(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】テープディスペンサ、テープディスペンサキット、マスキングテープロール及びテープディスペンサ動作方法
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65H35/07 H
(21)【出願番号】P 2021500003
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 NL2019050160
(87)【国際公開番号】W WO2019177460
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520352241
【氏名又は名称】マッハ デザイン ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノイテル、ロナルド ワルター
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-110444(JP,U)
【文献】実開昭61-068066(JP,U)
【文献】実開昭54-064689(JP,U)
【文献】特開平07-252010(JP,A)
【文献】特表2012-517395(JP,A)
【文献】特表2003-507281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物への塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサであって、
-幅を有し且つ所定の長さのマスキングテープを担持しているマスキングテープロールを収容するための筐体(H)と、
-長さと幅とを有し且つ入口側と出口側とを有する圧力面であって、マスキングテープ部分が前記圧力面と対象物との間にある状態で、前記対象物に圧力をかける圧力面とを備え、
前記筐体及び前記圧力面が、前記マスキングテープロールから、前記圧力面の前記入口側を介して、前記圧力面の長手方向に前記圧力面に沿って、前記圧力面の前記出口側に向かって前記マスキングテープを誘導するように構成され、
-前記圧力面の前記入口側の上流で前記マスキングテープを切断するための、第1のカッターと、
-前記圧力面の前記出口側の下流で前記マスキングテープを切断するための、第2のカッターとを更に備える、テープディスペンサ。
【請求項2】
前記筐体が、前記テープディスペンサの中心面を中心とした実質的に対称的な設計を有し、
前記筐体が、前記マスキングテープロールが前記筐体内部に収容された際に、前記マスキングテープロールの中心面が、前記テープディスペンサの前記中心面と実質的に一致するように構成される、請求項1に記載のテープディスペンサ。
【請求項3】
前記筐体が、前記圧力面の前記入口側に配置される第1のスペーサと、前記圧力面の前記出口側に配置される第2のスペーサとを備え、
前記第1のスペーサが、前記第1のスペーサの自由端と前記圧力面の前記入口側との間の第1の距離を定義し、
前記第2のスペーサが、前記第2のスペーサの自由端と前記圧力面の前記出口側との間の第2の距離を定義し、
好適には、前記第1の距離が前記第2の距離に等しい、請求項1又は2に記載のテープディスペンサ。
【請求項4】
使用時に、前記圧力面の前記入口側と前記第1のカッターとの間に延在する前記マスキングテープの長さが、前記第1の距離から、前記筐体の幅と、前記筐体内部に収容できるマスキングテープの最大幅との差の半分を減算したものに等しく、
使用時に、前記圧力面の前記出口側と前記第2のカッターとの間に延在する前記マスキングテープの長さが、前記第2の距離から、前述の差の半分を減算したものに等しい、請求項
2に従属する請求項3に記載のテープディスペンサ。
【請求項5】
前記第1のカッター及び前記第2のカッターを選択的に動作させる作動システムを更に備える、請求項1に記載のテープディスペンサ。
【請求項6】
前記作動システムが、使用者の手、好適には使用者の手の手の平によって係合される摺動要素を備え、
前記筐体が、前記筐体の長手方向に、前記摺動要素を誘導するように構成され、
前記作動システムが、前記摺動要素の、前記圧力面の前記入口側に向かう方向への移動によって、前記第1のカッターの切断動作が生じ、前記摺動要素の、前記圧力面の前記出口側に向かう方向への移動によって、前記第2のカッターの切断動作が生じるように構成される、請求項5に記載のテープディスペンサ。
【請求項7】
前記第1のカッターの上流の位置における筐体部分にマスキングテープを挟持するための、第1の挟持機構を更に備える、請求項1に記載のテープディスペンサ。
【請求項8】
前記第2のカッターの下流の位置における筐体部分にマスキングテープを挟持するための、第2の挟持機構を更に備える、請求項1に記載のテープディスペンサ。
【請求項9】
請求項2に記載のテープディスペンサと、
前記筐体の幅を1つ以上の所定値に設定する、1つ以上のアタッチメント又は代替品とを備える、テープディスペンサキット。
【請求項10】
前記テープディスペンサが、請求項4に記載のテープディスペンサであって、
前記1つ以上のアタッチメント又は代替品が、使用時に、前記圧力面の前記入口側と前記第1のカッターとの間に延在する前記マスキングテープの長さと、使用時に、前記圧力面の前記出口側と前記第2のカッターとの間に延在する前記マスキングテープの長さとを調節するように構成される、請求項9に記載のテープディスペンサキット。
【請求項11】
請求項1に記載のテープディスペンサと、
前記テープディスペンサ内部に収容される前記マスキングテープロールとを備える、テープディスペンサキット。
【請求項12】
前記マスキングテープロールの幅が、前記テープロールが収容される前記筐体内部の空間の幅に実質的に等しい、請求項11に記載のテープディスペンサキット。
【請求項13】
請求項1に記載のテープディスペンサに適したマスキングテープロールであって、
-ロールとして巻かれる長さのマスキングテープと、
-前記マスキングテープロールの側面ごとの誘導シートとを備え、
前記誘導シートが、前記テープディスペンサ内での使用時に、前記マスキングテープロールに伴って回転するように配置され、
前記マスキングテープの方を向かないようになっている前記誘導シートの面が、前記テープディスペンサの前記筐体の側壁に対して摺動するように構成される、マスキングテープロール。
【請求項14】
芯を更に備え、
前記マスキングテープが前記芯に巻かれる長さであり、
各誘導シートが、前記マスキングテープロールの側面それぞれにおいて、少なくとも前記マスキングテープを覆う、請求項13に記載のマスキングテープロール。
【請求項15】
請求項1に記載のテープディスペンサの動作方法であって、
a)前記筐体内部に前記マスキングテープロールを導入することと、
b)前記マスキングテープを、前記マスキングテープロールから、前記圧力面の前記入口側を介して、前記圧力面に沿って、前記圧力面の前記出口側に向かって、前記第2のカッターを越えて延在するように、前記ロールから巻き外すことと、
c)前記マスキングテープを、前記圧力面において、対象物に押し付けることと、
d)前記第2のカッターを用いて、前記マスキングテープを、前記圧力面の前記出口側の下流で切断することと、
e)前記テープディスペンサを、前記対象物に沿って、前記圧力面の前記出口側から前記圧力面の前記入口側に向かう方向に移動させることで、前記マスキングテープを前記マスキングテープロールから巻き外して、前記対象物にマスキングを施すことと、
f)前記第1のカッターを用いて、前記マスキングテープを、前記圧力面の前記入口側の上流で切断することとを含む、方法。
【請求項16】
前記テープディスペンサが、請求項3に記載のテープディスペンサであって、
工程d)の前に、前記第2のスペーサが前記対象物の一部と係合するまで、前記テープディスペンサを、前記圧力面の前記入口側から前記圧力面の前記出口側に向かう方向に移動させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のスペーサが前記対象物の一部と係合するまで、工程e)を実行する、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物への塗装又はシーリングの際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサに関する。更に、本発明は、テープディスペンサ及び、テープディスペンサとマスキングテープロールとの組み合わせの、様々な使い方を可能にするテープディスペンサキットに関する。また、本発明は、マスキングテープロール及び、本発明に係るテープディスペンサの動作方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
対象物への塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサの先行技術例が、国際特許公報である特許文献1に見られる。先行技術のテープディスペンサは、ローラの形態のテープ誘導面と、テープ誘導面同士の間において、テープを切断するためのカッターとを備える。
【0003】
塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサの重要な態様は、どのようにしてテープを対象物の角に貼るか、である。特許文献1では、むしろ複雑な動作方法が開示されており、マスキングテープをカッターで対象物の角までの距離に対応する長さに切断する姿勢に、テープディスペンサを維持するように、テープディスペンサの側面の一方を、対象物の隣接面と係合させなければならない。開示のテープディスペンサの他の欠点は、ある長さのテープの貼付を、常に、そのテープの長さと関連付けられた、2つの角のうちの同じ一方の角で開始しなければならず、他方の角では開始できないという点である。
