(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ウエハ検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/956 20060101AFI20231005BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20231005BHJP
G01N 21/89 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G01N21/956 A
H01L21/66 J
G01N21/89 S
(21)【出願番号】P 2019095433
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】593214888
【氏名又は名称】株式会社昭和電気研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】大島 琢也
(72)【発明者】
【氏名】深川 武士
【審査官】谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-170986(JP,A)
【文献】特開2007-292606(JP,A)
【文献】特開2010-048712(JP,A)
【文献】特表2010-528287(JP,A)
【文献】特表2015-537218(JP,A)
【文献】特開2008-131025(JP,A)
【文献】特開2018-036235(JP,A)
【文献】特開2000-031245(JP,A)
【文献】特開2008-032621(JP,A)
【文献】特開2000-046537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象であるシリコンウエハを載置するための載置台と、
前記載置台に載置された前記シリコンウエハの表面に対向するように設けられ、レーザによって励起された光源の光を集光しながら前記シリコンウエハの表面に照射する光照射手段と、
前記光照射手段で照射された光を暗視野で撮像する撮像手段とを備え
、
前記光照射手段が、当該光照射手段からの光の照射面積が最小限となる角度で前記シリコンウエハの表面に光を照射し、前記撮像手段が、前記シリコンウエハの面に対して60°~80°の角度で、少なくとも研磨の初期段階で付いた滑らかな傷に対して照射される前記光照射手段からの光を暗視野で撮像し、
前記載置台の180°回転駆動に伴い前記シリコンウエハに対する前記光照射手段及び前記撮像手段の位置関係が変化する場合に、エッジ部分においては、前記撮像手段の位置が、常に前記光照射手段よりも前記シリコンウエハの内側で、且つ、前記シリコンウエハのエッジ部分よりも前記シリコンウエハの内側となるような配置関係に制御されることを特徴とするウエハ検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハ検査装置において、
前記撮像手段が、前記光照射手段で照射された光を明視野で撮像する機能を有し、
前記光照射手段で照射された光を明視野で撮像する明視野撮像モードと、前記光照射手段で照射された光を暗視野で撮像する暗視野モードとを、前記光照射手段及び/又は前記撮像手段の配置を調整して切り替える切替手段を備えるウエハ検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のウエハ検査装置において、
前記光照射手段が所定の幅を有する長尺状のシリンドリカルレンズで前記光源の光を集光し、当該シリンドリカルレンズの長手方向に前記光照射手段及び前記撮像手段が複数並列して配設されており、
前記載置台が前記シリンドリカルレンズの長手方向に対して垂直方向に前記シリコンウエハを移動させるように動作するウエハ検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載のウエハ検査装置において、
検査対象となる前記シリコンウエハを横断又は縦断して複数の偶数領域に仮想的に分割し、当該分割された仮想領域の偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方に対応させて前記光照射手段及び前記撮像手段が配設されているウエハ検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウエハ検査装置において、
前記載置台が分割された前記仮想領域の分割方向に沿って直線駆動を行うと共に、前記偶数領域のうち偶数番目の領域の検査と奇数番目の領域の検査とで前記シリコンウエハが平面に沿って180度回転し、
前記シリコンウエハの回転角が0°の場合に、分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方の領域が検査され、
前記シリコンウエハの回転角が180°の場合に、分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか他方の領域が検査されるウエハ検査装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のウエハ検査装置において、
