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特許7360646計測装置、計測装置制御方法および計測装置制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】計測装置、計測装置制御方法および計測装置制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 21/133 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01R21/133 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019086766
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020183874
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】513157590
【氏名又は名称】インフォメティス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】小野 智行
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-181813(JP,A)
【文献】特開2006-292448(JP,A)
【文献】特開2005-189012(JP,A)
【文献】特開2015-152345(JP,A)
【文献】特開昭57-055726(JP,A)
【文献】特開2010-175413(JP,A)
【文献】特開2013-117484(JP,A)
【文献】特開2014-199209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 21/133
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングするサンプリング部と、
前記サンプリング部においてサンプリングされた前記波形の処理を実行する処理部と、
動作を定める設定情報を取得する設定情報取得部と、
前記設定情報取得部において取得された設定情報を保持する設定保持部と、
前記設定保持部に保持された設定情報に基づき、動作を制御する動作制御部と
を備え、
前記動作制御部は、前記設定情報においてサンプリングする前記波形の位相の設定がされている場合、前記設定情報に基づき、前記サンプリング部における前記サンプリングタイミングを、他の計測点において前記波形をサンプリングする他の計測装置における前記波形の位相に合わせるように設定し、前記電力線が単相三線式である場合、前記設定情報に基づき、前記他の計測点における前記波形を反転させるように前記サンプリングタイミングを設定する、計測装置。
【請求項2】
前記動作制御部は、基準的な時刻を提供する時刻提供装置に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行し、
前記設定情報取得部は、前記時刻の問い合わせが実行された後に前記設定情報を取得する、請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
前記設定情報取得部は、ネットワークを介して通信可能に接続された設定情報管理装置から前記設定情報を取得する、請求項1または2に記載の計測装置。
【請求項4】
前記サンプリング部は、前記波形の正負が反転するゼロクロス点を基準としたサンプリングタイミングで前記波形をサンプリングする、請求項1からのいずれか一項に記載の
計測装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記サンプリングタイミングを同期させる同期信号に係る設定が前記設定情報においてされている場合、前記他の計測装置との、前記同期信号の通信を制御する、請求項1からのいずれか一項に記載の計測装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、前記他の計測装置の内部時計の値と、サンプリングする波形の正負が反転するゼロクロス点をカウントする波数カウンタの値とを含む前記同期信号の通信を制御する、請求項に記載の計測装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記設定情報において前記同期信号を提供する設定がされている場合、前記処理の処理タイミングに基づき前記他の計測装置に対して前記同期信号を提供する、請求項またはに記載の計測装置。
【請求項8】
前記動作制御部は、複数の前記他の計測装置に対して同時に前記同期信号を提供する、請求項に記載の計測装置。
【請求項9】
前記動作制御部は、
前記設定情報において同期信号を取得する設定がされている場合、前記他の計測装置から同期信号を取得し、
取得した同期信号に基づき、前記処理の処理タイミングを調整する
請求項またはに記載の計測装置。
【請求項10】
前記動作制御部は、前記波形の正負が反転するゼロクロス点を基準として前記処理タイミングを調整する、請求項に記載の計測装置。
【請求項11】
計測装置を制御するための計測装置制御方法であって、
電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングするサンプリングステップと、
前記サンプリングステップにおいてサンプリングされた前記波形の処理を実行する処理ステップと、
動作を定める設定情報を取得する設定情報取得ステップと、
前記設定情報取得ステップにおいて取得された設定情報を保持する設定保持ステップと、
前記設定保持ステップに保持された設定情報に基づき、動作を制御する動作制御ステップと
を含み、
前記動作制御ステップにおいて、前記設定情報においてサンプリングする前記波形の位相の設定がされている場合、前記設定情報に基づき、前記サンプリングステップにおける前記サンプリングタイミングを、他の計測点において前記波形をサンプリングする他の計測装置における前記波形の位相に合わせるように設定し、前記電力線が単相三線式である場合、前記設定情報に基づき、前記他の計測点における前記波形を反転させるように前記サンプリングタイミングを設定する、計測装置制御方法。
【請求項12】
計測装置に、
電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングするサンプリング機能と、
前記サンプリング機能においてサンプリングされた前記波形の処理を実行する処理機能
と、
動作を定める設定情報を取得する設定情報取得機能と、
前記設定情報取得機能において取得された設定情報を保持する設定保持機能と、
前記設定保持機能に保持された設定情報に基づき、動作を制御する動作制御機能と
を実現させ、
前記動作制御機能において、前記設定情報においてサンプリングする前記波形の位相の設定がされている場合、前記設定情報に基づき、前記サンプリング機能における前記サンプリングタイミングを、他の計測点において前記波形をサンプリングする他の計測装置における前記波形の位相に合わせるように設定し、前記電力線が単相三線式である場合、前記設定情報に基づき、前記他の計測点における前記波形を反転させるように前記サンプリングタイミングを設定することを実現させるための、計測装置制御プログラム。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置、計測装置制御方法および計測装置制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、分電盤の主幹に流れる電流を計測して各電気機器に流れる電流を分離推定するための技術が提案されている。分電盤の主幹の計測によって施設中の電力消費を機器ごと把握できることが大きな利点となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電源から複数の電気機器に供給される電力線の主幹の一箇所を計測点として、計測点における電流および電圧の波形を所定の波形起点でサンプリングした波形データを機器毎の波形データに分離することにより、電気機器の各々の動作状況を推定する信号処理システムが記載されている。波形データの分離は、波形起点を起点とする波形データを正規化し、それぞれの電気機器毎の波形パターンと比較することにより行うことができる。
【0004】
一方、電力線に接続される電気機器の増加に伴い、電力線の波形データをサンプリングする計測点を複数箇所にして複数の波形データを演算処理する場合がある。例えば、太陽光等による発電装置や、電気自動車等の電気機器を主幹に接続すると、周波数変換等の電力変換をするパワーコンディショナから発生するノイズが主幹に混入する場合がある。主幹の波形データに混入したノイズをキャンセルするためには、パワーコンディショナの近傍に計測箇所を追加して、主幹の波形データからノイズ発生源近傍の波形データを減算することが有効となる。
