(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】井戸管の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 9/043 20060101AFI20231005BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20231005BHJP
B08B 9/045 20060101ALI20231005BHJP
B08B 9/032 20060101ALI20231005BHJP
E21B 31/03 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B08B9/043 433
B08B3/02 F
B08B9/045
B08B9/032 321
E21B31/03
(21)【出願番号】P 2020132099
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2022-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500231207
【氏名又は名称】VEEma株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087169
【氏名又は名称】平崎 彦治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 民枝
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-545426(JP,A)
【文献】実開昭61-040467(JP,U)
【文献】実公昭32-013486(JP,Y1)
【文献】実開平02-045188(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 1/00-13/00
E21B 31/03
E03B 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
井戸管の内周面に付着した汚れなどの不純物を除去する為の洗浄装置において、上記井戸管は、その集水部の内側を複数の穴を貫通した内パイプとし、外側は複数のプラスチック製リングを一定間隔で配列した外パイプから成る2重構造とし、上記プラスチック製リングの断面を概略平行四辺形として間に形成される隙間を斜め下方に向いて外方向に傾斜して構成し、上記洗浄装置は地上に置かれた高圧洗浄車から延びて井戸管内に下ろされたメインホースの先端に取付けた回転体に高圧水又は細かい粒状ドライアイスを噴射する噴射ノズルを設け、該噴射ノズルは上記プラスチック製リング間に形成される隙間の傾斜角度と同じく下方に傾斜して延びて高圧水や粒状ドライアイスを噴射することが出来るようにしたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
上記噴射ノズルがメインホースを軸として回転できる構造とした請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
上記噴射ノズルの上下方向の傾きを調整可能と請求項1、又は請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
上記噴射ノズルの水平方向の向きを調整可能とした請求項1、請求項2、又は請求項3記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFRP多板式スクリーンパイプを主な対象とし、上水道用、消雪用、農業用、及び工業用等の井戸管の汚れを除去し、又井戸管に設けている集水部に付着した泥やその他の異物により目詰まりを起こして水が上がり難くなったスクリーンパイプを洗浄する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日本国内には推計で100万本以上(厚生労働省水道課調べ)の深井戸が設けられているが、この深井戸管のストレーナは目が細かくて泥や砂、サビ、水藻等の異物が付着して目詰まりを発生する。
その結果、水が上がり難く、深井戸としての機能を失ってしまう。目詰まりは毎日使用されている深井戸は比較的少ないが、例えば消雪用としての深井戸の場合であれば1年のうち冬期だけ使用する為に、水を使用しない期間に深井戸管内に泥やその他の異物が付着するといった現象が発生する。
【0003】
付着した泥等の異物は固まり、使用する時には目詰まりを起こして水が上がりにくくなる。それを繰り返して長年経過した後で、水圧が弱くなったところでストレーナの洗浄が行なわれて来ている。
しかし、従来の深井戸管内のストレーナの洗浄方法として、ワイヤーブラシを上下に動かして洗浄したり、或は深井戸管内に差し水を行なってポンプで上下に移動し、水圧により洗浄を行うことが出来る。
【0004】
しかし、ワイヤーブラシでストレーナ面を擦ったり又は差し水を上下方向に移動するだけでは、該ストレーナの奥深くまで入り込んでいる泥やその他の異物を取除くことが出来ない。その為に、近年では高圧水を噴射させながら回転することが出来る噴射ノズルを用いている。
