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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】手術支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B34/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023521126
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2022015040
【審査請求日】2023-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 貴皓
(72)【発明者】
【氏名】山本 円朗
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-003531(JP,A)
【文献】米国特許第06331181(US,B1)
【文献】特開2020-039434(JP,A)
【文献】特開2021-153858(JP,A)
【文献】特開2012-213426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術具を装着する装着部と、
前記装着部に装着された手術具の位置又は姿勢を変化させる多関節アームと、
前記多関節アームを駆動する少なくとも一つのアクチュエーターと、
制御プログラムに基づいて前記アクチュエーターの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記装着部に前記手術具が装着された状態で前記手術具の重量又は重心を測定し測定した結果に応じた制御プログラムの内容に変更する
手術支援装置。
【請求項2】
異なる重量範囲ごとに制御プログラムの内容が対応付けられており、
前記制御部は、前記装着部に前記手術具が装着された状態で前記手術具の重量を測定し測定した重量が含まれる重量範囲の制御プログラムの内容に変更する
請求項1に記載の手術支援装置。
【請求項3】
前記アクチュエーターとして、空気圧アクチュエーターを備え、
前記制御部は、前記装着部に前記手術具が装着された状態での前記空気圧アクチュエーターの圧力情報から前記手術具の重量を測定し測定した重量に対応する制御プログラムの内容に変更する
請求項1又は請求項2に記載の手術支援装置。
【請求項4】
パラメータセットを複数記憶する記憶部を備え、
前記制御部で起動される制御プログラムが参照するパラメータセットが切り替えられることで前記制御部における制御プログラムの内容が変更される
請求項1から請求項3のいずれかに記載の手術支援装置。
【請求項5】
制御プログラムを複数記憶する記憶部を備え、
前記制御部で起動する制御プログラムが切り替えられることで前記制御部における制御プログラムの内容が変更される
請求項1から請求項3のいずれかに記載の手術支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術具を装着する機能を備えた手術支援装置についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、手術支援装置を用いた外科手術が普及しつつある。このような手術支援装置は、内視鏡や鉗子等の手術具を装着するとともに、手術具の位置や姿勢を変えるための複数の可動体を備えている。
下記特許文献1,2,3に各種の手術支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-228922号公報
【文献】特開2003-284726号公報
【文献】特開平6-63003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば装着部によって手術具を装着した状態で、多関節アームを駆動する手術支援装置がある。例えば鉗子や内視鏡としてのスコープなど様々な手術具が多関節アームによって移動される。
ここで、各種の手術具は、その種類によって様々な重量、重心位置のものがある。また同じ種類の手術具、例えば同じ内視鏡であっても、重量は様々である。
【0005】
ところが重量が多様であると、多関節アームの駆動制御が目的の動作に適合しにくい状況が生ずる。例えば或る重量の内視鏡に適合してトルクや移動速度などを設定した制御プログラムに基づいて駆動制御を行った場合に、重量の重い内視鏡を装着したときに、位置が下がり気味になったり、移動時の慣性モーメントの違いにより、変動量に差が生じたりする。これにより高度な動作精度が維持できなくなるおそれがある。
