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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20231005BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231005BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20231005BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20231005BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/44 P
H01M10/42 P
H02J7/02 F
H02J7/00 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019163178
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2022163239
(43)【公開日】2022-10-26
【審査請求日】2020-04-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519100310
【氏名又は名称】APB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 洋志
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】宮田 繁仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0162130(US,A1)
【文献】国際公開第2012/026295(WO,A1)
【文献】特開2012-244865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12、7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
順に積層されたひと組の正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体からなる積層単位と電解液とを含む単電池と、前記単電池を電源として発光する発光部と、を備える単電池ユニットが、複数個接続されてなり、
前記発光部は、発光素子と、同じ単電池の正極集電体と負極集電体の間の電圧を測定する電圧測定端子と、前記電圧測定端子により測定された電圧に応じて前記発光素子を所定のパターンで発光させる制御を行う制御素子とを含み、
前記発光部の発光は、前記単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御されることを特徴とする組電池。
【請求項2】
順に積層されたひと組の正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体からなる積層単位と電解液とを含む単電池と、前記単電池を電源として発光する発光部と、を備える単電池ユニットが、複数個接続されてなり、
前記発光部の発光は、前記単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御され、前記単電池の電圧が高い場合に発光時間が長くなるように制御されることを特徴とする組電池。
【請求項3】
前記発光部の発光は、前記単電池の電圧が高い場合に発光強度が強くなるように制御される請求項1または2のいずれかに記載の組電池。
【請求項4】
前記単電池の電圧と発光部の発光による消費電流量の関係を段階的に定めておく請求項1、2または3に記載の組電池。
【請求項5】
前記単電池の電圧と発光部の発光による消費電流量の関係を連続的に定めておく請求項1、2または3に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車及びハイブリッド電気自動車等の電源及び携帯型電子機器の電源としてリチウムイオン電池の単電池を複数個積層した組電池が用いられている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、組電池に含まれる複数の単電池の性能が若干異なり、端子間電圧値が単電池毎に異なることがあると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/119075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組電池に対して定電流充電を行うとした場合に、充電前の単電池の端子間電圧値が異なる場合を考える。例えば単電池Aの充電前電圧値が2.5V、単電池Bの充電前電圧値が2.0Vであったとする。単電池A及び単電池Bを含む組電池を端子間電圧値が4.0Vになるまで充電する場合、単電池A及び単電池Bの電圧値がともに上昇して、単電池Aの電圧値が4.0Vになった時点で充電を停止する。この場合単電池Bの電圧値は3.5Vであり、さらに4.0Vまで充電をする余地があるが、これ以上充電すると単電池Aが過充電となるために、それ以上の充電を行うことはできない。
【0006】
