(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】手術支援装置
(51)【国際特許分類】
A61B 90/50 20160101AFI20231005BHJP
A61B 34/37 20160101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B90/50
A61B34/37
(21)【出願番号】P 2023521121
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014134
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 円朗
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-224243(JP,A)
【文献】特表2001-522688(JP,A)
【文献】特開2022-016327(JP,A)
【文献】特開2015-062734(JP,A)
【文献】特表2005-524440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0012798(US,A1)
【文献】米国特許第05571072(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/50 - 90/57
A61B 34/30 - 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の連結アームと前記連結アームに支持されたホルダーと前記連結アームが連結された固定ベースとを備え、
前記固定ベースは内部に所定の各部が配置されたベース本体と少なくとも一部がベース本体から突出され手術台に固定可能なクランパーとを有し、
前記クランパーの前記ベース本体に対する上下方向における位置が変更可能にされ
、
前記クランパーが前記ベース本体に着脱可能にされ、
前記クランパーに二つの被ロック部材が設けられ、
前記ベース本体に前記被ロック部材がそれぞれ係合され前記クランパーを前記ベース本体にロックする二つのロック部材が設けられ、
前記ロック部材が筒状に形成され、
前記被ロック部材が軸状に形成され、
前記被ロック部材が前記ロック部材に所定の位置まで挿通されることにより前記クランパーが前記ベース本体にロックされる
手術支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術台に固定可能な固定ベースを有する手術支援装置についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術支援装置を用いた外科手術が普及しつつある。このような手術支援装置は、順に回動可能又は回転可能に連結された複数の連結アームを備え、連結アームがアクチュエーター等の駆動力によって動作され、連結方向における一端に位置された連結アームに手術具を保持するためのホルダーが連結されているものがある。手術具としては内視鏡や鉗子等が手術の種類や状況に応じて使用される。
【0003】
手術支援装置において、複数の連結アームがそれぞれ所定の方向へ回動又は回転されると、連結アームの動作に伴って手術具の位置や姿勢が変化され、ホルダーに保持された手術具によって外科手術が行われる。
【0004】
上記のような手術支援装置を用いた外科手術は、一般に、手術室に設置された手術支援装置をマスタースレーブ方式により術者(医師)が遠隔から操作することによって行われる。このような外科手術が行われる際には、手術具の位置や姿勢の基準点とされるピボット点が設定される。
【0005】
ピボット点は患者の体腔に形成され手術具が挿入されるポートに略一致する位置であり、トロッカーが使用される場合にはトロッカーの位置に略一致される。従って、手術具が患者の体腔に挿入される状態においては、手術具の一部が常にピボット点を通るように手術具の位置や姿勢が制御され、手術具の一部がピボット点を通ることにより患者の体表付近の組織に対する負荷の発生が防止されて安全性が確保される。
【0006】
上記のような手術支援装置には、手術時に、クランパーによって手術台に固定された状態で使用されるものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。また、このような手術支援装置においては、クランパーによってスタンド(台車)に固定されスタンドが手術台の周囲に設置された状態で使用可能にされる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2021-78781号公報
