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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】キャビネット及び開放補助装置
(51)【国際特許分類】
   A47B 88/463 20170101AFI20231005BHJP
【FI】
A47B88/463
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019058339
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020156695
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】大野 正博
(72)【発明者】
【氏名】一二三 潤
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-502680(JP,A)
【文献】特開2008-212700(JP,A)
【文献】国際公開第2008/041544(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 67/04、88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する固定枠体と、
前記固定枠体の前記内部空間に収納された収納位置と、前記収納位置から前方に移動した引き出し位置と、の間で、前記固定枠体に可動可能に設けられ、上方を開口させた収納空間を有する引き出しと、
前記固定枠体の前記内部空間内に設けられ、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助する開放補助装置と、
を備え、
前記開放補助装置は、
筐体と、
先端部と基端部とを有し、前記基端部側に設けられた回転軸を介して前記筐体に回転可能に支持され、第1位置と、前記先端部を前記第1位置よりも前方側に位置させるように前記回転軸を軸に回転した第2位置と、に移動するアームと、
前記筐体内に設けられ、前記アームを前記第1位置と前記第2位置とに回転駆動する駆動部と、
を有し、前記引き出しが前記収納位置にある状態において、前記アームを前記第1位置から前記第2位置に回転させ、前記引き出しの前記収納空間よりも後方の背板の背面部を、前記アームで前方に向けて押圧することにより、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助し、
前記アームは、アーム本体と、前記アーム本体から前記回転軸の延びる軸方向に突出した突起部と、を有し、
前記アームが前記第1位置にある状態において、前記突起部の前端は、前記アーム本体の前端よりも後方に位置し、
前記アームは、前記アーム本体及び前記突起部のいずれかで前記引き出しの前記背板の背面部を直接押圧可能であることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記突起部は、前記基端部よりも前記先端部に近い位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のキャビネット。
【請求項3】
前記突起部は、前記軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面を有し、前記引き出しの前記背板の背面部を押圧する際に、前記曲面の前端で前記背板の背面部を押圧し、
前記背板の背面部を押圧する前記突起部の前記曲面の前端は、前記アームが前記第1位置と、前記第1位置と前記第2位置との間の所定位置との間にある状態においては、前記アーム本体の前端よりも後方に位置し、前記アームが前記所定位置と前記第2位置との間にある状態においては、前記アーム本体の前端よりも前方に位置し、
前記アームは、前記引き出しの前記背板の背面部を押圧する際に、前記第1位置と前記所定位置との間においては、前記アーム本体の前端を前記背板の背面部に当接させることにより、前記アーム本体で前記背板の背面部を押圧し、前記所定位置と前記第2位置との間においては、前記突起部の前記曲面の前端を前記背板の背面部に当接させることにより、前記突起部の前記曲面で前記背板の背面部を押圧することを特徴とする請求項2記載のキャビネット。
【請求項4】
前記アーム本体は、前記軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面部を有し、前記第1位置と前記所定位置との間において、前記曲面部で前記背板の背面部を押圧することを特徴とする請求項3記載のキャビネット。
【請求項5】
前記突起部は、前記軸方向を回転軸として回転するローラであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のキャビネット。
【請求項6】
内部空間を有する固定枠体と、
前記固定枠体の前記内部空間に収納された収納位置と、前記収納位置から前方に移動した引き出し位置と、の間で、前記固定枠体に可動可能に設けられ、上方を開口させた収納空間を有する引き出しと、
を有するキャビネットに用いられ、前記固定枠体の前記内部空間内に設けられ、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助する開放補助装置であって、
筐体と、
先端部と基端部とを有し、前記基端部側に設けられた回転軸を介して前記筐体に回転可能に支持され、第1位置と、前記先端部を前記第1位置よりも前方側に位置させるように前記回転軸を軸に回転した第2位置と、に移動するアームと、
前記筐体内に設けられ、前記アームを前記第1位置と前記第2位置とに回転駆動する駆動部と、
を備え、前記引き出しが前記収納位置にある状態において、前記アームを前記第1位置から前記第2位置に回転させ、前記引き出しの前記収納空間よりも後方の背板の背面部を、前記アームで前方に向けて押圧することにより、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助し、
前記アームは、アーム本体と、前記アーム本体から前記回転軸の延びる軸方向に突出した突起部と、を有し、
前記アームが前記第1位置にある状態において、前記突起部の前端は、前記アーム本体の前端よりも後方に位置し、
前記アームは、前記アーム本体及び前記突起部のいずれかで前記引き出しの前記背板の背面部を直接押圧可能であることを特徴とする開放補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット及び開放補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引き出しを有するキャビネットにおいて、アームを回転させて引き出しを押し出すことにより、引き出しの開放を補助する開放補助装置を設けることが知られている。開放補助装置は、例えば、筐体と、筐体に回転可能に設けられたアームと、筐体内に設けられ、アームを回転させる駆動部と、を備える。こうした開放補助装置は、特許文献1のように、キャビネットの奥の引き出しの背板の後ろのスペースに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5202322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、引き出しの後ろのスペースに開放補助装置を設けるためには、引き出しの背板の後ろに開放補助装置の筐体の厚さ以上の設置スペースが必要となる。従って、開放補助装置の設置スペースが不足する場合には、引き出しの奥行を小さくして設置スペースを確保しなければならない。すなわち、開放補助装置を設ける場合には、開放補助装置を設けない場合と比べて、引き出しの収納量が減ってしまう可能性が生じる。
【0005】
例えば、アームの奥行寸法を小さくすることで、引き出しの奥行が小さくなることを抑制することも考えられる。一方で、アームの奥行寸法を単純に小さくしてしまうと、例えば、引き出しの背板の後ろのスペースが比較的広い場合などに、アームと引き出しとの間の隙間が大きくなってしまう。この場合、アームが引き出しに当接するまでの距離が長くなってしまい、引き出しの押し出し量が小さくなってしまう可能性が生じる。
