘導体を含んでいてもよい。また、金属粒子は、更に、少なくとも一種の鉄(Fe)以外の金属元素を含んでいてもよい。別の金属元素としては、必要に応じてガドリニウム(Gd)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及び亜鉛(Zn)の中からなる群から選択されるうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。
【0035】
さらに別の実施形態において、金属粒子は、酸化鉄のみからなるものであってもよく、酸化鉄から誘導されるフェライトを含んでいてもよい。フェライトは、式MFeの酸化物であり、ここで、Mは、好ましくはZn、Co、Mn及びNiから選択される遷移金属である。
【0036】
超常磁性酸化鉄製剤(Super Paramagnetic Iron Oxide :SPIO)として知られる材料もまた、好適に用いられる。これらの材料は一般式[Fe[Fe(M2+O)]1-xで表される(式中x=0又は1)。Mは、例えばFe、Mn、Ni、Co、Zn、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)又はこれらの組合せとしてもよい。なお、金属イオン(M2+)が第一鉄イオン(Fe2+)及びx=0の場合、材料は、マグネタイト(Fe)であり、x=1である場合、材料はマグへマイト(γ-Fe)である。
【0037】
一実施形態において、酸化鉄は、磁性酸化鉄であり、マグネタイト(Fe)、マグヘマイト(γ-Fe)、又はこれらの混合物であり得る。このような磁性酸化鉄からなる金属粒子は超常磁性ナノ粒子となる。
【0038】
さらに別の実施形態において、酸化鉄粒子が少なくとも一種の鉄以外の金属元素の誘導体を含んでいる場合、金属元素の各誘導体同士は異なる種類の誘導体であってもよい。すなわち、酸化鉄粒子は、酸化物及び窒化物等を含み得る。別の実施形態では、コア粒子は、酸化鉄以外の鉄元素を有する酸化鉄以外の鉄誘導体(例えば、FePt及びFeB)を含んでいてもよい。
【0039】
一実施形態に係る金属粒子は、前出の特許文献1、非特許文献2、非特許文献3等に記載の方法等の公知の方法によって製造されたものであってもよく、市販のものであってもよい。例えば、共沈法又は還元法によって作製された酸化鉄粒子であり得る。
【0040】
(金属粒子の粒子径)
本明細書において、粒子径という場合は、特に記載をしていない場合は平均粒子径を指す。
【0041】
金属粒子の「粒子径」は、例えば、粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した場合の粒子の二次元形状に対する最大内接円の直径が意図される。例えば、粒子の二次元形状が実質的に円形状である場合はその円の直径が意図される。また、実質的に楕円形状である場合はその楕円の短径が意図される。また、実質的に正方形状である場合はその正方形の辺の長さが意図され、実質的に長方形状である場合はその長方形の短辺の長さが意図される。
【0042】
平均粒子径が所定の範囲の値を有することを確認する方法としては、例えば、100個の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して、各粒子の上記粒子径を測定し、100個の粒子の上記粒子径の平均値を求めることによって行うことができる。
【0043】
一実施形態に係る、金属粒子の粒子径(金属粒子を含むクラスターや複合体の平均径である場合を含む)は、TEMで測定した場合、5nm以下であることが好ましく、4nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがより好ましく、2nm以下であることが更に好ましく、1nm以下であることが最も好ましい。2nm以下の粒子径であれば、3テスラ(T)以上の高磁場MRI用の陽性造影剤としてより有用性が高い。
【0044】
また、2nm以下、好ましくは1nm以下の粒子径であれば、7T以上の高磁場MRIでの利用において、より高い信号ノイズ比が得られるため、より高い空間分解能及び短時間における測定を実現できる可能性がある。
【0045】
一実施形態において、MRI用造影剤に含まれるナノ粒子の集団は、各ナノ粒子の特性が可能な限り均一であることが好ましい。そのため、ナノ粒子のコアである金属粒子は、均一なサイズ及び形状を有していることが好ましい。一例としては、金属粒子はその平均粒子径±1nmの範囲内の均一性を有する。別の一例としては、平均粒子径±0.5nmの範囲内の均一性を有する。
【0046】
別の一実施形態において、MRI用造影剤に含まれるナノ粒子としては、含有する金属粒子として小さな粒子が多く含まれるほど好ましい。一例としては、金属粒子は、3nm以上の粒子が個数比で、全体の30%以下、好ましくは全体の10%以下、より好ましくは全体の5%以下である。別の一例としては、2nm以上の粒子が個数比で全体の30%以下、好ましくは全体の10%以下、より好ましくは全体の5%以下である。更に別の例としては、1nm以上の粒子が個数比で、全体の30%以下、又は好ましくは全体の10%以下、より好ましくは全体の5%以下である。
【0047】
また別の一実施形態において、MRI用造影剤に含まれるナノ粒子の集団は、各粒子の特性が不均一であってもよく、そのため双性イオンリガンドが配位している金属粒子は、不均一なサイズ及び形状を有していてもよい。一例としては、金属粒子はその平均粒子径から1nm以上大きさの異なる粒子を包含していてもよい。
【0048】
(ナノ粒子の粒子径)
ナノ粒子の粒子径は、上記金属粒子表面に配位結合している双性イオンリガンドの厚さの分大きくなると推定される。通常、ナノ粒子を溶液とした場合の流体力学的直径(hydrodynamic diameter、HD)がその大きさの指標とされる。一例としては、ナノ粒子の平均HDは10nm以下、好ましくは、8nm以下である。更に別の一例としては、ナノ粒子の平均HDは5nm以下、好ましくは4nm以下、好ましくは3nm以下、好ましくは2nm以下、更に好ましくは1nm以下である。
【0049】
ナノ粒子のHDは、例えば、粒子をX線小角散乱法(SAXS)で観察して、上記粒子径の平均値を求めることによって行うことができる。
SAXSの測定には、市販の機器を用いても良く、更にはSPring-8(BL19B2)やあいちシンクロトロン光センターのような放射光施設を用いるのが望ましい。例えばSPring-8(BL19B2)を用いた場合、カメラ長を3mに設定し、18KeVのX線を試料に照射し、波数qを約 0.06~3 nm-1の範囲で観測する。
【0050】
分散液サンプルの場合、2mm径のキャピラリーに入れ、散乱線が飽和しない程度に露光時間を適切に設定し、散乱データを得る。散乱データは、ギニエ解析、もしくは、適切なSAXS解析ソフトを用いてフィッティングを行い、平均粒子径を得ることができる。
【0051】
また、ナノ粒子の相対的な大きさを測定する方法として、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography、SEC)を用いることができる。
【0052】
SECは、細孔を持つ担体を充填したカラムに試料を流し、それが流出するまでの時間で試料の大きさを見積もる分析手法である。大きな凝集体は担体の細孔に入らないため早く流出し、小さなナノ粒子は担体の細孔を通るため流出するまでの経路が長くなり、遅く流出するため、標準となる粒子を用いることでナノ粒子の相対的な大きさを測定することができる。
【0053】
〔2.双性イオンリガンド化合物〕
本発明に係る双性イオンリガンド化合物は、下式(I)で表される化合物又はその塩である。
【化5】
(式中、
及びRの一方は、式(a)又は式(b)で示される基であり、他方は、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンであり、
【化6】
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となって5又は6員含窒素飽和ヘテロ環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、-O-C1-3アルキル又はハロゲンであり、
nは0~2の整数であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、
ii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがエチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってメチレンを形成してもよく、及び
iii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
但し、Rが式(a)で示される基であり、R及びRがメチルであり、Xが結合であり、Xが、C1-4アルキレンであり、且つ、R、R及びRがいずれもHであるとき、YはHPO 、又は、CO である。)
【0054】
ある態様としては、R及びRの一方が式(a)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドである。
【0055】
一実施態様としては、本発明に係る双性イオンリガンド化合物は、下記式(o)で示される化合物である。
【0056】
【化7】
(式中の記号は、前記式(I)と同様である。)
式(o)に示される化合物の一実施態様としては、RがH、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドであり、別の実施態様としては、RがH又はハロゲンであり、Xが結合、メチレン又はエチレンであるか、またはXがメチレンのとき、RとRもしくはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、XがC2-4アルキレンであり、R及びRがいずれもメチルであり、且つ、R及びRが同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがH又はハロゲンであり、Xが結合又はメチレンであるか、またはXがメチレンのとき、RとRもしくはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、XがC2-4アルキレンであり、R及びRがいずれもメチルであり、且つ、R及びRが同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがH又はFであり、Xが結合、メチレン又はエチレンであり、Xがエチレン又はプロピレンであり、R及びRがいずれもメチルであり、且つ、R及びRがいずれもHである、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがHであり、Xがエチレンであり、Xがエチレン又はプロピレンであり、R及びRがいずれもメチルであり、且つ、R及びRがいずれもHである、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがH又はFであり、Xが結合又はエチレンであり、Xがエチレン基又はプロピレン基であり、R及びRがいずれもメチルであり、且つ、R及びRがいずれもHであり、且つ、YがSO 又はCO である、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがHまたはFであり、Xがメチレンであり、Xがプロピレン基又はブチレン基であり、R及びRがいずれもメチルであり、R及びRがいずれもHであり、且つ、YがSO 、HPO 、又は、CO である、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがH又はFであり、Xがメチレンであり、Xがプロピレン基またはブチレン基であり、R及びRがいずれもメチルであり、R及びRがいずれもHであり、且つ、YがSO である、双性イオンリガンドである。
ある実施態様としては、下記式(1)で示される双性イオンリガンドである。
【0057】
【化8】
(式中の記号Yは前記式(I)と同様である。)
【0058】
別の実施態様としては、下記式(2)で示される双性イオンリガンドである。
【化9】
(式中の記号Yは前記式(I)と同様である。)
【0059】
別の実施態様としては、下記式(3)で示される双性イオンリガンドである。
【化10】
(式中の記号Yは前記式(I)と同様である。)
【0060】
別の実施態様としては、下記式(4)で示される双性イオンリガンドである。
【化11】
(式中の記号Yは前記式(I)と同様である。)
【0061】
別の実施態様としては、下記式(5)で示される双性イオンリガンドである。
【化12】
(式中の記号Yは前記式(I)と同様である。)
【0062】
また、別の実施態様としては、本発明に係る双性イオンリガンド化合物は、下記式(6)で示される化合物である。
【0063】
【化13】
(式中の記号は前記式(I)と同様である。)
ある実施態様としては、下記式(7)で示される双性イオンリガンドである。
【0064】
【化14】
(式中の記号Yは前記式(I)と同様である。)
【0065】
双性イオンリガンド化合物の一実施態様としては、上記式(I)においてR及びRの一方が、下式(b-1)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドである。
【化15】
(式中の記号は前記式(I)と同様である。)
【0066】
一実施態様としては、本発明に係る双性イオンリガンド化合物は、下記式(8)で示される化合物である。
【0067】
【化16】
(式中の記号は、前記式(I)と同様である。)
式(8)に示される化合物の一実施態様としては、RがH、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである双性イオンリガンドであり、別の実施態様としては、RがH又はハロゲンであり、Xが結合又はメチレンであり、Xが結合又はC1-3アルキレンであり、Rがメチルであり、且つ、R及びRが同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドであり、更に別の実施態様としては、RがH又はFであり、Xがメチレンであり、Xが結合又はメチレンであり、Rがメチルであり、且つ、R及びRがいずれもHであり、且つ、YがSO 、HPO 、又は、CO である、双性イオンリガンドであり、更に別の態様としては、RがH又はFであり、Xがメチレンであり、Xが結合又はメチレンであり、Rがメチルであり、且つ、R及びRがいずれもHであり、且つ、YがCO である、双性イオンリガンドであり、また更に別の実施態様としては、RがH又はハロゲンであり、Xが結合又はメチレンであり、XがC1-5アルキレン又は結合であり、Rがメチルであり、且つ、R及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、又は、ハロゲンであり、且つ、YがSO 、又は、CO である、双性イオンリガンドである。
【0068】
別の実施態様としては、下記式(9)で示される双性イオンリガンドである。
【化17】
(式中の記号はYは前記式(I)と同様である。)
【0069】
別の実施態様としては、下記式(10)で示される双性イオンリガンドである。
【化18】
(式中の記号はYは前記式(I)と同様である。)
【0070】
本発明に係るナノ粒子は、前記式(I)で表される双性イオンリガンドが1つ以上配位結合した、酸化鉄を含有する金属粒子を含むナノ粒子であり、また上記〔2.双性イオンリガンド化合物〕に記載の各実施態様の双性イオンリガンド化合物が、それぞれ配位結合した、酸化鉄を含有する金属粒子を含むナノ粒子は、それぞれ本発明のナノ粒子の一実施態様である。なお、双性イオンリガンドが鉄又は酸化鉄を含む金属粒子に配位結合する場合は、双性イオンリガンド化合物の2つの水酸基の酸素と金属粒子表面の金属原子とが配位結合し、本発明のナノ粒子を形成する。
【0071】
更に本発明には、上記本発明のナノ粒子を製造するための、前記双性イオンリガンド化合物の使用、並びに双性イオンリガンド化合物自体をも包含する。前記の〔2.双性イオンリガンド化合物〕に記載の各実施態様はこれらの発明における双性イオンリガンド化合物の実施態様でもある。
【0072】
本発明の双性イオンリガンドは、三置換アミノ基が直接またはアルキレン基を介してカテコールに置換し、アンモニウムカチオンを形成する。本発明の双性イオンリガンドは、従来公知のリガンドに比して分子鎖が短く、リガンド層がより薄くなり得る。且つ、金属粒子側にプラス電荷、外表面側にマイナス電荷を有することを特徴とし、これにより、本発明のナノ粒子は、体液中で粒子同士が凝集しにくくなり高い安定性を示すことが期待される。また、リガンド層が薄いため金属原子との距離が近くなり、金属粒子から影響を受ける水分子数の増加等に起因する優れた造影能を発揮することが期待される。
【0073】
金属粒子表面に配位させる双性イオンリガンドの分子数(双性イオンリガンドの個数)は、金属粒子のサイズ及び表面積等に応じて変化する。一実施態様としては、金属粒子1つ当たり2~200個であり、別の実施態様としては5~50個であり、更に別の実施態様としては5~20個である。
【0074】
(双性イオンリガンド以外の金属粒子に結合する化合物)