また、このようにして充電した、単電池Aの放電前電圧値が4.0V、単電池Bの放電前電圧値が3.5Vである組電池からの放電を行うことを考える。単電池A及び単電池Bを含む組電池を端子間電圧値が2.0Vになるまで充電する場合、単電池A及び単電池Bの電圧値がともに低下して、単電池Bの電圧値が2.0Vになった時点で放電を停止する。この場合単電池Aの電圧値は2.5Vであり、さらに2.0Vまで放電をする余地があるが、単電池Bからの放電ができないため組電池全体としての所望の電圧値が得られないので、それ以上の放電を行うことはできない。
【0007】
このように、組電池を構成する複数の単電池の端子間電圧値が異なる場合には、充電及び放電が不充分となり、組電池が本来有する電池容量を発揮させることができない。
そのため、複数の単電池の端子間電圧値の差を修正して、組電池が本来有する電池容量を発揮させることのできる組電池が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、複数の単電池の端子間電圧値の差を修正して、組電池が本来有する電池容量を発揮させることのできる組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の組電池は、順に積層されたひと組の正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体からなる積層単位と電解液とを含む単電池と、上記単電池を電源として発光する発光部と、を備える単電池ユニットが、複数個接続されてなり、上記発光部は、発光素子と、同じ単電池の正極集電体と負極集電体の間の電圧を測定する電圧測定端子と、上記電圧測定端子により測定された電圧に応じて上記発光素子を所定のパターンで発光させる制御を行う制御素子とを含み、上記発光部の発光は、上記単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、複数の単電池の端子間電圧値の差を修正して、組電池が本来有する電池容量を発揮させることのできる組電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、単電池ユニットの例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図2図2は、発光部の例を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、組電池の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図4図4は、図3に示す組電池のA-A線断面図である。
図5図5は、組電池に繰り返し充放電を行った際の、組電池を構成する単電池毎の電圧を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、リチウムイオン電池と記載する場合、リチウムイオン二次電池も含む概念とする。
【0013】
本発明の組電池は、順に積層されたひと組の正極集電体、正極活物質層、セパレータ、負極活物質層及び負極集電体からなる積層単位と電解液とを含む単電池と、上記単電池を電源として発光する発光部と、を備える単電池ユニットが、複数個接続されてなり、
上記発光部の発光は、上記単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御されることを特徴とする。
【0014】
本発明の組電池は、単電池ユニットが複数個接続されてなり、単電池ユニットは単電池と発光部を備えている。単電池ユニットは組電池内で直列に接続されていることが好ましい。
まず、単電池及び発光部を備える単電池ユニットについて説明する。
【0015】
図1は、単電池ユニットの例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
【0016】
図1にはリチウムイオン電池である単電池10と発光部20を備える単電池ユニット30を示している。
単電池10は、略矩形平板状の正極集電体17の表面に正極活物質層15が形成された正極12と、同様に略矩形平板状の負極集電体19の表面に負極活物質層16が形成された負極13とが、同様に略平板状のセパレータ14を介して積層されて構成され、全体として略矩形平板状に形成されている。この正極と負極とがリチウムイオン電池の正極及び負極として機能する。
【0017】
単電池10は、正極集電体17及び負極集電体19の間に配置されて正極集電体17及び負極集電体19の間にセパレータ14の周縁部を固定し、かつ正極活物質層15、セパレータ14及び負極活物質層16を封止する、環状の枠部材18を有する。
【0018】
正極集電体17及び負極集電体19は、枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされているとともに、セパレータ14と正極活物質層15及び負極活物質層16も枠部材18により所定間隔をもって対向するように位置決めされている。
【0019】
正極集電体17とセパレータ14との間の間隔、及び、負極集電体19とセパレータ14との間の間隔はリチウムイオン電池の容量に応じて調整され、これら正極集電体17、負極集電体19及びセパレータ14の位置関係は必要な間隔が得られるように定められている。
【0020】
以下に、単電池を構成する各構成要素の好ましい態様について説明する。
正極活物質層には正極活物質が含まれる。