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、引き出しの背板の後ろのスペースが狭い場合でも広い場合でも引き出しを適切に押し出すことができるキャビネット及び開放補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、内部空間を有する固定枠体と、前記固定枠体の前記内部空間に収納された収納位置と、前記収納位置から前方に移動した引き出し位置と、の間で、前記固定枠体に可動可能に設けられ、上方を開口させた収納空間を有する引き出しと、前記固定枠体の前記内部空間内に設けられ、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助する開放補助装置と、を備え、前記開放補助装置は、筐体と、先端部と基端部とを有し、前記基端部側に設けられた回転軸を介して前記筐体に回転可能に支持され、第1位置と、前記先端部を前記第1位置よりも前方側に位置させるように前記回転軸を軸に回転した第2位置と、に移動するアームと、前記筐体内に設けられ、前記アームを前記第1位置と前記第2位置とに回転駆動する駆動部と、を有し、前記引き出しが前記収納位置にある状態において、前記アームを前記第1位置から前記第2位置に回転させ、前記引き出しの前記収納空間よりも後方の背面部を、前記アームで前方に向けて押圧することにより、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助し、前記アームは、アーム本体と、前記アーム本体から前記回転軸の延びる軸方向に突出した突起部と、を有し、前記アームが前記第1位置にある状態において、前記突起部の前端は、前記アーム本体の前端よりも後方に位置し、前記アームは、前記アーム本体及び前記突起部のいずれかで前記引き出しの前記背面部を押圧可能であることを特徴とするキャビネットである。
【0008】
このキャビネットによれば、アームは、アーム本体と、アーム本体から回転軸の延びる軸方向に突出した突起部と、を有し、アームが第1位置にある状態において、突起部の前端は、アーム本体の前端よりも後方に位置し、アームは、アーム本体及び突起部のいずれかで引き出しの背面部を押圧可能であることにより、引き出しの背面部を押圧する手段をアーム本体と突起部とから選択することができる。すなわち、開放補助装置を設置する空間が広い場合には、アーム本体にて引き出しの開放を補助することにより、アームと引き出しの背面部との間の距離を接近させ、引き出しの押し出し量を稼ぐことができる。反対に、開放補助装置を設置する空間が狭い場合には、突起部にて引き出しの開放を補助することにより、引き出しの収納空間を確保するために引き出しの背板の後ろのスペースを狭くし、アーム本体を設置できない場合でも、突起部によって適切に引き出しを押し出すことができる。従って、引き出しの背板の後ろのスペースが狭い場合でも広い場合でも引き出しを適切に押し出すことができるキャビネットを提供することができる。これにより、例えば、キャビネットの使い勝手をより向上させることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記突起部は、前記基端部よりも前記先端部に近い位置に設けられていることを特徴とするキャビネットである。
【0010】
このキャビネットによれば、突起部が基端部よりも先端部に近い位置に設けられていることにより、突起部の回転半径を大きくし、突起部による引き出しの押し出し量を大きくすることができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記突起部は、前記軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面を有し、前記引き出しの前記背面部を押圧する際に、前記曲面で前記背面部を押圧し、前記アームが前記第2位置にある状態において、前記突起部の前記曲面の前端は、前記アーム本体の前端よりも前方に位置し、前記アームは、前記アーム本体で前記引き出しの前記背面部を押圧する際に、前記第1位置と所定位置との間においては、前記アーム本体で前記背面部を押圧し、前記所定位置と前記第2位置との間においては、前記突起部の前記曲面で前記背面部を押圧することを特徴とするキャビネットである。
【0012】
このキャビネットによれば、突起部が、軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面を有し、引き出しの背面部を押圧する際に、曲面で背面部を押圧する。これにより、突起部で背面部を押圧する際に、突起部と背面部との間に生じる摩擦を小さくし、引き出しをスムーズに押し出すことができる。また、アーム本体で引き出しの背面部を押圧する際に、第1位置と所定位置との間においては、アーム本体で背面部を押圧することにより、回転半径の小さい部分で背面部を押圧することができ、先端部側の突起部で押圧する場合と比べて、比較的強い力で背面部を押圧することができる。回転し始めにおいては、停止している引き出しを押し出すために、比較的強い力が必要となる場合がある。このような場合に、上記のように、アーム本体で背面部を押圧することにより、比較的強い力で引き出しを適切に押し出すことができる。さらに、アーム本体で引き出しの背面部を押圧する際に、所定位置と第2位置との間においては、突起部の曲面で背面部を押圧することにより、回転半径の大きい部分で背面部を押圧することができ、適切な押し出し量を得られるとともに、突起部と背面部との間に生じる摩擦を小さくし、引き出しをスムーズに押し出すことができる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、前記アーム本体は、前記軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面部を有し、前記第1位置と前記所定位置との間において、前記曲面部で前記背面部を押圧することを特徴とするキャビネットである。
【0014】
このキャビネットによれば、第1位置と所定位置との間において、曲面部で背面部を押圧することにより、第1位置から所定位置まで背面部を押圧する際に、アーム本体と背面部との間に生じる摩擦を小さくし、引き出しをスムーズに押し出すことができる。
【0015】
第5の発明は、第1~第4のいずれか1つの発明において、前記突起部は、前記軸方向を回転軸として回転するローラであることを特徴とするキャビネットである。
【0016】
このキャビネットによれば、突起部が、軸方向を回転軸として回転するローラであることにより、突起部で背面部を押圧する際に、突起部と背面部との間に生じる摩擦をより小さくし、引き出しをよりスムーズに押し出すことができる。
【0017】
第6の発明は、内部空間を有する固定枠体と、前記固定枠体の前記内部空間に収納された収納位置と、前記収納位置から前方に移動した引き出し位置と、の間で、前記固定枠体に可動可能に設けられ、上方を開口させた収納空間を有する引き出しと、を有するキャビネットに用いられ、前記固定枠体の前記内部空間内に設けられ、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助する開放補助装置であって、筐体と、先端部と基端部とを有し、前記基端部側に設けられた回転軸を介して前記筐体に回転可能に支持され、第1位置と、前記先端部を前記第1位置よりも前方側に位置させるように前記回転軸を軸に回転した第2位置と、に移動するアームと、前記筐体内に設けられ、前記アームを前記第1位置と前記第2位置とに回転駆動する駆動部と、を備え、前記引き出しが前記収納位置にある状態において、前記アームを前記第1位置から前記第2位置に回転させ、前記引き出しの前記収納空間よりも後方の背面部を、前記アームで前方に向けて押圧することにより、前記引き出しの前記収納位置から前記引き出し位置への開放を補助し、前記アームは、アーム本体と、前記アーム本体から前記回転軸の延びる軸方向に突出した突起部と、を有し、前記アームが前記第1位置にある状態において、前記突起部の前端は、前記アーム本体の前端よりも後方に位置し、前記アームは、前記アーム本体及び前記突起部のいずれかで前記引き出しの前記背面部を押圧可能であることを特徴とする開放補助装置である。
【0018】