【文献】特開2002-191545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、手術においては、患者の体型や術式等に応じ、使用される手術支援装置の望ましい高さが存在し、このような望ましい高さにおいて手術支援装置が使用されることにより使い勝手が高まり手術が適正かつ迅速に行われる。
【0009】
また、ベース本体がスタンドに固定された状態で使用される場合には、手術支援装置の各部が手術台に干渉することなくスタンドが可能な限り手術台に近付いた状態で使用され使い勝手が高められることも望まれる。
【0010】
そこで、本発明手術支援装置は、手術台に固定される状態とスタンドに固定される状態の何れの状態においても使い勝手の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る手術支援装置は、複数の連結アームと前記連結アームに支持されたホルダーと前記連結アームが連結された固定ベースとを備え、前記固定ベースは内部に所定の各部が配置されたベース本体と少なくとも一部がベース本体から突出され手術台に固定可能なクランパーとを有し、前記クランパーの前記ベース本体に対する上下方向における位置が変更可能にされ、前記クランパーが前記ベース本体に着脱可能にされ、前記クランパーに二つの被ロック部材が設けられ、前記ベース本体に前記被ロック部材がそれぞれ係合され前記クランパーを前記ベース本体にロックする二つのロック部材が設けられ、前記ロック部材が筒状に形成され、前記被ロック部材が軸状に形成され、前記被ロック部材が前記ロック部材に所定の位置まで挿通されることにより前記クランパーが前記ベース本体にロックされるものである。
【0012】
これにより、手術台に固定される状態とスタンドに固定される状態の何れの状態においてもクランパーのベース本体に対する上下方向における位置が変更可能にされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固定ベースが手術台に固定される状態とスタンドに固定される状態の何れの状態においてもクランパーのベース本体に対する上下方向における位置が変更可能にされるため、手術台に固定される状態において手術支援装置を最適な高さに設定することができ、スタンドに固定される状態においてクランパーを取り外して手術台に干渉しないようにすることができ、何れの状態においても使い勝手の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図2乃至
図9と共に本発明手術支援装置の実施の形態を示すものであり、本図は、手術支援装置の使用状態を示す概略斜視図である。
【
図3】手術支援装置がスタンドに設置された状態を示す斜視図である。
【
図4】クランパーがベース本体に固定される前の状態を示す断面図である。
【
図6】
図5とは異なる方向から見た状態で示すクランパーの斜視図である。
【
図7】クランパーがベース本体に固定される途中の状態を示す断面図である。
【
図8】クランパーがベース本体に固定された状態を示す断面図である。
【
図9】セパレーターと手術具が装着されたアダプターとを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明手術支援装置を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
【0016】
尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0017】
<手術支援装置等の概略構成>
先ず、手術支援装置1等の概略構成について説明する(
図1及び
図2参照)。
【0018】
手術室には手術台100が設置され、手術台100には患者200が、例えば、仰向けの状態で横たえられている。手術台100の側部には固定用レール100aが設けられている。患者200の体腔201、例えば、腹壁201aにはポート202が形成される。ポート202には外科手術が行われるときに後述する手術具の一部が挿入される。ポート202は手術具の一部が挿入される小孔である。
【0019】
手術支援装置1は装置本体2とホルダー3を有している。装置本体2の内部には、例えば、図示しない一つの電動モーターと図示しない複数の空気圧アクチュエーターとが配置されている。
【0020】
