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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】リハビリ治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/04 20060101AFI20231005BHJP
   A61G 5/12 20060101ALI20231005BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20231005BHJP
   A61G 15/06 20060101ALI20231005BHJP
   A61H 1/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B6/04 333
A61G5/12 707
A61G5/10 703
A61G15/06
A61H1/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020088224
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021180794
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】397051911
【氏名又は名称】ソフトプレン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 文明
(72)【発明者】
【氏名】谷川 憲司
(72)【発明者】
【氏名】横地 敬
(72)【発明者】
【氏名】藤島 一郎
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106176068(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-0981927(KR,B1)
【文献】登録実用新案第3113250(JP,U)
【文献】特開2020-025858(JP,A)
【文献】特開2010-124885(JP,A)
【文献】特開2020-032766(JP,A)
【文献】登録実用新案第3126940(JP,U)
【文献】特開2000-201924(JP,A)
【文献】特開2006-198157(JP,A)
【文献】特開2014-064781(JP,A)
【文献】中国実用新案第210277526(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
A61G 5/00-5/14
A61G 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嚥下障害の患者が食べ物を良好に飲み込む得る姿勢データを造影にて取得する診断及び当該姿勢データに基づく嚥下障害のリハビリ治療のためのリハビリ治療装置であって、
前記診断とリハビリ治療とで共用され、患者を着座させ得る共用車椅子と、
該共用車椅子と一体化可能とされ、患者の診断に応じて当該共用車椅子を任意に昇降可能とするとともに、任意に前記共用車椅子との一体化が解除可能とされた台部と、
を具備し、且つ、
前記台部は、
車輪を有して移動可能とされるとともに、前記共用車椅子を昇降させる昇降部と、該昇降部に形成され、前記共用車椅子と連結及び当該共用車椅子との連結を解除可能な連結手段と、を有し、
前記共用車椅子は、
前記台部との一体化時に幅方向の位置決めを行うガイド部と、前記台部との一体化時に進行方向の位置決めを行うストッパ部と、を有し、
前記台部が前記共用車椅子に近づいて共用車椅子の下方に至る過程において、前記ガイド部にて幅方向の位置決め及び前記ストッパ部にて進行方向の位置決めが行われた後、前記昇降部が上昇して前記連結手段にて前記共用車椅子と連結することを特徴とするリハビリ治療装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記昇降部が上昇する過程で前記共用車椅子と連結するとともに、当該昇降部が下降する過程で前記共用車椅子との連結を解除可能とされたことを特徴とする請求項1記載のリハビリ治療装置。
【請求項3】
前記台部は、操作者が足で踏んで操作することにより前記昇降部を上昇又は下降させる上昇用操作部及び下降用操作部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のリハビリ治療装置。
【請求項4】