この開放補助装置によれば、アームは、アーム本体と、アーム本体から回転軸の延びる軸方向に突出した突起部と、を有し、アームが第1位置にある状態において、突起部の前端は、アーム本体の前端よりも後方に位置し、アームは、アーム本体及び突起部のいずれかで引き出しの背面部を押圧可能であることにより、引き出しの背面部を押圧する手段をアーム本体と突起部とから選択することができる。すなわち、開放補助装置を設置する空間が広い場合には、アーム本体にて引き出しの開放を補助することにより、アームと引き出しの背面部との間の距離を接近させ、引き出しの押し出し量を稼ぐことができる。反対に、開放補助装置を設置する空間が狭い場合には、突起部にて引き出しの開放を補助することにより、引き出しの収納空間を確保するために引き出しの背板の後ろのスペースを狭くし、アーム本体を設置できない場合でも、突起部によって適切に引き出しを押し出すことができる。従って、引き出しの背板の後ろのスペースが狭い場合でも広い場合でも引き出しを適切に押し出すことができる開放補助装置を提供することができる。これにより、例えば、開放補助装置の使い勝手をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様によれば、引き出しの背板の後ろのスペースが狭い場合でも広い場合でも引き出しを適切に押し出すことができるキャビネット及び開放補助装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係るキャビネットを模式的に表す斜視図である。
図2】実施形態に係るキャビネットの一部を模式的に表す斜視図である。
図3】実施形態に係るキャビネットを模式的に表す断面図である。
図4】実施形態に係るキャビネットを模式的に表す断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る引き込み機構を模式的に表す説明図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る開放補助装置を模式的に表す斜視図である。
図7図7(a)~図7(d)は、アームの動作の一例を模式的に表す説明図である。
図8】実施形態に係るキャビネットの一部を模式的に表す拡大断面図である。
図9】実施形態に係るキャビネットの変形例を模式的に表す断面図である。
図10】実施形態に係るキャビネットの変形例を模式的に表す断面図である。
図11】実施形態に係る開放補助装置の変形例を模式的に表す斜視図である。
図12図12(a)~図12(c)は、変形例の開放補助装置におけるアームの動作を模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、実施形態に係るキャビネットを模式的に表す斜視図である。
図2は、実施形態に係るキャビネットの一部を模式的に表す斜視図である。
図3及び図4は、実施形態に係るキャビネットを模式的に表す断面図である。
図1図4に表したように、キャビネット2は、固定枠体10と、引き出し20と、開放補助装置30と、を備える。
【0023】
固定枠体10は、天板11と、底板12と、裏板13と、2つの側板14と、補強部材15と、を有する。これにより、固定枠体10は、天板11と、底板12と、裏板13と、2つの側板14とで囲まれた内部空間ISを有する。固定枠体10は、換言すれば、前方を開口させた開口箱状である。補強部材15は、左右方向に延び、2つの側板14の前端上部同士を接続することにより、固定枠体10の開口側を補強する。なお、図2では、天板11及び引き出し20を省略した状態の固定枠体10を便宜的に表している。
【0024】
以下、本願明細書においては、固定枠体10の開口の向く方向を「前方」とする。前方は、換言すれば、引き出し20を引き出す方向である。そして、「後方」、「上方」、「下方」、「右側方」、「左側方」は、前方を向いた状態を基準としたそれぞれの方向である。
【0025】
固定枠体10は、引き出し20を内部空間ISに収納する。キャビネット2は、上下に並べて設けられた一対の引き出し20を備えている。固定枠体10は、上下に並ぶ一対の引き出し20を内部空間ISに収納可能とする。
【0026】
キャビネット2は、例えば、キッチンや洗面所などに設置して使用される。キャビネット2は、例えば、対面式のキッチンにおいて、システムキッチンの背面側に設置される食器棚や収納家具等の背面収納として用いられる。この場合、固定枠体10は、上記のように、天板11を有する。キャビネット2は、例えば、システムキッチンや洗面化粧台などに組み込まれたキャビネットでもよい。この場合、天板11は、例えば、システムキッチンのカウンターやシンク、あるいは洗面化粧台の洗面器などに置き換えてもよい。換言すれば、内部空間ISの上方は、カウンター、シンク、あるいは洗面器などで覆ってもよい。また、例えば、キャビネット2が建築の壁面に接して設置される場合などには、裏板13などを省略してもよい。補強部材15は、必要に応じて設けられ、省略可能である。このように、固定枠体10の構成は、上記に限ることなく、引き出し20を内部空間ISに収納可能な任意の構成でよい。
【0027】
また、この例では、キャビネット2が、上下に並べて設けられた一対の引き出し20を備えている。キャビネット2に設けられる引き出し20の数は、2つに限ることなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。例えば、キャビネット2がキッチンに設置される場合など、キャビネット2が横長状である場合などには、キャビネット2は、左右方向に並べて設けられた複数の引き出し20を備えてもよい。また、キャビネット2が横長状である場合には、例えば、引き出し20の隣に開き戸などの別のタイプの収納を設けてもよい。固定枠体10は、少なくとも1つの引き出し20を内部空間ISに収納可能に構成されていればよい。
【0028】
引き出し20は、上方を開口させた収納空間SSを有する。引き出し20は、扉21と、背板22と、底板23と、2つの側板24とを有する。収納空間SSは、扉21と、背板22と、底板23と、2つの側板24とで囲まれた空間である。引き出し20は、換言すれば、上方を開口させた開口箱状である。
【0029】
この例において、上段側の引き出し20の奥行寸法は、下段側の引き出し20の奥行寸法よりも大きい。一対の引き出し20の構成は、奥行寸法を除いて実質的に同じである。但し、上段側の引き出し20と下段側の引き出し20とで、構成を変化させてもよい。例えば、上段側の引き出し20と下段側の引き出し20とで、上下方向の高さや左右方向の幅を変化させてもよい。キャビネット2が横長状である場合には、例えば、下段側には1つの引き出しを設け、上段側には、下段側よりも幅の狭い複数の引き出しを左右方向に並べて設けてもよい。すなわち、上段側と下段側とで引き出し20の数を変化させてもよい。
【0030】
引き出し20は、固定枠体10の内部空間ISに収納された収納位置と、収納位置から前方に移動した(引き出された)引き出し位置と、の間で、固定枠体10に可動可能に設けられている。収納位置は、例えば、図3に表した引き出し20の位置である。引き出し位置は、例えば、図4の下段側に表した引き出し20の位置である。図4の上段側の引き出し20は、収納位置と引き出し位置との間の位置まで引き出し20を移動させた途中の状態を模式的に表している。
【0031】
固定枠体10は、スライドレール17と、引き込み機構18と、をさらに有する。スライドレール17は、側板14の内面に設けられる。スライドレール17は、引き出し20の左右の両側方に1つずつ設けられる。このため、固定枠体10は、一対の引き出し20に対応する4つのスライドレール17を有する。スライドレール17は、引き出し20の前後方向の移動をガイドするとともに、固定枠体10と引き出し20との間に生じる摩擦を小さくし、収納位置と引き出し位置との間の引き出し20の移動をスムーズにする。
【0032】
引き込み機構18は、側板14の内面に設けられる。引き込み機構18は、引き出し20の左右の両側方に1つずつ設けられる。このため、固定枠体10は、一対の引き出し20に対応する4つの引き込み機構18を有する。
【0033】
引き込み機構18は、引き出し20が収納位置と引き出し位置との間の所定の位置まで移動するまでの間に、引き出し20に対して収納位置側に引き込む力を付与する。引き出し20は、収納位置から所定の位置まで移動するまでの間においては、引き込み機構18の引き込み力によって自動的に収納位置に移動する。これにより、比較的軽い力で引き出し20を収納位置に移動させることができるとともに、引き出し20が僅かに開いた状態で保持されてしまうことなどを抑制し、キャビネット2の使い勝手をより向上させることができる。
【0034】
図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る引き込み機構を模式的に表す説明図である。
図5(a)及び図5(b)に表したように、引き込み機構18は、レール部材40と、可動部材42と、バネ44と、駆動ピン46と、を有する。
【0035】
レール部材40は、貫通孔状のレール50を有する板状である。レール部材40は、例えば、固定枠体10の側板14の内面に取り付けられる。レール50は、前後方向に延びる直線部50aと、直線部50aの前端に設けられ、下方に向かって円弧状に湾曲した湾曲部50bと、を有する。