【0004】
先行技術のテープディスペンサの更なる欠点として、その比較的小さなテープ誘導面に起因して、テープディスペンサを取り扱う間、テープディスペンサが僅かな手の動きにも敏感になってしまうことがある。また、テープを貼る必要がある面に対してテープディスペンサを押し付けたり、基準面に対してテープディスペンサを押し付けたり、テープを貼る必要がある面に沿ってテープディスペンサを移動させたりするのに求められる力のいずれも、手首を使って加えなければならない。しかしながら、テープディスペンサのハンドルがテープ誘導面又は圧力面から比較的大きく離れていると、位置決めがあまり正確でなくなるか、又はテープディスペンサを両手で取り扱ったり操作したりしなければならなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、改善されたタップディスペンサ、特に、角におけるマスキングテープの貼付を容易にするテープディスペンサを提供することを目的とする。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、対象物への塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサであって、
-幅を有し且つ所定の長さのマスキングテープを担持しているマスキングテープロールを収容するための筐体と、
-長さと幅とを有し且つ入口側と出口側とを有する圧力面であって、マスキングテープ部分が圧力面と対象物との間にある状態で、対象物に圧力をかける圧力面とを備え、
筐体及び圧力面は、マスキングテープロールから、圧力面の入口側を介して、圧力面の長手方向に圧力面に沿って、圧力面の出口側に向かってマスキングテープを誘導するように構成され、
-長手方向から見て、マスキングテープロールと圧力面の入口側との間でマスキングテープを切断するための、第1のカッターと、
-圧力面の出口側の下流でマスキングテープを切断するための、第2のカッターとを更に備える、テープディスペンサが提供される。
【0008】
一実施例では、圧力面は、圧力面の幅の少なくとも2倍の長さを有し、好適には少なくとも3倍、より好適には少なくとも4倍、最も好適には少なくとも5倍である。圧力面の面積が大きいほど、テープディスペンサの誘導がし易く、僅かな手の動きに敏感になり難くできる。
【0009】
圧力面の使用及び、圧力面の各側で切断が可能であることの他の利点は、テープディスペンサが完全に自立しているという点であり、これは、手でテープを操作する必要なく、テープを、隣接面に塗られたばかりの塗装の層といった繊細な領域に貼ることなく、且つ1つの特定の角から開始する必要なく、どの面にも貼ることができ、一方の角に対する所望の長さに切断でき、他方の角に移動でき、そこでも所望の長さに切断できることを意味する。
【0010】
一実施例では、筐体は、テープディスペンサの中心面を中心とした実質的に対称的な設計を有し、筐体は、マスキングテープロールが筐体内部に収容された際に、マスキングテープロールの中心面が、テープディスペンサの中心面と実質的に一致するように構成される。
【0011】
一実施例では、筐体は、圧力面の入口側に配置される第1のスペーサと、圧力面の出口側に配置される第2のスペーサとを備え、第1のスペーサは、第1のスペーサの自由端と圧力面の入口側との間の第1の距離を定義し、第2のスペーサは、第2のスペーサの自由端と圧力面の出口側との間の第2の距離を定義し、好適には、第1の距離が第2の距離に等しい。
【0012】
一実施例では、使用時に、圧力面の入口側と第1のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さが、第1の距離から、筐体の幅と、筐体内部に収容できるマスキングテープの最大幅との差の半分を減算したものに等しく、使用時に、圧力面の出口側と第2のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さが、第2の距離から、前述の差の半分を減算したものに等しい。
【0013】
一実施例では、テープディスペンサは、第1のカッター及び第2のカッターを選択的に動作させる作動システムを更に備える。
【0014】
一実施例では、作動システムは、使用者の手、好適には使用者の手の手の平又は1つ以上の指又は親指によって係合される摺動要素を備え、筐体は、筐体の長手方向に、摺動要素を誘導するように構成され、作動システムは、摺動要素の、圧力面の入口側に向かう方向への移動によって、第1のカッターの切断動作が生じ、摺動要素の、圧力面の出口側に向かう方向への移動によって、第2のカッターの切断動作が生じるように構成される。
【0015】
一実施例では、テープディスペンサは、第1のカッターの上流の位置における筐体部分にマスキングテープを挟持するための、第1の挟持機構を更に備える。
【0016】
一実施例では、テープディスペンサは、第2のカッターの下流の位置における筐体部分にマスキングテープを挟持するための、第2の挟持機構を更に備える。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、対象物への塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサを備えるテープディスペンサキットが提供され、テープディスペンサは、
-幅を有し且つ所定の長さのマスキングテープを担持しているマスキングテープロールを収容するための筐体と、
-長さと幅とを有し且つ入口側と出口側とを有する圧力面であって、マスキングテープ部分が圧力面と対象物との間にある状態で、前記対象物に圧力をかける圧力面とを備え、
筐体及び圧力面は、マスキングテープロールから、圧力面の入口側を介して、圧力面の長手方向に圧力面に沿って、圧力面の出口側に向かってマスキングテープを誘導するように構成され、
筐体は、テープディスペンサの中心面を中心とした実質的に対称的な設計を有し、筐体は、マスキングテープロールが筐体内部に収容された際に、マスキングテープロールの中心面が、テープディスペンサの中心面と実質的に一致するように構成され、
-長手方向から見て、マスキングテープロールと圧力面の入口側との間でマスキングテープを切断するための、第1のカッターと、
-圧力面の出口側の下流でマスキングテープを切断するための、第2のカッターとを更に備え、
テープディスペンサキットは、筐体の幅を1つ以上の所定値に設定する、1つ以上のアタッチメント又は代替品を更に備える。
【0018】
一実施例では、筐体は、好適には、圧力面の入口側に配置される第1のスペーサと、圧力面の出口側に配置される第2のスペーサとを備え、好適には、第1のスペーサは、第1のスペーサの自由端と圧力面の入口側との間の第1の距離を定義し、好適には、第2のスペーサは、第2のスペーサの自由端と圧力面の出口側との間の第2の距離を定義し、好適には、使用時に、圧力面の入口側と第1のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さが、第1の距離から、筐体の幅と、筐体内部に収容できるマスキングテープの最大幅との差の半分を減算したものに等しく、好適には、使用時に、圧力面の出口側と第2のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さが、第2の距離から、前述の差の半分を減算したものに等しく、
好適には、1つ以上のアタッチメント又は代替品は、使用時に、圧力面の入口側と第1のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さと、使用時に、圧力面の出口側と第2のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さとを調節するように構成される。一実施例では、1つ以上のアタッチメント又は代替品は、筐体の幅を1つ以上の所定値に設定するように構成されず、使用時に、圧力面の入口側と第1のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さと、使用時に、圧力面の出口側と第2のカッターとの間に延在するマスキングテープの長さとを調節するようにのみ構成される。
【0019】
一実施例では、1つ以上のアタッチメントは、圧力面によって係合される面に対して実質的に垂直な面と係合して、面同士の間の縁に沿ってマスキングテープを貼るための、圧力面に対して実質的に垂直な方向に延在する誘導板を含む。
【0020】
本発明の第3の態様によれば、対象物への塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサを備えるテープディスペンサキットが提供され、テープディスペンサは、
-幅を有し且つ所定の長さのマスキングテープを担持しているマスキングテープロールを収容するための筐体と、
-長さと幅とを有し且つ入口側と出口側とを有する圧力面であって、マスキングテープ部分が圧力面と対象物との間にある状態で、前記対象物に圧力をかける圧力面とを備え、
筐体及び圧力面は、マスキングテープロールから、圧力面の入口側を介して、圧力面の長手方向に圧力面に沿って、圧力面の出口側に向かってマスキングテープを誘導するように構成され、
-長手方向から見て、マスキングテープロールと圧力面の入口側との間でマスキングテープを切断するための、第1のカッターと、
-圧力面の出口側の下流でマスキングテープを切断するための、第2のカッターとを更に備え、
テープディスペンサキットは、タップディスペンサ内部に収容されるマスキングテープロールを更に備える。
【0021】
