(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電磁気装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20231005BHJP
H01F 5/00 20060101ALI20231005BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20231005BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20231005BHJP
H02K 3/26 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01F27/24 J
H01F5/00 D
H01F41/02 Z
H01F41/04 Z
H02K3/26 E
(21)【出願番号】P 2020543096
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 GB2019050367
(87)【国際公開番号】W WO2019155236
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520294767
【氏名又は名称】イープロペルド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シラジー、ナビール アーメッド
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0244214(US,A1)
【文献】特開2009-253996(JP,A)
【文献】特許第6060911(JP,B2)
【文献】特開平05-284697(JP,A)
【文献】特開2016-039662(JP,A)
【文献】特開2013-081327(JP,A)
【文献】特開2017-131050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 5/00
H02K 3/26
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁気装置を形成する方法であって、
繰り返し
て層を堆積させることを含み、
堆積された各層が、互いに電気的に絶縁され前記電磁気装置の各導電体の部分を形成する導電性材料の複数の導電性領域を含み、
繰り返された各層の各導電性領域が、隣接する層内の各導電体の導電性領域に、少なくとも部分的に重なり電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁された複数の細長の導電体を形成し、
各層が、前記導電性領域から電気的に絶縁された、少なくとも1つの巻枠材料の領域を含み、
繰り返された各層の巻枠材料の各領域が、隣接する層内の巻枠材料の各領域に重なり機械的に接触して、前記導電体から電気的に絶縁され前記導電体と同じ長さに延びる細長の巻枠を形成
し、
前記巻枠が、強磁性材料の巻枠材料の層と絶縁性巻枠材料の層とを順番に堆積させて積層構造を形成することによって形成され、
前記強磁性材料の巻枠材料の層は、異なる磁性特性をもつ複数の軟磁性材料を含み、
前記軟磁性材料は、前記巻枠の各領域に堆積される、
方法。
【請求項2】
前記各層の導電性領域が、その層内のその他の領域の少なくともいくつかと等しい断面積を有するように堆積される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
幾つかの導電体の端部が他の導電体の端部と相互接続部によって相互接続されて、前記電磁気装置の巻線ターンを形成する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記相互接続部が、繰り返し相互接続層を堆積させることによって形成され、
各層が、互いに電気的に絶縁され前記電磁気装置の各相互接続部の部分を形成する、導電性材料の複数の領域を含み、
繰り返された各層の各領域が、隣接する層内の各相互接続部の領域に重なり電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁され少なくとも1つの細長の導電体の端部に電気的に接続された複数の相互接続部を形成する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
幾つかの導電体の端部が、使用時に前記導電体へ及び/又は前記導電体から電流を運ぶ接続部に接続される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記接続部が、繰り返して接続層を堆積させることによって形成され、
各層が、互いに電気的に絶縁され前記電磁気装置の各接続部の部分を形成する、導電性材料の複数の領域を含み、
