(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ端シミュレーション器具および同器具を用いてレンズ形状を画定する方法
(51)【国際特許分類】
G02C 13/00 20060101AFI20231005BHJP
G01B 5/18 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02C13/00
G01B5/18
(21)【出願番号】P 2021537717
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2020050412
(87)【国際公開番号】W WO2020144268
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-10-24
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521117377
【氏名又は名称】エム イー アイ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソンゾーニ、ステファノ
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00092364(EP,A1)
【文献】国際公開第2007/077848(WO,A1)
【文献】米国特許第06315642(US,B1)
【文献】米国特許第06473977(US,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0046325(KR,A)
【文献】特開昭53-045791(JP,A)
【文献】特開2001-174252(JP,A)
【文献】特開昭51-089752(JP,A)
【文献】特開平07-186026(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレーム(20)のフレーム溝外形(FGP)に対するレンズ端外形(LEP)の適合性を測定するためのレンズ端シミュレーション器具(10)であって、
前記レンズ端シミュレーション器具(10)は、規定のレンズ加工機(4)で加工されるレンズ(6)のレンズ端外形(LEP)に類似した、規定の端部外形(STP)を有し、
前記規定の端部外形(STP)は、突出方向(A)に向かって突出したベベル部(11)から成り、
前記レンズ端シミュレーション器具(10)は、前記ベベル部(11)の先端部分(14)に設けられたプローブ(15)をさらに備え、
前記プローブ(15)は、前記プローブ(15)が前記規定の端部外形(STP)から突出しない収納位置と、前記プローブ(15)が前記先端部分(14)から突出する延伸位置と、の間の移動可能域(M)を前記突出方向(A)に沿って移動できる
ことを特徴とするレンズ端シミュレーション器具。
【請求項2】
前記規定の端部外形(STP)は、各々が前記突出方向(A)を向き、互いに前記ベベル部(11)の反対側で、離れる方向に延びる二つの外側部(12,13)をさらに備えている
ことを特徴とする、請求項1に記載のレンズ端シミュレーション器具。
【請求項3】
前記プローブ(15)は、フレーム溝周縁(22)を決めるトレーサ(3)のトレーサピン(30)
と同じ形状および/またはサイズを有していて
、および/または、前記プローブ(15)は
、球状または部分的に球状または半球状または丸みを帯びた形状を有する
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のレンズ端シミュレーション器具。
【請求項4】
前記プローブ(15)は前記延伸位置に付勢されている、および/または、前記プローブ(15)は取り外し可能に、前記規定の端部外形(STP)に提供されている
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のレンズ端シミュレーション器具。
【請求項5】
前記ベベル部(11)は、前記突出方向(A)に先細りになっている
ことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のレンズ端シミュレーション器具。
【請求項6】
眼鏡フレーム(20)のフレーム溝(21)に適合するように機械加工されるレンズ(6)のレンズ形状を画定するシステム(1)であって、前記システム(1)は、
眼鏡フレーム(20)を保持するためのホルダ(2)と、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のレンズ端シミュレーション器具(10)であって、前記レンズ端シミュレーション器具(10)の前記ベベル部(11)および前記プローブ(15)を、フレーム溝周縁(22)に沿った少なくとも一つの位置において前記ホルダ(2)に保持された前記眼鏡フレーム(20)のフレーム溝(21)に挿入できるように提供されるレンズ端シミュレーション器具(10)と、を備える
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
前記レンズ端シミュレーション器具(10)は、傾斜可能なように
、支持される
ことを特徴とする、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ホルダ(2)によって保持された前記眼鏡フレーム(20)のフレーム溝(21)の底部(23)における前記フレーム溝周縁(22)を決定するトレーサ(3)をさらに備えていて、
前記フレーム溝周縁(22)は
、前記ホルダ(2)または前記眼鏡フレーム(20)に対する前記トレーサ(3)の相対移動によって決定され
る
ことを特徴とする、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記トレーサ(3)は、カメラを備えている
