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特許7360699動釣合い試験機用の被試験体固定装置および動釣合い試験機
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  • 特許-動釣合い試験機用の被試験体固定装置および動釣合い試験機 図1
  • 特許-動釣合い試験機用の被試験体固定装置および動釣合い試験機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】動釣合い試験機用の被試験体固定装置および動釣合い試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 1/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01M1/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019217105
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085844
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000150729
【氏名又は名称】株式会社長浜製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 政巳
(72)【発明者】
【氏名】上野 真人
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-091655(JP,A)
【文献】特開2002-350270(JP,A)
【文献】特開平01-270630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
転可能であって回転中心に基準穴が形成された被試験体において前記基準穴から離れた外周部がクランプされる固定部と、
前記基準穴に挿入されて前記基準穴における被試験体の内周部を把持する円筒状の把持部であって、複数の割溝が前記把持部の周方向に並んで形成され、前記割溝の溝幅の変化に応じて拡縮可能な把持部を有し、前記本体の端面に固定されたコレットと、
前記把持部を拡縮させる拡縮機構とを含み、
前記固定部が、
前記本体の前記端面に形成された支持部と、
前記支持部との間で前記外周部を、前記コレットの第1中心軸線に沿う第1方向に挟んでクランプ可能な爪部とを含み、
前記拡縮機構が、
前記第1方向にスライドするドローバーと、
前記ドローバーに同伴して前記第1方向にスライド可能な先端金具と、
前記コレットの前記把持部に接触する外周面を有し、前記先端金具に同伴して前記第1方向にスライドするマンドレルであって前記第1方向に含まれる一方方向にスライドして前記コレットの前記把持部を拡径させ、前記第1方向に含まれる他方方向であって前記一方方向とは反対の他方方向にスライドして前記コレットの前記把持部を縮径させるマンドレルとを含み、
前記爪部が固定されて前記第1方向に延び、前記第1方向にスライド可能な軸部であって、前記第1方向に含まれる前記一方方向へのスライドに伴って第2中心軸線まわりに一方の回転方向に回動し、かつ前記第1方向に含まれる前記他方方向へのスライドに伴って前記第2中心軸線まわりに反対の回転方向に回動する軸部と、
前記先端金具の前記第1方向へのスライドに同伴して前記軸部が前記第1方向にスライドするように前記軸部と前記先端金具とを連結する連結部材とをさらに含み、
前記先端金具の前記一方方向へのスライドに同伴して前記軸部が前記一方方向にスライドすることにより、前記爪部が、前記支持部に前記他方方向に対向して、前記支持部との間で前記外周部をクランプするクランプ位置に配置され、前記先端金具の前記他方方向へのスライドに同伴して前記軸部が前記他方方向にスライドすることにより、前記爪部が、前記クランプ位置に対し前記第2中心軸線まわりに回動した位置であって、前記クランプ位置から前記他方方向に離間した解除位置に配置される、動釣合い試験機用の被試験体固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の被試験体固定装置と、
