(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】重症熱性血小板減少症候群ウイルス遺伝子検出用組成物及びこれを用いた重症熱性血小板減少症候群の診断方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20231005BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20231005BHJP
C12Q 1/6806 20180101ALI20231005BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231005BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20231005BHJP
C12N 15/40 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/6806 Z
C12Q1/686 Z
G01N33/50 P
C12N15/40
(21)【出願番号】P 2022513876
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 KR2020009829
(87)【国際公開番号】W WO2021040245
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2019-0106466
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515140130
【氏名又は名称】インダストリー-アカデミック、コーオペレーション、ファウンデーション、チョスン、ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION, CHOSUN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ミン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ユウ ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム,チョン ミー
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106191307(CN,A)
【文献】中国特許第102618669(CN,B)
【文献】特開2020-065488(JP,A)
【文献】特開2020-026953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00- 15/90
G01N 33/48- 33/98
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2及び配列番号3のプライマ一対;及び配列番号4のプローブ;を含む、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルス遺伝子検出用組成物。
【請求項2】
上記配列番号2及び配列番号3のプライマ一対;及び配列番号4のプローブ;は、配列番号1からなる重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)ウイルスのSセグメント(Small segment;S segment)に特異的に結合することを特徴とする、請求項1に記載の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス遺伝子検出用組成物。
【請求項3】
請求項1の組成物を含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診断用キット。
【請求項4】
(1)重症熱性血小板減少症候群の感染が疑われる患者より分離された試料からウイルス性RNAを分離する段階;
(2)上記RNAからcDNAを合成する段階;
(3)上記段階(2)で合成したcDNAを鋳型とし、請求項3のキットを用いてリアルタイムRT-PCR増幅を遂行する段階;及び
(4)上記段階(3)を通して重症熱性血小板減少症候群ウイルスの遺伝子を確認する段階;を含む、
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法。
【請求項5】
上記段階(1)の試料は、哺乳動物から収得した血液、組織、細胞、血清、血漿、唾液、喀痰又は尿;又はマダニ;であることを特徴とする、請求項4に記載の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法。
【請求項6】
上記段階(3)で重症熱性血小板減少症候群ウイルス遺伝子の確認は、キャピラリー電気泳動、DNAチップ、ゲル電気泳動、放射性測定、蛍光測定及びりん光測定からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法で遂行することを特徴とする、請求項4に記載の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法。
【請求項7】
上記段階(3)で重症熱性血小板減少症候群ウイルスの遺伝子は、配列番号1からなる重症熱性血小板減少症候群ウイルスのSセグメント(Small segment;S segment)であることを特徴とする、請求項4に記載の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重症熱性血小板減少症候群ウイルス遺伝子検出用組成物及びこれを用いた重症熱性血小板減少症候群の診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)は、SFTSウイルスによって発生する急性発熱性疾患で、白血球、血小板数値減少、肝機能数値上昇、タンパク尿などの症状を特徴とする。SFTSウイルスに感染したダニが人をかんで組織液を吸い込むことにより感染し、媒介体としてHaemaphysalis longicornis(フタトゲチマダニ)、Amblyomma testudinarium(タカサゴキララマダニ)、Ixodes nipponensis(タネガタマダニ)などがある。