一実施例では、マスキングテープロールの幅は、テープロールが収容される筐体内部の空間の幅に実質的に等しい。
【0022】
本発明の第4の態様によれば、本発明に係るテープディスペンサに適したマスキングテープロールであって、
-ロールとして巻かれる長さのマスキングテープと、
-マスキングテープロールの側面ごとの誘導シートとを備え、
誘導シートは、テープディスペンサ内での使用時に、マスキングテープロールに伴って回転するように配置され、
マスキングテープの方を向かないようになっている誘導シートの外面が、テープディスペンサの筐体の側壁に対して摺動するように構成される、マスキングテープロールが提供される。
【0023】
一実施例では、マスキングテープロールは、芯を更に備え、マスキングテープは、芯に、すなわち芯の周囲に巻かれる長さであり、好適には、各誘導シートは、マスキングテープロールの側面それぞれにおいて、少なくともマスキングテープを覆う。一実施例では、各誘導シートは、マスキングテープロールの側面それぞれにおいて、マスキングテープの少なくとも25%、好適には少なくとも50%、より好適には少なくとも75%、最も好適には100%を覆う。
【0024】
本発明の第5の態様によれば、対象物への塗装の際にマスキングテープを貼るためのテープディスペンサの動作方法が提供され、テープディスペンサは、
-幅を有し且つ所定の長さのマスキングテープを担持しているマスキングテープロールを収容するための筐体と、
-長さと幅とを有し且つ入口側と出口側とを有する圧力面であって、マスキングテープ部分が圧力面と対象物との間にある状態で、前記対象物に圧力をかける圧力面とを備え、
筐体及び圧力面は、マスキングテープロールから、圧力面の入口側を介して、圧力面の長手方向に圧力面に沿って、圧力面の出口側に向かってマスキングテープを誘導するように構成され、
-長手方向から見て、マスキングテープロールと圧力面の入口側との間でマスキングテープを切断するための、第1のカッターと、
-圧力面の出口側の下流でマスキングテープを切断するための、第2のカッターとを更に備え、
方法は、
a)筐体内部にマスキングテープロールを導入することと、
b)マスキングテープを、マスキングテープロールから、圧力面の入口側を介して、圧力面に沿って、圧力面の出口側に向かって、第2のカッターを越えて延在するように、ロールから巻き外すことと、
c)マスキングテープを、圧力面において、対象物に押し付けることと、
d)第2のカッターを用いて、マスキングテープを、圧力面の出口側の下流で切断することと、
e)テープディスペンサを、対象物に沿って、圧力面の出口側から圧力面の入口側に向かう方向に移動させることで、マスキングテープをマスキングテープロールから巻き外して、対象物にマスキングを施すことと、
f)第1のカッターを用いて、マスキングテープを、圧力面の入口側の上流で切断することとを含む。
【0025】
一実施例では、テープディスペンサの筐体は、圧力面の入口側に配置される第1のスペーサと、圧力面の出口側に配置される第2のスペーサとを備え、第1のスペーサは、第1のスペーサの自由端と圧力面の入口側との間の第1の距離を定義し、第2のスペーサは、第2のスペーサの自由端と圧力面の出口側との間の第2の距離を定義し、工程d)の前に、第2のスペーサが対象物の一部と係合するまで、テープディスペンサを、圧力面の入口側から圧力面の出口側に向かう方向に移動させる。
【0026】
一実施例では、第1のスペーサが対象物の一部と係合するまで、工程e)を実行する。
【0027】
上記の本発明の態様は互いに独立して説明されたが、ここでは、本発明の一態様に適用可能な特徴及び実施例は、技術的に適切な場合、本発明の他の態様と組み合わせたり、それに適用されたりしてもよいことに留意されたい。
【0028】
ここで、本発明は、同様の部分を同様の参照符号で示した添付の図面を参照して、非限定的に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施例に係るテープディスペンサの側面図を概略的に示す。
【
図2】
図2は、
図1のテープディスペンサの上面図を概略的に示す。
【
図3】
図3は、
図1のテープディスペンサの、
図2に示すような線A‐Aに沿った断面図を概略的に示す。
【
図4】
図4は、
図1のテープディスペンサの正面図を概略的に示す。
【
図6】
図6は、
図1のテープディスペンサの反対側の側面図を概略的に示す。
【
図7】
図7は、
図1のテープディスペンサの、
図6に示すような線B‐Bに沿った断面図を概略的に示す。
【
図8】
図8は、本発明の実施例に係るマスキングテープロールの斜視図を概略的に示す。
【
図9A】
図9Aは、
図1のテープディスペンサの動作方法における工程を概略的に示す。
【
図9B】
図9Bは、
図1のテープディスペンサの動作方法における工程を概略的に示す。
【
図9C】
図9Cは、
図1のテープディスペンサの動作方法における工程を概略的に示す。
【
図16】
図16は、
図1のテープディスペンサの動作方法における更なる工程を概略的に示す。
【
図17】
図17は、
図1のテープディスペンサの動作方法における更なる工程を概略的に示す。
【
図19】
図19は、本発明の更なる実施例に係るテープディスペンサキットの上面図を概略的に示す。
【
図23】
図23は、本発明の更に他の実施例に係るテープディスペンサキットの断面図を概略的に示す。
【
図26A】
図26Aは、本発明の他の実施例に係るテープディスペンサの斜視図を概略的に示す。
【
図26B】
図26Bは、本発明の他の実施例に係るテープディスペンサの斜視図を概略的に示す。
【
図28A】
図28Aは、テープディスペンサの長手方向の軸線に対して平行な面に沿った、
図26Aのテープディスペンサの断面図を概略的に示す。
【
図28B】
図28Bは、テープディスペンサの長手方向の軸線に対して平行な面に沿った、
図26Aのテープディスペンサの断面図を概略的に示す。
【
図28C】
図28Cは、テープディスペンサの長手方向の軸線に対して平行な面に沿った、
図26Aのテープディスペンサの断面図を概略的に示す。
【
図28D】
図28Dは、テープディスペンサの長手方向の軸線に対して平行な面に沿った、
図26Aのテープディスペンサの断面図を概略的に示す。
【
図29A】
図29Aは、テープディスペンサの長手方向の軸線に対して垂直な面に沿った、
図26Aのテープディスペンサの断面図を概略的に示す。
【
図29B】
図29Bは、テープディスペンサの長手方向の軸線に対して垂直な面に沿った、
図26Aのテープディスペンサの断面図を概略的に示す。
【
図30】
図30は、本発明の更に他の実施例に係るテープディスペンサキットの分解図を概略的に示す。
【
図36】
図36は、テープディスペンサの側壁SW1側に使用されうる、アタッチメントAT1’,AT2’を示す代替の実施例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1~
図7は、本発明の実施例に係るテープディスペンサTDを概略的に示す。
図1は側面図を示し、
図2は上面図を示し、
図3は、
図2に示すような線A‐Aに沿った断面図を示し、
図4は正面図を示し、
図5Aは斜視図を示し、
図5Bは分解図を示し、
図6は反対側の側面図を示し、そして、
図7は
図6に示すような線B‐Bに沿った断面図を示す。
【0031】
本発明に係るテープディスペンサTDは、対象物、例えば窓への塗装又はシーリングの際にマスキングテープを貼るのに特に適している。対応する、マスキングテープを貼るようにテープディスペンサを動作させる方法は、
図9A~
図18Cを参照して、後からより詳細に説明される。
【0032】
テープディスペンサTDは、マスキングテープロールTRを収容するための、壁1と側壁SW1,SW2とによって区切られた空間Sを含む、筐体Hを備える。テープディスペンサTDと組み合わせて使用するのに適したロールTRの例は、
図8に示され、後からより詳細に説明される。ここでは、ロールTRが、幅W1を有し且つ所定の長さのマスキングテープを担持していることのみが分かればよい。
【0033】
空間Sの中心には、部材3が、ロールTRの芯Cと係合するように設けられる。部材3は、ロールTRの芯Cを部材3回りに回転させるように構成される。この例では、部材3は固定されており、空間Sの中心における仮想回転軸を画定する。代替の実施例では、部材3は、回転軸回りに回転するように回転可能に配置されて、ロールTRの芯Cに伴って回転するように構成される。
【0034】
本実施例では、部材3は、3本のねじSCを用いて側壁SW2に装着されるが、他の任意の装着設備も想定される。
【0035】
筐体Hは開口部7を備え、マスキングテープが、ロールTRから開口部7を通り、テープディスペンサTDの底の圧力面PSに向かって、筐体の周囲に延在できるようにする。
【0036】
使用時には、圧力面PSにおいて、マスキングテープの接着層又は粘着面のいずれもが、テープディスペンサTDの方を向かないようになっている。こうして、マスキングテープ部分が圧力面PSと対象物との間にある状態で、対象物に圧力をかけるように圧力面を使用できることで、マスキングテープ部分を対象物に貼ることができる。
【0037】
圧力面PSは、圧力面PSの入口側ENSから出口側EXSへと延在する長さLを有する。また、圧力面PSは、圧力面PSの、長手方向に対して垂直な方向の寸法である、幅W2も有する。
【0038】
筐体H及び圧力面PSは、マスキングテープロールTRから、圧力面PSの入口側ENSを介して、圧力面PSの長手方向に圧力面PSに沿って、圧力面PSの出口側EXSに向かってマスキングテープを誘導するように構成される。
【0039】
