(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】軸シール部材及びシール構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/18 20060101AFI20231005BHJP
F16J 15/3268 20160101ALI20231005BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20231005BHJP
F16J 15/3236 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
F16J15/18 C
F16J15/3268
F16J15/3232 201
F16J15/3236
(21)【出願番号】P 2022028333
(22)【出願日】2022-02-25
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榊原 晃来
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昌久
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-050756(JP,A)
【文献】実開昭60-051357(JP,U)
【文献】特開昭61-197856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/18
F16J 15/3268
F16J 15/3232
F16J 15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部及び軸受部を有するハウジングと
、前記ハウジングに対し回転する回転体とを備える回転装置に適用され、かつ骨格部分
がシール本体部により構成される軸シール部材であり、
前記軸受部は
、軸線に沿う方向である軸方向へ延び、かつ前記収容部に連通する筒状部と、前記筒状部を閉塞し、かつ前記軸方向に貫通する軸支持孔を有する軸支持部とを備え、
前記回転体は、前記収容部内に配置された回転本体部
と、前記回転本体部から前記軸方向へ突出して前記軸支持孔に挿通された軸部とを備え
、
前記軸支持部の前記軸支持孔よりも前記回転本体部側には支持端面が形成され、前記回転体には、前記ハウジング内で前記支持端面に対向する回転端面が形成され、
前記シール本体部は、
前記回転装置に組み付けられた状態で、前記回転端面に
対し接触可能に対向する第1対向面と、前記支持端面に
対し接触可能に対向する第2対向面と、前記軸部の外面に
接触する内周面と、前記筒状部の内面に
接触する外周面とを有し、
前記回転装置に組み付けられる前の前記シール本体部における前記第1対向面は、環状の平面又は前記回転端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成され、
前記回転装置に組み付けられる前の前記シール本体部における前記第2対向面は、環状の平面又は前記支持端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成され、
前記シール本体部の前記内周面には、全周にわたって内溝部が形成され、前記軸方向における前記内溝部の両側
であり、かつ前記第1対向面との間、及び前記第2対向面との間に
はそれぞれ内リップ部が形成され
、
前記シール本体部の前記外周面には、全周にわたって外溝部が形成され、前記軸方向における前記外溝部の両側であり、かつ前記第1対向面との間、及び前記第2対向面との間にはそれぞれ外リップ部が形成されている軸シール部材。
【請求項2】
前記第1対向面及び前記第2対向面は、前記平面及び前記湾曲面のうち、互いに同一の種類の面により構成されている請求項1に記載の軸シール部材。
【請求項3】
収容部及び軸受部を有するハウジングと、前記ハウジングに対し回転する回転体とを備える回転装置に適用され、
前記軸受部は、軸線に沿う方向である軸方向へ延び、かつ前記収容部に連通する筒状部と、前記筒状部を閉塞し、かつ前記軸方向に貫通する軸支持孔を有する軸支持部とを備え、
前記回転体は、前記収容部内に配置された回転本体部と、前記回転本体部から前記軸方向へ突出して前記軸支持孔に挿通された軸部とを備え、
前記軸支持部の前記軸支持孔よりも前記回転本体部側には支持端面が形成され、前記回転体には、前記ハウジング内で前記支持端面に対向する回転端面が形成され、
骨格部分がシール本体部により構成される軸シール部材を用い、前記軸部と前記軸受部との間をシールするシール構造であって、
前記シール本体部は、前記回転装置に組み付けられた状態で、前記回転端面に対し接触可能に対向する第1対向面と、前記支持端面に対し接触可能に対向する第2対向面と、前記軸部の外面に接触する内周面と、前記筒状部の内面に接触する外周面とを有し、
前記回転装置に組み付けられる前の前記シール本体部における前記第1対向面は、環状の平面又は前記回転端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成され、
前記回転装置に組み付けられる前の前記シール本体部における前記第2対向面は、環状の平面又は前記支持端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成され、
前記シール本体部の前記内周面には、全周にわたって内溝部が形成され、前記軸方向における前記内溝部の両側であり、かつ前記第1対向面との間、及び前記第2対向面との間にはそれぞれ内リップ部が形成され、