正極活物質としては、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えばLiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物[例えばLiMM’M’’(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3)等]等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えばLiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
なお、リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。
【0021】
正極活物質は、導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆正極活物質であることが好ましい。
正極活物質の周囲が被覆用樹脂で被覆されていると、電極の体積変化が緩和され、電極の膨張を抑制することができる。
【0022】
導電助剤としては、金属系導電助剤[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、炭素系導電助剤[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びサーマルランプブラック等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられる。
これらの導電助剤は1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物として用いられてもよい。
なかでも、電気的安定性の観点から、より好ましくはアルミニウム、ステンレス、銀、金、銅、チタン、炭素系導電助剤及びこれらの混合物であり、さらに好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及び炭素系導電助剤であり、特に好ましくは炭素系導電助剤である。
またこれらの導電助剤としては、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに導電性材料[好ましくは、上記した導電助剤のうち金属のもの]をめっき等でコーティングしたものでもよい。
【0023】
導電助剤の形状(形態)は、粒子形態に限られず、粒子形態以外の形態であってもよく、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等、いわゆるフィラー系導電助剤として実用化されている形態であってもよい。
【0024】
被覆用樹脂と導電助剤の比率は特に限定されるものではないが、電池の内部抵抗等の観点から、重量比率で被覆用樹脂(樹脂固形分重量):導電助剤が1:0.01~1:50であることが好ましく、1:0.2~1:3.0であることがより好ましい。
【0025】
被覆用樹脂としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0026】
また、正極活物質層は、被覆正極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。
導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0027】
正極活物質層は、正極活物質を含み、正極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。
ここで、非結着体とは、正極活物質が結着剤(バインダともいう)により位置を固定されておらず、正極活物質同士及び正極活物質と集電体が不可逆的に固定されていないことを意味する。
【0028】
正極活物質層には、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
粘着性樹脂としては、例えば、特開2017-054703号公報に記載された非水系二次電池活物質被覆用樹脂に少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報に粘着剤として記載されたもの等を好適に用いることができる。
なお、粘着性樹脂は、溶媒成分を揮発させて乾燥させても固体化せずに粘着性(水、溶剤、熱などを使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。一方、結着材として用いられる溶液乾燥型の電極バインダーは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して活物質同士を強固に接着固定するものを意味する。
従って、溶液乾燥型の電極バインダー(結着材)と粘着性樹脂とは異なる材料である。
【0029】
正極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0030】
負極活物質層には負極活物質が含まれる。
負極活物質としては、公知のリチウムイオン電池用負極活物質が使用でき、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiOx)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等及びこれらと炭素系材料との混合物等が挙げられる。