【0006】
そこで本発明では、装着された手術具に適応した駆動制御を実現できるようにする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の手術支援装置は、手術具を装着する装着部と、前記装着部に装着された手術具の位置又は姿勢を変化させる多関節アームと、前記多関節アームを駆動する少なくとも一つのアクチュエーターと、制御プログラムに基づいて前記アクチュエーターの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記装着部に手術具が装着された状態で重量又は重心を測定し測定した結果に応じた制御プログラムの内容に変更するものとする。
すなわち装着部に装着する手術具による多関節アームの動作における負荷や慣性モーメントの違い等に対応するように制御プログラムの内容が変化されるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装着された手術具に応じて制御プログラムの内容を、その手術具に適合する状態に変化させることができる。従って、各種の手術具に適合して駆動制御の精度を高めることができ、安全性の高い手術支援装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態の手術支援装置の説明図である。
図2】実施の形態の手術支援装置の多関節アームの説明図である。
図3】実施の形態の手術支援装置の制御構成のブロック図である。
図4】実施の形態のプログラム設定処理のフローチャートである。
図5】実施の形態のパラメータセットの設定の説明図である。
図6】実施の形態プログラムモジュールの設定の説明図である。
図7】実施の形態の手動によるプログラム設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
手術支援装置の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
以下に示した実施の形態は、本発明に用いられる手術支援装置を手術台に固定されて使用されるタイプに適用した例を示す。但し、本発明に用いられる手術支援装置は適用範囲が手術台に固定されて使用されるタイプに限られることはなく、手術室の床等に設置されて使用されるタイプや手術室の天井や壁面に取り付けられて使用されるタイプにも適用することができる。
【0011】
尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0012】
<手術支援装置等の概略構成>
先ず図1及び図2により、複数のアーム等によって多関節アームとしての構成が形成された手術支援装置1について説明する。
【0013】
手術室には手術台100が設置され、手術台100には患者200が、例えば、仰向けの状態で横たえられている。手術台100の側部には固定用レール100aが設けられている。患者200の体腔201、例えば、腹壁201aにはポート202が形成される。ポート202には外科手術が行われるときに後述する手術具80の一部(先端部)が挿入される。ポート202は手術具80の一部が挿入される小孔である。
【0014】
手術支援装置1は装置本体2とホルダー3を有している。装置本体2の内部には、例えば、図示しない一つの電動アクチュエーターと図示しない複数の空気圧アクチュエーターとが配置されている。
【0015】
装置本体2は手術台100に固定される固定ベース4と固定ベース4に回転可能に支持された台座5と台座5に支持されたアーム体6とを有している。
【0016】
固定ベース4は内部に所定の各機構等が設けられた略直方体状のベース部7とベース部7から突出されたクランパー8とを有している。クランパー8は上側クランプ部8aと下側クランプ部8bを有し、上側クランプ部8aと下側クランプ部8bの少なくとも一方が上下に移動可能にされている。
【0017】
ベース部7にはクランパー8が設けられた面と反対側の面から図示しないエアー吸入管が突出されている。エアー吸入管は吸入チューブを介してコンプレッサーに接続される。従って、固定ベース4の内部にはコンプレッサーから圧縮空気が供給される。固定ベース4の内部に供給された圧縮空気は固定ベース4の内部を通ってアーム体6の内部へ向かいアーム体6を動作させる駆動力として用いられる。
【0018】
手術支援装置1はクランパー8の上側クランプ部8aと下側クランプ部8bが固定用レール100aを上下から挟持することにより手術台100に固定される。
【0019】
尚、手術支援装置1は、例えば、固定ベース4が図示しない台車に取り付けられることにより台車によって搬送され、滅菌室に搬送されて滅菌処理が行われた状態で手術室に搬送されて手術において使用される。