圧力面PSと対象物OBとの間にマスキングテープ部分がある状態で、圧力面PSによって対象物に圧力を加えると、テープディスペンサTDの、出口側EXSから入口側への方向の移動によって、マスキングテープがロールTRから自動的に巻き外されて、マスキングテープが対象物に貼られるようにして、マスキングテープ部分が対象物に付着する。
【0040】
テープディスペンサTDは、圧力面PSの入口側ENSの上流でマスキングテープを切断するために、第1のカッターC1を更に備え、すなわち、第1のカッターC1は、使用時にマスキングテープロールTRと圧力面PSの入口側ENSとの間に延在するマスキングテープ部分と、係合するように配置される。
【0041】
また、テープディスペンサTDは、圧力面PSの出口側EXSの下流でマスキングテープを切断するために、第2のカッターC2も備え、すなわち、第2のカッターC2は、使用時に圧力面PSを越えて延在するマスキングテープ部分と、係合するように配置される。
【0042】
第1及び第2のカッターC1,C2の利点は、テープディスペンサTDの両側でマスキングテープを所望の長さに切断できることで、このテープディスペンサによって、特に角において、マスキングテープをより容易に対象物に貼ることができるようになり、使用者がマスキングテープを貼り始めるのに、対象物のいずれの角からも開始できるようにするのに適したテープディスペンサにできるという点である。
【0043】
本実施例では、第1及び第2のカッターC1,C2は、溝Gによって誘導されてカッターC1,C2の長手方向に移動する、切断刃によって具現化される。第1及び第2のカッターC1,C2は、それぞれ、
図3に示すような、第1及び第2のカッターC1,C2が筐体Hを越えて延在しない安静位置を有するため、マスキングテープは、第1及び第2のカッターC1,C2と係合することなく、第1及び第2のカッターC1,C2を通過することが可能である。
【0044】
テープディスペンサTDは、第1のカッターC1及び第2のカッターC2を選択的に動作させる作動システムを備え、これは、第1のカッターC1が切断動作を行うか、又は第2のカッターC2が切断動作を行うかのいずれかを意味する。対象物に様々な異なる長さのマスキングテープを貼ることを許容してしまうことから、第1及び第2のカッターが同時に切断動作を行えないことが好ましい。
【0045】
作動システムは、ギア13と連動する歯11が設けられた、スライダ9を備える。歯11を含むスライダ9及びギア13は、ラックアンドピニオンと同様に機能する。第1及び第2のカッターC1,C2は、スライダ9に接続される。
図3に示すようなギア13の時計回りの回転によって、第1のカッターC1が、安静位置から、第1のカッターC1がマスキングテープと係合するように筐体Hを越えて延在する切断位置まで、移動する。
図3に示すようなギア13の反時計回りの回転によって、第2のカッターC2が、安静位置から、第2のカッターC2がマスキングテープと係合するように筐体Hを越えて延在する切断位置まで、移動する。第1のカッターC1及び第2のカッターC2の両方がスライダ9に接続されて同時に移動するという事実から、第2のカッターC2が切断位置に移動すると、第1のカッターC1は格納位置へと移動し、同様に、第1のカッターC1が切断位置に移動すると、第2のカッターC2は格納位置へと移動する。
【0046】
ギア13は、動作部材15によって回転し、動作部材15は、ギア要素17と、ばね要素19と、摺動要素21とを備える。ギア要素17は、空間Sを囲む円形状の空間23に受け入れられる。本実施例では、空間23は、空間S及び壁1と同心であることから、空間23によって、部材3が画定する回転軸と中心が一致した状態で、ギア要素17の円形状に移動する経路を画定できるようになっている。ギア要素17は、ギア13と連動する歯14を備える。
【0047】
ギア要素17は、ばね要素19に接続され、ひいては摺動要素21に接続される。摺動要素21は、テープディスペンサTDを保持しながら、使用者の手によって、例えば手の手の平を用いて操作できる。筐体Hは、筐体Hの長手方向に、動作部材15、ひいては摺動要素の移動も誘導するように構成される。本実施例では、作動システムの構造は、摺動要素の、圧力面の入口側ENSに向かう方向、すなわち
図3において左への移動によって、第1のカッターC1の切断動作が生じ、摺動要素の、圧力面PSの出口側EXSに向かう方向、すなわち
図3において右への移動によって、第2のカッターC2の切断動作が生じるようになっており、切断動作とは、対応するカッターが切断位置に移動することを意味する。
【0048】
ばね要素19は、空間24内に移動可能に配置される。ばね要素19、ひいては動作部材15を、第1及び第2のカッターC1,C2の安静位置に対応する位置へと付勢するばね25が、空間24内部において、ばね要素19の両側に配置される。摺動要素21の左右への摺動は、ばね25によってばね要素19に働く力に打ち勝つ力を摺動要素に加えることで、実行できる。続いて、摺動要素21の解放によって、動作部材15が安静位置へと自動的に移動する。
【0049】
テープディスペンサTDは、第1のカッターC1の上流の位置における筐体部分にマスキングテープを挟持するための、第1の挟持機構を更に備える。本実施例では、第1の挟持機構は、筐体Hに配置されて挟持部材CM1と連動する、永久磁石PM1を備える。挟持部材CM1は、磁性材料製か、又はそれを備え、磁石PM1が挟持部材CM1に対して挟持力を働かせることが可能なようになっている。
【0050】
本実施例におけるテープディスペンサTDは、第2のカッターC2の下流の位置における筐体部分にマスキングテープを挟持するための、第2の挟持機構も備える。本実施例では、第2の挟持機構は、筐体Hに配置されて挟持部材CM2と連動する、永久磁石PM2を備える。挟持部材CM2は、磁性材料製か、又はそれを備え、磁石PM2が挟持部材CM2に対して挟持力を働かせることが可能なようになっている。
【0051】
この特定の実施例において、各挟持機構は、関連付けられた凹部REを筐体Hに有する。これにより、挟持機構を開放すること、ロールTRからマスキングテープの一部を引き出すこと、マスキングテープを保持するように凹部RE内に指を挿入すること、及び凹部RE内の指と干渉することなく挟持機構を閉鎖することができる。この結果、マスキングテープ部分を、圧力面PS上に確実に位置付けることが可能になる。
【0052】
第1及び第2の挟持機構によって、第1のカッターC1又は第2のカッターC2での切断動作を行う間、好適にはマスキングテープが張り詰めた状態で、マスキングテープを確実に固定しておくことができる。
【0053】
本実施例では、筐体に、第3の永久磁石PM3と第4の永久磁石PM4とが設けられる。第3の永久磁石PM3は、第1の挟持部材が開放位置に移動している場合に、第1の挟持部材CM1に対して保持力を働かせるように設けられる。第4の永久磁石PM4は、第2の挟持部材が開放位置に移動している場合に、第2の挟持部材CM2に対して保持力を働かせるように設けられる。このように、第3及び第4の永久磁石PM3,PM4は、第1及び第2の挟持部材を、
図5Bに明示するようなそれぞれの開放位置に維持することで、手/手の指を他の動作に利用できる状態にさせておくのに有利である。
【0054】
図2から最もよく分かるように、筐体H、ひいてはテープディスペンサTDは、テープディスペンサTDの中心面CPを中心とした実質的に対称的な設計を有し、筐体Hは、マスキングテープロールが、幅W2に実質的に等しいウィズW1を有する筐体H内部に収容された際に、マスキングテープロールの中心面が、テープディスペンサTDの中心面と実質的に一致するように構成される。この結果、マスキングテープとテープディスペンサの側面との間の横向きの距離が、両側において互いに実質的に等しくなり、側壁SW1,SW2の厚さによって定義される。このように、対象物の側壁とテープディスペンサTDの側壁SW1,SW2それぞれとが係合した際、マスキングテープが、対象物の側壁から同じ距離をもって貼られることから、側壁SW1又はSW2のどちらが対象物の対応する側壁に面しても差が生じない。
【0055】
マスキングテープを所望の長さに切断するために、テープディスペンサTDには、テープディスペンサの入口側ENSに配置される、この場合2つの第1のスペーサFSである第1のスペーサと、テープディスペンサの出口側EXSに配置される、この場合2つの第2のスペーサSSである第2のスペーサとが設けられる。
【0056】
第1のスペーサFSによって、第1のスペーサFSの自由端と圧力面PSの入口側ENSとの間の第1の距離D1が定義され、第2のスペーサSSによって、第2のスペーサSSの自由端と圧力面PSの出口側EXSとの間の第2の距離D2が定義される。好適には、第1の距離D1は第2の距離D2に等しい。第1の距離D1及び第2の距離D2は、圧力面PSの長手方向に平行な方向で測定される。
【0057】
使用時に圧力面PSの入口側ENSと第1のカッターC1との間に延在するマスキングテープの長さにはL1が付され、使用時に圧力面PSの出口側EXSと第2のカッターC2との間に延在するマスキングテープの長さにはL2が付される。筐体の幅にはWが付され、筐体内部に収容できるマスキングテープロールの最大幅にはW2が付される。
【0058】
一実施例では、L1=D1-0.5(W-W2)であり、L2=D2-0.5(W-W2)である。言い換えれば、長さL1は、第1の距離D1から、筐体の幅Wと、筐体内部に収容できるマスキングテープの最大幅W2との差の半分を減算したものに等しく、長さL2は、第2の距離D2から、筐体の幅Wと、筐体H内部に収容できるマスキングテープの最大幅W2との差の半分を減算したものに等しい。
【0059】