シリコンウエハの回転角度が0°及び180°の場合の検査が完了した後に、前記シリコンウエハを90°又は270°回転した状態で前記分割と同様の分割で生じる仮想の偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方の領域を検査し、さらに180°回転して前記分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか他方の領域が検査されるウエハ検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハの表面における傷等の欠陥の有無を検査するウエハ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハの表面及び/又は裏面を研磨する場合にDSP(Double Side Polish)が行われる。DSPによりシリコンウエハ表面及び/又は裏面にクラック、ウォーターマーク、表面異常、異物、汚れ、スリップ、他様々な欠陥が付く場合があり、このような傷が残っていると歩留りの低下に繋がってしまう。そこで、シリコンウエハの表面や裏面の傷の有無を確認する必要があるが、現状は目視により検査されることも多い。目視による検査の場合は、長年経験を積んだ熟年の技術が必要となるが、そのような技術を持った人材が徐々に高齢化しており検査の質を確保するのが難しくなってきている。
【0003】
そこで、ウエハの検査を自動化する技術が、例えば特許文献1、2に開示されている。特許文献1に示す技術は、ラインセンサを撮像素子として備える撮像手段と、暗視野照明となるようにウエーハ裏面の撮像部位を照明する照明手段と、前記撮像手段および前記照明手段とウエーハとの間を一定方向に相対移動させる移動手段と、ウエーハの略円形の中心を回転中心として回転させるウエーハ回転手段とから成るものである。
【0004】
また、特許文献2に示す技術は、赤外光に感度を有するラインセンサアレイを撮像素子として用いることにより、ウエーハ全体を同一の検査条件で行うことを可能にするとともに検査工程の高速化に対応可能なウエーハ検査装置を実現し、また、ウエーハの比抵抗の値を取得する手段を設けることにより、取得した比抵抗の値に応じた照明手段の照度に設定することにより欠陥の撮像に適切な照明を得ることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-131025号公報
【文献】特開2010-8392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す技術は、シリコンウエハの裏面側を検査する際にメタルハライドランプを用いているが、発明者らの実験の結果、現状のような目視による検査と同程度の傷を発見するには光量が少なく検査精度が低下してしまうと共に、光量が少ないことにより撮像時間が長くなり検査に多くの時間を費やしてしまうという課題を有する。
【0007】
特許文献2に示す技術は、赤外線を用いてシリコンウエハの表面又は内部の欠陥を検出するが、赤外線を用いていることから温度変化による影響を受けやすくなり、また赤外光であるため分解能が悪化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、LED、レーザ又はそれらの励起光を用いて現状の目視による検査に近い精度でシリコンウエハ表面のクラック、ウォーターマーク、表面異常、異物、汚れ、スリップ、他様々な欠陥の有無を検査するウエハ検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るウエハ検査装置は、検査対象であるシリコンウエハを載置するための載置台と、前記載置台に載置された前記シリコンウエハの表面に対向するように設けられ、LED又はレーザを光源とする光又はそれらの励起光を集光しながら前記シリコンウエハの表面に照射する光照射手段と、前記光照射手段で照射された光を暗視野又は明視野で撮像する撮像手段とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、検査対象であるシリコンウエハを載置するための載置台と、前記載置台に載置された前記シリコンウエハの表面に対向するように設けられ、LED又はレーザを光源とする光又はそれらの励起光を集光しながら前記シリコンウエハの表面に照射する光照射手段と、前記光照射手段で照射された光を暗視野又は明視野で撮像する撮像手段とを備えるため、十分な光量により撮像時間を短くして検査時間を短縮すると共に、暗視野又は明視野での撮像により様々な種類の欠陥を高精度且つ歩留りが悪くならないようなバランスが良い検査精度を実現することができるという効果を奏する。
【0011】
すなわち、現状の目視による検査よりも極めて精度が高くなると、製品上問題ないレベルの欠陥まで発見されてしまい、歩留りが悪くなってしまう。そのため、目視による検査の精度が実現されることで、十分な精度を確保しつつ、歩留りの低下を防止することができる。本発明においては、撮像時点では目視よりも高精度に傷などの欠陥を検出し、その傷の大きさ、太さ、撮像強度によりある閾値以下の傷を敢えて見逃して目視に近い精度を実現することも可能である。
