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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 1/32 20060101AFI20231005BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16K1/32 B
F16K1/42 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019042195
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143759
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】平松 浩司
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】三谷 展弘
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-100862(JP,A)
【文献】実開昭54-036828(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入通路、流出通路及びこれらの通路の間に形成された弁座を有するバルブボディと、
前記弁座と当接・離間する弁体を備える弁棒と、を有するバルブであって、
前記流出通路は、内部を流体が流れ出る管により形成され、当該管の軸と前記弁棒の軸とが同軸であり、
前記弁体には、当該弁体の先端から前記弁棒の軸方向に延びて形成される被ガイド部が備えられており、当該被ガイド部の側面は、前記管の内周面によって前記弁棒の軸方向にガイドされ、前記ガイド部の形状は、前記弁座によって形成される穴を貫通することが出来ない形状であることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
前記弁体の横断面が円形状であり、前記弁座の横断面が円環形状であり、前記被ガイド部の横断面の外周が円であり、前記弁体の横断面、前記弁座の横断面及び前記被ガイド部の横断面の中心が同芯であることを特徴とする請求項1に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程で真空チャンバー内と真空ポンプとを接続する流路の途中に設けられるバルブには、ヒータを内蔵し、ベローズが備えられて、200℃を超えるような高温条件で使用されるものがある。特許文献1に記載のバルブは、高温用のベローズ弁であり、弁棒にヒータを内蔵している。
【0003】
バルブは、流入通路、流出通路を連通する連通部を有するバルブボディと、この連通部に配設される弁体とを有している。手動バルブの場合は上部に備えられるハンドルによって、自動バルブの場合はモータ等によって弁体は駆動させられ、ハンドルまたはモータ等と先端に弁体を形成する弁棒との間に、ステムと呼ばれる連結部材が介在している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のバルブでは、弁座と当接・離間する弁体を先端に有する弁棒は、流量の精密な調整のため通常の制御バルブに比べて長い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4923105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先端に弁体を有する弁棒が長いと、弁体と弁座が当接する際に軸ずれが起こりやすい。軸ずれが起こると、弁体と弁座の当接面にかかる圧力が一定でなくなり、偏りが生じることとなる。接触圧の偏りが生じると、弁を閉状態としても流体が流出通路へ漏れ出る可能性が高くなる。また、接触圧の偏りが生じると、弁座及び/または弁体に偏摩耗が生じて、バルブの寿命が短くなる原因ともなる。
【0007】
この発明の目的は、先端に弁体を備える弁棒の長さが長いバルブにおいて、弁体と弁座の間の軸ずれを抑える調芯機能を備え、両者の間にかかる接触圧の偏りが抑えられ、バルブの寿命が従来のバルブに比べて長くなるバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、流体の流入通路、流出通路及びこれらの通路の間に形成された弁座を有するバルブボディと、前記弁座と当接・離間する弁体を備える弁棒と、を有するバルブであって、前記出口通路は、内部を流体が流れ出る管により形成され、当該管の軸と前記弁棒の軸とが同軸であり、前記弁体には、当該弁体の先端から前記弁棒の軸方向に延びて形成される被ガイド部が備えられており、当該被ガイド部の側面は、前記管の内周面によって前記弁棒の軸方向にガイドされるバルブである。
【0009】
本発明(1)には、弁体の先端から弁棒の軸方向に延びて形成される被ガイド部が備えられており、この被ガイド部の側面は、内部を流体が流出する管の内周面によって弁棒の軸方向にガイドされるので、管の内面にガイドされる被ガイド部が弁棒の軸ブレを抑える役割を果たす。
【0010】
このような被ガイド部の作用によって、弁棒の軸ブレが抑えられ、先端の弁体も軸ブレが抑えられるので、弁体と弁座の間の軸ずれが抑えられ、両者の間に係る接触圧の偏りが抑えられ、流体のリークが起こりにくく、バルブの寿命も従来のバルブに比べて長くなる。