L1=D1-0.5(W-W2)であり、L2=D2-0.5(W-W2)である一実施例の利点は、マスキングテープを角に貼る際に、マスキングテープの長手方向の側面から隣接する壁への距離と、マスキングテープの自由端と隣接する壁との距離とが、全て同じであるという点である。更なる利点は、テープを同じ角に貼る場合、その角に既に貼られたテープに対して垂直に貼る際に、貼るテープの自由端を、既に貼られたテープの長手方向の側面の1つに位置付けることができ、貼るテープの長手方向の側面の1つを、既に貼られたテープの自由端に位置付けることができるため、手で実現するのが極めて困難な、角に対する完全な重ね合わせが実現されるという点である。
【0060】
図5A及び
図5Bから最もよく分かるように、筐体Hの側壁SW1は、接続要素6によって筐体Hに取り外し可能に装着される部品SW1aを備える。接続要素6は、例えば、バヨネット・マウントによって部品SW1aを部材3に接続してもよく、接続要素は、逆回転によって装着が解放される状態でありながら、接続要素6が十分に回転すると部材3のショルダそれぞれの裏に係止するカム5aを含む、軸5を備える。軸5は
図3にも見られる。
【0061】
側壁部品SW1aを取り外すことで、空間Sへのアクセスが得られ、テープロールTRを挿入したり、例えば、空のテープロールTRの芯Cを取り外したりすることができるようになる。テープロールTRの芯Cにあとどのくらいテープが残っているかを確認するために、側壁SW2に覗き窓VWが設けられる。
【0062】
確実な手法で、本発明に係るテープディスペンサTDを用いてマスキングテープを貼ることが可能となるように、テープロールTRの幅W1は、空間Sにおける側壁SW1とSW2との間の距離DIに近いか又は実質的に等しく、本実施例の圧力面PSの幅W2に等しくてもよい。好適には、ΔTolが耐性因子である以下の式、DI=W1+ΔTol、が適用される。ΔTolは、好適には0.1mmと0.5mmとの間の範囲、より好適には0.1mmと0.3mmとの間の範囲、最も好適には0.1mmである。上記では、側壁SW1とSW2との間の距離DIは、側壁部品SW1aと側壁SW2との間の距離DIaに等しいものと見なされている。しかしながら、距離DIaは、距離DIと等しくないとも想定される。好適には、側壁部品SW1aの厚さは、側壁SW1の厚さに等しい。
【0063】
DI=W1+ΔTol又はDIa=W1+ΔTolの式が適用される場合の利点は、テープロールが空間S内に挿入され、空間Sが側壁部品SW1aで閉鎖される場合に、空間S内にテープロールを挿入する際の、テープロールのいかなる横向きへのずれ、例えば、マスキングテープ部分間のグルーの粘着性による、マスキングテープ部分間の幅方向のずれの発生が、実質的に軽減され、好適には最小限になりうるという点である。
【0064】
図8は、
図1~
図7に係るテープディスペンサTDに適したマスキングテープロールTRを概略的に示す。マスキングテープロールTRは、芯Cと、芯Cに巻かれる長さのマスキングテープと、芯Cに巻かれたマスキングテープを少なくとも部分的に覆う、マスキングテープロールTRの側面ごとの誘導シートGS1,GS2とを備える。
【0065】
誘導シートGS1,GS2は、例えば、誘導シートGS1,GS2を芯Cに接続することによって、且つ/又は誘導シートGS1,GS2をマスキングテープロールTRの側面それぞれ、すなわちマスキングテープ自体の側面に接続することによって、マスキングテープロールTRに伴って回転するように配置される。例えば、誘導シートGS1,GS2は、例えば、マスキングテープを貼る際に、対象物の表面にマスキングテープを接着させるのに用いられる、マスキングテープの接着層又は粘着面と同じ接着剤を使用して、マスキングテープの側面に接着されてもよい。
【0066】
誘導シートGS1,GS2は、更に、マスキングテープの方を向いていない誘導シートGS1,GS2の面が、テープディスペンサの筐体の摺動壁に対して摺動するように構成されるように、構成される。誘導シートGS1,GS2の、マスキングテープの方を向いていない面における静摩擦の係数は、0.6未満、好適には0.3未満、より好適には0.2未満、最も好適には0.1未満であってもよい。
【0067】
誘導シートGS1,GS2の厚さは、好適には可能な限り薄く、マスキングテープが可能な限り幅広になるようになっている。誘導シートGS1,GS2の厚さは、例えば、0.35mm未満、好適には0.25mm未満、より好適には0.15mm未満、更により好適には0.1mm未満、最も好適には0.05mm未満であってもよい。
【0068】
一実施例では、誘導シートは、紙製か、又はそれを備える。
【0069】
一実施例では、誘導シートは、ポリエチレン・テレフタレート(PET)若しくはポリエチレン(PE)製か、又はそれを備える。また、誘導シートGS1,GS2は、マスキングテープの方を向いていない面に、低摩擦コーティングが施されたベースシートも備えてもよい。低摩擦コーティングは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))を備えてもよい。
【0070】
マスキングテープロールTRは芯Cを含むと説明したが、ロールは、芯Cを設けず、ロールとして巻かれる長さのマスキングテープと、マスキングテープロールの側面ごとの誘導シートとのみを備えることも可能である。
【0071】
ここで、
図8に示すように、幅W1は、誘導シートGS1及びGS2を含むテープロールの幅を指すことが明白に示される。幅W1が本明細書の他の箇所で使われる場合は、幅W1が、テープロールが誘導シートを含まずに使われる際に、誘導シートGS1,GS2を含まないテープロールの幅を指すこともある。また、幅W1は局所的に定められ、これは、例えば、マスキングテープ部分が、例えばグルーの粘着性によって、隣接するマスキングテープ部分に対して横向きにずれた場合、幅W1は、横向きの移動を含む合計幅ではないが、依然、誘導面GS1,GS2がある場合はそれを含んだ、局所的なマスキングテープ部分の幅であることを意味する。
【0072】
図9A~
図18Cは、
図1~
図7に関連して説明されたテープディスペンサTDを動作させる方法を説明する。
図9Aに示すような状況の前に、マスキングテープロールTRが筐体H内、特に空間S内へと導入されており、ロールTRの芯Cが部材3と係合して、ロールTRを、対応する回転軸回りに回転させるようになっている。マスキングテープロールTRの空間S内への導入は、
図5Bを参照し、以下の工程の1つ以上を含んでもよい。
a) 接続要素6を部材3から外す。
b) 側壁部品SW1aを取り外す。
c) 事前に設置されたマスキングテープロールの残り、例えば芯及び/又は誘導シートがあれば、全て取り外す。
d) 部材3の周囲に芯Cを配置した状態で、ロールTRを空間S内へと導入する。
e) 側壁部品SW1aを空間Sに亘って位置付けて、空間Sを閉鎖する。
f) 接続要素6を部材3に接続する。
【0073】
一実施例では、ロールTRを空間S内へと導入する、方法の工程d)の前に、第1の長さのマスキングテープがマスキングテープロールTRから巻き外されており、この第1の長さのマスキングテープが、ロールTRを空間S内へと導入した後に、開口部7を通って延在して、空間Sを閉鎖した後にマスキングテープをロールから更に巻き外すのに、第1の長さのマスキングテープを使用できるように、方法の工程d)が実行される。或いは、開口部7は、巻き外しのために、空間S内部のマスキングテープに到達可能となるのに十分な大きさであってもよい。一実施例では、第1の長さのマスキングテープは、それ自体に対して折り畳められ、第1の長さのマスキングテープを、接着層に触れずに取り扱ったり操作したりできるようになっている。更なる利点は、第1の長さのテープをそれ自体に対して折り畳むことによって、第1の長さのテープの剛性が、長手方向又は短手方向のいずれかに増加するという点である。また、第1の長さのマスキングテープは、第1の長さのマスキングテープが第2のカッターC2を越えて延在するまで、好適には永久磁石PM2を越えて延在するまで、マスキングテープをロールから巻き外すのに、有利に用いることもできる。
【0074】
このため、
図8を参照して説明される、誘導シートGS1,GS2を含むマスキングテープロールTRは、側壁部品SW1a及び側壁SW2の内面に対するマスキングテープの粘着の全てを回避するように、空間S内へと導入されることが好ましい。
【0075】
また、
図9Aに示すような状況の前に、挟持部材CM1及びCM2の両方が、
図9Aに示すように、開放位置へと設定されている。永久磁石PM3,PM4は、それぞれ、挟持部材CM1,CM2を開放位置に維持する。続いて、マスキングテープは、マスキングテープロールから開口部7を通り、圧力面PSの入口側ENSを介して、圧力面PSに沿って圧力面PSの出口側に向かって、第2のカッターC2を越えて、この場合、第2の挟持部材CM2における凹部RE内へと延在するように、ロールTRから巻き外されている。
【0076】
図9B及び
図9Cに示すように、マスキングテープは、安静位置にあることでマスキングテープとまだ係合していない第1のカッターC1及び第2のカッターC2の位置においても、圧力面PS及び筐体Hの周りに固く巻き付けることができる。マスキングテープがロールTRから巻き外される際に、マスキングテープの接着層又は粘着面が筐体H及び圧力面PSの方を向かないように、テープロールTRを空間S内に導入することが重要となりうる。
【0077】
図9B及び
図9Cも、マスキングテープがロールから巻き外され、永久磁石PM1及びPM2に隣接して延在することで、
図10A~