ことを特徴とする、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記トレーサ(3)は、前記フレーム溝周縁(22)を決定する最中、前記フレーム溝(21)の底部(23)に置かれるように構成されたトレーサピン(30)を備えている
ことを特徴とする、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記プローブ(15)と前記トレーサピン(30)とは、同じ形状および/またはサイズを有る
ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
規定の前記レンズ端外形(LEP)を機械加工するための端加工用外形(40)を有するレンズ加工機(4)をさらに備えて
いる
ことを特徴とする、請求項6乃至請求
項11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
さらに制御部(5)を備えていて、
前記制御部(5)は、前記ホルダ(2)および/または前記レンズ端シミュレーション器具(10
)を制御
し、および/または、
前記制御部(5)はさらに、前記レンズ端シミュレーション器具(10
)に対する前記ホルダ(2)の相対的な移動を制御す
る
ことを特徴とする、請求項6乃至請求
項12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御部(5)は、前記プローブ(15)の収納位置つまり前
記先端部分(14)に対する前記プローブ(15)の延伸位置に基づいて
、前記フレーム溝(21)に挿入された前記レンズ端シミュレーション器具(10)の前記フレーム溝(21)の底部(23)に対する位置ずれ(Z)を表す、レンズ形状補正値のようなデー
タを提供および/または決定するように構成さ
れる
ことを特徴とする、請求
項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御部(5)は、
・
前記フレーム溝周縁(22)、および/または
・
決定された前記位置ずれ(Z)つまりレンズ形状補正値と関連して、機械加工されるレンズ(6)のレンズ端周縁(60)
を表すデータを提供および/または決定するように構成される
ことを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
眼鏡フレーム(20)のフレーム溝(21)に適合するように機械加工されたレンズ(6)のレンズ形状を画定する方法であって、前記方法は、
a)眼鏡フレーム(20)のフレーム溝(21)の底部(23)におけるフレーム溝周縁(22)を決定することと、
b
)請求項1乃至5のいずれか1項に記載の、突出方向(A)に向かって突出したベベル部(11)から成る規定の端部外形(STP)を有するレンズ端シミュレーション器具(10)であって、前記レンズ端シミュレーション器具(10)は、前記ベベル部(11)の先端部分(14)に提供されるプローブ(15)を備え、前記プローブ(15)が前記規定の端部外形(STP)から突出しない収納位置と、前記プローブ(15)が前記先端部分(14)から突出する延伸位置と、の間の移動可能域(M)を前記突出方向(A)に沿って移動する、レンズ端シミュレーション器具(10)を提供することと、
c)前記レンズ端シミュレーション器具(10)のベベル部(11)および前記プローブ(15)を、前記フレーム溝周縁(22)に沿った少なくとも一つの位置において前記フレーム溝(21)に挿入することによって、前記レンズ端シミュレーション器具(10)が前記突出方向(A)で前記眼鏡フレーム(20)の上に置かれると同時に、前記プローブ(15)が前記フレーム溝(21)の底部(23)に置かれるようにすることと、
d)前記プローブ(15)の収納位置または前記ベベル部(11)の先端部分(14)に対する前記プローブ(15)の延伸位置に基づいて、前記フレーム溝(21)に挿入された前記レンズ端シミュレーション器具(10)の前記フレーム溝(21)に対する位置ずれ(Z)を決定することと、
e)決定された前記位置ずれ(Z)と関連して前記フレーム溝周縁(22)に基づいて
、機械加工されるレンズ(6)のレンズ端周縁(60)を決定することと、を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記レンズ端シミュレーション器具(10)と前記フレーム溝(21)は、互いに対して相対的に傾いていて
、決定された位置ずれ(Z)が最小となる場合
の傾き位置において、それ
らとそれらの接触平面(P10,P20)を整列させることができる
ことを特徴とする、請求
項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに、
f)決定された前記レンズ端周縁(60)に基づいてレンズ加工機(4)でレンズを加工して、加工された前記レンズ(6)が前記眼鏡フレーム(20)のフレーム溝(21)に適合するようにすること
を含む
ことを特徴とする、請求
項16また
は17に記載の方法。
【請求項19】
少なくともステップb)~e
)がコンピュータ(5)上で実行さ
れる
ことを特徴とする、請求
項16乃至請求
項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
少なくともステップb)~e)がコンピュータ(5)上で実行され、
前記コンピュータ(5)は、ステップf)を実行するために、前記レンズ端周縁(60)を含む、決定されたデータをレンズ加工機(4)に提供する
ことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡フレームのフレーム溝の外形(profile)に対するレンズ端の外形の適合性を測定するレンズ端シミュレーション器具と、眼鏡フレームのフレーム溝に適合するように加工されるレンズのレンズ形状を前記レンズ端シミュレーション器具を用いて画定するシステムと、眼鏡フレームのフレーム溝に適合するように加工されるレンズのレンズ形状をレンズ端シミュレーション器具を用いて画定する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、眼鏡フレーム(リング)のフレーム溝(しばしば断面がV字型を有するベゼルとしても知られている)のフレーム溝周縁を測定したりトレースしたりして、ベゼルの周方向の輪郭を表す対応データを取得することがよく知られている。フレーム溝周縁やフレーム溝外形さえも測定するステップは、通常、ベゼルに挿入してその周縁部の周りを一周する機械的プローブを有する、いわゆるトレーサを用いて行われる。このようにして得られたフレーム溝周縁のデータは、眼鏡レンズを、すなわちフレーム溝の外形および周縁に基づく規定のレンズ端外形および周縁を加工するレンズ加工機(edger machine)に転送されて、眼鏡フレームの測定されたフレーム溝に適合するレンズ形状になる。トレーサから異なるメーカーのレンズ加工機に転送されるデータは、通常、DCS VCA規格に基づいて転送される。しかし、トレーサで測定されたフレーム溝周縁を補正する必要があるかどうかを判断して、加工されたレンズが規定のレンズ端を有し、きちんと適合するようにできるためには、しばしば眼鏡技師の経験に依存する。
【0003】
(断面視して)レンズ端のベベル部が、眼鏡フレームにおいてトレーサで測定された輪郭に従う位置(通常はメガネのフレーム溝の底部)に完全に収まっていない場合、レンズはフレーム溝に完全には収まらずに、ゆるすぎるかきつすぎる状態でフレーム溝に収まるかフレーム溝に全く収まらないことさえあり、レンズの手直しが必要になるか不良品になりさえもする可能性がある。これは、トレーサが通常はフレーム溝の底部を測定するのに対し、レンズ加工機はベベルの上端を適合させるように調整されることから起こる。
【0004】
もっと言えば、フレーム溝の外形を測定する既知の物理的方法やデジタル的方法が存在しているので、レンズ端の外形のうち最も突出した領域として見込まれる測位を定めるV字型測定器具と組み合わせることになるが、フレーム溝の底部とV字型部分の挿入深度との間に生じ得る位置ずれは、それに対処する基準面がないと測定できず、追加の機能のみならず追加の調整ステップが必要になる。この方法は、特別な機械を使用する必要がある一方で、これとは異なる、おそらく一般的であってすでに存在するトレーサやレンズ加工機が使用できなくなるという、さらなる欠点がある。また、V字型はレンズ端の外形を表しておらず、生じ得る位置ずれはレンズ一枚ごとに個別の調整ステップを必要とするので、先行技術における既知の手順は非常に複雑になり、他の機械と互換性のない特殊で複雑かつ高価な機械が必要になる一方で、欠陥製品の数を最も減らすことができ十分に満足のいく結果を提供できるようにはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、眼鏡フレームのフレーム溝(外形)に適合するレンズ形状つまりそのレンズ端外形を正確に画定することができる一方で、それに対処して機械加工されるレンズに最も必要なものとして別仕様のトレーサおよびレンズ加工機も使用できるようにする器具と、システムと、方法と、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。従属請求項は、本発明の中心的な創案についてさらに詳しく検討する。
【0007】
第一の態様によれば、本発明は、眼鏡フレームのフレーム溝外形(例えば、断面がV字形状を有する)に対するレンズ端外形の適合性を測定するためのレンズ端シミュレーション器具に関するものである。前記レンズ端シミュレーション器具は、規定のレンズ加工機で加工されるレンズのレンズ端外形に類似した、規定の端部外形を有する。前記規定の端部外形は、突出方向に向かって突出したベベル部から成る。前記レンズ端シミュレーション器具は、さらに、前記ベベル部の先端部分に設けられたプローブを備え、前記プローブは、前記プローブが前記規定の端部外形から突出しない収納位置と、前記プローブが前記規定の端部外形つまり前記先端部分から突出する延伸位置と、の間の移動可能域を前記突出方向に沿って、すなわち前記突出方向に向かって移動できる。
【0008】
このようにして、前記レンズ端シミュレーション器具は、対応するレンズ加工機で加工されることになる、対応するレンズ端外形をシミュレートする。この外形は、少なくとも規定の前記ベベル部を含んだ、異なれども既知の各形状を有することができる。したがって、ユーザは、(外形に関して)加工場所に実際に存在する前記レンズ加工機に対応するように提供されるレンズ端シミュレーション器具を使用することができる。統合され軸方向に移動可能な前記プローブを用いて、前記フレーム溝に適合するように加工されるレンズの前記先端部分と、前記フレーム溝の底部と、の間のギャップ、すなわち、前記レンズ端シミュレーション器具が挿入されるフレーム溝の外形と、対応するレンズ端の前記ベベル部の先端部分との位置ずれを、前記プローブの延伸によって直接に測定できる。したがって、前記位置ずれは前記フレーム溝を基にしてそこで直接に測定できるので、何らかの測定器具を調整する必要はない。次に、測定された前記位置ずれに関するデータを用いて、トレースするステップにおいて、トレーサが受信した取得済のフレーム溝周縁のデータを補正することができ、その結果、対応するレンズ加工機で端部加工される最も正確なレンズ端周縁つまり輪郭が得られる。前記レンズ端シミュレーション器具は、加工すべき前記レンズの可能な限りの接触点や抵触を考慮するので、前記レンズ端外形を完全にシミュレートし、現実的な条件下で前記ギャップ/位置ずれを正確に測定することができる。また、前記レンズ端シミュレーション器具は、前記フレーム溝周縁に沿った一つまたは限られた数の位置で静的な測定を行って高精度な結果を得ることができるので、眼鏡フレームに適切に収まる寸法と形状でレンズを加工することができる。したがって、当該器具が前記フレーム溝から滑り出るおそれがあり高価な駆動装置を必要とする円周方向の測定を回避することができる。
【0009】
