(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】エンジンの排気浄化装置、及び付着還元剤の推定方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20231005BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20231005BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20231005BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F01N3/20 C
F01N3/08 H ZAB
F01N11/00
B01D53/94 222
B01D53/94 400
(21)【出願番号】P 2019164349
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100059959
【氏名又は名称】中村 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162824
【氏名又は名称】石崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】坪井 吾朗
(72)【発明者】
【氏名】平澤 一憲
(72)【発明者】
【氏名】嘉代 秀和
(72)【発明者】
【氏名】石原 力
(72)【発明者】
【氏名】大井 英貴
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025830(JP,A)
【文献】特開2014-109224(JP,A)
【文献】特開2017-201134(JP,A)
【文献】特開2015-010508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 11/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、
前記還元剤インジェクタにより噴射された前記還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
前記選択還元型NOx触媒よりも下流側の前記排気通路上に設けられ、前記排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、
前記NOxセンサの出力値に基づいて、前記選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、
を有するエンジンの排気浄化装置であって、
前記処理装置は、
前記還元剤インジェクタの噴射によって前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の量である付着還元剤量を求め、
前記付着還元剤量と前記排気通路の配管温度及び/又は前記排気ガスの温度とに基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤が固化しているか否かを判定し、
前記還元剤が固化していると判定されたときに、前記異常判定の実行を制限するように構成され、
前記処理装置は、前記配管温度が所定温度以上であるときには、当該配管温度が低いほど前記還元剤の固化速度が高くなるという前記配管温度と前記固化速度との関係に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の固化を判定するように構成されている、
ことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項2】
還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、
前記還元剤インジェクタにより噴射された前記還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
前記選択還元型NOx触媒よりも下流側の前記排気通路上に設けられ、前記排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、
前記NOxセンサの出力値に基づいて、前記選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、
を有するエンジンの排気浄化装置であって、
前記処理装置は、
前記還元剤インジェクタの噴射によって前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の量である付着還元剤量を求め、
前記付着還元剤量と前記排気通路の配管温度及び/又は前記排気ガスの温度とに基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤が固化しているか否かを判定し、
前記還元剤が固化していると判定されたときに、前記異常判定の実行を制限するように構成され、
前記処理装置は、前記配管温度が所定温度未満であるときには、当該配管温度が高いほど前記還元剤の固化速度が高くなるという前記配管温度と前記固化速度との関係に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の固化を判定するように構成されている、
ことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項3】
還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、
前記還元剤インジェクタにより噴射された前記還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
前記選択還元型NOx触媒よりも下流側の前記排気通路上に設けられ、前記排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、
前記NOxセンサの出力値に基づいて、前記選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、
を有するエンジンの排気浄化装置であって、
前記処理装置は、
前記還元剤インジェクタの噴射によって前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の量である付着還元剤量を求め、
前記付着還元剤量と前記排気通路の配管温度及び/又は前記排気ガスの温度とに基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤が固化しているか否かを判定し、
前記還元剤が固化していると判定されたときに、前記異常判定の実行を制限するように構成され、
前記処理装置は、
前記排気ガスの温度、前記排気ガスの流速、及び前記還元剤インジェクタによる前記還元剤の噴射率に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の濃度を求め、
前記付着還元剤量及び前記還元剤の濃度に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の水分量を求め、
前記還元剤の水分量が0であるときに、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤が固化していると判定するように構成されている、
ことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項4】
還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、
前記還元剤インジェクタにより噴射された前記還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
前記選択還元型NOx触媒よりも下流側の前記排気通路上に設けられ、前記排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、
前記NOxセンサの出力値に基づいて、前記選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、
を有するエンジンの排気浄化装置であって、
前記処理装置は、
前記還元剤インジェクタの噴射によって前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の量である付着還元剤量を求め、
前記付着還元剤量と前記排気通路の配管温度及び/又は前記排気ガスの温度とに基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤が固化しているか否かを判定し、
前記還元剤が固化していると判定されたときに、前記異常判定の実行を制限するように構成され、
前記処理装置は、
前記排気ガスの温度、前記排気ガスの流速、及び前記還元剤インジェクタによる前記還元剤の噴射率に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の濃度を求め、
前記付着還元剤量及び前記還元剤の濃度に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の水分量を求め、
前記配管温度に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の蒸発量を求め、
前記還元剤の水分量から前記還元剤の蒸発量を減算した量が0であるときに、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤が固化していると判定するように構成されている、
ことを特徴とするエンジンの排気浄化装置。
【請求項5】
前記処理装置は、前記所定温度を第1所定温度とすると、前記配管温度が前記第1所定温度よりも高い第2所定温度以上であるときには、当該配管温度が高いほど前記還元剤の固化速度が高くなるという前記配管温度と前記固化速度との関係に基づき、前記排気通路の壁面に付着した前記還元剤の固化を判定するように構成されている、請求項
1又は2に記載のエンジンの排気浄化装置。
【請求項6】
前記配管温度が前記所定温度未満であるときの当該配管温度の変化に対する前記還元剤の固化速度の変化率の絶対値は、前記配管温度が前記所定温度以上であるときの当該配管温度の変化に対する前記還元剤の固化速度の変化率の絶対値よりも高い、請求項