前記共用車椅子は、患者を特定の姿勢に保持するクッションが任意の位置に脱着可能とされたことを特徴とする請求項1~の何れか1つに記載のリハビリ治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嚥下障害等を有する患者が診断及びリハビリ治療に使用するためのリハビリ治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食べ物を良好に飲み込むことができない嚥下障害は、高齢者に多く見られるものの、適切なリハビリ(リハビリテーション)を行うことにより改善が見込めることから、病院やリハビリ施設においてリハビリ治療が行われている。従来、嚥下造影用チェアに患者を着座させ、食べ物を良好に飲み込むことができる姿勢を嚥下造影にて診断するとともに、その診断で得られた姿勢データをリハビリ治療に反映させることが行われている。なお、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術においては、嚥下造影用チェアにて姿勢データを得た後、その姿勢データに基づいてリハビリを行う際、嚥下造影用チェアとは別のリハビリ用チェアに患者を着座させていたので、姿勢データを正確に反映させることが難しいという問題があった。すなわち、姿勢データを取得する診断時の嚥下造影用チェアと、リハビリ時に使用するリハビリ用チェアとは相違するため、姿勢データを正確且つ円滑にリハビリ治療に反映させることができず、効率的なリハビリ治療を行うことができないのである。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、姿勢データの取得のための診断時とリハビリ治療時とで椅子を共用することにより姿勢データを正確に且つ円滑にリハビリ治療に反映させることができ、効率的なリハビリ治療を行わせることができるリハビリ治療装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、嚥下障害の患者が食べ物を良好に飲み込む得る姿勢データを造影にて取得する診断及び当該姿勢データに基づく嚥下障害のリハビリ治療のためのリハビリ治療装置であって、前記診断とリハビリ治療とで共用され、患者を着座させ得る共用車椅子と、該共用車椅子と一体化可能とされ、患者の診断に応じて当該共用車椅子を任意に昇降可能とするとともに、任意に前記共用車椅子との一体化が解除可能とされた台部とを具備し、且つ、前記台部は、車輪を有して移動可能とされるとともに、前記共用車椅子を昇降させる昇降部と、該昇降部に形成され、前記共用車椅子と連結及び当該共用車椅子との連結を解除可能な連結手段とを有し、前記共用車椅子は、前記台部との一体化時に幅方向の位置決めを行うガイド部と、前記台部との一体化時に進行方向の位置決めを行うストッパ部とを有し、前記台部が前記共用車椅子に近づいて共用車椅子の下方に至る過程において、前記ガイド部にて幅方向の位置決め及び前記ストッパ部にて進行方向の位置決めが行われた後、前記昇降部が上昇して前記連結手段にて前記共用車椅子と連結することを特徴とする。
【0007】
請求項記載の発明は、請求項1記載のリハビリ治療装置において、前記連結手段は、前記昇降部が上昇する過程で前記共用車椅子と連結するとともに、当該昇降部が下降する過程で前記共用車椅子との連結を解除可能とされたことを特徴とする。
【0008】
請求項記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のリハビリ治療装置において、前記台部は、操作者が足で踏んで操作することにより前記昇降部を上昇又は下降させる上昇用操作部及び下降用操作部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載のリハビリ治療装置において、前記共用車椅子は、患者を特定の姿勢に保持するクッションが任意の位置に脱着可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、診断とリハビリ治療とで共用され、患者を着座させ得る共用車椅子と、該共用車椅子と一体化可能とされ、患者の診断に応じて当該共用車椅子を任意に昇降可能とするとともに、任意に共用車椅子との一体化が解除可能とされた台部とを具備したので、姿勢データの取得のための診断時とリハビリ治療時とで椅子を共用することにより姿勢データを正確に且つ円滑にリハビリ治療に反映させることができ、効率的なリハビリ治療を行わせることができる。
【0012】
また、台部は、共用車椅子を昇降させる昇降部と、該昇降部に形成され、共用車椅子と連結及び当該共用車椅子との連結を解除可能な連結手段とを具備したので、連結手段による連結により共用車椅子を台部に強固に一体化させることができるとともに、安定して共用車椅子を昇降させることができる。
さらに、共用車椅子は、台部との一体化時に幅方向の位置決めを行うガイド部と、台部との一体化時に進行方向の位置決めを行うストッパ部とを有するので、共用車椅子と台部とを正確に一体化させることができる