前記シール本体部の前記外周面には、全周にわたって外溝部が形成され、前記軸方向における前記外溝部の両側であり、かつ前記第1対向面との間、及び前記第2対向面との間にはそれぞれ外リップ部が形成されているシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体が、軸受部による軸部の支持部分を通って漏れ出るのを規制する軸シール部材及びシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軸部を中心として弁体(回転体)を回転させることで流路を切り替えるロータリバルブ(回転装置)が、例えば、特許文献1に記載されている。
図10に示すように、ロータリバルブ100は、収容部102及び軸受部103を有するハウジング101と、ハウジング101に対し回転する弁体111とを備える。
【0003】
軸受部103は、軸線ALに沿う方向である軸方向へ延び、かつ収容部102に連通する筒状部104と、筒状部104を閉塞し、かつ軸方向に貫通する軸支持孔106を有する軸支持部105とを備える。
【0004】
弁体111は、収容部102に収容された弁本体部112と、弁本体部112から軸方向へ突出し、かつ軸支持孔106に挿通された軸部113とを備える。
軸支持部105は、軸支持孔106よりも弁本体部112側に支持端面107を有する。弁体111は、ハウジング101内で支持端面107に対向する回転端面114を有する。
【0005】
上記ロータリバルブ100では、収容部102内の流体FLが、軸受部103による軸部113の支持部分からハウジング101の外部へ漏れ出るのを規制するために、軸シール部材117が用いられる。
【0006】
軸シール部材117は、上記回転端面114と、筒状部104の内面の一部と、上記支持端面107と、軸部113の外面の一部とにより囲まれ、かつ軸線ALを中心とする環状空間125に配置される。
【0007】
軸シール部材117は、径方向に圧縮されることに伴い圧縮反力を発生し、この圧縮反力より、軸部113と軸受部103との間をシールする。軸シール部材117としては、
図10では図示されていないが、例えば、円形の断面を有するOリングが用いられる。Oリングは、大きな圧縮反力を発生するため、シール性に優れている。
【0008】
軸シール部材117は、次のようにしてロータリバルブ100に組み付けられる。まず、軸部113の外面と筒状部104の内面とに対し、それぞれグリース(潤滑剤)が塗布される。軸シール部材117が軸部113の端部に被せられ、同軸シール部材117が、回転端面114に接触する位置まで同軸部113上を摺動させられる。そして、軸部113が筒状部104に挿入される。この挿入の過程で、軸部113が軸支持孔106に挿通される。また、上記環状空間125が形成されるとともに、軸シール部材117が同環状空間125に入り込む。
【0009】
しかし、軸シール部材117がOリングからなる場合、弁体111の回転に伴い、グリースが軸シール部材117と軸部113との摺動箇所から排出され、摺動抵抗が次第に高くなる。また、グリースが、軸シール部材117と筒状部104との摺動箇所から排出され、摺動抵抗が次第に高くなる。その結果、弁体111を回転させるために必要なトルクが増大したり、摺動箇所が摩耗したりする。
【0010】
そこで、上記Oリングに代えて、特許文献2に記載されているような、X状の断面を有するXリング(ツイスターリングとも呼ばれる)を軸シール部材117として用いることが考えられる。軸シール部材117がXリングからなる場合、
図10に示すように、同軸シール部材117は、内周側の2つの内リップ部118と、外周側の2つの外リップ部119とを備える。軸シール部材117は、両内リップ部118の間に環状の内溝部121を有し、両外リップ部119の間に環状の外溝部122を有する。そのため、内溝部121でグリースを保持し、軸シール部材117と軸部113との摺動箇所で摺動抵抗が増加するのを抑制可能である。また、外溝部122でグリースを保持し、軸シール部材117と筒状部104との摺動箇所で摺動抵抗が増加するのを抑制可能である。
【0011】
軸シール部材117は、さらに、径方向に隣り合う内リップ部118と外リップ部119との間に環状の中間溝部123を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2021-50756号公報
【文献】特開2012-154350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、軸シール部材117が上記のようにXリングからなる場合、Oリングからなる場合に比べ、内リップ部118及び外リップ部119が弾性変形しやすい。
そのため、軸シール部材117のロータリバルブ100への組み付けに際し、軸部113が軸シール部材117を伴って筒状部104に挿入されるときに、外リップ部119が筒状部104の内面に対し摺動する。この摺動の際、
図10において二点鎖線で示すように、回転端面114側の外リップ部119がねじれて、弁体111の外面のうち、回転端面114に隣接する箇所と、筒状部104の内面との間に噛み込むおそれがある。また、図示はしないが、回転端面114側の外リップ部119が隣の外リップ部119に近づく側へ弾性変形する現象(反転、裏返り)が起こるおそれもある。
【0014】
また、軸シール部材117が組み付けられたロータリバルブ100の作動時に流体FLの圧力が軸シール部材117に対し、