1、2及び5のいずれか一項に記載のエンジンの排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤を排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、この還元剤を用いてNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、この選択還元型NOx触媒よりも下流側に設けられたNOxセンサと、このNOxセンサを用いて選択還元型NOx触媒の異常判定を行う処理装置と、を有するエンジンの排気浄化装置、及び、このエンジンの排気浄化装置において実行される付着還元剤の推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、還元剤としての尿素を排気通路中に噴射する尿素インジェクタと、この尿素インジェクタから噴射された尿素から生成されたアンモニアを吸着し、この吸着したアンモニアを排気ガス中のNOxと反応(還元)させて浄化する、選択還元型NOx触媒としてのSCR(Selective Catalytic Reduction)触媒と、を有するエンジンの排気浄化装置が知られている。また、このようなエンジンの排気浄化装置において、SCR触媒の下流側に設けられたNOxセンサを用いて、SCR触媒の異常判定を行う技術が知られている(例えば特許文献1)。この特許文献1には、SCR触媒から流出するアンモニア量を推定し、アンモニア量が多いときにSCR触媒の異常判定を制限する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンやSCR触媒が比較的低温である状況(例えば冷間時)において、SCR触媒を用いてNOxを浄化させることが考えられる。このような比較的低温の状況下において尿素インジェクタから尿素を噴射すると、尿素が排気通路の壁面(排気通路を形成する配管の内壁面)に付着し易い。排気通路の壁面に付着した尿素は、例えばエンジン停止等により排気ガスや配管温度が低下したときに固化する(なお、固化した尿素はデポジットとなる)。そして、固化した尿素は、排気ガスや配管温度が高温になったときに、一気に熱分解してアンモニアとなる。
【0005】
このように固化した尿素から熱分解により一気に生成されたアンモニアは、SCR触媒に局所的に導入される傾向にある。その結果、SCR触媒が局所的に飽和状態となり、SCR触媒からアンモニアが下流側に放出(スリップ)してしまう場合がある。この場合に、上述したようにSCR触媒の下流側のNOxセンサを用いてSCR触媒の異常判定を行うと、NOxセンサの出力値(排気ガス中の窒素化合物の量(濃度)に対応する)が大きくなることで、SCR触媒が異常であると誤判定してしまう可能性がある。なお、SCR触媒の局所的な飽和状態によるアンモニアのスリップは、特に比較的小型のSCR触媒を用いた場合に生じ易い。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤の固化を適切に考慮に入れることで、選択還元型NOx触媒の異常判定に関する誤判定を確実に抑制することができるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、還元剤インジェクタにより噴射された還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、選択還元型NOx触媒よりも下流側の排気通路上に設けられ、排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、NOxセンサの出力値に基づいて、選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、を有するエンジンの排気浄化装置であって、処理装置は、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤の量である付着還元剤量を求め、付着還元剤量と排気通路の配管温度及び/又は排気ガスの温度とに基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤が固化しているか否かを判定し、還元剤が固化していると判定されたときに、異常判定の実行を制限するように構成され、処理装置は、配管温度が所定温度以上であるときには、当該配管温度が低いほど還元剤の固化速度が高くなるという配管温度と固化速度との関係に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の固化を判定するように構成されている、ことを特徴とする。
【0008】
このように構成された本発明では、処理装置は、例えば回路により構成されており、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤(付着還元剤)の量である付着還元剤量を求め、この付着還元剤量に加えて配管温度や排気ガス温度に基づき、付着還元剤が固化しているか否かを判定し、付着還元剤が固化していると判定されたときに選択還元型NOx触媒の異常判定の実行を制限する。
上記の本発明によれば、付着還元剤量や配管温度や排気ガス温度に基づき、付着還元剤の固化を正確に判定することができる。そして、付着還元剤の固化に関する正確な判定に基づいて、選択還元型NOx触媒の異常判定の実行を適切に制限することができ、その結果、選択還元型NOx触媒の異常判定に関する誤判定を確実に抑制することができる。また、本発明によれば、還元剤の固化に対する正確な判定結果に基づき選択還元型NOx触媒の異常判定の実行可否を判定するので、異常判定の無駄な制限を抑制することができ、異常判定の実行機会を適切に確保することが可能となる。
【0009】
排気通路の配管温度が比較的高いときには、配管温度が高くなるほど、還元剤の蒸発速度(還元剤に含まれる水分の蒸発に関するものであり、蒸発率と同義)が低くなるという現象が生じる。具体的には、配管に接触した還元剤の表面が気化して薄い蒸気膜が形成されて、この蒸気膜によって還元剤が配管に直接接触することが阻害される結果(つまり還元剤の下に蒸気膜が生じて当該還元剤と配管との熱伝導が阻害される結果)、還元剤が蒸発しにくくなるのである。
したがって、上記の本発明では、処理装置は、このような還元剤の蒸発に関する特性を加味して、配管温度が所定温度以上であるときには、当該配管温度が低いほど還元剤の固化速度(基本的には、還元剤の蒸発速度と固化速度に関しては、蒸発速度が高くなるほど固化速度も高くなるという関係がある)が高くなるという関係に基づき、還元剤の固化を判定する。これにより、付着還元剤の固化をより正確に判定することができる。
【0010】
他の観点では、本発明は、還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、還元剤インジェクタにより噴射された還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、選択還元型NOx触媒よりも下流側の排気通路上に設けられ、排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、NOxセンサの出力値に基づいて、選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、を有するエンジンの排気浄化装置であって、処理装置は、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤の量である付着還元剤量を求め、付着還元剤量と排気通路の配管温度及び/又は排気ガスの温度とに基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤が固化しているか否かを判定し、還元剤が固化していると判定されたときに、異常判定の実行を制限するように構成され、処理装置は、配管温度が所定温度未満であるときには、当該配管温度が高いほど還元剤の固化速度が高くなるという配管温度と固化速度との関係に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の固化を判定するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、処理装置は、配管温度が比較的低いときには、上述したような蒸気膜の存在により温度が高くなるほど蒸発速度が低くなるという現象はほとんど生じないため、温度が高くなるほど蒸発速度が高くなるという通常の特性を加味することで、付着還元剤の固化をより正確に判定することができる。
他の観点では、本発明は、還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、還元剤インジェクタにより噴射された還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、選択還元型NOx触媒よりも下流側の排気通路上に設けられ、排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、NOxセンサの出力値に基づいて、選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、を有するエンジンの排気浄化装置であって、処理装置は、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤の量である付着還元剤量を求め、付着還元剤量と排気通路の配管温度及び/又は排気ガスの温度とに基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤が固化しているか否かを判定し、還元剤が固化していると判定されたときに、異常判定の実行を制限するように構成され、処理装置は、排気ガスの温度、排気ガスの流速、及び還元剤インジェクタによる還元剤の噴射率に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の濃度を求め、付着還元剤量及び還元剤の濃度に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の水分量を求め、還元剤の水分量が0であるときに、排気通路の壁面に付着した還元剤が固化していると判定するように構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、処理装置は、排気ガス温度、排気ガス流速、及び還元剤インジェクタによる還元剤の噴射率に基づき、還元剤の濃度を求め、この還元剤の濃度に基づき還元剤中の水分量を求めることで、この水分量に基づいて、付着還元剤の固化をより正確に判定することができる。