図10Cに示すように、挟持部材CM1及びCM2を閉鎖して、マスキングテープを、挟持部材CM1,CM2それぞれと永久磁石PM1,PM2それぞれとの間で挟持できるようになる様子を示す。好適には、挟持部材CM1,CM2及び筐体Hの凹部REによって、挟持部材CM1,CM2を閉鎖したまま、使用者の指でマスキングテープを保持したり操作したりできるようにすることで、圧力面PSの周囲並びに第1及び第2のカッターC1,C2の領域内で、マスキングテープを張り詰めさせ易くなるようになっている。
【0078】
図11Aは、互いに対して直角に配置されて、左角LC及び右角RCを画成する、4つの面S1~S4を有する、対象物OBを示す。以下の説明は、マスキングテープを、対象物OBの第3の面S3に貼ることに関する。
図11A~
図11Cは、上記の準備工程を全て終えた後の、当該方法の第1の工程に関する。
【0079】
この第1の工程では、第2のスペーサSSを本実施例の右角RCに向けて近付けながら、テープディスペンサTDの圧力面PSに存在するマスキングテープを、対象物OBの第3の面S3に対して押し付ける。テープディスペンサTDは、好適には、テープディスペンサTDの側壁SW2が、対象物OBの第1の面S1と係合するように位置付けられる。
【0080】
第2のスペーサSSを左角LCに向けて近付けて、テープディスペンサTDの側壁SW1が、対象物OBの第1の面S1と係合するように、テープディスペンサを位置付けることで、左角LCから、又はその近くから開始することも可能である。
【0081】
図12A~
図12Cは、マスキングテープを第3の面S3に押し付けた状態で、テープディスペンサを、右角RCに向かって、すなわち、圧力面の入口側ENSから出口側EXSへの方向に、第2のスペーサSSが第2の面S2に接触するまで移動させる、当該方法の第2の工程を示す。この移動及び、第1の挟持部材CM1と永久磁石PM1とによる挟持動作の結果、
図12Cに明示するように、圧力面の入口側ENSと第1のカッターC1との間において、マスキングテープと筐体との間に、間隙CLが形成されてもよい。同時に、例えば
図11Bの状況を
図12Bの状況と比べると、永久磁石PM2を越えて延在するマスキングテープ部分の長さが短くなる。
図11Bにおける、凹部RE内へと延在するマスキングテープの長さが、
図12Bにおける、凹部RE内へと延在するマスキングテープの長さよりも長い。
【0082】
図13A~
図13Dは、
図13Dに明示するように、摺動要素21がストップST1に当接するまで、動作部材15を右角RCに向かう方向に移動させることで、
図13Bに示すように、第2のカッターC2をその切断位置に移動させ、同時に、
図13Cに示すように、第1のカッターC1をその格納位置に移動させる、当該方法の第3の工程を示す。第2のカッターC2を切断位置まで移動させることで、第2のカッターC2によって、圧力面PSの出口側EXSの下流でマスキングテープが切断される。
【0083】
図14A~
図14Cは、マスキングテープを第3の面S3に押し付けた状態で、テープディスペンサを、左角LCに向かって、すなわち、圧力面の出口側EXSから入口側ENSへの方向に、第1のスペーサFSが第4の面S4に接触するまで移動させる、当該方法の第4の工程を示す。この結果、マスキングテープは、第3の面S3の全長に亘って貼られ、右及び左の角RC,LCを想定する。なお、
図14Cから明確に分かるように、挟持部材CM2及び永久磁石PM2は、第3の工程で説明した切断動作の後も、マスキングテープの一部を保持する。
【0084】
図15A~
図15Dは、
図15Dに明示するように、摺動要素21がストップST2に当接するまで、動作部材15を左角LCに向かう方向に移動させることで、
図15Bに示すように、第1のカッターC1をその切断位置に移動させ、同時に、
図15Cに示すように、第2のカッターC2をその格納位置に移動させる、当該方法の第5の工程を示す。
【0085】
当該方法の第5の工程の後、
図16に示すように、テープディスペンサTDは、第3の面S3上に貼られたマスキングテープ部分AMTを残して、対象物から離すことができる。圧力面PSは、マスキングテープ部分AMTの中心部分を面S3に押し付けるのに使用されているが、両端部は、圧力面PSによって面S3に対して押し付けることはできないことから、面S3に対して完全に又は十分に接着されないことがある。これを解決するために、これらの端部を面S3に押し付けるように、手動の工程が追加されてもよく、
図17に示すような状況となる。
【0086】
図18A~
図18Cは、
図17に示すのと同じ状況に関するが、ここでは、貼られたマスキングテープ部分AMTを上方から示す。
図18Aは、対象物全体の概観を示し、
図18B及び
図18Cは、それぞれ、左角LC及び右角RCの詳細図を示す。マスキングテープ部分AMTと面S1との間の距離にはXが付され、この場合、テープディスペンサの対応する側壁の厚さによって定められる。
【0087】
本実施例では、テープディスペンサは、L1=D1-0.5(W-W2)且つL2=D2-0.5(W-W2)である
図3を参照して具現化されることから、同じ距離Xが、貼られたマスキングテープ部分AMTの自由端と第2の面S2との間及び貼られたマスキングテープ部分AMTの自由端と第4の面S4との間にも存在する。
【0088】
残りのマスキングテープ部分は、上記と同様の手法で対象物に貼ることができる。例えば、マスキングテープ部分は、左角LCから始まり、貼られたマスキングテープAMTに対して垂直な方向に延在して、第3の面S3に貼られてもよい。或いは、又は更に、マスキングテープ部分は、右角RCから始まり、貼られたマスキングテープAMTに対して垂直な方向に延在して、第3の面S3に貼られてもよい。使用されるテープディスペンサの寸法によって、角LC及びRCにおいて同じ距離Xが得られ、角においてマスキングテープが完全に重なり合うようになる。
【0089】
図19~
図22は、本発明の更なる実施例に係るテープディスペンサキットを概略的に示す。
図19は上面図を示し、
図20は斜視図を示し、
図21は正面図を示し、
図22Aはテープディスペンサキットの側面図を示し、
図22Bはテープディスペンサキットの断面図を示す。
【0090】
テープディスペンサキットは、本実施例において
図1~
図18Cに示すテープディスペンサと同様に具現化されたテープディスペンサTDと、2つのアタッチメントAT1,AT2とを備える。
図19~
図22に示すアタッチメントAT1,AT2は、テープディスペンサTDから取り外されており、離れている。これは、アタッチメントAT1,AT2が、任意に、テープディスペンサと組み合わせて使用できることを示すためのものである。アタッチメントAT1,AT2を使用するには、
図1も参照し、整列ピンAPそれぞれを、テープディスペンサTDの整列孔AHそれぞれと整列させて、続いて、アタッチメントAT1,AT2のスナップ・トゥギャザー(snap-together)接続装置STCと、側壁SW1,SW2のスナップ・イン(snap-in)孔SINとを使用して、アタッチメントを側壁SW1,SW2にそれぞれ接続する。
【0091】
図7から最もよく分かるように、整列孔AHの底が相互接続して、ギア13の回転軸AXを形成する。
【0092】
スナップ嵌合の代わりに、挟持接続といった他の一時的な接続も、アタッチメントAT1,AT2をテープディスペンサTDに一時的に接続するのに想定されてもよい。
【0093】
アタッチメントAT1,AT2の一機能は、側壁SW1,SW2に対して単純に材料を追加することによって、貼られたマスキングテープAMTと面S1との間の距離を、他の、すなわちより高い値に設定することであってもよい。キットは、例えば、貼られたマスキングテープAMTと面S1との間の距離をそれぞれ特定の値に設定する、アタッチメントAT1,AT2の様々な組み合わせを備えてもよい。
【0094】
また、
図22Bに示すように、アタッチメントAT1,AT2の機能は、第1のスペーサFS及び/又は第2のスペーサSSの空間形成機能を引き継ぐことであってもよく、アタッチメントAT1の一部が、距離Qだけ第1のスペーサを越えて延在することで、貼られたマスキングテープAMTの自由端と面S2及びS4との距離が、他の値、すなわちX+Qに設定され、好適には、アタッチメントの厚さもQに設定されている場合に、貼られたマスキングテープAMTと面S1との距離と同じ値に設定されてもよい。
【0095】
図23及び
図24A~
図24Cは、本発明の更に他の実施例に係るテープディスペンサキットを概略的に示す。全ての図面が、
図3の断面図と同様の断面図であり、
図23では、テープディスペンサTDは、
図1~
図18Cに示すものと同様に具現化されるテープディスペンサと、1つのアタッチメントAT3とを示す。
図23に示すアタッチメントAT3は、テープディスペンサTDから取り外されており、離れている。これは、アタッチメントAT3が、任意に、テープディスペンサと組み合わせて使用できることを示すためのものである。アタッチメントAT3を使用するには、アタッチメントAT3のスナップ・オン(snap-on)接続装置SONと、筐体Hの、入口側ENSと第1のカッターC1との間及び出口側EXSと第2のカッターC2との間に配置される、対応する溝GR1,GR2とを使用して、アタッチメントを圧力面に接続する。
【0096】
そして、アタッチメントAT3は、圧力面PSの代わりに機能して、入口側ENS’と出口側EXS’とを含む、それ自体の圧力面PS’を画成する。
図24A、
図24B及び
図24Cでは、テープディスペンサTDに取り付けた状態のアタッチメントAT3を示す。この状況は、
図10A~
図10Cに示す状況と同様である。アタッチメントAT3を使用する利点は、マスキングテープの長さY1+Y2>L1であり、マスキングテープの長さY3+Y4>L2であるという点である。
【0097】