【0012】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、前記光照射手段で照射された光を明視野で撮像する明視野撮像モードと、前記光照射手段で照射された光を暗視野で撮像する暗視野モードとを、前記光照射手段及び/又は前記撮像手段の配置を調整して切り替える切替手段を備えるものである。
【0013】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、光照射手段で照射された光を明視野で撮像する明視野撮像モードと、前記光照射手段で照射された光を暗視野で撮像する暗視野モードとを、前記光照射手段及び/又は前記撮像手段の配置を調整して切り替える切替手段を備えるため、傷の種類や環境によって暗視野モードと明視野モードとを切り替えることで、より鮮明に傷を撮像し高精度に欠陥を検出することが可能になるという効果を奏する。
【0014】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、前記光照射手段が所定の幅を有する長尺状のシリンドリカルレンズで前記光源の光を集光し、当該シリンドリカルレンズの長手方向に前記光照射手段及び前記撮像手段が複数並列して配設されており、前記載置台が前記シリンドリカルレンズの長手方向に対して垂直方向に前記シリコンウエハを移動させるように動作するものである。
【0015】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、前記光照射手段が所定の幅を有する長尺状のシリンドリカルレンズで前記光源の光を集光し、当該シリンドリカルレンズの長手方向に前記光照射手段及び前記撮像手段が複数並列して配設されており、前記載置台が前記シリンドリカルレンズの長手方向に対して垂直方向に前記シリコンウエハを移動させるように動作するため、複数の光照射手段及び撮像手段を用いて効率よく検査を実施することができるという効果を奏する。
【0016】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、検査対象となる前記シリコンウエハを横断又は縦断して複数の偶数領域に仮想的に分割し、当該分割された仮想領域の偶数番目の領域又は奇数番目の領域に対応させて前記光照射手段及び前記撮像手段が配設されているものである。
【0017】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、検査対象となる前記シリコンウエハを横断又は縦断して複数の偶数領域に仮想的に分割し、当該分割された仮想領域の偶数番目の領域又は奇数番目の領域に対応させて前記光照射手段及び前記撮像手段が配設されているため、シリコンウエハの表面全体に対して無駄な動きを排除して効率よくスキャニングすることができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、前記載置台が分割された前記仮想領域の分割方向に沿って直線駆動を行うと共に、前記偶数領域のうち偶数番目の領域の検査と奇数番目の領域の検査とで前記シリコンウエハが平面に沿って180度回転し、前記シリコンウエハの回転角が0°の場合に、分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方の領域が検査され、前記シリコンウエハの回転角が180°の場合に、分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか他方の領域が検査されるものである。
【0019】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、前記載置台が分割された前記仮想領域の分割方向に沿って直線駆動を行うと共に、前記偶数領域のうち偶数番目の領域の検査と奇数番目の領域の検査とで前記シリコンウエハが平面に沿って180度回転し、前記シリコンウエハの回転角が0°の場合に、分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方の領域が検査され、前記シリコンウエハの回転角が180°の場合に、分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか他方の領域が検査されるため、偶数番目の領域と奇数番目の領域とを区分してそれぞれを高精度に検査すると共に、その2領域の検査で表面全体をスキャニングすることが可能となり、検査時間を短縮することができるという効果を奏する。
【0020】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、検査の対象となる検査対象領域に前記シリコンウエハのエッジ部分を含む場合に、少なくともエッジ部分の検査において、前記撮像手段の位置が前記光照射手段よりも前記シリコンウエハの内側となるように前記シリコンウエハの移動が制御されるものである。