図11において矢印で示す方向に作用すると、同軸シール部材117が軸支持部105側へ摺動し、支持端面107に押し付けられる。支持端面107側の内リップ部118が、同
図11において二点鎖線で示すように弾性変形して、軸部113の外面と軸支持孔106の内面との間に入り込むおそれがある。
【0015】
このように、一般的なXリングが軸シール部材117として用いられると、同軸シール部材117が、軸受部103と軸部113との間をシールする形状とは異なる形状に変形する。すると、軸シール部材117によるシール性の低下、摺動抵抗の増加等の問題が発生する。
【0016】
こうした問題は、上述したロータリバルブ100に限らず、回転体の軸部がハウジングの軸受部に回転可能に支持された回転装置であれば、同様に起り得る。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する軸シール部材は、収容部及び軸受部を有するハウジングと、前記ハウジングに対し回転する回転体とを備える回転装置に適用され、かつ骨格部分がシール本体部により構成される軸シール部材であり、前記軸受部は、軸線に沿う方向である軸方向へ延び、かつ前記収容部に連通する筒状部と、前記筒状部を閉塞し、かつ前記軸方向に貫通する軸支持孔を有する軸支持部とを備え、前記回転体は、前記収容部内に配置された回転本体部と、前記回転本体部から前記軸方向へ突出して前記軸支持孔に挿通された軸部とを備え、前記軸支持部の前記軸支持孔よりも前記回転本体部側には支持端面が形成され、前記回転体には、前記ハウジング内で前記支持端面に対向する回転端面が形成され、前記シール本体部は、前記回転端面に対向する第1対向面と、前記支持端面に対向する第2対向面と、前記軸部の外面に対向する内周面と、前記筒状部の内面に対向する外周面とを有し、前記第1対向面は、環状の平面又は前記回転端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成され、前記第2対向面は、環状の平面又は前記支持端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成され、前記内周面には、全周にわたって内溝部が形成され、前記軸方向における前記内溝部の両側に内リップ部が形成されている。
【0018】
上記軸シール部材の回転装置への組み付けに際しては、例えば、同軸シール部材が軸部の端部に被せられ、同軸シール部材が、回転端面に接触する位置まで軸部上を摺動させられる。
【0019】
軸受部と軸部とが軸方向に接近するように、ハウジング及び回転体が相対移動させられる。この移動により、軸部が筒状部に挿入されて、軸支持部の軸支持孔に挿通される。上記相対移動により、軸シール部材が、回転端面に押し付けられた状態で、同回転端面と、筒状部の内面の一部と、軸支持部の支持端面と、軸部の外面の一部とにより囲まれた環状空間に入り込む。
【0020】
この際、軸シール部材の外周面が筒状部の内面に対し摺動する。ここで、軸シール部材では、第1対向面が、環状の平面又は回転端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成されている。そのため、内リップ部及び外リップ部の間に中間溝部が形成されているXリングに比べ、軸シール部材のうち、外周面と第1対向面との境界部分が弾性変形しにくい。従って、軸シール部材の上記境界部分は、回転体の外面のうち、回転端面に隣接する箇所と筒状部の内面との間に噛み込みにくく、また反転(裏返り)しにくい。
【0021】
また、軸シール部材が組み付けられた回転装置の作動時に、軸支持部に向かう流体の圧力が軸シール部材に作用すると、同軸シール部材が軸方向へ移動して支持端面に押し付けられる。
【0022】
ここで、軸シール部材では、第2対向面が、環状の平面又は支持端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成されている。そのため、内リップ部及び外リップ部の間に中間溝部が形成されているXリングに比べ、軸シール部材の内周面と第2対向面との境界部分(内リップ部)が弾性変形しにくい。従って、内リップ部は、軸部の外面と軸支持孔の内面との間に入り込みにくい。
【0023】
なお、軸部の外面にグリース(潤滑剤)が塗布されると、そのグリースの一部は、軸シール部材の内溝部によって保持される。このグリースにより、軸シール部材と軸部との間の摺動抵抗の増加が抑制される。
【0024】
上記軸シール部材において、前記第1対向面及び前記第2対向面は、前記平面及び前記湾曲面のうち、互いに同一の種類の面により構成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、第1対向面及び第2対向面がともに平面(又は湾曲面)により構成された場合、第1対向面及び第2対向面は同じ形状をなす。そのため、軸シール部材が回転装置に組み付けられた状態では、第1対向面及び第2対向面の軸方向における位置関係に拘わらず、平面(又は湾曲面)が回転端面に対向する。従って、平面(又は湾曲面)が、回転端面に対向しない状態で、軸シール部材が回転装置に組み付けられる現象(誤組付け)が防止される。
【0025】
上記軸シール部材において、前記シール本体部の前記外周面には、全周にわたって外溝部が形成され、前記軸方向における前記外溝部の両側に外リップ部が形成されていることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、回転体の回転に伴い、軸シール部材が筒状部の内面に対し周方向に摺動することもあり得る。この場合、筒状部の内面にグリース(潤滑剤)が塗布されると、そのグリースの一部は、軸シール部材の外溝部によって保持される。このグリースにより、軸シール部材と筒状部との摺動箇所における摺動抵抗の増加が抑制される。