前記被試験体固定装置が取り付けられて前記周方向に回転する回転部とを含む、動釣合い試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、動釣合い試験機用の被試験体固定装置、および、この被試験体固定装置を含む動釣合い試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
動釣合い試験機は、被試験体が固定されたスピンドル等の回転部を所定速度で回転させることによって被試験体の不釣合いを測定する。動釣合い試験機は、被試験体を回転部に固定する被試験体固定装置を含む。例えばフランジ状の外周部と中心穴とを有する被試験体用の被試験体固定装置は、中心穴に隙間嵌めで挿入される軸と、外周部をクランプするクランプ部とを有することが一般的である。このような被試験体固定装置は、実質的には、被試験体の外周部をクランプするだけで被試験体を回転部に固定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
被試験体固定装置が被試験体の外周部をクランプするだけで被試験体を回転部に固定する場合には、被試験体固定装置や回転部に対する被試験体の取付誤差(いわゆる芯ずれ)が生じやすいので、不釣合いの測定精度の向上を図ることが困難である。特に、動釣合い試験機における不釣合いの測定中では、回転部が比較的高速で回転するので、被試験体の取付誤差が不釣合いの測定精度に与える影響が大きい。
【0004】
この発明は、被試験体の取付誤差を抑制して不釣合いの測定精度の向上を図れる動釣合い試験機用の被試験体固定装置、および、この被試験体固定装置を含む動釣合い試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、回転可能であって回転中心に基準穴(2C)が形成された被試験体(2)において前記基準穴から離れた外周部(2E)が固定される固定部(45)と、前記基準穴に挿入されて前記基準穴における被試験体の内周部(2B)を把持する円筒状の把持部(42)であって、複数の割溝(32A)が前記把持部の周方向(S)に並んで形成され、前記割溝の溝幅(W)の変化に応じて拡縮可能な把持部を有するコレット(32)と、前記把持部を拡縮させる拡縮機構(46)とを含む、動釣合い試験機用の被試験体固定装置(4)を提供する。また、本発明の一実施形態は、前記被試験体固定装置と、前記被試験体固定装置が取り付けられて前記周方向に回転する回転部(3)とを含む、動釣合い試験機(1)を提供する。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。
【0006】
この構成によれば、被試験体固定装置では、被試験体において回転中心に位置する基準穴から離れた外周部が固定部に固定されるとともに、コレットにおける円筒状の把持部が、基準穴に挿入された状態で拡径して基準穴に圧入されることにより、基準穴における被試験体の内周部を把持する。このように被試験体の内周部および外周部の両方を固定する場合には、被試験体が被試験体固定装置や回転部と同心上に配置されやすくなるので、被試験体固定装置や回転部に対する被試験体の取付誤差を抑制して、動釣合い試験機における不釣合いの測定精度の向上を図れる。
前記試験体固定装置が、本体をさらに備えていてもよい。前記コレットが、前記本体の端面に固定されていてもよい。前記固定部が、前記本体の前記端面に形成された支持部と、前記支持部との間で前記外周部を、前記コレットの第1中心軸線に沿う第1方向に挟んでクランプ可能な爪部とを含んでいてもよい。前記拡縮機構が、前記第1方向にスライドするドローバーと、前記ドローバーに同伴して前記第1方向にスライド可能な先端金具と、前記コレットの前記把持部に接触する外周面を有し、前記先端金具に同伴して前記第1方向にスライドするマンドレルであって前記第1方向に含まれる一方方向にスライドして前記コレットの前記把持部を拡径させ、前記第1方向に含まれる他方方向であって前記一方方向とは反対の他方方向にスライドして前記コレットの前記把持部を縮径させるマンドレルとを含んでいてもよい。前記試験体固定装置が、前記爪部が固定されて前記第1方向に延び、前記第1方向にスライド可能な軸部であって、前記第1方向に含まれる前記一方方向へのスライドに伴って第2中心軸線まわりに一方の回転方向に回動し、かつ前記第1方向に含まれる前記他方方向へのスライドに伴って前記第2中心軸線まわりに反対の回転方向に回動する軸部をさらに含んでいてもよい。