【0031】
また、負極活物質は、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤及び被覆用樹脂で被覆された被覆負極活物質であってもよい。
導電助剤及び被覆用樹脂としては、上述した被覆正極活物質と同様の導電助剤及び被覆用樹脂を好適に用いることができる。
【0032】
また、負極活物質層は、被覆負極活物質に含まれる導電助剤以外にも導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0033】
負極活物質層は、正極活物質層と同様に、負極活物質同士を結着する結着材を含まない非結着体であることが好ましい。また、正極活物質層と同様に、粘着性樹脂が含まれていてもよい。
【0034】
負極活物質層の厚みは、特に限定されるものではないが、電池性能の観点から、150~600μmであることが好ましく、200~450μmであることがより好ましい。
【0035】
正極集電体及び負極集電体(以下まとめて単に集電体ともいう)を構成する材料としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、焼成炭素、導電性高分子材料、導電性ガラス等が挙げられる。
これらの材料のうち、軽量化、耐食性、高導電性の観点から、正極集電体としてはアルミニウムであることが好ましく、負極集電体としては銅であることが好ましい。
【0036】
また、集電体は、導電性高分子材料からなる樹脂集電体であることが好ましい。
集電体の形状は特に限定されず、上記の材料からなるシート状の集電体、及び、上記の材料で構成された微粒子からなる堆積層であってもよい。
集電体の厚さは、特に限定されないが、50~500μmであることが好ましい。
【0037】
樹脂集電体を構成する導電性高分子材料としては例えば、導電性高分子や、樹脂に必要に応じて導電剤を添加したものを用いることができる。
導電性高分子材料を構成する導電剤としては、上述した被覆正極活物質に含まれる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
【0038】
導電性高分子材料を構成する樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0039】
セパレータとしては、ポリエチレン又はポリプロピレン製の多孔性フィルム、多孔性ポリエチレンフィルムと多孔性ポリプロピレンとの積層フィルム、合成繊維(ポリエステル繊維及びアラミド繊維等)又はガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等の公知のリチウムイオン電池用のセパレータが挙げられる。
【0040】
正極活物質層及び負極活物質層には電解液が含まれる。
電解液としては、公知のリチウムイオン電池の製造に用いられる、電解質及び非水溶媒を含有する公知の電解液を使用することができる。
【0041】
電解質としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、LiN(FSO、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはイミド系電解質[LiN(FSO、LiN(CFSO及びLiN(CSO等]及びLiPFである。
【0042】
非水溶媒としては、公知の電解液に用いられているもの等が使用でき、例えば、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0043】
電解液の電解質濃度は、1~5mol/Lであることが好ましく、1.5~4mol/Lであることがより好ましく、2~3mol/Lであることがさらに好ましい。
電解液の電解質濃度が1mol/L未満であると、電池の充分な入出力特性が得られないことがあり、5mol/Lを超えると、電解質が析出してしまうことがある。
なお、電解液の電解質濃度は、リチウムイオン電池用電極又はリチウムイオン電池を構成する電解液を、溶媒などを用いずに抽出して、その濃度を測定することで確認することができる。
【0044】
続いて発光部について説明する。
図2は、発光部の例を模式的に示す斜視図である。
図2に示す発光部20は、その内部又は表面に配線を有する配線基板21と、配線基板21に実装された発光素子22、制御素子23a、23bを備える。また、配線基板の端部には電圧測定端子24、25が設けられている。電圧測定端子24、25は単電池に接続した際に一方の電圧測定端子が正極集電体に接触し、他方の電圧測定端子が負極集電体に接触する位置に設けられている。すなわち、電圧測定端子24、25はそれぞれ単電池の正極集電体と負極集電体の間の電圧を測定する電圧測定端子となる。
【0045】
電圧測定端子24及び25は制御素子23a、23bと電気的に接続されており、制御素子23a、23bは発光素子22と電気的に接続されている。
発光部20の発光は、単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御される。具体的な発光の制御については後述する。
【0046】
発光部を構成する配線基板としてはリジッド基板又はフレキシブル基板を使用することができる。図2に示すような配線基板の形状とする場合はフレキシブル基板とすることが好ましい。