【0021】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、検査の対象となる検査対象領域に前記シリコンウエハのエッジ部分を含む場合に、少なくともエッジ部分の検査において、前記撮像手段の位置が前記光照射手段よりも前記シリコンウエハの内側となるように前記シリコンウエハの移動が制御されるため、エッジ部分において光照射手段から照射された光の正反射により生じるハレーションをなくして、正確な検査を行うことが可能になるという効果を奏する。すなわち、エッジ部分は側面側から見た場合に表面側から裏面側に向かってアールを形成しており、光照射手段の角度に応じて正反射によるハレーションが生じてしまうことを防止することができる。
【0022】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、前記検査対象領域を検査する場合に、前記載置台が前記シリコンウエハのエッジ部分から前記シリコンウエハの内側領域が順次撮像されるように、又は前記シリコンウエハの内側領域から前記シリコンウエハのエッジ部分が順次撮像されるように駆動されるものである。
【0023】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、前記検査対象領域を検査する場合に、前記載置台が前記シリコンウエハのエッジ部分から前記シリコンウエハの内側領域が順次撮像されるように、又は前記シリコンウエハの内側領域から前記シリコンウエハのエッジ部分が順次撮像されるように駆動されるため、ハレーションが発生し得る状態でエッジ部分の撮像が行われることなく、上述したようなハレーション影響をなくすことができるという効果を奏する。
【0024】
本発明に係るウエハ検査装置は、必要に応じて、シリコンウエハの回転角度が0°及び180°の場合の検査が完了した後に、前記シリコンウエハを90°又は270°回転した状態で前記分割と同様の分割で生じる仮想の偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方の領域を検査し、さらに180°回転して、前記分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか他方の領域が検査されるものである。
【0025】
このように、本発明に係るウエハ検査装置においては、シリコンウエハの回転角度が0°及び180°の場合の検査が完了した後に、前記シリコンウエハを90°又は270°回転た状態で前記分割と同様の分割で生じる仮想の偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか一方の領域を検査し、さらに180°回転して、前記分割された偶数領域のうちの偶数番目の領域又は奇数番目の領域のいずれか他方の領域が検査されるため、一方向からだけのスキャニングでは検出できないような方向依存性がある欠陥を他方向からのスキャニングにより検出することが可能になるため、より高精度に欠陥の有無を検査することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施形態に係るウエハ検査装置の全体の構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係るウエハ検査装置における検査部の構成を示す側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るウエハ検査装置における検査部の構成を示す上面図である。
【
図4】第1の実施形態に係るウエハ検査装置における光照射部が照射する光のイメージ図である。
【
図5】第1の実施形態に係るウエハ検査装置における光照射部と撮像部との位置関係を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係るウエハ検査装置において検査時のシリコンウエハの移動状態を示す第1の図である。
【
図7】第1の実施形態に係るウエハ検査装置において検査時のシリコンウエハの移動状態を示す第2の図である。
【
図8】第1の実施形態に係るウエハ検査装置においてシリコンウエハのエッジ部で光が正反射する状態を示す図である。
【
図9】第1の実施形態に係るウエハ検査装置においてシリコンウエハの表面及び/又は裏面を撮像する際のシリコンウエハの移動方向(スキャン方向)を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係るウエハ検査装置における検査時の光照射部及び撮像部の配置関係の一例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態に係るウエハ検査装置における検査時の光照射部の光の進路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るウエハ検査装置について、
図1ないし
図9を用いて説明する。本実施形態に係るウエハ検査装置は、LED、レーザ又はそれらの励起光を用いてシリコンウエハの表面の傷等の欠陥を検査するものである。特に、現状目視により行われている検査と同様の検出精度を実現するものであり、例えば実際に溝が付いたような傷は傷として確実に検出するものの、後の洗浄工程などで除去される研磨により生じたウォーターマーク、汚れ、吸着痕などは、画像処理等により必要に応じて非検出とするものである。具体的には、例えば撮像時点では目視よりも高精度に傷などの欠陥を検出し、その傷の大きさ、太さ、撮像強度によりある閾値以下の傷を敢えて見逃して目視に近い精度を実現するようにしてもよい。すなわち、閾値の設定に応じて出力される検査精度を任意に決めることが可能である。