前記試験体固定装置が、前記先端金具の前記第1方向へのスライドに同伴して前記軸部が前記第1方向にスライドするように前記軸部と前記先端金具とを連結する連結部材をさらに含んでいてもよい。前記先端金具の前記一方方向へのスライドに同伴して前記軸部が前記一方方向にスライドすることにより、前記爪部が、前記支持部に前記他方方向に対向して、前記支持部との間で前記外周部をクランプするクランプ位置に配置されてもよい。前記先端金具の前記他方方向へのスライドに同伴して前記軸部が前記他方方向にスライドすることにより、前記爪部が、前記クランプ位置に対し前記第2中心軸線まわりに回動した位置であって、前記クランプ位置から前記他方方向に離間した解除位置に配置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機の要部の縦断面図である。
図2図1の要部拡大部である。
図3図1のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、この発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、動釣合い試験機1の縦断面図である。図1の上下方向は、動釣合い試験機1の上下方向である。図1の左右方向は、動釣合い試験機1の左右方向(第1方向)である。動釣合い試験機1は、被試験体2とともに回転する回転部3と、回転部3を振動可能かつ回転可能に支持する支持部(図示せず)と、回転部3を回転駆動させるモータ等の駆動部(図示せず)と、回転中における回転部3の振動を検出する検出部(図示せず)と、被試験体2を支持して回転部3に一体回転可能に連結する被試験体固定装置4とを含む。
【0009】
被試験体2の一例は、プロペラシャフト等の長尺の回転体であり、その両端部には円盤状のラバーカップリング2Aが1つずつ設けられている。動釣合い試験機1は、被試験体2の両端部を支持するように回転部3および被試験体固定装置4を二対含む。図1では、被試験体2の長手方向における一方の端部を支持する一対の回転部3および被試験体固定装置4だけが図示されている。もちろん、被試験体2を両持ち支持しない場合(片持ち支持する場合)には、動釣合い試験機1は、回転部3および被試験体固定装置4を一対だけ含んでもよい。
【0010】
ラバーカップリング2Aの回転中心には、内周部2Bによって縁取られた円形状の基準穴2Cが形成されている。基準穴2Cは、貫通穴であってもよいし、底を有する凹部であってもよい。ラバーカップリング2Aは、内周部2Bの一部をなす樹脂製円筒状のスリーブ2Dと、内周部2Bを取り囲むフランジ状の外周部2Eとを有する。外周部2Eは、ラバーカップリング2Aの径方向の外側へ基準穴2Cから離れた円環状である。外周部2Eには、外周部2Eを左右方向に貫通する単数または複数の位置決め穴2Fが形成されている。
【0011】
回転部3は、左右方向に延びる中心軸線J(第1中心軸線)を有する円筒状に形成されたスピンドル11と、スピンドル11内に同軸上で配置された円柱状のドローバー12とを含む。スピンドル11とドローバー12とは、それぞれの根元側(左側)において例えばスプライン結合されているので、ドローバー12は、中心軸線Jに沿ってスピンドル11に対して左右方向へ相対的にスライド可能かつ中心軸線J周りの周方向Sにスピンドル11と一体回転可能である。動釣合い試験機1は、ドローバー12をスライドさせるアクチュエーター(図示せず)も含む。アクチュエーターは、エアシリンダー等によって構成される。
【0012】
スピンドル11は、その本体をなす円筒状の第1部品13や、ボルトB1によって第1部品13における右側(先端側)の端面に同軸上で固定された円環状の第2部品14等の複数の部品によって構成されている。ドローバー12も、複数の部品によって構成されてもよい。
【0013】
被試験体固定装置4は、右側から回転部3に取り付けられている。被試験体固定装置4は、スピンドル11に固定されたケース21と、ケース21によって支持されたスイベル軸22と、ケース21内でドローバー12に固定された先端金具23と、スイベル軸22と先端金具23とを連結する連結部材24とを含む。被試験体固定装置4は、被試験体2の種類に応じて複数設けられる段替えユニット25を含む。
【0014】
