(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ノズル又はパイプの補修方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/179 20060101AFI20231005BHJP
F16L 55/168 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16L55/179
F16L55/168
(21)【出願番号】P 2019138489
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光輝
(72)【発明者】
【氏名】藤井 暉也
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208565943(CN,U)
【文献】実開昭49-081224(JP,U)
【文献】特開平05-118491(JP,A)
【文献】実開昭62-138989(JP,U)
【文献】実開昭64-036793(JP,U)
【文献】特開2000-310388(JP,A)
【文献】特開2019-120379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/179
F16L 55/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が第1部材に取付けられ、他端に第2部材を備え又は他端が第2部材に連結するノズル又はパイプを補修対象物とし、
一対の半割れ筒部材を前記補修対象物に接触させることなく前記第1部材と前記第2部材とに架け渡すように取付け、前記一対の半割れ筒部材で前記補修対象物を覆い、
前記一対の半割れ筒部材と前記第1部材と前記第2部材とにより閉じた空間が形成されるように部材間の隙間を補修材で埋め
、
前記補修材が前記補修対象物に接触しないことを特徴とするノズル又はパイプの補修方法。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材は、フランジ、弁、配管、貯槽又は装置を含み、
前記補修対象物を覆う前記一対の半割れ筒部材の一端が前記第1部材に、前記一対の半割れ筒部材の他端が前記第2部材に接するように前記一対の半割れ筒部材を、固定具を介して前記第1部材又は前記第2部材に固定し、
前記隙間が、前記一対の半割れ筒部材と前記第1部材との隙間、前記一対の半割れ筒部材と前記第2部材との隙間、及び前記一対の半割れ筒部材間の隙間であることを特徴とする請求項1に記載のノズル又はパイプの補修方法。
【請求項3】
前記固定具が、前記一対の半割れ筒部材と着脱可能なバンド部材であることを特徴とする請求項2に記載のノズル又はパイプの補修方法。
【請求項4】
前記半割れ筒部材が、断面が円又は矩形のパイプを中心軸線を通るように長手方向に切断し得られる半割れパイプであり、
前記半割れパイプの一端を前記補修材を用い、前記半割れパイプの他端を固定具を用い、前記第1部材及び前記第2部材に固定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のノズル又はパイプの補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管等に取付けられ腐食あるいは損傷したノズル、パイプの補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所、化学プラント等では、配管を流れる流体中の異物を除去するためにストレーナを取付け、ストレーナの前後の圧力差(差圧)を検出しストレーナの閉塞を管理している。ストレーナの前後の差圧は、ストレーナの下流側及び上流側の配管に設けられた差圧検出用のノズルに差圧検出器を取付け検出されることが一般的である。
【0003】
差圧検出用のノズルは、長期間の使用により腐食が発生する。配管に直付けされているノズルが腐食した場合には、簡単に取り換えができないため修理により対応せざるを得ない。このようなノズルの補修には、当て板溶接による補修が多いが、配管が海水配管のように内面にライニング塗装が施されている場合には当て板溶接による補修は行えない。
【0004】
当て板溶接以外の補修方法としては、液状・パテ状の補修材又は接着材を用いた補修方法がよく知られており、これらを用いて配管を補修する具体的な方法もいくつか提案されている。例えば、半割リング状のシール材を嵌入した半割筒状のクランプ材を配管の欠陥部を覆うように取付け、それらが形成する内部空間内の空気を抜きながら充填材を充填する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また配管接続部の補修方法として、外壁材とバックアップ材とからなる補修具を配管接続部に巻付け、その周囲に一定の空間を形成し、そこに補修材を充填し、硬化させることで管接続部からの流体の漏れを防ぐ方法もある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-151292号公報