装置本体2は手術台100に固定可能にされた固定ベース4と固定ベース4に連結されたアーム体5とを有している。
【0021】
固定ベース4は内部に所定の各機構等が設けられた略直方体状のベース本体6とベース本体6に回転可能に支持された台座7と一部を除く部分がベース本体6から突出されたクランパー8とを有している。固定ベース4は台座7がベース本体6に垂直方向に延びる軸S1を支点として回転可能に支持されている。台座7は、例えば、電動モーターの駆動力によって固定ベース4に対して回転される。
【0022】
アーム体5は第1の連結アーム9と第2の連結アーム10と第3の連結アーム11を有している。尚、アーム体5における連結アームの数は三つに限られることはなく、複数であればよく、二つでも四つ以上であってもよい。
【0023】
第1の連結アーム9は長手方向における一端部が第1の連結部9aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部9bとして設けられている。第1の連結アーム9は第1の連結部9aが台座7に連結され、水平方向に延びる軸S2を支点として台座7に対して回動可能にされている。第1の連結アーム9は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより台座7に対して回動される。
【0024】
第2の連結アーム10は長手方向における一端部が第1の連結部10aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部10bとして設けられている。第2の連結アーム10は第1の連結部10aが第1の連結アーム9の第2の連結部9bに連結され、水平方向に延びる軸S3を支点として第1の連結アーム9に対して回動可能にされる。第2の連結アーム10は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより第1の連結アーム9に対して回動される。
【0025】
第3の連結アーム11は長手方向における一端部が第1の連結部11aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部11bとして設けられている。第2の連結部11bは、例えば、二つの腕部によって構成されている。第3の連結アーム11は第1の連結部11aが第2の連結アーム10の第2の連結部10bに連結され、軸S3に直交する方向に延びる軸S4を支点として第2の連結アーム10に対して回転可能にされる。第3の連結アーム11は、例えば、電動モーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10等の他の動作に応じて回転されるフリーな回転動作を行う部分である。
【0026】
ホルダー3は第3の連結アーム11の第2の連結部11bに回動可能に支持(連結)されている。ホルダー3は軸S4に直交する方向に延びる軸S5を支点として第3の連結アーム11に対して回動可能にされている。ホルダー3は、例えば、電動モーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10や第3の連結アーム11等の他の動作に応じて回動されるフリーな回動動作を行う部分である。
【0027】
ホルダー3は一部が回転可能にされ、回転されないベース筒部12とベース筒部12に回転可能に支持された回転部13とベース筒部12に取り付けられた連結筒部14とを有している(
図3参照)。
【0028】
回転部13は一部がベース筒部12と連結筒部14の内部に位置され、後端部がベース筒部12の後側に位置されている。回転部13はベース筒部12と連結筒部14に対して軸S5に直交する軸S6の軸回り方向へ回転可能にされている。回転部13は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより回転可能にされると共に手動によっても回転可能にされている。
【0029】
ホルダー3の内部には図示しないロック機構が配置されている。連結筒部14にはロック解除釦14aが配置されている。回転部13の後端部には切替釦13aが配置されている。切替釦13aは回転部13の回転を行うための駆動力を切り替える機能を有している。
【0030】
ホルダー3において、切替釦13aが操作されている状態においては回転部13が手動により回転可能にされる。一方、切替釦13aが操作されていない状態においては回転部13が空気圧アクチュエーターの駆動力により回転可能にされる。
【0031】