ケース21は、スピンドル11と同軸上に配置された円筒部21Aと、円筒部21Aの左端部に同軸上で固定された円盤状の底部21Bと、左右方向における円筒部21Aの途中に設けられて円筒部21Aの内部空間を左右に二分する円盤状の仕切り部21Cとを有する。円筒部21Aと底部21Bと仕切り部21Cとは、一体形成されてもよいし、後から組み合わされる別部品であってもよい。
【0015】
円筒部21Aにおいて周方向Sに等間隔で離れた複数の位置(この実施形態では180度ずれた2箇所)には、円筒部21Aを左右方向に貫通した挿通穴21Dが1つずつ形成されている。挿通穴21Dの左端部は、底部21Bの右面から左側へ窪んだ凹部21Eを形成している。左右方向における円筒部21Aの途中には、挿通穴21D内に露出されるガイド部21Fが設けられている。ガイド部21Fの一例は、円形状の挿通穴21Dの接線方向に延びる円柱状の軸である。
【0016】
底部21Bには、底部21Bを左右方向に貫通した貫通穴21Gが形成されている。ドローバー12の右端部が貫通穴21Gに挿通されている。仕切り部21Cにおいて中心軸線Jと重なる中央部には、仕切り部21Cを左右方向に貫通した貫通穴21Hが形成されている。底部21Bは、ボルトB2によってスピンドル11の第1部品13に固定されている。これにより、ケース21全体が、スピンドル11に固定されている。ケース21は、ボルトB2の軸部における根元部分が挿通される円管状のスリーブ21Iを有する。仕切り部21Cには、ボルトB2の頭部とスリーブ21Iの右端部とを収容する穴21Jが形成されている。
【0017】
スイベル軸22は、円筒部21Aの挿通穴21Dと同数(この実施形態では2つ)存在する。各スイベル軸22は、左右方向に延びる円柱状であって挿通穴21Dに挿通される軸部22Aと、挿通穴21Dよりも右側に配置されてボルトB3によって軸部22Aに固定された爪部22Bとを有する。左右方向における軸部22Aの途中には、その外周面の一部を切り欠いたガイド面22Cが形成されている。ガイド面22Cは、ケース21の挿通穴21D内に露出されたガイド部21Fに接触している。軸部22Aの外周面の左端部には、軸部22Aの中心軸線K側へ窪んだ凹部22Dが形成されている。爪部22Bは、軸部22Aと同軸上に配置された円筒部22Eと、円筒部22Eの外周面の周上1箇所から突出した突出部22Fとを有する。
【0018】
スイベル軸22は、左右方向にスライドしながら中心軸線K(第2中心軸線)まわりに回転可能である。図1に示すスイベル軸22は、被試験体2の外周部2Eをクランプするクランプ位置にある。クランプ位置は、スイベル軸22の左右方向のスライド範囲における左端であり、クランプ位置にあるスイベル軸22では、爪部22Bの突出部22Fが、回転部3の中心軸線Jを向いている(図3において実線で示した突出部22Fも参照)。
【0019】
スイベル軸22がクランプ位置から右側(他方方向)へスライドすると、スイベル軸22においてケース21のガイド部21Fに接触したガイド面22Cが、ガイド部21Fから中心軸線Kまわりの回転方向Qの力を受けることにより、スイベル軸22が回転する。スイベル軸22が、そのスライド範囲における右端までスライドしたときには、スイベル軸22は、被試験体2の外周部2Eのクランプを解除する解除位置に配置される(図3において二点鎖線で示した突出部22Fを参照)。スイベル軸22が解除位置から左側(一方方向)へスライドすると、ガイド面22Cがガイド部21Fから先ほどとは逆向きの力を受けることにより、スイベル軸22が逆回転する。ガイド面22Cは、このようにスイベル軸22のスライドを回転方向Qの回転に変換するように、公知の形状に構成されている。また、スイベル軸22がクランプ位置と解除位置との間で移動する際に、突出部22Fは、回転方向Qにおいて例えば72度回転する。
【0020】
先端金具23は、ドローバー12と同軸上に配置された円管部23Aと、円管部23Aの右端部に同軸上で固定された円柱状の先端部23Bと、左右方向における円管部23Aの途中の外周面に設けられた球面部23Cとを有する。円管部23Aの左端部は、ケース21の底部21Bの貫通穴21Gに挿入されている。円管部23Aは、その内部に通されたボルトB4によってドローバー12の右端部に固定されている。これにより、先端金具23全体は、ドローバー12とともに左右方向にスライド可能である。先端金具23の左右方向のスライド範囲は、例えば十数mmである。