【0013】
請求項の発明によれば、連結手段は、昇降部が上昇する過程で共用車椅子と連結するとともに、当該昇降部が下降する過程で共用車椅子との連結を解除可能とされたので、共用車椅子の昇降操作によって連結手段の連結又は連結の解除を行わせることができ、操作性を向上させることができる。
【0014】
請求項の発明によれば、台部は、操作者が足で踏んで操作することにより昇降部を上昇又は下降させる上昇用操作部及び下降用操作部を有するので、足で操作して昇降部を上昇又は下降させつつ台部や共用車椅子を手で支えることができ、操作性及び安全性を向上させることができる。
【0016】
請求項の発明によれば、共用車椅子は、患者を特定の姿勢に保持するクッションが任意の位置に脱着可能とされたので、診断による造影にて取得された患者の姿勢データに基づく姿勢をリハビリ治療において正確に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るリハビリ治療装置を示す斜視図
図2】同リハビリ治療装置を示す斜視図
図3】同リハビリ治療装置を構成する共用車椅子を示す斜視図
図4】同共用車椅子を示す斜視図
図5】同共用車椅子を示す正面図及び側面図
図6】同共用車椅子を示す平面図
図7】同リハビリ治療装置を構成する台部を示す斜視図
図8】同台部を示す平面図
図9】同台部(昇降部が下降端にある状態)を示す正面図及び側面図
図10】同台部(昇降部が上昇端にある状態)を示す正面図及び側面図
図11】同台部に配設された駆動機構を示す模式図
図12図9におけるXII-XII線断面図
図13】同台部の本体部を示す斜視図
図14】同台部の昇降部を示す斜視図
図15】同台部に配設された連結手段を示す斜視図
図16】同連結手段による連結及び連結の解除の動作を示す模式図
図17】本発明に適用される他の形態の共用車椅子(クッションが取り付けられる前の状態)を示す斜視図
図18】同共用車椅子(頭部用クッションが取り付けられた状態)を示す斜視図
図19】同共用車椅子(胴体部用クッションが取り付けられた状態)を示す斜視図
図20】同共用車椅子に取り付けられる頭部用クッションを示す斜視図
図21】同頭部用クッションを示す3面図
図22】同共用車椅子に取り付けられる胴体部用クッションを示す斜視図
図23】同胴体部用クッションを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るリハビリ治療装置は、患者の姿勢データを造影にて取得する診断及び当該姿勢データに基づくリハビリ治療のためのもので、図1、2に示すように、患者を着座させ得る共用車椅子Aと、共用車椅子Aと一体化可能とされ、患者の診断に応じて当該共用車椅子Aを任意に昇降可能とするとともに、任意に共用車椅子Aとの一体化が解除可能とされた台部Bとを有して構成されている。
【0019】
共用車椅子Aは、図3~6に示すように、患者が着座する着座部1と、着座部1の後方に立設された背もたれ部2と、移動のための4つの車輪3と、後方に延設されたハンドル部4と、着座部1の左右にそれぞれ取り付けられた肘掛け部5とを有して構成されている。かかる共用車椅子Aは、前後方向に延設された左右一対のフレームF1と、これらフレームF1を連結する前後一対のフレームF2とを有しており、フレームF1に前方の車輪3及び後方の車輪3が取り付けられている。
【0020】
本実施形態に係る共用車椅子Aは、着座部1に着座した患者の姿勢を任意に変更するために、図5の二点鎖線で示すように、背もたれ部2が任意角度に設定可能とされるとともに、図6の二点鎖線で示すように、着座部1が任意方向に揺動可能とされている。そして、背もたれ部2の傾斜角度や着座部1の揺動角度等は、目盛り板等に表示された数値や文字等により設定及び確認可能とされている。なお、背もたれ部2の傾斜角度は、図1~5に示すように、傾斜角度計17にて計測して記録することができる。
【0021】
さらに、共用車椅子Aにおける後方のフレームF2には、図2、4に示すように、板状部材から成るストッパ部7が固定されており、その一部が折り曲げ加工されて被係合部8が形成されている。また、フレームF1には、それぞれ前後方向に延設されたガイド部6が取り付けられており、共用車椅子Aと台部Bとの一体化時にガイド部6にて案内可能とされている。
【0022】
台部Bは、例えば診断時の造影室等に配設され、車輪11にて移動可能とされたもので、図7~14に示すように、昇降部9と、本体部10とを有して構成されている。本体部10は、図7、10、11に示すように、車輪11と、ハンドル部12と、上昇用操作部16a及び下降用操作部16bとを有して構成され、昇降部9が取り付けられる部位である収容部10aには、駆動により昇降部9を昇降動作させるための駆動機構Kが配設されている。