【0020】
台座5は固定ベース4に垂直方向に延びる軸S1を支点として回転可能に支持され、一部が固定ベース4の上面より上方に位置されている。台座5は、例えば、電動アクチュエーターの駆動力によって固定ベース4に対して回転される。
【0021】
アーム体6は第1の連結アーム9と第2の連結アーム10と第3の連結アーム11を有している。尚、アーム体6における連結アームの数は三つに限られることはなく、複数であればよく、二つでも四つ以上であってもよい。
【0022】
第1の連結アーム9は長手方向における一端部が第1の連結部9aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部9bとして設けられている。第1の連結アーム9は第1の連結部9aが台座5に連結され、水平方向に延びる軸S2を支点として台座5に対して回動可能にされている。第1の連結アーム9は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより台座5に対して回動される。
【0023】
第2の連結アーム10は長手方向における一端部が第1の連結部10aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部10bとして設けられている。第2の連結アーム10は第1の連結部10aが第1の連結アーム9の第2の連結部9bに連結され、水平方向に延びる軸S3を支点として第1の連結アーム9に対して回動可能にされる。第2の連結アーム10は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより第1の連結アーム9に対して回動される。
【0024】
第3の連結アーム11は長手方向における一端部が第1の連結部11aとして設けられ、長手方向における他端部が第2の連結部11bとして設けられている。第2の連結部11bは、例えば、二つの腕部によって構成されている。第3の連結アーム11は第1の連結部11aが第2の連結アーム10の第2の連結部10bに連結され、軸S3に直交する方向に延びる軸S4を支点として第2の連結アーム10に対して回転可能にされる。第3の連結アーム11は、例えば、電動アクチュエーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10等の他の動作に応じて回転されるフリーな回転動作を行う部分である。
【0025】
ホルダー3は第3の連結アーム11の第2の連結部11bに回動可能に支持(連結)されている。ホルダー3は外形状が略円柱状に形成され、長手方向(軸方向)における中間部において第2の連結部11bに連結されている。ホルダー3は軸S4に直交する方向に延びる軸S5を支点として第3の連結アーム11に対して回動可能にされている。ホルダー3は、例えば、電動アクチュエーターや空気圧アクチュエーターの駆動力等の外部からの駆動力によっては回転されず、自重や第1の連結アーム9や第2の連結アーム10や第3の連結アーム11等の他の動作に応じて回動されるフリーな回動動作を行う部分である。
【0026】
ホルダー3は一部が回転可能にされ、回転されないベース筒部12とベース筒部12に回転可能に支持された回転部13とベース筒部12に取り付けられた連結筒部14とを有している。連結筒部14にはロック解除釦14bが配置されている。
回転部13は、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気によって動作される空気圧アクチュエーターにより回転可能にされると共に手動によっても回転可能にされている。
【0027】
操作部16には切替釦16aが配置されている。切替釦16aは回転部13の回転を行うための駆動力を切り替える機能を有している。
【0028】
ホルダー3において、切替釦16aが操作されている状態においては回転部13が手動により回転可能にされる。一方、切替釦16aが操作されていない状態においては回転部13が空気圧アクチュエーターの駆動力により回転可能にされる。
【0029】
手術支援装置1の使用者、例えば、医師や補助者等により操作部16が手動により回転されることによって、回転部13がベース筒部12と連結筒部14に対して回転される。
【0030】
ホルダー3にはセパレーター30が着脱可能にされている。
セパレーター30にはアダプター36が着脱可能にされている。アダプター36は手術具80を保持する機能を有している。
【0031】
アダプター36は、例えば、アッパーケース37とロアーケース38が上下で結合されて成り、一端部がセパレーター30に係合されて取り付けられる。