【0005】
また、発電装置で発電された電力を変換するパワーコンディショナやスマートメータ等の電力機器は、電力波形を調整したり計測したりする処理機能を有する。このため、これら処理機能を有する電力機器を、波形データをサンプリングする計測装置として使用することにより、波形データの計測点を複数箇所にできる場合がある。
【0006】
ここで、電力線の複数箇所の計測点において計測された波形データ同士を演算する場合、波形データをサンプリングするサンプリングタイミングを複数の計測装置の間で同期させ、演算の時間軸の基準となる波形起点を同期させる必要がある。
【0007】
サンプリングタイミングを同期させるために、例えば、複数の計測装置間において通信速度の速い有線の通信線を設け、通信遅延の少ない通信コマンドにおいて計測装置の動作を制御する。
【0008】
また、サンプリングタイミングを同期させるために、それぞれの計測装置に精密な内部時計を設け、サンプリング動作を内部時計に同期するようにしてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6219401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、複数の計測装置が距離的に離れた場所に設置されたり、建屋の内側と外側等のように隔離された場所に設置されたりすると、有線の通信線を設置することが困難となる場合があった。また、無線通信においては、通信状況による通信の遅延や通信負荷による処理の遅延が発生して、サンプリングタイミングを同期させることが困難な場合があった。
【0011】
また、精密な内部時計は高価であるため、それぞれの計測装置に設けると装置コストが上昇してしまう場合があった。
【0012】
また、複数の計測装置の間でサンプリングタイミングを一度同期させても、各計測装置の再起動等の要因で同期外れが発生することがあり、ロバスト性が低下する場合があった。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電力線の波形データをサンプリングする複数の計測点におけるサンプリングのタイミングを容易に同期させることができ、ロバスト性を向上させることができる、計測装置、計測装置制御方法および計測装置制御プログラムを提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の課題を解決するため、実施形態の計測装置は、電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングするサンプリング部と、サンプリング部においてサンプリングされた波形の処理を実行する処理部と、動作を定める設定情報を取得する設定情報取得部と、設定情報取得部において取得された設定情報を保持する設定保持部と、設定保持部に保持された設定情報に基づき、動作を制御する動作制御部とを備える。
【0015】
(2)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、基準的な時刻を提供する時刻提供装置に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行し、設定情報取得部は、時刻の問い合わせが実行された後に設定情報を取得するものであってもよい。
【0016】
(3)また、実施形態の計測装置において、設定情報取得部は、ネットワークを介して通信可能に接続された設定情報管理装置から設定情報を取得するものであってもよい。
【0017】
(4)また、実施形態の計測装置において、サンプリング部は、波形の正負が反転するゼロクロス点を基準としたサンプリングタイミングで波形をサンプリングするものであってもよい。
【0018】
(5)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、サンプリングタイミングを同期させる同期信号に係る設定が設定情報おいてされている場合、他の電力線の計測点における波形をサンプリングする他の計測装置との、同期信号の通信を制御するものであってもよい。
【0019】
(6)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、他の計測装置の内部時計の値と、サンプリングする波形の正負が反転するゼロクロス点をカウントする波数カウンタの値とを含む同期信号の通信を制御するものであってもよい。
【0020】
(7)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、設定情報において同期信号を提供する設定がされている場合、処理の処理タイミングに基づき他の計測装置に対して同期信号を提供するものであってもよい。
【0021】
(8)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、複数の他の計測装置に対して同時に同期信号を提供するものであってもよい。
【0022】
(9)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、設定情報において同期信号を取得する設定がされている場合、他の計測装置から同期信号を取得し、取得した同期信号に基づき、処理の処理タイミングを調整するものであってもよい。
【0023】
(10)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、波形の正負が反転するゼロクロス点を基準として処理タイミングを調整するものであってもよい。
【0024】
(11)また、実施形態の計測装置において、動作制御部は、サンプリングする波形の位相の設定が設定情報おいてされている場合、設定情報に基づきサンプリング部でサンプリングする波形の位相を設定するものであってもよい。
【0025】
(12)上記の課題を解決するため、実施形態の計測装置制御方法は、計測装置を制御するための計測装置制御方法であって、電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングするサンプリングステップと、サンプリングステップにおいてサンプリングされた波形の処理を実行する処理ステップと、動作を定める設定情報を取得する設定情報取得ステップと、設定情報取得ステップにおいて取得された設定情報を保持する設定保持ステップと、設定保持ステップに保持された設定情報に基づき、動作を制御する動作制御ステップと、を含む。
【0026】
(13)上記の課題を解決するため、実施形態の計測装置制御プログラムは、計測装置に、電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングするサンプリング機能と、サンプリング機能においてサンプリングされた波形の処理を実行する処理機能と、動作を定める設定情報を取得する設定情報取得機能と、設定情報取得機能において取得された設定情報を保持する設定保持機能と、設定保持機能に保持された設定情報に基づき、動作を制御する動作制御機能とを実現させる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一つの実施形態によれば、計測装置は、電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形を所定のサンプリングタイミングでサンプリングし、サンプリングされた波形の処理を実行し、動作を定める設定情報を取得し、取得された設定情報を保持し、保持された設定情報に基づき、動作を制御することにより、電力線の波形データをサンプリングする複数の計測点におけるサンプリングのタイミングを容易に同期させることができ、ロバスト性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態における計測装置を含む計測システム構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態における計測装置を含む計測システムのソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施形態における、(A)親機の処理タイミング、(B)子機の処理タイミングの調整の一例を示す図である。
図4】実施形態における、(A)親機の処理タイミング、(B)子機の処理タイミングの調整の一例を示す図である。
図5】実施形態における計測装置の処理タイミングの調整の一例を示す図である。
図6】実施形態における計測装置を含む計測システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