【0036】
可動部材42は、略矩形の板状であり、軸部52、53を介してレール50に取り付けられ、レール50に沿って前後方向に移動する。可動部材42の上部には、上方に向かって開口する溝部56が設けられている。溝部56の前方側の上端付近には、上方に向かうに従って幅が広がるように前方側に傾斜した傾斜部56aが設けられている。
【0037】
バネ44は、いわゆるコイルバネである。バネ44の一端44aは、可動部材42に接続されている。一方、バネ44の他端44bは、レール部材40に接続されている。バネ44の他端44bは、例えば、固定枠体10に接続してもよい。
【0038】
バネ44は、後方側に向かう付勢力を可動部材42に付与する。バネ44は、可動部材42がレール50の直線部50aの範囲に位置する場合に、可動部材42を直線部50aの後端の位置(図5(a)に表した位置)に保持する。より詳しくは、バネ44は、付勢力により、軸部53が直線部50aの後端に当接した位置に、可動部材42を保持する。
【0039】
駆動ピン46は、例えば、左右方向(図5において紙面と直交する方向)に延びる略丸棒状である。駆動ピン46の一端は、可動部材42の溝部56に係合している。一方、駆動ピン46の他端は、引き出し20に接続されている。これにより、駆動ピン46及び可動部材42は、引き出し20に従動して前後方向に移動する。
【0040】
可動部材42が、レール50の直線部50aの範囲に位置する場合には、可動部材42及び駆動ピン46を介してバネ44の付勢力が、引き出し20に付与される。これにより、上述のように、引き出し20が所定の位置まで移動するまでの間においては、引き出し20が収納位置に移動する。図5(a)は、換言すれば、引き出し20が収納位置にある状態を示している。
【0041】
図5(b)に表したように、可動部材42が、レール50の湾曲部50bの位置まで移動すると、湾曲部50bの湾曲に沿って可動部材42が前方側に傾く。この状態において、引き出し20及び駆動ピン46がさらに前方に移動すると、駆動ピン46が可動部材42の溝部56から抜ける。これにより、上述のように、引き出し20が所定位置まで移動すると、引き出し20への引き込み力の付与が解除される。図5(b)は、換言すれば、引き出し20が収納位置と引き出し位置との間の所定の位置にある状態を示している。
【0042】
また、湾曲部50bの位置にある可動部材42は、軸部52を湾曲部50bの前端部分に係合させることにより、バネ44の付勢力に抗して湾曲部50bの位置に留まる。そして、引き出し20及び駆動ピン46が引き出し位置から所定の位置まで戻った際に、再び駆動ピン46と溝部56とを係合させる。
【0043】
これにより、上記のように、引き出し20が収納位置から所定の位置まで移動するまでの間においては、引き出し20に収納位置に向かう方向の引き込み力が引き込み機構18によって付与される。そして、引き出し20が所定の位置まで移動した場合には、引き込み機構18による収納位置に向かう方向の引き込み力の付与が解除され、引き出し20が、引き出し20の慣性力(引き出し20の自重)によって引き出し位置に移動する。
【0044】
なお、引き込み機構18の構成は、上記に限ることなく、上記のように引き出し20への引き込み力の付与、及び引き込み力の付与の解除を行うことができる任意の構成でよい。また、引き込み機構18とスライドレール17とは、別体構成に限らず一体構成であってもよい。
【0045】
開放補助装置30は、固定枠体10の内部空間IS内に設けられる。開放補助装置30は、例えば、裏板13の前面に設けられる。開放補助装置30は、引き出し20の収納位置から引き出し位置への開放を補助する。キャビネット2は、一対の引き出し20に対応する一対の開放補助装置30を備え、一対の開放補助装置30によって一対の引き出し20の開放を個別に補助する。
【0046】
開放補助装置30は、引き出し20の収納位置近傍において、引き出し20を後方へ引き込もうとする引き込み機構18に対し、引き込み機構18の付勢力に対して、引き出し20を前方へ押し出す装置のことを指す。
【0047】
開放補助装置30は、例えば、引き出し20が収納位置にある状態において、引き出し20を収納位置から引き込み力の解除される所定の位置(図5(b)に表した位置)まで引き出し20を押し出す。これにより、開放補助装置30によって引き出し20を押し出した後には、引き出し20の慣性力によって引き出し20を引き出し位置に移動させることができる。
【0048】
固定枠体10の裏板13の前面には、電源ユニット80が設けられている。電源ユニット80は、商用電源と接続可能であり、商用電源の交流電力を直流電力に変換する。
【0049】
開放補助装置30は、電源ユニット80と電源線81で接続され、その電源線81を通じて電源ユニット80から電力供給を受ける。
【0050】
引き出し20の開放を補助する開放補助装置30は、引き出し20に設けられた始動スイッチ60の操作によって起動する。始動スイッチ60は、利用者の操作を検知する検知部61を有する。また、始動スイッチ60は、検知部61の操作信号の入力を受け、開放補助装置30に制御信号を出力する制御部74を有する。
【0051】
検知部61は、利用者が操作しやすいように、キャビネット2の外部に露出して設けられている。例えば、検知部61は、引き出し20の扉21の上端部に設けられ、扉21の幅方向(間口方向)に延在している。また、検知部61は、引き出し20の扉21の背面に露出する部分も有する。このように、引き出し20の開放を補助するための検知部61は、逆L字形状であり、天板11の下面と接する面と、信号線73(詳細は後述)と接する面と、を有している。そのため、天板11の下面と引き出し20との間に位置する検知部61を、デザイン性を考慮し薄く設けたとしても、信号線73との接続が容易となる。
【0052】
検知部61は、例えば、利用者が触れることで電気信号が発生するタッチセンサを有する。このタッチセンサは、例えば、指先を検知部61に近づける、または触れると、指先を通じて静電容量が変化する静電式センサである。扉21が金属製の場合、扉21がタッチセンサ式の検知部を兼ねることが可能である。または、タッチセンサは、加えられた力を電圧に変換する圧電素子を有する圧電式センサであってもよい。
【0053】
始動スイッチ60の検知部61は、電気接続手段70を通じて、開放補助装置30と電気的に接続可能となっている。
【0054】
電気接続手段70は、第1の電気接点71と、第2の電気接点72と、信号線73と、電気配線75とを含む。制御部74、信号線73、および電気配線75は、例えば固定枠体10の側板14に設けられている。
【0055】
第1の電気接点71は、図4に示すように、引き出し20の扉21の背面に露出する検知部61の背面に設けられている。第2の電気接点72は、第1の電気接点71に対向するように、固定枠体10の側板14の前面に設けられている。
【0056】
第2の電気接点72は、信号線73によって、制御部74と電気的に接続されている。制御部74は、電気配線75によって、開放補助装置30と電気的に接続されている。電気配線75は、電源線と信号線を兼ねる。制御部74は、電源線81および電気配線75を通じて、電源ユニット80から電力の供給を受ける。なお、制御部74は、開放補助装置30を経由せず、直接、電源ユニット80から電力の供給を受けてもよいし、電源ユニット80とは異なる電源ユニットから電力の共有を受けてもよい。
【0057】
検知部61の操作信号は、第1の電気接点71、第2の電気接点72、信号線73、制御部74、および電気配線75を通じて、開放補助装置30に伝達する。制御部74は、検知部61の操作信号を受けて、開放補助装置30を起動させる制御信号を開放補助装置30に送る。
【0058】
第2の電気接点72は固定側の要素である固定枠体10に設けられているのに対し、第1の電気接点71は可動側の要素である引き出し20の扉21に設けられている。したがって、引き出し20の開閉に連動して、第1の電気接点71と第2の電気接点72とは互いに接続または離間する。
【0059】
すなわち、図3に示す引き出し20の閉止時のみ、第1の電気接点71と第2の電気接点72とが互いに接続し、それらを含む前述した電気接続手段70によって、始動スイッチ60の検知部61と開放補助装置30とが電気的に接続される。
【0060】
このようにして検知部61と開放補助装置30とが電気的に接続された状態で、利用者が検知部61を操作すると(例えばタッチセンサである検知部61に触れると)、操作信号が電気接続手段70を通じて開放補助装置30に伝達する。この操作信号を受けて、開放補助装置30は起動する。すなわち、開放補助装置30が作動して、引き出し20が引き込み力の解除される位置まで押し出される。