【0028】
図1は、本実施形態に係るウエハ検査装置の全体の構成を示すブロック図である。
図1において、ウエハ検査装置1は、シリコンウエハを収納するカセット10と、カセット10から検査対象となるシリコンウエハを取り出して載置台に載置する搬送ロボット20と、シリコンウエハの表面を検査する検査部30と、オペレータによる操作や設定を行うための操作部40と、操作や設定に応じて搬送ロボット20や検査部30の動作や処理を演算して制御する制御部50とを備える。
【0029】
なお、
図1に示すように、検査結果に基づいて良品/不良品を判定するコンピュータやそれらの結果を出力するためのディスプレイ、上記制御部50等の演算機能を操作部40と共に一体的に備える構成であってもよいし、これらの制御コンピュータやディスプレイ、操作部40などの機能をウエハ検査装置1と別体として構成し、通信により装置の駆動を制御するようにしてもよい。
【0030】
図2及び
図3は、本実施形態に係るウエハ検査装置における検査部30の構成を示す図であり、
図2は検査部30の側面図、
図3は検査部30の上面図である。検査部30は、検査対象であるシリコンウエハ31を載置する載置台32と、載置台32を駆動する駆動部33と、光源34からのLED、レーザ又はそれらの励起光をシリコンウエハ31の表面に照射する光照射部35と、光照射部35で照射されたシリコンウエハ31の照射領域を暗視野で撮像する撮像部36と、撮像された情報の管理、分析、判定、出力等を行うコンピュータ37とを備える。
【0031】
検査時には載置台32にシリコンウエハ31が載置され、駆動部33の制御により少なくとも直線的に移動することが可能となっている。シリコンウエハ31の表面を検査する場合に、表面に塵や埃ができるだけ付着しないように注意する必要がある。特に、金属片などが付着してしまうと、金属汚染によりシリコンウエハ31の機能に問題が生じる場合がある。そのため、本実施形態においては、光照射部35や撮像部36を駆動するのではなく、載置台32を移動させることでシリコンウエハ31の表面への塵等の付着を防止する。
【0032】
また詳細は後述するが、本実施形態においてはシリコンウエハ31を直線的に往復移動させることで最小限の構成でコストを抑えつつ検査効率を上げている。すなわち、シリコンウエハ31に対して、光照射部35や撮像部36が相対的に横移動(又は縦移動)するように載置台32を駆動させることで、後述するように検査効率を向上させることが可能となっている。
【0033】
光照射部35は、光源34にライトガイド34aが接続されており、ライトガイド34aの先端部分は長尺状に形成されている。ライトガイド34aの出力端にはシリンドリカルレンズ34bが装着されており、光源34の光を集光しながらシリコンウエハ31に光を照射する。
図4は、光照射部35が照射する光のイメージ図である。
図4(A)は光照射部35が照射する光の全体イメージ図であり、
図4(B)及び(C)は照射した光の光量分布に対して撮像に利用する領域を示す図であり、
図4(B)が長手方向の領域、
図4(C)が短手方向の領域を示している。
【0034】
図4(A)に示すように、先端部分が所定の幅を有する長尺状になったライトガイド34aにシリンドリカルレンズ34bが装着されており、光源34の光を集光する構造となっている。なお、シリンドリカルレンズ34bの長手方向の幅を幅dw、短手方向の幅を幅dLとすると、照射される光はシリコンウエハ31上で帯状になっているが、幅dwの両端部分(
図4(A)におけるA及びB)並びに幅dLの両端部分(
図4(A)におけるC及びD)に対応する照射光は強度が弱くなってしまうため、
図4(B)及び
図4(C)に示すように光強度が強い領域のみを検査に利用するようにしてもよい。また、両端部分(
図4(A)におけるA~D)に対応する照射光が弱くなってしまうのを防止してできる限り全体を均一な光強度にするために、シリンドリカルレンズ34bを非球面にすることが望ましい。
【0035】
光源34は、LED又はレーザを出力するものであり、LEDやレーザ、その他これらによる励起光等を用いることでメタルハライドのような光源に比べて光の強度を上げて撮像時間を短くすることができ、検査時間を短縮することが可能となっている。特にレーザ光によって励起される励起光、すなわち一般的に所定の対象物に照射されて当該対象物から射出される光の場合は直進性が高いため、傷に対する散乱光をより効果的に検出することが可能になると共に、レーザ光によって励起される光は、例えば450nm辺りをピークとする短い波長が強いため、λ/(2・NA)より分解能が高い画像を得ることが可能となる。
【0036】
撮像部36はラインセンサを撮像素子とするものであり、暗視野による撮像を行う。すなわち、光照射部35から照射された直接の光が遮られると共に、光照射部35から照射した光がシリコンウエハ31の表面で散乱した光をセンシングする。そのため、
図5に示すように、光照射部35の照射方向をシリコンウエハ31の面に対して垂直に照射した場合に、撮像部36の撮像角度(ここでは、シリコンウエハ31の面に対する角度(