図7】実施形態における計測装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8】実施形態における設定情報管理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態における計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10】実施形態における計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図11】実施形態における計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12】実施形態における計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図13】実施形態における計測装置の処理タイミングの調整の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態における、計測装置、計測装置制御方法および計測装置制御プログラムについて詳細に説明する。
【0030】
先ず、図1を用いて、システム構成を説明する。図1は、実施形態における計測装置を含む計測システム構成の一例を示すブロック図である。
【0031】
図1において、計測システム10は、計測装置1(計測装置1a~1d)を含んでいる。計測装置1a~1dはそれぞれ測定対象である電力線の電圧または電流を測定するように設置されている。
【0032】
計測装置1aは、電源側が電力会社の電力線(電源)に接続されているスマートメータ41の負荷側から分電盤42の電源側に接続される電力線である主幹40における分電盤42の電源側に接続される。計測装置1aの筐体は、分電盤42の内部または近傍に設置される。計測装置1aは、主幹40における分電盤42の電源側を計測点とする電圧または電流の少なくともいずれか1つの波形を計測する。なお、計測装置1の詳細は後述する。
【0033】
計測装置1bは、スマートメータ41の内部または近傍に設置され、スマートメータ41の負荷側を計測点とする電圧または電流の少なくともいずれか1つの波形を計測する。スマートメータ41は、負荷側に供給される電力をデジタルで計測して、メーター内に通信機能を持たせた電力量計である。スマートメータ41は、計測した電力の使用状況のデジタルデータを、通信機能を用いてによって電力会社の管理サーバ(不図示)に所定の時間間隔で送信することができる。なお、計測装置1bは、スマートメータ41の負荷側の電圧または電流を計測するものであるため、スマートメータ41における電圧および電流を計測する機能を利用したものであってもよい。例えば、計測装置1bは、スマートメータ41のソフトウェアによって実現される機能として実施されてもよい。
【0034】
分電盤42は、電源側が主幹40に接続され、負荷側が複数の配線に接続され、電源側の電力を各配線に対して分配する。分電盤42は、図示しない漏電を遮断するための漏電遮断器、主幹の電流を遮断するための主幹遮断機、および各配線の電流を遮断するための配線用遮断器を含むことができる。負荷側の各配線は、配線毎に設置された配線用遮断器の負荷側に接続される。負荷側の配線には、冷蔵庫31、テレビ32、および電気ポット33として例示するの様々な電気機器が接続される。なお、分電盤42は、スマートメータ41の機能、または降圧トランスの機能を有する装置(例えば、キュービクル式高圧受電設備)であってもよい。
【0035】
分電盤42の負荷側の配線には、計測装置1cを介してパワーコンディショナ43、さらに太陽光発電器34が接続されている。また、主幹40から図示しない配線用遮断機の負荷側の配線には、計測装置1dを介して電気自動車35が接続されている。図1における、計測装置1bと計測装置1dは、計測点が計測装置1aの電源側に設け得ることを例示している。また、計測装置1cは、計測点が計測装置1aの電源側に設け得ることを例示している。
【0036】
計測装置1cは、パワーコンディショナ43の近傍の電力線に接続され、パワーコンディショナ43近傍の配線を計測点とする電圧または電流の少なくともいずれか1つの波形を計測する。また、計測装置1dは、電気自動車35へ接続される配線に設置され、電気自動車に接続される配線を計測点とする電圧または電流の少なくともいずれか1つの波形を計測する。
【0037】
パワーコンディショナ43は、太陽光発電器34で発電された電力を直流から商用周波数(50Hzまたは60Hz)および商用電圧(単相200Vまたは三相200V)の交流に変換するインバータである。パワーコンディショナ43は、太陽光発電器34で発電された電力を分電盤42に供給することにより、他の配線に対して電力を供給することが可能となる。なお、パワーコンディショナ43は、電力会社の電力線に電力を供給するようにしてもよい。
【0038】
パワーコンディショナ43は、インバータにより周波数変換をするときにスイッチングノイズを発生させる場合がある。発生したスイッチングノイズは、電力線のインピーダンスに応じて減衰しながら電力線を伝播していく。計測装置1cは、パワーコンディショナ43近傍の電力線を計測点とするため、パワーコンディショナ43で発生したスイッチングノイズを強く含む波形を計測することが可能となる。
【0039】
また、電気自動車35は、主幹40から供給された交流の電力を内部で直流に変換する、図示しない車載インバータを有している。車載インバータに変換された直流の電力は図示しない車載バッテリに充電される。一方、車載インバータは車載バッテリに充電された直流の電力を交流に変換して分電盤42に供給することができる。車載インバータは、パワーコンディショナ43と同様に周波数変換をするときにスイッチングノイズを発生させる場合がある。計測装置1dは、電気自動車35への配線を計測点とするため、電気自動車35で発生したノイズを強く含む波形を計測することが可能となる。
【0040】
なお、図1における計測システム10は、4台の計測装置1(計測装置1a~1d)が設置される場合を例示したが、計測システム10における計測装置1の設置台数はこれに限定されるものではない。例えば、計測装置1は、故障時のバックアップとして複数台が設置されるものであってもよい。
【0041】
また、図1は、計測装置1aが分電盤42の内部または近傍の設置される場合を示したが、計測装置1aの設置場所はこれに限定されるものではない。例えば、計測装置1aは、スマートメータ41の内部または近傍に設置されるものであってもよい。
【0042】
次に、図2を用いて、計測装置1の機能を説明する。図2は、計測装置1のソフトウェア構成の一例を示すブロック図である。図2は、計測装置1を1台のみ図示し、他の計測装置1の図示を省略している。
【0043】
図2において、計測システム10は計測装置1を1台のみ図示しているが、計測装置1を複数台含むことができる。計測装置1は、他の計測装置1と無線通信を介して通信可能に接続されている。計測装置1の通信方式は、無線通信以外であってもよく、例えば、電力線を介した電力線通信、LANケーブルを介した有線通信、または近距離無線通信等であってもよい。
【0044】
計測装置1は、サンプリング部11、処理部12、設定情報取得部13、設定保持部14、動作制御部15および通信制御部16の各機能部を有している。本実施形態における計測装置1の上記各機能部は、計測装置1を制御する計測装置制御プログラム(ソフトウェア)によって実現される機能モジュールであるものとして説明する。
【0045】
<計測装置1>
サンプリング部11は、時刻カウンタ111、波数カウンタ112、電圧測定部113および電流測定部114を有する。サンプリング部11は、電力線の計測点における電圧または電流の少なくとも何れか1つの波形のサンプリングを所定のサンプリングタイミングで実行する。例えば、図1に示した計測装置1aにおけるサンプリング部11は、主幹40における分電盤42の電源側を計測点として計測された電圧または電流の波形をサンプリングする。電圧測定部113は電圧波形をサンプリングし、電流測定部114は電流波形をサンプリングする。電圧測定部113は、例えば、100Vから200Vまたは220Vから240Vの範囲の電圧波形をサンプリングする。また、電流測定部114は、主幹遮断機の遮断電流に応じた電流範囲において電流波形をサンプリングする。
【0046】
