(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】オーガ中間振止めの異常接近警告装置
(51)【国際特許分類】
E21B 7/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
E21B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020068978
(22)【出願日】2020-04-07
【審査請求日】2023-01-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)公開日:令和 1年11月 1日 公開場所:前田建設工業株式会社 東京建築支店(東京都千代田区九段北4丁目3-1) (2)公開日:令和 1年12月25日 公開場所:鹿島建設株式会社 東京建築支店 機材部(東京都港区元赤坂一丁目3番8号 KTビル)
(73)【特許権者】
【識別番号】000179915
【氏名又は名称】ジェコス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000177416
【氏名又は名称】三和機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩二
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏男
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162443(JP,A)
【文献】特開2009-243186(JP,A)
【文献】特開2012-219556(JP,A)
【文献】特開2003-041569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02F 5/02
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガロッドの減速機に吊り部材によって吊り下げられ、前記減速機と前記減速機の下方に位置する前記オーガロッドの下部振止めとの間を、前記減速機および前記減速機に垂設された前記オーガロッドと共に降下しながら、前記オーガロッドの横振れを防止する中間振止めの異常接近警告装置であって、前記減速機から前記中間振止めまでの距離を測定する距離測定装置と、前記距離測定装置によって測定された距離が、設定された距離以下に達したとき危険を知らしめる警告装置とを備え、前記距離測定装置として前記減速機に取り付けられ、前記中間振止めに取り付けられたターゲットに向けてレーザ光を照射して、前記減速機から前記中間振止めまでの距離を導き出すレーザ距離計を備えていることを特徴とするオーガ中間振止めの異常接近警告装置。
【請求項2】
請求項1記載のオーガ中間振止めの異常接近警告装置において、前記減速機の側部にレーザ取付けアームが脱着かつ収納可能に取り付けられ、当該レーザ取付けアームに前記レーザ距離計が脱着可能に取り付けられていることを特徴とするオーガ中間振止めの異常接近警告装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のオーガ中間振止めの異常接近警告装置において、前記中間振止めの側部にターゲット取付けアームが脱着かつ収納可能に取り付けられ、当該ターゲット取付けアームに前記ターゲットが脱着可能に取り付けられていることを特徴とするオーガ中間振止めの異常接近警告装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のオーガ中間振止めの異常接近警告装置において、前記警告装置としてブザーが設置されていることを特徴とするオーガ中間振止めの異常接近警告装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のオーガ中間振止めの異常接近警告装置において、前記警告装置として回転灯が設置されていることを特徴とするオーガ中間振止めの異常落下監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガ中間振止めの異常接近警告装置に関し、オーガロッドの減速機と下部振止めとの間を前記減速機および前記中間振止めと共に重力によって降下するオーガ中間振止めの不測の落下事故を未然に防止できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
三点支持式杭打ち機は、自走式台車(以下「ベースマシン」)に1本のリーダと当該リーダを支える2本のステーを備え、リーダに各種工法に対応した減速機とフロントアタッチメントが据え付けられている。
【0003】
例えば、地中に連続したソイルセメント柱列壁を造成するソイルセメント柱列式連続壁工法では、フロントアタッチメントとして三軸ないし五軸のオーガロッドと当該オーガロッドを駆動する掘進機構(以下「減速機」)が据え付けられている。
【0004】
また、リーダの下端部と中間部に掘進時のオーガロッドの横振れや傾き等を防止する下部振止めと中間振止めがそれぞれ据え付けられており、特に中間振止めは減速機に吊りチェーン等の吊り部材によって吊り下げられ、減速機と下部振止めとの間を減速機およびオーガロッドと共にリーダのガイドレールにガイドされながら重力によって降下することにより、オーガロッドの掘進時の傾きや横振れ等を防いでいる。
【0005】
しかし、オーガロッドが傾いている等の何らかの不具合により、中間振止めがガイドレール上で引っ掛かった状態で停止し、減速機とオーガロッドのみが降下することにより吊り部材に弛みが生じ、その後、引っ掛かりが解消されて中間振止めが突然落下して、事故の原因となるといったことがあった。
【0006】