本発明のナノ粒子は、本発明の双性イオンリガンド以外を含んでいてもよく、一実施形態においてナノ粒子は、金属粒子そのものが蛍光特性を持つか、金属粒子の表面に結合された蛍光分子又は色素分子等の分子をさらに含んでいてもよい。金属粒子そのものが蛍光特性を持つか、蛍光分子又は色素分子をナノ粒子に導入することによって、ナノ粒子は、MRI用の造影剤としてのみならず、同時に、光学画像造影剤としても使用することができる。別の一実施形態として、蛍光分子又は色素分子が本発明の双性イオンリガンドと共有結合により結合したリガンドであってもよく、当該分子は酸化鉄粒子と双性イオンリガンドを介し連結されている。体内にナノ粒子が注入された後にも、蛍光分子は酸化鉄粒子の表面に存在することによって、顕微鏡イメージングならびにナノ粒子の局在化を調べるのに利用することができる。蛍光分子及び色素分子としては、ローダミン、フルオレセイン、ニトロベンゾオキサジアゾール(NBD)、シアニン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クマリン及びこれらの誘導体が挙げられる。
【0075】
また、別の実施形態において、金属粒子の表面に結合している少なくとも1種の物質を有していてもよく、限定はされないが、ペプチド、核酸又は小分子等であり得る。例えば、腫瘍に特異的に治療効果を生じる性質を有するペプチドを本発明のナノ粒子に結合させることにより、腫瘍の治療効果を付与することも可能である。
【0076】
また、本発明の双性イオンリガンド以外のリガンドが金属粒子の表面に結合されていてもよい。例えば、腫瘍に特異的に集積する性質を有するリガンドを本発明の金属粒子に結合させることにより、腫瘍選択的な結合性を付与することも可能である。
【0077】
このような組織特異性を造影剤に付与することは、MRI測定の対象とする部位における信号を強くし、特定の病態等の情報を得るために好ましい。造影剤の生体内における分布は、粒径、電荷、表面化学、投与経路及び排出経路に依存する。
【0078】
また、本発明のナノ粒子は、金属粒子として酸化鉄を含有することから生体への毒性が低いことが期待される。そのため、安全性に優れ、種々の利用に対する制限が少ないことが期待される。
【0079】
〔3.双性イオンリガンドの製造方法〕
本発明の式(I)の双性イオンリガンドの製造方法は特に限定されず、当業者に周知の反応を用いて公知原料化合物から容易に製造することができる。例えば、Wei H. et al., Nano Lett. 12, 22-25, 2012に記載の方法を参考にすることができる。
【0080】
一例では製造例に記載の合成方法が好適に用いられる。
【0081】
〔4.ナノ粒子の製造方法〕
次に、ナノ粒子の製造方法について説明する。
(原料となる疎水性リガンド又は親水性リガンドが配位結合した金属粒子の製造)
ナノ粒子の製造原料となる疎水性リガンド又は親水性リガンドが配位結合した金属粒子は、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、Byung Hyo Kim et al., J Am. Chem. Soc. 2011, 133, 12624-12631、及びByung Hyo Kim et al., J Am. Chem. Soc. 2013, 135, 2407-2410に記載の方法を参考に行うことができる。
【0082】
例えば、(a)金属塩と、脂肪酸のアルカリ金属塩とを反応させて、金属脂肪酸錯体を形成し、(b)当該錯体を界面活性剤と共に急速に200℃以上の高温まで加熱し、所望により、一定時間高温で反応させることによって、表面が疎水性リガンドで被覆された金属粒子を合成することができる。更に、(c)疎水性リガンドで被覆された金属粒子を、[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸([2-(2-Methoxyethoxy)ethoxy]acetic acid;MEAA)で被覆された金属粒子にリガンド変換し、高極性溶媒への分散が可能なMEAAで被覆された金属粒子を得ることができる。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0083】
(工程(a))
金属塩及び、脂肪酸のアルカリ金属塩を溶媒に分散させる。ここで、上記金属塩としては、塩化鉄(III)六水和物(FeCl・6HO)が、脂肪酸のアルカリ金属塩としては、オレイン酸ナトリウムが、溶媒としてはエタノール、水、ヘキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。続いて、加温下、好ましくは70℃で、1~10時間、好ましくは3~4時間撹拌し、有機層を回収し、該有機層の水による洗浄を1~複数回、より好ましくは3~4回繰り返し、金属脂肪酸錯体を得る。所望により得られた有機層を乾燥する。
【0084】
(工程(b))
例えばアルゴン(Ar)及び窒素から選択される不活性ガス雰囲気下で、工程(a)で得られた錯体に、脂肪酸、脂肪族アルコール及び脂肪族アミンからなる群から選択される少なくとも1つの界面活性剤、及びジフェニルエーテル及びフェニルオクチルエーテルから選択される溶媒を添加する。一例として、界面活性剤がオレイン酸、オレイルアルコール、オレイルアミン又はこれらの混合物であり、溶媒はジフェニルエーテルが挙げられる。次に、この混合物を室温から180~300℃まで急速に昇温し、所望により、そのまま10分から数時間撹拌する。一例として、30℃から250℃まで10℃/minで昇温し、250℃で30分間撹拌する。別の一例として、30℃から200℃まで10℃/minで昇温し、200℃で30分間撹拌する。
【0085】
反応溶液の温度を室温まで下げた後、アセトンを添加し上清を遠心除去する。この操作を2~3回、好ましくは4~5回繰り返す。所望により、得られた溶液を乾燥させてもよい。一例として、アセトンを添加し上清を遠心除去する操作を3回繰り返し、表面がオレイン酸等の疎水性リガンドで被覆された金属粒子を得る。
【0086】
(工程(c))
Ar及び窒素から選択される不活性ガス雰囲気下で、疎水性リガンドで被覆されたナノ粒子を溶媒に分散させた後に、MEAAを添加して反応させる。溶媒としてはメタノールが好適である。
【0087】
反応は、室温もしくは加温下、好ましくは25~80℃で、1~15時間程度、好ましくは5~10時間攪拌することによって行われ、一例として、50℃で7時間攪拌することによって行われ、別の一例として、70℃で10時間攪拌することによって行われ、更に別の一例として、70℃で5時間撹拌することによって行われる。
【0088】
反応溶液の温度を室温まで下げた後に、アセトン及びヘキサンから選択される溶媒を添加し、遠心し、上清を除去する。この操作を、2~3回、好ましくは4~5回繰り返してもよい。得られた溶液を乾燥させてもよい。一例として、前記操作を3回繰り返し、MEAAで表面が被膜された金属粒子を得る。
【0089】
(本発明のナノ粒子の製造方法)
本発明の「双性イオンリガンドが1つ以上配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子を含む、ナノ粒子」は公知のMEAAで表面が被覆された金属粒子を経由する方法(MEAA法)、TMA(OH)を用いた方法(TMA(OH)法)、あるいは、相間移動触媒を用いた新規な合成方法を用いることによって製造することができる。
A)MEAA法
本製法は、MEAAで表面が被覆された金属粒子と、本発明の双性イオンリガンド化合物とを反応させて本発明のナノ粒子を得る方法である。反応は、MEAAで表面が被覆された金属粒子と、本発明の双性イオンリガンド化合物とを、Ar及び窒素から選択される不活性ガス雰囲気下で、室温もしくは加温下で1~数十時間撹拌することにより行われる。一例としてAr雰囲気下で行われる。反応温度は一例として25~80℃であり、別の一例として50~70℃である。撹拌時間は、一例として5~7時間、別の一例として24時間である。一例として、室温で終夜撹拌する。続いて、反応溶液の温度を室温まで低下させ、溶媒を添加して遠心し、上清を除去して、本発明の双性イオンリガンド化合物が1つ以上配位結合したナノ粒子を得る。溶媒は特に限定されないが、アセトン、ヘキサン等から選択される。一例としてアセトンを用いる。またこの溶媒添加、遠心及び上清除去の操作は複数回繰り返してもよく、例えば4~5回繰り返してもよい。一例としてこの操作を3回繰り返す。続いて得られた本発明の双性イオンリガンド化合物が被覆したナノ粒子を含む溶液を、遠心式限外ろ過フィルター等の濃縮カラム等を用いて濃縮してもよい。この濃縮操作は複数回繰り返してもよく、途中でPBS等の溶液を添加して濃縮操作を繰り返してもよい。
【0090】
B)TMA(OH)法
オレイン酸で被覆された酸化鉄粒子(SNP-OA)をヘキサン溶液中に懸濁させ、1.7%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMA(OH))水溶液と混合して激しく振盪する。得られた溶液から遠心分離によって水層を分離し、アセトンを加え、8000~12000rpmで5~10分間遠心し、上澄みを取り除く。得られた沈殿に対し0.1%TMA(OH)溶液2mLを加え分散させ、再び10mLのアセトンを加えて沈殿させる。この操作を複数回繰り返してもよく、好ましくは3~4回繰り返す。得られた溶液を、0.1%TMA(OH)溶液に分散させて保存する。
上記の手順で作成した0.1%TMA(OH)溶液に0.1%~2%のTMA(OH)溶液を用いてpH8~12程度に調製したリガンド化合物の溶液を加える。得られた溶液を室温で6~24時間撹拌し、アセトンを加えて沈殿させ8000~12000rpmで3~10分間遠心し、上澄みを取り除く。この沈殿をリン酸緩衝液に分散させ、濃縮カラムを用い7000~12000rpmで遠心することにより溶液量を減少させる。そこにリン酸緩衝液を加え再び7000~12000rpmで10~20分遠心し濃縮する。この操作を複数回繰り返してもよく、好ましくは3~4回、より好ましくは5~10回繰り返して、本発明の双性イオンリガンドが1つ以上配位結合したナノ粒子を得る。得られたナノ粒子の溶液を、PBSで希釈し、保存してもよい。
【0091】
C)相間移動触媒法
表面にオレイン酸等の疎水性リガンドが配位結合した金属粒子を有機層と水層との二層系溶媒中、相間移動触媒の存在下で、本発明の双性イオンリガンド化合物とを接触させて、本発明の双性イオンリガンドが1つ以上配位結合したナノ粒子を製造する方法である。
「有機層と水層の二層系溶媒」としては、有機溶媒と水の混合溶媒であって、二層に分離するものある。有機溶媒としては、非プロトン性溶媒であり、一実施態様では、2-メチルテトラヒドロフラン(2-Me-THF)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、クロロホルム、トルエン、キシレン、ヘプタン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の態様としては、2-メチルテトラヒドロフラン、クロロホルム及びこれらの組み合わせから選択される。
【0092】
「相間移動触媒」とは、有機溶媒にも水にも可溶な第四級アンモニウム及び第四級ホスホニウムを有する塩から選択される相間移動触媒であり、一実施態様としては、第四級アンモニウム塩であり、例えば、第四級アンモニウム塩はテトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩及びベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩からなる群から選択される。ここに塩を形成するアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硫酸水素イオン、等が挙げられる。また別の実施態様では、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム塩であり、例えば、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム塩は臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)及びフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)から選択される。また更に別の実施態様では、フッ化テトラブチルアンモニウムの水和物であり、例えばフッ化テトラブチルアンモニウム三水和物である。
【0093】
更に、所望により、pH調整剤を添加してもよく、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム又はリン酸水素二カリウムを用いることができる。
【0094】
反応は、表面に疎水性リガンドが配位結合した金属粒子と双性イオンリガンド化合物とを、有機層と水層の二層系溶媒中、相間移動触媒の存在下で、窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス雰囲気下、室温もしくは加温下、ある態様としては室温~80℃で、別の態様としては30℃~60℃で、1時間以上、ある態様としては、1~20時間、別の態様では、1~15時間、別の態様では1~6時間攪拌することによって行われる。反応温度や反応時間は反応に用いる金属粒子や、双性イオンリガンドの種類に応じて適宜調整できる。
本反応において、双性イオンリガンドは、金属粒子に対して1~30wt(重量比)、ある態様としては5~20wt、別の態様としては、6~15wtの比率で用いることができる。相関移動触媒は、金属粒子に対して0.1~10wt、ある態様としては0.1wt~6wt、別の態様としては0.1wt~5wt、別の態様としては0.5~6wt、別の態様としては0.5~3wt、更に別の態様としては0.5wt~2wtの比率で加えることによって行うことができる。更にpH調整剤を用いる場合は、相関移動触媒は、金属粒子に対して0.1wt~5wt、ある態様としては0.5wt~2wtの比率で加えることによって行うことができる。
【0095】
反応溶液からのナノ粒子の単離は、遠心分離、限外ろ過、又は分液操作等の公知の方法を用いて行うことができる。一例としては、Amicon(登録商標) Ultracentrifuge filter(Merck Millipore)、Agilent Captiva Premium Syringe Filters(Regenerated Cellulose、15mm)、YMC Duo-Filter等を用いた遠心分離やろ過を繰り返すことにより行うことができる。得られたナノ粒子の溶液を、PBSで希釈し、保存してもよい。
【0096】
いずれの方法を用いた場合においても、本発明の双性イオンリガンドを用いた場合、単純に表面の疎水性リガンドから双性イオンリガンドへとリガンド交換されたナノ粒子が製造される場合と、ナノ粒子中の金属粒子が原料で用いた金属粒子よりも微小なナノ粒子(例えば、後記実施例に示される3K精製粒子)が製造される場合がある。多くは両方のタイプが得られる。これは、本発明の双性イオンリガンドが配位結合する際に金属粒子に変化を与える性質を有するためと推定され、双性イオンリガンドによって異なる。反応条件、精製条件によっても変わり得る。
【0097】
使用する双性イオンリガンドの種類、反応条件や単離条件を調整することによって、コア-シェル構造を有するナノ粒子、及び/又は、微小金属粒子を有するナノ粒子(クラスター、複合体等)を得ることができる。
一実施態様としては、酸化鉄を含有する金属粒子の外表面に双性イオンリガンド化合物が1つ以上配位結合して、該双性イオンリガンド化合物によって当該金属粒子が被覆された粒子が製造される。
一実施態様としては、1以上の「1つ以上の双性イオンリガンド化合物が配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」と、1以上の双性イオンリガンド化合物からなる複合体として、微小な粒子が製造される。
一実施態様としては、2以上の双性イオンリガンド化合物と、2以上の「1つ以上の双性イオンリガンド化合物が配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」からなるクラスターが製造される。
いずれの形態であっても、本発明のナノ粒子は磁気共鳴イメージング用造影剤として使用できる。
一実施態様としては後記実施例に記載の方法である。
【0098】
〔5.磁気共鳴イメージング用造影剤(MRI用造影剤)〕
本発明は、上述のナノ粒子を含む、磁気共鳴イメージング用造影剤も提供する。
【0099】
以下、MRI用造影剤について詳細に説明する。
【0100】
(MRI用造影剤に含まれる各種成分)
i)ナノ粒子
一実施形態において、本発明のMRI用造影剤は、上述したナノ粒子を、少なくとも1種類含んでいることを特徴とする。別の実施形態において、本発明のMRI用造影剤は、上述したナノ粒子の2種類以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0101】
また、MRI用造影剤には、ナノ粒子の他に、必要に応じて、溶媒や薬理学的に許容され得る添加剤を含めることができる。本発明のMRI用造影剤の一実施形態として、好適な溶媒、及び/又は、担体、ビヒクル、錯体等の添加剤から選択される少なくとも1つをさらに含んでいてもよい。
【0102】
ii)溶媒
MRI用造影剤に含まれる溶媒としては、水、緩衝液等が挙げられ、緩衝液としては、さらに、生理食塩水、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、リンガー溶液等が挙げられる。剤型が注射剤である場合の好ましい溶媒は、例えば水、リンガー溶液、生理食塩水等である。
【0103】