上記のように、手術支援装置1においては、軸S1から軸S6までの6軸で各部が回転可能又は回動可能な構成にされているため、ホルダー3に保持される手術具の向き及び位置(姿勢)の自由度が高く、手術を高い精度で迅速に行うことができる。特に、軸S4と軸S5においてフリーな回転動作又は回動動作が行われ軸S4と軸S5が直交するため、ポート202に挿入された手術具の向きや位置が変化されたときや患者200の呼吸状態等によりポート202の向きや位置が変化されたときに患者200の体表付近の組織に対する負荷を低減することができる。
【0032】
また、手術支援装置1においては、アーム体5の手術具から最も遠距離の位置における軸S1での回転が電動モーターの駆動力によって行われ軸S1より手術具に近い位置における軸S2と軸S3と軸S6での回転又は回動が空気圧アクチュエーターの駆動力によって行われる。
【0033】
従って、電動モーターの駆動力より患者200に対する負荷が小さい空気圧アクチュエーターの駆動力によって手術具に近い位置においてアーム体5の動作が行われるため、患者200の体表付近の組織に対する負荷を一層低減することができる。
【0034】
さらに、空気圧アクチュエーターの駆動力によるアーム体5の回転又は回動の箇所が電動モーターの駆動力によるアーム体5の回転の箇所より多くされていることによっても、患者200の体表付近の組織に対する負荷の低減を図ることができる。
【0035】
尚、手術支援装置1においては、電動モーター又は空気圧アクチュエーターに代えて高精度の位置決めが可能な圧電モーター等の超音波モーターが用いられていてもよい。超音波モーターが用いられることにより、手術支援装置1における省電力化や小型化を図ることが可能である。
【0036】
<固定ベースの具体的構成等>
以下に、固定ベース4の具体的な構成等について説明する(
図2乃至
図8参照)。
【0037】
上記したように、固定ベース4はベース本体6と台座7とクランパー8を有している(
図2及び
図3参照)。
【0038】
ベース本体6は略直方体状に形成された外筐15と外筐15の内部に配置された所定の各機構等とを有し、外筐15が前面部16と上面部17と一対の側面部18と図示しない下面部と図示しない後面部とによって構成されている(
図3及び
図4参照)。
【0039】
前面部16には複数の位置決め孔16aが形成されている。位置決め孔16aは、例えば、上下に離隔して三つが形成されている。前面部16には複数の配置孔16bが形成されている。配置孔16bは位置決め孔16aの左右方向における外側で稍下側に形成されている。従って、配置孔16bは位置決め孔16aの左右にそれぞれ三つずつが形成されている。
【0040】
尚、ベース本体6においては、位置決め孔16aの数は複数であれば任意であり、配置孔16bはそれぞれの位置決め孔16aの左右に一つずつが形成される。
【0041】
ベース本体6には一対の側面部18からそれぞれ外方に突出された固定用突部19が設けられている。固定用突部19は側面部18の上端寄りの位置に設けられている。
【0042】
ベース本体6には一部が配置孔16bに挿入されて配置されたロック部材20が設けられている(
図4参照)。ロック部材20は軸方向が前後方向にされた筒状に形成され、前端部が配置孔16bに挿入された状態にされている。ロック部材20の内部の空間は挿入孔21として形成されている。ロック部材20の内周面の軸方向における中間部には後方へ行くに従って径が大きくなる傾斜面が形成され、この傾斜面がロック用係合部20aとされている。挿入孔21はロック用係合部20aより前側の部分が後側の部分より径の小さい変位規制部21aとして形成されている。
【0043】
ベース本体6には後面部から図示しないエアー吸入管が突出されている。エアー吸入管は吸入チューブを介してコンプレッサーに接続される。従って、固定ベース4の内部にはコンプレッサーから圧縮空気が供給される。固定ベース4の内部に供給された圧縮空気は固定ベース4の内部を通ってアーム体5の内部へ向かい第1の連結アーム9と第2の連結アーム10とホルダー3を回動又は回転させる駆動力として用いられる。
【0044】
クランパー8はクランプベース22と下側クランプ部23とクランプレバー24と一対の被ロック部材25を有している(
図4乃至
図6参照)。
【0045】
クランプベース22は、前後に貫通された略矩形の枠状部26と、枠状部26の上端部から前方に突出された上側クランプ部27と、枠状部26の左右両側部からそれぞれ前方に突出された一対の支持板部28と、枠状部26の後端部から支持板部28の後端部に亘る部分からそれぞれ左右方向における外方に突出された一対の取付用突部29とを有している。