【0027】
なお、軸シール部材の回転装置への組み付けに際しては、外リップ部が筒状部の内面に対し軸方向に摺動する。
しかし、上述したように、軸シール部材では、第1対向面が、環状の平面又は回転端面側へ膨らむ環状の湾曲面により構成されている。そのため、内リップ部及び外リップ部の間に中間溝部が形成されているXリングに比べ、外リップ部が弾性変形しにくい。従って、この場合にも、回転端面側の外リップ部は、回転体の外面のうち、回転端面に隣接する箇所と筒状部の内面との間に噛み込みにくく、また反転(裏返り)しにくい。
【発明の効果】
【0028】
上記軸シール部材及びシール構造によれば、シール本体部が、軸受部と軸部との間をシールする形状とは異なる形状に変形するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態における軸シール部材が組み付けられたロータリバルブの斜視図である。
【
図2】同実施形態におけるロータリバルブの分解斜視図である。
【
図3】同実施形態におけるロータリバルブの平断面図である。
【
図6】同実施形態における軸シール部材の一部を破断して示す部分断面図である。
【
図7】同実施形態における軸部に軸シール部材が被せられた弁体をハウジングに組み付ける途中の状態を示す部分断面図である。
【
図9】
図8に対応する図であり、軸シール部材が流体の圧力を受けて軸方向に移動して支持端面に押し付けられた状態を示す部分断面図である。
【
図10】従来の軸シール部材が組み付けられたロータリバルブの部分断面図である。
【
図11】
図10の状態から、流体の圧力により軸シール部材が支持端面に押し付けられた状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、回転装置としてのロータリバルブに組み付けられる軸シール部材の一実施形態について、
図1~
図9を参照して説明する。
図1は、軸シール部材が組み付けられたロータリバルブ10を示している。また、
図2は、ロータリバルブ10の構成部材を分解した状態で示している。
【0031】
図1に示すように、ロータリバルブ10は、図示しないポンプ等の流体供給源から供給される水等の流体FLの流路11の途中に設けられている。より詳しくは、流路11は、流体供給源に接続された共通流路12と、共通流路12から分岐した第1分岐流路13及び第2分岐流路14とを備えている。ロータリバルブ10は、第1分岐流路13及び第2分岐流路14が共通流路12から分岐する部分に配置されている。ロータリバルブ10は、第1分岐流路13及び第2分岐流路14に流れる流体FLの流量を調整する役割を担っている。
【0032】
図1~
図3に示すように、ロータリバルブ10は、ハウジング15、弁体41、一対のパッキン61,62及び軸シール部材65を備えている。ここで、弁体41は、特許請求の範囲における回転体に該当する部材であり、後述するように、軸線ALを有する軸部51,52を中心として回転可能である。そのため、この軸線ALを基準として、各部材について説明する。また、軸線ALに沿う方向を「軸方向」という。また、軸線ALを中心として放射状に延びる方向を「径方向」というものとする。
【0033】
[ハウジング15]
ハウジング15は、互いに軸方向に並べられた状態で配置されたカバー16及びボディ21を備えている。
【0034】
<カバー16>
図2及び
図4に示すように、カバー16は、軸受部17を中心部分に有している。軸受部17は、カバー16のボディ21側(
図2及び
図4の各上側)の面において開口する凹部18を有している。
【0035】
<ボディ21>
図3及び
図4に示すように、ボディ21は、軸方向へ延びる筒状の環状壁部22を備えている。軸方向における環状壁部22の一方の(
図4の上方)の端部には、閉塞部23が形成されている。環状壁部22の他方の端部は、上記カバー16によって閉塞されている。ボディ21における環状壁部22及び閉塞部23と、カバー16とによって囲まれた箇所は、収容部19を構成している。収容部19は、上記軸受部17の凹部18に連通している。
【0036】
図4及び
図5に示すように、閉塞部23は、軸受部24を中心部分に有している。軸受部24は、筒状部25及び軸支持部27を備えている。筒状部25は、軸線ALを自身の中心とする円筒状をなしており、収容部19から軸方向における外方へ突出している。筒状部25の内面26には、図示しないグリース(潤滑剤)が塗布されている。
【0037】
軸支持部27は、筒状部25の軸方向における一方(
図4及び
図5の各上方)の端部付近から径方向における内方へ突出している。軸支持部27は、軸方向に貫通する円形の軸支持孔28を有している。軸支持部27の軸支持孔28よりも弁本体部42(収容部19)側には、軸線ALを中心とする円環状の支持端面29が形成されている。支持端面29は、軸線ALに直交する面に対し平行な平面によって構成されている。
【0038】
図3に示すように、環状壁部22において、互いに周方向に離間した箇所には、流入口31、第1流出口33及び第2流出口36が形成されている。
環状壁部22における流入口31の周縁部には、同環状壁部22の径方向外方へ突出する接続管部32が設けられている。接続管部32と流体供給源とは、流体FLの上記共通流路12によって接続されている。
【0039】