このような中間振止めの落下事故を防止する装置として、例えば、特許文献1にアースオーガから吊下げ材にて吊下げられている掘削ロッドの振止として、リーダ上部とリーダ下部との中間にあって、リーダのレール上を自重で降下する中間振止の異常落下を警告する検出警告装置の発明が開示されている。
【0007】
簡単に説明すると、前記中間振止の吊下げ材の弛みを検出する手段と、前記中間振止が降下し、前記リーダの下部に取り付けられた前記掘削ロッドの下部振止の上に預けられたことを検出する手段と、前記中間振止が前記下部振止の上になく、吊下げ材の弛みを検出したとき、警告を発する手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特第4725912号公報
【文献】特開2017-172972号公報
【文献】特開2012-225111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に開示された警告装置の発明は、中間振止めを吊っている吊下げ材の弛みから中間振止めの異常落下を事前に察知して危険を知らしめる構成であるため、吊下げ材にどの程度の弛みが発生したら中間振止めに異常落下の危険性が有るとするか、また、そのために吊下げ材の長さをどの程度に設定するのが望ましいか等について検討する必要があった。
【0010】
また、吊下げ材の弛みを検出したとき、警告を発する手段の回路の設置や設定が面倒なだけでなく、吊下げ材の弛みや長さ、警告を発する手段の設定が適切でないと、的確に作動しないおそれがあった。
【0011】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、オーガロッドの減速機および中間振止めへの設置および操作がきわめて簡単で、かつオーガロッドの減速機から中間振止めまでの距離をレーザ距離計によって直接監視することにより、中間振止めの異常落下を確実に防止できるようにしたオーガ中間振止めの異常接近警告装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、オーガロッドの減速機に吊り部材によって吊り下げられ、前記減速機と前記減速機の下方に位置する前記オーガロッドの下部振止めとの間を、前記減速機および前記減速機に垂設された前記オーガロッドと共に降下しながら、前記オーガロッドの横振れを防止する中間振止めの異常接近警告装置の発明であり、前記減速機から前記中間振止めまでの距離を測定する距離測定装置と、前記距離測定装置によって測定された距離が設定された距離以下に達したとき危険を知らしめる警告装置とを備え、前記距離測定装置として前記減速機に取り付けられ、前記中間振止めに取り付けられたターゲットに向けてレーザ光を照射して、前記減速機から前記中間振止めまでの距離を導き出すレーザ距離計を備えていることを特徴とするものである。
【0013】
前記レーザ距離計によれば、前記レーザ距離計から照射されたレーザ光が前記ターゲットに当たってから反射して前記レーザ距離計に戻るまでの時間から、前記減速機から前記中間振止めまでの距離を容易にかつ正確に導き出すことができる。
【0014】
また、前記減速機の側部にレーザ取付けアームを脱着かつ収納可能に取り付け、当該レーザ取付けアームに前記レーザ距離計が脱着可能に取り付けてあれば、前記減速機およびレーザ距離計のメンテナンスや補修、保管等に際して取り扱いが容易になる。
【0015】
また、前記ターゲットについても、前記中間振止めの側部に脱着かつ収納可能に取り付けられたターゲット取付けアームに脱着可能に取り付けてあれば、前記中間振止めやターゲット等のメンテナンスや補修、保管等に際して取り扱いが容易になる。
【0016】
前記警告装置としてはブザー、サイレン、回転灯(パトランプ)などであればよい。また、レーザ距離計の測定距離が当初設定した値に達したとき、すなわち、前記減速機と前記中間振止め間の距離が危険な距離になったとき、ブサーやパトランプ等の警告装置が作動することにより危険を知らしめるようにしてあればよい。
【0017】
また、前記減速機と前記中間振止めの降下高さがあとわずかで、安全な高さに達したとき、および中間振止めが下部振止めの上に載ったとき、警告装置は自動停止するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、オーガロッドの減速機から中間振止めまでの距離をレーザ距離計によって直接測定し、前記減速機から中間振止めまでの距離が設定値以下になったとき、ブザーや回転灯などの警告装置によって危険を知らしめるようになっており、特に前記減速機から前記中間振止めまでの距離はレーザ距離計によって正確かつ容易に測定することができるため、中間振止めの異常落下をブザー等の警告装置によって事前に正確かつ確実に知らしめることができる。
【0019】
また、レーザ距離計は既存の距離計であるため、設置および設定が簡単であり、また操作も容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】オーガ中間振止めの異常接近警告装置を備えた三点支持式杭打ち機の側面図である。
【
図2】
図1に図示する三点支持式杭打ち機のイ-イ線拡大矢視図である。
【
図4】図(a)は
図2におけるハ-ハ線拡大矢視図、図(b)は図(a)におけるニ-ニ線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図4は、ベースマシン1に1本のリーダ2と当該リーダ2を支える2本のステー3,3を備えた三点支持式杭打機4を図示したものであり、当該杭打機4のリーダ2に三軸のオーガロッド5と当該オーガロッド5を駆動する減速機6が据え付けられている。
【0022】
また、リーダ2の下端部と中間部に施工時のオーガロッド5の横振れや傾き等を防止する下部振止め7と中間振止め8がそれぞれ据え付けられている。
【0023】
中間振止め8は、減速機6に吊りチェーン等の吊り部材9によって減速機6と下部振止め7との間に吊り下げられ、かつリーダ2のフロント部に取り付けられたガイドレール10に昇降自在にガイドされている。