第1のカッターと第2のカッターとの間に余分な長さのマスキングテープを含むアタッチメントAT3の利点は、上記と同様にマスキングテープが対象物OBの第3の面に貼られる際に、貼られるマスキングテープは、その自由端から第1の面S1への距離Xをもたず、
図25A及び
図25Bに示すように、長さOLだけ、第1の面上へと延在する。
【0098】
図26A~
図29Bは、本発明の他の実施例に係るテープディスペンサTDを概略的に示す。本実施例に係るテープディスペンサTDは、
図1~
図7に示す実施例と多くの共通点を有する。このため、以下の説明では、2つの実施例の違いに重点を置く。共通点の参照についての詳細な説明は、以下に記載される情報が補足された、
図1~
図7の実施例に対応する説明とする。
【0099】
図26Aは、テープディスペンサTDの一方側の斜視図を示し、
図26Bは、テープディスペンサTDの他方側の斜視図を示す。
図27は、
図26Aの状況の分解斜視図を示す。
図28Aは、テープディスペンサTDの長手方向に対して平行な面に沿ったテープディスペンサTDの断面図を示し、
図28B~
図28Dはその詳細を示す。
図29Aは、テープディスペンサの長手方向に対して垂直な面に沿ったテープディスペンサTDの断面図を示し、
図29Bはその詳細を示す。
【0100】
テープディスペンサTDは、マスキングテープロールTRを収容するように、壁1と、外壁OWと、側壁SW1の側壁部品SW1aと、側壁SW2とによって区切られた空間Sを含む筐体Hを備える。
【0101】
筐体Hは開口部7を備え、マスキングテープが、ロールTRから開口部7を通り、テープディスペンサTDの底の圧力面PSに向かって、筐体の周囲に延在できるようにする。
【0102】
圧力面PSは、圧力面PSの入口側ENSから出口側EXSへと延在する長さを有する。また、圧力面PSは、圧力面PSの、長手方向に対して垂直な方向の寸法である、幅も有する。
【0103】
筐体H及び圧力面PSは、マスキングテープロールTRから、圧力面PSの入口側ENSを介して、圧力面PSの長手方向LDに圧力面PSに沿って、圧力面の出口側EXSに向かってマスキングテープを誘導するように構成され、この長手方向は、テープディスペンサ自体の長手方向に対して平行である。
【0104】
テープディスペンサTDは、圧力面PSの入口側ENSの上流でマスキングテープを切断するために、第1のカッターC1と、圧力面PSの出口側EXSの下流でマスキングテープを切断するために、第2のカッターC2とを更に備える。
図28A、
図28B及び
図28Dでは、第1のカッターC1及び第2のカッターC2は安静位置にあり、第1及び第2のカッターC1,C2は、筐体Hを越えて延在しないことから、マスキングテープは、第1及び第2のカッターC1,C2と係合することなく、第1及び第2のカッターC1,C2を通過することが可能である。
【0105】
図1~
図7の実施例と現在説明している実施例との主な違いは、第1のカッターC1及び第2のカッターC2を選択的に動作させるための作動システムの構成及び配置、並びに、テープディスペンサTD内に収容できるマスキングテープロールTRの構成及び大きさである。
【0106】
図1~
図7の実施例と同様に、作動システムはスライダ9を備え、第1及び第2のカッターC1,C2は、スライダ9に接続される。スライダ9を、
図28Aにおける左に、すなわち第1のカッターC1に向かって、又は圧力面の入口側ENSに向かって移動させると、第1のカッターC1が、図示の安静位置から、筐体Hを越えて延在してマスキングテープと係合する切断位置へと移動する。スライダ9を、
図28Aにおける右に、すなわち第2のカッターC2に向かって、又は圧力面の出口側EXSに向かって移動させると、第2のカッターC2が、図示の安静位置から、筐体Hを越えて延在してマスキングテープと係合する切断位置へと移動する。第1及び第2のカッターC1,C2の両方が共通のスライダ9に接続されて同時に移動するという事実から、第2のカッターC2が切断位置に移動すると、第1のカッターC1は格納位置へと移動し、同様に、第1のカッターC1が切断位置に移動すると、第2のカッターC2は格納位置へと移動する。
【0107】
作動システムは、側壁SW1,SW2における対応するスリットSLを介して、テープディスペンサTDの内部でスライダ9に接続できる、摺動要素21を更に備える。
図26A及び
図26Bに示すように、摺動要素21はいずれの側に設けられてもよいが、本実施例の設計では、例えば、
図29A及び
図29Bに示すように、側壁SW1において1つの摺動要素21のみを使用することも可能なようになっている。側壁SW1において1つの摺動要素21のみを使用することの利点は、テープディスペンサTDから提供されるマスキングテープを、対象物に対して整列させるために、側壁SW2を基準面として使用できるという点である。
【0108】
また、作動システムは、
図28A、
図28C、
図29A及び
図29Bから最もよく分かるように、筐体H及びスライダ9の中に配置された空間SP内部に配置されたばね25も備える。ばね25は、第1端25aと第2端25bとを有する。第1及び第2のカッターC1,C2の安静位置において、ばね25の第1端25aは、筐体H及びスライダ9の両方と係合し、同時に、ばね25の第2端25bも、筐体H及びスライダ9の両方と係合する。この、スライダ9及びばね25の位置が、均衡位置となる。スライダ9が
図28A及び
図28Cの右に移動すると、ばね25の第1端25aがスライダ9に伴って移動し、筐体Hから外れることで、長さが縮む。同様に、スライダ9が安静位置から左に移動すると、第2端25bがスライダ9に伴って移動し、筐体Hから外れることで、長さが縮む。長さが縮むことによって、手によって打ち勝てるものではあるが、スライダが解放されるか、又はそれに働く力が軽減された際にスライダ9を均衡位置に付勢する、スライダ9に働くばね力が増加する。この作動システムの利点は、ロールTRと圧力面PSとの間の利用可能な空間の有効活用が可能となって、テープディスペンサの高さが小さく済むようにしたり、
図1~
図7の実施例と比較してより大きな直径のロールTRを使用したりできるようになるという点である。
図1~
図7の実施例の作動システムの利点は、側壁SW1,SW2の両方を基準面として使用できるという点である。
【0109】
また、テープディスペンサTDは、筐体Hに配置される永久磁石PM1と、永久磁石PM1と連動する挟持部材CM1とを含む、第1の挟持機構も備える。同様に、テープディスペンサTDは、筐体Hに配置される永久磁石PM2と、永久磁石PM2と連動する挟持部材CM2とを含む、第2の挟持機構を備える。第1及び第2の挟持機構は、それぞれ、関連付けられた凹部REを筐体Hに更に含み、挟持機構を開放すること、ロールTRからマスキングテープの一部を引き出すこと、マスキングテープを保持するように凹部RE内に指を挿入すること、及び凹部RE内の指と干渉することなく挟持部材を閉鎖することができる。
【0110】
筐体Hには、第3の永久磁石PM3と第4の永久磁石PM4とが更に設けられ、各図面の第1の挟持部材CM1についての図示にあるように、挟持部材が開放位置にある場合に、それぞれ、第1及び第2の挟持部材CM1,CM2に対して保持力を働かせるように設けられる。第1の永久磁石PM1及び第2の永久磁石PM2は、各図面の第2の挟持部材CM2についての図示にあるように、挟持部材が閉鎖位置にある場合に、それぞれ、第1及び第2の挟持部材CM1,CM2に対して挟持力を働かせるように設けられる。
【0111】
テープディスペンサは、テープディスペンサの入口側ENSに配置された2つの第1のスペーサFSと、テープディスペンサTDの出口側EXSに配置された2つの第2のスペーサSSとを備え、スペーサが対象物の表面又は他の基準面に接触した際に、第1のカッターC1又は第2のカッターC2を使用してマスキングテープを所望の長さに切断するように、スペーサの自由端と、入口側ENS及び出口側EXSそれぞれとの間の距離を定義する。
【0112】
図27及び
図29Aから最もよく分かるように、側壁部品SW1aは、接続要素6を用いて、筐体Hに対して取り外し可能に装着される。接続要素6は、例えば、バヨネット・マウントによって、側壁SW2上で部品SW1aを部材3に接続するように構成されてもよく、接続要素は、逆回転によって装着が解放される状態でありながら、接続要素6がその長手方向軸線回りに十分に回転すると部材3のショルダ又はフランジ部分それぞれの裏に係止するカム5aを含む、軸5を備える。
【0113】
側壁部品SW1aを取り外すことで、空間Sへのアクセスが得られ、テープロールTRを挿入したり、例えば、空のテープロールTRの芯Cを取り外したりすることができるようになる。テープロールTRの芯Cにあとどのくらいテープが残っているかを確認するために、側壁SW2に覗き窓VWが設けられる。
【0114】
本実施例では、マスキングテープロールTRは、空間S内に受け入れられる挟持リングCRに設けられる。そして、挟持リングCRは、ロールTRの芯Cと円筒壁1との間に設けられて、挟持リングCR、ひいてはロールTRが、円筒壁1によって画成される回転軸回りに回転できるようになっている。必須ではないが、好適には、挟持リングは、空間Sの内側の幅に実質的に等しい幅を有しており、挟持リングが移動できないように、又は横向きの方向への移動が制限されて僅かとなるようにできることで、ロールTRが挟持リングに挟持された際に、ロールTRが、挟持ロールCR、ひいては空間Sに対する同じ短手方向の位置に保持されるという利点を有する。そして、同様の手法で、各ロールTRを、基準面として作用する側壁SW2に整列させることが可能であり、空間Sの幅よりも小さい幅を有するマスキングテープに対しても信頼性の高いテープディスペンサとなる。
【0115】