環状壁部22における第1流出口33の周縁部には、同環状壁部22の径方向外方へ突出する接続管部34が設けられている。接続管部34には、流体FLの上記第1分岐流路13が接続され、第1流出口33から流出された流体FLが、第1分岐流路13を通って、流体FLの使用先に送られる。環状壁部22内であって、第1流出口33の周縁部に対し、同環状壁部22の径方向内方に隣接する箇所には、パッキン装着部35が形成されている。
【0040】
環状壁部22における第2流出口36の周縁部には、同環状壁部22の径方向外方へ突出する接続管部37が設けられている。接続管部37には、流体FLの上記第2分岐流路14が接続され、第2流出口36から流出された流体FLが、第2分岐流路14を通って、流体FLの使用先に送られる。環状壁部22内であって、第2流出口36の周縁部に対し、同環状壁部22の径方向内方に隣接する箇所には、パッキン装着部38が形成されている。
【0041】
<弁体41>
図2及び
図4に示すように、弁体41は、その骨格部分を構成する弁本体部42と、軸部51,52とを備えている。弁本体部42は、特許請求の範囲における回転本体部に該当する。
【0042】
弁本体部42は、軸線ALに沿う方向に互いに離間した状態で配置された円板状の一対の端壁部43,44と、両端壁部43,44の周縁部の一部同士を連結する連結部45とを備えている。弁本体部42は、上記収容部19に配置されている。
【0043】
弁本体部42において、両端壁部43,44の間であって、連結部45とは異なる箇所は、
図3に示す上記流入口31と第1流出口33との連通状態を変更するとともに、流入口31と第2流出口36との連通状態とを変更する可動流路47を構成している。
【0044】
図4に示すように、軸部51は、上記軸線AL上において端壁部43に設けられている。軸部52は軸線AL上において端壁部44に設けられている。両軸部51,52は、軸線ALに沿って互いに遠ざかる側へ突出している。
【0045】
図4及び
図5に示すように、軸部52は、ともに円形の断面を有する第1軸部53及び第2軸部56を備えている。第2軸部56は、第1軸部53よりも小径に形成されている。弁体41には、ハウジング15内で上記支持端面29に対向する回転端面54が形成されている。回転端面54は、本実施形態では、第1軸部53の第2軸部56側の端面によって構成されている。回転端面54は、軸線ALを中心とする円環状をなしており、軸線ALに直交する面に対し平行な平面によって構成されている。
【0046】
第2軸部56の外面57には、図示しないグリース(潤滑剤)が塗布されている。なお、グリースは回転端面54に対して塗布されてもよい。
弁体41は、軸部51においてカバー16の軸受部17に回転可能に支持されている。軸部52における第1軸部53は筒状部25内に入り込み、第2軸部56は軸支持孔28に挿通されている。第2軸部56の一部は筒状部25内に位置し、同第2軸部56の他の一部は軸受部24の外部に露出している。軸部52は、第1軸部53において筒状部25に回転可能に支持され、第2軸部56において軸支持部27に回転可能に支持されている。このようにして、弁体41は、両軸部51,52により、ハウジング15に回転可能に支持されている。
【0047】
なお、上記のように、軸部52が軸受部24に支持された状態では、回転端面54と、筒状部25の内面26の一部と、支持端面29と、第2軸部56の外面57の一部との間には、軸線ALを中心とする環状空間58が形成される。
【0048】
上記構成の弁体41は、図示しないモータ、手動操作等によって回転される。この回転により、
図3に示すように、弁本体部42の連結部45が第1流出口33の一部と、第2流出口36の一部とを閉塞して、共通流路12と、第1分岐流路13及び第2分岐流路14とを連通させることが可能である。また、図示はしないが、連結部45が第1流出口33を閉塞し、かつ第2流出口36の全部を開放することで、共通流路12と第2分岐流路14とを連通させることが可能である。また、連結部45が上記とは逆に、第2流出口36を閉塞し、かつ第1流出口33の全部を開放することで、共通流路12と第1分岐流路13とを連通させることが可能である。また、弁体41の回転位相を変化させることによって、第1流出口33及び第2流出口36のそれぞれの開度(開き具合)を調整することが可能である。
【0049】
<一対のパッキン61,62>
図3及び
図4に示すように、両パッキン61,62は、互いに同一の構成を有している。各パッキン61,62は、ゴム等の弾性材料によって形成されている。一方のパッキン61は上記パッキン装着部35に装着されており、環状壁部22における第1流出口33の周縁部と弁本体部42の外周面との間に位置している。他方のパッキン62は上記パッキン装着部38に装着されており、環状壁部22における第2流出口36の周縁部と弁本体部42の外周面との間に位置している。
【0050】
各パッキン61,62は、矩形の外形形状を有している(
図2参照)。各パッキン61,62は、弁体41の径方向に貫通する円形の孔63を有している。パッキン61の孔63は第1流出口33に対向し、パッキン62の孔63は第2流出口36に対向している。
【0051】
<軸シール部材65>
図2、
図4及び
図5に示すように、軸シール部材65は、ゴム等の弾性材料によって円環状に形成されている。軸シール部材65のうち、軸線ALを含む面における断面の形状は周方向に一様である。軸シール部材65の内径は、第2軸部56の外径よりも若干小さく設定されている。軸シール部材65の外径は、筒状部25の内径よりも若干大きく設定されている。軸シール部材65は、径方向に圧縮された状態で上記環状空間58に配置されている。
