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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/00 20180101AFI20231005BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20231005BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01G9/00 C
A01G9/02 B
B65G1/04 555A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020006681
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112156
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000245830
【氏名又は名称】矢崎化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】本田 雄三
(72)【発明者】
【氏名】水尻 壽嗣
(72)【発明者】
【氏名】萩原 信吾
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210185(JP,A)
【文献】特開2014-117195(JP,A)
【文献】特開2019-135932(JP,A)
【文献】特開平9-275810(JP,A)
【文献】特開平8-172950(JP,A)
【文献】実開昭57-167657(JP,U)
【文献】特開2002-176856(JP,A)
【文献】特開2020-10622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00
A01G 9/02
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動自在な複数のトレーが多段式の栽培棚に搬出入され、前記トレーに栽培容器を載置して栽培する栽培システムであって、
a)前記個々のトレーは、隣接するトレー同士で着脱自在に複数連結されてトレーの列を作り、栽培レーン及びストレージレーン上に保持されること、
b)前記多段式の栽培棚には、栽培容器が載置されたトレーが搬出入される前記栽培レーンと、栽培容器が取り去られた空トレーが前記栽培レーンの直下位置で搬出入される前記ストレージレーンとが一対で1段とされ、それが複数段設けられていること、
c)前記栽培棚の一側面に隣接して設けられた供給装置内でトレーが、前記供給装置の昇降部の上下動でトレーの列に連結すること又はトレーの列から連結解除が行われ、当該トレーが所望位置の栽培レーン又はストレージレーンに搬出入自在であること、
d)移載装置が前記供給装置を挟んで栽培棚の反対側に配置され、前記移載装置は、供給装置内の所定位置のトレー上へ、隣接する栽培容器供給棚から取り出した栽培容器を載置可能に、及び/又は供給装置内の所定位置のトレー上から前記栽培容器を取り出して、前記栽培容器供給棚に載置可能に構成されていることを特徴とする、栽培システム。
【請求項2】
前記供給装置は、トレーを水平方向に移動させる搬出入部と、前記トレーを上下方向に移動させる昇降部とで成り、前記昇降部は、昇降テーブルが設けられていると共に、当該昇降テーブル自体を他の各段の位置に上下移動させる第一昇降部と、昇降部内で昇降テーブルを僅かに上下させる第二昇降部とを備え、前記第二昇降部により、1つの段のストレージレーンと栽培レーン間を上下動させて、トレーの連結又は連結解除を行うことを特徴とする、請求項1に記載した栽培システム。
【請求項3】
前記供給装置の搬出入部は、掴み部と進退部とで成り、栽培棚方向に進退する前記進退部の進退装置が前記昇降部の昇降テーブルに設けられ、かつ前記掴み部の基台が前記進退装置に設けられ、前記掴み部基台に設けた垂直方向に伸縮する伸縮装置により、中央を回転可能に軸支された掴み片の端部を上下して、前記トレーの側方凹部を掴み又は解放し、前記進退装置により掴み部基台を前後に進退してトレー列を栽培棚へ搬出入することを特徴とする、請求項1又は2に記載した栽培システム。
【請求項4】