【0046】
上側クランプ部27には上下に貫通された図示しない螺孔が形成されている。上側クランプ部27の前端寄りの位置には下方及び側方に開口された上側挿入凹部27aが形成されている。
【0047】
支持板部28は前端が上側クランプ部27の前端より後方に位置されている。支持板部28には左右方向において内方に突出されたストッパー軸28aが設けられている。
【0048】
取付用突部29には前後に貫通された軸挿通孔30が形成され、軸挿通孔30は前側に位置された大径部31と後側に位置された小径部32とから成る(
図4参照)。取付用突部29には大径部31と小径部32の境界部分に前方を向く円環状の段差面33が形成されている。
【0049】
クランパー8には枠状部26から後方に突出された位置決めピン34が設けられている(
図6参照)。
【0050】
下側クランプ部23は上側クランプ部27の下側において一対の支持板部28に回動可能に支持されている。下側クランプ部23は一対の支持板部28間に位置された本体部35と本体部35から左右方向における外側に突出された一対の被支持軸部36とを有している。本体部35は扁平な形状に形成され、前端部に上方及び側方に開口された下側挿入凹部35aを有している。本体部35は後端部が被押圧部35bとして設けられている。下側クランプ部23は被支持軸部36が一対の支持板部28に支持されることにより被支持軸部36を支点としてクランプベース22に対して回動可能にされている。
【0051】
被支持軸部36は下側挿入凹部35aと被押圧部35bの間の部分から突出されている。被支持軸部36には捩じりコイルバネ37のコイル部37aが支持されている。捩じりコイルバネ37は一方の腕部37bが支持板部28に係合され他方の腕部37cが本体部35に係合されている。従って、下側クランプ部23は捩じりコイルバネ37の付勢力によって被押圧部35bが上側クランプ部27に近付く方向へ付勢されている。下側クランプ部23は本体部35が支持板部28のストッパー軸28aに接することにより捩じりコイルバネ37によって付勢された方向への回動が規制される。
【0052】
クランプレバー24は回転操作部24aと螺軸部24bによって構成され、螺軸部24bが回転操作部24aから下方に突出されている。螺軸部24bの外周面には螺溝が形成されている。
【0053】
クランプレバー24は螺軸部24bが上側クランプ部27を貫通された状態で螺孔に螺合され、螺軸部24bの下端が本体部35の被押圧部35bに上方から接した状態にされている。本体部35は捩じりコイルバネ37の付勢力によって被押圧部35bが螺軸部24bの下端に押し付けられている。従って、クランプレバー24の回転操作部24aが手動により回転操作されると、螺孔に螺合されている螺溝が螺軸部24bの軸方向へ送られ、螺軸部24bが回転操作部24aの回転方向に応じて上下動され、下側クランプ部23が被支持軸部36を支点としてクランプベース22に対して回動される。
【0054】
被ロック部材25は前後に延びる軸状に形成されている(
図6参照)。被ロック部材25は前端部を除く前側の略半分の部分が第1の挿入部38として設けられ後側の略半分の部分が第2の挿入部39として設けられている。第1の挿入部38は径が第2の挿入部39の径より大きくされ取付用突部29に形成された軸挿通孔30の大径部31の径より一回り小さくされている。第2の挿入部39は径が取付用突部29に形成された軸挿通孔30の小径部32の径より一回り小さくされロック部材20の変位規制部21aの径と略同じにされている。
【0055】
第2の挿入部39の後端寄りの部分には複数のロック球40が周方向に離隔して変位可能な状態で支持されている(
図4参照)。ロック球40は第2の挿入部39の径方向において変位可能にされ、第2の挿入部39から最も飛び出す飛出位置と第2の挿入部39の内部に最も引き込まれる引込位置との間で変位される。ロック球40は第2の挿入部39の内部に配置された図示しない付勢バネによって引込位置から飛出位置へ向かう方向へ付勢されている。
【0056】
上記のように構成された固定ベース4において、クランパー8はベース本体6に以下のようにして取り付けられる(
図4、
図7及び
図8参照)。
【0057】
先ず、クランパー8は位置決めピン34がベース本体6の位置決め孔16aに挿入され、ベース本体6に対して位置決めされる。このとき位置決めピン34は上下に離隔して形成された何れか一つの位置決め孔16aに挿入されるため、クランパー8をベース本体6に対して必要に応じた高さに取り付けることが可能である。