繰り返された各層の各領域が、隣接する層内の各接続部の領域に重なり電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁され少なくとも1つの細長の導電体の端部に電気的に接続された複数の接続部を形成する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各導電体層が、材料が堆積されていない少なくとも1つの空間を設けるように堆積され、
繰り返された各導電体層の各空間が、隣接する前記層内の各空間に重なって、前記導電体と同じ長さに延びる細長の空隙を形成する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
別体の巻枠部材が、前記空間又は各空間に挿入される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
複数の部分を含む別体の巻枠部材が、前記各空間にそれぞれ挿入される部分を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記強磁性材料が、磁区及び又は磁性粒子が好ましい磁気回路方向に整列するように、又は改良されるように
処理される
請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
繰り返し
て層を堆積させることを含み、
各導電性領域が、各導電性領域を層内の隣接する領域から電気的に絶縁する絶縁材料の絶縁領域によって囲まれ、
繰り返された各層の各絶縁領域が、隣接する層内の各絶縁領域に重なって、各導電体の周りに絶縁性の囲みを形成する、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
繰り返
して層を堆積させることを含み、
各層が、空間を囲む材料の少なくとも1つの壁領域を含み、
繰り返された各層の、壁に囲まれた各領域が、隣接する層の各壁に囲まれた領域に重なって流路を形成する、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記層が3次元プリンティング技術によって堆積される、
請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
電磁気装置を形成する方法であって、
繰り返し層を堆積させることを含み、
堆積された各層が、巻枠材料の少なくとも1つの領域を含み、
繰り返された各層の巻枠材料の各領域が、隣接する層内の巻枠材料の各領域に重なり、
機械的に接触して前記電磁気装置の巻枠を形成し、
その後、コイルが前記巻枠の周りに配置され
、
前記巻枠が、強磁性材料の巻枠材料の層と絶縁性巻枠材料の層とを順番に堆積させて積層構造を形成することによって形成され、
前記強磁性材料の巻枠材料の層は、異なる磁性特性をもつ複数の軟磁性材料を含み、
前記軟磁性材料は、前記巻枠の各領域に堆積される、
方法。
【請求項15】
前記強磁性材料が、磁区及び又は磁性粒子が好ましい磁気回路方向に整列するように、又は改良されるように処理される、
請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁気装置に関し、より詳細には、モータ及び発電機等の電気機械に関するが、それらに限定はされない。
【背景技術】
【0002】
ソレノイド、変圧器、コイル、インダクタ、チョーク、モータ、及び発電機等、膨大な数の電磁気装置が毎年製造されている。このような装置の大多数が、積層回転子、積層固定子、コア、ヨーク、又は他の巻枠の周りに巻かれた、絶縁された導電体の形態の電気巻線を有している。このような装置の多くにおいて、導電体は、空隙又はいわゆるスロット内で巻かれている。電磁気装置の充填率は、空隙中の全ての導電体(いかなる絶縁体も除く)の合計断面積の、その空隙の断面積に対する比率として定義される。
【0003】
理想的には、利用可能な空隙領域は、絶縁された導電体によって完全に満たされるべきであるが、絶縁された導電体の断面形状及び/又は空隙の断面形状の不一致のために高い充填率が実現されていない。このため、ほとんどの電磁気装置は、充填率が低く、絶縁された導電体と隣接する絶縁された導電体及び/又はスロットの側壁との間に延びるエアギャップを含んでいる。電磁気装置の中には、巻線を巻枠無し、つまりヨークレスで使用するものもあるが、このような装置も、巻かれたときには同じ又は類似した問題が発生する。
【0004】
高い充填率の電磁気装置は、巻線を高密度に詰め込む必要があり時間がかかるため、製造が難しくコスト高となる。巻線を空隙に挿入するための機械が知られているが、この工程では巻線端部が長くなり巻線抵抗が増加し、追加の空間が必要になる。空隙充填率は、典型的には約40~50%であり、一部の高い充填率の場合、約60%~70%である。このような高充填率の巻線の1つが、モータや発電機で使用される、いわゆるヘアピン巻線である。ヘアピン巻線では、巻線が個々のヘアピンに類似し、典型的には矩形ワイヤで作られ、積層スロットに一方の端部から押し込まれる。ヘアピンの端部を半田付けして巻線が完成する。この方法は複雑で接合部が多い。これらの接合部が継続的に高い振動を受けると、信頼性の問題につながる可能性がある。