【0032】
手術具80は、例えば、内視鏡を有するスコープユニットとして設けられ、内部に複数のレンズが配置されたシャフト部81とシャフト部81の一端部に結合されたカメラヘッド82とシャフト部81の中間部に結合されたライトガイド83とを有している。カメラヘッド82の内部には図示しない撮像素子が配置されている。
【0033】
カメラヘッド82には図示しない信号線や電源線であるケーブルが接続され、ライトガイド83には光を導くための図示しないライドガイドケーブルが接続される。
【0034】
手術具80はシャフト部81の先端部が患者200に形成されたポート202から体腔201の内部に挿入される。シャフト部81の先端部が体腔201の内部に挿入された状態において、シャフト部81の先端部から照明光が照射され、撮像素子によって体腔201の内部の状態が撮影される。
【0035】
手術具80はカメラヘッド82がアッパーケース37とロアーケース38によって上下から挟持されることによりアダプター36に保持される。手術具80を保持したアダプター36は被取付部36aが係合部33に係合されることによりセパレーター30に取り付けられる。従って、手術具80はアダプター36とセパレーター30を介してホルダー3に保持される。
【0036】
上記のように、手術支援装置1においては、軸S1から軸S6までの6軸で各部が回転可能又は回動可能な多関節アームを有する構成にされているため、ホルダー3に保持される手術具80の向き及び位置の自由度が高く、手術を高い精度で迅速に行うことができる。特に、軸S4と軸S5においてフリーな回転動作が行われ軸S4と軸S5が直交するため、ポート202に挿入された手術具80の向きや位置が変化されたときや患者200の呼吸状態等によりポート202の向きや位置が変化されたときに患者200の体表付近の組織に対する負荷を低減することができる。
【0037】
また、手術支援装置1においては、アーム体6の手術具80から最も遠距離の位置における軸S1での回転が電動アクチュエーターの駆動力によって行われ軸S1より手術具80に近い位置における軸S2と軸S3と軸S6での回転又は回動が空気圧アクチュエーターの駆動力によって行われる。
【0038】
従って、電動アクチュエーターの駆動力より患者200に対する負荷が小さい空気圧アクチュエーターの駆動力によって手術具80に近い位置においてアーム体6の回転又は回動が行われるため、患者200の体表付近の組織に対する負荷を一層低減することができる。
【0039】
さらに、空気圧アクチュエーターの駆動力によるアーム体6の回転又は回動の箇所が電動アクチュエーターの駆動力によるアーム体6の回転の箇所より多くされていることによっても、患者200の体表付近の組織に対する負荷の低減を図ることができる。
【0040】
尚、手術支援装置1においては、電動アクチュエーター又は空気圧アクチュエーターに代えて高精度の位置決めが可能な圧電モーター等の超音波モーターが用いられていてもよい。また、超音波モーターが用いられることにより、手術支援装置1における省電力化や小型化を図ることも可能である。
【0041】
<手術支援装置の制御構成>
例えば以上のような手術支援装置1における多関節アームの制御構成を図3に示す。特に図3は、上述の第1の連結アーム9を駆動する第1の空気圧アクチュエーター41、第2の連結アーム10を駆動する第2の空気圧アクチュエーター42、ホルダー3の回転部13を駆動する第3の空気圧アクチュエーター43、及び台座5を駆動する電動アクチュエーター44の駆動制御を行う構成である。
【0042】
手術支援装置1は、駆動制御を行う構成として、制御部50、操作部51、検出部52、ストレージ部53、駆動部54、駆動部55を備えている。
【0043】
駆動部54は第1,第2,第3の空気圧アクチュエーター41,42,43を駆動制御する。すなわち駆動部54は制御部50からの駆動指示による応じて、第1,第2,第3の空気圧アクチュエーター41,42,43のそれぞれに必要な駆動量の駆動を実行させる駆動信号を出力する。これにより手術支援装置1の使用者(例えば医師/術者)の操作に応じた必要な回動を第1の連結アーム9、第2の連結アーム10、回転部13に実行させる。
【0044】
駆動部55は電動アクチュエーター44を駆動制御する。すなわち駆動部54は制御部50からの駆動指示による応じて、電動アクチュエーター44に必要な駆動量の駆動を実行させる駆動信号を出力する。これにより使用者の操作に応じた必要な回動を台座5に実行させる。
【0045】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等のメモリ部や、インタフェース部などを備えたマイクロコンピュータにより構成される。制御部50は、ユーザの操作やプログラムに応じて駆動部54,55に必要な駆動指示を出力する。