制御素子としてはIC、LSI等の任意の半導体素子を使用することができる。また、図2には制御素子を2つ実装した例を示しているが、制御素子の数は限定されるものではなく、1つでもよく、3つ以上であってもよい。
発光素子としてはLED素子、有機EL素子等の、電気信号を光信号に変換することのできる素子を使用することができ、LED素子であることが好ましい。
なお、発光部において配線基板を有することは必須ではなく、制御素子及び発光素子が基板を介さずに結線されることにより発光部を構成していてもよい。
【0047】
発光部は、単電池の負極集電体及び正極集電体と電気的に接続されており、リチウムイオン電池からの電力供給を受けることができるようになっている。
発光部が負極集電体及び正極集電体と電気的に接続されていると、リチウムイオン電池からの電力供給を受けて発光素子を発光させることができる。
図2には電力供給を受けるための電極は図示していないが、電圧測定端子とは別の電極を発光部に設けておくことが好ましい。
【0048】
また、負極集電体及び正極集電体は樹脂集電体であることが好ましく、負極集電体及び正極集電体が発光部の電極に直接結合して電気的に接続されていることが好ましい。
樹脂集電体を使用する場合、樹脂集電体と発光部の電極を接触させ、樹脂集電体を加熱して樹脂を軟化させることにより、樹脂集電体と発光部の電極を直接結合させることができる。また、半田等の導電性を有する他の接合材を集電体と発光部の間に介して電気的な接続を行うこともできる。
【0049】
本発明の組電池は、ここまで説明したような単電池ユニットが複数個接続されてなる。
図3は、組電池の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視図である。
図3には組電池の構成を説明するために外装体の一部を除去して示している。
図3には、組電池50に外装体70が設けられた形態を示している。
組電池50は、単電池ユニット30が複数個接続されてなる。図3には、図1に示す単電池ユニット30が5つ積層された組電池50を示している。組電池50では、隣り合う単電池10の負極集電体19の上面と正極集電体17の下面が隣接するように積層されている。この場合、単電池ユニット30は複数個直列接続されている。
【0050】
組電池50の外表面(側面)には各単電池ユニット30が備える発光部20が一列に並んでいる。
図3には発光部20が一列に並んでいる形態を示しているが、異なる単電池ユニット間における発光部の位置関係は限定されるものではなく、単電池ユニットの異なる側面に発光部が設けられていてもよいし、同じ側面においてその位置がずれていてもよい。
【0051】
組電池50は外装体70に収容されている。
外装体としては、金属缶ケース、高分子金属複合フィルム等を使用することができる。
【0052】
組電池50の最上面の負極集電体19の上には導電性シートが設けられ、導電性シートの一部が外装体70から引き出されて引出配線59となる。
また、組電池50の最下面の正極集電体17の上には導電性シートが設けられ、導電性シートの一部が外装体70から引き出されて引出配線57となる。
導電性シートとしては導電性を有する材料であれば特に限定されず、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル及びこれらの合金等の金属材料、並びに、樹脂集電体として記載した材料を適宜選択して用いることができる。
引出配線を用いて、組電池への充電及び組電池からの放電を行うことができる。
【0053】
図4は、図3に示す組電池のA-A線断面図である。
図4には組電池50を収容する外装体70も示している。
単電池ユニット30が備える発光部20は、単電池の電圧に応じて発光するが、この光は単電池の電力消費のために発光するものであるので、光は外装体70の中でとどまり、外装体の外に出ることはない。図4には外装体70内で発光部20が発光してその光が外装体の外に出ない様子を示している。
【0054】
本発明の組電池における発光の制御について説明する。
以下、充電電圧が4.0Vになるまで充電し、放電電圧が2.5Vになるまで放電する繰り返し充放電を行う場合を例にして本発明の効果を説明する。
図5は、組電池に繰り返し充放電を行った際の、組電池を構成する単電池毎の電圧を模式的に示すグラフである。
図5には、単電池1、単電池2、単電池3及び単電池4の4つの単電池における電圧変化を示している。
これら4つの単電池は、初期状態の電圧に差があり、単電池1の電圧が最も高く約3.0V、単電池4の電圧が最も低く約2.6Vとなっている。単電池間の電圧差は約0.4Vである。単電池2と単電池3の電圧はそれぞれ、単電池1の電圧と単電池4の電圧の間である。この地点がA地点である。
【0055】
組電池の充電の際は、各単電池の電圧を測定する。充電が進むにつれて各単電池の電圧は上昇していく。そして、最も電圧値が高い単電池(この場合は単電池1)の電圧が4.0Vになった時点で充電を停止する。この地点がB地点である。
【0056】
続いて、放電を行う。放電が進むにつれて各単電池の電圧は低下していく。そして、最も電圧値が低い単電池(この場合は単電池4)の電圧が2.5Vになった時点で放電を停止する。この地点がC地点である。
【0057】