【0005】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3には、電磁気装置を形成する方法であって、その方法は繰り返し堆積された層を含み、各堆積層が、互いに電気的に絶縁されその装置の各導電体の部分を形成する前記導電性材料の複数の導電性領域を含み、繰り返された各層の各導電性領域が、隣接する層内の各導電体の導電性領域に少なくとも部分的に重なり電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁された複数の細長の導電体を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国特許出願公開第107170564号明細書
【文献】独国特許出願公開第102013214128号明細書
【文献】特開平5-283259号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、第1の態様からわかるように、電磁気装置を形成するための、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3で開示されている種類の方法を提供する。本方法は、各層が、更に、導電性領域から電気的に絶縁された、少なくとも1つの巻枠材料の領域を含み、繰り返された各層の巻枠材料の各領域が、隣接する層内の巻枠材料の各領域に重なり、機械的に接触して細長の巻枠を形成し、その巻枠が、導電体から電気的に絶縁され、導電体と同じ長さに延びていることを特徴とする。
【0008】
本発明の方法は、導電体で形成された各領域と巻枠材料とを有する層を堆積させることを含み、それにより、導電体及び巻枠が堆積によって層内に同時に形成される。各導電性領域の形状は、各導電性領域が隣接する導電性領域に可能な限り近くなるように構成することができる。また、本発明の方法によって、導電性領域の形状を、堆積された巻枠領域によって形成されたスロット又は他の空隙内で導電性領域が可能な限り密着するように構成することができる。この方法によって、エアギャップが最小となり、利用可能な空間中の導電体の密度が最大となる。
【0009】
本方法は、前記繰り返された層を堆積させることを含み、各層が、複数の導電性領域と、導電性領域から電気的に絶縁された、少なくとも1つの巻枠材料の領域とを含み、繰り返された各層の巻枠材料の各領域が、隣接する層内の巻枠材料の各領域に重なり、機械的に接触して、導電体から電気的に絶縁され導電体と同じ長さに延びる細長の巻枠を形成してもよい。この方法において、導電体と巻枠は、堆積によって同時に形成される。
【0010】
1つの層の領域は、その層内のその他の領域の少なくともいくつかと等しい断面積を有するように堆積させてもよい。
【0011】
いくつかの導電体の端部を、他の導電体の端部に相互接続部によって相互接続して従来の巻線型電磁気装置の巻線に類似した電磁気装置の巻線ターンを形成してもよい。相互接続部は、繰り返して層を堆積させることによって形成され、各層が、互いに電気的に絶縁されその装置の各相互接続部の部分を形成する前記導電性材料の複数の領域を含み、繰り返された各層の各領域が、隣接する層内の各相互接続部の領域に重なり、電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁され少なくとも1つの細長の導電体の端部に電気的に接続された複数の相互接続部を形成してもよい。
【0012】
いくつかの導電体の端部を、電流を導電体へ及び/又は導電体から伝えるワイヤ、端子、又は他の接続部に接続してもよい。接続部は、繰り返し層を堆積させることによって形成され、各層が、互いに電気的に絶縁され、その装置の各接続部の部分を形成する前記導電性材料の複数の領域を含み、繰り返された各層の各領域が、隣接する層内の各接続部の領域に重なり電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁され少なくとも1つの細長の導電体の端部に電気的に接続された複数の接続部を形成してもよい。
【0013】
各層が、材料が堆積されていない少なくとも1つの空間を設けるように堆積され、繰り返された各層の各空間は、隣接する層内の各空間に重なって、導電体と同じ長さに延びる細長の空隙を形成してもよい。空隙は、冷却用流路として機能してもよく、又は隣接する導電体を絶縁する働きをしてもよい。
【0014】
別体の巻枠部材を前記又は各空隙に挿入してもよい。別体の巻枠部材は、各空隙中に延びる複数の部分を含んでもよい。接続部及び/又は相互接続部は、別体の巻枠部材を前記又は各空隙に挿入した後に形成してもよい。
【0015】
巻枠は、第1巻枠材料の層と第2巻枠材料の層とを繰り返し堆積させて積層構造を形成することによって積層形成してもよい。第1巻枠材料は、強磁性材料であってもよく、第2巻枠材料は、絶縁材料であってもよい。