他の観点では、本発明は、還元剤としてのアンモニア又はアンモニアの前駆体を、エンジンの排気通路内に噴射する還元剤インジェクタと、還元剤インジェクタにより噴射された還元剤を用いて、排気ガス中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、選択還元型NOx触媒よりも下流側の排気通路上に設けられ、排気ガス中のNOx量及びアンモニア量に応じて出力値が変化するNOxセンサと、NOxセンサの出力値に基づいて、選択還元型NOx触媒に対する異常判定を行う処理装置と、を有するエンジンの排気浄化装置であって、処理装置は、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤の量である付着還元剤量を求め、付着還元剤量と排気通路の配管温度及び/又は排気ガスの温度とに基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤が固化しているか否かを判定し、還元剤が固化していると判定されたときに、異常判定の実行を制限するように構成され、処理装置は、排気ガスの温度、排気ガスの流速、及び還元剤インジェクタによる還元剤の噴射率に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の濃度を求め、付着還元剤量及び還元剤の濃度に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の水分量を求め、配管温度に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の蒸発量を求め、還元剤の水分量から還元剤の蒸発量を減算した量が0であるときに、排気通路の壁面に付着した還元剤が固化していると判定するように構成されている、ことを特徴とする。
このように構成された本発明によれば、処理装置は、排気ガス温度、排気ガス流速、及び還元剤インジェクタによる還元剤の噴射率に基づき、還元剤の濃度を求め、この還元剤の濃度に基づき還元剤中の水分量を求めると共に、配管温度に基づき還元剤の蒸発量を求めることで、これら水分量及び蒸発量に基づいて、付着還元剤の固化をより正確に判定することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、処理装置は、所定温度を第1所定温度とすると、配管温度が第1所定温度よりも高い第2所定温度以上であるときには、当該配管温度が高いほど還元剤の固化速度が高くなるという配管温度と固化速度との関係に基づき、排気通路の壁面に付着した還元剤の固化を判定するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、処理装置は、配管温度がかなり高いときには、上述したような蒸気膜の存在により温度が高くなるほど蒸発速度が低くなるという特性よりも、温度が高くなるほど蒸発速度が高くなるという特性のほうが支配的になることを加味することで、付着還元剤の固化をより正確に判定することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、配管温度が所定温度未満であるときの当該配管温度の変化に対する還元剤の固化速度の変化率の絶対値は、配管温度が所定温度以上であるときの当該配管温度の変化に対する還元剤の固化速度の変化率の絶対値よりも高い。
このように構成された本発明によっても、付着還元剤の固化をより正確に判定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法によれば、還元剤インジェクタの噴射によって排気通路の壁面に付着した還元剤の固化を適切に考慮に入れることで、選択還元型NOx触媒の異常判定に関する誤判定を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法が適用されたエンジンの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法が適用されたエンジンの制御系統を示すブロック図である。
【
図3】尿素インジェクタから噴射された尿素水の配管への付着、付着した尿素水のデポジット化、及びデポジット化した尿素の分解についての説明図である。
【
図4】本発明の実施形態によるSCR触媒異常判定処理を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態による尿素デポジット判定処理を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態による付着尿素水総量の算出方法を示すブロック図である。
【
図7】本発明の実施形態において付着尿素水の飛散量を求めるときに用いられる、配管温度と付着尿素水の蒸発速度との関係図である。
【
図8】本発明の実施形態による尿素デポジット判定方法を示すブロック図である。
【
図9】本発明の実施形態による尿素デポジット分解量の算出方法を示すブロック図である。
【
図10】本発明の実施形態による尿素デポジット判定を行ったときの結果を示すタイムチャートである。
【
図11】本発明の実施形態の変形例による尿素デポジット判定を行ったときの結果を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法について説明する。
【0021】
<装置構成>
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法に関する装置構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法が適用されたエンジンの概略構成図である。
【0022】
図1に示されるエンジンは、走行用の動力源として車両に搭載される4サイクルのディーゼル車載エンジンであって、エンジン本体1と、エンジン本体1における燃焼に必要な空気を供給する吸気システム3Sと、エンジン本体1から排出された排気ガスを浄化して外部に排出する排気システム4Sと、吸気システム3Sによって供給される空気(吸気)を圧縮しつつエンジン本体1に送り出す過給装置50と、排気システム4Sを流通する排気ガスの一部を吸気システム3Sに還流するEGR装置70とを備えている。
【0023】
エンジン本体1は、一列に並ぶ複数の気筒2(
図1では1つの気筒2のみを示す)を有する直列多気筒型のものであり、当該複数の気筒2が内部に形成されたシリンダブロック3と、各気筒2の上部開口を閉塞するようにシリンダブロック3の上面に取り付けられたシリンダヘッド4と、各気筒2にそれぞれ往復動可能に挿入された複数のピストン5とを有している。
【0024】
ピストン5の上方には燃焼室6が区画されている。燃焼室6には、後述する燃料噴射弁15からの噴射により、軽油を主成分とする燃料が供給される。そして、供給された燃料が圧縮着火により燃焼(拡散燃焼)し、その燃焼による膨張力で押し下げられたピストン5が上下方向に往復運動する。ピストン5の下方には、エンジン本体1の出力軸であるクランク軸7が設けられている。クランク軸7は、ピストン5とコネクティングロッド8を介して連結され、ピストン5の往復運動(上下運動)に応じて中心軸回りに回転駆動される。
【0025】
シリンダブロック3には、クランク軸7の角度(クランク角)と、クランク軸7の回転速度(エンジン回転速度)とを検出するクランク角センサSN1が設けられている。シリンダヘッド4には、エンジン本体1(シリンダブロック3及びシリンダヘッド4)の内部を流通する冷却水の温度を検出する水温センサSN2が設けられている。シリンダヘッド4には、燃焼室6に開口する吸気ポート9及び排気ポート10と、吸気ポート9を開閉する吸気弁11と、排気ポート10を開閉する排気弁12と、吸気弁11及び排気弁12をクランク軸7の回転に連動して開閉駆動する動弁機構13,14とが設けられている。シリンダヘッド4には、さらに、燃焼室6に燃料(軽油)を噴射する燃料噴射弁15が設けられている。燃料噴射弁15は、例えば、燃焼室6の天井面の中央部から放射状に燃料を噴射する多噴孔型の噴射弁である。
【0026】
吸気システム3Sは、エンジン本体1に導入される吸気が流通する吸気通路30を含む。吸気通路30の下流端(インテークマニホールド)は、吸気ポート9と連通するようにシリンダヘッド4の一側面に接続されている。吸気通路30には、上流側から順に、吸気中の異物を除去するエアクリーナ31と、過給装置50により圧縮された吸気を冷却するインタークーラ32と、吸気の流量を調整する開閉可能なスロットル弁33と、各気筒2に吸気が均等に取り入れられるようにするためのサージタンク34と、が設けられている。吸気通路30におけるエアクリーナ31よりも下流側の部分には、吸気通路30を通じてエンジン本体1に導入される空気(新気)の流量を検出するエアフローセンサSN3が設けられている。また、サージタンク34には、その内部の吸気の圧力を検出する吸気圧センサSN4が設けられている。
【0027】
排気システム4Sは、エンジン本体1から排出される排気ガスが流通する排気通路40を含む。排気通路40の上流端(エキゾーストマニホールド)は、排気ポート10と連通するようにシリンダヘッド4の他側面に接続されている。この排気通路40には、排気ガスに含まれる各種の有害成分を浄化するための複数の触媒41~44が設けられている。本実施形態では、排気通路40において上流側から順に、酸化触媒41と、DPF(Diesel Particulate Filter)42と、SCR(Selective Catalytic Reduction)触媒43と、スリップ触媒44と、が設けられている。また、排気通路40におけるDPF42とSCR触媒43との間の部分には、尿素インジェクタ45とミキシングプレート47とが設けられている。
【0028】
酸化触媒41は、排気ガス中のCO及びHCを酸化して無害化する(CO2及びH2Oに変換する)ための触媒であり、例えば、多孔質性の担体と、当該担体に担持された白金やパラジウム等の触媒物質とを有している。DPF42は、排気ガス中のスート(煤)を捕集するためのフィルタである。このDPF42には、フィルタ再生時の高温条件下でスートを燃焼させるための白金等の触媒物質が含まれている。