前述の「フレーム溝周縁」とは、好ましくは、前記フレーム溝の底部で測定される周方向の線である。前述の「レンズ端周縁」とは,レンズの側方端(できれば前記レンズ端の輪郭のうち最も外側に突出した部分)で測定される周方向の線である。前述の「レンズ端外形」、「フレーム溝外形」、「規定の端部外形」とは、それぞれの部分(すなわち、それぞれ、レンズ端、フレーム溝、レンズ端シミュレーション器具の端部)の断面輪郭である。
【0010】
前記規定の端部外形は、各々が前記突出方向を向き、互いに前記ベベル部の反対側で、離れる方向に延びる(できれば、前記延伸方向に実質的に直交して延びる)二つの外側部をさらに備えていてもよい。これらの追加の外側部があれば、前記レンズが前記ベベルの基部よりも厚い、かなりの厚さを有する場合であっても、前記レンズ端シミュレーション器具つまりもっと適切に言えば前記規定の端部外形が、所定の前記レンズ加工機によって加工されるレンズのレンズ端外形をシミュレートすることができる。
【0011】
前記プローブは、フレーム溝周縁を決めるトレーサのトレーサピンと同じ寸法、できれば同じ形状および/またはサイズを有していてもよい。好ましい実施形態では、前記プローブは、このようなトレーサピンと同一である。例えば、前記プローブは、できれば0.1~4mmの、さらにできれば0.2~2mmの直径を有する、球状または部分的に球状または半球状または丸みを帯びた形状を有することができる。言い換えれば、前記プローブが対応するトレーサピンと類似または同一であることによって、あらゆる種類のトレーサを使用することができる一方で、測定すべき眼鏡フレーム溝内における前記プローブの位置は、前記フレーム溝周縁を決めるトレーサの対応するトレーサピンの位置と同一になるので、前記測定データつまり位置ずれを直接に用いて、レンズ端周縁に生じる前記フレーム溝周縁の潜在的な補正値を定めることができる。
【0012】
前記プローブは前記延伸位置に偏っていてもよい。こうすれば、前記プローブを常に前記フレーム溝に、特に測定対象面に、確実に適合させることができるので、高い測定精度を得ることができる。
【0013】
さらに、前記プローブは、取り外し可能に、前記規定の端部外形つまりそのベベル部に提供してもよい。こうすれば、前記レンズ端シミュレーション器具は、簡単な交換によって、使用される対応トレーサ(例えば、特定のトレーサピン配置を有する)に適応させることができる。こうすれば、前記レンズ端シミュレーション器具の適応性がさらに高まって、どんな異機種(例えば、トレーサおよびレンズ加工機)にも使用できる。
【0014】
前記ベベル部は、前記突出方向に向かって先細りになっているので、規定のレンズ加工機によって加工されるレンズのレンズ端外形の実際のベベル部を最もよくシミュレートすることができる。好ましい実施形態では、前記ベベル部は、先細りのV字形状を有していてもよい。
【0015】
また、別の態様によれば、本発明は、眼鏡フレームのフレーム溝に適合するように機械加工されるレンズのレンズ形状を画定するシステムに関する。このシステムは、眼鏡フレームを保持するためのホルダを備えている。また、このシステムは、本発明によるレンズ端シミュレーション器具をさらに備えている。前記レンズ端シミュレーション器具のベベル部およびプローブを、できればフレーム溝周縁に沿った少なくとも一つの位置において前記ホルダに保持された前記眼鏡フレームのフレーム溝に挿入することによって、前記レンズ端シミュレーション器具が前記突出方向で前記眼鏡フレームの上に置かれると同時に、前記プローブが前記フレーム溝の底部に(すなわち、底部それ自体か底部に最も近い位置に)置かれるように提供される。このようなシステムは、前記レンズ端シミュレーション器具を使用することによって、はるかに複雑な装置やアルゴリズムを必要とする既知のシステムと比較して、大幅に簡素化できる。
【0016】
前記ホルダは、別個の構成要素であってもよいし、また、(その配置および/または向きに起因して)必要な前記(静的)測定のために眼鏡フレームを保持/支持することができる限り、前記レンズ端シミュレーション器具自体が備えることも可能である。
【0017】
前記レンズ端シミュレーション器具は、傾斜可能なように、できれば自由に傾斜可能なように支持することもできる。前記レンズ端シミュレーション器具は、少なくとも、前記レンズ端シミュレーション器具の側面視で前記突出方向に直交して延びる軸を中心として傾斜し、できれば前記外側部の広がり方向にも直交することが可能である。前記レンズ端シミュレーション器具がこのように傾斜可能に支持されるか、または自由に傾斜可能に支持されることによって、前記レンズ端シミュレーション器具は、自動的に完全に方向付けられた状態で、その傾斜部を測定対象の対応フレーム溝に捜入することができる。特に、一方側の前記レンズ端シミュレーション器具と他方側の前記フレーム溝の各接触平面を(自動的に)整列させることができるので、最も正確な測定結果を得るために容易に位置決めすることができる。もちろん、フレームがこれに対応して(例えば、前記ホルダを介して)傾けることが可能であって、フレームとレンズ端シミュレーション器具とが相対的に傾いていることによって、互いの向きを正確に合わせることができるようすることも可能である。トレーサが測定できるのはせいぜい3Dの直線外形だけなので、前記フレーム溝の最終的な傾きを計算することは不可能である。本システムつまりレンズ端シミュレーション器具の測定ソリューションでは、所与のフレーム溝外形およびレンズ形状外形に起因して、前記フレームおよび前記レンズ端シミュレーション器具が、互いに対する適切な相対的傾斜を「自然に」想定することができるようになっている。こうすれば、そのようにして加工されたレンズを所与の前記眼鏡フレームに装着する際に、最小の位置ずれしか存在しないので適切に装着できる。
【0018】