【0061】
図4に示すように、引き出し20が固定枠体10から前方に移動した開放状態では、引き出し20に設けられた第1の電気接点71が、固定枠体10に設けられた第2の電気接点72から離間し、検知部61と開放補助装置30との電気的接続が遮断される。この状態では、利用者が検知部61を操作しても(触れても)、開放補助装置30は起動しない。
【0062】
従って、開放補助装置30を起動させる必要がない引き出し開放時に、利用者が検知部61を意図せず操作してしまっても(触れてしまっても)、開放補助装置30が起動することを抑制できる。このような開放補助装置30の無駄な動作の抑制は、開放補助装置30にかかる負荷を低減させ、耐久性を向上させる。また、無駄な電力消費も抑制できる。
【0063】
また、開放状態から利用者が引き出し20を閉める際に、作動した開放補助装置30と、引き出し20の背板22とが干渉し、開放補助装置30や引き出し20が破損することを抑制できる。このことも、開放補助装置30の耐久性を向上させる。このように、実施形態によれば、始動スイッチ60の検知部61を外部に露出した構成にしつつも、引き出し開放時における開放補助装置30の意図しない起動を抑制でき、使い勝手を良くできる。
【0064】
また、実施形態によれば、引き出し20の開閉に連動して、検知部61と開放補助装置30との間の信号伝達のON/OFFを行う構成であるため、引き出し20の開閉状態を検知する開閉状態検知センサなどを別途設けることが不要となり、簡易な構成で引き出し開放時における開放補助装置30の意図しない起動を抑制でき、使い勝手を良くできる。
【0065】
電源ユニット80は、キャビネットにおいて一般的にデッドスペースとなっている引き出し20の後方空間に設けている。その電源ユニット80から、キャビネット2の前面側に設けられた第2の電気接点72まで配線接続されている。引き出し20の扉21に設けた検知部61から引き出し奥側まで直接配線する必要がない。配線が固定側にあり、引き出し20を開けても目立たないので、美観を損ねない。配線を見えないように、また、他の部位に接触しないように埋め込む等の細工が不要となる。扉21の一部を検知部61として使うことができ、または扉21自体を検知部として利用でき、デザイン上の自由度が高く、意匠性に優れる。
【0066】
このように、キャビネット2は、利用者の操作を検知する検知部61を備え、検知部61の検知に応じて開放補助装置30を駆動させる。検知部61の構成は、上記に限ることなく、利用者の操作を検知し、開放補助装置30に対して検知結果を入力可能な任意の構成でよい。検知部61は、静電センサや圧電センサに限ることなく、例えば、機械式のスイッチ、光学センサ、あるいは磁気センサなどでもよいし、リモコンなどからの信号を受信して開放補助装置30を作動させるための受信部などでもよい。
【0067】
図6(a)及び図6(b)は、実施形態に係る開放補助装置を模式的に表す斜視図である。
図6(a)及び図6(b)に表したように、開放補助装置30は、筐体100と、アーム110と、駆動部120と、を有する。
【0068】
筐体100は、略矩形の中空箱状である。筐体100は、駆動部120などを収納可能な内部空間を有する。但し、筐体100の外形は、矩形状に限ることなく、任意の形状でよい。
【0069】
アーム110は、先端部112と基端部114とを有し、基端部114側に設けられた回転軸116を介して筐体100に回転可能に支持されている。これにより、アーム110は、第1位置と、先端部112を第1位置よりも前方側に位置させるように回転軸116を軸に回転した第2位置と、に移動する。第1位置は、例えば、図6(a)に表した位置である。第2位置は、例えば、図6(b)に表した位置である。
【0070】
駆動部120は、筐体100内に設けられ、アーム110を第1位置と第2位置とに回転駆動する。駆動部120は、モータやギアなどから構成され、回転軸116と接続されることにより、アーム110を第1位置と第2位置とに移動させる。駆動部120の構成は、アーム110を第1位置と第2位置とに移動させることが可能な任意の構成でよい。
【0071】
アーム110は、例えば、筐体100の下方に設けられる。なお、図6(a)及び図6(b)では、便宜的に、図3及び図4などと上下を逆転させて図示している。図3及び図4に表したように、この例では、アーム110が、筐体100の下方に設けられる。
【0072】
この場合、回転軸116は、上下方向に延びる。アーム110は、上下方向に延びる回転軸116を中心に回転することにより、第1位置と第2位置とに移動する。
【0073】
図7(a)~図7(d)は、アームの動作の一例を模式的に表す説明図である。
図7(a)及び図7(c)は、引き出し20が収納位置にあり、アーム110が第1位置にある状態を模式的に表している。図7(b)及び図7(d)は、図7(a)及び図7(c)の状態からアーム110を第2位置に移動させた状態を模式的に表している。
【0074】
図7(a)~図7(d)に表したように、開放補助装置30は、引き出し20が収納位置にある状態において、アーム110を第1位置から第2位置に回転させ、引き出し20の収納空間SSよりも後方の背面部20bを、アーム110で前方に向けて押圧することにより、引き出し20の収納位置から引き出し位置への開放を補助する。
【0075】
ここで、引き出し20の背面部20bとは、例えば、背板22の背面である。引き出し20の背面部20bは、例えば、底板23の後端面や側板24の後端面などでもよい。また、収納空間SSよりも後方とは、例えば、背板22の前面よりも後方の部分である。例えば、背板22の上端や下端などに上下方向に延びる突起などを設け、この突起の背面部を背面部20bとしてアーム110で押圧してもよい。
【0076】
駆動部120は、検知部61からの操作信号の入力に応じて、アーム110を第1位置から第2位置に回転させる。アーム110は、第1位置から第2位置に回転することにより、引き出し20を収納位置から引き込み機構18の引き込み力の解除される所定の位置まで、引き出し20を前方に向けて押圧する。
【0077】
これにより、始動スイッチ60を操作し、検知部61に操作を検知されることによって、引き出し20が押し出され、引き出し20が慣性力によって自動的に引き出し位置まで移動する。すなわち、キャビネット2では、始動スイッチ60を操作することで、自動的に引き出し20を開くことができる。駆動部120は、アーム110を第1位置から第2位置に回転させた後、アーム110を第2位置から第1位置に戻すことにより、次の引き出し20の開放に備える。
【0078】
アーム110の基端部114から先端部112までの長さは、引き出し20の収納位置から引き込み力の解除される位置までの移動距離よりも長い。換言すれば、アーム110の基端部114から先端部112までの長さは、引き込み機構18のレール50の直線部50aの前後方向の長さよりも長い。アーム110の基端部114から先端部112までの長さは、換言すれば、第2位置にあるアーム110の回転軸116からアーム110の前端までの長さLaである。これにより、アーム110によって、上記のように、引き出し20を押し出すことができる。
【0079】
図6(a)、図6(b)、及び図7(a)~図7(d)に表したように、アーム110は、アーム本体140と、突起部142と、を有する。アーム本体140は、アーム110が第1位置にある状態において、左右方向に延びる。アーム本体140は、例えば、第1位置にある状態おいて左右方向に延びる棒状あるいは板状である。
【0080】
突起部142は、アーム本体140から回転軸116の延びる軸方向に突出する。アーム110が第1位置にある状態において、突起部142の前端は、アーム本体140の前端よりも後方に位置する。
【0081】
アーム110は、アーム本体140及び突起部142のいずれかで引き出し20の背面部20bを押圧可能である。図7(a)及び図7(b)は、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する状態を模式的に表している。図7(c)及び図7(d)は、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧する状態を模式的に表している。
【0082】