【0003】
韓国全国的にSFTS患者の発生が増加傾向にあり、死亡率はSFTS認知度の増加によって2013年から2016年まで47.6%、29.1%、26.6%、11.5%と減少傾向であったが、2017年に死亡患者数が急激に増加し22.3%と前年比10.8%増であった。したがって、地球温暖化によるダニ個体数の増加によりSFTS患者は増加し続けると予想されるため、SFTS感染に対する迅速で且つ正確な診断が患者の予後改善のために必須とされる。
【0004】
現在、重症熱性血小板減少症候群の診断は、患者の血液を用いてウイルスを分離する方法、患者の血清を用いてIFAやELISA分析により抗体価の上昇を確認する方法、患者の血清や血漿を用いてリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(real time RT-PCR)やnested RT-PCRで患者の血液内のSFTSウイルスRNAを増幅させて検査する方法がある。
【0005】
このうちウイルスを培養して診断する方法は、BSL3施設が必要で、培養に多少時間がかかる場合があり一般病院では施行が困難であるため、診断に主に使用されている検査方法は、血清学的検査である間接免疫蛍光抗体法、免疫酵素法である。しかし、このような方法も他の病原体との交差反応による偽陽性反応があり、症状発生から抗体形成まで数日かかるため、疾病の早期に来院して検査を施行する場合、感度が低く、確定診断のためには追跡検査が必要であるとの短所がある。
【0006】
特に、SFTSウイルスを疾病初期に迅速に診断するために患者の血液からウイルスの特異遺伝子を検出するPCR法には、伝統的な方法によるconventional RT-PCRと、これを変形してconventional RT-PCRよりも100倍敏感なnested RT-PCR方法とがあり、また、PCRの進行中に結果をリアルタイムで確認できるリアルタイム(real time)RT-PCR方法などがある。重症熱性血小板減少症候群ウイルスは、一本鎖RNAウイルスで、Bunyaviridaeと、phlebovirus属に属し、ウイルスゲノムは、Large(L)、Medium(M)、Small(S)セグメント(segment)から構成されている。SFTSウイルスを検出するためのRT-PCR診断方法として、これら3つのセグメント(L、M、S segment)をターゲットとしてリアルタイムRT-PCR及びnested RT-PCR法が主に用いられているが、nested RT-PCRの場合、2回のPCR施行で感度が上昇するが、2回のPCR遂行により必要以上の人力及び時間がかかり、潜在的な汚染可能性がより高いことから、たった一回でも感度の優れた新たな診断法の開発が非常に切実であるのが実情である。
【0007】
一方、SFTSウイルスの3つのセグメントは、RNA-dependent RNA polymerase、RdRpをコードするLセグメント、ウイルス膜タンパク質の構成成分であるglycoprotein(GnとGc)をコードするMセグメント、ウイルス核タンパク質でSFTSウイルス由来のタンパク質のうち発現量が多く感染宿主をして細胞性免疫反応を誘発するnucleocapsid protein(NP)と免疫回避機能をするnonstructural protein(NSs)をコードするSセグメントから構成されている。SFTSは、韓国、中国、日本が主に流行地域で、SFTSウイルスのMセグメントとSセグメントの塩基配列を基に系統分析するとき、各国別に発生するウイルスの遺伝子配列が相異なりJapanese(J) clade、Chinese(C) clade、及びKorean(K) cladeに分類可能である。
【0008】
よって、SFTS感染に対する迅速且つ正確な診断及び治療のために、Japanese(J) clade、Chinese(c) clade及びKorean(K) cladeのSFTSウイルス遺伝子を疾病初期に迅速に全て診断することができる感度及び特異度の優れた診断方法の開発が何よりも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明では、このような点を勘案して、SFTSウイルス遺伝子検出用組成物を提供し、これによりSFTSウイルスの確認及び重症熱性血小板減少症候群の診断方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の他の目的は、本発明のSFTSウイルス遺伝子検出用組成物を含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診断用キットを提供することにある。
【0011】
本発明のまた他の目的は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような目的を達成するために、本発明は、配列番号2及び配列番号3のプライマ一対;及び配列番号4のプローブ;を含む、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルス遺伝子検出用組成物を提供する。
【0013】
本発明の一実施例において、配列番号2及び配列番号3のプライマ一対;及び配列番号4のプローブ;は、配列番号1(SFTSV Sセグメントの塩基配列)からなる重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)ウイルスのSセグメント(Small segment;S segment)に特異的に結合するものであってもよい。