【0011】
本発明(2)は、前記弁体の横断面が円形状であり、前記弁座の横断面が円環形状であり、前記被ガイド部の横断面の外周が円であり、前記弁体の横断面、前記弁座の横断面及び前記被ガイド部の横断面の中心が同芯であることを特徴とする本発明(1)のバルブである。
【0012】
本発明(2)のバルブでは、弁体の横断面が円形状であり、弁座の横断面が円環形状であり、被ガイド部の横断面の外周が円であり、前記弁体の横断面、前記弁座の横断面及び前記被ガイド部の横断面の中心が同芯であるので、形状が単純であり、製造コストを下げることができる。
【0013】
本発明(3)は、流体の流入通路、流出通路及びこれらの通路の間に形成された弁座を有するバルブボディと、前記弁座と当接・離間する弁体を備える弁棒と、を有するバルブであって、前記弁座は、薄板により形成された平面視円環状であり、当該弁座の外周縁部は、前記バルブボディに固定され、内周縁部は前記弁体の当接面と当接するように前記流出通路側に向けて傾斜する面を備えているバルブである。
【0014】
本発明(3)のバルブには、本発明(1)や(2)のような被ガイド部は備えられていない。その代わりに、弁座は、薄板により形成された平面視円環状であり、当該弁座の外周縁部は、前記バルブボディに固定され、内周縁部は前記弁体の当接面と当接するように前記流出通路側に向けて傾斜可能な面を備えていることを特徴としている。
【0015】
本発明(3)では、弁座が薄板によって形成されているので弾力性があり、弁棒の軸ブレが発生して、先端の弁体の軸ブレが生じたとしても、弁座表面の形状が弁体の当接面に倣うように変形するので、弁体と弁座との間の当接面に発生する接触圧の偏りが起こりにくくなる。その結果、流体のリークが起こりにくく、バルブの寿命も従来のバルブに比べて長くなる
【0016】
本発明(4)は、前記外周縁部が、下面を円環状の下部支え板によって、上面を円環状の上部支え板によって挟持されて前記バルブボディに固定されており、前記外周縁部と前記内周縁部の間の下面側に、前記下部支え板の下方から螺入された複数の雄ねじ先端部を収納する雄ねじ先端部収納空間を有することを特徴とする本発明(3)に記載のバルブである。
【0017】
本発明(4)のバルブでは、薄板で形成された弁座の外周縁部を挟持してバルブボディに固定する円環状の上部支え板と下部支え板のうち下部支え板の下方から螺入された複数の雄ねじ先端部を収納する雄ねじ先端部収納空間が、弁座の外周縁部と内周縁部の間の下面側に設けられていることを特徴としている。
【0018】
下部支え板の下方から螺入された複数の雄ねじ先端部は、雄ねじの螺入の程度でその先端と弁座下面との間の距離を調整できる。この調整によって、薄板で形成された弁座の弾力性を調整することができ、薄板を交換しなくとも弁座の適切な弾力性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明のバルブによると、先端に弁体を備える弁棒の長さが長いバルブにおいて、弁体と弁座の間の軸ずれを抑える調芯機能を備え、両者の間にかかる接触圧の偏りが抑えられ、バルブの寿命も従来のバルブに比べて長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】この発明によるバルブの実施例1を示す。
図2】実施例1のバルブに用いられる被ガイド部の斜視図を示す。
図3】実施例2のバルブに用いられる被ガイド部の斜視図を示す。
図4】この発明によるバルブの実施例3の一部を示す。
図5】実施例3のバルブに用いられる被ガイド部付近の拡大断面図を示す。
図6】実施例4のバルブに用いられる被ガイド部付近の拡大断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。また、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
図1は、この発明による実施例1のバルブを示している。このバルブは、バルブボディ10とアクチュエータ24とその間のステー23の3つの構成部分を有している。
【0023】
バルブボディ10には、流入通路11および流出通路12が設けられ、流入通路11および流出通路12の間には弁座13は備えられている。弁座13と当接・離間する接触面を有する弁体14が、垂直に備えられ、弁体14は弁棒15の下部先端側に形成されている。弁体14は弁棒15によって吊設された状態 で、後述する被ガイド部40を備えていない状態では、軸心方向の位置が一定しない。実施例1のタイプのバルブでは、流体(ガス)の結露を防止するためのヒータ17が弁棒15の内部のヒータ収納空間16に収められている。動力ライン21は、ヒータ17を加熱するためのものである。流体のリークを防止するためのベローズ18が備えられている。バルブボディ10の上部は、弁棒15が貫通する蓋部材19とカバー材20でカバーされている。弁棒15の上端部は、ステム22と接続されており、ステム22は、アクチュエータ24の軸と接続され、アクチュエータ24によって、上下に駆動される。アクチュエータ24は、ステー23によってバルブボディ10に取り付けられている。
【0024】