【0023】
本実施形態に係る駆動機構Kは、図10、11に示すように、出力軸K1aを有したモータK1と、ギアボックスK2と、伸縮部材K3と、第1リンク部材K4a及び第2リンク部材K4bとを具備して構成されており、上昇用操作部16a及び下降用操作部16bを踏んで操作することによりモータK1を駆動することにより作動可能とされ、昇降部9を上昇又は下降させ得るようになっている。
【0024】
具体的には、本体部10には、図示しないバッテリ(2次電池)が搭載されており、当該バッテリと駆動機構Kとは配線hを介して電気的に接続され、電力供給が可能とされている。そして、上昇用操作部16aを操作者が踏んで操作すると、駆動機構KのモータK1がバッテリの電力にて駆動して昇降部9を上昇させるとともに、下降用操作部16bを操作者が踏んで操作すると、駆動機構KのモータK2がバッテリの電力にて逆方向に駆動して昇降部9を下降させることができる。なお、図中符号bは、後方の車輪11を停止させるためのブレーキを示している。
【0025】
例えば、図11に示すように、伸縮部材K3は、ボールネジS1と、ボールネジS1を挿通した挿通孔S2aが形成された筒状部材S2とを有して構成され、挿通孔S2aの内周面には、ボールネジS1の外周面の雄ネジと螺合する雌ネジが形成されている。なお、筒状部材S2の先端は、昇降部の所定位置に配設された連結部材T(図10参照)に連結されている。また、ボールネジS1の基端部P2(プーリ又はスプロケット)とモータK1の出力軸K1aの先端部P1(プーリ又はスプロケット)との間には、無端状の懸架部材R(ベルト又はチェーン等)が懸架されている。これら基端部P2、先端部P1及び懸架部材Rは、ギアボックスK2内に収容されている。
【0026】
そして、モータK1を駆動させて出力軸K1aが正転すると、その駆動力が懸架部材Rを介してボールネジS1に伝達され、当該ボールネジS1を回転させることにより、筒状部材S2を伸長させる。これにより、筒状部材S2が連結部材Tを上方に向けて押圧するので、昇降部9が上昇することとなる。一方、モータK1を駆動させて出力軸K1aが逆転すると、その駆動力が懸架部材Rを介してボールネジS1に伝達され、当該ボールネジS1を回転させることにより、筒状部材S2を収縮させる。これにより、筒状部材S2が連結部材Tを下方に向けて引っ張るので、昇降部9が下降することとなる。
【0027】
第1リンク部材K4a及び第2リンク部材K4bは、一端が昇降部9及び他端が本体部10と連結されるとともに、軸部材La(図10参照)を中心として各々揺動自在とされたパンタグラフ状の部材から成り、モータK1が駆動して昇降部9が本体部10に対して上昇又は下降する際に追従して伸縮し得るよう構成されている。
【0028】
昇降部9は、本体部10の収容部10aに取り付けられて駆動機構Kにて上昇及び下降して上昇端位置(図10で示す状態)及び下降端位置(図9で示す状態)の間で変位可能とされたもので、図7、12、13に示すように、幅方向に左右一対取り付けられた延設部13と、前方に向かって突出形成された当接部14と、共用車椅子Aを一体化する際に連結してロックする連結手段15と、共用車椅子AのフレームF1と対応した位置に形成された受け部aとを有して構成されている。
【0029】
延設部13は、先端13aが互いに近接する方向に折り曲げられた長尺状部材から成り、共用車椅子Aのガイド部6(図4参照)と対応した位置に形成されている。そして、台部Bを共用車椅子Aの後方(ハンドル部4が形成された側)から近づけると、延設部13がガイド部6にて案内されて幅方向の位置決めが行われることとなる。すなわち、共用車椅子Aのガイド部6は、台部Bとの一体化時に被ガイド部13にて案内されて幅方向の位置決めを行うよう構成されている。
【0030】
当接部14は、昇降部9の中央位置において前方に向かって突出形成されたもので、共用車椅子Aのストッパ部7(図2、4参照)と対応した位置に形成されている。そして、台部Bを共用車椅子Aの後方(ハンドル部4が形成された側)から近づけると、当接部14がストッパ部7と当接して進行方向の位置決めが行われることとなる。すなわち、共用車椅子Aのストッパ部7は、台部Bとの一体化時に当接部14と当接して進行方向の位置決めを行うよう構成されている。
【0031】
しかるに、台部Bは、共用車椅子Aの後方から近づいて当該共用車椅子Aの下方に至る過程において、ガイド部6にて幅方向の位置決めが行われつつストッパ部7にて進行方向の位置決めが行われるので、共用車椅子A及び台部Bの間において幅方向及び進行方向の相対的位置決めがなされることとなる。かかる状態においては、台部Bの受け部aと共用車椅子AのフレームF1とが対峙した状態とされ、昇降部9が上昇すると、受け部aがフレームF1に当接して一体化し得るようになっている。