【0014】
また、本発明は、本発明のSFTSウイルス遺伝子検出用組成物を含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診断用キットを提供する。
【0015】
また、本発明は、(1)重症熱性血小板減少症候群の感染が疑われる患者より分離された試料からウイルス性RNAを分離する段階;(2)上記RNAからcDNAを合成する段階;(3)上記段階(2)で合成したcDNAを鋳型にし、請求項3のキットを用いてリアルタイムRT-PCR増幅を遂行する段階;及び(4)上記段階(3)を通して重症熱性血小板減少症候群ウイルスの遺伝子を確認する段階;を含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法を提供する。
【0016】
本発明の一実施例において、上記段階(1)の試料は、哺乳動物から収得した血液、組織、細胞、血清、血漿、唾液、喀痰又は尿;又はマダニ;であってもよい。
【0017】
本発明の一実施例において、上記段階(2)で上記RNAからcDNAを合成することは、SFTSウイルスのRNAゲノムから逆転写酵素(reverse transcriptase)の作用を通した逆転写(reverse transcription)反応を別途遂行して相補的DNA(cDNA)を合成することであってもよい。
【0018】
本発明の一実施例において、上記段階(4)で重症熱性血小板減少症候群ウイルス遺伝子の確認は、キャピラリー電気泳動、DNAチップ、ゲル電気泳動、放射性測定、蛍光測定及びりん光測定からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法で遂行することであってもよい。
【0019】
本発明の一実施例において、上記段階(4)で重症熱性血小板減少症候群ウイルスの遺伝子は、配列番号1からなる重症熱性血小板減少症候群ウイルスのSセグメント(Small segment;S segment)であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明による重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス遺伝子検出用組成物及びこれを用いたSFTS診断方法は、SFTSウイルスのSセグメント遺伝子を特異的に検出することができ、既に知られている検出方法に比べて正確度及び感度が優れているばかりか短時間でSFTSウイルスの検出が可能であるため、重症熱性血小板減少症候群を迅速且つ正確に診断することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明で考案したSFTSウイルス遺伝子検出用プライマー及びプローブを用いたSFTSウイルス検出限界を確認するためにリアルタイムRT-PCRを行った後、ロッドスコアを測定した結果を示したものである。
【
図2】本発明の一実施例でSFTS疑い患者の入院当日に収得した検体を対象として本発明のSFTSウイルス遺伝子検出用プライマー及びプローブを用いたSFTS検出感度及び特異度分析結果を示したものである。
【
図3】本発明の一実施例でSFTS疑い患者の入院期間中に患者から収得した検体を対象として本発明のSFTSウイルス遺伝子検出用プライマー及びプローブを用いたSFTS検出感度及び特異度分析結果を示したものである。
【
図4】本発明の一実施例で本発明の方法によるSFTS検出特異度分析のために陰性対照群として使用した細菌とウイルスを記載したリストである。
【
図5】本発明の一実施例で分析した各患者試料のSFTSウイルスのMセグメント塩基配列を基に製作したSFTSVの系統樹としてSFTSウイルスがウイルス遺伝子塩基配列によってKorea clade(K1~K4)、Japan clade(J1~J3)及びChina clade(C1~C4)に分類されることが確認できる。
【
図6】ダニを用いた実験で、6Aは、マダニ試料を対象として本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムRT-PCR分析によりSFTSV検出が可能であることを確認した結果であり、6Bは、RT-PCR分析結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルス遺伝子を迅速且つ正確に検出することができる新たな検出用組成物を提供することに特徴がある。
【0023】
本発明者等は、SFTS感染に対する正確且つ迅速な診断及び治療のためにSFTSウイルス特異遺伝子を検出することができる方法を研究していたところ、同定されたSFTSウイルスのSセグメント(Small segment;S segment)に特異的に結合してSFTSウイルスを高い感度と正確度で検出することができるプライマー及びプローブを発見した。
【0024】
一方、先に従来技術でも記述したように、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルスは、一本鎖RNAウイルスで、Bunyaviridaeと、phlebovirus属に属し、ウイルスゲノムは3つのセグメント(segment)から構成されている。SFTSウイルスの3つのセグメントは、RNA-dependent RNA polymerase、RdRpをコードするLセグメント(Large segment,L segment)、ウイルス膜タンパク質の構成成分であるglycoprotein(GnとGc)をコードするMセグメント(Medium segment,M segment)、ウイルス核タンパク質でSFTSウイルス由来のタンパク質のうち発現量が多く感染宿主をして細胞性免疫反応を誘発するnucleocapsid protein(NP)と免疫回避機能をするnonstructural S protein(NSs)をコードするSセグメント(Small segment,S segment)から構成されている。報告によると、BunyavirusesのSセグメント内でnonstructural S protein(NSs)は、ウイルスがヒトの先天的な抗ウイルス防御に対抗するようにすることから、NSタンパク質はウイルス感染において主な毒性決定因子の一つとしてよく知られている。