【文献】特開平11-63367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
配管に直付けされたノズルの根元部分が腐食している場合に、特許文献1に記載の方法でこの部分を補修するにはここに半割筒状のクランプ材を取付ける必要があるが、形状的にうまく取付けることができない。また配管に直付けされたノズルが短い場合には、先端部のフランジが邪魔となり、半割筒状のクランプ材をうまく取付けることができない。特許文献2に記載の方法も同様である。
【0008】
本発明の目的は、無理なく補修することができるノズル又はパイプの補修方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一端が第1部材に取付けられ、他端に第2部材を備え又は他端が第2部材に連結するノズル又はパイプを補修対象物とし、一対の半割れ筒部材を前記補修対象物に接触させることなく前記第1部材と前記第2部材とに架け渡すように取付け、前記一対の半割れ筒部材で前記補修対象物を覆い、前記一対の半割れ筒部材と前記第1部材と前記第2部材とにより閉じた空間が形成されるように部材間の隙間を補修材で埋め、前記補修材が前記補修対象物に接触しないことを特徴とするノズル又はパイプの補修方法である。
【0010】
本発明のノズル又はパイプの補修方法において、前記第1部材及び前記第2部材は、フランジ、弁、配管、貯槽又は装置を含み、前記補修対象物を覆う前記一対の半割れ筒部材の一端が前記第1部材に、前記一対の半割れ筒部材の他端が前記第2部材に接するように前記一対の半割れ筒部材を、固定具を介して前記第1部材又は前記第2部材に固定し、前記隙間が、前記一対の半割れ筒部材と前記第1部材との隙間、前記一対の半割れ筒部材と前記第2部材との隙間、及び前記一対の半割れ筒部材間の隙間であることを特徴とする。
【0011】
本発明のノズル又はパイプの補修方法において、前記固定具が、前記一対の半割れ筒部材と着脱可能なバンド部材であることを特徴とする。
【0012】
本発明のノズル又はパイプの補修方法において、前記半割れ筒部材が、断面が円又は矩形のパイプを中心軸線を通るように長手方向に切断し得られる半割れパイプであり、前記半割れパイプの一端を前記補修材を用い、前記半割れパイプの他端を固定具を用い、前記第1部材及び前記第2部材に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無理なく補修することができるノズル又はパイプの補修方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態のノズルの補修手順を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の第1実施形態のノズルの補修方法を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1実施形態のノズルの補修方法を適用する、補修対象物を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態のノズルの補修に使用する補修具の構成図である。
【
図5】本発明の第1実施形態のノズルの補修に使用する他の補修具の構成図である。
【
図6】本発明の第2実施形態のパイプの補修方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態のノズルの補修手順を示すフローチャートである。
図2は、本発明の第1実施形態のノズルの補修方法を説明するための図である。
図3は、本発明の第1実施形態のノズルの補修方法を適用する、補修対象物を説明するための図である。
図4は、本発明の第1実施形態のノズルの補修に使用する補修具の構成図、
図5は、本発明の第1実施形態のノズルの補修に使用する他の補修具の構成図である。
【0016】
本発明の第1実施形態のノズルの補修方法について、
図3に示す海水配管100に直接溶接付けされたノズル10を補修対象物として説明する。ノズル10は、海水配管100に設けられた海水ストレーナ(図示省略)の差圧を検出するためのものであり、口径が15mm程度の長さの短い金属製の配管からなる。ノズル10の一端11(基端部)は、海水配管100に直接溶接付けされ、他端(先端部)には弁20を接続するためのフランジ15を有する。
【0017】