すなわち、本発明に係るMRI用造影剤は、本発明に係るナノ粒子を、所望の組成を有する溶液中に懸濁させた溶液であり得る。具体的には、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液等の緩衝液中にナノ粒子を懸濁させた形態であってもよい。
【0104】
iii)添加剤
MRI用造影剤に含まれる担体、錯体、ビヒクル等の添加剤としては、医薬分野及び生命工学分野において一般的に使用される担体、ビヒクル等が挙げられる。担体の例としては、ポリエチレングリコール等のポリマー、金属微粒子等が挙げられ、錯体の例としては、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)、等が挙げられ、ビヒクルの例としては、石灰、ソーダ灰、ケイ酸ソーダ、デンプン、膠、ゼラチン、タンニン及びケブラチョが挙げられる。
【0105】
また、本発明によるMRI用造影剤は、さらに、賦形剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、pH調整剤、浸透圧調整剤等を含んでいてもよい。
【0106】
(剤型)
本発明のMRI用造影剤の剤型は特に限定されず、液体、固体又は半固体若しくは半液体とすることができる。これらの剤型は、当業者に公知の方法に基づき、容易に製造することができる。剤型が液体の場合は例えば水性の溶媒に本発明に係るナノ粒子を分散、懸濁又は溶解して含有させた形態であり得る。また凍結乾燥剤の形態として、使用する際に分散、懸濁又は溶解して用いるものであってもよい。
【0107】
(ナノ粒子の濃度)
MRI用造影剤中のナノ粒子の濃度は目的及び造影対象組織等に応じて適宜決定される。例えば、適当な造影能を有し且つ生体への影響が許容できる範囲の濃度が選択される。
【0108】
本発明のナノ粒子は、高濃度にしても凝集しにくく、安定性を保持することができる。そのため、公知のナノ粒子と比較して、より高いMRI造影能を長期的に安定して保つことが期待される。
【0109】
例えば、MRI用造影剤が水溶液の液剤である場合、液剤中のナノ粒子の濃度は、例えば、一般的な注射剤として用いられる場合、0.1~1000mM Fe、好ましくは1.0~500mM Fe、更に好ましくは5.0~100mM Fe、ある態様としては10~500mM Fe、別の態様としては5.0~50mM Feとなる濃度等にすることができる。
【0110】
(投与対象)
本発明に係る造影剤の投与の対象としては任意のヒト以外の生物又はヒトが挙げられる。ヒト以外の生物としては、哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギなどのげっ歯類、サルなどの霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ウマ、及びブタ等)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫及び植物を含むが、これらに限定されない。ある態様において、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物又はクローン生物であり得る。また、生体以外の投与対象としては、組織試料又は細胞を含む生物学的材料であり得る。
【0111】
(MRI用造影剤の適用される用途)
MRI用造影剤には、前記の通り陽性造影剤及び陰性造影剤の2種類が存在している。
【0112】
一実施形態において、本発明のMRI用造影剤は、陽性造影剤である。別の実施形態としては陰性造影剤である。
【0113】
本発明は、上記MRI造影剤を用いたMRI造影方法をも包含する。さらに本発明は前記MRI用造影剤を用いた、MRI装置による対象の各種臓器の造影方法にもかかる。例えば、腎、肝、脳血管の造影方法が挙げられる。また、本発明は、前記MRI用造影剤を用いた対象の各種臓器の病変及び腫瘍の有無等の診断方法にもかかる。例えば、腎機能の診断方法、肝腫瘍の診断方法等に好適に用いることができる。更に、本発明は、上記MRI用造影剤を用いた、MRI装置による対象の各種臓器の視覚化方法にもかかる。例えば、腎臓、肝臓や脳血管等の視覚化に好適に用いることができる。ここで、MRI装置は任意の装置であってよく、公知のものを使用することが可能である。また、印加される磁場は、例えば1T、1.5T、3T及び7Tのものが利用される。本発明の造影剤を用いた診断方法或いは視覚化方法は、生きているヒト等の被験体に、陽性造影剤を投与する工程及び、続いてMRI装置を用いて被験体の所望の臓器に関するMRI画像を得る工程を包含している。
【0114】
常磁性は、外部磁場が印加されると任意な向きであった双極子モーメントが加えられた磁場と同じ方向を向き外部磁場と同じ方向に磁化される。このような物質は双極子間相互作用によってT短縮効果をもたらす。超常磁性体も同様の機構で正味の磁気モーメントが生じるが、磁化率は常磁性体の磁化率より大きく、T短縮効果が大きい。本造影剤は常磁性と超常磁性の境界内又は常磁性を示すと考えられ、磁場強度によって双方の緩和機構が影響すると推測されT、T及びT 緩和をもたらす。特に実用磁場領域におけるT短縮効果により、より高い陽性造影効果をもたらすことが期待される。
常磁性と超常磁性の境界内又は常磁性を示すことは、超電導量子干渉計(SQUID)を用いて磁化の磁場依存性を測定することにより、確認することが出来る。図7に300Kにおける測定例を示した。磁化率は磁場に対してほぼ比例関係にあり、超常磁性としての性質は低いと考えられ、ナノ粒子でありながら常磁性の性質を有し、実用磁場領域において優れたT短縮効果が期待できる。
一実施形態において、本発明に係る造影剤の造影能は、37℃及び1.5Tの磁場で、r緩和能が2.8~6.2mM-1-1であり、r緩和能は2.5~4.4mM-1-1の範囲である。別の実施形態において、本発明に係る造影剤の造影能は、37℃及び1.5Tの磁場で、r緩和能が3.0~4.2mM-1-1であり、r緩和能は2.7~3.9mM-1-1の範囲である。
【0115】
緩和能は、MRI用造影剤ナノ粒子中の金属粒子の粒子径、組成物、粒子表面の電荷又は性状、粒子安定性、及び生体における凝集性や組織との結合性等のような様々な要因に依存する。緩和能の比であるr/rは、一般に、MRIで生じたコントラストの型を定量化するのに使用され、造影剤の性能の指標となり得る。
【0116】
本発明のMRI用陽性造影剤は、より高い陽性造影効果を得て診断能を向上させるためにr/rの値は大きいほど好ましく、磁場が1.5Tである場合のr/rの値は、例えば、0.6以上が好ましく、0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらにより好ましい。r/r値が0.7以上のとき、T(陽性)効果は優れており、より高磁場のMRI測定においても高分解能で高い造影効果を有する。造影効果を著しく高めて、より少量のMRI用陽性造影剤を投与する観点では、0.8以上あることが好ましい。
【0117】
本発明のナノ粒子は、双性イオンリガンドの分子鎖長が公知のリガンドと比較して短く、金属粒子と外部の水分子との距離が短くなり緩和能を効率よく引き出すことができる。
【0118】
本発明のMRI用造影剤には、金属粒子の粒子径(金属粒子を含むクラスターや複合体の平均径である場合を含む)が2nm以下、一例では1nm以下のナノ粒子を用いたMRI用造影剤が含まれ、当該MRI用造影剤は7T以上のMRI装置でもT強調画像において陽性造影剤としての利用が可能である。一例として、7T以下のMRI装置で使用するためのMRI用陽性造影剤を包含する。一例としては3T以下のMRI装置で使用するためのMRI用陽性造影剤を包含する。
【0119】
(毒性及び安定性)
本発明のMRI用造影剤は、ナノ粒子の安定性が高く、後記試験例3に記載の方法によって凝集の度合いの確認が可能であり、溶液中において、室温又は4℃で長期間凝集することなく保存可能であることが期待される。また生物に対して毒性が低く、長期的かつ連続的な生体への適用も可能であることが期待される。
【0120】
〔6.本発明に係る具体的な態様の例示〕
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の何れかの一態様を包含する。
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
<1>
1つ以上の式(I)で表される双性イオンリガンドが配位結合した、酸化鉄を含有する金属粒子を含むナノ粒子。
【化19】
(式中、
及びRの一方は、式(a)又は式(b)で示される基であり、他方は、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンであり、
【化20】
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となって5又は6員含窒素飽和ヘテロ環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、-O-C1-3アルキル又はハロゲンであり、
nは0~2の整数であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、
ii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがエチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってメチレンを形成してもよく、及び
iii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
但し、Rが式(a)で示される基であり、R及びRがメチルであり、Xが結合であり、Xが、C1-4アルキレンであり、且つ、R、R及びRがいずれもHであるとき、YはHPO 、又は、CO である。)
<2>
双性イオンリガンドが、
及びRの一方が、式(a)又は式(b)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となってピロリジン環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、又はハロゲンであり、
nは1であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
双性イオンリガンドである<1>のナノ粒子。
<3>
双性イオンリガンドが、
が、式(a)又は式(b)で示される基であり、Rが、H又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、C1-5アルキレンであり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、いずれもメチルであり、
は、SO 又は、CO である、
双性イオンリガンドである<2>のナノ粒子。
<4>
双性イオンリガンドが、R及びRの一方が式(a)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドである<1>のナノ粒子。
<5>
双性イオンリガンドが、
1)Rが式(a)で示される基であり、且つ、RがH、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである双性イオンリガンドであるか、又は、
2)RがHであり、Rが式(a)で示される基であり、RがC1-3アルキル又はハロゲンであり、且つ、RがHである、
双性イオンリガンドである、<4>のナノ粒子。
<6>
双性イオンリガンドが、Rが式(a)で示される基であり、且つ、RがH、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである、双性イオンリガンドである、<5>のナノ粒子。
<7>
双性イオンリガンドが、
がH又はハロゲンであり、
が結合、メチレン又はエチレンであり、
がC2-4アルキレンであり、
及びRがいずれもメチルであり、
及びRが同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル又はハロゲンであり、
更に、Xがメチレンであるとき、RとRもしくはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
双性イオンリガンドである、<6>のナノ粒子。
<8>
双性イオンリガンドが、
がHまたはFであり、
がエチレン又はプロピレンであり、
及びRがいずれもHである、
双性イオンリガンドである、<7>のナノ粒子。
<9>
双性イオンリガンドが、
がHであり、
が結合又はエチレンであり、
双性イオンリガンドである、<8>のナノ粒子。
<10>
双性イオンリガンドが、
がSO 又はCO である、
双性イオンリガンドである、<4>~<9>のいずれかに記載のナノ粒子。
<11>
双性イオンリガンドが、
が、下式(b-1)で示される基であり、
【化21】
が、H又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、
は、C1-5アルキレン又は結合であり、
がメチルであり、
がSO 、又は、CO である、
双性イオンリガンドである、<3>のナノ粒子。
<12>
酸化鉄を含有する金属粒子が、酸化鉄のみを含有する金属粒子である、<1>~<11>のいずれかに記載のナノ粒子。
<13>
ナノ粒子が、酸化鉄を含有する金属粒子の外表面に双性イオンリガンドが1つ以上配位結合して形成された粒子であり、該双性イオンリガンドによって当該金属粒子が被覆されている、ナノ粒子である<1>~<12>のいずれかに記載のナノ粒子。
<14>
ナノ粒子が、
1つ以上の双性イオンリガンドが配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子、及び、
1つ以上の双性イオンリガンド、
からなる複合体である、<1>~<12>のいずれかに記載のナノ粒子。
<15>
ナノ粒子が、
2以上の双性イオンリガンド化合物、及び
2以上の「1つ以上の双性イオンリガンド化合物が配位結合した酸化鉄を含有する金属粒子」、
からなるクラスターである、<1>~<12>のいずれかに記載のナノ粒子。
<16>
<1>~<15>のいずれかに記載のナノ粒子を含む、磁気共鳴イメージング用造影剤。
<17>
陽性造影剤である、<16>の磁気共鳴イメージング用造影剤。
<18>
<1>のナノ粒子を製造するための、下式(I)で表される双性イオンリガンド化合物の使用。
【化22】
(式中、
及びRの一方は、下式(a)又は式(b)で示される基であり、他方は、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンであり、
【化23】
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となって5又は6員含窒素飽和ヘテロ環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、-O-C1-3アルキル又はハロゲンであり、
nは0~2の整数であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、
ii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがエチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってメチレンを形成してもよく、及び
iii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
但し、Rが式(a)で示される基であり、R及びRがメチルであり、Xが結合であり、Xが、C1-4アルキレンであり、且つ、R、R及びRがいずれもHであるとき、YはHPO 、又は、CO である。)
<19>
双性イオンリガンド化合物が、R及びRの一方が、式(a)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである双性イオンリガンド化合物である、<18>の使用。
<20>
下式(I)で表される化合物又はその塩。
【化24】
(式中、
及びRの一方は、下式(a)又は式(b)で示される基であり、他方は、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンであり、
【化25】
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となって5又は6員含窒素飽和ヘテロ環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、-O-C1-3アルキル又はハロゲンであり、
nは0~2の整数であり、
更に、
i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよく、
ii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがエチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってメチレンを形成してもよく、及び
iii)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
但し、Rが式(a)で示される基であり、R及びRがメチルであり、Xが結合であり、Xが、C1-4アルキレンであり、且つ、R、R及びRがいずれもHであるとき、YはHPO 、又は、CO である。)
<21>