【0029】
尿素インジェクタ45は、高純度の尿素を純水で水溶化してなる尿素水を排気通路40内に供給する噴射弁である。尿素インジェクタ45には、尿素水を供給する供給管46aの下流端が接続されている。供給管46aの上流端には、尿素水を貯留する尿素タンク46が接続されている。また、供給管46aには、尿素水を尿素インジェクタ45へ供給するポンプ46Pが組み入れられている。尿素インジェクタ45から排気通路40内に尿素水が噴射されると、この尿素水に含まれる尿素は、高温下での加水分解によりアンモニア(NH3)に変換されて、下流側のSCR触媒43に吸着される。ポンプ46Pは、加圧式のポンプであり、加圧力を発生することで、供給管46aを通して、尿素タンク46に貯留された尿素水を尿素インジェクタ45へ供給する。
【0030】
ミキシングプレート47は、排気通路40を前後に仕切る板状の部材であり、排気通路40における尿素インジェクタ45とSCR触媒43との間の部分に設けられている。ミキシングプレート47には、排気ガスの流れを攪拌するための複数の開口が形成されている。このようなミキシングプレート47は、尿素インジェクタ45から噴射された尿素水に含まれる尿素を均一に分散させつつ下流側(SCR触媒43)に送出する役割を果たす。
【0031】
SCR触媒43は、尿素インジェクタ45よりも下流側の排気通路40に設けられ、排気ガス中のNOxを還元して浄化する(N2やH2Oに変換する)ための触媒である。SCR触媒43は、例えば、多孔質性の担体と、当該担体に担持されたバナジウム、タングステン、またはゼオライト等の触媒物質とを有している。上述したとおり、SCR触媒43には、尿素インジェクタ45が噴射した尿素水から生成されるアンモニアが吸着される。SCR触媒43は、このアンモニアを還元剤として用いた化学反応(アンモニアの還元作用)により、排気ガス中のNOxをN2やH2Oに変換させる。例えば、本実施形態では、低コスト化を図るために、比較的小型のSCR触媒43が適用される。
【0032】
スリップ触媒44は、SCR触媒43に吸着されずにスリップした(つまりNOxの還元に使われないまま下流側に流出した)アンモニアを酸化するための酸化触媒である。このスリップ触媒44としては、例えば酸化触媒41と同様の構造のものを用いることができる。
【0033】
排気通路40におけるDPF42とSCR触媒43との間の部分には、排気ガスに含まれるNOxの濃度を検出する第1NOxセンサSN6が設けられ、排気通路40におけるSCR触媒43とスリップ触媒44との間の部分には、排気ガスに含まれるNOxの濃度を検出する第2NOxセンサSN7が設けられている。また、第1NOxセンサSN6よりも下流側であってSCR触媒43の直上流に位置する部分の排気通路40には、排気ガスの温度を検出する排気温センサSN5が設けられている。
【0034】
過給装置50は、いわゆる2ステージ型の過給装置であり、直列に配置された第1過給機51及び第2過給機52を有している。第1過給機51は、いわゆるターボ過給機であり、排気通路40を流通する排気ガスにより回転駆動されるタービン62と、タービン62と連動して回転可能に設けられ、吸気通路30を流通する吸気を圧縮する第1コンプレッサ61とを有している。排気通路40には、タービン62をバイパスするためのバイパス通路63が設けられており、このバイパス通路63には開閉可能なウェストゲート弁64が設けられている。第2過給機52は、いわゆる電動過給機であり、電気式の駆動モータ66と、駆動モータ66により回転駆動されることで吸気を圧縮する第2コンプレッサ67とを有している。吸気通路30には、第2コンプレッサ67をバイパスするためのバイパス通路68が設けられ、このバイパス通路68には、開閉可能なバイパス弁69が設けられている。
【0035】
EGR装置70は、排気通路40と吸気通路30とを接続するEGR通路71と、EGR通路71に設けられたEGRクーラ72及びEGR弁73とを有している。EGR通路71は、排気通路40におけるタービン62よりも上流側の部分と、吸気通路30におけるスロットル弁33とサージタンク34との間の部分とを互いに接続している。EGRクーラ72は、EGR通路71を通じて排気通路40から吸気通路30に還流される排気ガス(EGRガス)を冷却する。EGR弁73は、EGR通路71におけるEGRクーラ72よりも下流側の部分に設けられ、EGR通路71を流通する排気ガスの流量を調整する。
【0036】
<制御構成>
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法に関する制御構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法が適用されたエンジンの制御系統を示すブロック図である。
【0037】
図2に示すように、本実施形態のエンジンが搭載される車両は、エンジンを統括的に制御するコントローラ100を備える。コントローラ100は、回路により構成されており、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラである。コントローラ100は、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)としての1以上のマイクロプロセッサ100aと、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ100bと、電気信号の入出力をする入出力バス等を備えている。コントローラ100は、本発明における「処理装置」の一例である。
【0038】
なお、コントローラ100は、単一のプロセッサである必要はなく、電気的に接続された複数のプロセッサを含んでいても良い。例えば、コントローラ100は、主にエンジン本体1を制御するための第1のプロセッサ(典型的には「PCM(Power-train Control Module)」)と、尿素インジェクタ45及びポンプ46P等のドージング制御のための第2のプロセッサ(典型的には「DCU(Dosing Control Unit)」)とを含んでいても良い。
【0039】
コントローラ100には各種センサによる検出情報が入力される。具体的には、コントローラ100は、上述したクランク角センサSN1、水温センサSN2、エアフローセンサSN3、吸気圧センサSN4、排気温センサSN5、第1NOxセンサSN6、及び第2NOxセンサSN7と電気的に接続されている。これらのセンサによって検出された各種情報、例えばクランク角、エンジン回転速度、エンジン水温、吸気流量、吸気圧(過給圧)、排気ガスの温度、及び排気ガス中のNOx濃度等の情報が、それぞれコントローラ100に入力される。
【0040】
上記に加えて、車両には、当該車両の走行速度(車速)を検出する車速センサSN8と、車両を運転するドライバにより操作されるアクセルペダルの開度を検出するアクセルセンサSN9と、外気温を検出する外気温センサSN10と、が設けられている。これら車速センサSN8、アクセルセンサSN9、及び外気温センサSN10による検出情報もコントローラ100に入力される。
【0041】
コントローラ100は、上記各センサSN1~SN10からの入力情報に基づいて種々の判定や演算等を実行しつつエンジンの各部を制御する。すなわち、コントローラ100は、燃料噴射弁15、スロットル弁33、尿素インジェクタ45、ポンプ46P、ウェストゲート弁64、駆動モータ66、バイパス弁69、及びEGR弁73等と電気的に接続されており、上記演算の結果等に基づいてこれらの機器にそれぞれ制御用の信号を出力する。
【0042】
本実施形態では、コントローラ100は、第1及び第2NOxセンサSN6、SN7の出力値に基づきSCR触媒43によるNOxの浄化率を求め、この浄化率に基づきSCR触媒43の異常判定を実行する。特に、本実施形態では、詳細は後述するが、コントローラ100は、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した尿素(以下では適宜「付着尿素」と呼ぶ。)を考慮に入れて、SCR触媒43の異常判定の実行を制限する。
【0043】
<本実施形態の基本概念>
次に、
図3を参照して、本発明の実施形態においてコントローラ100が行う処理内容の基本概念について説明する。
図3は、本発明の実施形態において解決しようとしている課題について説明するための図である。詳しくは、
図3は、尿素インジェクタ45から噴射された尿素水の配管への付着、付着した尿素水のデポジット化、及びデポジット化した尿素の分解についての説明図である。
【0044】
まず、
図3の上段に示すように、尿素インジェクタ45から排気通路40内に尿素水が噴射されると(矢印A11)、噴射された尿素水の一部が排気通路40の配管40a(つまり排気通路40を形成する配管40aの内壁面)に到達する(矢印A12)。こうして配管40aに到達した尿素水のうちの一部は、配管40aの壁面により弾き飛ばされたり、蒸発したり、熱分解したりすることで、配管40aに付着することなく下流に流されていくが(矢印A13)、これを除いた残りの尿素水は、液体のまま、排気通路40の配管40aに付着する(矢印A14)。このような尿素水の付着は、エンジンやSCR触媒43が比較的低温である状況(例えば冷間時)において、SCR触媒43によりNOxを浄化させるべく、尿素インジェクタ45から尿素水を噴射した場合に生じる傾向にある。
【0045】
次に、
図3の中段に示すように、上記のように排気通路40の配管40aに付着した尿素水は、典型的には排気ガス温度や配管温度が低くなると、固化(換言すると白色化)して、デポジットとなる(矢印A15)。例えば、尿素水が配管40aに付着した状態においてエンジンが停止されると、このエンジン停止中に(1つの例ではソーク中)、尿素水がデポジット化する。以下では、デポジット化した尿素を「尿素デポジット」と呼ぶ。
【0046】
次に、
図3の下段に示すように、尿素デポジットが配管40aに付着した状態において、排気ガス温度や配管温度が高くなると(例えばエンジンが再始動されたとき)、この尿素デポジット((NH
2)
2CO)は、以下の化学式に従って、符号201で示すアンモニア(NH