【0058】
クランパー8がベース本体6に位置決めされた状態においては、取付用突部29に形成された軸挿通孔30がロック部材20の挿入孔21に前後で一致される(
図4参照)。
【0059】
次に、一対の被ロック部材25がそれぞれ取付用突部29に形成された軸挿通孔30とロック部材20の挿入孔21に順に挿入される。被ロック部材25が軸挿通孔30から挿入孔21に挿入され第2の挿入部39が挿入孔21の変位規制部21aに位置されると、飛出位置にあったロック球40が変位規制部21aによって飛出位置へ向けての変位が規制され付勢バネの付勢力に反して引込位置へ向けて変位される(
図7参照)。被ロック部材25が軸挿通孔30のさらに奥側へ挿入されると、第1の挿入部38の後面が軸挿通孔30の段差面33に近接又は当接され、ロック球40が変位規制部21aの後側に位置されて変位の規制が解除され付勢バネの付勢力によって飛出位置へ向けて変位されロック用係合部20aに係合される(
図8参照)。従って、ロック部材20によってクランパー8がベース本体6にロックされる。
【0060】
ロック球40が変位規制部21aの後側に位置されてロック用係合部20aに係合されるときには、ロック球40の変位が操作者の指に伝達され、操作者においてロック部材20によるクランパー8のベース本体6に対するロックが完了したことが認識される。また、ロック球40がロック用係合部20aに係合されるときにロック球40の変位に伴い音が生じる構成にされていてもよく、この場合には操作者において音の聞き取りによりロック部材20によるクランパー8のベース本体6に対するロックが完了したことが認識される。
【0061】
上記のように、手術支援装置1においては、クランパー8に二つの被ロック部材25が設けられ、ベース本体6に被ロック部材25がそれぞれ係合されクランパー8をベース本体6にロックする二つのロック部材20が設けられている。
【0062】
従って、一方の被ロック部材25のロック部材20に対する係合が解除された状態でも他方の被ロック部材25がロック部材20に係合されクランパー8がベース本体6に保持された状態になるため、クランパー8のベース本体6からの不用意な脱落を防止することができる。
【0063】
また、ロック部材20が筒状に形成され、被ロック部材25が軸状に形成され、被ロック部材25がロック部材20に所定の位置まで挿通されることによりクランパー8がベース本体6にロックされる。
【0064】
従って、クランパー8は被ロック部材25がロック部材20に挿通されることによりベース本体6にロックされるため、クランパー8のベース本体6に対するロック作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0065】
一方、クランパー8のベース本体6からの取り外しは、被ロック部材25を挿入孔21と軸挿通孔30から引き出してロック球40のロック用係合部20aへの係合を解除し、位置決めピン34を位置決め孔16aから引き出すことにより行うことができる。
【0066】
尚、ロック部材20の内周面の一部と被ロック部材25の外周面の一部とに互いに螺合される螺溝部が形成され、両者の螺溝部が螺合された状態で被ロック部材25がロック部材20に対して回転されて被ロック部材25がロック部材20に対して軸方向へ移動される構成にされていてもよい。
【0067】
<セパレーターの構成等>
続いて、ホルダー3に取り付けられるセパレーター41の構成等について説明する(
図1、
図2及び
図9参照)。
【0068】
ホルダー3にはセパレーター41が着脱可能にされている。セパレーター41は略円板状の取付部42と取付部42の厚み方向における一方の面から突出された挿通部43と取付部42の厚み方向における他方の面から突出された一対の係合部44とを有している。セパレーター41は挿通部43がホルダー3の前端部に挿入されてホルダー3にロック機構によってロックされた状態で取り付けられる。セパレーター41はホルダー3のロック解除釦14aが操作されることによりホルダー3に対するロックの解除が可能にされている。
【0069】
セパレーター41にはアダプター45が着脱可能にされている。アダプター45は、例えば、第1の部材46と第2の部材47が上下で結合されて成り、後端部がセパレーター41に係合されて取り付けられる被取付部48として設けられている。
【0070】