及びRの一方が、式(a)又は式(b)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、OHで置換されていてもよいC1-5アルキレン、又は、-C1-2アルキレン-O-C1-3アルキレン-であり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、同一又は互いに異なって、C1-3アルキル、-C1-3アルキレン-O-C1-2アルキルであるか、又は、R及びRは、それらが結合する4級窒素原子と一体となってピロリジン環を形成し、
は、SO 、HPO 、又は、CO であり、
及びRは、同一又は互いに異なって、H、C1-3アルキル、又はハロゲンであり、
nは1であり、
更に、i)Rが式(a)で示される基であり、且つ、Xがメチレンであるとき、RとRまたはRとが一体となってエチレンを形成してもよい、
<20>の化合物又はその塩。
<22>
が、式(a)又は式(b)で示される基であり、Rが、H又はハロゲンであり、
は、結合又はメチレンであり、更にRが式(a)で示される基のときXはエチレンであってもよく、
は、C1-5アルキレンであり、更にRが式(b)で示される基のときXは結合であってもよく、
及びRは、いずれもメチルであり、
は、SO 又は、CO である、<21>の化合物又はその塩。
<23>
及びRの一方が、式(a)で示される基であり、他方が、H、低級アルキル、-O-低級アルキル又はハロゲンである、<20>の化合物又はその塩。
<24>
4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート、
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート、
ヒドロゲン=(3-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロピル)ホスホナート、
5-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ペンタノアート
{1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム-4-イル}アセタート、
1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム-4-カルボキシラート、
4-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタノアート、
2-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート、及び
3-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート
からなる群から選択される<20>の化合物又はその塩。
<25>
{1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム-4-イル}アセタート、及び
2-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート
からなる群から選択される<24>の化合物又はその塩。
<26>
4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート、及び
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート
からなる群から選択される<24>の化合物又はその塩。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【実施例
【0121】
以下に製造例及び実施例を示し、本発明についてさらに詳しく説明する。
また、実施例、製造例及び後記表中において、以下の略号を用いることがある。
【0122】
PEx:製造例番号、Ex:実施例番号、PSyn:同様の方法で製造した製造例番号、ESyn:同様の方法で製造した実施例番号、Str:化学構造式、Me:メチル基、Et:エチル基、Data1:製造例の物理化学的データを意味し、NMR-D:DMSO-d6中の1H-NMRにおける特徴的なピークのδ(ppm)、ESI+:質量分析値におけるm/z値(イオン化法ESI、断りの無い場合(M+H)+を示し、後記表中ESI(M+)+となっている場合は、(M+)+を示す。)を示す。APCI/ESI(M+)+:質量分析値におけるm/z値(イオン化法APCI及びESI)を示す。なお、製造例27は鉄イオンを除いたオレイン酸部分のMassデータを示し、そのESIは(M-)-を示す。Data2:実施例の物理化学的データを意味し、SEC(min)とは試験例2に記載の条件でのナノ粒子の流出時間を意味し、3Kとは下記に記載のフィルターにより精製した粒子である3K精製粒子を、10Kとは下記に記載のフィルターにより精製した粒子である10K精製粒子を意味する。THF:テトラヒドロフラン、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、OA:オレイン酸、MEAA:[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、TBAF三水和物:フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物、PBS:リン酸緩衝液(phosphate buffered saline)、OA又はMEAAが配位結合した酸化鉄ナノ粒子をそれぞれSNP-OA、SNP-MEAAと記す。また構造式中のBrは臭化物イオンを、Iはヨウ化物イオンを示す。逆相カラムクロマトグラフィーにはODS(オクタデシルシリル基)で表面が修飾されたシリカゲルを充填したカラムを使用した。
【0123】
酸化鉄ナノ粒子の精製に使用するAmicon Ultracentrifuge 3K filter(Merck Millipore)は、Amicon 3K filterと記す。さらに異なる分画分子量10K、30K、50K、100Kの同器具を用いた際も同様にAmicon 10K filter、Amicon 30K filter、Amicon 50K filter、Amicon 100K filterと記す。また30K、10K、3Kの分画分子量の限外濾過により精製した粒子をそれぞれ30K精製粒子、10K精製粒子、3K精製粒子と記す。
Agilent Captiva Premium Syringe Filters(Regenerated Cellulose、15mm、ポアサイズ:0.2μm)やYMC Duo-Filter(XQUO15ポアサイズ0.2μm)を用いた粒子の濾過操作は、メンブレン(0.2μm)濾過と記す。
また後記実施例表中の破線は、金属粒子表面の金属原子との配位結合を表す。
【0124】
以下の製造例若しくは実施例により又はこれらと同様にして、後記表に示す製造例の化合物及び実施例のナノ粒子を製造した。
なお、双性イオンリガンド化合物、鉄オレイン酸錯体及びオレイン酸で被覆された酸化鉄ナノ粒子(SNP-OA)の製造実施例を製造例に、SNP-OAから直接又はSNP-MEAAを経由した、双性イオンリガンド化合物が配位結合したナノ粒子の製造例を実施例に記載した。
【0125】
製造例1
6-フルオロ-2,3-ジメトキシベンズアルデヒド(2.50g)に9.5mol/Lジメチルアミン水溶液(7.1mL)を加え、室温で15時間撹拌した。これに水浴下、水素化ホウ素ナトリウム(514mg)を加え、室温で2時間撹拌した。氷浴下、濃塩酸を加えた(pH1-2)。水層をジクロロメタンで二回洗浄した。この水層に1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えた(pH>11)。これをジクロロメタンで三回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濃縮し、1-(6-フルオロ-2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(2.46g)を得た。
【0126】
製造例2
4-フルオロ-2,3-ジメトキシベンズアルデヒド(2.50g)、ジクロロメタン(75mL)、2mol/LジメチルアミンTHF溶液(13.6mL)の混合物に、水浴下、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(3.74g)を加え、室温で1時間撹拌した。塩基性シリカゲルを加え、減圧下濃縮した。塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン-クロロホルム)で精製し、1-(4-フルオロ-2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(2.81g)を得た。
【0127】
製造例3
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(3.82g)、1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(1.89mL)、酢酸エチル(38.2mL)の混合物を室温で7日間撹拌した。更に1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(515μL)を追加して50℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥して、3-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(5.41g)を得た。
【0128】
製造例4
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(3.00g)、炭酸ナトリウム(1.63g)、2-ブロモエタン-1-スルホン酸ナトリウム(3.24g)、水(6mL)、エタノール(30mL)の混合物を75℃で3日間撹拌した。更に2-ブロモエタン-1-スルホン酸ナトリウム(3.24g)を追加して80℃で2日間撹拌した。更に2-ブロモエタン-1-スルホン酸ナトリウム(3.24g)を追加して80℃で2日間撹拌した。室温まで放冷後、減圧濃縮した。水を加えて逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、2-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート(3.50g)を得た。
【0129】
製造例5
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(2.00g)、1,2λ-オキサチアン-2,2-ジオン(1.36mL)、酢酸エチル(20mL)の混合物を50℃で3時間撹拌した後、70℃で24時間撹拌した。更に1,2λ-オキサチアン-2,2-ジオン(1.04mL)を追加して70℃で24時間撹拌した。室温まで放冷後、固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥して、4-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート(2.28g)を得た。
【0130】
製造例6
2-フルオロ-4,5-ジメトキシアニリン(2.50g)、1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(1.54mL)、アセトニトリル(63mL)の混合物を115℃で8時間撹拌した。更に1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(0.64mL)を追加して115℃で8時間撹拌した。室温まで放冷後、固体を濾取し、アセトニトリルで洗浄し、50℃で減圧乾燥して、3-(2-フルオロ-4,5-ジメトキシアニリノ)プロパン-1-スルホン酸(4.00g)を得た。
【0131】
製造例7
3-(2-クロロエトキシ)プロパン-1-スルホン酸(1.46g)、ジオキサン(22mL)、水(11mL)の混合物に、3,4-ジメトキシアニリン(1.66g)、ヨウ化カリウム(1.79g)、炭酸カリウム(2.49g)を加え、100℃で、終夜撹拌した。反応液を室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-[2-(3,4-ジメトキシアニリノ)エトキシ]プロパン-1-スルホン酸(532mg)を得た。
【0132】
製造例8
2-メトキシ-N-(2-メトキシエチル)エタン-1-アミン(3.0mL)、1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(2.0mL)、アセトニトリル(27mL)の混合物を80℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、ジエチルエーテルを加え、室温で2時間撹拌後、固体を濾取し、室温で減圧乾燥することにより、3-[ビス(2-メトキシエチル)アミノ]プロパン-1-スルホン酸(5.00g)を得た。
【0133】
製造例9
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(1.70g)、3-クロロ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸ナトリウム(3.42g)、ヨウ化カリウム(1.73g)、エタノール(26mL)、水(7.7mL)の混合物を80℃で終夜撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホナート(2.17g)を得た。
【0134】
製造例10
7,8-ジメトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン(1.80g)、1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(0.98mL)、炭酸カリウム(1.29g)、アセトニトリル(45mL)の混合物を100℃で8時間撹拌した。室温まで放冷後、水を加え、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-(7,8-ジメトキシ-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(1H)-イル)プロパン-1-スルホン酸(1.79g)を得た。
【0135】
製造例11
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(1.30g)、(3-ブロモプロピル)ホスホン酸ジエチル(1.66mL)、エタノール(6.50mL)の混合物を80℃で6時間撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、3-(ジエトキシホスホリル)-N-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウム=ブロミド(2.70g)を得た。
【0136】
製造例12
3-[ビス(2-メトキシエチル)アミノ]プロパン-1-スルホン酸(3.00g)、1-(クロロメチル)-2,3-ジメトキシベンゼン(4.39g)、炭酸カリウム(1.95g)、エタノール(45mL)の混合物を80℃で終夜撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]ビス(2-メトキシエチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(3.09g)を得た。
【0137】
製造例13
(3-ブロモプロピル)ホスホン酸ジエチル(2.53g)、3,4-ジメトキシアニリン(3.00g)の混合物をアルゴン雰囲気下95℃で6時間攪拌した。室温まで放冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで一回抽出した。有機層を飽和食塩水で一回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒; ヘキサン-酢酸エチル、ついで酢酸エチル-メタノール)で精製することにより[3-(3,4-ジメトキシアニリノ)プロピル]ホスホン酸ジエチル(1.74g)を得た。
【0138】
製造例14
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(2.00g)と4-ブロモブタン酸エチル(2.60g)の混合物を80℃で3時間攪拌した。これを逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒; 水-アセトニトリル)で精製することによりN-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-4-エトキシ-N,N-ジメチル-4-オキソブタン-1-アミニウム=ブロミド(3.93g)を得た。
【0139】
製造例15
1-(6-フルオロ-2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(1.20g)、1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(990μL)、酢酸エチル(12mL)の混合物を50℃で18時間撹拌した。室温まで放冷後、固体を濾取し、酢酸エチルで洗浄し、減圧乾燥して、3-{[(6-フルオロ-2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(1.79g)を得た。
【0140】
製造例16