【0052】
図5及び
図6に示すように、軸シール部材65の骨格部分はシール本体部66によって構成されている。シール本体部66は、上記回転端面54に対向する第1対向面67と、上記支持端面29に対向する第2対向面68と、第2軸部56の外面57に対向する内周面71と、筒状部25の内面26に対向する外周面75とを有している。
【0053】
第1対向面67及び第2対向面68は、ともに、軸線ALに直交する面に対し平行な平面によって構成されている。第1対向面67及び第2対向面68は、軸線ALを中心とする円環状をなしている。
【0054】
内周面71であって、軸方向における中間部、本実施形態では中央部には、全周にわたって内溝部72が形成されている。内溝部72は、深くなるに従い溝幅が狭くなる断面形状を有している。軸方向における内溝部72の両側には、内リップ部73が形成されている。各内リップ部73は、径方向内側へ膨らむように湾曲している。
【0055】
外周面75であって、軸方向における中間部、本実施形態では中央部には、全周にわたって外溝部76が形成されている。外溝部76は、深くなるに従い溝幅が狭くなる断面形状を有している。軸方向における外溝部76の両側には、外リップ部77が形成されている。各外リップ部77は、径方向外側へ膨らむように湾曲している。
【0056】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
[(1)軸シール部材65の組み付け時における変形抑制について]
(1-1)軸シール部材65のロータリバルブ10への組み付けに際しては、例えば、
図7における第2軸部56の外面57と、筒状部25の内面26とに対し、それぞれグリースが塗布される。グリースは、回転端面54や外面55に塗布されてもよい。
【0057】
図7において、二点鎖線で示す軸シール部材65が拡径されながら、第2軸部56の端部に被せられる。
図6に示す両内リップ部73が第2軸部56の外面57に接触する。被せられた軸シール部材65は、
図7において、二点鎖線の矢印で示すように、第2軸部56上を第1軸部53に向けて摺動させられる。
【0058】
第2軸部56の外面57にはグリースが塗布されているため、両内リップ部73が第2軸部56に対し摺動しやすい。この摺動は、例えば、第1対向面67が回転端面54に接触する位置まで行なわれる。この摺動の過程で、内溝部72内にグリースが入り込む。
【0059】
次に、軸受部24と軸部52とが軸方向に接近するように、ハウジング15及び弁体41が軸方向に相対移動させられる。この際、ハウジング15が
図7において実線の矢印で示すように、弁体41に近付けられてもよいし、これとは逆に弁体41がハウジング15に近付けられてもよい。また、ハウジング15及び弁体41の両者が互いに近付く方向へ移動させられてもよい。上記相対移動により、第2軸部56が筒状部25に挿入され、軸支持孔28に挿通される。
【0060】
上記相対移動に伴い、
図8に示すように、環状空間58が形成されるとともに、軸シール部材65が径方向に圧縮された状態で、その環状空間58に入り込む。
この際、両外リップ部77が筒状部25の内面26に対し摺動する。内面26にはグリースが塗布されているため、両外リップ部77が内面26に対し摺動しやすい。この摺動の過程で、外溝部76内にグリースが入り込む。
【0061】
(1-2)ここで、本実施形態では、軸シール部材65の第1対向面67が、環状の平面により構成されている。この第1対向面67が回転端面54に接触している。
そのため、内リップ部118及び外リップ部119の間に中間溝部123が形成されている従来の軸シール部材117に比べ、軸シール部材65の外周面75と第1対向面67との境界部分の外リップ部77が弾性変形しにくい。外リップ部77がねじれにくく、同外リップ部77が、第1軸部53の外面55(弁体41の外面のうち、回転端面54に隣接する箇所)と、筒状部25の内面26との間に噛み込んだり、反転(裏返り)したりすることが起こりにくい。そのため、軸シール部材65のロータリバルブ10への組み付け性が向上する。
【0062】
また、仮に外リップ部77が、外面55と内面26との間に噛み込むと、弁体41を回転させるために必要なトルクが増加する。しかし、噛み込みが起こりにくい本実施形態では、こうした回転トルクの増加を抑制できる。
【0063】
また、外リップ部77が上記のように噛み込むと、同外リップ部77の耐久性が低下するおそれがある。しかし、噛み込みが起こりにくい本実施形態では、こうした外リップ部77の耐久性低下を抑制できる。
【0064】
また、軸シール部材65の上記噛み込み等に伴い、グリースを保持する外溝部76が、筒状部25の軸シール部材65との摺動箇所から軸方向へ外れるのを抑制できる。
さらに、外リップ部77が反転する(裏返る)と、軸シール部材65が十分なシール性を発揮することが困難となる。しかし、反転(裏返り)が起こりにくい本実施形態では、そうした反転(裏返り)に起因するシール性の低下を抑制できる。
【0065】
[(2)軸シール部材65によるシールについて]
(2-1)第2軸部56及び筒状部25の間に圧縮された状態で配置された軸シール部材65では、第2軸部56を径方向内方へ押し返す反力(圧縮反力)と、筒状部25を径方向外方へ押し返す反力(圧縮反力)とが生ずる。前者の圧縮反力は、両内リップ部73を介して第2軸部56に伝わる。この圧縮反力によって、第2軸部56の外面57と両内リップ部73との間がシールされる。後者の圧縮反力は、両外リップ部77を介して筒状部25に伝わる。この圧縮反力によって、筒状部25の内面26と両外リップ部77との間がシールされる。