アダプター45には手術具80が装着される。手術具80は、例えば、内視鏡を有するスコープユニットとして設けられ、内部に複数のレンズが配置されたシャフト部81とシャフト部81の一端部に結合されたヘッド部82とシャフト部81の中間部に結合されたライトガイド83とを有している。ヘッド部82の内部には図示しない撮像素子が配置されている。
【0071】
ヘッド部82には信号線や電源線である図示しないケーブルが接続され、ライトガイド83には光を導くための図示しないライドガイドケーブルが接続される。
【0072】
手術具80はヘッド部82が第1の部材46と第2の部材47によって上下から挟持されることによりアダプター45に保持される。手術具80を保持したアダプター45は被取付部48が一対の係合部44間に挿入されて取付部42と係合部44に係合されることによりセパレーター41に取り付けられる。従って、手術具80はアダプター45とセパレーター41を介してホルダー3に保持される。
【0073】
手術具80はシャフト部81の少なくとも先端部が患者200に形成されたポート202から体腔201の内部に挿入される。シャフト部81の先端部が体腔201の内部に挿入された状態において、シャフト部81の先端部から照明光が照射され、撮像素子によって体腔201の内部の状態が撮影される。
【0074】
<スタンドの構成等>
次いで、固定ベース4が固定されるスタンド50の構成等について説明する(
図3参照)。
【0075】
手術支援装置1は、例えば、固定ベース4が台車としても利用可能なスタンド50に設置され、スタンド50によって滅菌室に搬送されて滅菌処理が行われた状態で手術室に搬送されて手術において使用可能にされる。
【0076】
スタンド50は複数の車輪51が支持された車台52と車台52に連結された連結ベース53と連結ベース53に連結された装置固定部54とを有している。連結ベース53と装置固定部54は車台52の上側に位置され、装置固定部54は連結ベース53に対する上下方向への位置の調整が可能にされている。従って、スタンド50においては、装置固定部54の高さを調整することにより手術支援装置1の高さを変更することができる。
【0077】
装置固定部54は上側の部分が下側の部分に対して後側に屈曲され、後側に屈曲された部分が使用者(搬送者)によって把持されるハンドル部54aとされている。装置固定部54にはハンドル部54aより下側に前方に突出された一対の固定用アーム部54bが左右に離隔して設けられている。
【0078】
固定ベース4のスタンド50への固定は、例えば、側面部18から外方に突出された一対の固定用突部19にそれぞれ固定部材55が取り付けられ、固定部材55が固定用アーム部54bに締結具56によって締結されることにより行われる。
【0079】
固定ベース4がスタンド50に固定され手術支援装置1がスタンド50に設置された状態においては、クランパー8がベース本体6を挟んでハンドル部54aと反対側に位置される。
【0080】
<手術支援装置の使用状態等>
次に、手術支援装置1の使用状態等について説明する(
図1及び
図3参照)。
【0081】
手術支援装置1は、手術時に固定ベース4がクランパー8によって手術台100の固定用レール100aに固定された状態で使用可能にされている(
図1参照)。
【0082】
クランパー8は、上記したように、高さの異なる位置決め孔16aと挿入孔21を有しているため、位置決めピン34と被ロック部材25がそれぞれ何れかの位置決め孔16aと挿入孔21に挿入されており、クランパー8がベース本体6に対して必要に応じた高さに取り付けられてロックされている。
【0083】
クランパー8による固定用レール100aへの固定は、上側クランプ部27と下側クランプ部23の間に固定用レール100aが挿入された状態において、クランプレバー24が一方向へ回転操作されることにより行われる。クランプレバー24が回転操作されると、下側クランプ部23が一対の被支持軸部36を支点としてクランプベース22に対して下側挿入凹部35aが上側クランプ部27に近付く方向へ回動される。従って、上側クランプ部27の上側挿入凹部27aと下側クランプ部23の下側挿入凹部35aとの間に固定用レール100aが挿入されて上側クランプ部27と下側クランプ部23によって固定用レール100aが挟持されることにより固定ベース4がクランパー8によって固定用レール100aに固定される。
【0084】
一方、クランプレバー24が上記とは反対方向へ回転操作されて下側クランプ部23が回動されることにより、クランパー8を固定用レール100aから取り外して固定ベース4の固定用レール100aに対する固定状態を解除することができる。