1-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルメタンアミン(2.00g)と5-ブロモペンタン酸エチル(2.79g)の混合物を80℃で3時間攪拌した。これを逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒; 水-アセトニトリル)で精製することにより、N-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-5-エトキシ-N,N-ジメチル-5-オキソペンタン-1-アミニウム=ブロミド(3.91g)を得た。
【0141】
製造例17
3-(2-フルオロ-4,5-ジメトキシアニリノ)プロパン-1-スルホン酸(4.00g)、炭酸カリウム(4.52g)、ヨウ化メチル(7.7mL)、メタノール(60mL)の混合物を50℃で終夜撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-[(2-フルオロ-4,5-ジメトキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(4.34g)を得た。
【0142】
製造例18
3-(3,4-ジメトキシアニリノ)プロパン-1-スルホン酸(2.00g)、1,4-ジヨードブタン(1.04mL)、炭酸カリウム(2.21g)、ジオキサン(30mL)、水(15mL)の混合物を100℃で終夜撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-[1-(3,4-ジメトキシフェニル)ピロリジン-1-イウム-1-イル]プロパン-1-スルホナート(2.37g)を得た。
【0143】
製造例19
3-(3,4-ジメトキシアニリノ)プロパン-1-スルホン酸(2.00g)、ヨウ化エチル(2.94mL)、炭酸カリウム(2.41g)、メタノール(30mL)の混合物を50℃で終夜撹拌した。ヨウ化メチル(4.1mL)を加え、引き続き50℃で終夜撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-[(3,4-ジメトキシフェニル)(エチル)(メチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(2.14g)を得た。
【0144】
製造例20
3-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(5.41g)、57%ヨウ化水素酸(24mL)の混合物を110℃で15時間撹拌した。室温まで放冷後、水(30mL)を加え減圧下濃縮した。この操作をもう一度繰り返した。これに水(6mL)を加え溶解させた後、アセトン(100mL)を加え、氷浴下3分間攪拌した。静置した後、上澄みをデカンテーションで除去した。さらに水(6mL)、アセトン(75mL)を加え、もう一度同様の操作を行った。これに水(6mL)、アセトン(75mL)を加え、氷浴下3分間攪拌した後、固体を濾取しアセトンで洗浄し、減圧乾燥して、3-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(5.02g)を得た。
【0145】
製造例21
アルゴン雰囲気下、ドライアイスーアセトンバス冷却下、3-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]ビス(2-メトキシエチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(2.59g)、ジクロロメタン(52mL)の混合物に、1mol/L三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(19.2mL)を滴下し、ゆっくり3時間かけて室温まで昇温し、室温で2時間撹拌した。氷冷下メタノールを加え、室温で30分間撹拌し減圧下濃縮した。残渣にメタノールを加えて再び減圧下濃縮した。この操作を後2回行い、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製し、凍結乾燥することにより、3-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]ビス(2-メトキシエチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(674mg)を得た。
【0146】
製造例22
4-{[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート(2.28g)、57%ヨウ化水素酸(9.6mL)の混合物を110℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、水を加え減圧下濃縮した。この操作をもう一度繰り返した。これに水(4mL)を加え溶解させた後、アセトン(80mL)を加え、攪拌、静置した後、上澄みをデカンテーションで除去した。さらにミリポア水(4mL)、アセトン(60mL)を加え、同様の操作を行った。これにミリポア水(4mL)、アセトン(60mL)を加え、攪拌した後、固体を濾取し、アセトンで洗浄し、減圧乾燥して、4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート(2.45g)を得た。
【0147】
製造例23
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジメトキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(1.79g)、57%ヨウ化水素酸(7.5mL)の混合物を110℃で6時間撹拌した。室温まで放冷後、水を加え減圧下濃縮した。この操作をもう一度繰り返した。これにアセトン(70mL)を加え、氷冷下攪拌した。一晩静置し固体を析出させた後、氷冷下1時間攪拌した。静置した後、上澄みをデカンテーションで除去した。これにアセトンを加えた後、固体を濾取し、アセトンで洗浄し、減圧乾燥して、3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(1.58g)を得た。
【0148】
製造例24
3-(ジエトキシホスホリル)-N-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウム=ブロミド(2.80g)、57%ヨウ化水素酸(8mL)の混合物を100℃で18時間撹拌した。室温まで放冷後、水とアセトンを加え、減圧下濃縮した。これに水を加え、減圧下濃縮した。これに水を加え、不溶物を濾別し、濾液を減圧下濃縮した。これにアセトンを加え、生じた固体を濾過した。これをアセトンで洗浄し、減圧乾燥して、N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチル-3-ホスホノプロパン-1-アミニウム=ヨージド(571mg)を得た。
【0149】
製造例25
N-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-4-エトキシ-N,N-ジメチル-4-オキソブタン-1-アミニウム=ブロミド(3.91g)、57%ヨウ化水素酸(22.5g)の混合物を110℃で15時間撹拌した。濃縮し、得られた残渣に水を加え、減圧下濃縮した。この操作をもう1回繰り返した。これにアセトンを加え、氷浴下冷却し、上澄みを除去した。これにアセトンを加え、氷浴下冷却し、生じた固体を濾過した。これをアセトンで洗浄し、3-カルボキシ-N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウム=ヨージド(2.13g)を得た。
【0150】
製造例26
N-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-5-エトキシ-N,N-ジメチル-5-オキソペンタン-1-アミニウム=ブロミド(3.90g)、57%ヨウ化水素酸(22.0g)の混合物を110℃で16時間撹拌した。濃縮し、得られた残渣に水を加え、減圧下濃縮した。この操作をもう1回繰り返した。これにアセトンを加え、氷浴下冷却し、上澄みを除去した。これにアセトンを加え、氷浴下冷却し、生じた固体を濾過した。これをアセトンで洗浄し、4-カルボキシ-N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルブタン-1-アミニウム=ヨージド(1.33g)を得た。濾液をすべて濃縮し、得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒; 水-アセトニトリル)で精製した。濃縮して生じた固体にアセトンを加え、濾過した。これをアセトンで洗浄し、4-カルボキシ-N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルブタン-1-アミニウム=ヨージド(1.29g)を得た。
【0151】
製造例27
塩化鉄(III)六水和物(5.80g)、オレイン酸ナトリウム(19.5g)、エタノール(43mL)、水(33mL)、ヘキサン(75mL)を混合し、アルゴン雰囲気下70℃で4時間加熱還流した。放冷後、分液漏斗に移し、水層を除去した。50mLの水を加えて洗浄し、有機層を回収した。この操作をあと2度繰り返した(2回目は50%メタノール水を使用)。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下濃縮してオレイン酸鉄錯体(FeOA、19.2g)を得た。
【0152】
製造例28
FeOA(6.53g)、オレイルアルコール(11.7g)、ジフェニルエーテル(36.4g)の混合物を、減圧下90℃で2時間撹拌した。その後アルゴンで常圧に戻し、バス温213℃まで16分かけて昇温し、内温200℃を超えてから30分間攪拌した。室温まで放冷後、ヘキサン(5mL)、アセトン(150mL)を加え、10℃、8000rpmで10分間遠心分離し、上澄みを除去した。得られた沈殿にヘキサンを加え(24mL)、さらにアセトン(150mL)を加えた後、10℃、8000rpmで10分間遠心分離し上澄みを除去した。この操作をもう一度繰り返し、得られた沈殿を減圧乾燥して、表面にオレイン酸が配位結合した酸化鉄ナノ粒子(SNP-OA、992mg)を得た。
【0153】
製造例33
2-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(7.71g)、水(15.4mL)、エタノール(77mL)の混合物に炭酸ナトリウム(15.6g)、2-ブロモエタン-1-スルホン酸ナトリウム(23.3g)を加え、80℃で18時間攪拌した。2-ブロモエタン-1-スルホン酸ナトリウム(11.7g)、炭酸ナトリウム(7.81g)、エタノール(20mL)、水(4mL)を加え、80℃で1日間攪拌した。濃縮後、逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒; 水-アセトニトリル)で精製することにより2-{[2-(2,3-ジメトキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート(9.00g)を得た。
【0154】
製造例35
2,3-ジメトキシアニリン(5.61g)、1,2λ-オキサチオラン-2,2-ジオン(5.83g)、アセトニトリル(140mL)の混合物を8時間還流した。室温まで放冷後、氷浴下攪拌した。固体を濾取し、冷アセトニトリルで洗浄し、3-(2,3-ジメトキシアニリノ)プロパン-1-スルホン酸(5.59g)を得た。
【0155】
製造例38
3-(2,3-ジメトキシアニリノ)プロパン-1-スルホン酸(5.58g)、炭酸カリウム(6.72g)、ヨウ化メチル(11.4mL)、メタノール(85mL)の混合物を50℃で8時間撹拌した。ヨウ化メチル(11.4mL)を加え、50℃で24時間撹拌した。不溶物を濾過後、濃縮し、セパビーズ(登録商標)SP207SSにて精製した。濃縮し、得られた固体をエタノールに加温下溶解させた。これを室温まで放冷し、ついで氷浴下攪拌した。固体を濾過し、冷エタノールで洗浄し、3-[(2,3-ジメトキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(5.40g)を得た。
【0156】
製造例43
3-[(2,3-ジメトキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(5.40g)、57%ヨウ化水素酸(40g)の混合物を8時間還流した。室温まで放冷後、水を加えて減圧下濃縮した。この操作をもう二回繰り返した。これに水(3mL)を加え溶解させた後、アセトン(50mL)を加え、氷浴下30分間攪拌した。静置した後、上澄みをデカンテーションで除去した。さらに水(3mL)、アセトン(40mL)を加え、もう一度同様の操作を行った。これに水(3mL)、アセトン(40mL)を加え、氷浴下30分間攪拌し、固体を濾過、アセトンで洗浄し、3-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(4.35g)を得た。
【0157】
製造例50
2-{[2-(2,3-ジメトキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート(9.00g)、57%ヨウ化水素酸(40mL)の混合物を100℃で15時間撹拌した。濃縮し、アセトンを加え、氷浴下5分間攪拌した。生じた固体を濾過し、アセトンで洗浄し、2-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート(3.40g)を得た。
【0158】
製造例58
(ピペリジン-4-イル)酢酸メチル一塩酸塩(5.00g)、1-(クロロメチル)-2,3-ジメトキシベンゼン(5.78g)、炭酸カリウム(4.64g)、アセトニトリル(50mL)の混合物を室温で終夜攪拌した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン-酢酸エチル)で精製することにより{1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]ピペリジン-4-イル}酢酸メチル(4.90g)を得た。
【0159】
製造例59
2-(2,3-ジメトキシフェニル)-N,N-ジメチルエタン-1-アミン(10.9g)と4-ブロモブタン酸エチル(8.28mL)の混合物を80℃で3時間攪拌した。これを逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒; 水-アセトニトリル)で精製することによりN-[2-(2,3-ジメトキシフェニル)エチル]-4-エトキシ-N,N-ジメチル-4-オキソブタン-1-アミニウム=ブロミド(15.7g)を得た。
【0160】
製造例60
2,3-ジメトキシアニリン(5.00g)、1,2λ-オキサチアン-2,2-ジオン(5.78g)の混合物を95℃で24時間撹拌した。これを逆相カラムクロマトグラフィー(展開溶媒:アセトニトリル-水)で精製した。濃縮し、得られた固体をアセトニトリルで洗浄し、4-(2,3-ジメトキシアニリノ)ブタン-1-スルホン酸(4.78g)を得た。
【0161】
製造例61
2,3-ジメトキシアニリン(5.00g)、5-ブロモペンタン酸エチル(8.19g)、トリエチルアミン(3.96g)の混合物を室温で5日間撹拌した。水を加え、酢酸エチルで一回抽出した。有機層を飽和食塩水で一回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒; 一回目:ヘキサン-酢酸エチル、二回目:クロロホルム-酢酸エチル)で精製することにより5-(2,3-ジメトキシアニリノ)ペンタン酸エチル(6.26g)を得た。
【0162】
製造例62
{1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]ピペリジン-4-イル}酢酸メチル(4.90g)、ヨウ化メチル(5.0mL)、メタノール(74mL)の混合物を50℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;水-アセトニトリル)で精製することにより1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(6.54g)を得た。
【0163】
製造例63
1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]ピペリジン-4-カルボン酸エチル(18.8g)、ヨウ化メチル(19.1mL)、エタノール(188mL)の混合物を50℃で4時間撹拌した。室温まで放冷後、濃縮し、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;水-アセトニトリル)で精製することにより1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-4-(エトキシカルボニル)-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(25.9g)を得た。
【0164】
製造例64