フランジ15には、台座110に支持固定されたフランジ付きの弁20が接続する。弁20の先端には差圧検出器(図示省略)につながる導管25が接続する。本実施形態においてノズル10は、海水配管100との接続部である基端部11が腐食しているものとしてこのノズル10の補修方法を説明する。なお海水配管100は、内面にライニング塗装が施されており、当て板溶接補修等を行うことができない。
【0018】
ノズル10の補修には、以下に示すノズル補修具を使用する(
図4参照)。ノズル補修具は、一対の半割れパイプ31(31a、31b)と、半割れパイプ31を海水配管100に固定する固定具41と、隙間を埋める補修材51とを含む。
【0019】
一対の半割れパイプ31(31a、31b)は、ノズル10を覆う金属製の部材であり、同一形状・構造の半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとからなる。ここに示す半割れパイプ31a、31bは、本発明の半割れ筒部材の一態様であり、円筒パイプを中心軸線を通るように長手方向(軸方向)に切断し得られるものである。以下、半割れパイプ31aを中心に説明し、半割れパイプ31bについては、半割れパイプ31aと同一の構成に添え字bを付して説明を省略する。
【0020】
半割れパイプ31aは、内面の半径がフランジ15の半径と略同一であり、半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとでフランジ15の外周を隙間なく覆うことができる。半割れパイプ31aの長手方向(軸方向)の長さは、先端34aをフランジ15に被せたとき基端33aが海水配管100に接する長さである。半割れパイプ31aの基端33aは、海水配管100の外壁面102に沿うように形状加工されている。
【0021】
半割れパイプ31aの基端33a近傍には、固定具41であるバンドを取り付けるための金属製のバンド固定板35aが溶接付けされている。バンド固定板35aには、ボルトを挿通するための挿通孔36aが2つ設けられている。バンド固定板35aは、取付けたボルト61(
図2参照)の頭が海水配管100の外壁面102に接しないように、半割れパイプ31aの基端33aから少し先端34a側に寄った位置に取付けられている。
【0022】
固定具41は、半割れパイプ31を海水配管100に固定するためのものであり、一対の金属製のバンド部材42(42a、42b)からなる。バンド部材42aとバンド部材42bとは、基本的に同じ形状・構造からなる。以下、バンド部材42aを中心に説明し、バンド部材42bについては、バンド部材42aと同一の構成に添え字bを付して説明を省略する。
【0023】
バンド部材42aは、海水配管100と略同一の半径を有する円弧状のバンド本体43aを有する。バンド本体43aは、海水配管100の外周の約半分の長さを有し、先端に固定板44a、後端に連結部46aを備える。
【0024】
固定板44aは、半割れパイプ31aに取付けられたバンド固定板35aと略同一の板材であり、ボルト挿通孔45aを備える。連結部46aは、バンド本体42aに直交するよう設けられた板材であり、両サイドに補強板が取付けられている。連結部46aには、ボルト挿通孔48aが設けられている。
【0025】
バンド固定板35の半割れパイプ31に対する取付角度、及び固定板44のバンド本体43に対する取付角度は、半割れパイプ31とバンド部材42とを連結し、半割れパイプ31でノズル10を覆うようにバンド部材42を海水配管100に被せたとき、半割れパイプ31の先端34がフランジ15に接するように設定されている。これによりバンド部材42を海水配管100に被せたとき、ノズル10を無理なく覆うことができる。
【0026】
補修材51は、半割れパイプ31とバンド部材42とを連結し、半割れパイプ31でノズル10を覆うようにバンド部材42を海水配管100に被せたときにできる、半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとの隙間、半割れパイプ31とフランジ15との隙間、半割れパイプ31と海水配管外壁面102との隙間を埋めるものである。具体的には補修材51は、半割れパイプ31aの周方向における両端面と半割れパイプ31bの周方向における両端面との隙間、半割れパイプ31の先端34a、34bとフランジ15との隙間、及び、半割れパイプ31の基端33a、33bと海水配管外壁面102との隙間を埋める。このような補修材51には、塗布後、時間が経過すると硬化する硬化材(剤)、シーリング材(剤)、シール材(剤)、シーラントなどを使用することができる。
【0027】
本発明の第1実施形態のノズル10の補修要領について説明する。本実施形態では、海水配管100が本発明の第1部材、フランジ15が本発明の第2部材に該当する。