前記移載装置には、両側の水平方向に伸縮し栽培容器を吊り下げ自在な吊り下げ腕部を備えた吊り下げテーブルと、所定位置で前記吊り下げ腕部を僅かに上下させる第二昇降部が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一に記載した栽培システム。
【請求項5】
前記移載装置には、前記吊り下げテーブルを他の段部位置に上下移動させる第一昇降部が設けられていることを特徴とする、請求項4に記載した栽培システム。
【請求項6】
前記移載装置の吊り下げ腕部には吊下げ具が設けられ、前記吊り下げ腕部の水平方向の伸縮動作により、栽培容器の開口部周りのフランジ下部に前記吊り下げ具を進入させて当該栽培容器を吊り下げ移動する構成であることを特徴とする、請求項4又は5に記載した栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培レーンとストレージレーンとの上下一対を一段とした多段式の栽培棚であって、トレー上に栽培容器を載置して、各栽培レーンを搬出入する移動可能な複数の前記トレーを連結し、列を構成させて栽培する栽培システムの技術分野に属し、さらに言えば、栽培棚の所望レーンにおけるトレーの連結と連結の解除を伴って各レーンへの搬出入を栽培棚の一側面側に設けた一つの供給装置でスムーズに行ない、各段の栽培レーンの栽培容器を取り出した収穫後の空トレーを対のストレージレーンに保管する栽培システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多段式の栽培システムに関連ある技術として、例えば特許文献1は、上下の各段間をパレット単位で順次循環移動させる栽培装置であって、一側面側の第1の駆動部で連結されていないパレットの引き出し又は押し出しを実施し、押し出す側の対面側に、引き出す又は受け取る第2の駆動部を設けた多段の植物栽培装置が開示されている。
また、特許文献2には、培養器を一方の端部側から水平方向に第1の装置で押して他方の端部に向けて当接させて培養槽内をスライドさせる多段栽培装置であって、受け取る第2の装置を設けた多段の培養システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5465770号公報
【文献】特許第6272655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載の植物栽培容器の収容パレットや、特許文献2に記載の培養器は、それぞれが連結されていないから、その個々を移動させるのに栽培棚の両側に搬入装置か搬出装置が必要となり、それを設置するスペースも必要になる。
また、特許文献1は、上下を循環移動させる栽培装置であるので、植物栽培容器を取り除いた後の空収容パレットは循環を担うレーン上に残り、空収容パレットのみの収容レーンがないため、栽培棚の栽培有効範囲を空収容パレットが占めることとなり栽培効率が悪い。
更に、多段における目的の段の収穫を実施する際に、他の段の栽培容器の移動を強いると、これまで最適な栽培環境を整えてきたにも拘わらず、移動して育てる環境が変わることから品質低下を招き、芳しくない(ここでの環境とは、湿度温度の好適条件、人工光の条件、呼吸循環条件等をいう)。
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記の課題を鑑みてなされたもので、栽培レーンとストレージレーンとの上下一対を一段とした多段式の栽培棚として、空のトレーを保管するレーンを設け、更に、隣接するトレー同士を連結したトレーの列を、棚の一側面側に設ける一つの供給装置でスムーズに各レーンへの搬出・搬入をするようにして、従来よりコンパクトな装置で、高品質な生産と栽培効率を高めた栽培システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る栽培システムは、移動自在な複数のトレー3が多段式の栽培棚1に搬出入され、前記トレー3に栽培容器2を載置して栽培する栽培システムであって、
a)前記個々のトレー3は、隣接するトレー3同士で着脱自在に複数連結されてトレー3の列を作り、栽培レーンA及びストレージレーンB上に保持されること、
b)前記多段式の栽培棚1には、栽培容器2が載置されたトレー3が搬出入される前記栽培レーンAと、栽培容器2が取り去られた空トレー3(K)が前記栽培レーンAの直下位置で搬出入される前記ストレージレーンBとが一対で1段とされ、それが複数段設けられていること、