【0066】
そのため、収容部19内の流体FLが、第2軸部56の外面57と軸シール部材65の内周面71との間を流れるのを規制できる。また、上記流体FLが、筒状部25の内面26と軸シール部材65の外周面75との間を流れるのを規制できる。結果として、流体FLが軸受部24による軸部52の支持部分を通ってハウジング15の外部へ漏れ出るのを抑制できる。
【0067】
(2-2)特に、本実施形態の軸シール部材65は、弾性材料によって形成され、しかもOリングに近い断面形状を有している。そのため、本実施形態の軸シール部材65は、Oリングと同様、大きな圧縮反力を発生する。従って、軸シール部材65に良好なシール性を発揮させることができる。
【0068】
[(3)ロータリバルブ10の使用時における内リップ部73の変形抑制について]
軸シール部材65が組み付けられたロータリバルブ10の使用時に、
図9において矢印で示すように、軸支持部27に向かう流体FLの圧力が軸シール部材65に作用する。この圧力により、軸シール部材65が、第2軸部56の外面57、及び筒状部25の内面26に沿って軸支持部27側へ摺動し、支持端面29に押し付けられることがある。
【0069】
ここで、本実施形態では、軸シール部材65の第2対向面68が環状の平面により構成されている。そのため、内リップ部118と外リップ部119との間に中間溝部123が形成されている従来の軸シール部材117に比べ、軸シール部材65の内周面71と第2対向面68との境界部分の内リップ部73が弾性変形しにくい。従って、上記内リップ部73が、第2軸部56の外面57と軸支持孔28の内面との間に入り込むのを抑制できる。
【0070】
[(4)内溝部72及び外溝部76によるグリース保持について]
(4-1)
図8及び
図9に示すように、第2軸部56の外面57に塗布されたグリースの一部は、軸シール部材65の内溝部72によって保持される。このグリースにより、軸シール部材65の内周面71と第2軸部56の外面57との摺動箇所における摺動抵抗の増加を抑制できる。また、上記摺動箇所の摩耗を抑制できる。
【0071】
(4-2)弁体41の回転に伴い、軸シール部材65が筒状部25の内面26に対し周方向へ摺動することもあり得る。
この点、本実施形態では、外周面75に外溝部76が形成され、軸方向における外溝部76の両側に外リップ部77が形成されている。
【0072】
そのため、筒状部25の内面26に塗布されたグリースの一部は、軸シール部材65の外溝部76によって保持される。このグリースにより、軸シール部材65の外周面75と筒状部25の内面26との摺動箇所における摺動抵抗の増加を抑制できる。また、上記摺動箇所の摩耗を抑制できる。
【0073】
(4-3)上記摺動抵抗が増加すると、弁体41を回転させるのに必要なトルクが増大する。この点、本実施形態では上記(4-1),(4-2)で説明したように、保持されたグリースにより、摺動抵抗の増加を抑制できることから、弁体41を回転させるのに必要な上記トルクの増大を抑制できる。
【0074】
(4-4)上記(3)で説明したように、流体FLの軸方向の圧力により軸シール部材65が軸方向へ移動する場合、両内リップ部73が第2軸部56の外面57に対し摺動し、両外リップ部77が筒状部25の内面26に対し摺動する。
【0075】
第2軸部56の外面57に塗布されたグリースの一部は、内溝部72によって保持される。このグリースにより、軸シール部材65の内周面71と第2軸部56の外面57との摺動箇所における摺動抵抗の増加を抑制できる。
【0076】
また、筒状部25の内面26に塗布されたグリースの一部は、外溝部76によって保持される。このグリースにより、軸シール部材65の外周面75と筒状部25の内面26との摺動箇所における摺動抵抗の増加を抑制できる。
【0077】
(4-5)上記(4-1)~(4-4)で説明したように摺動抵抗の増加を抑制できるため、ロータリバルブ10の作動性、特に弁体41の回転性及び耐久性の向上を図ることができる。この点で、本実施形態の軸シール部材65は、摺動箇所からグリースが排出されるおそれのあるOリングに比べて優れている。
【0078】
[(5)その他の効果について]
(5-1)本実施形態では、第1対向面67及び第2対向面68がともに環状の平面により構成されている。第1対向面67及び第2対向面68が同じ形状をなしている。そのため、軸シール部材65がロータリバルブ10に組み付けられた状態では、第1対向面67及び第2対向面68の軸方向における位置関係に拘わらず、環状の平面が回転端面54に対向する。従って、平面が、回転端面54に対向しない状態で、軸シール部材65がロータリバルブ10に組み付けられる現象(誤組付け)を防止することができる。
【0079】
(5-2)摺動部の軸シール部品として、オイルシールが知られている。オイルシールは、低圧縮率で使用されることを推奨されている。
これに対し、軸シール部材65が接触する対象である軸部52及び軸受部24がともに樹脂材料によって形成されている場合、寸法の変化が大きい。そのため、低圧縮率で使用されるオイルシールでは、寸法の変化に追従することが難しく、シール性を担保することが難しい。
【0080】
この点、本実施形態の軸シール部材65は、OリングやXリングと同様、高圧縮率での使用が可能である。そのため、軸部52及び軸受部24が樹脂材料によって形成されていて、寸法が大きく変化するような場合でも、十分なシール性を発揮できる。
【0081】