図1及び
図2に示すように第1ステップ(ステップS1)としてフランジ15と弁20とを接続するボルト21の頭とフランジ15との接触部の周りに補修材51を塗布する。これはノズル10が腐食し、海水が漏洩したときフランジ15のボルト穴を通じて外部に海水が漏洩することを防ぐためである。
【0028】
次に、一対の半割れパイプ31と一対のバンド部材42とを連結する(ステップS2)。具体的には、半割れパイプ31aの基端33aに設けられたバンド固定板35aと、バンド部材42aの先端に設けられた固定板44aとを重ね合せ、2カ所のボルト挿通孔36a、45aにボルト61を挿通しナット62で締め付け、半割れパイプ31aとバンド部材42aとを連結する。もう一方の半割れパイプ31bとバンド部材42bも同様である。ステップS1とステップS2の順番は入れ替わってもよく、ステップS1は、ステップS3の後に実施してもよい。
【0029】
次に、半割れパイプ31と連結されたバンド部材42を、上下からノズル10を挟みこむように海水配管100に被せ、それぞれの半割れパイプ31a、31bの先端34a、34bがフランジ15に接するように、かつ上下の半割れパイプ31a、31bの基端33a、33bが海水配管外壁面102に接するように位置合わせを行う。この状態で半割れパイプ31a、31bの基端33a、33bが海水配管外壁面102に接する位置にマーキングをする(ステップS3)。
【0030】
マーキングを行った後、半割れパイプ31と連結されたバンド部材42を取り去り、海水配管外壁面102のマーキングを行った部分及びその周辺に補修材51を塗布する。またフランジ15の外周面にも補修材51を塗布する(ステップS4)。フランジ15の外周面に塗布した補修材51は、隙間を埋める充填剤であるとともにフランジ15に半割れパイプ31を接着させる接着剤としても機能する。
【0031】
ステップS4において、マーキング部分に補修材51を塗布するのは、半割れパイプ31と連結されたバンド部材42を海水配管100に固定した後からでは、半割れパイプ31の基端33と海水配管外壁面102との隙間に補修材51を塗布することが難しいことによる。半割れパイプ31と連結されたバンド部材42を海水配管100に固定した後であっても、半割れパイプ31の基端33と海水配管外壁面102との隙間を埋めるように補修材51を塗布することができるのであればこの工程は省略してもよい。フランジ15の外周面に塗布する補修材51も同様である。
【0032】
再度、半割れパイプ31と連結されたバンド部材42を海水配管100に被せ、それぞれの半割れパイプ31a、31bの先端34a、34bがフランジ15に接するように、かつ半割れパイプ31a、31bの基端33a、33bが海水配管外壁面102に接するように取付ける(ステップS5)。
【0033】
この状態で上下のバンド部材42a、42bの連結部46a、46bを連結ボルトで連結し、半割れパイプ31が連結された一対のバンド部材42を海水配管100に固定する(ステップS6)。この状態で半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとがほぼ隙間なく接触し、半割れパイプ31の先端34がほぼ隙間なくフランジ15を覆っていれば、各所の隙間を埋めるように補修材51を塗布する(ステップS7)。補修材51は、部材間の隙間から液体が外部に漏洩しないように液密可能に塗布する。
【0034】
一方、半割れパイプ31が連結された一対のバンド部材42を海水配管100に固定したとき、半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとの間、あるいは半割れパイプ31の先端34とフランジ15外周面との間に大きな隙間があれば、針金等を用いて隙間を閉じるのがよい。針金等を用いて隙間を閉じる行為は、連結ボルトで上下のバンド部材42a、42bを連結するに先立ち行ってもよい。
【0035】
本発明の第1実施形態のノズル10の補修方法における行為は、上記ステップS1~ステップS7で完了する。以降、ステップS7で塗布した補修材51が硬化すればノズル10の補修は完了である。
【0036】
次に、
図5を用いてノズル10の補修に使用する他の補修具について説明する。
図5に示す補修具は、
図4に示す補修具と比較して半割れパイプ32(32a、32b)のみが異なる。ここでは半割れパイプ32が、本発明の半割れ筒部材に該当する。
図5に示す補修具において、
図4に示す補修具と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図5に示す半割れパイプ32は、両側面にフランジ38(38a、38b)を備える点が