3)と、符号202で示すイソシアン酸(HNCO)とに分解して下流に流れていく(矢印A16)。また、符号203で示すように、尿素((NH
2)
2CO)のまま、下流に流れていくこともある。
(NH
2)
2CO→NH
3+HNCO
【0047】
基本的には、イソシアン酸202及び尿素203はSCR触媒43を通過していくが(矢印A17)、アンモニア201はSCR触媒43に吸着される。しかしながら、尿素デポジットから分解したアンモニア201は、SCR触媒43に局所的に導入されることで、SCR触媒43が局所的に飽和状態となり、その結果、SCR触媒43からアンモニア201がスリップしてしまう(矢印A18)。このようなSCR触媒43の局所的な飽和状態によるアンモニア201のスリップは、特に比較的小型のSCR触媒43を用いた場合に生じ易い。
【0048】
こうしてアンモニア201などがSCR触媒43の下流側に流れると、当該SCR触媒43の下流側の第2NOxセンサSN7の出力値が大きくなる。これは、第2NOxセンサSN7の出力値が、アンモニア201、イソシアン酸202及び尿素203を含む窒素化合物の量(濃度)に対応するからである。その結果、第2NOxセンサSN7の出力値を用いたSCR触媒43の異常判定において、正常であるSCR触媒43が異常である(劣化している)と誤判定されてしまう可能性がある。
【0049】
以上のことから、本実施形態では、コントローラ100は、SCR触媒43の異常判定に関する誤判定を抑制すべく、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した尿素を考慮して、SCR触媒43の異常判定の実行可否を決定する。具体的には、本実施形態では、コントローラ100は、まず、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した付着尿素水量を求め、この付着尿素水量や排気ガス温度や配管温度に基づき、排気通路40の壁面に付着した尿素水が固化しているか否か、つまり尿素デポジットが生成しているか否かを判定する。その結果、コントローラ100は、尿素デポジットが生成していると判定されたときに、SCR触媒43の異常判定の実行を禁止する。また、コントローラ100は、尿素デポジットが生成していると判定されたときに、尿素デポジットから分解して排気通路40に排出されるアンモニアなどの量である尿素デポジット分解量を求める。そして、コントローラ100は、この尿素デポジット分解量に基づき、尿素デポジットが残存していると判断される場合には、SCR触媒43の異常判定の禁止を継続する一方で、尿素デポジットが消失したと判断される場合には、SCR触媒43の異常判定の禁止を解除する。
【0050】
<SCR触媒の異常判定>
次に、
図4を参照して、本発明の実施形態によるSCR触媒43の異常判定の全体的な流れについて説明する。
図4は、本発明の実施形態によるSCR触媒異常判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、コントローラ100によって所定の周期で繰り返し実行される。
【0051】
まず、SCR触媒異常判定処理が開始されると、ステップS11において、コントローラ100は、上述したセンサSW1~SW10(
図2参照)などから各種情報を取得する。代表的には、コントローラ100は、エアフローセンサSN3、排気温センサSN5、第1NOxセンサSN6、第2NOxセンサSN7、車速センサSN8、及び外気温センサSN10による検出情報を取得する。
【0052】
次いで、ステップS12において、コントローラ100は、排気通路40の壁面に付着した尿素水が固化しているか否か、つまり尿素デポジットが生成しているか否かを判定するための尿素デポジット判定処理を実行する。この尿素デポジット判定処理では、尿素デポジットが生成していると判定された場合には、尿素デポジット判定フラグがオンに設定され、尿素デポジットが生成していると判定されなかった場合には、尿素デポジット判定フラグがオフに設定される。なお、尿素デポジット判定処理の詳細については後述する(
図5)。
【0053】
次いで、ステップS13において、コントローラ100は、ステップS12の尿素デポジット判定処理による尿素デポジット判定フラグがオフであるか否か、つまり尿素デポジットが生成していないか否かを判定する。
【0054】
ステップS13において、尿素デポジット判定フラグがオフであると判定された場合(ステップS13:Yes)、コントローラ100は、尿素デポジットが生成していないので、SCR触媒43の異常判定を正確に実行できる状況であるものと判断して、以降の処理での当該異常判定の実行を許可する。この場合、まず、コントローラ100は、ステップS14において、第1NOxセンサSN6及び第2NOxセンサSN7の出力値に基づき、SCR触媒43のNOx浄化率を求める。具体的には、コントローラ100は、第1NOxセンサSN6の出力値から、SCR触媒43の上流側の排気通路40内のNOx量(以下では「上流側NOx量」と呼ぶ。)を求めると共に、第2NOxセンサSN7の出力値から、SCR触媒43の下流側の排気通路40内のNOx量(以下では「下流側NOx量」と呼ぶ。)を求める。そして、コントローラ100は、以下の式を用いて、これら上流側NOx量及び下流側NOx量からSCR触媒43のNOx浄化率を求める。なお、第1及び第2NOxセンサSN6、SN7により検出されるNOx量(NOx濃度に一義的に対応する)には、NOxそのものだけでなく、種々の窒素化合物の量(濃度)も含まれる。
NOx浄化率=1-(下流側NOx量/上流側NOx量)
【0055】
次いで、ステップS15において、コントローラ100は、ステップS14で求められたNOx浄化率が所定値未満であるか否かを判定する。その結果、NOx浄化率が所定値未満であると判定された場合(ステップS15:Yes)、コントローラ100は、ステップS16に進む。この場合には、コントローラ100は、SCR触媒43のNOx浄化率が低いため、SCR触媒43が異常であると判定する(ステップS16)。そして、コントローラ100は、ステップS17に進み、SCR触媒43が異常であることを示す警告を発するための処理(例えば画像の表示や音声の出力など)を行う。この後、コントローラ100は、SCR触媒異常判定処理を終了する。
【0056】
これに対して、ステップS15において、NOx浄化率が所定値未満であると判定されなかった場合(ステップS15:No)、つまりNOx浄化率が所定値以上である場合、コントローラ100は、ステップS18に進む。この場合には、コントローラ100は、SCR触媒43のNOx浄化率が高いため、SCR触媒43が正常であると判定する(ステップS18)。そして、コントローラ100は、SCR触媒異常判定処理を終了する。
【0057】
他方で、ステップS13において、尿素デポジット判定フラグがオフであると判定されなかった場合(ステップS13:No)、つまり尿素デポジット判定フラグがオンである場合、コントローラ100は、ステップS19に進む。この場合には、コントローラ100は、尿素デポジットが生成しているので、SCR触媒43の異常判定を正確に実行できない状況であるものと判断して、SCR触媒43の異常判定の実行を禁止する(ステップS19)。そして、コントローラ100は、SCR触媒異常判定処理を終了する。
【0058】
<尿素デポジット判定>
次に、本発明の実施形態による尿素デポジット判定について具体的に説明する。最初に、
図5を参照して、本発明の実施形態による尿素デポジット判定の概要について説明する。
図5は、本発明の実施形態による尿素デポジット判定処理を示すフローチャートである。このフローチャートは、コントローラ100によって、
図4に示したSCR触媒異常判定処理のステップS12において実行される。
【0059】
まず、尿素デポジット判定処理が開始されると、ステップS21において、コントローラ100は、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した付着尿素水量を求める。具体的には、コントローラ100は、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した単位時間当たりの付着尿素水量を求め、この単位時間当たりの付着尿素水量を積算することで、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した尿素水の総量である付着尿素水総量を求める。詳しくは、コントローラ100は、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素インジェクタ45による尿素の噴射率(換言すると単位時間当たりに噴射された尿素の量である。以下では「尿素噴射率」と呼ぶ。)に基づき、尿素インジェクタ45により噴射された尿素のうちで配管40aに到達する尿素の第1割合を求めると共に、配管温度及び排気ガス流速に基づき、配管40aに到達した尿素のうちで配管40aに付着する尿素の第2割合を求め、これら第1割合及び第2割合に基づき、付着尿素水総量を求める。更に、コントローラ100は、配管温度に応じた付着尿素水の蒸発速度などに基づき、配管40aからの付着尿素水の飛散量を求め、この付着尿素水の飛散量分を減算処理することにより、付着尿素水総量を求める。
【0060】
なお、上記のステップS21の処理(後述する処理でも同様とする。)において用いられる排気ガス温度、排気ガス流速、尿素噴射率及び配管温度は、以下のように規定される。コントローラ100は、排気ガス温度として、排気温センサSN5により検出された温度を用いる。また、コントローラ100は、エアフローセンサSN3により検出された吸気流量や、EGR装置70により還流されるEGRガス量(EGR弁73の開度から求められる)などに基づき、排気ガス流速(排気ガス流量と同義である)を求める。また、コントローラ100は、尿素インジェクタ45に供給している制御信号(より詳しくはDCUから尿素インジェクタ45に供給されている制御信号)から、尿素噴射率を求める。また、コントローラ100は、排気温センサSN5により検出された排気ガス温度、外気温センサSN10により検出された外気温、及び車速センサSN8により検出された車速を、所定の配管温度モデルに適用することにより、排気通路40の配管温度(特に尿素インジェクタ45とSCR触媒43との間の配管40aの温度)を求める。この場合、コントローラ100は、車速センサSN8により検出された車速を、配管40aに当たる走行風の速度(風速)として用いて、配管温度モデルを演算する。