【0025】
本発明では、韓国の患者及び媒介体より分離されたSFTSウイルス遺伝子の3つのセグメントのうち、Sセグメント(Small segment,S segment)内でnonstructural S protein(NSs)遺伝子を特異的に検出することができるプライマー及びプローブを発掘するための実験を行い、各々異なる塩基配列で構成された多くのプライマー及びプローブの中でSFTSウイルス遺伝子に対して感度及び特異度が著しく優秀なプライマー及びプローブを発掘し、発掘されたプライマーをSFTS-S 583F プライマー(5-AGAGGMATGAGCTTGAAC-3;配列番号2)及びSFTS-S 653R プライマー(5-TCCCAACAGTCTAAYAGA-3;配列番号3)と命名し、上記プローブは、SFTS-S 602P プローブ(5-ACCACTTATTCACTTCTTCCTCATTGC-3;配列番号4)と命名した。
【0026】
ここで、上記MはA又はC塩基であってもよく、上記YはC又はT塩基であってもよい。
【0027】
したがって、本発明は、配列番号2及び配列番号3の塩基配列からなるプライマ一対;及び配列番号4の塩基配列からなるプローブ;を含む、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)ウイルス遺伝子検出用組成物を提供することに特徴がある。
【0028】
また、本発明で、上記プライマー及びプローブは、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)ウイルスのSセグメント(Small segment;S segment)のnonstructural S protein(NSs)遺伝子に特異的に結合することができ、上記Sセグメントは配列番号1からなる塩基配列を有する。
【0029】
また、本発明の実施例1では、SFTSウイルス遺伝子検出又は診断のために新たなプライマーとプローブをデザインした。実施例2では、実施例1でSFTSウイルス遺伝子検出又は診断のためにデザインしたプライマーとプローブを用いてリアルタイムRT-PCRを遂行し最適のプライマーとプローブを選別した。本発明で発掘した配列番号2及び配列番号3のプライマ一対及び配列番号4のプローブを用いてリアルタイムRT-PCRを遂行しSFTSウイルスの検出能を分析した結果、他の塩基配列で構成されたプライマー及びプローブに比べて本発明のプライマー及びプローブを用いた場合、感度及び特異度が最も優れており、ひいては、従来使用されているSFTSウイルス検出法に比べてもより優れた感度及び特異度を示すことにより、本発明が従来方法に比べてSFTSウイルス遺伝子をより高い正確度と感度で検出できることが分かった。
【0030】
本発明の実施例2では、配列番号2及び配列番号3のプライマ一対及び配列番号4のプローブを用いたリアルタイムRT-PCRを通して、71bpの大きさを有する配列番号5の塩基配列からなるSFTSウイルスのSセグメントの増幅産物を確認することができ、具体的に上記71bpの塩基配列は、agaggaatgagcttgaaccaccacttattcacttcttcctcattgcgtaagcctctattagactgttggga(配列番号5)である。
【0031】
また、本発明による上記SFTSウイルス遺伝子検出用組成物は、SFTSウイルスのSセグメントを特異的に高い感度及び正確度で検出することができる本発明のプライマー及びプローブを含む組成物であり、分析しようとする試料にSFTSウイルスの存否に対する分析だけでなく重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)の診断のための診断用組成物としても使用可能である。
【0032】
よって、本発明は、配列番号2及び配列番号3のプライマ一対;及び配列番号4のプローブ;を含む、重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome;SFTS)診断用組成物を提供することができる。
【0033】
上記本発明の検出用又は診断用組成物は、上で言及した本発明によるプライマ一対及びプローブ以外にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に使用可能な成分、例えば、反応用緩衝溶液、dNTP、Mg2+イオン、DNAポリメラーゼを含むことができる。
【0034】
上記反応用緩衝溶液は、1~10mM TrisHCl、10~40mM KCl(pH9.0)を使用することができ、上記dNTPは、dATP、dTTP、dGTP、dCTPのうち選択されたいずれか一つ以上を使用することができる。
【0035】
また、上記組成物は、実験上の便宜、安定化及び反応性の向上のために安定化剤及び/又は非反応性染料などを含むことができる。
【0036】
上記非反応性染料物質とは、ポリメラーゼ連鎖反応に影響を及ぼさない物質から選択されなければならず、ポリメラーゼ連鎖反応産物を用いた分析や識別のために使用されることを目的とする。このような条件を満たす物質としては、ローダミン、TAMRA、Lax、ブロモフェノールブルー、キシレンシアノール、ブロモクレゾールレッド、クレゾールレッドなどの水溶性染料が使用可能である。
【0037】