本システムは、前記眼鏡フレームのフレーム溝の底部における前記フレーム溝周縁を決定するトレーサをさらに備えていてもよい。前記トレーサは、統合されるか分離された要素とすることが可能なので、ユーザはどんな種類のトレーサでも使用することができ、システムの適応性が高められる。前記フレーム溝周縁を決定するにあたり、前記眼鏡フレームは前記ホルダによって保持できるのが好ましい。また、前記フレーム溝周縁は、前記ホルダまたは眼鏡フレームに対する前記トレーサの相対移動によって決定できるのが好ましい。前記トレーサは、カメラを備えていてもよい。また、代わりとして、または追加として、前記トレーサは、前記フレーム溝周縁を決定する最中、およびできれば前記相対移動の最中に、前記フレーム溝の底部にとどまるように構成されたトレーサピンを備えていてもよい。上述したように、前記プローブと前記トレーサピンとは、同じ形状および/またはサイズを有する可能性が高く、同一であるのが好ましい。これらの特徴はすべて、前記フレーム溝周縁における十分で満足のいく測定ができるようにする。
【0019】
本システムは、規定の前記レンズ端外形を機械加工するための端加工用外形を有するレンズ加工機をさらに備えていてもよい。前述の端加工用外形は、通常、機械加工される前記レンズ端外形の陰的配置つまり陰的輪郭を表す溝(例えばV字型の溝)から成る。したがって、前記レンズ加工機は、粗面化ホイールつまり面取りホイールで構成することができる。既知のあらゆる種類のレンズ加工機を使用することができるので、本システムの適応性を高められる。
【0020】
本システムは、できれば前記ホルダおよび/または前記レンズ端シミュレーション器具および/または前記トレーサおよび/または前記レンズ加工機を制御するための制御部をさらに備えていてもよい。また、前記制御部は、前記レンズ端シミュレーション器具および/または前記トレーサに対する前記ホルダの相対的な移動を制御するため、および/または、前記レンズ加工機に対する加工対象レンズの相対的な移動を制御するように構成してもよい。このようにして、本システムおよびすべての関連装置は、自動的または半自動的に使用できる。
【0021】
前記制御部はさらに、前記プローブの収納位置つまり前記ベベル部の先端部分に対する前記プローブの延伸位置に基づいて、できれば前記レンズ端シミュレーション器具から受信したデータに基づいて、前記フレーム溝に挿入された前記レンズ端シミュレーション器具の前記フレーム溝の底部に対する位置ずれを表す、レンズ形状補正値のようなデータを提供および/または決定するように構成されてもよい。前記制御部は、さらに、前記フレーム溝周縁を表すデータも、できれば前記トレーサから受信したデータに基づいて提供および/または決定するように構成されてもよい。前記制御部は、さらに、決定された前記位置ずれ、つまり形状補正値と関連して、できれば前記フレーム溝周縁に基づいて、加工されるレンズのレンズ端周縁を表すデータも提供および/または決定するように構成されてもよい。前記加工されるレンズのレンズ端周縁を表すデータは、さらに、前記レンズ端シミュレーション器具の、できれば規定のデフォルトの向きに対する相対的な傾斜可能角度を表すデータに基づくものであってもよい。また、前記制御部は、前記データを前記レンズ加工機に提供するように構成される可能性が高く、この場合、前記レンズ加工機は、前記データに基づいてレンズを縁取るように制御されることが好ましい。このようにして、収集されたデータはすべて、レンズ形状が眼鏡フレームのフレーム溝に完全に適合するように非常に正確に画定するのに使用される可能性が高い。
【0022】
本システムは、好ましい実施形態では、前記プローブの収納位置つまり前記ベベル部の先端部に対する前記プローブの延伸位置における延伸量を表す量またはデータを示すか表示する、あるいはさらに言えば、提供するための指標をさらに備えていてもよい。データ表示を利用すれば、手動または半自動の処理がもっとよくなる可能性があるし、データ提供を利用すれば、自動化された処理がもっとよくなり得る。
【0023】
本発明は、別の態様によれば、眼鏡フレームのフレーム溝に適合するように機械加工されたレンズのレンズ形状を画定する方法にも関する。この方法は、以下のステップを含む。
a)眼鏡フレームのフレーム溝の底部におけるフレーム溝周縁を決定すること
b)できれば請求項1乃至5のいずれか1項に記載の、突出方向に向かって突出したベベル部から成る規定の端部外形を有するレンズ端シミュレーション器具であって、前記ベベル部は、前記ベベル部の先端部分にプローブを備え、前記プローブが前記規定の端部外形から突出しない収納位置と、前記プローブが前記先端部分から突出する延伸位置と、の間の移動可能域を前記突出方向に沿って移動する、レンズ端シミュレーション器具を提供すること
c)前記レンズ端シミュレーション器具のベベル部および前記プローブを、前記フレーム溝周縁に沿った少なくとも一つの位置において前記フレーム溝に挿入することによって、前記レンズ端シミュレーション器具が前記突出方向で前記眼鏡フレームの上に置かれると同時に、前記プローブが前記フレーム溝の底部に(すなわち、最も近い位置に)置かれるようにすること
d)前記プローブの収納位置つまり前記ベベル部の先端部分に対する前記プローブの延伸位置に基づいて、前記フレーム溝に挿入された前記レンズ端シミュレーション器具の前記フレーム溝に対する位置ずれを決定すること
e)決定された前記位置ずれと関連して前記フレーム溝周縁に基づいて、できれば、位置ずれの量に基づくか、位置ずれの量から導かれる形状補正値で補正された前記フレーム溝周縁に基づいて、機械加工されるレンズのレンズ端周縁を決定すること
【0024】
前記方法によれば、記載の位置ずれを正確に規定できるので、加工対象のレンズから結果的に生じるレンズ端周縁をより正確に画定できる。記載のレンズ端シミュレーション器具を使用することによって、複雑なアルゴリズムおよび装置を必要とする既知の方法と比較して、方法全体をはるかに単純化できる。また、本方法は、比較的単純な構成であるため失敗が非常に少なく、より信頼できる処理が可能になる。本方法は、簡単に高い信頼性で形状補正値つまりレンズ端周縁を測定することができて、様々なレンズ加工機やトレーサの存在下ですぐに使用可能であり、しかも、これらはすべて固有の複雑なコンピュータ計算を用いてプログラムされた複雑なトレーサを使用せずに済む。トレーサによってトレースされたフレーム溝周縁に基づいて、前記レンズ端シミュレーション器具で測定されて決定した前記位置ずれと関連して前記レンズ端周縁を決定することによって、すべての側面を考慮した適切なサイズを有し、最初の試みで前記眼鏡フレームに適合させることができる(これは、光学製品ラボや光学製品販売店の言葉で「ファーストフィット」とも呼ばれる)レンズを作成できる。