【0032】
連結手段15は、昇降部9に形成され、共用車椅子Aと連結及び当該共用車椅子Aとの連結を解除可能なもので、昇降部9が上昇する過程で共用車椅子Aと連結するとともに、当該昇降部9が下降する過程で共用車椅子Aとの連結を解除可能とされている。かかる連結手段15は、当接部14を挟んだ位置にそれぞれ形成されており、図15に示すように、第1係止部15a及び第2係止部15bを有するとともに、軸Lを中心として揺動自在とされている。
【0033】
そして、共用車椅子A及び台部Bの間において幅方向及び進行方向の相対的位置決めがなされると、図16(a)に示すように、第1係止部15aの上方に共用車椅子Aの被係合部8がそれぞれ位置するよう設定されており、医師等の操作者が上昇用操作部16aを踏んで操作することにより昇降部9が上昇すると、同図(b)に示すように、第1係止部15aが被係止部8と干渉して下方に押圧され、連結手段15が軸Lを中心として時計回りに揺動する。
【0034】
これにより、同図(c)に示すように、被係止部8が第2係止部15bにて押圧されて係止されることとなり、昇降部9の上昇過程において共用車椅子Aと台部Bとが連結されることとなる。なお、連結手段15は、図16(c)の位置において図示しないスプリングにより付勢されるよう構成されており、被係合部8に対して第2係止部15bが下方に押圧して強固にロックし得るようになっている。
【0035】
その後、昇降部9は、上昇端位置(図10で示す位置)まで達すると停止するので、共用車椅子Aを所定の高さに維持させることができ、造影による診断が行われることとなる。造影においては、上昇用操作部16a及び下降用操作部16bを任意に操作して所望の位置で診断可能とされており、例えば背もたれ部2に取り付けられた接着部材(図1、3、5参照)により任意位置に任意の大きさのクッション(後述の他の実施形態で説明する)が固定されて患者の姿勢を種々変更可能とされている。
【0036】
このように患者の姿勢を任意変更しつつ造影することにより、食べ物を良好に飲み込み得る姿勢データを取得することができる。かかる姿勢データは、背もたれ部2の傾斜角度や当該背もたれ部2に取り付けられたクッションの位置及び大きさとして取得され、リハビリ治療時に利用するために記録されることとなる。
【0037】
一方、診断の終了後、医師等の操作者が下降用操作部16bを踏んで操作することにより昇降部9が下降すると、図16(c)に示すように、第2係止部15bが被係合部8にて押圧されるので、図示しないスプリングの付勢力に抗して連結手段15が軸Lを中心として反時計回りに揺動し、同図(b)の状態を経て同図(a)の状態となる。これにより、昇降部9の下降過程において共用車椅子Aと台部Bとの連結が解除されることとなる。
【0038】
そして、昇降部9は、下降端位置(図9で示す位置)まで達すると停止することとなり、共用車椅子Aと台部Bとの一体化が解除されるので、共用車椅子Aのみをリハビリ治療室まで移動させることができ、造影時に得られた姿勢データに基づいてリハビリ治療が行われることとなる。このように、共用車椅子Aは、造影にて姿勢データを取得する診断時とリハビリ治療時とで共用することができるのである。
【0039】
次に、患者に合わせた任意のクッションを取付可能とされた他の形態としての共用車椅子Aについて説明する。
本実施形態に適用される共用車椅子Aは、上記実施形態と同様、患者を着座させ得るとともに、台部Bと一体化可能とされ、患者の診断に応じて任意に昇降可能とされ、任意に一体化が解除可能とされたものである。なお、上記実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0040】
ここで、本実施形態に係る共用車椅子Aは、背もたれ部2に接着部Mが形成され、患者を特定の姿勢に保持するクッションが任意の位置に脱着可能とされたもので、図17~19に示すように、着座部1に着座した患者の頭部に位置する部位に取付可能な頭部用クッションC1と、着座部1に着座した患者の胴体に位置する部位に取付可能な胴体部用クッションC2が任意に取付可能とされている。
【0041】
頭部用クッションC1は、図20、21に示すように、患者の頭部を支持可能な枕形状とされたもので、接着部Mに接着可能な被接着部mを有して構成されるとともに、接着部Mに被接着部mを接着して固定させることにより、患者の頭部を所定の姿勢にて保持し得るようになっている。なお、頭部用クッションC1は、形状及び寸法を異ならせた同様のものが複数用意されており、患者に合わせて選択的に取り付け可能とされている。
【0042】