1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(6.54g)、57%ヨウ化水素酸(19mL)の混合物を100℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、水を加え減圧下濃縮した。この操作をもう2回繰り返した。これにアセトン(30mL)を加え、室温で攪拌後、氷浴下冷却、静置し、上澄みをデカンテーションで除去した。さらにアセトンを加え、もう二回同様の操作を行った。これにアセトン(30mL)を加え、室温で攪拌後、氷浴下冷却し、固体を濾取し、4-(カルボキシメチル)-1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(4.49g)を得た。
【0165】
製造例65
1-[(2,3-ジメトキシフェニル)メチル]-4-(エトキシカルボニル)-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(25.9g)、57%ヨウ化水素酸(76mL)の混合物を100℃で終夜攪拌した。室温まで放冷後、水を加え減圧下濃縮した。この操作をもう2回繰り返した。これにアセトンを加え、室温で攪拌後、氷浴下冷却、静置し、上澄みをデカンテーションで除去した。さらにアセトンを加え、もう一回同様の操作を行った。これにアセトンを加え、室温で攪拌後、氷浴下冷却し、固体を濾取し、4-カルボキシ-1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(10.8g)を得た。また濾液を濃縮し、逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;水-アセトニトリル)で精製することにより、4-カルボキシ-1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(12.0g)を得た。
【0166】
製造例66
N-[2-(2,3-ジメトキシフェニル)エチル]-4-エトキシ-N,N-ジメチル-4-オキソブタン-1-アミニウム=ブロミド(15.7g)、57%ヨウ化水素酸(52mL)の混合物を100℃で18時間撹拌した。濃縮し、得られた残渣に水を加え、減圧下濃縮した。これにアセトニトリルを加えた。氷浴下冷却し、固体を析出させた後、濃縮した。これにアセトンを加え、室温で10分間攪拌した後、固体を濾過し、3-カルボキシ-N-[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル]-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウム=ヨージド(14.8g)を得た。
【0167】
実施例1
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(100mg)、MEAA(2.5mL)とメタノール(7.5mL)の混合物を、70℃で5時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(24mL)、ヘキサン(96mL)を加え、6つに分け、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(1.19g)、DMF(25mL)、水(17mL)の混合物を加熱下溶解し、炭酸水素ナトリウム(700mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(8mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、6つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを除去した。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと3回行った。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと2回行った。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと7回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(21.2mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(41.3mg)を得た。
【0168】
実施例2
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(20mg)、MEAA(0.5mL)とメタノール(1.5mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。
室温まで放冷後、アセトン(4mL)、ヘキサン(16mL)を加え、10℃、7800rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をアセトン(1mL)、ヘキサン(4mL)を用いて3回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-[(2-フルオロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(266mg)、水(3.3mL)の混合物に、炭酸水素ナトリウム(53mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(6.6mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で15時間撹拌した。反応混合物を水(1.5mL)を用いて、2つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7800rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。
得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 100K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作を後3回繰り返した。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと2回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(9.9mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ3回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで1時間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで1時間遠心分離した。この操作をあと7回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(3.2mg)を得た。
【0169】
実施例3
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(20mg)、MEAA(0.5mL)とメタノール(1.5mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。
室温まで放冷後、アセトン(4mL)、ヘキサン(16mL)を加え、10℃、7800rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をアセトン(1mL)、ヘキサン(4mL)を用いて3回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-(7,8-ジヒドロキシ-2-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン-2-イウム-2(1H)-イル)プロパン-1-スルホナート(274mg)、水(6.6mL)の混合物に、炭酸水素ナトリウム(53mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(13.2mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、50℃で17時間撹拌した。
反応混合物を水(3mL)を用いて、4つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7800rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。
得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 100K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作を後3回繰り返した。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと2回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(17.3mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ3回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで1時間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで1時間遠心分離した。この操作をあと7回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(11.1mg)を得た。
【0170】
実施例4
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(40mg)、MEAA(1mL)とメタノール(3mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(8mL)、ヘキサン(32mL)を加え、2つに分け、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。これにアセトン(6mL)、ヘキサン(24mL)を加えこの操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)(ジメチル)アザニウムイル]プロパン-1-スルホナート(500mg)、水(14.7mL)の混合物を加熱下溶解し、炭酸水素ナトリウム(130mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(2mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(2mL)を用いて、4つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで3分間遠心分離し上澄みを除去した。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 50K filterを用い、10℃、5800rpmで10分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと2回行った。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をもう一度繰り返した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、30K精製粒子(2.1mg)を得た。Amicon 30K filterによる洗浄の濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと6回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(1.9mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと5回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(5.0mg)を得た。
【0171】
実施例5
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(20mg)、MEAA(0.5mL)とメタノール(1.5mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、アセトン(8mL)、ヘキサン(32mL)を加え、2つに分け、10℃、7300rpmで5分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をアセトン(6mL)、ヘキサン(24mL)を用いて2回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-{[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(250mg)のDMF(5mL)と水(3.3mL)の溶液を加熱下溶解し、炭酸水素ナトリウム(50mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(1.7mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で21.5時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、2つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7300rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 50K filterを用い、10℃、5800rpmで10分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これにPBSを加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと7回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(9.3mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ3回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと5回行った。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(2.6mg)を得た。
【0172】
実施例6
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(100mg)、MEAA(2.5mL)とメタノール(7.5mL)の混合物を、70℃で5時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(24mL)、ヘキサン(96mL)を加え、6つに分け、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除き、SNP-MEAAを得た。
4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート(1.31g)、水(40mL)の混合物に炭酸水素ナトリウム(900mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(8mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、6つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと3回行った。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと6回行った。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと7回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(117.7mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄の濾液を順次Amicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(53.2mg)を得た。なお、当該3K精製粒子を塩酸を用いて酸加水分解し、HPLCにて分析した結果、双性イオンリガンド、4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナートの存在が確認されたことから、当該3K精製粒子には該双性イオンリガンドが配位結合していたことが確認された。
HPLC条件を以下に示す。
カラム:YMC Triart C18
溶離液:10mM リン酸水素二カリウム (pH6.0)/アセトニトリル (98 : 2)
【0173】
実施例7
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(100mg)、MEAA(2.5mL)とメタノール(7.5mL)の混合物を、70℃で5時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(24mL)、ヘキサン(96mL)を加え、6つに分け、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除き、SNP-MEAAを得た。