特開2002-192094号に係る「深井戸管内の洗浄方法及び洗浄装置」は、深井戸の内面に付着した泥やその他の異物を、簡単にしかも効率よく取除くことが出来る洗浄方法であり、超高圧水ホースの先端に洗浄装置を連結し、該ホースと共に洗浄装置を深井戸に降ろし、洗浄装置に備えている噴射ノズルから超高圧水を回転しながら噴射することで付着している汚れを除去することが出来る。
【0005】
ところで、従来の一般的な井戸管は一部に網目状をしたストレーナが設けられ、このストレーナ部分から集水することが出来、該ストレーナに付着した泥や異物は噴射ノズルから噴射する高圧水を当てることでほぼ除去することは出来る。
しかし、近年では井戸管の形態として多板式スクリーンパイプが使用されている。
図4は多板式スクリーンパイプ(イ)の集水部分を示す具体例であり、内パイプ(ロ)の外周りには外パイプ(ハ)が設けられている。
【0006】
ところで、上記内パイプ(ロ)には複数の穴(ニ)、(ニ)・・・が貫通して設けられ、外パイプ(ハ)にはプラスチック製リング(ホ)、(ホ)・・・が所定の隙間(ヘ)、(ヘ)・・・を介在して巻かれている。そこで、地下水はこの隙間(ヘ)、(ヘ)・・・から流入し、上記穴(ニ)、(ニ)・・・を流れて内パイプ(ロ)の内部に溜まることが出来る。
【0007】
この内パイプ(ロ)に洗浄装置を下ろして高圧水を噴射ノズルから噴射しても、従来のような網状をしたストレーナをした井戸管のように付着した汚れを除去することが困難である。
【文献】特開2002-192094号 に係る「深井戸管内の洗浄方法及び洗浄装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、上記高圧水を噴射ノズルから噴射することで、深井戸管の内面及び集水部分であるストレーナに付着した泥やその他の汚れを除去することは可能である。しかし、近年になって使用されている多板式スクリーンパイプの場合には、従来の洗浄装置では十分に除去することが出来ない。
本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、井戸管として使用される多板式スクリーンパイプであっても、集水部分に付着・堆積している泥や汚れを効率よく除去することが出来る洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
多板式スクリーンパイプは、集水部分が内パイプと外パイプの2重構造とし、内パイプには複数の穴が貫通して設けられ、外パイプは間に隙間を有すプラスチック製リングを有している。プラスチック製リングは縦桟にて連結され、その為に間には一定幅の隙間が形成されている。
そして、該リングの断面形状は平行四辺形とし、その為に隙間が形成される各リングの上面及び下面は傾斜し、内側は高く、外側は低くなるように傾斜している。ただし、本発明では隙間の具体的な傾斜角度に関しては限定しない。
【0010】
ところで、洗浄装置は外方向へ高圧水が噴射するように、複数の噴射ノズルを有し、しかも噴射ノズルは高圧水が水平方向ではなく、斜め下方へ向いて噴射することが出来る傾斜角度を有している。すなわち、プラスチック製リングの間に形成される隙間に向いて高圧水が噴射するように斜め下方に傾斜している。
ここで、噴射ノズルは高圧水を噴射すると共に回転するように構成する場合、又は回転することなく斜め下方へ噴射するようにする場合がある。
【0011】
噴射ノズルが高圧水を噴射しながら回転する場合には、噴射方向が中心軸から離れていることで、噴射する高圧水の反力によって回転トルクが発生するようになる。また、噴射ノズルが回転しない場合には、中心軸から半径方向に延びていることで、高圧水の噴射によって回転トルクが発生しない。
一方、本発明では高圧水を用いないで、細かいドライアイス粒子をノズルから噴射して付着した汚れを落とすことも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄装置は高圧水が噴射して井戸管に当たることで、付着して固まっている汚れ、泥などが洗い落とされ、集水部から新たな地下水を流入することが出来る。そして、噴射ノズルは斜め下方を向いて外方向へ噴射するために、井戸管の構造が多板式スクリーンパイプであっても、プラスチック製リング間に形成されている斜め下方へ傾斜した隙間であっても、噴射水が通過して汚れを効率よく洗い落とすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】深井戸として多板式スクリーンパイプを用いて構成した場合の外パイプの一部断面拡大図。
【
図3】斜め下方に傾斜した噴射ノズルを有す洗浄装置の具体例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は高圧水を用いて深井戸内周面を洗浄する場合の全体概略図である。同図の1は深井戸管1、2はメインホース、3は回転体、4は定滑車、5は高圧洗浄車をそれぞれ表している。