【0024】
そして、中間振止め8は、減速機6およびオーガロッド5と共に自重によって降下しながら、オーガロッド5の横振れや傾きを阻止するようになっている。
【0025】
また、減速機6から中間振止め8までの距離Lを測定する測定装置として、レーザ距離計11とターゲット12がオーガ減速機6と中間振止め8にそれぞれ取り付けられている。
【0026】
また、ベースマシン1にはレーザ距離計11によって測定された距離Lが設定値以下になったときに、周囲に注意を促す警告装置としてブザー13と回転灯(パトランプ)14、そしてブザー13と回転灯14に電力を供給するバッテリー15がそれぞれ搭載されている。
【0027】
レーザ距離計11は、レーザ光によって目標までの距離を測る距離計測器であり、レーザ距離計11からターゲット12に向けてレーザ光を照射し、かつレーザ光がターゲット12に当たってから反射して戻るまでの時間から減速機6から中間振止め8までの距離L、すなわち減速機6から中間振止め8までの距離を導き出せるように構成されている。
【0028】
この場合のレーザ距離計11は、減速機6の側部にレーザ取付けアーム16を介して取り付けられ、ターゲット12は中間振止め8の側部にターゲット取付けアーム17を介し、レーザ距離計11と鉛直方向に対向して取り付けられている。
【0029】
そして、レーザ距離計11から照射されたレーザ光が中間振止め8のターゲット12に当たってから反射してレーザ距離計11まで戻るまでの時間から、減速機6から中間振止め8までの距離、L、すなわち、減速機6から中間振止め8までの距離を導き出せるようになっている。
【0030】
レーザ取付けアーム16は、減速機6の側部に溶接付けされたタップ座18に取付けボルト等によって脱着可能に取り付けられ、かつ減速機6の側方に片持ち梁状に水平に所定長張り出されている。
【0031】
また、レーザ取付けアーム16は、減速機6の運搬時など距離Lを測定しないときは、向きを変え減速機6の側面に沿わせて、脱着可能に取り付けられるようになっている(
図3(想像線)参照)。
【0032】
なお、レーザ取付けアーム16は、例えば、L形鋼などの形鋼の一方のフランジにレーザ距離計11をボルト止めするための取付け孔を長手方向に等間隔に開け、かつ基端側部にタップ座18にボルト止めするためのベースプレートを取り付ける等して形成されている。
【0033】
レーザ距離計11は、レーザ取付けアーム16の側部に取付けボルト等によって脱着可能に取り付けられ、また、レーザ取付けアーム16の長手方向の任意の位置に、適切な取付け孔を選択して脱着可能に取り付けられている。
【0034】
ターゲット取付けアーム17は、固定部17a、アーム部17bおよび方杖部17cを備え、アーム部17bの上にターゲット12が脱着可能に取り付けられている。
【0035】
固定部17a、アーム部17bおよび方杖部17cは、いずれも鋼材などからなる一対の長尺材から形成され、そのうち、固定部17aとしての長尺材は、中間振止め8の側面部に中間振止め8の周方向に所定の間隔を開け、鉛直に取り付けられている。
【0036】
また、固定部17aとしての長尺材は、中間振止め8の側面部に溶接付けされたタップ座18に取付けボルト等によって脱着可能に取り付けられている。
【0037】
アーム部17bとしての長尺材は、固定部17aとしての各長尺材の上端部に鉛直面内を回転自在に連結され、また、方杖部17cとしての各長尺材の上端部は、アーム部17bとしての各長尺材の先端部よりやや内側部分に鉛直面内を回転自在に連結され、下端部は固定部17aとしての各長尺材の下端部に取付けボルトまたはピン等によって脱着可能に連結されている。
【0038】
そして、レーザ距離計11からのレーザ光照射時は、アーム部17bは固定部17aの上端部から中間振れ止め8の側方に水平に張出され、かつ方杖部17cがアーム部17bの先端部よりやや内側部分と固定部17aの下端部との間に斜めに架設されている。これによりアーム部17bは中間振止めの側方に水平に保持され、アーム17bの上に取り付けられたターゲット12はレーザ距離計11と鉛直方向に対向する。
【0039】
また、移動時などのレーザ光を照射しないときは、方杖部17cの下端部は固定部17aの下端部から外され、かつアーム部17bが固定部17aの上端部を軸に矢印方向に旋回することにより、アーム部17bとターゲット12は、方杖部17cと共に中間振止め8の上に載せて収納することができる。
【0040】
この場合、固定部17aとしての長尺材の上端部が、中間振止め8の上端面より上方に少し突出してあれば、中間振止め8が衝撃などで少々傾いたり揺れたりしても、アーム部17bと方杖部17cおよびターゲット12は、中間振止め8の上に安定した状態で収納することができる。
【0041】
ブザー13は、減速機6から中間振止め8までの距離Lが、当初設定された設定値以下となったときに警告を発して周囲に注意を促し、また回転灯(パトランプ等)14は点灯してブザー13と共に周囲に危険を知らしめる。なお、ブザー13には減速機6と中間振止め8間の距離Lがリアルタイムで表示される表示器が設けられている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、減速機と中間振止め間の距離をレーザ距離計によって監視することにより、中間振止めの落下事故を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ベースマシン
2 リーダ
3 ステー
4 三点支持式杭打機
5 オーガ(オーガロッド)
6 オーガロッドの減速機
7 オーガロッドの下部振止め
8 オーガロッドの中間振止め
9 吊り部材
10 ガイドレール
11 レーザ距離計(距離測定装置)
12 ターゲット
13 ブザー(警告装置)
14 回転灯(警告装置)
15 バッテリー
16 レーザ取付けアーム
17 ターゲット取付けアーム
18 タップ座