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(1.32g)、水(40mL)の混合物に炭酸水素ナトリウム(650mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(8mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、6つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと3回行った。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと7回行った。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと4回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(102.4mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄の濾液を順次Amicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(41.2mg)を得た。
【0174】
実施例8
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(20mg)、MEAA(0.5mL)とメタノール(1.5mL)の混合物を、70℃で5時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(8mL)、ヘキサン(32mL)を加え、2つに分け、10℃、7000rpmで3分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチル-3-ホスホノプロパン-1-アミニウム=ヨージド(263mg)、水(9.5mL)の混合物に炭酸水素ナトリウム(50mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(0.5mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で18時間攪拌した。反応混合物をPBSに分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この一連の操作をあと3回行った。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと2回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(3.0mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと2回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(6.0mg)を得た。
【0175】
実施例9
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(20mg)、MEAA(0.5mL)とメタノール(1.5mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、アセトン(8mL)、ヘキサン(32mL)を加え、2つに分け、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をアセトン(6mL)、ヘキサン(24mL)を用いて1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-カルボキシ-N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウム=ヨージド(347mg)の水(8mL)溶液に炭酸水素ナトリウム(122mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(2mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で17時間攪拌した。反応混合物を水(1mL)を用いて、2つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これにPBSを加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと1回行った。Amicon 30K filterによる濾液を順次Amicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30-60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと14回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(23.2mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ3回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで30-60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと13回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(7.2mg)を得た。
【0176】
実施例10
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(20mg)、MEAA(0.5mL)とメタノール(1.5mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、アセトン(8mL)、ヘキサン(32mL)を加え、2つに分け、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をアセトン(6mL)、ヘキサン(24mL)を用いて1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
4-カルボキシ-N-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-N,N-ジメチルブタン-1-アミニウム=ヨージド(359mg)の水(8mL)溶液に炭酸水素ナトリウム(123mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(2mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で20時間攪拌した。反応混合物を水(1mL)を用いて、2つに分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。得られた沈殿をPBSに分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これにPBSを加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと1回行った。Amicon 30K filterによる濾液を順次Amicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30-60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと13回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(24.2mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ4回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで30-60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと11回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(8.8mg)を得た。
【0177】
実施例11
4-{[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}ブタン-1-スルホナート(275mg)、水(2.2mL)の混合物に炭酸水素ナトリウム(34mg)を加えた。この溶液をSNP-OA(20mg)、クロロホルム(2.5mL)の混合物に加えた後、TBAF三水和物(63mg)、水(300μL)の混合物を加え、アルゴン雰囲気下、室温で16時間攪拌した。水層を分離し、クロロホルム層を水で2回抽出した。水層を集め、PBSに分散させ、Amicon 30K filterに移し、10℃、5800rpmで15分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと3回行った。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで15分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この一連の操作をあと2回行った。Amicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をあと5回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、10K精製粒子(30.3mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄の濾液を順次Amicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥することにより、3K精製粒子(17.8mg)を得た。
【0178】
実施例12
3-{[(6-フルオロ-2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル](ジメチル)アザニウムイル}プロパン-1-スルホナート(280mg)を水(2.2mL)に溶かし、炭酸水素ナトリウム(38mg)を加えた。SNP-OA(20mg)のクロロホルム(2.5mL)溶液にこの溶液を加え、さらにTBAF三水和物(65mg)の水(0.3mL)溶液を加えた。この混合物をアルゴン雰囲気下室温で20時間攪拌した。不溶物を濾過し、水層をAmicon 30K filterに移し、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これにPBSを加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。Amicon 30K filterによる洗浄のはじめ2回分の濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと12回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(13.5mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ5回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで30-60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと9回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(7.3mg)を得た。
【0179】
実施例13
3,4-ジヒドロキシ-N,N-ジメチル-N-(3-ホスホノプロピル)アニリニウム=ヨージド(265mg)を水(2.4mL)に溶かした。この水溶液に炭酸水素ナトリウム(100mg),TBAF三水和物(67mg)の水(0.3mL)溶液を加えた。SNP-OA(20mg)のクロロホルム(2.5mL)溶液にこの溶液を加え、水(0.6mL)で洗いこんだ。この混合物をアルゴン雰囲気下室温で18時間攪拌した。不溶物を濾過し、水層をAmicon 100K filterに移し、10℃、5800rpmで15分間遠心分離した。得られた濾液をAmicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと8回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(1.0mg)を得た。Amicon 10K filterによる洗浄のはじめ2回分の濾液をAmicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで30-60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと7回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(1.4mg)を得た。
【0180】
実施例18
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(150mg)、MEAA(3.75mL)とメタノール(11.25mL)の混合物を、70℃で5時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。遠沈管6本に分け、それぞれにアセトン(4mL)、ヘキサン(16mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
2-{[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル](ジメチル)アザニウムイル}エタン-1-スルホナート(1.97g)、水(25mL)、炭酸水素ナトリウム(370mg)の混合物を室温で攪拌した。これに先のSNP-MEAAのDMF(12.5mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で16時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、遠沈管6本に分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを除去した。得られた沈殿を水に分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと2回行った。Amicon 30K filterによる濾液を順次Amicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと8回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(16.1mg)を得た。Amicon 10K filterによる濾液を順次Amicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(56.0mg)を得た。
【0181】
実施例25
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(150mg)、MEAA(3.8mL)とメタノール(11.3mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(28mL)で遠沈管4本に分け、それぞれにヘキサン(28mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。それぞれにアセトン(7mL)、ヘキサン(28mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
4-(カルボキシメチル)-1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(2.77g)、水(60mL)の混合物を加熱下溶解し、炭酸水素ナトリウム(1.39g)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(15mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で42時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、遠沈管12本に分け、それぞれにアセトン(40mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを除去した。得られた沈殿を水に分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をもう1回繰り返した。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をもう4回繰り返した。得られた濾液を順次Amicon 10K filterに移し、10℃、5800rpmで最初の2回は30分間、その後の6回は60分間遠心分離した。さらにこのAmicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をもう14回繰り返した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(96.0mg)を得た。Amicon 10K filterを用いて得られた濾液を順次Amicon 3K filterに移し、10℃、5800rpmで最初の1回は30分間、その後の13回は60分間遠心分離した。さらにこのAmicon 3K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をもう7回繰り返した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(121mg)を得た。