サンプリング部11は、例えば、電圧測定部113において検知された電圧波形または電流測定部114において検知された電流波形を所定のタイミング(サンプリングタイミングという場合がある。)においてサンプリングする。サンプリングタイミングは、例えば、秒単位の時刻をカウントする時刻カウンタ111と、1秒間における波数をカウントする波数カウンタ112によって決定される。本実施形態においては、時刻カウンタ111と波数カウンタ112を用いて、サンプリングスロットにおける波形起点をサンプリングタイミングとする場合を例示して後述する。なお、波形起点は、後述するゼロクロス点とすることができる。ゼロクロス点を波形起点とする波数カウンタ112はゼロクロス点をカウントする「ゼロクロスカウンタ」と言う場合がある。サンプリング部11においてサンプリングされる波形データは、例えば、アナログデータである。本実施形態において波形データという場合、アナログデータかデジタルデータかを限定しない。
【0047】
処理部12は、サンプリング部11においてサンプリングされた波形データの処理を複数の処理スロットにおいて実行する。処理スロットとは、波形データの処理単位であり、電源の電圧または電流の波形に同期して、所定の周期で繰り返して実行される。処理スロットは、例えば、1秒間の周期においてn回(例えば、n=10またはn=20)、すなわち1/n秒間において実行される処理単位である。例えば、n=20の処理スロットは、1つの処理スロットが0.05秒間の処理時間において実行される。処理スロットは、例えば、内部クロックのクロック数によって定められる処理単位であってもよい。処理部12は、0~(n-1)のn個の処理スロットを所定の周期(例えば、1秒)で繰り返し実行する。なお、実施例においては全ての処理スロットにおける処理時間が同じ場合を例示するが、処理スロットにおける処理時間は、それぞれの処理スロットにおいて異なるものであってもよい。
【0048】
処理部12において実行される処理スロットには、例えば以下のものを含むことができる。
【0049】
(サンプリングスロット)
サンプリングスロットとは、サンプリング部11において波形をサンプリングする処理を実行する処理スロットである。サンプリングスロットにおいて、処理部12は、サンプリング部11に対して「波形起点」における波形のサンプリングを実行させる。波形起点とは、サンプリングスロットにおいて、波形をサンプリングする起点となるタイミングである。例えば、波形起点は、サンプリングスロットにおいて検出される電圧または電流の波形を基準として予め定めることができる。
【0050】
例えば、商用周波数が50Hz(周期0.02秒)の電源の波形は、サンプリングスロットが0.05秒間において実行される場合、サンプリングスロットにおいて2.5回(0.05/0.02=2.5)含まれることになる。処理スロットは電源の波形に同期して実行される。ここで、波形起点を、「サンプリングスロットにおいて、波形の極性が最初に負から正に変化するゼロクロス点」、または、「サンプリングスロットにおいて、波形の極性が2回目に正から負に変化するゼロクロス点」等と定めることができる。ゼロクロス点とは、波形の極性の正負が逆転するタイミングであり、容易に検出することができる。波形起点は、他の計測装置1において調整される波形起点と同期される。ゼロクロス点は、検出が容易であるため、波形起点を同期する他の計測装置1においても容易に検出することができ、装置コストを低減することができる。また、ゼロクロス点を波形起点とすることにより、サンプリングされた波形データはゼロ点を起点とする波形となり、波形データの正規化等の処理が容易となる。
【0051】
(その他の処理スロット)
処理部12は、その他の処理スロットとして、サンプリング部11においてサンプリングされたアナログ波形をデジタル波形に変換(A/D変換)する変換スロット、変換されたデジタル波形を演算する演算スロット、演算されたデジタル波形の波形データを記憶する処理スロット、および演算された波形データを送信する送信スロット等を実行することができる。なお、変換スロットは、サンプリングスロットと同じ処理スロットにおいて実行されてもよい。
【0052】
ここで、演算スロットにおいて実行されるデジタル波形の演算として以下に波形データの正規化処理を例示する。
【0053】
波形データの正規化処理の一例として、処理部12は、サンプリングされた波形起点から波形終点までのアナログ波形データの近似波形データを生成し、アナログ波形データの1周期分のサンプル数と波形周期により正規化周期を算出し、さらに近似波形データを波形起点から正規化周期によりサンプリングする。正規化処理された波形データは、電気機器毎の波形データに分離する分離処理に利用される。波形データの分離処理には、例えば、Factorial HMM(Hidden Markov Model)を用いることができる。具体的には、まず、各電気機器の動作状況をモデル化したモデルパラメータを予め用意しておく。波形データは、Factorial HMMにより、時系列毎に複数の状態変数に分離される。分離された状態変数は、予め用意されたモデルパラメータと比較されることにより、電気機器を特定することができる。なお、上述した分離処理を計測データ管理装置2において実行する場合を後述する。
【0054】
設定情報取得部13は、計測装置1の動作を定める設定情報を取得する。設定情報とは、計測装置1の動作を予め定めた情報であって、例えば、以下の情報を含むことができる。
【0055】
<同期信号に係る設定情報>
設定情報は、複数の計測装置1においてサンプリングタイミングを同期させる同期信号に係る設定情報を含んでいてもよい。同期信号は、複数の計測装置1においてサンプリングタイミングを同期させるための信号である(詳細は後述)。同期信号は、計測装置1から他の計測装置1に対して提供される。ここで、同期信号を他の計測装置1に対して提供する計測装置1を「親機」という。また、親機から同期信号を取得する計測装置1を「子機」という。すなわち、同期信号は親機から子機に対して提供される。複数の計測装置1において、サンプリングタイミングを同期させることにより、電圧波形または電流波形の取得を同期させることが可能となる。同期信号に係る設定情報とは、計測装置1が親機になるか否かの情報であり、設定情報に親機になるとの情報が含まれる場合、親機になるとの情報を含む設定情報を取得した計測装置1は親機として設定される。この場合、親機になるとの情報を含まない設定情報を取得した計測装置1を子機とすることができる(親機として設定されない計測装置1を非明示的に子機とみなしてもよい)。また、設定情報には、明示的に子機になるとの情報を含ませてもよい。設定情報に子機になるとの情報が含まれる場合、子機になるとの情報を含む設定情報を取得した計測装置1は明示的に子機として設定される。
【0056】
<サンプリングする波形の位相の設定に係る設定情報>
設定情報は、サンプリングする波形の位相の設定に係る情報を含んでいてもよい。サンプリングする波形の位相の設定に係る情報が含まれる設定情報を取得した計測装置1は、設定情報に従いサンプリングする波形の相を設定(変更)する。サンプリングする電力線が複数の相を有する場合、それぞれの相のゼロクロス点は所定の位相差を有することになる。例えば、電力線が三相三線式である場合、R、SおよびTの各相は120度の位相差を有することになるため、それぞれの相のゼロクロス点も120度の位相差を有することになる。また、電力線が単相三線式である場合、L1およびL2の各相は180度の位相差を有することになるため、L1およびL2のゼロクロス点も180度の位相差を有することになる。複数の計測装置1においてサンプリングする波形の位相を揃えることにより、それぞれの計測装置1におけるサンプリングタイミングを揃えることが可能となる。
【0057】
<その他の設定情報>
設定情報は、計測装置1に関する他の情報を含んでいてもよい。例えば、設定情報には、同期信号の提供のタイミングもしくは提供の頻度、サンプリングのタイミング(例えば、サンプリング間隔)、有効な通信チャネル(波形データを送信するチャンネル)等を設定するための情報が含まれていてもよい。また、設定情報には、計測装置1の動作を停止または起動させるための情報が含まれていてもよい。
【0058】
設定情報は、ネットワーク9を介して通信可能に接続された設定情報管理装置5から提供される。設定情報管理装置5は、設定情報提供部51および設定情報管理部52を有する。設定情報管理部52は、それぞれの計測装置1(例えば、計測装置1a~1d)に対応した設定情報を記憶して管理する。なお、設定情報管理部52は、図示しない端末装置から設定情報を設定して記憶させるようにしてもよい。設定情報提供部51は、設定情報管理部52において管理されている設定情報を設定情報取得部13に提供する。設定情報取得部13は、動作制御部15が基準的な時刻を提供する時刻提供装置6に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行した後に設定情報を取得することができる。時刻提供装置6は、例えばNTP(Network Time Protocol)サーバである。時刻提供装置6は、複数のNTPサーバであってもよい。