【0061】
次いで、ステップS22において、コントローラ100は、ステップS21で求められた付着尿素水総量や排気ガス温度や配管温度に基づき、付着尿素水が固化しているか否か、つまり尿素デポジットが生成しているか否かを判定する。詳しくは、コントローラ100は、(1)排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素噴射率に基づき付着尿素水の濃度を求め、(2)付着尿素水総量及び尿素水の濃度に基づき付着尿素水の水分量を求め、(3)配管温度に基づき付着尿素水の蒸発量を求め、(4)付着尿素水の水分量から付着尿素水の蒸発量を減算した量が0であるときに、尿素デポジットが生成していると判定する。
【0062】
ステップS22の結果、尿素デポジットが生成していると判定された場合(ステップS22:Yes)、コントローラ100は、ステップS23に進み、尿素デポジット判定フラグをオンに設定する。これに対して、尿素デポジットが生成していると判定されなかった場合(ステップS22:No)、コントローラ100は、尿素デポジット判定処理を終了する。この場合には、コントローラ100は、尿素デポジットが生成していないので、尿素デポジット判定フラグをオフに維持する。
【0063】
次いで、ステップS24において、コントローラ100は、尿素デポジット量を求める。この場合、コントローラ100は、基本的には、ステップS21で求められた現在の付着尿素水総量をそのまま尿素デポジット量として求める。
【0064】
次いで、ステップS25において、コントローラ100は、尿素デポジットから分解して排気通路40に排出されるアンモニアなどの量である尿素デポジット分解量を求める。具体的には、コントローラ100は、ステップS24で求められた尿素デポジット量に対して、配管温度や排気ガス温度や分解の活性化エネルギーにより規定された、尿素デポジットの分解の速度定数を適用することで、尿素デポジットからのアンモニア及びイソシアン酸の分解速度を求め、この分解速度から尿素デポジット分解量を求める。
【0065】
次いで、ステップS26において、コントローラ100は、ステップS24で求められた尿素デポジット量及びステップS25で求められた尿素デポジット分解量に基づいて、尿素デポジットが消失したか否かを判定する。コントローラ100は、尿素デポジット量から尿素デポジット分解量を減算した量が0である場合には(これは現在の尿素デポジット量が0にまで減少した場合に相当する)、尿素デポジットが消失したものと判定し(ステップS26:Yes)、尿素デポジット判定フラグをオンからオフに切り替える(ステップS27)。そして、コントローラ100は、尿素デポジット判定処理を終了する。この後、SCR触媒43の異常判定の禁止が解除されることとなる。
【0066】
一方、コントローラ100は、ステップS24で求められた尿素デポジット量からステップS25で求められた尿素デポジット分解量を減算した量が0より大きい場合には(これは現在の尿素デポジット量が0よりも大きい場合に相当する)、尿素デポジットが消失していないものと判定し(ステップS26:No)、尿素デポジット判定処理を終了する。この場合には、コントローラ100は、尿素デポジット判定フラグをオンに維持する。そのため、SCR触媒43の異常判定の禁止が継続されることとなる。
【0067】
次に、
図6乃至
図10を参照して、本発明の実施形態において上記の尿素デポジット判定において実行される各処理内容の詳細について説明する。
【0068】
図6は、本発明の実施形態による付着尿素水総量の算出方法を示すブロック図である。
図6に示すように、コントローラ100は、まず、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素インジェクタ45の尿素噴射率に基づき、尿素インジェクタ45により噴射された尿素のうちで配管40aに到達する尿素の第1割合を求める。例えば、コントローラ100は、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素噴射率により事前に規定された、尿素の第1割合に関するマップ(例えばメモリ100bに記憶される)を参照して、現在の排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素噴射率に対応する第1割合を求める。基本的には、排気ガス温度が低いほど、排気ガス流速が低いほど、及び、尿素噴射率が高いほど、第1割合が大きくなるように、マップが規定されている。
【0069】
また、コントローラ100は、配管温度及び排気ガス流速に基づき、配管40aに到達した尿素のうちで配管40aに付着する尿素の第2割合を求める。例えば、コントローラ100は、配管温度及び排気ガス流速により事前に規定された、尿素の第2割合に関するマップ(例えばメモリ100bに記憶される)を参照して、現在の配管温度及び排気ガス流速に対応する第2割合を求める。基本的には、配管温度が低いほど、及び、排気ガス流速が低いほど、第2割合が大きくなるように、マップが規定されている。
【0070】
そして、コントローラ100は、尿素インジェクタ45の現在の尿素噴射率に対して、上記のように求められた第1割合及び第2割合を乗算することで、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した単位時間当たりの付着尿素水量を求める。次いで、コントローラ100は、この単位時間当たりの付着尿素水量を積算することで、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した尿素水の総量である付着尿素水総量を求める。なお、こうして求められる付着尿素水総量は仮の量であり(以下では「仮付着尿素水総量」とも呼ぶ。)、この仮付着尿素水総量から、後述するように求められる種々の量を減算する処理が行われ、この減算処理が行われた後の付着尿素水総量が、尿素デポジットに関する判定のために最終的に適用されるものとする。
【0071】
更に、
図6に示すように、コントローラ100は、上記のように仮付着尿素水総量を求めるのと同時に、排気ガス流れによる配管40aからの付着尿素水の飛散量を求める。上述したように、コントローラ100は、この付着尿素水の飛散量を仮付着尿素水総量から減算することで、尿素デポジットに関する判定のために適用する最終的な付着尿素水総量を求める。コントローラ100は、付着尿素水の飛散量を求めるに当たって、最初に、配管温度から付着尿素水の蒸発速度(換言すると蒸発率)を求める。ここで、付着尿素水の蒸発速度について、
図7を参照して説明する。
【0072】
図7は、本発明の実施形態において付着尿素水の飛散量を求めるときに用いられる、配管温度(横軸)と付着尿素水の蒸発速度(縦軸)との関係図である。縦軸に示す付着尿素水の蒸発速度は、付着尿素水の固化速度(デポジット化速度)に相当し、蒸発速度が高いと固化速度が高くなり、蒸発速度が低いと固化速度が低くなるという関係がある。
図7に示すように、配管温度が第1所定温度T1(例えば液体の沸点よりも高い温度で、1つの例では140℃程度)未満のときには、配管温度が高くなるほど、付着尿素水の蒸発速度が高くなる(矢印A21)。これは、温度が高くなるほど、液体が蒸発し易くなる、という液体の蒸発に関する通常の特性である。
【0073】
これに対して、配管温度が第1所定温度T1以上で第2所定温度T2(例えば300℃程度)未満のときには、配管温度が高くなるほど、付着尿素水の蒸発速度が低くなる(矢印A22)。これは、上記したような通常の特性と反対の特性である。この特性は、配管温度がある程度高いときには、配管40aと接触した尿素水の表面が気化して薄い蒸気膜が形成されて、この蒸気膜によって尿素水が配管40aに直接接触することが阻害される結果(つまり尿素水の下に蒸気膜が生じて当該尿素水と配管40aとの熱伝導が阻害される結果)、尿素水が蒸発しにくくなるという現象に起因する。
【0074】
なお、配管温度が第1所定温度T1未満であるときの配管温度の変化に対する蒸発速度の変化率の大きさ(絶対値)は、配管温度が第1所定温度T1以上で第2所定温度T2未満であるときの配管温度の変化に対する蒸発速度の変化率の大きさ(絶対値)よりも高くなる。これは、温度が高くなるほど蒸発速度が高くなるという通常の特性のほうが、蒸気膜の存在により温度が高くなるほど蒸発速度が低くなるという特殊な特性よりも、液体の蒸発に与える影響力が強いからである。
【0075】
他方で、配管温度が第2所定温度T2以上のときには、配管温度が高くなるほど、付着尿素水の蒸発速度が高くなる(矢印A23)。これは、通常の特性に起因する。すなわち、配管温度がかなり高くなると、温度が高くなるほど蒸発速度が高くなるという通常の特性のほうが、蒸気膜の存在により温度が高くなるほど蒸発速度が低くなるという特殊な特性よりも支配的に影響を与えるからである。
【0076】
ここで、コントローラ100は、
図7に示すような配管温度と蒸発速度との関係(例えばマップとしてメモリ100bに記憶される)に基づき、現在の配管温度に対応する付着尿素水の蒸発速度を求める。
【0077】
図6に戻ると、コントローラ100は、上記のように求めた尿素水の蒸発速度と、排気ガス流速と、排気ガス流速変化率(換言すると単位時間当たりの排気ガス流速の変化量)と、付着尿素水総量とに基づき、排気ガス流れによる単位時間当たりの付着尿素水の飛散量を求める。例えば、コントローラ100は、尿素水の蒸発速度、排気ガス流速、及び排気ガス流速変化により事前に規定された、所定の係数に関するマップ(例えばメモリ100bに記憶される)を参照して、現在の蒸発速度、排気ガス流速、及び排気ガス流速変化に対応する係数を求め、この係数を現在の付着尿素水総量に適用することで、単位時間当たりの付着尿素水の飛散量を求める。基本的には、尿素水の蒸発速度が高いほど、排気ガス流速が高いほど、及び、排気ガス流速変化が大きいほど、単位時間当たりの付着尿素水の飛散量が大きくなるように、マップが規定されている。コントローラ100は、こうして求めた単位時間当たりの付着尿素水の飛散量を積算する。そして、コントローラ100は、積算して得られた付着尿素水の飛散量を仮付着尿素水総量から減算することで、尿素デポジットに関する判定のために適用する最終的な付着尿素水総量を求める。