【0182】
実施例26
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(150mg)、MEAA(3.8mL)とメタノール(11mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。アセトン(28mL)で遠沈管4本に分け、それぞれにヘキサン(28mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。それぞれにアセトン(7mL)、ヘキサン(28mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
4-カルボキシ-1-[(2,3-ジヒドロキシフェニル)メチル]-1-メチルピペリジン-1-イウム=ヨージド(2.68g)、水(60mL)の混合物を加熱下溶解し、炭酸水素ナトリウム(832mg)を加えた。これに先のSNP-MEAAのDMF(15mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で42時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、遠沈管12本に分け、それぞれにアセトン(40mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを除去した。得られた沈殿を水に分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。この操作をもう1回繰り返した。Amicon 30K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をもう4回繰り返した。得られた濾液を順次Amicon 10K filterに移し、10℃、5800rpmで最初の2回は30分間、その後の6回は60分間遠心分離した。さらにこのAmicon 10K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をもう14回繰り返した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(62.5mg)を得た。Amicon 10K filterを用いて得られた濾液を順次Amicon 3K filterに移し、10℃、5800rpmで最初の1回は30分間、その後の13回は60分間遠心分離した。さらにこのAmicon 3K filter上の濃縮液に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をもう7回繰り返した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(74.1mg)を得た。
【0183】
実施例27
アルゴン雰囲気下、SNP-OA(150mg)、MEAA(3.75mL)とメタノール(11.25mL)の混合物を、70℃で6時間攪拌した。室温まで放冷後、減圧下濃縮した。遠沈管6本に分け、それぞれにアセトン(4mL)、ヘキサン(16mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを取り除いた。この操作をもう1回繰り返し、SNP-MEAAを得た。
3-カルボキシ-N-[2-(2,3-ジヒドロキシフェニル)エチル]-N,N-ジメチルプロパン-1-アミニウム=ヨージド(2.69g)、水(25mL)、炭酸水素ナトリウム(1.24g)の混合物を室温で5分間攪拌した。これに先のSNP-MEAAのDMF(12.5mL)溶液を加え、アルゴン雰囲気下、室温で41時間攪拌した。反応混合物を水(3mL)を用いて、遠沈管6本に分け、それぞれにアセトン(30mL)を加え、10℃、7000rpmで10分間遠心分離し上澄みを除去した。得られた沈殿を水に分散させ、Amicon 30K filterを用い、10℃、5800rpmで30分間遠心分離した。これに水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと2回行った。Amicon 30K filterによる濾液を順次Amicon 10K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。この操作をあと10回行った。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して10K精製粒子(17.6mg)を得た。Amicon 10K filterによる濾液を順次Amicon 3K filterを用い、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。これに更に水を加え、10℃、5800rpmで60分間遠心分離した。濃縮液をメンブレン(0.2μm)濾過し、凍結乾燥して3K精製粒子(116mg)を得た。
【0184】
前記の製造例化合物及び実施例のナノ粒子の構造式と物理化学的データを、後記表に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
【0187】
【表3】
【0188】
【表4】
【0189】
【表5】
【0190】
【表6】
【0191】
【表7】
【0192】
【表8】
【0193】
【表9】
【0194】
【表10】
【0195】
【表11】
【0196】
【表12】
【0197】
【表13】
【0198】
【表14】
【0199】
【表15】
【0200】
【表16】
【0201】
【表17】
【0202】
【表18】
【0203】
【表19】
【0204】
【表20】
【0205】
次に、前記実施例で得た式(I)のナノ粒子について以下の評価を行った。
【0206】
試験例1.ナノ粒子のMR緩和能の評価測定
各実施例で得られた3K精製粒子の緩和能を評価した。
まず、PBS中でナノ粒子の濃度を系列的に希釈し、試験試料とした。各試料について1.5T-NMRにおいて緩和能を計測した。
【0207】
、Tは以下の条件で測定した。
測定磁場:1.5T、測定温度:37℃
測定(反転回復法)
Recycle Delay (RD):サンプル及び濃度毎にTの5倍以上となるよう設定した。取得するデータ点の数は8以上、最初の反転パルスの時間(反転時間)は5msに固定し、最後の反転時間はRDと同一に設定した。
測定(Carr-Purcell-Meiboom-Gill(CPMG)法)
Recycle Delay (RD):TのRDと同一に設定。τ = 0.5msとし、取得するデータ点の数は τ x 2 xデータ点の数がほぼRDと同一となるように設定した。
各サンプルのr、rは、複数濃度におけるT、Tをそれぞれ測定し、濃度をX軸、T、Tの逆数をY軸に取り、その傾きをSLOPE関数で算出することにより得た。
【0208】
結果を下表に示す。なお表中のNTはNot Testedの略である。
【表21】
* 当該実施例と同様の手法により複数回繰り返し製造し、各緩和能を測定したので、得られた値の範囲として示した。
【0209】
同じ双性イオンリガンドが配位結合したナノ粒子の製造法がそれぞれ異なる実施例6と実施例11の3K精製粒子のr/rの値はそれぞれ0.86~0.93、0.90~0.95であり、また同じ双性イオンリガンドが配位結合したナノ粒子の製造法がそれぞれ異なる実施例7と実施例12の3K精製粒子のr/rの値はそれぞれ0.88~0.90、0.87~0.92であった。この結果から、いずれの製造法を用いても、ほぼ同等の良好な緩和能を有するナノ粒子が得られることが確認された。
【0210】
また、上記実施例6と実施例11の複数回の製造により得られた同じ双性イオンリガンドの3K精製粒子についての緩和能rの値は2.74~3.76の間を、また緩和能rの値は3.06~4.18の間を示した。
【0211】
同様に、実施例7と実施例12の複数回の製造により得られた同じ双性イオンリガンドの3K精製粒子の緩和能rの値は3.02~3.85の間を、また緩和能rの値は3.27~4.17の間を示した。
【0212】
また、実施例6と実施例11の複数回の製造により得られた同じ双性イオンリガンドの10K精製粒子の緩和能rの値は3.19-4.15の間を、また緩和能rの値は3.43-4.41の間を示し、r/rの値は0.86-0.94の間を示した。
【0213】
同様に、実施例7と実施例12の複数回の製造により得られた同じ双性イオンリガンドの10K精製粒子の緩和能rの値は3.38-4.84の間を、また緩和能rの値は3.77-6.14の間を示し、r/rの値は0.71-0.94の間を示した。
【0214】
また、実施例18の10K精製粒子の緩和能を評価した結果、緩和能rの値は2.52を、また緩和能rの値は3.02を示し、r/rの値は0.83を示した。
【0215】
また、実施例25の10K精製粒子の緩和能を評価した結果、緩和能rの値は3.72-4.04の間を、また緩和能rの値は4.3-4.48の間を示し、r/rの値は0.83-0.94の間を示した。
【0216】
実施例18の3K精製粒子の緩和能を評価した結果、の緩和能rの値は2.93-2.94の間を、また緩和能rの値は3.13-4.09の間を示した。
【0217】
実施例25の3K精製粒子の緩和能を評価した結果、の緩和能rの値は3.18-3.43の間を、また緩和能rの値は3.30-3.52の間を示した。
【0218】
これらの値はこれまでに報告されてきた酸化鉄粒子をコアとするSNPの中で磁場強度の影響を補正すると最も大きいものであった。よって、陽性造影剤として適用するナノ粒子として有望であることを示している。
【0219】
試験例2.ナノ粒子の粒子径の評価試験
サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography、SEC)を用いて、ナノ粒子の相対的な大きさを測定した。
【0220】
SECは、細孔を持つ担体を充填したカラムに試料を流し、それが流出するまでの時間で試料の大きさを見積もる分析手法である。大きな凝集体は担体の細孔に入らないため早く流出し、小さなナノ粒子は担体の細孔を通るため流出するまでの経路が長くなり、遅く流出するため、標準となる粒子を用いることで相対的な大きさを測定することができる。
【0221】
実施例6のMEAA法で製造した3K精製ナノ粒子及び10K精製ナノ粒子、及び実施例6と同じ双性イオンリガンドを用いて相間移動触媒法で製造した実施例11記載の3K精製ナノ粒子及び10K精製ナノ粒子、並びに実施例7のMEAA法で製造した3K精製ナノ粒子及び10K精製ナノ粒子、及び実施例7と同じ双性イオンリガンドを用いて相間移動触媒法で製造した実施例12記載の3K精製ナノ粒子及び10K精製ナノ粒子について以下のSECの条件により、それぞれ2回ずつ測定を行った。同様に、実施例18、25及び26のMEAA法で製造した3K精製ナノ粒子及び10K精製ナノ粒子についても以下のSECの条件により、それぞれ2回ずつ測定を行った。
<SEC条件>
流速:0.3mL/min
溶離液:PBS(pH 7.4)
カラム:Shodex KW403-4F(4.6 x 300 mm)
検出器:UV 280nm
【0222】
結果を下表に示す。なお標品であるovalbuminの流出時間は、いずれも9.4~10.2分の間である。
【表22】
【0223】
上記より、異なる製造法を用いた場合でもSECの流出時間から、粒子径がほぼ同等のナノ粒子が得られることが確認された。また、流出時間及び標品であるovalbumin(粒径:6.1nm)との比から、得られたナノ粒子は相対的に粒子径が小さいことが確認された。
【0224】
試験例3.安定性評価試験
ナノ粒子を用いた造影剤が期待された性能を発揮するためには、それらが溶液中に安定に分散している必要があり、長い期間、高濃度な状態でも分散性を維持していることが望ましい。
【0225】
一般に、ナノ粒子の分散安定性は、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography、SEC)を使用して評価することができる。
【0226】
ナノ粒子の安定性を調べるため、実施例で得られたナノ粒子を凍結乾燥した後、PBS中にFeイオン濃度が約100mMとなるように分散させ、試験試料として、-20℃、4℃及び室温(20℃)に静置し、2週間、1か月及び3か月後にSECに付して、その凝集の度合いを確認する。SECの測定条件は試験例2に記載の条件と同様である。
【0227】
試験例4.マウスを用いたMRI造影
i)実施例で得られたナノ粒子を含有する造影剤をそれぞれマウスに投与し、1テスラのMRI装置においてT強調画像を取得した。測定時の条件を以下に示す。
動物:C57BL/6j jms mouse 雄、体重約25g
投与ナノ粒子濃度:20mM
投与量:体重20gあたり100μL
磁場強度:1T
撮影法:T強調(図1図6)、使用装置:Bruker社製ICON
<Bruker社製ICON>
強調画像
Pulse sequence : MSME (Multi Slice Multi Echo), Slice Orientation = Axial, TE/TR = 10.464 / 400 msec, Field of view = 40 × 40 mm2, matrix size = 256 × 256, Number of Slice = 15, Slice thickness = 1 mm, Slice Gap = 2 mm, Number of averages = 8, Scan Time = 13 min 39 sec
【0228】
造影剤投与前(pre)の撮影後、ナノ粒子を含む造影剤を20mM溶液としてマウスの体重20gあたり100μLを静脈内投与し、各経過時点で撮像し、1.5時間後まで経過を追った。
【0229】
結果を図1~6に示す。
図1の実施例6の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスにおいて、投与直後から、腎盂及び腎皮質の両方で信号が上昇し、造影剤を含む尿が溜まっていくのが観察されたことから、本造影剤は、腎臓を介して尿排泄されていることが示された。また、その信号変化を追うことで、本造影剤は、腎機能検査に利用できる可能性が示唆された。
【0230】
図2の実施例6の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスにおいて、投与直後、腎盂及び腎皮質の両方で信号が上昇し、造影剤を含む尿が溜まっていくのが観察されたことから、本造影剤は、腎臓を介して尿排泄されていることが示された。また、その信号変化を追うことで、本造影剤は、腎機能検査に利用できる可能性が示唆された。
【0231】
図3の実施例7の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスにおいて、投与直後から、腎盂及び腎皮質の両方で信号が上昇し、造影剤を含む尿が溜まっていくのが観察されたことから、本造影剤は、腎臓を介して尿排泄されていることが示された。また、その信号変化を追うことで、本造影剤は、腎機能検査に利用できる可能性が示唆された。
【0232】
図4の実施例7の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスにおいて、投与直後から、腎盂及び腎皮質の両方で信号が上昇し、造影剤を含む尿が溜まっていくのが観察されたことから、本造影剤は、腎臓を介して尿排泄されていることが示された。また、その信号変化を追うことで、本造影剤は、腎機能検査に利用できる可能性が示唆された。
【0233】
図5の実施例25の3K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスにおいて、投与直後から、腎盂及び腎皮質の両方で信号が上昇し、造影剤を含む尿が溜まっていくのが観察されたことから、本造影剤は、腎臓を介して尿排泄されていることが示された。また、その信号変化を追うことで、本造影剤は、腎機能検査に利用できる可能性が示唆された。
【0234】
図6の実施例25の10K精製粒子を含有する造影剤を投与したマウスにおいて、投与直後から、腎盂及び腎皮質の両方で信号が上昇し、造影剤を含む尿が溜まっていくのが観察されたことから、本造影剤は、腎臓を介して尿排泄されていることが示された。また、その信号変化を追うことで、本造影剤は、腎機能検査に利用できる可能性が示唆された。
【0235】
試験例5.磁化の磁場依存性(M-H曲線)の測定
SQUID装置に実施例6、7又は9でそれぞれ得られた3K精製粒子を挿入し、温度300Kにて印加磁場を1000~5000 Oe の間隔で3T~-3T~3Tの順に変化させ、各ポイントでの粒子の磁化を測定した。
【0236】
測定結果を図7に示した。磁化率は磁場に対してほぼ比例関係にあり、超常磁性としての性質は低いと考えられ、ナノ粒子でありながら常磁性の性質を有し、実用磁場領域において優れたT短縮効果が期待できる結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0237】
本発明のMRI用造影剤は、医療分野において、MRIの造影剤として好適に使用することができる。また、本発明のナノ粒子及び双性イオンリガンド化合物は、MRIの造影剤を含む種々の医薬組成物等に応用可能であり、各種診断法や検査試薬をはじめとして、医薬及び生命工学分野等において広く利用することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7