【0046】
ストレージ部53は、例えば不揮発性メモリによる記録媒体に対して記録再生を行う。具体的な形態としては、例えばストレージ部53は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などとして実現される。或いはストレージ部53は、固体メモリチップとして構成されてもよいし、フラッシュメモリとその書込/読出回路として構成されてもよい。
ここでは、ストレージ部53は、制御部50のCPUで用いる各種プログラムモジュールや、パラメータセットが格納されるものとしている。
【0047】
操作部51は、術者が各種操作入力を行うための入力デバイスを総括して示している。例えば多関節アームに装着された手術具80の先端部の姿勢や位置の操作を行うコントローラや内視鏡の撮影ボタンなどがある。
また操作部51には、各種の設定操作などのために図示しないモニタ表示パネルに設けられたタッチパネルや、タッチパッドも含む。
また操作部51は遠隔操作ユニットとされてもよい。
【0048】
操作部51によるユーザの操作情報は制御部50に伝達される。
制御部50は操作情報に応じた動作が行われるように、各アクチュエーターの動作量(回動量)を求め、駆動部54,55に指示する。
【0049】
検出部52は、多関節アームに搭載される各種のセンサを包括的に示している。検出部52としては、例えば速度センサ、加速度センサ、重量センサ等が想定される。またIMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)が搭載され、例えばピッチ-、ヨー、ロールの3軸の角速度(ジャイロ)センサで角速度を検出することができるようにしてもよい。
【0050】
これらは、ホルダー3(アダプター36)に装着される手術具80の重量或いは重心を検知するために備えられる。重量センサによって直接的に手術具80の重量を検出してもよいし、例えば手術具80を装着した状態で多関節アームに所定の動きを実行させ、慣性モーメントのセンシング情報を得ることや、加速度を発生させて各関節の負荷を計測することで手術具80の重量等を算出することができる。
【0051】
なお第1,第2,第3の空気圧アクチュエーター41,42,43を備えることで、センサを不要とすることもできる。例えば手術具80を装着しない状態で多関節アームを所定の姿勢状態とし、その際の空気圧の情報を基準値として記憶しておく。手術具80を装着した際には、多関節アームを同じく所定の姿勢状態として空気圧の情報を取得する。この際の空気圧と基準値の圧力値の差分は、手術具80の重量によって生じたものである。従ってこの差分から手術具80の重量を算出できる。このことから、第1,第2,第3の空気圧アクチュエーター41,42,43の一部又は全部の空気圧の情報を得るようにすれば、現在装着している手術具80の重量を算出できることになる。
【0052】
<プログラム設定処理>
以上の図3のような制御構成において、制御部50はプログラムに基づいて、操作者の操作に応じた各可動体の駆動量や駆動速度を計算し、駆動部54,55を制御する。
しかしながら、装着する手術具80が異なり、重量や重心が異なると、多関節アームによる手術具80の姿勢や位置の制御の精度が低下することがある。例えば具体的には、重い手術具80の場合に本来の制御位置より下がり気味になるようなことがある。また動作が遅延して、術者の意図したとおりの内視鏡操作などができない場合もあり得る。
特に近年、手術具80の軽量化も進み、新旧の手術具80の重量差も大きくなっているため、装着する手術具80に応じた適応的な制御が必要となっている。
【0053】
そこで本実施の形態では、手術具80に応じて、制御部50における制御プログラムの内容が変更可能とされるようにする。制御プログラムの内容とは、プログラムモジュールやパラメータセットによって決まる制御内容を指す。制御プログラムの内容が変更可能というのは、例えばプログラムモジュールやパラメータセットが切り替えられることを指す。つまりプログラム自体や、プログラムによる参照値が切り替えられることを指す。
【0054】
制御内容としては、制御プログラムの内容が変更されることで、例えば駆動量、駆動速度、駆動方向、駆動対象、駆動範囲などが変更される。
【0055】
例えば手術具80の重量や重心(以下「重量等」ともいう)に応じて、単位操作あたりの駆動量や駆動速度を変更する。具体的には制御部50で起動される制御プログラムが参照するパラメータセットを手術具80の重量等に応じて選択する。