【0078】
このように、本実施形態では、
図7に示したような特性を有する付着尿素水の蒸発速度を考慮した付着尿素水の飛散量を用いることで、配管温度が第1所定温度T1以上で第2所定温度T2未満であるときには、当該配管温度が高いほど、大きな量を有する付着尿素水量(具体的には単位時間当たりの付着尿素水量である。以下同様とする。)が求められる。また、配管温度が第1所定温度T1未満であるときには、当該配管温度が高いほど、小さな量を有する付着尿素水量が求められる。また、配管温度が第2所定温度T2以上であるときには、当該配管温度が高いほど、小さな量を有する付着尿素水量が求められる。
【0079】
更に、
図6に示すように、コントローラ100は、尿素デポジットから尿素水に変化した尿素水量(つまり尿素デポジットにおいて排気ガスに溶け出した尿素の量)を求め、この尿素水量を仮付着尿素水総量から減算する。加えて、コントローラ100は、付着尿素水温度及び付着尿素水総量に基づき、付着尿素水において熱分解した尿素水量(つまり付着尿素からアンモニア及びイソシアン酸へと分解した量)を求め、この尿素水量を仮付着尿素水総量から減算する。この場合、コントローラ100は、配管温度及び排気ガス温度に基づき付着尿素水温度を求め、この付着尿素水温度に基づき、熱分解した尿素水量を求める。なお、この熱分解した尿素水量の算出方法は、後述する尿素デポジット分解量の算出方法(
図9)と同様である。
【0080】
以上のように、コントローラ100は、単位時間当たりの付着尿素水量を積算することで求められた仮付着尿素水総量から、付着尿素水の飛散量と、尿素デポジットから尿素水に変化した尿素水量と、付着尿素水において熱分解した尿素水量とを減算した量を、尿素デポジットに関する判定のために適用する最終的な付着尿素水総量として用いる。
【0081】
次に、
図8は、本発明の実施形態による尿素デポジット判定方法を示すブロック図である。
図8に示すように、コントローラ100は、まず、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素噴射率に基づき、尿素水噴射から配管付着までの尿素水の蒸発量計算モデルを用いて、配管40aに付着した尿素水中の尿素の濃度(%)を求める。基本的には、排気ガス温度が低いほど、排気ガス流速が低いほど、及び、尿素噴射率が高いほど、付着尿素水の濃度が高くなる傾向にある。そして、コントローラ100は、付着尿素水の濃度(%)と、
図6の算出方法により求められた付着尿素水総量とから、以下の式より、付着尿素水の水分量を求める。
付着尿素水の水分量=付着尿素水総量×(1-付着尿素水の濃度/100)
【0082】
他方で、コントローラ100は、上記のように付着尿素水の水分量を求めるのと同時に、付着尿素水の蒸発量を求める。具体的には、コントローラ100は、上記の
図7と同様の方法により、配管温度から付着尿素水の蒸発速度を求め、この蒸発速度を積算(積分)することで付着尿素水の蒸発量を求める。そして、コントローラ100は、付着尿素水の水分量から付着尿素水の蒸発量を減算した量(以下では適宜「残存水分量」と呼ぶ。)が0であるときに、尿素デポジットが生成していると判定し、尿素デポジット判定フラグをオンに設定する、このときに、コントローラ100は、現在の付着尿素水総量をそのまま尿素デポジット量として適用する。
【0083】
このように、本実施形態では、
図7に示したような特性を有する付着尿素水の蒸発速度を用いることで、コントローラ100は、配管温度が第1所定温度T1以上で第2所定温度T2未満であるときには、当該配管温度が低いほど付着尿素水のデポジット化速度(付着尿素水の固化速度を意味する。以下同様とする。)が高くなるという関係に基づき、尿素デポジット判定を行うこととなる。また、コントローラ100は、配管温度が第1所定温度T1未満であるときには、当該配管温度が高いほど付着尿素水のデポジット化速度が高くなるという関係に基づき、尿素デポジット判定を行うこととなる。また、コントローラ100は、配管温度が第2所定温度T2以上であるときには、当該配管温度が高いほど付着尿素水のデポジット化速度が高くなるという関係に基づき、尿素デポジット判定を行うこととなる。
【0084】
次に、
図9は、本発明の実施形態による尿素デポジット分解量の算出方法を示すブロック図である。
図9に示すように、コントローラ100は、まず、配管温度及び排気ガス温度に基づき、尿素デポジット温度を求める。そして、コントローラ100は、所定の頻度因子を「A」とし、気体定数を「R」とし、尿素デポジット温度を「T」とし、尿素の分解の活性化エネルギー(アレニウスパラメータ)を「Ea」とすると、以下の指数関数により表された式を用いて、尿素の分解に関する速度定数(換言すると反応定数)kを求める。なお、頻度因子Aは、尿素デポジットと排気ガスとの接触頻度を示す値である。また、活性化エネルギーは、実験などから求められる値である(専門的な文献などにも記載されている)。
k=Aexp{-Ea/(RT)}
【0085】
次いで、コントローラ100は、速度係数k及び尿素デポジット量から、以下の式より、尿素デポジットからアンモニア及びイソシアン酸への分解速度Vを求める。なお、式中の「α」は、実験などから求められる値である。
V=k×(尿素デポジット量)α
【0086】
次いで、コントローラ100は、アンモニア及びイソシアン酸の分解速度Vを積算(積分)することで、尿素デポジット分解量を求める。この後、コントローラ100は、尿素デポジット量(尿素デポジット判定フラグがオンに設定されたときの付着尿素水総量に対応する)から尿素デポジット分解量を減算した量(以下では適宜「残存デポジット量」と呼ぶ。)を求めて、尿素デポジットが消失したか否かを判定する。具体的には、コントローラ100は、残存デポジット量が0より大きい場合には、尿素デポジットが消失していないものと判断し、尿素デポジット判定フラグをオンに維持して、SCR触媒43の異常判定の禁止を継続する。これに対して、コントローラ100は、残存デポジット量が0である場合には、尿素デポジットが消失したものと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンからオフに切り替えて、SCR触媒43の異常判定の禁止を解除する。
【0087】
次に、
図10は、本発明の実施形態による尿素デポジット判定を行ったときの結果の一例を示すタイムチャートである。
図10は、上から順に、(1)エンジンの運転状態(具体的にはエンジンがオン(動作中)であるかオフ(停止中)であるかを示す)、(2)尿素水噴射要求(基本的にはNOx浄化のためのSCR触媒43の使用要求に相当する)、(3)付着尿素水総量、(4)付着尿素水の水分量から付着尿素水の蒸発量を減算した残存水分量、(5)尿素デポジット量(特に残存デポジット量)、(6)尿素デポジット判定フラグ、(7)SCR触媒43の異常判定を実行するか否かを示すSCR触媒異常判定実行フラグ、を示している。
【0088】
まず、コントローラ100は、時刻t10以降のエンジンの動作中において、付着尿素水総量や残存水分量などを継続的に求める。このエンジン動作中においては、コントローラ100は、付着尿素水総量が0よりも大きいときに(つまり付着尿素が存在するとき)、残存水分量が常に0よりも大きいため、尿素デポジット判定フラグをオフに維持する。そのため、コントローラ100は、SCR触媒43の異常判定の要求に従って、当該異常判定を実行する(矢印A30)。
【0089】
次いで、時刻t11において、エンジンが停止され、この後のエンジン停止中の時刻t12において、残存水分量が0になる(矢印A31)。つまり、尿素デポジットが生成される。このときには、エンジン停止中であるため(例えばイグニッションスイッチがオフ)、コントローラ100により尿素デポジットが生成されたと判定されない。そして、時刻t12において、エンジンが始動され、コントローラ100も動作を開始する。このときに、コントローラ100は、残存水分量が0であるので、尿素デポジットが生成されたと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンにすると共に(矢印A32)、現在の付着尿素水総量を尿素デポジット量として設定する(矢印A33)。この場合、コントローラ100は、付着尿素水総量を0に設定する(矢印A34)。そして、コントローラ100は、時刻t13より、尿素デポジット分解量を求めて、尿素デポジット判定フラグがオンに設定されたときの付着尿素水総量に対応する尿素デポジット量から、この尿素デポジット分解量を減算した残存デポジット量を求める。
【0090】
次いで、時刻13以降において、コントローラ100は、残存デポジット量が0よりも大きい間は、尿素デポジットが残存しているものと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンに維持する。尿素デポジット判定フラグがオンである間は、コントローラ100は、SCR触媒43の異常判定の要求が発せられても、当該異常判定の実行を禁止する(破線矢印A36)。この後、時刻t14において、コントローラ100は、残存デポジット量が0になるので、尿素デポジットが消失したものと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンからオフに切り替える。これにより、時刻t14以降において、コントローラ100は、SCR触媒43の異常判定の要求に従って、当該異常判定を実行する(矢印A37)。
【0091】
<作用及び効果>
次に、本発明の実施形態によるエンジンの排気浄化装置及び付着還元剤の推定方法の作用及び効果について説明する。
【0092】
本実施形態では、コントローラ100は、尿素インジェクタ45の噴射によって排気通路40の壁面に付着した尿素水の量である付着尿素水量(単位時間当たりの付着尿素水量や付着尿素水総量を含む)を求め、付着尿素水量に加えて配管温度や排気ガス温度に基づき、付着尿素水が固化しているか否かを判定し、付着尿素水が固化していると判定されたときにSCR触媒43の異常判定の実行を制限する。このような本実施形態によれば、付着尿素水量などに基づき、付着尿素水の固化を正確に判定することができる。そして、付着尿素水の固化に関する正確な判定に基づいて、SCR触媒43の異常判定の実行を適切に制限することができ、その結果、SCR触媒43の異常判定に関する誤判定を確実に抑制することができる。