前述のように、この例では、回転軸116が上下方向に延び、アーム110が筐体100の下方に設けられている。この場合、突起部142は、アーム本体140から下方に突出する。この例では、アーム本体140が、筐体100の下方に設けられ、突起部142が、アーム本体140の下方に設けられる。これにより、上記のように、アーム本体140及び突起部142のいずれかで引き出し20の背面部20bを押圧することが可能となる。
【0083】
アーム本体140は、第1位置にある状態において、基端部114から先端部112に向けて奥行寸法を連続的に小さくするように先端部112側を湾曲させている。これにより、押し初めにおいては、回転軸116から引き出し20との接点までの距離を短くすることができ、回転し始めに大きな押出し力を得ることができる。そして、アーム本体140が回転するにつれて、回転軸116から引き出し20との接点までの距離を徐々に長くすることができ、引き出し20を適切に押し出すことができる。
【0084】
なお、第1位置にある状態において、基端部114から先端部112に向けて奥行寸法を連続的に小さくする構成は、湾曲に限ることなく、例えば、傾斜面などで構成してもよい。例えば、傾斜角度の異なる複数の傾斜面を設けることにより、第1位置から第2位置に向かうに従って、回転軸116から引き出し20との接点までの距離が徐々に長くなるようにしてもよい。
【0085】
突起部142は、基端部114よりも先端部112に近い位置に設けられる。換言すれば、突起部142は、アーム本体140の先端部112の近傍に設けられる。先端部112の近傍とは、例えば、先端部112からアーム本体140の全長(先端部112と基端部114との間の長さ)の1/3の長さの範囲である。
【0086】
なお、突起部142を設ける位置は、上記に限ることなく、引き出し20を適切に押し出すことができる任意の位置でよい。突起部142を設ける位置は、例えば、引き出し20を引き込み機構18の引き込み力の解除される位置まで押し出すことができる任意の位置でよい。但し、上記のように、突起部142を先端部112の近傍に配置することにより、第1位置から第2位置に移動する際の突起部142の移動の回転半径を大きくし、引き出し20を引き込み機構18の引き込み力の解除される位置まで押し出し易くすることができる。従って、突起部142は、なるべく先端部112に近付けて配置することが好ましい。
【0087】
突起部142は、回転軸116の軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面142aを有する。突起部142は、例えば、上下方向を軸とする円柱状である。曲面142aは、例えば、上下方向を軸とする軸周りに曲がった円柱面状である。
【0088】
突起部142は、引き出し20の背面部20bを押圧する際に、曲面142aで背面部20bを押圧する。これにより、突起部142で引き出し20を押圧する際に、背面部20bと突起部142との間に生じる摩擦を小さくし、突起部142によってスムーズに引き出し20を押し出すことができる。
【0089】
なお、突起部142の形状は、円柱状に限ることなく、軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面142aを有する任意の形状でよい。突起部142の形状は、例えば、球状などでもよい。曲面142aは、軸方向を軸とする軸周りに曲がった球面状などでもよい。また、曲面142aは、円状の曲面に限ることなく、楕円状の曲面など、背面部20bとの間に生じる摩擦を小さくすることが可能な任意の曲面でよい。また、曲面142aは、必ずしも軸方向を軸とする軸周りの全周に設けられていなくてもよい。例えば、突起部142の後方側の部分など、突起部142において、第1位置と第2位置との移動の間に引き出し20の背面部20bと当接しない部分は、平面状などに形成してもよい。突起部142の形状は、例えば、前方側を曲面142aとし、後方側を平面状とした半円柱状の形状などでもよい。突起部142は、必ずしも曲面142aを有していなくてもよい。突起部142の形状は、引き出し20の背面部20bを押圧可能な任意の形状でよい。
【0090】
図3及び図4に表したように、キャビネット2では、奥行寸法の小さい下段側の引き出し20に対応する開放補助装置30は、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する。一方、奥行寸法の大きい上段側の引き出し20に対応する開放補助装置30は、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧する。
【0091】
このように、キャビネット2及び開放補助装置30では、引き出し20の背板22の後ろのスペースに応じてアーム本体140及び突起部142を選択することで、引き出し20を適切に押し出すことができる。これにより、キャビネット2の使い勝手をより向上させることができる。
【0092】
図8は、実施形態に係るキャビネットの一部を模式的に表す拡大断面図である。
図8は、図3の上段側の引き出し20に対応する開放補助装置30の部分を拡大して模式的に表している。すなわち、図8は、引き出し20が収納位置にあり、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧するアーム110が第1位置にある状態を模式的に表している。
【0093】
図8に表したように、第1位置にあるアーム110の突起部142の奥行寸法D1は、筐体100の奥行寸法D2よりも小さい。換言すれば、第1位置にある突起部142の前後方向の長さは、筐体100の前後方向の長さよりも小さい。
【0094】
アーム110が第1位置にある状態において、突起部142の前端は、筐体100の前端100fよりも後方に位置する。筐体100が矩形状である場合、筐体100の前端100fは、換言すれば、筐体100の前面である。
【0095】
また、第1位置にあるアーム110の後端110bは、筐体100の後端100bよりも後方に出ない。第1位置にあるアーム110の後端110bは、例えば、筐体100の後端100bよりも前方に位置する。第1位置にあるアーム110の後端110bは、例えば、筐体100の後端100bと略面一でもよい。このように、第1位置にあるアーム110は、突起部142の前端を筐体100の前端100fよりも後方に位置させるとともに、筐体100の前後方向の幅内に配置される。
【0096】
アーム110の突起部142は、第1位置にある状態において、収納位置にある引き出し20の背面部20bの後方スペースBSに設置される。換言すれば、アーム110の突起部142は、第1位置にある状態において、収納位置にある引き出し20の背面部20bの後方に位置する。アーム110の突起部142は、第1位置にある状態において、例えば、収納位置にある引き出し20の背面部20bと固定枠体10の裏板13との間に位置する。
【0097】
一方、突起部142で引き出し20を押圧する場合、筐体100は、後方スペースBSとは異なるスペースに設置される。換言すれば、筐体100は、収納位置にある引き出し20の背面部20bと前後方向において重ならない位置に設置される。
【0098】
前述のように、アーム110は、筐体100の下方に設けられる。アーム110は、上下方向に延びる回転軸116を介して筐体100に回転可能に支持される。この場合、筐体100は、例えば、後方スペースBSの上方のスペースに設置される。この場合、第1位置は、換言すれば、先端部112を左右方向に向けた位置であり、第2位置は、換言すれば、先端部112を前方に向けた位置である。
【0099】
引き出し20において、背板22の高さは、扉21の高さよりも低い(図3参照)。筐体100は、背板22の上方のスペースに設置される。筐体100の一部は、例えば、引き出し20が収納位置にある状態において、背板22の一部の上方に位置する。また、筐体100の上端は、例えば、扉21の上端よりも下方に位置する(図3参照)。筐体100は、換言すれば、扉21の上端と背板22の上端との間の空間に配置される。
【0100】
また、筐体100の前端100fは、収納位置にある引き出し20の背板22の前面22fよりも後方に位置する。筐体100の前端100fは、例えば、収納位置にある引き出し20の背板22の前面22fよりも後方、かつ背板22の背面22bよりも前方に位置する。
【0101】