図5における角度α))が所定の角度となるように設置されている。この所定の角度は、例えばα=60°~80°、より好ましくは70°程度であることが望ましい。また、撮像部36はパソコンなどのコンピュータ37に接続されており、撮像部36で撮像された撮像情報はコンピュータ37に取り込まれて解析される。その結果、検査対象のシリコンウエハ31の良品/不良品が判定される。
【0037】
なお、
図5に示すように、本実施形態においては光照射部35からの光がシリコンウエハ31に対して垂直に照射されるように構成し、撮像部36をシリコンウエハ31に対して上記の角度αとなるように設置して撮像を行っている。これは、光照射部35からの光がシリコンウエハ31に対して垂直に照射されることで、シリコンウエハ31上における光照射部35からの光の照射面積を最小限に抑え、光強度を確保するためである。すなわち、
図5において光照射部35と撮像部36との配置関係が逆になると、角度αから光が照射されてシリコンウエハ31上における照射面積が広がってしまい光の強度が下がってしまう。したがって、
図5に示すように光は垂直方向から照射し、撮像を角度αの斜め方向から行うのが望ましい。
【0038】
また、例えばDSPによる傷を検査する場合に、研磨の初期段階で付いた傷と最終段階で付いた傷とでは、その溝の鋭利さが異なる場合がある。すなわち、化学的機械研磨により付いた傷は、研磨している間に傷口が溶解し滑らかなものになる。したがって、研磨の初期段階についた傷の溝は滑らかで後に付いた傷ほど溝が鋭利になる。発明者らの検証により、このような様々な形状となる傷を検査する場合には、LED又はレーザ、その励起光を用いて垂直方向から強く且つ指向性が高い光源を用いることで優位に傷を検出できることが明らかとなった。
【0039】
ここで、上述したように、シリコンウエハ31を直線的に往復移動することで検査効率を向上させることについて詳細に説明する。
図6は、検査時におけるシリコンウエハ31の移動状態を示す第1の図である。
図6(A)がシリコンウエハにおける半分の領域を検査する場合のシリコンウエハ31と光照射部35及び撮像部36との位置関係を示し、
図6(B)が残り半分の領域を検査する場合のシリコンウエハ31と光照射部35及び撮像部36との位置関係を示している。
【0040】
図6において、シリコンウエハ31を縦断するように4つの領域(領域31a,31b,31c,31d)が定義されている。
図6(A)に示すように、光照射部35及び撮像部36は、奇数番目の領域(領域31a,領域31c)に対応する位置となるようにシリンドリカルレンズ34bの長手方向に沿って並列して配置されている。この状態で載置台32がシリコンウエハ31と共に、シリンドリカルレンズ34bの長手方向に垂直な方向、すなわち縦断された4つの領域の縦断方向に直線的に移動する。この載置台32の移動により斜線で示す領域31a及び領域31cの検査がなされる。
【0041】
領域31a及び領域31cの検査が完了すると、シリコンウエハ31の中心点を通りウエハ面に垂直な線を軸として当該シリコンウエハ31を180度回転させる。その状態で
図6(B)に示すように、載置台32がシリコンウエハ31と共に4つの領域の縦断方向に直線移動する。この載置台32の移動により白地で示す領域31b及び31dの検査がなされる。つまり、機械的には載置台32の直線的な往復移動とシリコンウエハ31の回転を行うだけで、シリコンウエハ31の表面全体を隈なく検査することが可能となる。また、最小限の動作しか必要ないため、検査時間を極めて短縮し作業の効率化を図ることが可能となる。
【0042】
図7は、検査時におけるシリコンウエハ31の移動状態を示す第2の図である。
図7(A)がシリコンウエハにおける半分の領域を検査する場合のシリコンウエハ31と光照射部35及び撮像部36との位置関係を示し、
図7(B)が残り半分の領域を検査する場合のシリコンウエハ31と光照射部35及び撮像部36との位置関係を示している。なお、この
図7の処理は、
図6の処理が行われた後に実行されるものである。
【0043】
ここで、
図7において
図6の場合と異なるのは、検査対象であるシリコンウエハ31が
図6の場合に比べて90°回転している点であり、それ以外の動作や処理については
図6と同じである。
図6においてはノッチの位置が上端側、下端側であるのに対して、
図7においてはノッチの位置が左端側、右端側になっている。シリコンウエハ31の移動方向は
図6の場合と同じであるが、シリコンウエハ31の配置が
図6の場合と比べて90°回転していることから、
図6及び
図7の両方の検査を行うことで平面視における垂直方向(縦方向)からと水平方向(横方向)からの検査を行うことができ、欠陥をより高精度に検出することが可能となる。すなわち、2方向からの検査を行うことで方向依存性があるような欠陥を確実に検出することが可能となる。
【0044】
なお、
図6及び
図7においては、シリコンウエハ31を縦断するように4分割の領域に分割したが、シリコンウエハ31の径のサイズや光照射部35及び撮像部36のコストに応じて、6分割や8分割など任意の偶数領域に縦断又は横断して分割するようにしてもよい。何分割にした場合であっても、奇数番目の領域又は偶数番目の領域のいずれか一方に対応する位置に光照射部35及び撮像部36を設置することで、シリコンウエハ31の半分の領域ごとにスキャニングすることとなる。