【0016】
巻枠材料は、例えば、磁場及び/又はレーザースクライビングによって、磁区及び又は磁性粒子が好ましい磁気回路方向に整列するように、又は改良されるように処理してもよい。このプロセスによって、コア損失が減少し、装置の効率が大幅に向上する。
【0017】
本方法は、巻枠のそれぞれの領域に異なる磁性特性をもつ複数の軟磁性材料を堆積させることを含んでもよい。例えば、電気機械において、巻枠の各ティースの先端を高い飽和磁束密度をもつ高価な材料を使用して形成し、ティースの本体を別の混合材で形成し、巻枠の残りの部分を安価な材料で形成することによって、ハイブリッド巻枠を形成することができる。
【0018】
本方法は、前記繰り返された層を堆積させることを含み、各層が前記複数の導電性領域を含み、各導電性領域が、各導電性領域を層内の隣接する領域から電気的に絶縁する絶縁材料の絶縁領域によって囲まれ、繰り返された各層の各絶縁領域が、隣接する層内の各絶縁領域の重なって、各導電体の周りに絶縁性の囲みを形成してもよい。
【0019】
層は、3次元プリンティング及び/又は蒸着によって堆積させてもよい。マルチヘッドマシンは、実質的に、全てのプラスチック、金属、及び磁気コンポーネントを含む完全な電磁気装置の機械を「プリント」することが可能である。一部の部品は、強度を高めるためにカーボンファイバー又はケブラー繊維を使用して形成することができる。
【0020】
異なる複数の導電性材料を堆積させてもよい。スタネン、銀、銅、又は金を選択的に堆積させることによって電流密度を変化させてもよく、銅及び/又はアルミニウムを選択的に堆積させることによって質量を変化させてもよい。
【0021】
本方法は、前記繰り返された層を堆積させることを含み、各層が、前記複数の導電性領域と空間を囲む材料の少なくとも1つの壁領域とを含み、繰り返された各層の、壁に囲まれた各領域が、隣接する層の各壁に囲まれた領域に重なって流路を形成してもよい。使用時には、冷却用流体を流路に沿って流すことができる。壁に囲まれた領域は、巻枠として機能してもよい。
【0022】
本方法は、回転軸を有する電気機械を形成する方法であって、層が、機械の回転軸の方向に繰り返し堆積されてもよい。
【0023】
上記方法によって、国際公開第2005/043740号に開示されている種類の巻線を堆積させて、電気モータ及び発電機用の複数の巻線構成を提供することができる。
【0024】
本発明の利点は、各相において相巻線抵抗が同じになることである。これは、従来の方法で巻かれた電気機械では常にそうであるとは限らず、相の不均衡及び望ましくない循環電流が発生する。
【0025】
本発明は、第2の態様からわかるように、電磁気装置を形成する方法であって、繰り返された層を堆積させることを含み、各堆積層が、少なくとも1つの巻枠材料の領域を含み、繰り返された各層の巻枠材料の各領域が、隣接する層内の巻枠材料の各領域に重なり機械的に接触して装置の巻枠を形成し、その後、コイルが巻枠の周りに配置される方法を提供する。
【0026】
巻枠は、第1巻枠材料の層と第2巻枠材料の層とを堆積させて積層構造を形成することによって形成してもよい。第1巻枠材料は、強磁性材料であってもよく、第2巻枠材料は、絶縁材料であってもよい。
【0027】
巻枠材料は、例えば、磁場及び/又はレーザースクライビングによって、磁区及び又は磁性粒子が好ましい磁気回路方向に整列するように、又は改良されるように処理してもよい。このプロセスによって、コア損失が減少し、装置の効率が大幅に向上する。
【0028】
本方法は、巻枠のそれぞれの領域に異なる磁性特性をもつ複数の軟磁性材料を堆積させることを含んでもよい。例えば、電気機械において、巻枠の各ティースの先端を高い飽和磁束密度をもつ高価な材料を使用して形成し、ティースの本体を別の混合材で形成し、巻枠の残りの部分を安価な材料で形成することによって、ハイブリッド巻枠を形成することができる。
【0029】
本発明の実施形態を、単に例として、添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本発明に従って形成されたモータの固定子の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の固定子が部分的に形成されたときの斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1の固定子の上方からの斜視図であり、相互接続部を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の方法の別の実施形態において使用されるヨークの上方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面中の
図1~
図5に、本発明に従って形成された電気モータの固定子10を示す。固定子10は環状であり、層、例えば、24A~24W(