【0059】
設定情報の取得において、例えば、動作制御部15が時刻提供装置6に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行した後、設定情報取得部13が設定情報管理装置5に対して設定情報の提供をリクエストして、そのリクエストに対して設定情報管理装置5が設定情報を提供することにより、設定情報取得部13が設定情報を取得するようにしてもよい。例えば、内部時計に設定する時刻の問い合わせが実行された後、設定情報取得部13は設定情報管理装置5に対してHTTP(Hypertext Transfer Protocol)リクエストを送信する。HTTPリクエストには、HTTPの追加情報として、計測装置1のメーカ名、型式またはファームウエアのバージョン情報、シリアル番号等の情報の計測装置1を特定するための情報を含ませることができる。設定情報管理装置5は、受信したHTTPリクエストに含まれる計測装置1を特定するための情報に基づき、提供する設定情報を特定して、HTTPレスポンスとして特定した設定情報を設定情報取得部13に対して提供するようにしてもよい。
【0060】
また、設定情報の取得において、設定情報管理装置5は、動作制御部15が時刻提供装置6に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行したか否かを監視して、問合せを実行したことを確認した場合、設定情報取得部13に対して設定情報を提供するようにしてもよい。なお、本実施形態において「取得」という場合、主体的な取得(プル型取得)であっても、能動的な取得(プッシュ型取得)であってもよい。すなわち、設定情報取得部13は、設定情報管理装置5からプッシュ型で設定情報の送信を能動的に受けてもよく、また、設定情報管理装置5に記憶されている設定情報を主体的にダウンロード等してもよい。同様に、本実施形態において「提供」という場合、主体的な提供(プッシュ型提供)であっても、能動的な提供(プル型提供)であってもよい。すなわち、「取得」および「提供」の動作は動作主体を限定するものではない。
【0061】
設定保持部14は、設定情報取得部13において取得された設定情報を保持する。設定情報の保持とは、設定情報を計測装置1の内部に記憶させることであっても、設定情報を計測装置1の外部に記憶されたものを読み出し可能にすることであってもよい。例えば、設定保持部14は、設定情報が記憶された記憶先へのリンク情報を保持するものであってよい。
【0062】
動作制御部15は、設定保持部に保持された設定情報に基づき、計測装置1の動作を制御する。以下に、動作制御部15によって制御される計測装置1の動作を例示する。
【0063】
<時刻問い合せ動作>
動作制御部15は、基準的な時刻を提供する時刻提供装置6に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行する、例えば、動作制御部15は、計測装置1が設置された直後において、また計測装置1の構成(例えば、計測装置1a~1nの新たな設置または変更)があったときに内部時計に設定する時刻の問い合わせを行う。また、動作制御部15は、内部時計の設定がされていない(例えば、初期状態である)のを確認して時刻の問い合わせをするようにしてもよい。
【0064】
<親機または子機設定動作>
また、動作制御部15は、同期信号に係る設定が設定情報おいてされている場合、計測装置1を親機または子機とする設定動作を実行する。動作制御部15は、設定情報に同期信号に係る情報が含まれている場合、計測装置1を親機または子機に設定する。
【0065】
<サンプリング波形設定動作>
また、動作制御部15は、設定情報にサンプリングする波形の位相の設定に係る情報が含まれている場合、波形を同期させる動作を実行する。例えば、電力線が三相三線式である場合、サンプリングする波形を120度または240度遅延させる(または進める)処理を行う。また、電力線が単相三線式である場合、サンプリングする波形を180度遅延させる(または進める)(すなわち波形の正負を反転させる)。これにより、サンプリングする波形を同期させることができる。
【0066】
<同期信号通信動作>
また、動作制御部15は、同期させる同期信号に係る設定が設定情報おいてされている場合、他の計測装置1との、同期信号の通信を制御する。同期信号の通信とは、例えば、計測装置1が親機である場合、同期信号の提供(送信)に係る通信である。一方、例えば、計測装置1が子機である場合、同期信号の通信とは同期信号の取得(受信)に係る通信である。なお、本実施形態においては、子機が親機に対して同期信号の取得を要求し、その要求に応じて親機が子機に対して同期信号を送信する場合を例示する。
【0067】
動作制御部15は、計測装置1が子機である場合、ネットワークを介して通信可能に接続された他の計測装置1に対して、同期信号の提供の要求を取得する。動作制御部15は、予め定められた所定の条件において同期信号の提供を要求する。同期信号の提供を要求する所定の条件とは、例えば、1時間毎等の所定時間の経過、処理スロットの所定回数の実行、または、装置のリセットボタンの押下等の操作者による明示的な操作等である。一方、計測装置1が親機である場合、動作制御部15は、他の計測装置1からの要求に応じて処理スロットにおける処理の処理タイミングに基づき同期信号を提供する。
【0068】
同期信号とは、処理スロットの処理タイミングを同期させるための情報であって、例えば、時刻情報、波数(ゼロクロス)カウンタの値、サンプリングタイミング、処理スロットの番号等の情報を含めることができる。例えば、同期信号は、計測装置1の処理スロットの実行状況に基づき生成される。時刻情報は、例えば、計測装置1の内部に含まれる内部時計の値である。波数カウンタの値は、例えば、1秒間におけるカウントされたゼロクロスの回数である。サンプリングタイミングの情報は、サンプリングするタイミングを示す波数カウンタの値である。
【0069】
処理スロットの番号とは、計測装置1において実行中の処理スロットのスロット番号である。スロット番号は、処理スロットの数がnである場合、1からnのいずれかの整数である。処理部12におけるスロット処理の周期が1秒間でありスロット数が20であり全ての処理スロットが同じ時間で実行される場合、サンプリングスロットが0.05秒間において実行される。ここでスロット番号1の処理は、0秒を処理の開始時間として、0~0.05秒の間で実行される。また、スロット番号2の処理は、0.05~0.10秒の間で実行される。すなわち、同期信号としてのスロット番号は、最大1/n秒の時間誤差を含むことになる(周期が1秒の場合)。同期信号により、波形起点を1/nの誤差範囲において、大まかに同期させることが可能となる。したがって、計測装置1と他の計測装置1の通信が無線通信等によって遅延する場合であっても、無線通信における遅延が実行しているスロット番号に影響を与えない範囲であれば通信遅延の影響を無視することが可能となる。
【0070】
<同期動作>
動作制御部15は、計測装置1が子機である場合、取得した同期信号に基づき、サンプリング処理またはサンプリングされた波形の処理の処理タイミングを調整する。動作制御部15は、親機から取得された同期信号に基づき、処理スロットにおける処理の処理タイミングを調整する。動作制御部15は、先ず、同期信号に基づき、波形起点を処理スロットの処理時間(1/n:nは処理スロット数)の誤差範囲において、大まかに処理タイミングを同期させる。動作制御部15は、次に、ゼロクロス点等の波形に基づき、処理タイミングを詳細に同期させる。
【0071】
ここで、動作制御部15における、処理スロットの処理タイミングの調整を、図3から図5を用いて説明する。図3図4は、処理スロットのスロット番号を用いて処理タイミングを大まかに調整する処理を例示している。
【0072】
図3は、複数の計測装置1の処理スロットにおける処理タイミングの時間的なズレの一例を示す図である。図3(A)は、計測装置1(親機)の処理スロットの処理タイミングを示すタイムチャートである。図3(B)は、計測装置1(子機)の処理スロットの処理タイミングを示すタイムチャートである。
【0073】
図3(A)において、計測装置1(親機)は、1秒間において、スロット番号0~19の20個の処理スロットを実行する。すなわち、1つの処理スロットの処理時間は、1/20=0.05秒である。処理スロットは、スロット番号19→18→17の順で実行されて、スロット番号0の処理スロットを実行した後、再びスロット番号19の処理スロットが実行される。スロット番号18は、サンプリングスロットである。サンプリングスロットの黒丸Sは、波形のサンプリングのタイミングを示している。