c)前記栽培棚1の一側面に隣接して設けられた供給装置5内でトレー3が、前記供給装置5の昇降部53の上下動でトレー3の列に連結すること又はトレー3の列から連結解除が行われ、当該トレー3が所望位置の栽培レーンA又はストレージレーンBに搬出入自在であること、
d)移載装置6が前記供給装置5を挟んで栽培棚1の反対側に配置され、前記移載装置6は、供給装置5内の所定位置のトレー3上へ、隣接する栽培容器供給棚7から取り出した栽培容器2を載置可能に、及び/又は供給装置5内の所定位置のトレー3上から前記栽培容器2を取り出して、前記栽培容器供給棚7に載置可能に構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した栽培システムにおいて、前記供給装置5は、トレー3を水平方向に移動させる搬出入部50と、前記トレー3を上下方向に移動させる昇降部53とで成り、前記昇降部53は、昇降テーブル53aが設けられていると共に、当該昇降テーブル53a自体を他の各段の位置に上下移動させる第一昇降部S1と、昇降部53内で昇降テーブル53aを僅かに上下させる第二昇降部S2とを備え、前記第二昇降部53aにより、1つの段のストレージレーンBと栽培レーンA間を上下動させて、トレー3の連結又は連結解除を行うことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した栽培システムにおいて、前記供給装置5の搬出入部50は、掴み部51と進退部52とで成り、栽培棚1方向に進退する前記進退部52の進退装置52aが前記昇降部53の昇降テーブル53aに設けられ、かつ前記掴み部51の基台51aが前記進退装置52aに設けられ、前記掴み部基台51aに設けた垂直方向に伸縮する伸縮装置51bにより、中央を回転可能に軸支された掴み片51cの端部を上下して、前記トレー3の側方凹部33を掴み又は解放し、前記進退装置52aにより掴み部基台51aを前後に進退してトレー列3を栽培棚1へ搬出入することを特徴とする、請求項1又は2に記載した栽培システム。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項1~請求項3のいずれか一に記載した栽培システムにおいて、前記移載装置6には、両側の水平方向に伸縮し栽培容器2を吊り下げ自在な吊り下げ腕部61を備えた吊り下げテーブル60と、所定位置で前記吊り下げ腕部61を僅かに上下させる第二昇降部S4が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した栽培システムにおいて、前記移載装置6には、前記吊り下げテーブル60を他の段部位置に上下移動させる第一昇降部S3が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載した発明は、請求項4又は5に記載した栽培システムにおいて、前記移載装置6の吊り下げ腕部61には吊下げ具62が設けられ、前記吊り下げ腕部61の水平方向の伸縮動作により、栽培容器2の開口部周りのフランジ下部20に前記吊り下げ具62を進入させて当該栽培容器2を吊り下げ移動する構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る栽培システムによれば、以下の効果を奏する。
(1)栽培容器を取り去った空トレーをストレージレーンに収容でき、少スペースで保管できるので、栽培する場所である栽培レーンを空トレーが占めることがなく、多段栽培棚の栽培効率が向上される。よって、空間効率が良くなって、従来と比較して有効な栽培レーンの数を増やすことができる。
(2)複数のトレーは着脱自在に連結してトレーの列として一体となり、栽培棚の一側面側で、栽培容器を乗せたトレー又は空トレーの搬出入が行えるから、設置スペースをコンパクトに出来る。すなわち、一つの供給装置だけが必要な栽培システムとなり、システム構築設備投資の抑制に寄与する。
(3)同一レーンの同一場所のトレーで栽培を続行するので、最適好条件な設定を保ち易く、環境を変えることなく育成から収穫まで管理をすることができ、安定して高品質な植物の生産が実現される。