或いは制御部50で起動される制御プログラムとしてのプログラムモジュール自体を手術具80の重量等に応じて選択してもよい。
【0056】
図4に制御部50の処理例を示す。例えば制御部50は、手術具80が装着された後の初期処理として図4の処理を実行する。
【0057】
ステップS101で制御部50は多関節アームの姿勢制御を行う。そして制御部50はステップS102で検出情報を取得する。
例えばこのステップS101、S102で制御部50は、各アクチュエーターを駆動させて所定の動作を実行させる慣性モーメントや負荷を計測する。或いは制御部50は、多関節アームを所定の姿勢状態にして第1,第2,第3の空気圧アクチュエーター41,42,43の全部又は一部の空気圧の情報を取得する。
【0058】
ステップS103で制御部50は、取得した検出情報を用いて現在装着している手術具80の重量や重心を求める。
ステップS104で制御部50は、重量や重心の判定結果に基づいて、それに対応するパラメータセットを判定する。
【0059】
例えばストレージ部53には、図5に示すパラメータセットPRM1,PRM2・・・PRMnのように、重量等に応じた複数のパラメータセットを記憶しておく。
パラメータセットPRM1,PRM2・・・はそれぞれ異なる重量範囲に対応づけられて最適化されたパラメータのセットである。ここでいうパラメータとは、例えば術者の単位操作量に応じた回転量、回転速度、回転加速度、トルク、速度上限値、可動範囲の制限値などが想定される。
【0060】
例えば制御部50はステップS104で制御プログラムPGの処理で参照するパラメータセットを判定したら、ステップS105でそのパラメータセットを選択する。例えば図5では、制御部50がパラメータセットPRM2を選択して、参照用にロードした様子を模式的に示している。
【0061】
制御部50が、装着する手術具80が取り替えられる毎に以上の図4の処理を実行することで、手術具80の重量や重心に適合したパラメータセットが参照される状態となり、手術具80に適応した多関節アームの動作制御が実現される。
【0062】
なお図6は、パラメータセットではなくプログラムモジュール自体を選択する例を模式的に示している。例えば多関節アームの制御プログラムとして、複数のプログラムモジュールPG1,PG2,・・・PGmをストレージ部53に複数記憶しておく。これらは、それぞれ手術具80の異なる重量範囲に応じて適合化されたプログラムモジュールであるとする。
【0063】
この場合、制御部50は図4のステップS104で、手術具80の重量等に適応化されたプログラムモジュールを選択し、ステップS105で起動する制御プログラムとして展開する。
このように制御部50は起動する制御プログラム自体を手術具80の重量等に応じて切り替えるようにしてもよい。
【0064】
以上は自動的に重量等に適応してパラメータセットやプログラムモジュールを選択する例としたが、使用者が手動でパラメータセットやプログラムモジュールを選択できるようにしてもよい。
【0065】
図7は手動操作に応じた制御部50の処理を示している。
ステップS201で制御部50が操作情報を取得する。例えば使用者がインタフェース画面などにおけるタッチパネル操作などで、手術具80に応じた重量タイプを選べるようにする。例えば3段階、5段階などの重量タイプを選択する。制御部50はその重量タイプの指定情報を取得する。
そしてステップS202で制御部50は、選択すべきパラメータセット(或いはプログラムモジュール)を判定する。
【0066】
なお、例えば使用者が、手術具80の種別、型番などを入力する操作や、或いは装着した手術具80を画面上で選択する操作を行うことで、ステップS201では、その手術具80を示す情報を制御部50が取得するようにしてもよい。
その場合ステップS202で制御部50は、手術具80の種別等に基づいて重量等を判定する。例えば手術具80の種別、型番に重量や重心を紐づけたデータベースを、予めストレージ部53等に記憶しておき、制御部50がそれを参照することで、手術具80の重量等を判定できる。
そして制御部50が、重量等の判定に基づいて、適応するパラメータセット(或いはプログラムモジュール)を判定する。
【0067】
ステップS203で制御部50は、特定のパラメータセットを選択し、参照用にロードする。もしくは特定のプログラムモジュールを選択して起動する。
【0068】
以上の処理により、術者等の使用者の操作に応じたプログラム切り替えが実現される。
なお、以上の図3図7の処理は、多関節アーム毎に行うことが好適である。例えば3本の多関節アームを備えた手術支援装置1であれば、多関節アーム毎に、装着された手術具80の重量等に応じて制御プログラムの内容が変更されるようにする。