図4に示す半割れパイプ31と異なる。フランジ38には、ボルト挿通孔39(39a、39b)が設けられているため、これを用いて半割れパイプ32aと半割れパイプ32bとを接続することができる。このようなフランジ付き半割れパイプ32は、互いを安定的に接続することができる。
【0038】
半割れパイプ32の使用方法は、第1実施形態の半割れパイプ31と基本的に同じである。ステップS5において半割れパイプ32と連結されたバンド部材42を海水配管100に取付け、ステップS6において上下のバンド部材42a、42bの連結部46a、46bを連結ボルトで連結し、半割れパイプ32が連結された一対のバンド部材42を海水配管100に固定する。
【0039】
半割れパイプ32aのフランジ38aと半割れパイプ32bのフランジ38bとの接続は、ステップS5の後、ステップS6に先立ち行っても、ステップS6の後、ステップS7の前に実施してもよい。半割れパイプ32aのフランジ38aと半割れパイプ32bのフランジ38bとの接続は、フランジ38aとフランジ38bとの間にガスケットを介装させるか、補修材51を塗布し、この部分から海水が漏洩しないようにする。
【0040】
第1実施形態の半割れパイプ31は、両端部がそれぞれ海水配管外壁面102及びフランジ15に接するように取付けられるのでぐらつくことなく安定して固定することができる。一方、半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとの接続は、補修材51を用いて行われる。このため半割れパイプ31の長手方向(軸方向)の長さが長い場合には、半割れパイプ31にねじれ、撓みなどの変形が生じ、半割れパイプ31aと半割れパイプ31bとを接続する補修材51に無理な力が加わり、補修材51にクラックが入る恐れがある。補修対象物の長手方向(軸方向)の長さ及び周囲の状況に応じて、フランジなし半割れパイプ31とフランジ付き半割れパイプ32とを適宜選択して使用するのがよい。
【0041】
図6は、本発明の第2実施形態のパイプ12の補修方法を説明するための図である。
図6に示すパイプ12は、左右2つの装置120、150をつなぐパイプであり、該パイプ12が補修対象物である。パイプ12は、一端13が貯槽120の側面122に設けられた直方体の突起124に直付けされ、他端が装置150に直付けされている。突起124と装置150との横断面の大きさ、形状は同一である。本実施形態では、突起124が本発明の第1部材、装置150が本発明の第2部材に該当する。
【0042】
第2実施形態のパイプ12の補修方法は、基本的に第1実施形態のノズル10の補修方法と同じであり、一対の半割れ筒部材40(40a、40b)と補修剤51とを用いて行う。一対の半割れ筒部材40(40a、40b)は、第1実施形態の一対の半割れパイプ31(31a、31b)に対応し、補修剤51は、第1実施形態で説明したものと同じものを使用することができる。本実施形態では、半割れ筒部材40が本発明の半割れ筒部材に該当する。
【0043】
一対の半割れ筒部材40の断面は、突起124及び装置150の横断面に対応しコ字状であり、半割れ筒部材40aと半割れ筒部材40bとを突き合わせた状態で突起124及び装置150の横断面をほぼ隙間なく覆うことができる。本実施形態では、突起124及び装置150の横断面と略同一の内寸法の角パイプが市販されていないため、板材を折り曲げ加工し、又は複数の板材を溶接し一対の半割れ筒部材40を得ている。
【0044】
本実施形態では、一対の半割れ筒部材40を突起124と装置150とに架け渡すように取付けることができるので、第1実施形態で使用したバンド部材42を必要としない。但し、第1実施形態と同様にバンド部材42を介して一対の半割れ筒部材40を貯槽120に固定してもよい。
【0045】
パイプ12の補修要領を説明する。一対の半割れ筒部材40a、40bの両端部の裏面に補修剤51を塗布し、左右から突起124及び装置150に架け渡すように取付ける。一対の半割れ筒部材40a、40bを突起124及び装置150に対して左右から被せるように取付けるのは、上下方向から被せるのに比較して被せた一対の半割れ筒部材40a、40bが落ち難いためである。必要に応じて針金等を用いて一対の半割れ筒部材40a、40bを突起124及び装置150に固定する。
【0046】
次に、第1実施形態のノズル10の補修と同様に、半割れ筒部材40と突起124との隙間、半割れ筒部材40と装置150との隙間、半割れ筒部材40aと半割れ筒部材40aとの隙間を補修剤51で埋めるように塗布する。
【0047】