(4)供給装置を挟んで栽培棚の反対側に配置された移載装置により、供給装置内の所定位置のトレー上へ栽培容器供給棚から取り出した栽培容器を載置でき、及び/又は供給装置内の所定位置のトレー上から栽培容器を取り出して栽培容器供給棚に載置でき、供給装置を介した栽培容器の搬入と搬出をスムーズに行えて作業効率の向上が図られる。
(5)供給装置の昇降部が、昇降テーブル自体を他の各段の位置に上下移動させる第一昇降部のほか、昇降部内で昇降テーブルを僅かに上下させる第二昇降部を備え、その第二昇降部により1つの段のストレージレーンと栽培レーン間を上下動させてトレーの連結や連結解除を行うので、昇降位置を正確かつ安定的に位置決めできる利便性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の栽培システムの全体構成を示した正面図である。
図2図1において、作動状況を示した一部省略説明図である。
図3】本発明の栽培システムにおいて、(A)はトレーに車輪があるタイプの栽培棚、(B)はレーンに車輪があるタイプの栽培棚をそれぞれ示した側面図である。
図4】多段式の栽培棚を示した斜視図である。
図5】栽培棚と供給装置の使用態様を示した正面図である。
図6図5の平面図である。
図7】供給装置を示した側面図である。
図8】移載装置を示した側面図(A)と正面図(B)である。
図9】(A)は車輪があるトレー、(B)は車輪がないトレーの連結と解除要領をそれぞれ示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に栽培システムの実施形態を、図面にしたがって説明する。
本実施形態の栽培システムは、転動する車輪8を持つ移動自在なトレー3が複数連結されてトレー3の列を作り、多段式の栽培棚1の後述する栽培レーンAやストレージレーンBに搬入又は搬出(以下、搬出入ともいう。)され、前記トレー3に栽培容器2を載置して植物を栽培するシステムである。
【0015】
この栽培システムで実施される個々のトレー3は、ガス射出成形で作られて十分な剛性を有した、嵌合部で連結可能な台車板を転用しており、図9Aに示したように、四角い平板状(奥行×幅寸は、924×460mm程度)で、その一方の一辺の両端にT字状に突設された嵌合雄部30、30が2箇所、前記一方の一辺に対向する他方の一辺の両端に前記嵌合雄部30、30が各々嵌り合う大きさ・形状で切欠されたあり溝状の被嵌合雌部31、31が2箇所形成されている。この様な形状であるから後述する供給装置5の昇降部53の上下する動作により、隣り合う位置のトレー3、3の前記嵌合雄部30と前記被嵌合雌部31とが嵌め合って連結が出来又は嵌め合いが外れて連結を解除することがスムーズに行える。各辺の中央近傍には、後述する搬出入部50の掴み部51(掴み片51c)が掴まれる凹部33が形成されている。
個々のトレー3の進行方向に対する両サイドには、それぞれ複数の車輪8が設けられたアングル部材35が取付金具34で取り付けられており、この車輪8付きトレー3が複数連結されてトレー3の列を作り、後述の栽培レーンA又はストレージレーンB上で一体となった状態で転動可能に保持される。
また、図9Bに例示のトレー3には車輪8を設けないで、図3Bに示したように栽培レーンA及びストレージレーンB側に車輪9を設けて実施することも行われる。つまり、コンベア状の車輪9付きの栽培レーンA及びストレージレーンB上を、複数連結されたトレー3が移動する実施形態も採用可能である。尚、前記トレー3は、専用トレーとして成形品で新規なものを作成しても良い。
【0016】
栽培棚1について説明する。この多段式の栽培棚1の基本構造は、図4に示したように、2本の起立する柱部材11、11と、各柱部材11、11間に上下でそれぞれ架け渡される奥行部材12、12とにより、両サイドで開口する側面枠体10、10が形成されている。そして、前記両サイドの側面枠体10、10が、上下の各端部で長尺物の横部材13により接続されて骨格をなしている。前記の各部材10、11、12は、それぞれ鋼管の外周面に合成樹脂を接着被覆して成るパイプで好適に実施される。
栽培レーンAは、栽培容器2を載置したトレー3を搬出入するもので、前記両サイドの側面枠体10、10に架け渡された前後一対の水平な鋼管の外周面に合成樹脂を接着被覆して成る横パイプ4、4(その各長さは約4,000mm程度)で構成されている。