本実施例では、部材3は、側壁部品SW1aに対する突き付け部ABも設けており、側壁部品SW1a及び接続要素6を支持し、且つ接続要素が部材3内部へと十分に導入されたことを示すことができるようになることで、接続要素6の回転によって、カム5aが部材3のショルダそれぞれの裏側を係止できるようにする。
【0116】
挟持リングCR及び壁1は、好適には、回転中の摩擦が制限されるように構成される。ロールTRと側壁部分SW1及び側壁SW2との間の摩擦を軽減するのに、芯Cに巻かれたマスキングテープを少なくとも部分的に覆うように、マスキングテープロールTRの側面ごとの誘導シートGS1,GS2を設けてもよい。誘導シートGS1,GS2は、例えば、新たな各ロールTRと共に再利用されてもよいし、又は消費可能で、新たな各ロールTRに伴って交換されてもよい。
【0117】
ロールTRを挟持リングCRに整列させるには、ロールTRを、例えばテーブルの上面といった基準面上に設けて、そして、挟持リングCRが同じ基準面に到達するまで、挟持リングCRを芯C内に押し込んでもよい。ロールTRと挟持リングCRとの組み合わせの基準面側が、側壁SW2に隣接するように導入された場合、ロールTRは、側壁SW2によって提供される基準面に対して整列し、信頼性の高いテープの提供を実現できる。
【0118】
なお、均衡位置における摺動要素21は、ロールTRの挿入又は取り外しを行うのに、側壁部品SW1aの外形に沿った、摺動要素21の上側の湾曲形状によって、側壁部品SW1aに干渉することがない。
【0119】
図30は、本発明の更に他の実施例に係るテープディスペンサキットの一部として、
図26A~
図29Bの実施例に係るテープディスペンサTDを示す。テープディスペンサキットは、テープディスペンサTDと、8個の想定されうるアタッチメントAT1~AT8との分解図として示される。アタッチメントAT1~AT8のそれぞれは、任意に、テープディスペンサTDと組み合わせて使用できる。このように、テープディスペンサキットは、必ずしもアタッチメントAT1~AT8全てを含む必要はない。テープディスペンサTDとアタッチメントAT1~AT8の1つ以上との任意の組み合わせによって、本発明に係るテープディスペンサキットが形成される。
【0120】
アタッチメントAT1又はAT2をテープディスペンサTDに接続するには、アタッチメントAT1,AT2の整列ピンAPを、側壁SW2の整列孔AHと整列させて(
図26B参照)、続いて、接続要素STCを孔SINに挿入する。
【0121】
アタッチメントAT1,AT2の一機能は、側壁SW2に対して材料を追加することによって、側壁SW2によって形成された基準面を、アタッチメントAT1又はAT2によって形成される、空間Sからより離れた基準面に代えることであってもよい。アタッチメントAT1とアタッチメントAT2との違いは、側壁SW2に追加される厚さ、及び/又は第1及び第2のスペーサFS,SSに対して形成される延在であってもよい。
【0122】
アタッチメントAT1,AT2は、アタッチメントが側壁SW2に取り付けられた際に、側壁SW2における覗き窓VWと整列する、対応する覗き窓VW1,VW2を更に備えてもよい。
【0123】
図30の実施例には示されていないが、
図36は、
図30に示すように、テープディスペンサの同じ面に対して、同じ手法で側壁SW2に材料を追加する、テープディスペンサの側壁SW1側に使用されうる、アタッチメントAT1,AT2と同様のアタッチメントAT1’,AT2’を示す代替の実施例を概略的に示す。アタッチメントAT1,AT1’によって、共に使用される一対のアタッチメントを形成することが可能である。アタッチメントAT2,AT2’についても同じことが可能である。
【0124】
図30の実施例には示されていないが、アタッチメントAT1,AT2、ひいてはアタッチメントAT1’,AT2’も、摺動要素21をテープディスペンサTDに対して接続し且つ移動させることができるように、底に凹部RECを備えてもよい。こうした凹部RECは、テープディスペンサの逆側に摺動要素21を接続するためだけに意図的に選択される場合には、必要ない。
【0125】
また、テープディスペンサTD及びテープディスペンサキットは、
図9A~
図22Bに関連して説明されたのと同様に使用されてもよいが、再度この説明が本明細書において過度に繰り返されることはないことに留意されたい。
【0126】
アタッチメントAT3は、
図23~
図24Bに示すものと同様であり、アタッチメントAT3を溝GR1,GR2に接続できるようにするスナップ・オン接続装置SONを含む(
図28A参照)。このアタッチメントAT3の使用は、
図23~
図25Bに記載の実施例と同様である。
【0127】
他の全てのアタッチメントAT4~AT8も、溝GR1,GR2と係合させることでアタッチメントそれぞれをテープディスペンサTDに接続できるようにする、スナップ・オン接続装置SONを含む。また、全てのアタッチメントAT4~AT8が、
図31~
図35Bを参照してその働きが説明される、誘導板GPLも含む。
【0128】
アタッチメントAT4~AT8の使用を説明するには、対象物OBが使用され、この対象物は、例えば窓枠又はドア枠である枠組みを表してもよい。図面に見られるのは、上面S1、内側面S2及びS3、外側面S4,S5、内上縁E1~E4及び外上縁E5~E8である。
【0129】
図31は、アタッチメントAT5を使用した、縁E1~E4に沿った、上面S1上へのマスキングテープの貼付を示す。
図31では、明確さの理由から、テープディスペンサを図示せず、アタッチメントAT5のみを示す。しかしながら、当業者には、マスキングテープを貼るのに、テープディスペンサとアタッチメントAT5とが組み合わされて共に使用されることが理解されよう。貼られたマスキングテープは、参照符号AMTによって示される。
【0130】
アタッチメントAT5の誘導板GPLは、マスキングテープAMTを、角で一部重ね合わせながら、内縁に沿って貼ることができるように構成される。このために、誘導板GPLを、内面、例えば面S2及びS3と係合させて、誘導板GPLが他の内面に当接するまで、一方の角から他方の角へと移動させる。各角では、第1のカッター又は第2のカッターが、マスキングテープを切断するように動作する。
【0131】
図32は、アタッチメントAT4を使用した、外上縁E5~E8に沿った、上面S1上へのマスキングテープAMTの貼付を示す。ここでも、アタッチメントAT4のみを示し、それに接続されたテープディスペンサは示さない。誘導板GPLは、マスキングテープを、角で一部重ね合わせながら、外縁に沿って貼るように構成される。このために、誘導板GPLを、外面、例えば面S4及びS5と係合させて、一方の角から他方の角へと移動させる。マスキングテープを切断する際に、外縁まで到達するのに十分な長さに切断されるように、ストップSTOを使用して角で止めることができる。これによって、
図32に示すように、マスキングテープは、誘導板GPLが、面S4に対して保持されるSTOに当接するまで、外縁E8に沿って貼られる。マスキングテープを切断した際、マスキングテープは、縁E4まで上面を覆う長さを有する。このストップSTOは、マスキングテープを所望の長さに切断するのに、どの角でも使用できる。
【0132】
図32は、縁E5~E8が鋭い縁であることを想定する。しかしながら、縁E5~E8が丸く、マスキングテープAMTを丸い縁に貼るべきか否かを選択しなければならない場合がある。
図33では、アタッチメントAT6を使用した、外上縁E5~E8に沿った、上面S1上へのマスキングテープの貼付を示す。
図32の状況とアタッチメントAT4との違いは、誘導板GPLが、テープディスペンサの圧力面からより離れており、誘導板GPLが外面と係合する際に、対応する縁が自由なままで、マスキングテープが縁を覆うことなく上面S1に貼られるようになっている点である。
図33Aは、
図33の角Aの詳細を示し、マスキングテープが、縁E8を覆うことなく縁E8に沿って貼られている様子を明示する。
【0133】
図35では、アタッチメントAT7を使用した、外上縁E5~E8に沿った、上面S1上へのマスキングテープの貼付を示す。
図32の状況とアタッチメントAT4との違いは、誘導板GPLが、テープディスペンサの圧力面PSの下に突起を備えて、外面と係合するようになっている点である。
図35では、互いに上方に、2つの状況が示されている。下方の対象物に対して、上面にマスキングテープを貼るのに、アタッチメントAT7が使用されている。
図35Bは、テープディスペンサとアタッチメントAT7とを使用したマスキングテープの貼付後の角Bを示す。マスキングテープは、マスキングテープが、上面S1から縁E7の上に延在するように貼られる。マスキングテープの貼付後、縁E7の上に延在するマスキングテープは、
図35Aに示した、
図35の上方の対象物に対して示す状況の角Aのように、上面S1の一部に沿って、縁E7を覆うように縁E7に押し付けられる。
【0134】
図34は、アタッチメントAT8を使用した、内縁E5~E8に沿った、内面、例えば内面S2及びS3上へのマスキングテープの貼付を示し、アタッチメントAT8は、アタッチメントAT3と同様だが、誘導板GPLを含むものである。誘導板GPLは、上面S1と係合するのに使用される。
図34A及び
図34Bは、角A及びBをより詳細に示す。これらの詳細な図から、誘導板GPLが、マスキングテープが角で重なり合うように、幾らか長めにマスキングテープを貼るように構成されることが、明確に分かる。
【0135】
テープディスペンサの特定の実施例に関連して、アタッチメントAT1~AT8を説明したが、原則として、アタッチメントAT1~AT8のいずれも、他の実施例、例えば
図1~
図7に関連して説明された実施例と組み合わせても使用できることを留意されたい。