【0025】
前記レンズ端シミュレーション器具と前記フレーム溝(すなわち、眼鏡フレーム)は、(少なくともステップc)において)、互いに対して相対的に傾いていれば、できれば互いに対して相対的かつ自由に傾いていれば、それらを、できればそれらの接触平面を整列させることができる。この点は、もっと言えば、決定された位置ずれが最小となる場合の、および/または、前記レンズ端シミュレーション器具の側面視において、それらの間の(物理的)接触および、できればそれらの間の実質的に対称的な(物理的)接触によって、前記外側部が前記眼鏡フレームに対する傾斜角度を制限する場合の、傾き位置においてさらに好ましい。前記レンズ端シミュレーション器具を前記フレーム溝に対して相対的に傾斜可能に配置または支持することによって、例えば折り曲げられた眼鏡フレームやレンズに関する場合のように前記フレーム(溝)の傾斜した部分も考慮した上で、前記レンズ端周縁を正確に測定することができる。また、前記フレームおよび/または前記レンズ端シミュレーション器具が前記フレーム溝(すなわちベゼル)の自然傾斜に追従するように自由に傾けられるという処理によって、スポーツ用ラップフレームの場合にも信頼性の高い測定ができる。
【0026】
本発明による本方法は、以下のステップをさらに含んでいてもよい。
f)決定された前記レンズ端周縁に基づいてレンズ加工機でレンズを加工して、加工された前記レンズが前記眼鏡フレームのフレーム溝に収まるようにすること
言い換えれば、上述のように前記データ(特に決定された前記レンズ端周縁を表すデータ)を容易に使用して、対応するレンズ加工機が、眼鏡フレームのフレーム溝に対して最も正確なレンズ形状を有する対応レンズを機械加工することによって、当該レンズが当該フレームに完全に収まるようにすることができる。前記レンズ端周縁データは、前記制御部を介して(例えば自動的に)前記レンズ加工機に提供するか、手動で前記レンズ加工機に提供することもできる。
【0027】
ステップb)~e)(またはそのうちの少なくとも一つまたはいくつか)、およびできればステップa)もコンピュータ上で実行される可能性があり、該コンピュータは、決定されたデータ、特に前記レンズ端周縁を、ステップf)を実行するために、できればレンズ加工機に提供する。このように、本方法は、完全にまたは部分的にデジタル操作にすることができる。例えば、眼鏡フレームとレンズ端シミュレーション器具の3Dモデルを作成し、コンピュータが本明細書で説明したようにシミュレーションを実行して、レンズ端周縁データを受け取ってもよい。もしくは、すべてのステップまたは各ステップの少なくとも一部を本発明によるシステムで実行することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
次に以下に記す各図を参照しつつ、本発明の優位点と具体的な特徴を説明する。
【
図1】本発明に係るレンズ端シミュレーション器具およびそれを挿入する前の眼鏡フレームのフレーム溝を示す概略側面図である。
【
図2】レンズ端シミュレーション器具が眼鏡フレームのフレーム溝に挿入されその外形を測定する位置にある際の、
図1の主要部を示す図である。
【
図3】本発明に係るレンズ端シミュレーション器具およびそれを挿入する前の別の眼鏡フレームのフレーム溝を示す概略側面図である。
【
図4】レンズ端シミュレーション器具が眼鏡フレームのフレーム溝に挿入されてその外形を測定する位置にある際の、
図3の主要部を示す図である。
【
図5】
図1のレンズ端シミュレーション器具を有する、本発明に係るシステムの模式的な部分切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
各図は、メガネフレーム20のフレーム溝外形FGPに対するレンズ端外形の適合性を測定するためのレンズ端シミュレーション器具10を示している。
図1および
図2で最もよく分かるように、レンズ端シミュレーション器具10は、規定のレンズ加工機4で機械加工されるレンズ6のレンズ端外形LEPと同様の規定の端外形STPを有する。したがって、レンズ加工機4は、通常、眼鏡フレーム20のフレーム溝21へ嵌め込むために得られるべきレンズ端外形LEPに対応する規定の端加工用外形または溝40を有している。
【0030】
規定の端外形STPは、突出方向Aに向かって突出しているベベル部11を含んでいる。
図1~
図4で最もよく分かるように、ベベル部11は、突出方向A に向かって先細りになっているの好ましく、ここではV字型になっている。また、規定の端外形STPは、各々が突出方向Aの方を向きベベル部11の反対側で互いに離れる方向に延びる二つの外側部12、13をさらに含んでいてもよい。好ましい実施形態では、外側部12,13は、突出方向A に対して実質的に直交して延びている。したがって、このような規定の端外形STPは、もっと言えば加工対象の厚みのあるレンズLの、結果として得られるベベル部61が、レンズ6においてその厚さ方向で見て上側と下側つまり内側と外側I、Oとの間の領域で突出する、レンズ端外形LEP全体を再現している。したがって、このような構成によって、本発明によるレンズ端シミュレーション器具10を用いて、レンズ端外形LEPを最も正確に再現することができ、その結果、より正確な測定が可能となる。
【0031】
レンズ端シミュレーション器具10はプローブ15をさらに備え、プローブ15は、ベベル部11の先端部分14に設けられて、プローブ15が規定の端外形STPから突出しない収納位置(
図1および