ストレージレーンBは、収穫後で栽培容器2が取り去られた空トレー3(K)を搬出入するもので、前記空トレー3(K)が搬出入されるに必要かつ十分な間隔H(この間隔Hは、例えば80mm程度)をあけた前記栽培レーンAの直下位置に、前記栽培レーンAと同じ前記両サイドの側面枠体10、10に架け渡された前後一対の水平な横パイプ4、4で構成されている。このように、トレー3の厚みがそれ程厚くないから、保管に栽培棚内の容積を占有せず、循環させる栽培棚の場合には、栽培レーンAと同じ容積を占有するから、栽培効率を良く出来る。
なお、図3図4に示した本実施例では、上側の栽培レーンAとその直下に位置するストレージレーンBとが一対の1段とすると、7段で構成されている。しかし、その段数はこの限りではない。簡易バージョンの栽培システムとし、図1図2及び図5図7の図示例はその段数を2段にした実施例で以下に説明する。
【0017】
供給装置5について説明する。この供給装置5は、図5図7に示したように、トレー3を水平方向に移動させる搬出入部50と、前記トレー3を上下方向に移動させる昇降部53とで基本的に構成されている。合成樹脂被覆鋼管で成るパイプで構成された各部材54、55、56、57と各種継手を組み合わせた左右一対のパイプ枠組構造体の内側に、搬出入部50と昇降部53が設けられている。すなわち、4本の柱部材54に奥行き部材55と横部材56を接続して組み立てて立設するパイプ枠組構造体が、平面方向からみた図6に図示のように左右一対で配置され、懸架部材57(奥行き部材)で接続されている。その左右一対のパイプ枠組構造体の間隔は、トレー3が侵入できるように同トレー3の奥行方向長さが十分に確保された長さとされている。なお、この供給装置5は前記栽培棚1とパイプ連結部材40で接続されて相互の位置を固定する。
前記昇降部53は、柱部材54に対し上下方向にスライド移動自在に支持された第一昇降部材S1と第二昇降部S2とを備えている。前記第一昇降部S1に接続されたベルトTが、天井部の横部材56に回転軸58で軸支された2つの回転スプロケット59、59に架け渡され、その下方に垂下して伸びた他端(下端)に昇降テーブル53aが接続して昇降可能に支持されている。この昇降テーブル53aは、水平方向に突き出す前記トレー3が1個分は載る大きさに形成されている。この第一昇降部S1により、昇降テーブル53a自体が他の各段の位置に上下移動される。なお、本実施例では前記第一昇降部S1は手動で作動させてクランプS1aで柱部材54に押圧して、各段の位置に昇降テーブル53aを合わせるが、天井部の前記回転スプロケット59を動力で回転させて実施すれば、動力で昇降部53を昇降させることもできる。
第二昇降部S2は、図7に示したように、スライドテーブルが上下方向にスライド自在なロッドレスシリンダで成り、昇降部53の内側で、かつ昇降テーブル53aの外側がロッドレスシリンダのスライドテーブルS2aに固定されて設置され、昇降部53内で昇降テーブル53aを僅かに(1つの段のストレージレーンBと栽培レーンA間で)上下可能に構成されている。つまり、この第二昇降部S2によって、1つの段のストレージレーンBと栽培レーンA間を上下動させて、トレー3の連結又は連結解除が行われる仕組である。
【0018】
搬出入部50は、掴み部51と進退部52とで成り、前記昇降テーブル53aと一緒に昇降するように、栽培棚1に対向する中央近傍の当該昇降テーブル53aの基端位置に設けられている。栽培棚1方向に進退する前記進退部52の進退装置52aが前記昇降部53の昇降テーブル53aに設けられ、かつ前記掴み部51の基台51aが前記進退装置52aに接続されて進退自在に設けられている。前記掴み部基台51aに設けた垂直方向に伸縮する伸縮装置51bたるシリンダにより、中央を回転可能に軸支された掴み片51cの端部を上下して、前記トレー3の側方凹部33を掴み又は解放することができる構成である。よって、前記進退装置52aにより掴み部基台51aを前後に進退してトレー列3を水平方向に動かし栽培棚1へ搬入し又は搬出する。
したがって、前記栽培棚1の一側面の側面枠体10に隣接して設けた当該供給装置5内の前記昇降テーブル53a上に載せられた個々のトレー3を、トレー列に対し連結すること又はその解除を行うと共に、一列状に連結された所望数のトレー3を、栽培棚1の栽培レーンAやストレージレーンBに送り込んで搬入でき、或いは引っ張り出して搬出することができる。
【0019】