(5-3)上記オイルシールは、形状が複雑なうえに、金属環とセットで使用されることが多いために、部品コストが高くなる。
この点、本実施形態では、軸シール部材65は1部品によって構成される。しかも、オイルシールに比べると、比較的シンプルな形状をなしている。そのため、軸シール部材65の部品コストを、オイルシールよりも低くすることが可能である。
【0082】
[変更例]
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変更例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0083】
<軸部51,52及び軸受部17,24に関する事項>
・
図4において、軸部51及び軸受部17が省略されて、弁体41が軸部52及び軸受部24のみによってハウジング15に回転可能に支持されてもよい。
【0084】
・軸受部17が軸受部24と同様の構成を有し、軸部51が軸部52と同様の構成を有してもよい。この場合、軸受部17と軸部51との間に、上記実施形態の軸シール部材65と同様の構成を有する軸シール部材が配置されてもよい。
【0085】
・軸部52が第2軸部56のみによって構成されてもよい。この場合、第2軸部56が弁本体部42から軸方向へ突出することとなる。また、この場合、弁本体部42の第2軸部56側の端面が回転端面54を構成する。
【0086】
・軸受部24は、必ずしも収容部19から軸方向の外方へ突出していなくてもよい。軸受部24は、例えば、閉塞部23から軸方向の内方へ突出して、収容部19内に位置してもよい。また、軸受部24は、閉塞部23から軸方向の内外両方向へ突出してもよい。
【0087】
・軸受部24における軸支持部27は、筒状部25の軸方向における端部に設けられてもよいし、中間部分に設けられてもよい。
<軸シール部材65に関する事項>
・第1対向面67は、環状の上記平面に代えて、
図6において二点鎖線で示すように、回転端面54側(
図6の下側)へ膨らむ環状の湾曲面によって構成されてもよい。この場合にも、内リップ部118と外リップ部119との間に中間溝部123が形成されている従来の軸シール部材117に比べ、外リップ部77が弾性変形しにくい。従って、軸シール部材65のロータリバルブ10への組み付け時に、外リップ部77が、第1軸部53の外面55(弁体41の外面のうち、回転端面54に隣接する箇所)と、筒状部25の内面26との間に噛み込む現象を抑制できる。
【0088】
・第2対向面68は、環状の上記平面に代えて、
図6において二点鎖線で示すように、軸支持部27側(
図6の上側)へ膨らむ環状の湾曲面により構成されてもよい。この場合にも、中間溝部123が形成されている従来の軸シール部材117に比べ、内リップ部73が弾性変形しにくい。従って、ロータリバルブ10の使用時に、内リップ部73が、第2軸部56の外面57と軸支持孔28の内面との間に入り込む現象を抑制できる。
【0089】
・第1対向面67及び第2対向面68が、互いに軸方向へ遠ざかるように膨らむ環状の湾曲面によって構成されてもよい。この場合、第1対向面67及び第2対向面68が互いに同じ形状になる。そのため、軸シール部材65がロータリバルブ10に組み付けられた状態では、第1対向面67及び第2対向面68の軸方向における位置関係に拘わらず、湾曲面が回転端面54に対向する。
【0090】
従って、上記湾曲面が、回転端面54に対向しない状態で、軸シール部材65がロータリバルブ10に組み付けられる現象(誤組付け)を防止できる。
・誤組付けの問題が、上記実施形態及び上記変更例とは異なる手段によって防止できる場合には、第1対向面67及び第2対向面68の一方が平面によって構成され、他方が湾曲面によって構成されてもよい。すなわち、第1対向面67及び第2対向面68が、平面及び湾曲面のうち、互いに異なるタイプの面によって構成されてもよい。
【0091】
・弁体41の回転に伴い、軸シール部材65が筒状部25の内面26に対し周方向へ摺動しない場合には、軸シール部材65から外溝部76が省略されてもよい。
・内溝部72及び外溝部76の少なくとも一方は、軸方向におけるシール本体部66の中央部とは異なる箇所に形成されてもよい。
【0092】
・内溝部72及び外溝部76は、シール本体部66の軸方向に互いに同一の箇所に形成されてもよいし、軸方向に互いに異なる箇所に形成されてもよい。
・内溝部72及び外溝部76の断面形状が、上記実施形態とは異なる断面形状に変更されてもよい。
【0093】
<その他の事項>
・軸シール部材65の適用対象は、流体FLとして、水とは異なる種類の液体が流される流路に設けられるロータリバルブや、流体FLとして液体に代えて気体が流される流路に設けられるロータリバルブであってもよい。
【0094】
・上記軸シール部材65は、ロータリバルブ10とは異なるタイプの回転装置にも適用可能である。この場合の回転装置は、収容部及び軸受部を有するハウジングと、ハウジングに対し回転する回転体とを備える。回転体の回転本体部が収容部に配置され、軸部が軸受部に回転可能に支持される。
【符号の説明】
【0095】
10…ロータリバルブ(回転装置)
15…ハウジング
19…収容部
24…軸受部
25…筒状部
26…内面
27…軸支持部
28…軸支持孔
29…支持端面
41…弁体(回転体)
42…弁本体部(回転本体部)
51,52…軸部
54…回転端面
57…外面
65…軸シール部材
66…シール本体部
67…第1対向面
68…第2対向面
71…内周面
72…内溝部
73…内リップ部
75…外周面
76…外溝部
77…外リップ部
AL…軸線