胴体部用クッションC2は、図22、23に示すように、患者の胴体部を支持可能な形状とされたもので、接着部Mに接着可能な被接着部mを有して構成されるとともに、接着部Mに被接着部mを接着して固定させることにより、患者の胴体部を所定の姿勢にて保持し得るようになっている。なお、胴体部用クッションC2は、形状及び寸法を異ならせた同様のものが複数用意されており、患者に合わせて選択的に取り付け可能とされている。
【0043】
本実施形態に係る共用車椅子Aによれば、患者を特定の姿勢に保持するクッション(本実施形態においては頭部用クッションC1及び胴体部用クッションC2)が任意の位置に脱着可能とされたので、診断による造影にて取得された患者の姿勢データに基づく姿勢をリハビリ治療において正確に再現することができる。なお、脱着可能なクッションは、患者の他の部位を支持し、その部位を特定の姿勢に保持するものであってもよい。
【0044】
上記2つの実施形態によれば、患者を着座させ得る共用車椅子Aと、該共用車椅子Aと一体化可能とされ、患者の診断に応じて当該共用車椅子Aを任意に昇降可能とするとともに、任意に共用車椅子Aとの一体化が解除可能とされた台部Bとを具備したので、姿勢データの取得のための診断時とリハビリ治療時とで椅子を共用することにより姿勢データを正確に且つ円滑にリハビリ治療に反映させることができ、効率的なリハビリ治療を行わせることができる。
【0045】
また、本実施形態に係る台部Bは、共用車椅子Aを昇降させる昇降部9と、該昇降部9に形成され、共用車椅子Aと連結及び当該共用車椅子Aとの連結を解除可能な連結手段15とを具備したので、連結手段15による連結により共用車椅子Aを台部B(具体的には昇降部9)に強固に一体化させることができるとともに、安定して共用車椅子Aを昇降させることができる。
【0046】
特に、本実施形態に係る連結手段15は、昇降部9が上昇する過程で共用車椅子Aと連結するとともに、当該昇降部9が下降する過程で共用車椅子Aとの連結を解除可能とされたので、共用車椅子Aの昇降操作によって連結手段15の連結又は連結の解除を行わせることができ、操作性を向上させることができる。さらに、本実施形態に係る台部Bは、操作者が足で踏んで操作することにより昇降部9を上昇又は下降させる上昇用操作部16a及び下降用操作部16bを有するので、足で操作して昇降部9を上昇又は下降させつつ台部Bや共用車椅子Aを手で支えることができ、操作性及び安全性を向上させることができる。
【0047】
またさらに、本実施形態に係る共用車椅子Aは、台部Bとの一体化時に幅方向の位置決めを行うガイド部6と、台部Bとの一体化時に進行方向の位置決めを行うストッパ部7とを有するので、共用車椅子Aと台部Bとを正確に一体化させることができる。そして、ガイド部6及びストッパ部7により、共用車椅子A及び台部Bの間において幅方向及び進行方向の相対的位置決めがなされることにより、昇降部9を上昇させる際に正確な位置で共用車椅子Aを一体化させることができる。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば駆動機構Kが昇降部9を昇降させるための他の汎用液機構から成るものとしてもよく、連結手段15は、昇降部9が上昇又は下降する過程で連結又は連結の解除が行われず、別個の操作にて連結するものとしてもよい。また、本実施形態に係る台部Bは、車輪11を有することにより移動自在とされているが、造影装置の近傍に固設されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
患者を着座させ得る共用車椅子と、該共用車椅子と一体化可能とされ、患者の診断に応じて当該共用車椅子を任意に昇降可能とするとともに、任意に共用車椅子との一体化が解除可能とされた台部とを具備したリハビリ治療装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 着座部
2 背もたれ部
3 車輪
4 ハンドル部
5 肘掛け部
6 ガイド部
7 ストッパ部
8 被係合部
9 昇降部
10 本体部
10a 収容部
11 車輪
12 ハンドル部
13 延設部
13a 先端部
14 当接部
15 連結手段
15a 第1係止部
15b 第2係止部
16a 上昇用操作部
16b 下降用操作部
17 傾斜角度計
A 共用車椅子
B 台部
F1 フレーム
F2 フレーム
a 受け部
b ブレーキ
K 駆動機構
K1 モータ
K1a 出力軸
K2 ギアボックス
K3 伸縮部材
K4a 第1リンク部材
K4b 第2リンク部材
T 連結部材
P1、P2 プーリ又はスプロケット
S1 ボールネジ
S2 筒状部材
S2a 挿通穴
R 無端状の懸架部材
h 配線
M 接着部
m 被接着部
C1 頭部用クッション
C2 胴体部用クッション
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