【0074】
図3(B)において、計測装置1(子機)は、親機と同様に、1秒間において、スロット番号0~19の20個の処理スロットを実行する。ここで、子機は、親機に対して遅延時間d1において処理スロットを実行している。このため、波形のサンプリングタイミングも遅延時間d1だけ遅延することになる。なお、図3または図4における遅延時間dは、子機の処理タイミングが遅延する正の値である場合を示したが、遅延時間dは、子機の処理タイミングが先行する負の値であってもよい。
【0075】
処理スロットの実行の遅延は、例えば、子機の電源が投入された直後に発生する(未同期な状態)。また、処理スロットの実行の遅延は、子機の内部時計が親機の内部時計とずれている場合に発生する(同期が経時的にずれた状態)。本実施形態における子機は、図3に示すこれらの状態によって生じている処理スロットの処理タイミングを同期させるものである。
【0076】
なお、本実施形態においては、サンプリングスロットの処理タイミングを同期させることを目的とする。したがって、動作制御部15における処理タイミングの調整においては、サンプリングスロット以外の処理スロットは、複数の計測装置1において異なるものであってもよい。また、処理スロット数が異なり1つの処理スロットの処理時間が異なる場合であっても、サンプリングスロットの処理タイミングが同期できればよい。
【0077】
図4は、動作制御部15において子機の処理スロットの処理タイミングを調整したことの一例を示す図である。図4(A)は、計測装置1(親機)の処理スロットの処理タイミングを示すタイムチャートである。図4(B)は、動作制御部15による調整後の計測装置1(子機)の処理スロットの処理タイミングを示すタイムチャートである。
【0078】
図4(A)は、図3(A)と同一であるため説明を省略する。図4(B)は、同期信号を用いて、処理タイミングの遅延時間d2を処理スロットの処理時間である1/20(0.05)秒未満になるように調整した後のタイムチャートである。すなわち、d2<0.05秒である。同期信号は、計測装置1において実行中の処理スロットを示す情報であるため、同期信号に要求のタイミングに応じて0.05秒の誤差を含んでいる。動作制御部15は、この誤差を含み処理タイミングを先ず大まかに調整するため、同期信号を取得する際の通信の遅延が処理中のスロット番号に影響を与えない程度であれば遅延時間を無視することができる。これにより、同期信号の取得において無線LAN等の安価な通信手段を用いることが可能となる。
【0079】
図5は、動作制御部15における計測装置1(子機)の処理タイミングの調整の一例を示す図である。
【0080】
図5において、スロット番号18に示すサンプリングスロットは、商用電源の波形のゼロクロス点と同期して実行される。サンプリングスロットの処理時間は、0.05秒である。商用電源の周波数が50Hzである場合、1つの処理スロットには、2.5周期の波形が含まれることになる。処理スロットの処理タイミングを波形の極性が負から正に反転するゼロクロス点に同期した場合、サンプリングスロットには、z1~z6の6つのゼロクロス点が含まれることになる。動作制御部15は、処理タイミングをz1、z3またはz5のゼロクロス点に調整することができる。処理タイミングをいずれのゼロクロス点にするかは同期信号において設定することができる。動作制御部15は、設定したゼロクロス点において処理タイミングを同期させることにより、黒丸Sに示すサンプリングタイミングを計測装置1と同期させることができる。以上で図3から図5の説明を終わり、図2の説明に戻る。
【0081】
なお、計測装置1が有する上述した各機能部は、それぞれの装置が有する機能部の一例を示したものであり、それぞれの装置が有する機能を限定したものではない。例えば、それぞれの装置は、上記全ての機能部を有している必要はなく、一部の機能部を有するものであってもよい。また、それぞれの装置は、上記以外の他の機能を有していてもよい。
【0082】
また上述の各機能部は、ソフトウェアによって実現されるものとして説明した。しかし、上記機能部の中で少なくとも1つ以上の機能部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0083】
また、上記何れかの機能部は、1つの機能部を複数の機能部に分割して実施してもよい。また、上記何れか2つ以上の機能部を1つの機能部に集約して実施してもよい。すなわち、図2は、計測システム10における機能を機能ブロックで表現したものであり、例えば、各機能部がそれぞれ別個のプログラムファイルで構成されていることを示すものではない。
【0084】
また、それぞれの装置は、1つの筐体によって実現される装置であっても、ネットワーク等を介して接続された複数の装置から実現されるシステムであってもよい。例えば、計測装置1は、その機能の一部または全部をクラウドコンピューティングシステムによって提供されるクラウドサービス等、仮想的な装置によって実現するものであってもよい。すなわち、計測装置1は、上記各機能部のうち、少なくとも1以上の機能部を他の装置において実現するようにしてもよい。また、計測装置1は、デスクトップPC等の汎用的なコンピュータであってもよく、機能が限定された専用の装置であってもよい。
【0085】
計測データ管理装置2は、計測データ受信部21、同期計測データ記憶部22、同期計測データ処理部23、処理データ記憶部24および計測データ提供部25を有する。
【0086】
計測データ受信部21は、複数の計測装置1から送信された計測データ(波形データ)を受信する。同期計測データ記憶部22は、複数の計測装置1において同期して計測された計測データを記憶する。例えば、同期計測データ記憶部22は、2つの計測装置1において同期して計測された2つの波形データをを対応付けし、対応付けした情報を2つの波形データとともに記憶する。
【0087】
同期計測データ処理部23は、同期して計測された計測データを処理する。例えば、同期計測データ処理部23は、電気機器(冷蔵庫31、テレビ32および電気ポット33)の動作状況を推定する。動作状況の推定は、上述のように、波形データをFactorial HMMにより、時系列毎に複数の状態変数に分離して、予め用意されたモデルパラメータと比較することにより、実行することができる。同期計測データ処理部23は、それぞれの電気機器のモデルパラメータを予め記憶しておく。電気機器は常に新製品が発売されるため、計測データ管理装置2は、最新の電気機器のモデルパラメータを、例えば、図示しないクラウドサーバから取得するようにしてもよい。同期計測データ処理部23は、同期して計測された複数の計測データの差分を算出することにより、他の電気機器の計測データの影響を小さくして目的の電気機器の動作状況を推定することが可能となる。
【0088】
処理データ記憶部24は、同期計測データ処理部23において処理された処理データを記憶する。また、計測データ提供部25は、処理データ記憶部24に記憶された処理データを、利用者端末7(例えば、デスクトップPC、ノートPC、タブレットPC、またはスマートフォン等)に対して提供する。
【0089】
次に、図6を用いて、上述した計測システム10の動作を説明する。図6は、実施形態における計測装置を含む計測システムの動作の一例を示すシーケンス図である。
【0090】
図6において、計測システム10は、計測装置1aと計測装置1bの2台の計測装置1において、計測装置1aが親機として設定され、計測装置1bは子機として明示的には設定されず非明示的に子機とみなされる場合を示している。
【0091】
計測装置1aは、時刻提供装置6に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行し(ステップS1-1)、時刻の情報を取得する(ステップS2-1)。同様に、計測装置1bは、時刻提供装置6に対して内部時計に設定する時刻の問い合わせを実行し(ステップS1-2)、時刻の情報を取得する(ステップS2-2)。なお、ステップS1-1の処理とステップS1-2の処理は計測装置1aの状態(例えば、設置直後の状態)と計測装置1aの状態においてそれぞれ非同期で実行されるものであってもよい。
【0092】
設定情報管理装置5は、設定情報管理部52に記憶されている計測装置1と設定情報との対応を参照し、計測装置1aに対して同期信号に係る情報を含む設定情報を提供する(ステップS3)。すなわち、計測装置1aは、提供された設定情報に基づき、自機を、同期信号を提供する親機として設定する。
【0093】
親機として設定された計測装置1aは、計測装置1bに対して同期信号を提供する(ステップS41)。計測装置1bは、同期信号を提供されることにより自機を子機として設定する。