上記組成物は、液状形態で提供されることができ、安定性、保管の簡便性及び長期保管性の向上のために乾燥した状態であることが望ましい。上記乾燥は、一般的な常温乾燥、加温乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥のような公知の乾燥方法によって遂行されることができ、組成物の成分が損失されない限り、任意の乾燥方法は全て使用可能である。上記のような乾燥方法は、使用される酵素の種類及び量により相異なって適用されることができる。
【0038】
上記組成物は、一つの反応チューブ内で混合してから凍結または乾燥させて安定化された状態で製造し使用することにより、ポリメラーゼ連鎖反応中に別途の混合過程が必要ではないため、反応中の混合によるエラーを防止することができ、安定性、反応性及び保管性を向上させることができる。
【0039】
上記の組成物は、プライマ一対及びプローブを除いた残りの成分である反応用緩衝溶液、dNTP、Mg2+ イオン、DNAポリメラーゼが既に含有された市場販売製品を使用することができる。
【0040】
また、本発明は、上記本発明の組成物を含む、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)診断用キットを提供することができる。
【0041】
本発明による上記診断用キットには配列番号2及び配列番号3のプライマ一対;及び配列番号4のプローブ;を含んでいて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を非常に高い正確度で診断することができる。
【0042】
上記診断は、分析しようとする検体試料にSFTSウイルスが含まれているか否かを判別するためにポリメラーゼ連鎖反応法(polymerase chain reaction,PCR)を使用することができ、上記ポリメラーゼ連鎖反応は、一般的なポリメラーゼ連鎖反応、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(Reverse transcription polymerase chain reaction,RT-PCR)及びリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real-time polymerase chain reaction,real-time PCR)などを含む。
【0043】
本発明の診断キットは、本発明のプライマ一対及びプローブ以外にも、逆転写酵素、ポリメラーゼ、ポリメラーゼ連鎖反応のための鋳型DNA(template DNA)として相補的DNA(cDNA)、及びバッファーなどの反応試薬をさらに含むことができる。
【0044】
また、本発明の診断キットは、上記キットの使用方法を指示するマニュアルを含むことができる。
【0045】
本発明の一実施例によれば、本発明の診断キットは、一般的なポリメラーゼ連鎖反応又はリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応などに使用可能であるが、この場合、SFTSウイルスのRNAゲノムから逆転写酵素(reverse transcriptase)の作用を通した逆転写(reverse transcription)反応を別途遂行して相補的DNA(cDNA)を合成し、これをポリメラーゼ連鎖反応の鋳型DNAとして使用することができる。
【0046】
ポリメラーゼ連鎖反応の結果物は、アガロースゲル電気泳動(agarose gel electrophoresis)又はキャピラリー電気泳動(capillary electrophoresis)などの方法で分離することができ、使用されたプライマ一対によって重合されたDNAに該当する長さを有するDNAの存在を確認して重症熱性血小板減少症候群を診断することができる。
【0047】
また、本発明では、SFTSウイルス遺伝子に特異的に結合することができる配列番号4のプローブ(probe)を使用したが、上記プローブは各末端に蛍光物質及びクエンチャー(quencher)を結合させて使用することができる。具体的に、上記プローブの5’末端には蛍光物質が結合され、3’末端にはクエンチャーが結合されたものであってよく、プローブの5’末端には赤色、緑色、青色など特定波長を放出する蛍光物質が結合され、3’末端にはブラックホールクエンチャー(black hole quencher,BHQ)が結合されてもよい。蛍光物質とクエンチャーがプローブに結合されている状態ではクエンチャーが蛍光物質が放出する光を吸収するため蛍光信号が検出されない。その反面、DNAの合成及び伸長過程でDNAポリメラーゼのexonuclease activityによって結合されていた蛍光物質が分離されれば、蛍光信号を検出することができる。ポリメラーゼ連鎖反応が進行する間、このような蛍光信号をリアルタイムで測定することができ、増加した蛍光信号を基にウイルス遺伝子存否を判別することができる。このようなプローブの使用は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応に有用に使用可能である。
【0048】
さらに、本発明は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断方法を提供することができ、SFTS感染診断のための情報提供方法を提供することができる。
【0049】
望ましくは、上記重症熱性血小板減少症候群(SFTS)感染診断のための情報提供方法は、(1)重症熱性血小板減少症候群の感染が疑われる患者より分離された試料からウイルス性RNAを分離する段階;(2)上記RNAからcDNAを合成する段階;(3)上記段階(2)で合成したcDNAを鋳型として、実施例3で使用されたキットを用いてリアルタイムRT-PCR増幅を遂行する段階;及び(4)上記段階(3)を通して重症熱性血小板減少症候群ウイルスの遺伝子を確認する段階;を含む。
【0050】
上記試料はこれに制限されないが、哺乳動物から収得した血液、組織、細胞、血清、血漿、唾液、喀痰又は尿;又はマダニ;であってもよい。
【0051】