図2参照)を固定子10の軸方向において一方の軸端部から他方の軸端部へと正しくプリンティングすることによって形成されている。まず、底端部層、例えば24A~24Cを堆積させる。底端部層は、固定子10の各導電体12の間の接続部17を形成する、銅又は他の導電性材料の領域を含む。
【0032】
次に、複数の導電体12が、繰り返された層、例えば24D~24Tをプリンティングすることによって形成される。各層は、導電性材料の複数の導電性領域を含み、複数の導電性領域は、互いに電気的に絶縁され、それぞれ固定子10の各導電体12の部分を形成している。繰り返された各層、例えば24Kの各導電性領域は、前の層、例えば24Jの各導電体の導電性領域に部分的に重なり電気的及び機械的に接触して、互いに電気的に絶縁された複数の細長の導電体12を形成している。隣接する導電体12は、ギャップ14によって隣接する導電体から電気的に絶縁されている。ギャップ14は空気を含んでもよい。別の実施形態においては、ギャップ14は、導電体12と同時に層状にプリンティングされる絶縁材料を含んでもよい。この絶縁材料は、各導電体12を取り囲んでもよく、ギャップ14を部分的又は完全に埋めてもよい。ギャップは、各層を堆積させた後、絶縁材料で満たしてもよい。
【0033】
固定子10は、放射状に延びたティース13を有する積層された環状のヨーク又は巻枠11を含む。ヨーク11は、繰り返された各層、例えば24D~24Tのヨーク材料の領域をプリンティングすることによって形成されている。巻枠材料の領域は、導電体12の周りの空気及び/又は絶縁材料によって、各層の導電性領域から電気的に絶縁されている。ヨーク11は、第1軟磁性巻枠材料の層15及び絶縁性巻枠材料の層16を繰り返し堆積させて積層構造を形成することによって形成されている。繰り返された各層の巻枠材料の各領域は、前の層の巻枠材料のそれぞれの領域に重なり機械的に接触して、所望の断面形状を有する一体の巻枠11を形成している。
【0034】
ヨーク11の各ティース13の間には、複数のいわゆるスロット26が形成されている。軟磁性材は、様々な特性を有してよく、例えば、ヨーク11のティース13を、ヨーク11の他の部分より高い飽和磁束密度を有する、より高価な軟磁性材料で形成してもよい。各スロット26内の各導電体12は同じ断面積を有するようにプリンティングされている。導電体12の形状は、導電体12がスロット26の領域内に、不必要なエアギャップが無い状態で密接して嵌るように選択されおり、それによってスロット26の充填率を最大化している。導電体12を有する最終層、例えば26sが堆積された後、固定子10の各導電体12の間の接続部17を形成する、銅又は他の導電性材料の領域を含む上端層、例えば24t、24uが堆積される。各導電体12の間の相互接続部18を形成する層、及び供給端子(図示せず)を、プリンティングによって堆積させてもよい。
【0035】
固定子10の他の相への相互接続部19を形成する層を堆積させてもよい。
【0036】
これらの層は、冷却用流路50が設けられるようにプリンティングしてもよい。冷却用流路50は、導電体12に沿い、導電体12に隣接し及び/又は巻枠11を通って延びることができる。
【0037】
使用時には、電流iが、供給端子(図示せず)からモータ内に流れ込み、相互接続部18に沿って導電体12の1つへと流れる。その後、電流iは1つのスロット26内の導電体12を下方へ流れた後、積層された巻枠11のティース13の下を延びる接続部17に沿って流れる。その後、電流iは、ティース13の反対側のスロット26内の導電体12を上方へ流れた後、ティース13の上側を別の導電体12へと延びる接続部17に沿って流れる。このプロセス、そして
図1のモータがプリンティングにより形成された9つの巻線ターンを効果的に有することが理解されるであろう。
【0038】
図面中の
図6に、別の実施形態における、コアが無い状態でプリンティングされた固定子の底端部接続部17及び導電体12を示す。プリンティングされた導電体12は、事前に形成されたコア(図示せず)と係合可能であり、その後、組み立て体をプリンティングして、先に説明したような必要な接続部及び相互接続部を形成することができる。
【0039】
本発明により、固定子、回転子(図示せず)、及びモータの他の構成部品を同様な方法でプリンティングができ、モータ及び他の電磁気装置を迅速に要求に応じてプリンティング可能であることが理解されよう。
【0040】
このように、本発明は、電気モータ、発電機、又は他の電磁気装置を3-Dプリンティングによって形成する方法を提供する。本方法においては、導電性領域、及び積層された、コア、ヨーク又は他の巻枠11の領域を含む層、例えば24c~24sを繰り返し堆積し、巻枠11内の空間26の内部に延びる複数の導電体12を構成する。導電体12は、その端部で相互接続され、巻枠11又はその一部の内部又は周囲に、巻線状の構造を形成する。本方法によって、巻枠11内の利用可能な各空間26を導電体12で満たすことができ、これによって、装置の効率が最大化される。