【0021】
先端金具23のスライド範囲における左端を退避位置といい、先端金具23のスライド範囲における右端を進出位置という。図1に示す先端金具23は、退避位置にある。円管部23Aの右端部は、ケース21の仕切り部21Cの貫通穴21Hに挿入されている。先端部23Bは、円管部23Aよりも小径であり、例えばねじ止めによって円管部23Aに固定されている。先端部23Bは、ケース21内において仕切り部21Cよりも右側に配置されている。球面部23Cは、円管部23Aの外周面の周方向Sにおける全域にわたる円環状であり、中心軸線Jに直交する径方向Rの外側へ円弧状に膨出している。
【0022】
連結部材24は、先端金具23と同軸上に配置された円筒状の中央部24Aと、中央部24Aから径方向Rの外側へ延びた延設部24Bとを有する。中央部24Aの内周面24Cは、先端金具23の球面部23Cとほぼ同じ曲率の円弧面であり、球面部23Cを取り囲んだ状態で球面部23Cに面接触している。これにより、連結部材24全体は、ドローバー12および先端金具23とともに左右方向にスライド可能である。なお、連結部材24は、球面部23Cに沿って変位することにより、若干の姿勢変更が可能である。延設部24Bにおいて径方向Rの外側の端部は、左右方向に一段細くなった先端部24Dであり、対応するスイベル軸22の軸部22Aの凹部22Dに差し込まれている。これにより、連結部材24が、各スイベル軸22に連結されている。そのため、ドローバー12および先端金具23とともに連結部材24が左右方向にスライドすると、全てのスイベル軸22が左右方向にスライドしながら回転方向Qに回転する。先端金具23が左側の退避位置までスライドしてするとスイベル軸22がクランプ位置に配置され、連結部材24が右側の進出位置までにスライドするとスイベル軸22が解除位置に配置される。なお、スイベル軸22が円滑に回転できるように、先端部24Dは、回転方向Qの遊びを持って凹部22Dに差し込まれている。
【0023】
段替えユニット25は、ケース21の右端部に同軸上で固定された円盤状の本体31と、本体31に固定された円筒状のコレット32と、コレット32内に収容されたマンドレル33とを含む。段替えユニット25は、マンドレル33に固定された固定部34と、固定部34を左側へ付勢する付勢部材35と、本体31に固定されて固定部34および付勢部材35を収容する円筒状のストッパー36とを含む。
【0024】
図1における段替えユニット25周辺を拡大して示した図2を参照して、本体31において中心軸線Jが通る中央部には、本体31を左右方向に貫通する挿通穴31Aと、挿通穴31Aを縁取りながら左側へ突出する円筒部31Bとが設けられている。円筒部31Bの内部空間は、挿通穴31Aの一部である。本体31の外周部31Cは、ケース21の円筒部21Aの右端部の内周面に設けられた環状の凹部21Kに嵌め込まれている。凹部21Kは、円筒部21Aの内周面から径方向Rの外側へ平坦に延びる平坦面21Lと、平坦面21Lの外縁から拡径しながら右側へ延びるテーパー面21Mとによって区画されている。外周部31Cの左面は、平坦面21Lに右側から接触している。外周部31Cの外周面31Dは、テーパー面21Mと平行なテーパー面であり、テーパー面21Mに面接触している。これにより、本体31を含む段替えユニット25全体が回転部3に対して同軸上に位置決めされている。
【0025】
外周部31Cの右面には、右側へ突出した支持部31Eが設けられている。支持部31Eは、複数設けられて周方向Sに並んで配置されてもよいし、周方向Sに延びる環状に形成されてもよい。外周部31Cには、支持部31Eから右側へ突出した単数または複数の位置決めピンP1が設けられている。外周部31Cは、ボルトB5によってケース21の円筒部21Aの右端部に固定されている。これにより、本体31を含む段替えユニット25全体が、ケース21に固定され、さらに、ケース21を介してスピンドル11に固定されている。なお、図2では、ケース21と本体31とを周方向Sに位置決めする位置決めピンP2と、ボルトB5とが、半分ずつ並んで図示されている。
【0026】
コレット32は、本体31と同軸上に配置される円筒体である。コレット32は、円環状のベース部41と、被試験体2の内周部2Bに嵌め込まれる円筒状の把持部42と、ベース部41と把持部42との間の途中部43とを一体的に有する。