【0094】
計測装置1aは、サンプリングタイミングにおいて測定点における波形をサンプリングして波形データを計測データ管理装置2に提供する(ステップS5-11)。また、計測装置1bは、サンプリングタイミングにおいて測定点における波形をサンプリングして波形データを計測データ管理装置2に提供する(ステップS5-21)。ステップS5-11およびステップS5-21の処理はサンプリングタイミング毎に繰り返して実行される(ステップS5-1nおよびステップS5-2n)。
【0095】
計測装置1aは、所定のタイミングで計測装置1bに対して同期信号を提供する(ステップS4n)。所定のタイミングとは、親機と子機のサンプリングタイミングのずれが発生するタイミングであり、例えば、電源が再投入されたときである。所定のタイミングにおいて親機から子機に対して同期信号を提供することにより、サンプリングタイミングを容易に同期させることができ、ロバスト性を向上させることが可能となる。
【0096】
次に、図7を用いて、計測装置1のハードウェア構成を説明する。図7は、実施形態における計測装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0097】
計測装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103、タッチパネル104および通信I/F(Interface)105を有する。計測装置1は、図1で説明した計測装置1を制御する計測装置制御プログラムを実行する装置である。
【0098】
CPU101は、RAM102またはROM103に記憶された情報処理プログラムを実行することにより、計測装置1の制御を行う。計測装置制御プログラムは、例えば、プログラムを記録した記録媒体、又はネットワークを介したプログラム配信サーバ等から取得されて、ROM103にインストールされ、CPU101から読出されて実行される。
【0099】
タッチパネル104は、操作入力機能と表示機能(操作表示機能)を有する。タッチパネル104は、計測装置1の利用者に対して指先又はタッチペン等を用いた操作入力を可能にする。本実施形態における計測装置1は操作表示機能を有するタッチパネル104を用いる場合を説明するが、計測装置1は、表示機能を有する表示装置と操作入力機能を有する操作入力装置とを別個有するものであってもよい。その場合、タッチパネル104の表示画面は表示装置の表示画面、タッチパネル104の操作は操作入力装置の操作として実施することができる。なお、タッチパネル104は、ヘッドマウント型、メガネ型、腕時計型のディスプレイ等の種々の形態によって実現されてもよい。
【0100】
通信I/F105は、通信用のI/Fである。通信I/F105は、例えば、無線LAN、有線LAN、赤外線等の近距離無線通信を実行する。図7において通信用のI/Fは通信I/F105のみを図示するが、計測装置1は複数の通信方式においてそれぞれの通信用のI/Fを有するものであってもよい。
【0101】
検知部106は、電源線の電流または電圧のアナログ波形データを検知する。検知部106は、例えば、100Vから200Vまたは220Vから240Vの範囲の電圧を測定することができる。検知部106は、契約電流を上限とする電流を測定することができる。検知部106は、電源が単相3線式電源である場合、例えば、電流2チャンネルおよび電圧1チャンネルの合計3チャンネルを検知してもよい。
【0102】
なお、図示したハードウェアの構成は、装置の構成の一部を例示したものであり、ハードウェアの構成を限定するものではない。ハードウェアの構成には、例えば、スイッチ、キーボード等の入力装置、LED等の表示装置、スピーカ等の音声出力装置等を含んでいてもよい。
【0103】
次に、図8図12を用いて、計測装置1、計測データ管理装置2および設定情報管理装置5の動作を説明する。図8図12は、実施形態における計測装置制御プログラム、設定情報管理装置制御プログラムまたは設定情報管理装置制御プログラムの動作の一例を示すフローチャートである。以下のフローチャートの説明において、動作の実行主体は計測装置1、計測データ管理装置2または設定情報管理装置5であるものとして説明するが、それぞれの動作は、上述したそれぞれの装置の各機能部において実行することができる。
【0104】
図8は、設定情報管理装置5の設定情報提供の動作を示す。図8において、設定情報管理装置5は、計測装置1における時刻の問合せがあったか否かを判断する(ステップS11)。計測装置1における時刻の問合せがあったか否かは、例えば、計測装置1の通信内容を監視して検知することにより判断することができる。時刻の問合せがなかったと判断した場合(ステップS11:NO)、設定情報管理装置5は、ステップS11の処理を繰り返し、時刻の問合せを検知するのを待機する。
【0105】
一方、時刻の問合せがあったと判断した場合(ステップS11:YES)、設定情報管理装置5は、設定情報管理部52に記憶されている設定情報を読み出し(ステップS12)、設定情報を計測装置1に提供し(ステップS13)、フローチャートに示す動作を終了する。
【0106】
図9は、計測装置1の設定情報に基づく設定動作を示す。実施形態における計測装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0107】
図9において、計測装置1は、設定情報を取得したか否かを判断する(ステップS21)。設定情報を取得していないと判断した場合(ステップS21:NO)、計測装置1は、ステップS21の処理を繰り返し、設定情報の取得を待機する。
【0108】
一方、設定情報を取得したと判断した場合(ステップS21:YES)、計測装置1は、取得した設定情報に同期信号に係る情報が含まれているか否かを判断する(ステップS22)。同期信号に係る情報が含まれていると判断した場合(ステップS22:YES)。計測装置1は、設定情報に同期信号を提供する設定が含まれているか否かを判断する(ステップS23)。同期信号を提供する設定が含まれていると判断した場合(ステップS23:YES)、計測装置1は、自装置を、同期信号を提供する親機として設定する(ステップS24)。一方、同期信号を提供する設定が含まれていない(親機ではない)、または同期信号を取得する設定が含まれている(子機である)と判断した場合(ステップS23:NO)、計測装置1は、自装置を同期信号を取得する子機として設定する(親機として設定しないことを含む)(ステップS25)。
【0109】
ステップS22において同期信号に係る情報が含まれていないと判断した場合(ステップS22:NO)、または、ステップS24の処理もしくはステップS25の処理を実行した後、計測装置1は、取得した設定情報に位相設定に係る情報が含まれているか否かを判断する(ステップS26)。位相設定に係る情報が含まれていると判断した場合(ステップS26:YES)、計測装置1は、設定情報に基づきサンプリングする波形の遅延または進み(波形の正負反転を含む)を設定する(ステップS27)。位相設定に係る情報が含まれていないと判断した場合(ステップS26:NO)、またはステップS27の処理を実行した後、計測装置1は、フローチャートに示す動作を終了する。
【0110】
図10は、計測装置1の波形データのサンプリングの動作を示す。図10において、計測装置1は、サンプリングタイムか否かを判断する(ステップS31)。サンプリングタイムは、サンプリングスロットの処理においてサンプリングタイミング(例えば、所定のゼロクロス点)であるか否かによって判断することができる。サンプリングタイムでないと判断した場合(ステップS31:NO)、装置は、ステップS31の処理を繰り返し、サンプリングタイミングを待機する。
【0111】
一方、サンプリングタイムであると判断した場合(ステップS31:YES)、計測装置1は、計測点における波形データ(電圧または電流波形)をサンプリングする(ステップS32)。計測装置1は、サンプリングした波形データを処理する(ステップS33)。計測装置1は、波形データの処理を複数の処理スロットで実行する。波形データの処理とは、例えば、アナログデータのA/D変換、または波形データの正規化等である。計測装置1は、処理した波形データを計測データ管理装置2に送信して(ステップS34)、フローチャートに示す動作を終了する。
【0112】
図11は、計測装置1(親機)における同期信号提供動作を示す。図11において、計測装置1は、ネットワークを介して通信可能に接続された計測装置1(子機)から、同期信号の提供の要求が取得されたか否かを判断する(ステップS41)。要求が取得されていないと判断した場合(ステップS41:NO)、親機は、ステップS41の処理を繰り返して要求の取得を待機する。
【0113】