【0085】
また、手術支援装置1は、上記したように、手術時に固定ベース4がスタンド50に固定された状態においても使用可能にされている(
図3参照)。固定ベース4がスタンド50に固定された状態において手術支援装置1が使用される場合には、可能な限り手術支援装置1が手術台100に近付いた状態で使用されることが望ましい。
【0086】
手術支援装置1においては、ベース本体6にクランパー8が着脱可能にされており、固定ベース4がスタンド50に固定された状態において手術支援装置1が使用される場合にはクランパー8が不要であるため、この場合にクランパー8をベース本体6から取り外して手術支援装置1を使用することが可能である。従って、ベース本体6から突出されるクランパー8が取り外されることにより、その分、手術支援装置1とスタンド50を手術台100に近付けることが可能である。
【0087】
また、手術時に固定ベース4がスタンド50に固定された状態において、クランパー8を手術台100に干渉しない位置、例えば、最も高さの低い位置にクランパー8を取り付けて手術支援装置1を使用することが可能であり、クランパー8を取り外して手術支援装置1を使用することも可能である。
【0088】
<まとめ>
以上に記載した通り、手術支援装置1においては、固定ベース4は内部に所定の各部が配置可能なベース本体6と少なくとも一部がベース本体6から突出され手術台100に固定されるクランパー8とを有し、クランパー8のベース本体6に対する上下方向における位置が変更可能にされている。
【0089】
従って、固定ベース4が手術台100に固定される状態とスタンド50に固定される状態の何れの状態においてもクランパー8のベース本体6に対する上下方向における位置が変更可能である。これにより、固定ベース4が手術台100に固定される状態において手術支援装置1を最適な高さに設定することができると共にスタンド50に固定される状態においてクランパー8を取り外して手術台100に干渉しないようにすることができ、何れの状態においても手術支援装置1の使い勝手の向上を図ることができる。
【0090】
尚、上記にはクランパー8がベース本体6にロック部材20等によってロックされる例を示したが、例えば、モーターの駆動等によってクランパー8がベース本体6に対して上下方向へ移動可能にされてもよい。また、例えば、ボールネジを有する回転操作部等が用いられ、手動により回転操作部が回転操作されることによりクランパー8がベース本体6に対して上下方向へ移動可能にされてもよい。
【0091】
また、クランパー8がベース本体6に着脱可能にされているため、クランパー8をベース本体6から外した状態でベース本体6をスタンド50に固定して手術支援装置1を手術において使用したときに手術台100にクランパー8が干渉することがないため、手術支援装置1を手術台100に近付けて使用することが可能になり、手術支援装置1の一層の使い勝手の向上を図ることができる。
【0092】
尚、クランパー8をベース本体6から外した状態でベース本体6をスタンド50に固定して手術支援装置1を手術において使用する場合には、スタンド50の高さ調整機構によって手術支援装置1の高さを患者200の体型や手術の方式等により変更することが可能である。また、クランパー8をベース本体6に取り付けた状態でクランパー8を手術台100の固定用レール100aに固定して手術支援装置1を手術において使用する場合には、クランパー8のベース本体6に対する取付位置を調整することによって手術支援装置1の高さを患者200の体型や手術の方式等により変更することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
100 手術台
1 手術支援装置
3 ホルダー
4 固定ベース
6 ベース本体
8 クランパー
9 第1の連結アーム
10 第2の連結アーム
11 第3の連結アーム
20 ロック部材
20a ロック用係合部
25 被ロック部材
【要約】
複数の連結アームと連結アームに支持されたホルダーと連結アームが連結された固定ベースとを備え、固定ベースは内部に所定の各部が配置されたベース本体と少なくとも一部がベース本体から突出され手術台に固定可能なクランパーとを有し、クランパーのベース本体に対する上下方向における位置が変更可能にされた。これにより、固定ベースが手術台に固定される状態とスタンドに固定される状態の何れの状態においてもクランパーのベース本体に対する上下方向における位置が変更可能にされる。