【0027】
ベース部41は、本体31の右面において挿通穴31Aを縁取りながら左側へ窪んだ凹部31Fに嵌め込まれた状態で、ボルトB6によって本体31に固定されている。これにより、コレット32全体が、本体31に固定され、さらに、本体31およびケース21を介してスピンドル11に取り付けられている。把持部42の外周面42Aの外径は、ほぼ全域にわたって一定である。外周面42Aの右端部は、被試験体2の内周部2Bに嵌りやすいように右側へ向かうにつれて小径になっていてもよい。把持部42の内周面42Bは、右側へ向かうにつれて大径になったテーパー面である。途中部43は、例えば円筒状であり、ベース部41の内周部から右側へ延びて把持部42に接続されている。
【0028】
コレット32には、把持部42の周方向(前述した周方向Sと同じ)に並んだ複数の割溝32Aが形成されている(図3参照)。各割溝32Aは、把持部42の径方向(前述した径方向Rと同じ)および左右方向に沿って把持部42および途中部43を貫通するスリットである。この実施形態では、6つの割溝32Aが、周方向Sに等間隔で並んで形成されている。把持部42は、各割溝32Aの溝幅W(図3参照)の変化に応じて拡縮可能である。具体的には、溝幅Wが広がることによって把持部42は拡径し、溝幅Wが狭まることによって把持部42は縮径する。待機状態の動釣合い試験機1では、把持部42は縮径状態にある。このようなコレット32では、ベース部41が固定端であり、把持部42および途中部43が自由端である
【0029】
マンドレル33は、コレット32と同軸上に配置されて左右方向に延びる円柱状の軸部33Aと、軸部33Aの右端部に接続された先端部33Bとを有する。軸部33Aは、コレット32のベース部41および途中部43によって取り囲まれている。軸部33Aの左端部は、ベース部41よりも左側に配置されている。先端部33Bは、軸部33Aの右端から右側へ向かうにつれて徐々に大径になる円錐台形状であり、その外周面33Cは、右側へ向かうにつれて大径になったテーパー面であり、コレット32の把持部42の内周面42Bによって取り囲まれた状態で、内周面42Bに面接触している。
【0030】
固定部34は、マンドレル33と同軸上に配置された円柱部34Aと、円柱部34Aの左端部から径方向Rの外側へ張り出した環状のフランジ部34Bとを有する。円柱部34Aは、本体31の挿通穴31Aに挿通されている。円柱部34Aの中央部と、マンドレル33の軸部33Aの左端部とは、例えばねじ止めによって固定されている。固定部34は、円柱部34Aが本体31の円筒部31Bの内周面によってガイドされることにより、マンドレル33とともに左右方向にスライド可能である。フランジ部34Bが円筒部31Bの左端部に接触すると、固定部34およびマンドレル33がそれ以上右側へスライドすることが規制される。
【0031】
付勢部材35は、本体31の円筒部31Bに巻き付けられたコイルばねであって左右方向に伸縮可能であり、本体31と固定部34のフランジ部34Bとの間で圧縮されている。そのため、付勢部材35は、マンドレル33および固定部34を常に左側へ付勢している。
【0032】
ストッパー36は、マンドレル33と同軸上に配置された円盤部36Aと、円盤部36Aの外周部から右側へ延びる円筒部36Bとを有する。円盤部36Aは、固定部34に対して左側から対向している。円盤部36Aの中央部には、進出位置にあるときの先端金具23の先端部23Bが進入可能な貫通穴36Cが形成されている。円筒部36Bは、固定部34および付勢部材35を取り囲んだ状態で、ボルトB7によって本体31に固定されている。これにより、ストッパー36全体が、本体31に固定されている。本体31の左面には、円筒部36Bの右端部を取り囲むことによって円筒部36Bを径方向Rにおいて位置決めする環状の位置決め部31Gが設けられている。固定部34が円盤部36Aの右面に接触すると、固定部34およびマンドレル33がそれ以上左側へスライドすることが規制される。
【0033】
待機状態の動釣合い試験機1では、先端金具23が進出位置にあって、先端金具23の先端部23Bがストッパー36の円盤部36Aの貫通穴36Cに進入して固定部34を右側へ押している。そのため、固定部34が円盤部36Aから例えば1mm程度右側へ離れている(図示せず)。この状態では、コレット32の把持部42は、前述したように縮径状態にあり、各スイベル軸22は、解除位置にある。