また、上記方法で重症熱性血小板減少症候群ウイルス遺伝子の確認は、キャピラリー電気泳動、DNAチップ、ゲル電気泳動、放射性測定、蛍光測定及びりん光測定からなる群から選択されるいずれか一つ以上の方法を通して遂行することができる。
【0052】
また、本発明の方法において、上記SFTSは、SFTSウイルスに感染して誘発される疾病を称する。
【0053】
以上、本発明で考案したSFTSウイルスのSセグメントに特異的に結合する配列番号2及び3のプライマ一対及び配列番号4のプローブを利用する場合、SFTSウイルスを高い感度と正確度で迅速に検出可能であるとの長所があり、下記本発明の実施例を通して実際にSFTSと疑われる患者の試料を対象として本発明のプライマー及びプローブを用いたリアルタイムRT-PCR分析法を遂行した結果、来院当時の患者の試料を対象とした分析で97%の高い感度と100%の特異度で迅速な診断が可能であることを確認しただけでなく、SFTS患者の病院来院が遅延した場合の感度を予測することができるSFTS疑い患者の入院全体期間中の採血検体を対象とした分析でも88%の高い感度と100%の特異度で正確度の優れた診断が可能であることを確認した。
【0054】
また、本発明の方法による上記のような診断正確度は、従来使用されていた診断方法を遂行した場合と他の種類のプライマーとプローブを用いた場合に比べて、著しく優れていることが分かった。
【0055】
よって、本発明で考案したSFTS検出用組成物を用いたSFTS感染診断方法及び感染診断のための情報提供方法は、SFTSを早期に迅速且つ正確に診断することができ、リアルタイムでSFTSウイルスの検出が可能であるため、発病から時間が相当経過した時点でも高い正確度で診断することができ、他疾患とSFTSの疾病を高い特異度で区別することができる。
【0056】
以下、実施例を通して本発明をより詳しく説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
SFTSウイルス遺伝子検出又は診断のためのプライマー及びプローブ製作
【0058】
本発明者等は、SFTSウイルスのSセグメント配列を対象として、重症熱性血小板減少症候群を迅速且つ正確に高い感度で検出することができる新たな診断用プライマー及びプローブを下記表2のようにデザインした。
【0059】
また、下記表2のプライマー及びプローブのデザインのために、下記表1A~表1Cに記載のSFTSウイルスのSセグメント配列を参考とした。
【0060】
表1A~表1C:韓国、中国及び日本の患者から同定されたSFTSウイルスのSセグメント(segment)に関する情報
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
表2:SFTSウイルス遺伝子検出のためにデザインしたプライマー及びプローブ
【0065】
【0066】
上記表でMはA又はC塩基であってもよく、上記YはC又はT塩基であってもよい。
【0067】
<実施例2>
SFTSウイルス遺伝子検出又は診断のための最適のプライマーとプローブ選別
【0068】
上記実施例1でデザインしたSFTSウイルス遺伝子検出又は診断のためのプライマーとプローブを対象としてリアルタイムRT-PCRを遂行し、感度及び特異度検査を遂行した。
【0069】
その結果、
図1に示したように、プラスミドDNA(SFTSウイルスのS segmentがクローニングされた組み換えベクターDNA)を用いて検出限界(Limit of Detection,LOD)を確認したとき、上記表2のプライマー及びプローブのうち、No.1のプライマー及びプローブを使用した場合、他のプライマー及びプローブを使用した群に比べてより優れた感度及び特異度を示し、また、既存のSFTSウイルス検出のための検査法に比べてもより優れた感度及び特異度を示した。具体的に、No.1のプライマー及びプローブを使用した場合、リアルタイムRT-PCR分析の結果、95%検出(LOD95%)が39.739copy/test(ct 40.3)と確認され、既存のSFTSウイルス検出用検査法遂行時には、96.332copy/test(ct 38.9)であり、本発明で考案したプライマー及びプローブを使用した場合、リアルタイムRT-PCRの感度がより高いことから、SFTSウイルス遺伝子の検出及び診断のために時間とコストをいずれも節約することができ、検出効果が優れていることが分かった。
【0070】
<実施例3>
患者から収得した試料を対象として本発明のSFTSウイルス遺伝子検出又は診断用プライマーとプローブを用いたSFTS検出能分析
【0071】
本発明者等は、本発明で考案したSFTSウイルス遺伝子検出又は診断用プライマーとプローブ(上記表1のNo.1のプライマー(SFTS-S 583F,653R プライマー)及びプローブ(SFTS-S 602P プローブ))が実際にSFTS感染を診断するのに使用可能か確認するために、次のような実験を遂行した。
【0072】
このために実験に使用した試料は下記3つを満たす患者から収得した試料を対象として分析した。
【0073】
1.満19歳以上の者
2.SFTS感染と考慮される者
症状発生後から研究参加評価時点までSFTS症状が客観的に確認された者であり、下記に該当する者
-発熱(腋窩温>37.8℃)
-血小板減少症(platelet<100 X 109/L)
-白血球減少症(WBC<5 X 109/L)
3.感染内科医によってSFTSが疑われる場合
【0074】
上の3つを満たす患者を対象としてSFTS RT-PCR検査を施行し、SFTSの確定診断は、IFA4倍以上上昇またはウイルス分離と定義して各々のPCR法を遂行し、正確度を評価した。
【0075】
また、感度確認検体は2018年度SFTS患者を対象として進められ、患者36人から119個の血液検体を収集して使用し、特異度確認のための検体は2008年から2018年の間に収集された検体でSFTSではない他疾患と確定診断された患者50人を対象として進められた。参考として、特異度検査のために陰性対照群として使用した病原体とウイルスのリストは、