以上、説明したように、本実施形態に係るキャビネット2によれば、アーム110は、アーム本体140と、アーム本体140から回転軸116の延びる軸方向に突出した突起部142と、を有し、アーム110が第1位置にある状態において、突起部142の前端は、アーム本体140の前端よりも後方に位置し、アーム110は、アーム本体140及び突起部142のいずれかで引き出し20の背面部20bを押圧可能であることにより、引き出し20の背面部20bを押圧する手段をアーム本体140と突起部142とから選択することができる。すなわち、開放補助装置30を設置する空間が広い場合には、アーム本体140にて引き出し20の開放を補助することにより、アーム110と引き出し20の背面部20bとの間の距離を接近させ、引き出し20の押し出し量を稼ぐことができる。反対に、開放補助装置30を設置する空間が狭い場合には、突起部142にて引き出し20の開放を補助することにより、引き出し20の収納空間SSを確保するために引き出し20の背板22の後ろのスペースを狭くし、アーム本体140を設置できない場合でも、突起部142によって適切に引き出し20を押し出すことができる。従って、引き出し20の背板22の後ろのスペースが狭い場合でも広い場合でも引き出し20を適切に押し出すことができるキャビネット2及び開放補助装置30を提供することができる。これにより、例えば、キャビネット2及び開放補助装置30の使い勝手をより向上させることができる。
【0102】
また、キャビネット2では、突起部142が基端部114よりも先端部112に近い位置に設けられていることにより、突起部142の回転半径を大きくし、突起部142による引き出し20の押し出し量を大きくすることができる。
【0103】
また、キャビネット2では、突起部142が、軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面142aを有し、引き出し20の背面部20bを押圧する際に、曲面142aで背面部20bを押圧する。これにより、突起部142で背面部20bを押圧する際に、突起部142と背面部20bとの間に生じる摩擦を小さくし、引き出し20をスムーズに押し出すことができる。
【0104】
また、キャビネット2では、引き出し20の背板22の高さを、引き出し20の扉21の高さよりも低くし、筐体100を背板22の上方のスペースに設置することにより、引き出し20の高さ方向の収納空間SSを筐体100で圧迫してしまうことを抑制し、引き出し20の収納量の減少をより抑制しつつ、筐体100の設置スペースを確保することができる。
【0105】
また、キャビネット2では、筐体100の前端100fが、収納位置にある引き出し20の背板22の前面22fよりも後方に位置することにより、引き出し20の収納空間SSの後方に背の高い物品を収納した場合などにおいても、筐体100と物品との干渉を抑制することができる。従って、引き出し20の収納量の減少をより抑制し、使い勝手をより向上させることができる。
【0106】
図9は、実施形態に係るキャビネットの変形例を模式的に表す断面図である。
なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明を省略する。
図9に表したように、キャビネット2aは、上記実施形態のキャビネット2と同様に、上下に並べて設けられた一対の引き出し20と、一対の引き出し20に対応する一対の開放補助装置30と、を備えている。
【0107】
下段側の引き出し20に対応する開放補助装置30においては、上記実施形態と同様に、筐体100が、引き出し20の背面部20bの後方スペースBSに設置され、アーム110が、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する。
【0108】
一方、上段側の引き出し20に対応する開放補助装置30においては、筐体100が、後方スペースBSの下方のスペースに設置されている。上段側の引き出し20に対応する開放補助装置30において、アーム110は、筐体100の上方に設けられることにより、突起部142を後方スペースBSに設置する。この開放補助装置30は、上段側の開放補助装置30の上下を逆転させて取り付けることにより、実現可能である。
【0109】
このように、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧する場合、開放補助装置30の筐体100は、後方スペースBSの下方のスペースに設置してもよい。筐体100は、後方スペースBSの上方及び下方の一方のスペースに設置される。アーム110は、筐体100の上方及び下方の他方に設けられることにより、突起部142を後方スペースBSに設置する。
【0110】
アーム110が筐体100の上方に設けられる場合、突起部142は、アーム本体140の上方に設けられる。これにより、アーム110を筐体100の上方に設けた場合にも、突起部142が、アーム本体140よりも筐体100から離れた位置に設けられる。
【0111】
キャビネット2aは、内引き出し90をさらに備える。内引き出し90は、上方を開口させた開口箱状であり、上方を開放させた収納空間を有する。内引き出し90は、上段側の引き出し20の上方に設けられ、前後方向にスライド移動可能に固定枠体10に支持される。なお、内引き出し90は、引き出し20の上面に前後方向にスライド移動可能に支持されていてもよい。内引き出し90は、例えば、上段側の引き出し20の扉21の上端と背板22の上端との間の空間に配置される。
【0112】
このように、上段側の引き出し20の上方に内引き出し90などの他のスライド式の収納部をさらに設ける場合などには、開放補助装置30の筐体100を、後方スペースBSの下方のスペースに設置することが好ましい。これにより、内引き出し90などの他のスライド式の収納部の奥行を大きく取ることができ、他の収納部の収納空間を大きく確保し、使用者の使い勝手を向上させることができる。また、この際、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧することで、引き出し20の奥行も大きく取ることができ、使い勝手をより向上させることができる。
【0113】
図10は、実施形態に係るキャビネットの変形例を模式的に表す断面図である。
図10に表したように、キャビネット2bでは、天板11にシンク92が設けられている。換言すれば、この例において、キャビネット2bは、シンク92を備えたシステムキッチンである。
【0114】
シンク92は、天板11の上面から下方に凹むように凹状に形成され、固定枠体10の内部空間IS内に入り込んでいる。シンク92の少なくとも一部は、例えば、上段側の引き出し20の扉21の上端と背板22の上端との間の空間に配置される。
【0115】
シンク92には、シンク92内に流れた水を外部に排出するための配管93が接続されている。配管93は、引き出し20の後方に配置されている。換言すれば、キャビネット2bでは、引き出し20の後方のスペースが、配管93を挿通するための配管スペースとなっている。
【0116】
固定枠体10は、例えば、仕切り板94と、棚板95と、横桟96と、をさらに有する。仕切り板94は、底板12から上方に延びるとともに、左右方向に延びる板状である。仕切り板94は、配管スペースの前方側に配置され、配管スペースの少なくとも一部を隠蔽する。換言すれば、仕切り板94は、配管スペースの下部が前方に露出することを抑制する。
【0117】
棚板95は、左右方向及び前後方向に延びる板状である。棚板95は、仕切り板94の上端に接続されるとともに、裏板13の下端に接続される。これにより、固定枠体10は、内部空間ISの下部後方に仕切り板94と棚板95とで仕切られた矩形状の空間を形成する。固定枠体10は、例えば、仕切り板94と棚板95とで仕切られた空間内に、配管93から左右方向に延びる別の配管(図示は省略)を収容する。仕切り板94及び棚板95は、換言すれば、内部空間ISの下部後方において左右方向に延びる配管を隠蔽するための板である。仕切り板94及び棚板95は、内部空間IS内において左右方向に延びる配管の前方側及び上方側への露出を抑制する。
【0118】
横桟96は、内部空間IS内に設けられ、左右方向に延び、両端を一対の側板14に支持される。横桟96は、例えば、下段側の引き出し20と上段側の引き出し20との間に配置されている。
【0119】
下段側の引き出し20に対応する開放補助装置30は、底板12又は仕切り板94に設けられる。下段側の引き出し20に対応する開放補助装置30では、アーム110が、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する。
【0120】
一方、上段側の引き出し20に対応する開放補助装置30は、横桟96に設けられる。上段側の引き出し20に対応する開放補助装置30では、筐体100が、後方スペースBSの下方のスペースに設置され、アーム110が、筐体100の上方に設けられ、突起部142を後方スペースBSに設置することにより、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧する。