一方、要求が取得されたと判断した場合(ステップS41:YES)、親機は、現在実行中の処理スロットの処理タイミングに基づき事項情報を生成する(ステップS42)。親機は、生成した同期信号を子機に提供して(ステップS43)、フローチャートに示す動作を終了する。
【0114】
図12は、計測装置1(子機)における処理タイミングの同期動作を示す。図12において、子機は、処理タイミングの同期を開始するか否かを判断する(ステップS51)。同期の開始は、例えば、子機の電源が投入されたとき、またはリセット操作がされたときに行われる。同期を開始しないと判断した場合(ステップS51:NO)、子機は、ステップS51の処理を繰り返し、同期の開始を待機する。
【0115】
一方、同期を開始したと判断した場合(ステップS51:YES)、子機は、親機に対して、同期信号の提供を要求する(ステップS52)。例えば、子機は親機からの最初の同期信号を受信することにより、親機のネットワーク上のアドレスを認識してもよく、また、子機は、IP(Internet Protocol)ネットワークにおいてノードの到達性を確認するためのコマンド(例えば、PINGコマンド)を送信し、応答があった装置のIPアドレスに対して同期信号の提供を要求するようにしてもよい。
【0116】
ステップS52の処理を実行した後、子機は、同期信号を取得したか否かを判断する(ステップS53)。同期信号を取得していないと判断した場合(ステップS53:NO)、子機は、タイムアウトとなるまで同期信号の取得を待機する。
【0117】
一方、同期信号を取得したと判断した場合(ステップS53:YES)、子機は、取得された同期信号に基づき、処理スロットにおける処理の処理タイミングをおおまかに調整(第1調整)する(ステップS54)。次に、子機は、波形に基づき、処理タイミングを詳細に調整(第2調整)する(ステップS55)。
【0118】
次に、子機は、親機に対して、同期信号の提供を要求する(ステップS56)。ステップS56における処理は、ステップS52における処理と同様である。
【0119】
次に、子機は、処理タイミングの同期が完了したか否かを判断する(ステップS57)。同期が完了したか否かは、上述したゼロクロス点が親機と一致したか否かで判断することができる。処理タイミングの同期が完了していないと判断した場合(ステップS57:NO)、子機は、ゼロクロス点を調整する(ステップS58)。ステップS58の処理を実行した後、子機は、再びステップS55~ステップS57の処理を繰り返して同期が完了したことを確認する。一方、処理タイミングの同期が完了したと判断した場合(ステップS57:YES)、子機は、フローチャートに示す処理を終了する。
【0120】
図12においては、同期信号の提供を子機が親機に要求する場合を示したが、例えば、設定情報に子機のアドレスを含ませる等により、親機が自発的に子機に対して同期信号を送信するようにしてもよい。
【0121】
なお、本実施形態で説明するフローチャートの各ステップにおける処理は、実行順序を限定するものではない。例えば、並列的に処理ができる処理の実行順序は、いずれの処理を先に実行してもよい。
【0122】
次に、図13を用いて、計測装置1(子機)の処理タイミングの調整を説明する。図13は、実施形態における子機の処理タイミングの調整の一例を示す図である。
【0123】
図13は、商用周波数(50Hx)における2周期分(0.02秒×2周期)における親機の同期信号と、子機における同期信号を示している。T(M)、C(M)およびS(M)は、親機における同期信号のパラメータである。T(S)、C(S)およびS(S)は、子機における同期信号のパラメータである。
【0124】
T(M)は、親機における時計の値である。時計の値は、例えば、親機に含まれる内部時計から取得することがきる。T(S)は、子機における時計の値である。時計の値は、例えば、子機に含まれる内部時計から取得することがきる。
【0125】
C(M)は、親機において商用波形の正負が反転するゼロクロス点をカウントしたゼロクロスカウンタの値である。ゼロクロスカウンタの値は、例えば、処理部12において、検出したゼロクロス点を1秒間において計数することにより得られることができる。例えば、商用周波数が50Hzである場合、1秒間に50回のゼロクロス点が存在するため、ゼロクロスカウンタの値は、0~49の値となる。同様に、C(S)は、子機において商用波形の正負が反転するゼロクロス点をカウントしたゼロクロスカウンタの値である。
【0126】
S(M)は、親機におけるサンプリングタイミングを示す値である。サンプリングタイミングは、波形起点を示すゼロクロスカウンタの値である。S(S)は、子機におけるサンプリングタイミングを示す値である。
【0127】
商用周波数における第1周期(図示する最初の0.02秒間)において、親機の同期信号のパラメータは、T(M)=948、C(M)=32、S(M)=10である。また、商用周波数における第2周期(図示する2番目の0.02秒間)において、親機の同期信号のパラメータは、T(M)=948、C(M)=33、S(M)=10である。すなわ、商用周波数の1周期において、親機のゼロクロスカウンタは「1」インクリメントされる。
【0128】
商用周波数における第1周期において、子機の同期信号は、T(S)=950、C(S)=3、S(S)=25である。すなわち、第1周期において、親機の同期信号と子機の同期信号にはズレが生じているものとする。商用周波数における第2周期において、子機の同期信号は、T(S)=950、C(S)=4、S(S)=25である。
【0129】
第2周期が開始されるゼロクロス点において、親機は、子機に対して同期信号のパラメータを送信する。子機は送信されたパラメータを取得して、取得したパラメータを自身の同期信号にコピーして設定する。これにより、子機の同期信号のパラメータは、T(S)=948、C(S)=33、S(S)=10となり、親機と同じ値になり、処理タイミングが調整される。
【0130】
子機の同期信号のパラメータを設定した後、親機に対して、パラメータの設定が完了したことを示す完了通知を送信する。親機は、完了通知を受信することにより、子機におけるパラメータの設定が成功したことを認識することができる。親機は、同期信号のパラメータを送信した後、所定の時間内に完了通知を受信しない場合、エラー処理を実行するようにしてもよい。エラー処理とは、例えば、同期信号のパラメータの再送信、またはエラーが発生したことの記録もしくは報知等である。なお、親機は、同期信号の送信から商用周波数の1周期以内(0.02秒以内)に完了通知を受信した場合、送信した同期信号が子機において同じ周期の範囲内で正しく設定されたことを確認することが可能となる。
【0131】
なお、図13で示した処理タイミングの調整は、上述のように第2周期が開始されるゼロクロス点において、親機が同期信号を送信するものであるため、子機において同期信号を設定するタイミングは、同期信号の送信から商用周波数の1周期以内である必要がある。すなわち、親機と子機の通信遅延は、少なくとも商用周波数の1周期以内である必要がある。例えば、子機は、PINGコマンドを送信し、親機からの応答時間を測定することにより、通信遅延を測定し、図13で示した処理タイミングの調整を実行可能か否か判定するようにしてもよい。
【0132】
なお、本実施形態で説明した装置を構成する機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、本実施形態の上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0133】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0134】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0135】
1 計測装置
10 計測システム
11 サンプリング部
111 時刻カウンタ
112 波数カウンタ
113 電圧測定部
114 電流測定部
12 処理部
13 設定情報取得部
14 設定保持部
15 動作制御部
16 通信制御部
2 計測データ管理装置
21 計測データ受信部
22 同期計測データ記憶部
23 同期計測データ処理部
24 処理データ記憶部
25 計測データ提供部
31 冷蔵庫
32 テレビ
33 電気ポット
34 太陽光発電器
35 電気自動車
41 スマートメータ
42 分電盤
43 パワーコンディショナ
5 設定情報管理装置
6 時刻提供装置
7 利用者端末
9 ネットワーク
101 CPU
102 RAM
103 ROM
104 タッチパネル
105 通信I/F
106 検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13