図2の各位置参照)と、プローブ15が先端部分14から突出する延伸位置(例えば、
図1および
図2の各位置参照)との間で、突出方向A に沿って移動可能域Mを移動できる。
【0032】
プローブ15は、眼鏡フレーム20のフレーム溝周縁22を決定するためのトレーサ3のトレーサピン30と同じ寸法を有していてもよい。特に、プローブ15は、そのようなトレーサピン30と同じ形状および/またはサイズを有しているのが好ましい。もっと言えば、最も好ましい実施形態では、プローブ15は、そのようなトレーサピン30と同一であり得る。
【0033】
図1~
図4で最もよく分かるように、プローブ15は、球形を有していてもよい。また、プローブ15は、部分的に球状または半球状、あるいは、もっと言えば単に丸みを帯びた形状を有していてもよい。プローブ15は、約0.1~4mm、もっと好ましいのは約0.2~2mm、または任意の他の寸法の直径Dを有しているのが好ましい。
【0034】
プローブ15は延伸位置に向かってつまり突出方向に付勢されていることが好ましく、このようにすれば、眼鏡フレーム20のフレーム溝外形FGPに対するレンズ端外形LEPの適合性を測定するために使用されているときに、常に延伸位置に向かって移動しようとするので常に当てることができる。
【0035】
プローブ15は、規定の端外形STPまたはそのベベル部11に取外し可能に提供されることも可能であり、こうすれば、レンズ端シミュレーション器具10は、高精度の測定のために、例えばプローブ15の単純な交換によって、可能な限りのトレーサ3つまりトレーサピン30配置に適応することができる。
【0036】
図5は、眼鏡フレーム20の規定のフレーム溝21に適合するように機械加工されるレンズ6のレンズ形状を決定するための本発明に係るシステム1を示している。システム1は、眼鏡フレーム20を保持するためのホルダ2を備えている。ホルダ2は、別個の保持手段であり得るが、レンズ端シミュレーション器具10が自らの一部としてまたは追加的に備えることができ、後者もシステム1の一部である。図示したように、ホルダ2としてのレンズ端シミュレーション器具10は、ここでは水平方向に配置されており、その結果、眼鏡フレームを上側から受け止めて、眼鏡フレーム20を支持する。確実な採寸のために、ホルダ2は、眼鏡フレーム20をレンズ端シミュレーション器具10と確実に当てる上部クランプ部(図示せず)をさらに備えていてもよい。レンズ端シミュレーション器具10は、そのベベル部11を、フレーム溝周縁22に沿った少なくとも一つの位置で(はっきり言うと、できれば動かない状態で)ホルダに保持された(ここではホルダ2としてのレンズ端シミュレーション器具10に支持された)眼鏡フレーム20のフレーム溝21内に挿入できるように設けられているので、レンズ端シミュレーション器具10は突出方向Aに沿って眼鏡フレーム20に置かれ、プローブ15はフレーム溝21の底部23上に置かれる。
【0037】
図5にも示され、
図3および4に明確に示されているように、レンズ端シミュレーション器具10は、傾斜可能なように、最も好ましいのは自由に傾斜可能なように支持することができる。さらにもっと好ましいのは、レンズ端シミュレーション器具10が、少なくとも、レンズ端シミュレーション器具10の側面視において突出方向Aを通り直交して延びる軸を中心にして(自由に)傾けることができ、できれば、
図3および
図4に示してあるように、外側部12,13の延伸方向にも直交するように傾けることができる。このような傾動可能な支持は、
図3~
図5において、対応する円弧状矢印によって代表的に示してある。
【0038】
再び
図5に目を向けると、システム1は、眼鏡フレーム20のフレーム溝21の底部23におけるフレーム溝周縁22を決定するためのトレーサ3をさらに備えていてもよい。したがって、
図5に示すように、別個のトレーサ3を使用することができ、その場合、トレーサ測定中に眼鏡フレーム20を保持するための別個のホルダが必要となる可能性がある。しかしながら、トレーサ3はその測定のためにシステム1のホルダ2を使用することもでき、この場合、ホルダ2はレンズ端シミュレーション器具10として(のみ)その役目を果たすのではなく、できれば別個の要素としてその役目を果たすのが好ましい。測定に際して、トレーサ3は、ホルダ2(または別個のホルダ)または眼鏡フレーム20に対するトレーサ3の相対的な移動によって、フレーム溝周縁22を決定することができるように提供される。
図5では、対応する矢印によって潜在的な自由度に関する例が示されているが、本願発明はこれに限定されるものではない。好ましい実施形態では、トレーサ3は、フレーム溝周縁22の決定中に、もっと好ましいのは相対移動中に、フレーム溝21の底部23に置かれるように構成されたトレーサピン30を備えていてもよい。プローブ15は、トレーサピン30と同じ形状および/またはサイズを有するのが好ましく、もっと好ましいのは同一にすることであって、結果的に、トレーサピン30もプローブ15について本明細書で既に述べたような寸法を有することになる。こうすれば、容易に比較することもできる、正確で高精度な測定結果が得られる。また、代わりに、または追加として、トレーサ3が、フレーム溝周縁22またはフレーム溝外形FGP(これを用いてフレーム溝周縁22が導出され得る)を視覚的に決定するためのカメラを備えることもできる。
【0039】
システム1は、端加工用外形40を有し規定のレンズ端外形LEPを機械加工するためのレンズ加工機4をさらに備えていてもよい。したがって、端加工用外形40は、レンズ端シミュレーション器具10の輪郭、すなわち、その規定の端外形STPに対応する輪郭を有するのが好ましい。
【0040】
システム1は、できればホルダ2を、またはもっと言えばトレーサ3、レンズ端シミュレーション器具10、トレーサ3、および/またはレンズ加工機4のホルダを制御するための制御部5をさらに備えていてもよい。好ましい実施形態では、制御部5は、レンズ端シミュレーション器具10および/またはトレーサ3に対するホルダ2の相対的な動きを制御するように構成されている。さらに、制御部5は、レンズ加工機4に対する機械加工対象レンズの相対的な移動を制御するようにも構成されていてもよい。