【0034】
動釣合い試験機1において被試験体2の動釣合い試験を行う場合には、その準備として、待機状態の動釣合い試験機1のコレット32に、被試験体2が右側からセットされる。各スイベル軸22が解除位置にあるので、各スイベル軸22の爪部22Bの突出部22Fは、コレット32にセットされる被試験体2を邪魔しないように退避している(図3において二点鎖線で示した突出部22Fを参照)。被試験体2がセットされた状態におけるコレット32では、把持部42が被試験体2の基準穴2Cに挿入されて、被試験体2の内周部2Bに嵌っている。内周部2B(詳しくはスリーブ2D)の内径は、縮径状態の把持部42の外周面42Aの外径よりも僅かに大きい。そのため、被試験体2は、コレット32による把持が未だのアンクランプ状態にある。また、被試験体2は、外周部2Eが本体31の支持部31Eに右側から接触することによって、左右方向において位置決めされており、本体31の位置決めピンP1が外周部2Eの位置決め穴2Fに挿通されることによって、周方向Sに位置決めされている。
【0035】
次に、前述したアクチュエーター(図示せず)が作動してドローバー12を左側へスライドさせる。これにより、今まで進出位置にあった先端金具23が、ドローバー12とともに左側へスライドするので、先端金具23の先端部23Bが固定部34から左側へ離れる。これにより、今まで先端部23Bによって右側へ押されていた固定部34が、付勢部材35の付勢力によって左側へずれる。これに伴い、固定部34に固定されたマンドレル33も左側へずれる。その際、マンドレル33の先端部33Bにおけるテーパー状の外周面33Cが、コレット32の把持部42におけるテーパー状の内周面42Bに対して左側へ相対移動する。すると、コレット32では、外周面33Cが内周面42Bを押し広げようとする力によって径方向Rの外側へ撓むことにより、各割溝32Aの溝幅Wが広がる。そのため、把持部42が、拡径して被試験体2の内周部2Bにおけるスリーブ2Dに圧入され、これにより、内周部2Bを把持する。
【0036】
また、先端金具23が進出位置から左側へスライドすると、先端部23Bがストッパー36の貫通穴36Cから左側へ外れる。また、今まで解除位置にあった各スイベル軸22が、先端金具23のスライドに応じて左側へスライドしながら回転する。これにより、各スイベル軸22の爪部22Bの突出部22Fが、被試験体2の外周部2Eの右面に対して、右側および径方向Rの外側から接近する。先端金具23が退避位置までスライドすると、各スイベル軸22は、クランプ位置に配置され、各スイベル軸22の突出部22Fは、被試験体2の外周部2Eの右面を右側から押さえる。これにより、被試験体2の外周部2Eは、各スイベル軸22の突出部22Fと本体31の支持部31Eとの間で左右方向の両側から挟まれることによってクランプされる(図2の状態)。この場合、爪部22Bと支持部31Eとは、外周部2Eが固定される固定部45を構成する。なお、いずれかのスイベル軸22の動きに遅れがあって、全ての爪部22Bの突出部22Fが被試験体2の外周部2Eの右面を同時に右側から押さえない場合には、前述したように連結部材24が姿勢変更されることによって延設部24Bの先端部24Dを左側へずらすので、動きに遅れがあったスイベル軸22をクランプ位置まで確実に移動させる。
【0037】
以上の結果、被試験体2は、内周部2Bおよび外周部2Eの両方においてクランプされる。そのため、被試験体2は、コレット32を介して動釣合い試験機1の回転部3に一体回転可能に連結された状態にある。図1および図3は、被試験体2をクランプしたときの動釣合い試験機1を示している。なお、ストッパー36の円盤部36Aが固定部34に左側から接触しているので、固定部34が左側へこれ以上ずれないように規制される。
【0038】
被試験体2がクランプされた動釣合い試験機1では、前述した駆動部(図示せず)によって回転部3が所定速度(例えば4000rpm)で駆動回転され、この状態における被試験体2の振動が、前述した検出部(図示せず)によって検出される。検出された振動から、被試験体2の不釣合いが得られる。
【0039】