【0121】
このように、シンク92の少なくとも一部が、上段側の引き出し20の扉21の上端と背板22の上端との間の空間に配置される場合に、突起部142で引き出し20の背面部20bを押圧する。これにより、上段側の引き出し20の奥行を大きくし、引き出し20の収納量を大きくしてキャビネット2bの使い勝手を向上させることができる。
【0122】
なお、この例では、下段側の引き出し20に対応する開放補助装置30は、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧している。これに限ることなく、例えば、下段側の引き出し20に対応する開放補助装置30を横桟96などに設けることにより、突起部142で下段側の引き出し20の背面部20bを押圧してもよい。これにより、下段側の引き出し20の引き出し20の収納量も大きくでき、キャビネット2bの使い勝手をより向上させることができる。
【0123】
この例では、システムキッチンとして用いられるキャビネット2bを例に説明している。例えば、シンク92を洗面ボウルに置き換えることにより、洗面化粧台として用いられるキャビネットに、上記の構成を用いてもよい。
【0124】
図11は、実施形態に係る開放補助装置の変形例を模式的に表す斜視図である。
図12(a)~図12(c)は、変形例の開放補助装置におけるアームの動作を模式的に表す説明図である。
図12(a)は、アーム110が第1位置にある状態を模式的に表している。図12(b)は、アーム110が第1位置と第2位置との間の所定位置にある状態を模式的に表している。図12(c)は、アーム110が第2位置にある状態を模式的に表している。
【0125】
図11、及び図12(a)~図12(c)に表したように、開放補助装置30aでは、突起部142の端部が、アーム本体140の端部よりも先端部112側に突出している。これにより、開放補助装置30aでは、図12(c)に表したように、アーム110が第2位置にある状態において、突起部142の曲面142aの前端が、アーム本体140の前端よりも前方に位置する。
【0126】
開放補助装置30aにおいて、アーム110は、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する際に、図12(a)及び図12(b)に表したように、第1位置と所定位置との間においては、アーム本体140で背面部20bを押圧する。そして、アーム110は、図12(b)及び図12(c)に表したように、所定位置と第2位置との間においては、突起部142の曲面142aで背面部20bを押圧する。
【0127】
アーム本体140は、回転軸116の軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面部144を有する。アーム本体140は、図12(a)及び図12(b)に表したように、第1位置と所定位置との間において、曲面部144で背面部20bを押圧する。これにより、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する際に、背面部20bとアーム本体140との間に生じる摩擦を小さくし、引き出し20をスムーズに押し出すことができる。
【0128】
曲面部144は、例えば、回転軸116の軸方向を回転軸として回転するローラである。これにより、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する際に、背面部20bとアーム本体140との間に生じる摩擦をより小さくし、引き出し20をよりスムーズに押し出すことができる。
【0129】
なお、曲面部144の回転軸は、必ずしも回転軸116と平行でなくてもよい。曲面部144の回転軸は、回転軸116の軸方向に延びる成分を有していればよい。但し、曲面部144の回転軸を回転軸116と平行にすることにより、背面部20bを曲面部144で押圧する際に、ローラである曲面部144をスムーズに回転させ、背面部20bとアーム本体140との間に生じる摩擦をより小さくすることができる。
【0130】
曲面部144は、例えば、円柱状や円板状であり、円周面状の曲面を有する。ローラである曲面部144の形状は、円柱状や円板状に限ることなく、例えば、球状などでもよい。なお、曲面部144は、必ずしもローラでなくてもよい。曲面部144の形状は、回転軸116の軸方向を軸とする軸周りに曲がった曲面を有する任意の形状でよい。曲面部144の曲面は、円周面状に限ることなく、突起部142の曲面142aと同様に、回転軸116の軸方向を軸とする軸周りに曲がった任意の曲面でよい。
【0131】
また、開放補助装置30aでは、突起部142が、回転軸116の軸方向を回転軸として回転するローラである。ローラである突起部142の構成は、ローラである曲面部144の構成と同様であるから、詳細な説明は、省略する。
【0132】
なお、所定位置と第2位置との間において、突起部142の曲面142aで背面部20bを押圧する場合にも、突起部142は、必ずしもローラでなくてもよい。反対に、図6などに表した開放補助装置30のように、第1位置から第2位置までアーム本体140で背面部20bを押圧するアーム110の構成において、突起部142をローラとしてもよい。
【0133】
このように、開放補助装置30aでは、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する際に、第1位置と所定位置との間においては、アーム本体140で背面部20bを押圧することにより、回転半径の小さい部分で背面部20bを押圧することができ、先端部112側の突起部142で押圧する場合と比べて、比較的強い力で背面部20bを押圧することができる。回転し始めにおいては、停止している引き出しを押し出すために、比較的強い力が必要となる場合がある。このような場合に、上記のように、アーム本体140で背面部20bを押圧することにより、比較的強い力で引き出しを適切に押し出すことができる。さらに、アーム本体140で引き出し20の背面部20bを押圧する際に、所定位置と第2位置との間においては、突起部142の曲面142aで背面部20bを押圧することにより、回転半径の大きい部分で背面部20bを押圧することができ、適切な押し出し量を得られるとともに、突起部142と背面部20bとの間に生じる摩擦を小さくし、引き出し20をスムーズに押し出すことができる。
【0134】
また、開放補助装置30aでは、第1位置と所定位置との間において、曲面部144で背面部20bを押圧することにより、第1位置から所定位置まで背面部20bを押圧する際に、アーム本体140と背面部20bとの間に生じる摩擦を小さくし、引き出し20をスムーズに押し出すことができる。
【0135】
さらに、開放補助装置30aでは、突起部142が、回転軸116の軸方向を回転軸として回転するローラであることにより、突起部142で背面部20bを押圧する際に、突起部142と背面部20bとの間に生じる摩擦をより小さくし、引き出し20をよりスムーズに押し出すことができる。
【0136】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、キャビネット2や開放補助装置30などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0137】
2、2a、2b キャビネット、 10 固定枠体、 11 天板、 12 底板、 13 裏板、 14 側板、 15 補強部材、 17 スライドレール、 18 引き込み機構、 20 引き出し、 20b 背面部、 21 扉、 22 背板、 23 底板、 24 側板、 30、30a 開放補助装置、 40 レール部材、 42 可動部材、 44 バネ、 46 駆動ピン、 50 レール、 52 軸部、 53 軸部、 56 溝部、 60 始動スイッチ、 61 検知部、 70 電気接続手段、 71 電気接点、 72 電気接点、 73 信号線、 74 制御部、 75 電気配線、 80 電源ユニット、 81 電源線、 90 内引き出し、 92 シンク、 93 配管、 94 仕切り板、 95 棚板、 96 横桟、 100 筐体、 110 アーム、 112 先端部、 114 基端部、 116 回転軸、 120 駆動部、 140 アーム本体、 142 突起部、 142a 曲面、 144 曲面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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図12