【0041】
さらに、制御部5は、プローブ15の収納位置つまり先端部分14に対するプローブ15の延伸位置に基づいて、フレーム溝21内に挿入されたレンズ端シミュレーション器具10のフレーム溝21の底部23に対する位置ずれZを表す、レンズ形状補正値のようなデータを提供および/または決定するように構成されてもよい(
図2および4を参照)。このデータは、レンズ端シミュレーション器具10から受信したデータに基づくのが好ましい。
【0042】
制御部5はさらに、できればトレーサ3から受信したデータに基づいて、フレーム溝周縁22を表すデータも提供および/または決定するように構成されてもよい。
【0043】
さらに、制御部5は、できれば決定された位置ずれZまたは形状補償値と組み合わせてフレーム溝周縁22に基づいて、またできればレンズ端シミュレーション器具10の(できれば規定のデフォルトの向きに対する)相対的な傾斜可能角度αを表すデータに基づいて、機械加工されるレンズ6のレンズ端周縁60を表すデータも提供および/または決定するように構成されてもよい。
【0044】
制御部5は、できれば前記データをレンズ加工機4に提供するようにも構成され、レンズ加工機4が前記データに基づいてレンズLを機械加工するように制御することによって、眼鏡フレーム20に正確に適合するのに必要な加工済レンズ6を受け取ることができる。
【0045】
図5でも分かるように、システム1は、プローブ15の収納位置つまり先端部分14に対するプローブ15の延伸位置での延伸量を表す量またはデータを指示または表示または提供するための、位置ずれZを表すか必要な位置ずれを決定するための基礎となる指標7をさらに備えていてもよい。指標7は、ゲージまたは指示器(
図5参照)またはコンピュータ表示器またはその他の任意の指示手段や表示手段であり得る。
【0046】
以下では、眼鏡フレーム20のフレーム溝21に適合するように加工されるレンズ6のレンズ形状を画定する方法について説明する。
【0047】
第一ステップでは、眼鏡フレーム20のフレーム溝21の底部23でフレーム溝周縁22を決定する。したがって、任意の既知のトレーサまたはシステム1のトレーサ3を使用することができる。
【0048】
第二ステップでは、突出方向Aに向かって突出するベベル部11から成る規定の端形状STPを有するレンズ端シミュレーション器具10が提供され、レンズ端シミュレーション器具10は、ベベル部11の先端部分14に設けられるプローブ15を備え、プローブ15は、突出方向Aに沿って、プローブ15が規定の端形状STPから突出しない収納位置と、プローブ15が規定の端形状STPつまり先端部分14から突出する延伸位置と、の間の移動可能域を移動できる。レンズ端シミュレーション器具10は、本発明に係る物理的なレンズ端シミュレーション器具10であるのが好ましいが、発明がコンピュータで実現される場合には、コンピュータ上でシミュレーションすることもできる。
【0049】
第三ステップでは、レンズ端シミュレーション器具10のベベル部11およびプローブ15を、フレーム溝周縁22に沿った少なくとも一つの位置で(すなわち、できれば動かない状態で)保持されたフレーム溝21に挿入することによって、レンズ端シミュレーション器具10が突出方向Aに沿って眼鏡フレーム20上に置かれ、プローブ15がフレーム溝21の底部23に置かれる。プローブ15は、フレーム溝21に沿って移動することも可能であるとしても、レンズ端シミュレーション器具10による正確な測定のためには、フレーム溝21つまりフレーム溝周縁22に沿った少なくとも一つまたは規定の数(2、3、4、5、またはそれ以上)の静的な位置で動かない状態に配置されれば通常は十分である。
【0050】
第四ステップでは、上述したように挿入されたレンズ端シミュレーション器具10のフレーム溝21に対する位置ずれが、プローブ15の収納位置つまり先端部分14に対するプローブ15の延伸位置に基づいて決定される。
【0051】
第五ステップでは、機械加工されるレンズ6のためのレンズ端周縁60が、決定された位置ずれZと併せてフレーム溝周縁22に基づいて、できれば位置ずれZの量に基づくか当該の量から導かれる形状補正値で補正されたフレーム溝周縁22に基づいて決定される。
【0052】
レンズ端シミュレーション器具10とフレーム溝21とは、互いに対して相対的に傾斜していて、好ましくは互いに対して相対的かつ自由に傾斜していて、両者を整列させることができる、すなわち、好ましくは両者の接触平面P10、P20を整列させることができる。もっと好ましいのは、決定された位置ずれZが最小となる傾斜位置(
図4参照)で、および/または、側方部分12,13が両者間の(物理的)接触、できれば、レンズ端シミュレーション器具10の側面視で、両者間の実質的に対称的な(物理的)接触によって、眼鏡フレームに対する(好ましくは規定のデフォルトの向きに対する)傾斜角度αを制限する傾斜位置で、整列させることができる。
【0053】
本方法は、加工されたレンズ6が眼鏡フレーム20のフレーム溝21に適合するように、決定されたレンズ端周縁60に基づいてレンズ加工機4でレンズLを加工する第六ステップを含んでいてもよい。
【0054】
第二~第五ステップ(あるいはそのうちの一つだけまたはいくつか)は、および好ましくは第一ステップも、コンピュータで(例えば、制御部5を用いて、または制御部5で)実行することができ、該コンピュータは、決定されたデータ、特にレンズ端周縁60を、好ましくは第六ステップを実行するためのレンズ加工機4に提供する。また、本方法のすべてのステップまたは少なくともいくつかのステップが、本発明に係るシステム1で実行されることも可能である。
【0055】
本発明は、添付の特許請求の範囲に記載される限り、本明細書に上述した実施形態によって限定されない。本明細書で上述した、実施形態のすべての特徴は、任意の所定のやり方で組み合わせたり置換したりできる。