弁体14の下端から弁棒15の軸方向下方に延びる被ガイド部40が備えられている。流体の流出通路12は、バルブディ10の下部に取り付けられた管30の内部に設けられている。この管30の軸と弁棒15の軸とは同軸になるように調整されている。
【0025】
被ガイド部40は、実施例1では平板状になっており、この平板の側面が、管30の内周面にガイドされる構造になっている。この構造によって、弁棒15の長さが非常に長いバルブであっても弁棒15の軸ずれを抑えることができるので、両者の間にかかる接触圧の偏りが抑えられ、バルブの寿命も、このような構造のない従来のバルブに比べて長くすることができる。
【0026】
図2は、実施例1のバルブに用いられる被ガイド部40の斜視図を示している。弁棒15の先端部中央から被ガイド部首42が下方に突出し、被ガイド部首42の下方に被ガイド部板41が形成されている。被ガイド部板41は、基本形状が円板状で被ガイド部孔44が4個設けられている。この穴を流体が通る。被ガイド部板41の側面43が管30の内面によってガイドされる。
【0027】
図3は、実施例2のバルブに用いられる被ガイド部の斜視図を示す。実施例2のバルブの基本構成は、実施例1と同じであるが、被ガイド部の形状のみが異なっている。実施例2のバルブの被ガイド部50は、実施例1の被ガイド部40と同じく、弁棒15の先端部中央から被ガイド部首52が下方に突出し、被ガイド部首52の下方に被ガイド部板51が形成されている。被ガイド部板51は、円板形状ではなく、十字形状をしており、側面53は、管30の内周面に沿うように円筒面の一部となっている。
【0028】
図4は、この発明によるバルブの実施例3の一部を示す。基本構造は、図1の実施例1のバルブと同じであるが、この実施例3のバルブには被ガイド部がない。その代わりに、弁座の構造が異なっている。この弁座61は、薄板によって形成された平面視円環状をしており、中央の貫通孔を弁体14が貫通し、弁体の当接面が、弁座61の当接面と当接・離間する構造となっている。
【0029】
弁座61は、円環状の上部支え板62と円環状の下部支え板63とで挟持され、バルブボディ10の底部の中央に弁体14が貫通する穴があけられたバルブボディ底板65に、挟持ボルト64によって固定されている。挟持ボルト64は、円周上に4本から12本等間隔に設けるのが好ましい。弁座61の内周縁部は前記弁体14の当接面と当接するように前記流出通路側に向けて傾斜可能な面を備えている。これによって、軸心のズレた弁体14に沿って弁座61が変形して漏れを防止することができる。また、弁体14に対するアクチュエータ24の押圧力を加減することで、弁体14の軸心のズレに対して、ズレた部分が当接する弁座61が傾斜し、傾斜した部分の復元力によって弁体14のズレを是正し(調芯機能)、弁体14を正確な位置に復元させるようにすることもできる。
【0030】
図5は、実施例3のバルブに用いられる被ガイド部付近の拡大断面図を示す。このように弁座14の当接面と当接する弁座61の当接面は、フリーとなっているので、弁棒15の軸ぶれが起こっても、弁体14の偏りに弁座61も変形するので、先端に弁体14を備える弁棒15の長さが長いバルブにおいて、両者の間にかかる接触圧の偏りが抑えられ、バルブの寿命も従来のこのような弁座構造を有しないバルブに比べて長くすることができる。
【0031】
図6は、実施例4のバルブに用いられる被ガイド部付近の拡大断面図を示す。図6の弁座61と異なっている点は、弁座61が図示のように、弁座61の外周縁部と内周縁部の間の下面側に、下部支え板63の下方から螺入された複数の雄ねじ66の先端部を収納する雄ねじ先端部収納空間67を有することである。
【0032】
雄ねじ66が下方から螺入され、ねじ先端と弁座61の裏面との間の距離を調整できる構造となっている。この距離を適宜調整することによって、弁座61のしなりを最適化して、弁体14の偏りに対する弁座61の変形具合を調整することができる。下部支え板63には、雄ねじ66と噛み合う雌ねじ(符号なし)が切られている。雄ねじ66は、円周上に4本から12本等間隔に設けるのが好ましい。弁座61の内周縁部は前記弁体14の当接面と当接するように前記流出通路側に向けて傾斜する面を備えている
【0033】
実施例3のバルブと同様に、先端に弁体14を備える弁棒15の長さが長いバルブにおいて、両者の間にかかる接触圧の偏りが抑えられ、バルブの寿命も従来のこのような弁座構造を有しないバルブに比べて長くすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 ;バルブ
10;バルブボディ
11;流入通路
12;流出通路
13;弁座
14;弁体
15;弁棒
16;ヒータ収納空間
17;ヒータ
18;ベローズ
19;蓋部材
20;カバー材
21;動力ライン
22;ステム
23;ステー
24;アクチュエータ
40;被ガイド部
41;被ガイド部板
42;被ガイド部首
43;側面
44;被ガイド部穴
50;被ガイド部
51;被ガイド部板
52;被ガイド部首
53;側面
61;弁座
62;上部支え板
63;下部支え板
64;挟持ボルト
65;バルブボディ底板
66;雄ねじ
67;雄ねじ先端部収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6