【0069】
<実施の形態の効果>
以上の実施の形態によれば次のような効果が得られる。
実施の形態の手術支援装置1は、手術具80を装着する装着部(ホルダー3やアダプター36)と、装着部に装着された手術具80の位置又は姿勢を変化させる多関節アームと、多関節アームを駆動する少なくとも一つのアクチュエーターと、制御プログラムPGに基づいてアクチュエーターの動作を制御する制御部50を備える。そして装着部に装着する手術具80に応じて制御部50における制御プログラムの内容が変更可能とされている。
多関節アームの先端の装着部には、鉗子やスコープ等の各種の手術具80が取り付けられるが、その重量は様々で、又は重心の違いもある。装着された手術具80に応じて制御プログラムPGの内容を変化させることで、手術具80の種類に応じた最適な動作が可能となる。これによって安全性を高めるとともに、円滑な動作による手術の時短化も促進できる。
なお制御プログラムPGの内容とは、制御プログラムPGとして用いられるプログラムモジュール自体でもあるし、制御プログラムPGで参照するパラメータセットのことでもある。
【0070】
実施の形態では、制御部50は、装着部に手術具80が装着された状態で重量又は重心の判定を行い、判定結果に基づいて自動的に制御プログラムPGの内容を変更する例を述べた(図4参照)。
鉗子やスコープなどの手術具80の重量や重心に適応するように制御プログラムPGの内容が変更されることで、その手術具80に適合したアーム動作制御を行うことができ、動作の安全性、正確性を高めることができる。
重量又は重心の判定は、加速度センサ、角速度センサ、IMU、重量センサなどのセンシングデバイスを備えることで実現できる。
【0071】
実施の形態では、アクチュエーターとして、空気圧アクチュエーター(41,42,43)を備え、制御部50は、装着部に手術具80が装着された状態での空気圧アクチュエーター(41,42,43)の圧力情報から重量の判定を行い、判定結果に基づいて自動的に制御プログラムPGの内容を変更する例を述べた(図4参照)。
空気圧アクチュエーター(41,42,43)を用いている場合、所定の姿勢状態とし、手術具80の重量によって生じる圧力の情報によって、その手術具80の重量を算出できる。これにより手術具80の重量に適した状態となるように制御プログラムPGの内容を変更することができる。
またこの場合、手術具80の重量の検出のためのセンサを別途必要としないため、装置全体の構成の簡略化を図ることができる。
【0072】
実施の形態では、制御部50は、操作情報に基づいて制御プログラムPGの内容を変更する例を述べた(図7参照)。
例えば使用者の操作により、複数段階の重量タイプを選べるようにする。これによりユーザが、装着した手術具80の種類等に応じて、重量タイプを指定することで、その手術具80に適合したアーム動作制御を行うことができるようになる。
【0073】
実施の形態では、パラメータセットを複数記憶するストレージ部53を備え、制御部50で起動される制御プログラムPGが参照するパラメータセットが切り替えられることで、制御部50における制御プログラムの内容が変更される例を挙げた。制御プログラムPGが参照するパラメータセットの選択により、実質的に制御プログラムPGの内容を変更することができる。
【0074】
実施の形態では、制御プログラムPG(プログラムモジュール)を複数記憶するストレージ部53を備え、制御部50で起動する制御プログラムPGが切り替えられることで、制御部50における制御プログラムの内容が変更される例を挙げた。起動する制御プログラムPGの選択により、制御プログラムPGの内容を変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 手術支援装置
41 第1の空気圧アクチュエーター
42 第2の空気圧アクチュエーター
43 第3の空気圧アクチュエーター
44 電動アクチュエーター
50 制御部
51 操作部
52 検出部
53 ストレージ部
54,55 駆動部
80 手術具
【要約】
装着された手術具に適応した動作制御を実現する。このために手術具を装着する装着部と、装着部に装着された手術具の位置又は姿勢を変化させる多関節アームと、多関節アームを駆動する少なくとも一つのアクチュエーターと、制御プログラムに基づいて前記アクチュエーターの動作を制御する制御部とを備えた手術支援装置が、装着部に装着する手術具に応じて制御部における制御プログラムの内容が変更可能とされているようにする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7