移載装置6について説明する。本実施例の移載装置6は、図1図2に示したように、前記供給装置5を挟んで栽培棚1の反対側に配置されており、供給装置5内の所定位置のトレー3上へ、隣接する栽培容器供給棚7から取り出した栽培容器2を載置することができる。と共に、供給装置5内の所定位置のトレー3上から前記栽培容器2を取り出して、前記栽培容器供給棚7に載置することができる構成となっている。なお、栽培容器供給棚7も、作業員が図示を省略したコンベア上で動かして栽培容器2を供給、搬出するが、駆動式のコンベア等で自動化することも可能である。
この移載装置6の基本構造は、図8に示したように、合成樹脂被覆鋼管で成るパイプで構成された各部材63、64、65、66と各種継手を組み合わせたパイプ枠組構造体である。すなわち、平面枠組のベース部材63に立設した4本の柱部材64に、横部材66と奥行部材65を接続して組み立てて成るパイプ枠組構造体に形成されている。
また、移載装置6を中心に移載する両側水平方向に伸縮し、栽培容器2を吊り下げ自在な吊り下げ腕部61を下面に連結した吊り下げ枠61’の対向する両辺の中央を、吊り下げテーブル60が支持しており、前記吊り下げテーブル60を他の段部位置に上下に移動が出来る、第一昇降部S3が設けられている。また、前記吊り下げ枠61’の吊り下げ腕部61を伸ばして、栽培容器供給棚7上の栽培容器2を少し吊り上げて供給装置5の昇降テーブル53a上のトレー3に少し降ろす又はその逆の動作を、僅かな上下動作で行う第二昇降部S4が設けられている。
前記移載装置6の前記支柱部材64上に上下動可能に前記第一昇降部S3があって、横パイプ方向に並ぶ各前記第一昇降部S3上に渡されて、前記吊り下げテーブル60が設置されている。そして、その吊り下げテーブル60の上には前記第二昇降部S4であるエアーシリンダが載置し、そのエアーシリンダが、吊り下げ腕部61が連結した前記吊り下げ枠61’を上下動可能に支持している。よって、前記吊り下げ枠61’は、前記エアーシリンダのストローク分を上下動する。また、本実施例では、前記支柱部材64上を手動で他の段部位置に上下移動させる第一昇降部S3とされているが、例えば、支柱部材64にラックアンドピニオン機構を設けて動力昇降する第一昇降部S3とする実施例も採用可能である。
【0020】
前記吊り下げ腕部61は、前記吊り下げ枠61’に垂直配置で固定された中央の上部ラック610に噛み合う歯車61bを介して左右にスライド移動自在な2つのレール61a、61aを有し、前記レール61aから第一レール61a’と第2レール61a”が突き出す構成である。
図8を見れば分かり易いが、隣り合う歯車同士が噛み合う縦3個(上部、中間、下部)に並ぶ前記歯車61bが構成され、その上部歯車610bは、吊り下げ枠61’の下面に固定された上部ラック610の歯に噛み合い、上部歯車610bと中間歯車610b’は、第一レール61a’と連動していて、下部歯車610b”は第二レールに連結する下部ラック611に噛み合っている。
そして、中間歯車610b’によって第一レール61a’と第二レール61a”とは同じ方向に動き、第二レール61a”は第一レール61a’上をスライドするので、上部ラックの中央からその一端部まで上部歯車610bが移動すると、第一レールが350mm程度スライドし、下部ラック611により第一レール上を更に350mm程度スライドする第二レール61a”なので、トータルでレール61aは、一方向側へ700mm程度突き出す。
また、上部ラックの中央からその他端部まで上部歯車610bが移動すると、同様にもう一方側に700mm程度突き出す。従って、この移載装置6は、移載装置6本体を中心に両側方向へ各700mm程度の移載が可能に設定されている。
さらに、前記吊り下げ腕部61の前記第二レール61a”の下部には吊下げ具62が設けられ、前記レール61aの水平方向の伸縮動作により、栽培容器2の開口部周りのフランジ下部20に前記吊り下げ具62を進入させてから、前記吊り下げ枠61’を前記第二昇降部S4のエアーシリンダのストローク分上げて当該栽培容器2を吊り下げ、前記レール61aで当該栽培容器2を移動することができる。
【0021】
上述した本実施形態の栽培システムの使用例について説明する。