図4に示した。
【0076】
感度及び特異度の比較のために他のPCRを施行したが、患者のplasma、WB(whole blood)からウイルスRNAを抽出し、上記抽出はウイルスGene-spinTMウイルスDNA/RNA抽出キット(intron)を用いて遂行した。以後、上記RNAからSuperScript VILO MasterMix(Invitrogen)を用いてcDNAを合成し鋳型DNAとして使用し、リアルタイムRT-PCRが次のように進められた。
【0077】
SFTSウイルスのSセグメントをターゲットとするリアルタイムRT-PCRは、本発明で考案したプライマー及びプローブを用いた方法と下記表3の従来開示された方法のPCRで各々進行し、Sセグメントをターゲットとするnested RT-PCR及びMセグメントをターゲットとするRT-PCRを遂行した。リアルタイムRT-PCRは、LightCycler TaqMan Master(Roche Diagnostics,Indianapolis)を使用し、96 Excycler(Bioneer)機器でPCRを遂行した。RT-PCRとnested RT-PCRは、Accupower PCR premix(Bioneer)とcDNAを用いてPCRを遂行した。遂行された各々のPCRの情報は、下記表4に示した通りである。
【0078】
表3:PCRに使用したプライマー、プローブ情報
【0079】
【0080】
表4:PCR遂行条件
【0081】
【0082】
表5:感度及び特異度結果
【0083】
【0084】
分析の結果、上記表5に示したように、他のPCR方法に比べて本発明で考案したプライマー及びプローブを用いて遂行したリアルタイムRT-PCR分析結果が感度及び特異度分析で最も優れた値を示したことから、検出効果が最も優れていることが分かり、既存の他の方法に比べて1~2時間の短い時間でSFTSウイルスを正確に診断及び検出できることが示されている。
【0085】
<実施例4>
本発明のSFTSウイルス遺伝子検出又は診断用プライマーとプローブを用いたSFTS検出正確度検証
【0086】
<4-1>来院当時の検体を用いたPCR診断法の正確度
来院当時の患者検体(血液)を対象として本発明で考案したSFTSウイルス遺伝子検出用プライマー及びプローブを用いたPCR分析法でSFTS検出に対する感度及び特異度検証分析を遂行した。
【0087】
表6:来院当時の検体を用いたPCR診断法の正確度
【0088】
【表6】
-SQ ref、リアルタイムRT-PCR(S-segment,reference);SQ design、リアルタイムRT-PCR(S-segment,design,本発明)
【0089】
表7:来院当時の検体を用いたPCR診断法の正確度の比較
【0090】
【表7】
-SQ ref、リアルタイムRT-PCR(S-segment,reference);SQ design、リアルタイムRT-PCR(S-segment,design,本願発明)
【0091】
その結果、上記表6及び
図2に示したように、SFTSのSセグメントをターゲットとしたリアルタイムRT-PCR分析の結果、本発明で考案したプライマー及びプローブを使用した群が他の種類のプライマー及びプローブを使用した群に比べて最も優れた感度及び特異度を示し、具体的に、感度97.2%及び特異度100%の結果を確認することができた。一方、Sセグメントをターゲットとしたnested RT-PCR分析では91.67%の感度結果を示したが、nested RT-PCRは二回のPCRを遂行しなければならない手間があり、これによるPCR汚染可能性がより高いことを考慮するとき、本発明のプライマー及びプローブを使用する方がより正確で優れた検査結果を導出できることが分かった。
【0092】
また、上記のような結果に対して、AUCを用いた各感度及び特異度の比較分析で、本発明で考案したプライマー及びプローブを用いたリアルタイムRT-PCR法がMセグメントをターゲットとしたconventional RT-PCRより統計的にも有意味に正確度が高いことが確認された(表7参照)。
【0093】
<4-2>SFTS疑い患者の入院期間中に採血した検体を対象として本発明のSFTSウイルス遺伝子検出又は診断用プライマーとプローブを用いたPCR診断法の正確度評価
【0094】
さらに、本発明者等は、本発明で考案したプライマー及びプローブを用いてSFTS疑い患者の入院期間中に患者から収得した血液検体を対象としてSFTS検出に対する感度及び特異度分析を遂行した。具体的に、SFTSの確定診断は、IFA4倍以上上昇またはウイルス分離及び確認と定義し、SFTS患者と確定診断された患者36人から119個の血液検体及び他疾患と確定診断された患者50人を対象として上記実施例<4-1>のような方法で正確度検査を遂行した。
【0095】
また、SFTS疑い患者の入院期間中に採血した検体を対象として分析を遂行したのは、普通、患者が症状は発生したが初期に来院せず遅く来院する場合が頻繁にあり、他の疾患と疑われて治療している途中にSFTSが疑われて入院期間中にSFTS PCR検査法を依頼する場合も多いが、このような場合、診断の感度が低くなる問題点があることから、入院期間中や又は遅く来院した患者の試料を対象としても高い感度と特異度でSFTSの診断が可能であることを確認するためである。
【0096】
表8:入院期間中の検体を用いたPCR診断法の正確度
【0097】
【表8】
-SQ ref、リアルタイムRT-PCR(S-segment,reference);SQ design、リアルタイムRT-PCR(S-segment,design,本発明)
【0098】
表9:入院期間中の検体を用いたPCR診断法の正確度の比較
【0099】
【表9】