以上、第1実施形態のノズルの補修方法及び第2実施形態のパイプの補修方法を用いて説明したように本発明のノズル又はパイプの補修方法は、補修対象物であるノズル、パイプを覆うように一対の半割れ筒部材を、補修対象物の両端がそれぞれ接続する配管、突起等の第1部材、フランジ、装置等の第2部材に掛け渡し、各部材間の隙間を補修剤で埋めることで閉じた空間を形成し、この閉じた空間内に補修対象物であるノズル、パイプを置くものである。このため配管、貯槽、装置などに直付けされたノズル、あるいはフランジ付きの短管のような形状が複雑なノズルあるいはパイプであっても無理なく補修することができる。
【0048】
このような補修方法は、ノズル又はパイプの腐食が進行し、ノズル又はパイプから海水等の液体が漏洩しても、漏洩した液体は閉じた空間内に留まり外部に漏洩することはない。また液体の漏洩量が多くなり、閉じた空間内の圧力が配管、装置等の第1部材又は第2部材の圧力と同一となるか、閉じた空間内に液体が満たされれば、ノズル又はパイプからの液体の漏洩は自然と止まる。
【0049】
本発明のノズル又はパイプの補修方法は、補修を行うに際して補修対象物を取外す必要がないため現場で容易に補修することができる。また補修に使用する補修具が金属製であるものの溶接を必要としないため幅広い補修対象物に適用することができる。
【0050】
補修対象物であるノズル、パイプに一対の半割れ筒部材を直接取り付け、また補修剤を塗布すると、ノズル、パイプに無理な荷重、あるいは予想外の荷重が加わりノズル、パイプが腐食箇所を起点に破損し、あるいは亀裂が生じる場合もある。これに対して本補修方法は、一対の半割れ筒部材及び補修剤が補修対象物であるノズル、パイプに直接接触しないので、ノズル、パイプに荷重、負荷が加わらず、破損、亀裂発生の恐れがない。
【0051】
また本補修方法は、一対の半割れ筒部材がノズル又はパイプのカバー、さらにはノズル又はパイプの補強材として機能するため、腐食しているノズル又はパイプの保護の点からも好ましい補修方法といえる。
【0052】
本発明に係るノズル又はパイプの補修方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。第1実施形態では海水配管に取付けられたノズルを、第2実施形態では貯槽の突起に取付けられたパイプを補修対象物としたが、補修対象物は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係るノズル又はパイプの補修方法における補修対象物は、一端が第1部材に取付けられ、他端に第2部材を備え又は他端が第2部材に接続するノズル又はパイプであればよく、第1部材及び第2部材としてはフランジ、弁、配管、貯槽又は装置が挙げられる。
【0053】
第1実施形態では、補修具として半割れパイプの他に、フランジ付きの半割れパイプを示したが、フランジ付きの半割れパイプは、第2実施形態の半割れパイプにも適用することができる。
【0054】
上記実施形態では半割れ筒部材として、第1実施形態に断面が半円状の半割れパイプ及びフランジ付き半割れパイプ、第2実施形態に断面がコ字状の半割れ筒部材を示したが、本発明において半割れ筒部材の断面形状は、半円、コ字状に限定されるものではない。半割れ筒部材の断面形状は、半割れ筒部材を架け渡す第1部材及び第2部材の断面形状に対応したものであればよく、第1部材及び第2部材の断面形状が長穴、六角形等であってもよい。また半割れ筒部材の両端の断面形状が異なっていてもよい。
【0055】
第1実施形態の一対の半割れパイプは、2つの半割れパイプが同一であり、また第2実施形態の一対の半割れ筒部材においても2つの半割れ筒部材が同一である。本発明のノズル又はパイプの補修方法において、一対の半割れ筒部材は、構成する2つの半割れ筒部材が同一であることを基本とするが、2つの半割れ筒部材で第1部材及び/又は第2部材を隙間なく覆うことができれば2つの半割れ筒部材の大きさ、形状が異なっていてもよい。
【0056】
一対の半割れ筒部材の製作要領は特に問われない。よって第1実施形態の半割れパイプは、板材を断面が半円状となるように曲げ加工し得たものであってもよい。一方、一対の半割れパイプの場合、元材料に市販の円筒パイプ(配管)を使用すれば容易に製作することができる。第2実施形態のように一対の半割れ筒部材を取り付ける第1部材及び第2部材の断面形状が矩形であっても、市販の角パイプが使用できるのであればそれを利用することで容易に半割れ筒部材(半割れパイプ)を得ることができる。
【0057】
図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0058】
10 ノズル
11 基端部,接続部
12 パイプ
15 フランジ
20 弁
31、31a、31b 半割れパイプ
32、32a、32b 半割れパイプ
33、33a、33b 基端
34、34a、34b 先端
40、40a、40b 半割れ筒部材
42、42a、42b バンド部材
43a、43b バンド本体
51 補修材
100 海水配管
120 貯槽
150 装置