まず、準備段階として、供給装置5を挟んで栽培棚1の反対側に配置された上記移載装置6の吊り下げ腕部61により、供給装置5内の所定位置のトレー3上へ栽培容器供給棚7から取り出した栽培容器2を載置し、その栽培容器2が載置されたトレー3を第一昇降部S1を作動させて栽培棚1の所定の栽培レーンAへ搬入する(図2参照)。尚、コストの関係で移載装置6を使用せずに、供給装置5の所定位置でトレー3内に栽培容器2を作業員が、載置しても良い。その際、一対の前記栽培レーンA、すなわち各パイプ4上にトレー3の車輪8が載り、前記車輪8は、前記パイプ4の外周面を倣うような形状で鼓状に窪んでいてパイプ表面に接触するので、トレー3は栽培レーンA(パイプ4)上を安定して水平方向に移動ができ、植物が植えられた栽培容器2が載置された着脱自在に連結されているトレー3が、栽培レーンA上に一列状を呈して並んで栽培が行われる。
収穫する際は、前記昇降部53で前記昇降テーブル53aを収穫対象の栽培レーンAの位置に昇降させたら、搬出入部50の進退部52を伸ばし、対象のトレー列の供給側に一番近いトレー3に対して、掴み部51の掴み片51cでトレー3の端部の凹部33を掴む。
次に、進退部52を後退させ供給装置5に向かって連結したトレー3の列全体を一体で引っ張り出し、供給装置5内の昇降テーブル53a上にトレー3の1個が丁度載って搬出され、そのトレー3から栽培容器2を移載装置6の吊り下げ腕部61により取り去って収穫する。その際、第二昇降部S2のロッドレスシリンダが1つの段のストレージレーンBと栽培レーンA間を上下動させてトレー3の連結や連結解除を行うので、ストロークを一定に保つから昇降位置を正確かつ安定的に位置決めでき、移載装置6により、供給装置5内の所定位置のトレー3上から栽培容器2をスムーズに取り出して栽培容器供給棚7に載置できる。尚、移載装置6を使用せずに作業員が、栽培容器2を取り去り収穫しても良い。
【0022】
一方、供給装置5の昇降部53の第二昇降部S2により、昇降テーブル53aが、収穫対象の前記栽培レーンAの対となっている直下のストレージレーンBの高さ位置に正確に下降すると、栽培容器2を取り去った空トレー3(K)は、前記昇降テーブル53a上に載ってその位置が変わらないから、そのトレーの嵌合雄部30(又は被嵌合雌部31)は、列に繋がっている隣接の被嵌合雌部31(又は嵌合雄部30)との嵌め合いが解除されてその列から外れ、今度は、先行して存する空トレー3(K)の被嵌合雌部31(又は嵌合部30)とが嵌め合い、空トレー3(K)の列に繋がる(図2参照)。
そして、トレー3の1個分の長さを送り込んで該トレー3を前記昇降テーブル53aから降ろし、掴み部51の掴みを解除したら進退部52が引っ込んで元の位置まで戻る。
更に、栽培容器2を取り除いた最後のトレー3(K)になった時の搬入は、トレー3の1個分の長さに追い込み分の長さLをプラスした長さ分を送り込んで、供給側に一番近いトレー3(K)の供給側の端面を、栽培棚1内に入る位置にして空トレーの列の搬入が完了し、ストレージレーンB上に保持される。
【0023】
しかる後、供給装置5の昇降部53は、次に収穫する栽培レーンAの位置まで昇降し、同様な作業の繰り返しで収穫を進める。
かくして、同様の保管作業を繰り返し、収穫後の空トレー3(K)は、栽培を行うレーンではない、専用の保管場所のストレージレーンBに収容されるので、空トレー3(K)のみを省スペースに保管でき、栽培レーンAでは空トレー3(K)が占めることなく栽培効率がアップされ、栽培条件も一定で済む。
なお、栽培時は、上記と逆の手順を行い、所望の栽培レーンAに、栽培容器2が載置された複数のトレー3が連結して列を呈して置かれる。
【0024】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーショ
ンの範囲を含むことを念のために言及する。
【符号の説明】
【0025】
A 栽培レーン
B ストレージレーン
H 間隔
1 栽培棚
10 側面枠体
11 柱部材
12 奥行部材
13 横部材
2 栽培容器
20 フランジ(下部)
3 トレー
30 嵌合雄部
31 被嵌合雌部
33 凹部
4 横パイプ
5 供給装置
50 搬出入部
51 掴み部
51a 基台
51b 伸縮装置
51c 掴み片
52 進退部
52a 進退装置
53 昇降部
53a 昇降テーブル
S1 第一昇降部
S2 第二昇降部
6 移載装置
60 吊り下げテーブル
61 吊り下げ腕部
62 吊り下げ具
S3 第一昇降部
S4 第二昇降部
7 栽培容器供給棚
8、9 車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9