【0093】
ここで、上述したように(
図7参照)、配管温度が比較的高いときには、配管40aに接触した尿素水の表面が気化して薄い蒸気膜が形成されて、この蒸気膜によって尿素水が配管40aに直接接触することが阻害される結果、尿素水が蒸発しにくくなるという現象が生じる。したがって、本実施形態では、コントローラ100は、このような尿素水の蒸発に関する特性を加味して、配管温度が第1所定温度T1以上であるときには、当該配管温度が低いほど付着尿素の固化速度(デポジット化速度)が高くなるという関係に基づき、付着尿素水の固化を判定する。これにより、付着尿素水の固化をより正確に判定することができる。
【0094】
また、本実施形態では、コントローラ100は、配管温度が第1所定温度T1未満であるときには、当該配管温度が高いほど尿素水の固化速度が高くなるという関係に基づき、付着尿素水の固化を判定する。これにより、コントローラ100は、配管温度が比較的低いときには、上述したような蒸気膜の存在により温度が高くなるほど蒸発速度が低くなるという現象はほとんど生じないため、温度が高くなるほど蒸発速度が高くなるという通常の特性を加味することで、付着尿素水の固化をより正確に判定することができる。
【0095】
また、本実施形態では、コントローラ100は、配管温度が第2所定温度T2(>第1所定温度T1)以上であるときには、当該配管温度が高いほど尿素水の固化速度が高くなるという関係に基づき、付着尿素水の固化を判定する。これにより、コントローラ100は、配管温度がかなり高いときには、上述したような蒸気膜の存在により温度が高くなるほど蒸発速度が低くなるという特性よりも、温度が高くなるほど蒸発速度が高くなるという特性のほうが支配的になることを加味することで、付着尿素水の固化をより正確に判定することができる。
【0096】
また、本実施形態では、コントローラ100は、配管温度が第1所定温度T1未満であるときの当該配管温度の変化に対する尿素水の固化速度の変化率の大きさは、配管温度が第1所定温度T1以上であるときの当該配管温度の変化に対する尿素水の固化速度の変化率の大きさよりも高いという特性を加味することで、付着尿素水の固化をより正確に判定することができる。
【0097】
また、本実施形態では、コントローラ100は、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素インジェクタ45による尿素噴射率に基づき、付着尿素水の濃度を求め、この付着尿素水の濃度に基づき付着尿素水の水分量を求めることで、この水分量に基づいて付着尿素水の固化をより正確に判定することができる。
【0098】
また、本実施形態では、コントローラ100は、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素インジェクタ45による尿素噴射率に基づき、付着尿素水の濃度を求め、この付着尿素水の濃度に基づき付着尿素水の水分量を求めると共に、配管温度に基づき付着尿素水の蒸発量を求めることで、これら水分量及び蒸発量に基づいて付着尿素水の固化をより正確に判定することができる。
【0099】
<変形例>
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下で示す各種の変形例は適宜組み合わせて実施することができる。
【0100】
(変形例1)
上述した実施形態では、コントローラ100は、付着尿素水の水分量から付着尿素水の蒸発量を減算した残存水分量が0であるときに、尿素デポジットが生成していると判定し、尿素デポジット判定フラグをオンに設定していた(
図8及び
図10参照)。変形例では、コントローラ100は、このような残存水分量を用いる代わりに、付着尿素水が存在している状況において(つまり付着尿素水総量が0よりも大きい状況)、排気ガス温度又は配管温度が所定の閾値未満となった場合に、尿素デポジットが生成していると判定してもよい。そして、コントローラ100は、排気ガス温度又は配管温度が閾値未満となったときに、付着尿素水総量分の尿素水が全てデポジット化したと推定し、当該付着尿素水総量に対応する尿素デポジットの量が0にまで減少したときに、尿素デポジットが消失したと判定してもよい。
【0101】
図11は、本発明の実施形態の変形例による尿素デポジット判定を行ったときの結果の一例を示すタイムチャートである。
図11は、上から順に、(1)エンジンの運転状態、(2)尿素水噴射要求、(3)配管温度(これの代わりに排気ガス温度を用いてもよい)、(4)付着尿素水総量、(5)尿素デポジット量(特に残存デポジット量)、(6)尿素デポジット判定フラグ、(7)SCR触媒異常判定実行フラグ、を示している。ここでは、
図10と同様の説明を適宜省略し、
図10と異なる部分を主に説明する。
【0102】
図11に示すように、エンジン停止中の時刻t21において、配管温度が閾値Te未満となる(矢印A41)。このときには、エンジン停止中であるため、コントローラ100により尿素デポジットが生成されたと判定されない。そして、時刻t22において、エンジンが始動され、コントローラ100も動作を開始する。このときに、コントローラ100は、配管温度が閾値Te未満であるため、尿素デポジットが生成されたと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンにすると共に(矢印A42)、現在の付着尿素水総量を全て尿素デポジット量として設定する(矢印A43)。この場合、コントローラ100は、付着尿素水総量を0に設定する(矢印A44)。そして、コントローラ100は、時刻t22より、尿素デポジット分解量を求めて、尿素デポジット判定フラグがオンに設定されたときの付着尿素水総量に対応する尿素デポジット量から、この尿素デポジット分解量を減算した残存デポジット量を求める。
【0103】
そして、時刻22以降において、コントローラ100は、残存デポジット量が0よりも大きい間は、尿素デポジットが残存しているものと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンに維持する。尿素デポジット判定フラグがオンである間は、コントローラ100は、SCR触媒43の異常判定の要求が発せられても、当該異常判定の実行を禁止する(破線矢印A46)。この後、時刻t23において、コントローラ100は、残存デポジット量が0になるので、尿素デポジットが消失したものと判断して、尿素デポジット判定フラグをオンからオフに切り替える。これにより、時刻t23以降において、コントローラ100は、SCR触媒43の異常判定の要求に従って、当該異常判定を実行する(矢印A47)。
【0104】
以上述べた変形例によれば、排気ガス温度又は配管温度が閾値未満となった場合に、尿素デポジットが生成していると判定するので、尿素デポジットの生成を簡易な処理にて判定することができる。また、このときに、付着尿素水総量分の尿素が全てデポジット化したと推定し、当該付着尿素水総量に対応する尿素デポジットの量が0にまで減少したときに、尿素デポジットが消失したと判定するので、尿素デポジットの消失を簡易な処理にて判定することができる。
【0105】
(変形例2)
上述した実施形態では、尿素デポジットが生成していると判定されたとき、つまり尿素デポジット判定フラグがオンであるときに、SCR触媒43の異常判定の実行を禁止していたが、当該異常判定の実行を禁止することに限定はされない。変形例では、尿素デポジット判定フラグがオンであるときに、SCR触媒43の異常判定の実行を禁止せずに、尿素デポジット判定フラグがオフであるときよりも、NOx浄化率を判定するための所定値を大きくして(
図4参照)、SCR触媒43が異常と判定されにくくしてもよい。要は、尿素デポジット判定フラグがオンであるときには、尿素デポジット判定フラグがオフであるときよりも、SCR触媒43の異常判定が制限されるようにすればよい。このような変形例によっても、SCR触媒43の異常判定に関する誤判定を適切に抑制することができる。
【0106】
(変形例3)
上述した実施形態では、付着尿素水の濃度に応じた付着尿素水の水分量及び付着尿素水の蒸発量を求めて、これら水分量及び蒸発量の両方に基づき、尿素デポジットの生成を判定していたが、変形例では、付着尿素水の蒸発量のみに基づき、尿素デポジットの生成を判定してもよい。この変形例では、例えば付着尿素水の蒸発量が所定量以上であるときに、尿素デポジットが生成していると判定してもよい。
【0107】
(変形例4)
上述した実施形態では、アンモニアの前駆体である尿素を尿素インジェクタ45から噴射させていたが、変形例では、所定のインジェクタからアンモニアを直接噴射させるようにしてもよい。
【0108】
(変形例5)
上述した実施形態では、第1及び第2NOxセンサSN6、SN7の両方を用いてSCR触媒43の異常判定を行っていたが、この異常判定を行うに当たって、第1及び第2NOxセンサSN6、SN7の両方を用いずに、第2NOxセンサSN7のみを用いてもよい。この場合、エンジンの運転状態などに応じて上流側NOx量を求め、この上流側NOx量と第2NOxセンサSN7の出力値に対応する下流側NOx量とからNOx浄化率を求めて、SCR触媒43の異常判定を行えばよい。
【0109】
(変形例6)
変形例では、尿素噴射前に尿素をヒータで予め加熱することにより、尿素の噴射から配管40aへの付着までの間における尿素の蒸発を促進してもよい。この変形例では、上述した配管40aに到達する尿素の第1割合を算出するときに、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素噴射率に加えて、ヒータ温度又は尿素温度を考慮すればよい。具体的には、排気ガス温度、排気ガス流速、及び尿素噴射率により規定されたマップから得られた第1割合に対して、ヒータ温度又は尿素温度により規定された補正係数を乗算することで、第1割合を補正すればよい。この場合、ヒータ温度又は尿素温度が高いほど、小さな補正係数が適用され、これにより、ヒータ温度又は尿素温度が高いほど、配管40aに到達する尿素に関する第1割合が小さくなるようになっている。
【符号の説明】
【0110】
1 エンジン本体
40 排気通路
40a 配管
43 SCR触媒
44 スリップ触媒
45 尿素インジェクタ
100 コントローラ
SN5 排気温センサ
SN6 第1NOxセンサ
SN7 第2NOxセンサ
SN8 車速センサ
SN10 外気温センサ