上記高圧洗浄車5によって作られる高圧水は、上記メインホース2を流れて先端(下端)に取付けられている回転体3の噴射ノズル6,6・・・から噴射し、深井戸管1の内周面に吹き付けられる。
【0015】
ところで、上記高圧洗浄車5は地上の適当な場所に設置され、搭載している水はメインホース2を流れて噴射ノズル6,6・・・から噴射することが出来る。
メインホース2は深井戸管1の入口に設けている定滑車4に巻き付いて深井戸管1の内部に垂下し、その先端(下端)には上記回転体3が取付けられている。回転体3はメインホース2と同軸上にある軸を中心として回転することが出来る。
すなわち、噴射ノズル6,6・・・から高圧水が噴射し、その反力を利用して回転体3は回転することが出来るが、回転体3が回転しないように構成することも可能である。
【0016】
ところで、本発明の深井戸管1は多板式スクリーンパイプが用いられ、地下水を取り込む集水部は前記
図4に示しているように、内パイプ(ロ)と外パイプ(ハ)の2重構造と成っている。
図2は外パイプ(ハ)の一部断面を示す実施例であり、外パイプ(ハ)は複数のプラスチック製リング(ホ)、(ホ)・・・を有して等間隔で配列し、各プラスチック製リング(ホ)、(ホ)・・・の間には隙間(ヘ)、(ヘ)・・・が介在している。
【0017】
該外パイプ(ハ)を構成しているプラスチック製リング(ホ)、(ホ)・・・の断面は平行四辺形と成っている。すなわち、プラスチック製リング(ホ)の内面(ト)及び外面(ヘ)は垂直に起立し、上面(リ)及び下面(ヌ)は、内側が高く外側が低くなるように傾斜している。従って、上面(リ)と下面(ヌ)の間に形成される隙間(ヘ)は平行四辺形となって、同じ角度で傾斜している。
この隙間(ヘ)、(ヘ)・・・から地下水が流入し、該地下水は穴(ニ)、(ニ)・・・を流れて内パイプ(ロ)に溜まることになる。
【0018】
ところで、本発明に係る洗浄装置は高圧水を噴射する噴射ノズル6,6・・・は下方へ向いて傾斜し、上記隙間(ヘ)に向いて高圧水が噴射することが出来る。その為に、隙間(ヘ)に詰まっている泥や汚れは洗い落とされる。
図3は洗浄装置7を示す実施例であり、回転体3から噴射ノズル6,6・・・が外方向へ延び、噴射ノズル6,6・・・は途中で湾曲して下方を向いている。
【0019】
下方を向く傾き角度は上記隙間(ヘ)の傾斜角度と同じく、具体的な角度は限定しないが、一般的には10°~15°と成っている。
回転体3はメインホース2に連結した主管8の下端に取付けられ、主管8の下端部には上盤9と下盤10が所定の間隔をおいて設けられ、深井戸管1内での位置決めがされる。すなわち、洗浄装置7はメインホース2に吊下げられるが、この際、回転する噴射ノズル6,6・・・が深井戸管1の内面に接しないように配置される。しかも、洗浄装置7が傾くこともない。
その為に、上盤9及び下盤10の外径は噴射ノズル6,6・・・の先端を結ぶ外径より僅かに大きくしている。
【0020】
ところで、洗浄装置7の実施例を説明し、ここでは噴射ノズル6,6・・・を取付ける部材を回転体3として、主管8を中心として回転可能としているが、回転体3を設けない場合もある。すなわち、回転体3を設けることなく噴射ノズル6,6・・・の本数を多くして、回転しないで定位置で高圧水を噴射することも出来る。
【0021】
また、噴射ノズル6,6・・・からは一般に高圧水が噴射するが、細かい粒状のドライアイスを噴射することも可能である。勿論、この場合には、高圧洗浄車ではなくエアコンプレッサーを用いてメインホースに圧縮エアーを流し、ドライアイスを収容する容器を別に設け、該容器から補助ホースを延ばしてメインホースに接続する。
そして、メインホースを流れる圧縮エアーにて粒状のドライアイスを補助ホースから吸い込み、圧縮エアーと共に粒状のドライアイスを噴射し、付着した汚れを除去することが出来る。噴射して汚れに当たり、該汚れを除去することが出来、その後、粒状のドライアイスは気化してしまう。
【0022】
一方、上記実施例で説明した噴射ノズル6,6・・・は回転体3に固定された構造としているが、本発明の噴射ノズル6,6・・・は下方へ傾斜しているために、その傾斜角度が調整できる構造とすることも出来る。
具体的な調整構造は限定しないが、例えば、回転体3に角度調整部を設け、噴射ノズル6,6・・・の基部をボール型軸部とすることで回転可能とし、所定の角度にてネジ止めすることが出来る。
【0023】
同じく、噴射ノズル6,6・・・の水平方向の角度も調整可能な構造とすることも可能である。したがって、同じ構造の洗浄装置7であっても、回転トルクが発生しない向きに噴射ノズル6,6・・・を延ばしたり、水平方向に傾斜角度を設けて回転トルクが発生するように調整可能である。
そして、該洗浄装置7が使われる深井戸管1は、
図4に示す多板式スクリーンパイプに限定することなく、一般的な構造の深井戸管にて適用することも可能である。すなわち、噴射ノズル6,6・・・が下方へ向いて傾斜している洗浄装置7であっても、一般構造の井戸管を洗浄する場合に使うことに何ら問題はない。
【符号の説明】
【0024】
1 深井戸
2 メインホース
3 回転体
4 定滑車
5 高圧洗浄車
6 噴射ノズル
7 洗浄装置
8 主管
9 上盤
10 下盤