A地点からB地点までの充電過程、及び、B地点からC地点までの放電過程において、各単電池ユニットが備える発光部が発光する。発光部の発光が、単電池の電圧に応じて電力消費量が変化するように制御される。
好ましくは、単電池の電圧が高い場合に電力消費量が多くなるように制御される。
電力消費量を多くするためには、単電池の電圧が高い場合に発光時間が長くなるようにしてもよく、単電池の電圧が高い場合に発光強度が強くなるようにしてもよい。
単電池の電圧が高い場合に発光時間が長くなるようにする場合、単位時間(例えば100s(100秒))のサイクルの中で、単電池の電圧が高い場合は1s発光し、電圧が中程度の場合は0.5s発光し、電圧が低い場合は0.1s発光する、といった制御が考えられる。これらの段階は特に限定されるものではない。
【0058】
充電の際に発光部を発光させることで、充電を行いつつ発光部を発光させて電力消費をすることになる。
単電池の電圧が高い場合に電力消費量が多くなるように発光部の発光を制御すると、充電時に電圧が上昇する傾きが単電池毎に異なるようになる。
単電池の電圧が高く発光部の発光による電力消費量が多い単電池1は単電池の電力消費量が多いため充電時の電圧上昇の傾きが相対的に小さくなる。一方、単電池の電圧が低く発光部の発光による電力消費量が少ない単電池4は単電池の電力消費量が少ないため充電時の電圧上昇の傾きが相対的に大きくなる。
単電池1の電圧が4.0Vとなり、充電を停止した時点(B地点)では、単電池4の電圧が3.65Vとなる。すなわち、単電池間の電圧差が0.35Vとなる。
初期状態で単電池間の電圧差は0.4Vであったので、1回の充電により最も電圧の高い単電池と最も電圧の低い電圧差が0.05V縮まったことになる。
このようにすると充電開始から充電停止に至る間で最も電圧の高い単電池と最も電圧の低い電圧差が縮まることになる。
【0059】
放電の際に発光部を発光させることで、本来の放電に伴う電力消費に加えて発光部の発光に伴う電力消費が加わるので、単電池自体の電力消費量が多くなる。
ここで、単電池の電圧が高い場合に電力消費量が多くなるように発光部の発光を制御すると、単電池の電圧が高い単電池の電力消費量が相対的に多く、単電池の電圧が低い単電池の電力消費量が相対的に少なくなるので、放電時に電圧が低下する傾きが単電池毎に異なるようになる。
単電池の電圧が高く発光部の発光による電力消費量が多い単電池1は単電池の電力消費量が多いため放電時の電圧低下の傾きが相対的に大きくなる。一方、単電池の電圧が低く発光部の発光による電力消費量が少ない単電池4は単電池の電力消費量が少ないため放電時の電圧低下の傾きが相対的に小さくなる。
単電池4の電圧が2.5Vとなり、放電を停止した時点(C地点)では、単電池1の電圧が2.8Vとなる。すなわち、単電池間の電圧差が0.3Vとなる。
充電終了時で単電池間の電圧差は0.35Vであったので、1回の放電により最も電圧の高い単電池と最も電圧の低い電圧差が0.05V縮まったことになる。
【0060】
上記例では1回の充放電で最も電圧の高い単電池と最も電圧の低い電圧差が0.05V+0.05V=0.1V縮まったことになる。
以後、同様にしてD地点までの充電-E地点までの放電・・・というようにして充放電を繰り返すことにより、最も電圧の高い単電池と最も電圧の低い電圧差が縮まっていく。
その結果、組電池を構成する複数の単電池の端子間電圧値の差が修正されて、組電池が本来有する電池容量を発揮することができるようになる。
【0061】
各単電池の電圧測定端子により測定された電圧と発光部の発光による消費電流量の関係について、電圧測定端子により測定された電圧と発光部の発光による消費電流量の関係が段階的に定められていてもよい。
例えば、上記例において、消費電流量を、電圧が3.0V以上のときは20mA、2.5V~3.0Vのときは10mA、とするような方法が挙げられる。
【0062】
また、電圧測定端子により測定された電圧と発光部の発光による消費電流量の関係が連続的に定められていてもよい。
例えば、電圧と消費電流量の間に、(消費電流量)=k(比例定数)×V(単電池の電圧)のような比例式を設定しておき、単電池の電圧の変化に応じて消費電流量が変化するようにしてもよい。
【0063】
図5に示した例では充電過程及び放電過程の両方において発光部を発光させているが、充電過程又は放電過程の一方のみにおいて発光部を発光させてもよい。
また、1回の充電過程又は放電過程における発光部の発光による電力消費量について、充電開始時又は放電開始時の単電池の電圧の差又は上下関係に応じて電力消費量を定めて、当該充電過程又は放電過程が終了するまでは発光部による電力消費量を一定にするようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の組電池は、複数の単電池の端子間電圧値の差を修正して、組電池が本来有する電池容量を発揮させることができる。そのため、電気自動車及びハイブリッド電気自動車等の電源及び携帯型電子機器の電源として使用することに適している。
【符号の説明】
【0065】
10 単電池
12 正極
13 負極
14 セパレータ
15 正極活物質層
16 負極活物質層
17 正極集電体
18 枠部材
19 負極集電体
20 発光部
21 配線基板
22 発光素子
23a、23b 制御素子
24、25 測定端子
30 単電池ユニット
50 組電池
57、59 引出配線
70 外装体
図1
図2
図3
図4
図5