【0045】
図6及び
図7のそれぞれにおいて、例えば載置台32を一往復で検査した場合(領域31a及び31cを往路で検査し、領域31b及び31dを復路で検査した場合)は、シリコンウエハ31の表面全体を非常に短時間で且つ最小限の移動でスキャニングすることが可能であるが、シリコンウエハ31のエッジ部分の形状によっては以下のような問題が発生し得る。具体的には、シリコンウエハ31のエッジ部分を側面側から見た場合に、
図5に示すように一方の面から他方の面に向かってアールが形成されている。すなわち、
図8(A)に示すように、検査対象領域にエッジ部分が含まれる場合には、このエッジ部分のアールによりあるタイミングで光源34の光が暗視野撮像にも関わらず正反射して撮像されてしまい、ハレーションが発生してしまう場合がある。
【0046】
本実施形態においては、このようなハレーションの発生を防止するために、エッジ部分を検査する際に撮像部36がエッジの外側に配置されないように検査を進める。
図8(A)の状態では、光照射部35からの光が撮像部36に正反射してハレーションが発生してしまうが、
図8(B)の状態では、光照射部35からの光が撮像部36に正反射することはない。つまり、エッジ部分においては、光照射部35と撮像部36の位置関係が、常に光照射部35の位置に対してシリコンウエハ31の内側方向に撮像部36が位置するように制御される。
【0047】
図9は、シリコンウエハ31の表面及び/又は裏面を撮像する際の光照射部35と撮像部36の位置関係、並びにシリコンウエハの移動方向(スキャン方向)を示す図である。上述したように、エッジ部分の検査において撮像部36が光照射部35よりもシリコンウエハ31の外側方向に位置しないように制御する。具体的には、
図9(A)及び(B)に示すように、それぞれの場合において撮像不可領域Rを撮像する場合は、シリコンウエハ31を180度回転させて検査を行う
。このような撮像を行うことで、エッジ部分で生じるハレーションを防止することが可能となる
。
【0048】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るウエハ検査装置について、
図10及び
図11を用いて説明する。本実施形態に係るウエハ検査装置は、前記第1の実施形態に係るウエハ検査装置の機能を拡張したものであり、暗視野による検査と明視野による検査とを切り替えて行うことができるものである。欠陥の種類によっては暗視野による検査で見つけやすいものと明視野による検査で見つけやすいものとがある。例えば、傷や異物などは暗視野による検査が見つけやすく、エピタキシャル層の断層などにより生じるスリップ欠陥や表面の荒れなどは明視野による検査が見つけやすい。
【0049】
図10は、本実施形態に係るウエハ検査装置における検査時の光照射部35及び撮像部36の配置関係の一例を示す図であり、
図10(A)が暗視野検査における配置関係を示し、
図10(B)が明視野検査における配置関係を示している。暗視野の場合は上述したように、シリコンウエハ31の面に対して光照射部35が垂直に光を照射した場合に、撮像部36の撮像角度は60°~80°(より好ましくは70°程度)となるように配置される。一方、明視野の場合は、シリコンウエハ31に対して光照射部35が60°~80°の角度で光を照射した場合に、撮像部36の撮像角度も60°~80°程度となるように配置される。
【0050】
また、ウエハ検査装置1は明視野で検査を行う明視野モードと暗視野で検査を行う暗視野モードとを切り替える切替部(図示しない)を備えており、この切替部の制御に応じて
図10に示すように暗視野モードと明視野モードとを切り替えることが可能となる。
【0051】
図11は、本実施形態に係るウエハ検査装置における検査時の光照射部35及び撮像部36の配置関係の一例を示す図である。
図11において、光照射部35が暗視野用の光照射部35aと明視野用の光照射部35bとを有しており、切替部(図示しない)の制御によりそれぞれの光照射部の駆動を切り替えて暗視野モードでの検査結果と明視野モードでの検査結果とを得る。
【0052】
なお、暗視野による検査結果及び明視野による検査結果の情報が蓄積された場合は、それらのデータを解析することで、AIによる自動切り替えを行うようにしてもよい。例えば、製造工程におけるどのタイミングで検査するかに応じて暗視野モードと明視野モードを切り分けたり、発見したい傷の種類に応じて暗視野モード及び/又は明視野モードを切り替える等の制御を行うようにしてもよい。
【0053】
このように、本実施形態に係るウエハ検査装置においては、明視野撮像モードと暗視野モードとを、光照射部35及び/又は撮像部36の配置を調整して切り替えるため、傷の種類や環境によって暗視野モードと明視野モードとを切り替えることで、より鮮明に傷を撮像し高精度に欠陥を検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0054】
1 ウエハ検査装置
10 カセット
20 搬送ロボット
30 検査部
31 シリコンウエハ
32 載置台
33 駆動部
34 光源
34a ライトガイド
34b シリンドリカルレンズ
35 光照射部
36 撮像部
37 コンピュータ
40 操作部