被試験体2の不釣合い測定を終えた動釣合い試験機1では、前述したアクチュエーターが作動して、ドローバー12を元の待機位置(図示せず)まで右側へスライドさせる。これに応じて、先端金具23が、退避位置から右側へスライドする。すると、今までクランプ位置にあった各スイベル軸22が、先端金具23のスライドに応じて右側へスライドしながら逆回転し、解除位置に配置される。これにより、各スイベル軸22の爪部22Bが、被試験体2の外周部2Eの右面から右側および径方向Rの外側へ外れるので、被試験体2の外周部2Eのクランプが解除される。
【0040】
そして、先端金具23が進出位置までさらに右側へスライドすると、先端金具23の先端部23Bがストッパー36の貫通穴36Cに進入して固定部34を右側へ押さえる(図2において二点鎖線で示した先端金具23を参照)。すると、固定部34が、付勢部材35の付勢力に抗してマンドレル33とともに右側へずれる。これにより、マンドレル33の先端部33Bの外周面33Cがコレット32の把持部42の内周面42Bを押し広げようとする力が弱まる。そのため、把持部42が元の形状に復元しようと径方向Rの内側へ撓むことによって各割溝32Aの溝幅Wが狭まるので、把持部42が縮径する。これにより、被試験体2の内周部2Bに対する把持部42の圧入状態が解除されるので、被試験体2がアンクランプ状態になる。この状態では、被試験体2を交換のためにコレット32から取り外すことができる。なお、交換により被試験体2の種類が変わる場合には、段替えユニット25における少なくとも本体31等も被試験体2の種類に応じたものに交換される。
【0041】
以上のような先端金具23、マンドレル33、固定部34および付勢部材35は、コレット32の把持部42を拡縮させる拡縮機構46を構成する。拡縮機構46は、被試験体固定装置4の一部である。ドローバー12を拡縮機構46の一部とみなしてもよい。
【0042】
以上のように、被試験体固定装置4では、被試験体2において回転中心に位置する基準穴2Cから離れた外周部2Eが固定部45に固定されるとともに、コレット32における円筒状の把持部42が、基準穴2Cに挿入された状態で拡径して基準穴2Cに圧入されることにより、基準穴2Cにおける被試験体2の内周部2Bを把持する。このように被試験体2の内周部2Bおよび外周部2Eの両方を固定する場合には、被試験体2が被試験体固定装置4や回転部3と同心上に配置されやすくなる。特に、コレット32は、被試験体2をセンタリングする機能を有する求心コレットであるので、被試験体2が高精度に同心上に配置される。したがって、被試験体固定装置4や回転部3に対する被試験体2の取付誤差を抑制して、動釣合い試験機1における不釣合いの測定精度の向上を図れる。また、同一の被試験体2についての不釣合いの測定結果のばらつきが小さくなるので、測定結果の再現性の向上も図れる。
【0043】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0044】
被試験体固定装置4の固定部45への被試験体2の外周部2Eの固定は、前述した実施形態ではスイベル軸22の爪部22Bの先端部22Fと本体31の支持部31Eとの間での外周部2Eのクランプによって実現される。スイベル軸22の解除位置とクランプ位置との間での移動は、左右方向のスライドと中心軸線K周りの回転との組み合わせに限らず、先端金具23のスライドに連動した任意の軌跡による移動であってよい。また、外周部2Eは、例えば作業者によって本体31の外周部31Cにねじ止めされることによって固定されてもよい。また、外周部2Eは、被試験体2において径方向Rにおける最も外側の部分でなくてもよい。
【0045】
また、この実施形態における被試験体2は、樹脂製のスリーブ2Dを内蔵したゴム製のラバーカップリング2Aであったが、被試験体2の材料は、任意に変更可能である。
【0046】
以上の説明では、スピンドル11およびドローバー12が横に配置されることによって、回転部3の中心軸線Jが横に延びているが、中心軸線Jが縦に延びるようにスピンドル11およびドローバー12が縦に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 動釣合い試験機
2 被試験体
2B 内周部
2C 基準穴
2E 外周部
3 回転部
4 被試験体固定装置
32 コレット
32A 割溝
42 把持部
45 固定部
46 拡縮機構
S 周方向
W (割溝32Aの)溝幅
図1
図2
図3