-SQ ref、リアルタイムRT-PCR(S-segment,reference);SQ design、リアルタイムRT-PCR(S-segment,design,本発明)
【0100】
その結果、表8~表9及び
図3に示したように、SFTSのSセグメントをターゲットとし、本発明のプライマー及びプローブを用いて遂行したリアルタイムRT-PCR(本発明の方法)が既存のreal time RT-PCR法やnested RT-PCR法に比べて統計的に有意味に正確度がより高いことが示されており、他のプライマー及びプローブを使用した場合に比べてもより優れた感度を示している。
【0101】
<4-3>多様な病原体とウイルスを対象として本発明のSFTSウイルス遺伝子検出又は診断用プライマーとプローブを用いたPCR診断法の正確度分析
【0102】
本発明で考案したプライマー及びプローブを用いて
図4のバクテリア及びウイルスを対象として特異度を分析した。
【0103】
その結果、多様な疾病の原因であるバクテリアではいずれも陰性と確認され、また、SFTSVではない他のウイルスを対象とした場合、検出されず、デングウイルス、インフルエンザウイルス、A型肝炎ウイルス及びハンターンウイルス(Hantaan virus)に感染した患者の検体でいずれも検出されないことを確認した。
【0104】
したがって、このような結果を通して、本発明で考案したプライマー及びプローブは、SFTSウイルスに対して優れた特異度を示すことが分かり、他のバクテリア菌株及びウイルスに対しては増幅産物が検出されず、SFTSウイルスを特異的に検出できることが分かった。
【0105】
<実施例5>
韓国、日本及び中国系統群のSFTSウイルス検出可能性分析
【0106】
最近の研究結果によれば、各国別に発生する重症熱性血小板減少症候群の原因となるSFTSウイルスの遺伝子配列が互いに異なることが確認された。一方、未だ多様な系統群(clade)のSFTSウイルスを同時に検出することができる検出技術が開発されていないが、本発明者等は本発明で考案したプライマー及びプローブを用いる場合、各々多様な系統群のSFTSウイルスをいずれも検出できるかを確認するために次のような実験を遂行した。
【0107】
具体的に、SFTSウイルスは、ウイルス遺伝子塩基配列によって系統群分析するとき、Korea、Japan、China cladeに分類されるが、韓国のSFTS患者は3ヶ国cladeがいずれも確認されている。よって、下記表10A~表10Bのように各々異なる系統群のSFTSVに感染した患者の試料を対象として本発明のプライマー及びプローブを用いて上述された実施例で遂行されたリアルタイムRT-PCRを行った。また、本発明で使用したSFTSVの系統群及び各試料に対する分類は、
図5に示した。
【0108】
表10A~表10B:韓国、日本及び中国系統群のSFTSウイルス検出可能性分析
【0109】
【0110】
【表10B】
-C,Chinese clade;J,Japanese clade;K, Korean clade;SQ design、リアルタイムRT-PCR(S-segment,design,本発明)
【0111】
分析の結果、上記表10に示したように、3ヶ国cladeに感染したすべてのSFTS患者の試料で本発明のプライマー及びプローブを使用する場合、すべての増幅物を確認することができ、このような結果を通して本発明者等は、本発明で考案した方法が韓国、日本及び中国系統群のSFTSウイルスをいずれも検出できることが分かった。
【0112】
<実施例6>
ダニ試料を対象として本発明のSFTSウイルス遺伝子検出又は診断用プライマーとプローブを用いたSFTSの検出
【0113】
ダニにかまれて病院に来院した患者からマダニ55個を採取し、これらを対象として本発明のプライマー(配列番号2、3)とプローブ(配列番号4)を用いてSFTSVに対するRT-PCRを遂行した結果、54個のダニ試料からは陰性と確認され、1個のダニ試料からは陽性と確認された。Nested RT-PCR検査においても同様に54個のダニ試料からは陰性と確認され、1個のダニについてのみ陽性と確認され、本発明のリアルタイムRT-PCRを施行した結果においても同様に陽性と確認され、塩基配列分析の結果、SFTSウイルスと確認された(
図6参照)。
【0114】
したがって、このような結果を通して本発明者等は、本発明で考案したプライマー及びプローブは、ヒト由来の試料だけではなくダニ試料を対象としてもSFTSV検出が可能であることが分かり(SFTS SQ-PCR(ref)Ct 30.25値を示し、SFTS SQ-PCR(design)Ct 27.98値を示した)(
図6参照)、このような結果は、本発明のプライマー及びプローブを用いたRT-PCR分析結果を通してもSFTSV検出が可能であることが分かった(
図6参照)。
【0115】
以上の結果を通して、本発明者等は、重症熱性血小板減少症候群の原因ウイルスであるSFTSウイルスのSセグメント内でnonstructural S protein(NSs)遺伝子の塩基配列を検出及び増幅させることができる本発明で考案されたプライマー及びプローブを用いてリアルタイムRT-PCRを遂行する場合、韓国だけでなく中国及び日本で流行する遺伝型のウイルスによって発生する重症熱性血小板減少症候群も正確且つ迅速に検出でき、優れた正確度で診断できることが分かった。
【0116】
以上、本発明についてその望ましい実施例を中心に考察した。本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で具現され得ることを理解できるはずである。よって、開示されている実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点で考慮されなければならない。本発明の範囲は、上述の説明ではなく特許請求の範囲に示されており、それと同等な範囲内にある全ての差異点は本発明に含まれているものと解釈されなければならないと言える。
【配列表】