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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】支柱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/00 20060101AFI20231005BHJP
   E04B 7/00 20060101ALI20231005BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B1/00 502L
E04B7/00 A
E04B7/02 501Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019221030
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2021088907
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】来栖 徳治
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-144032(JP,U)
【文献】実開昭56-025160(JP,U)
【文献】実開昭61-026841(JP,U)
【文献】特開平10-205095(JP,A)
【文献】特開平08-135258(JP,A)
【文献】実開昭60-001826(JP,U)
【文献】特開2018-165436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0178353(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 7/00
E04B 7/02
E04B 1/38-1/61
E04B 1/62-1/99
E04F 11/00-11/18
E04H 17/00-17/26
A62B 1/00-5/00,
35/00-99/00
E04D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋根に構築された支柱構造であって、
一体的に形成された支柱と、
前記支柱の下側部分に結合された定着部と、
前記屋根の上面を形成するコンクリート構造部とを備え、
前記支柱の前記下側部分と前記定着部は、前記コンクリート構造部に埋設され、前記支柱の上側部分は、前記屋根の前記上面から上方に突出し、
前記定着部は、前記支柱の下端から上端に向かう方向に前記コンクリート構造部に当接して前記コンクリート構造部に係止される被係止部を有し、
前記屋根の前記上面を覆うように設けられ、前記支柱が貫通している防水層と、
前記支柱の上側部分の外周面に取り付けられた防水部と、
前記支柱の外周面に取り付けられ、前記防水部の上端を上方から覆う鍔状のシールカバーとを備え、
前記防水部の下端部は、前記防水層と水密に結合されている、支柱構造。
【請求項2】
建物の屋根に構築された支柱構造であって、
一体的に形成された支柱と、
前記支柱の下側部分に結合された定着部と、
前記屋根の上面を形成するコンクリート構造部とを備え、
前記支柱の前記下側部分と前記定着部は、前記コンクリート構造部に埋設され、前記支柱の上側部分は、前記屋根の前記上面から上方に突出し、
前記定着部は、前記支柱の下端から上端に向かう方向に前記コンクリート構造部に当接して前記コンクリート構造部に係止される被係止部を有し、
前記支柱の上側部分の外周面に取り付けられた防水部と、
前記支柱の外周面に取り付けられ、前記防水部の上端を上方から覆う鍔状のシールカバーとを備え、
前記防水部の下端部は、コンクリート構造物に含まれ前記上面を形成するコンクリートに結合されている、支柱構造。
【請求項3】
前記防水部の下端部は、前記支柱の外周面から前記上面に沿って前記支柱の外側へ延びるとともに前記支柱を囲むように前記支柱の周方向に延びている、請求項2に記載の支柱構造。
【請求項4】
前記コンクリート構造部は、前記上面を形成するコンクリートと、前記コンクリート内に配置された鉄筋とを備え、前記支柱の前記下側部分と前記定着部は、前記コンクリートに埋設されており、
前記被係止部は、前記支柱の下端から上端に向かう方向に前記コンクリートに当接して該コンクリートに係止される、請求項1~3のいずれか一項に記載の支柱構造。
【請求項5】
前記コンクリート構造部は、前記上面を形成するコンクリートと、前記コンクリート内に配置された鉄筋と、前記上面に形成された穴と、当該穴に充填されたモルタルとを有し、
前記モルタルの内部に前記支柱の前記下側部分と前記定着部が埋設されており、
前記定着部の前記被係止部は、前記支柱の下端から上端に向かう方向に前記モルタルに当接して該モルタルに係止される、請求項1~3のいずれか一項に記載の支柱構造。
【請求項6】
前記支柱の前記下側部分には、ねじ穴が形成されており、
前記定着部は、前記ねじ穴に螺合した雄ねじ部を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の支柱構造。
【請求項7】
前記防水部の上端部を前記支柱の外周面に締め付ける締付け部を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の支柱構造。
【請求項8】
前記防水部の上端を埋め込むように前記シールカバーの下面と前記防水部の上端との隙間に充填されたシーリング材を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の支柱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋根に設けられた支柱構造に関する。より詳しくは、本発明は、建物の屋根において点検や他の作業を行う人が屋根から落下することを防止できる支柱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根において点検などの作業を行う人が屋根から落下することを防止するために、手摺や命綱などを利用することができる。手摺は、大きな荷重が作用しても、その荷重を支持できる構造物に設置される。同様に、命綱も、大きな荷重が作用しても、その荷重を支持できる構造物に掛けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-165436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような構造物として、屋根における太陽光発電パネルの設置架台を利用することが考えられる。しかし、この設置架台は、人の落下を防止するために要求される耐荷重性能を有していない場合がある。
【0005】
また、屋上の上面がコンクリートで形成されている場合に、上記の構造物として、当該コンクリートの上面から立ち上がるように構築された設備基礎(例えば特許文献1に記載の設備基礎)を利用することが考えられる。当該設備基礎は、屋上の上面と同じコンクリートにより構成される。しかし、このような設備基礎を構築するためには、コンクリートの屋上の上面に更に型枠を設置し、コンクリートを更に打設する等の作業が必要となるので、手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、建物の屋根で点検又は他の作業を行う人が屋根から落下することを防止するために用いることができる構造物を、より簡易な施工により構築できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明による支柱構造は、建物の屋根に構築されており、
一体的に形成された支柱と、
前記支柱の下側部分に結合された定着部と、
前記屋根の上面を形成するコンクリート構造部とを備え、
前記支柱の前記下側部分と前記定着部は、前記コンクリート構造部に埋設され、前記支柱の上側部分は、前記屋根の前記上面から上方に突出し、
前記定着部は、前記支柱の下端から上端に向かう方向に前記コンクリート構造部に当接して前記コンクリート構造部に係止される被係止部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、支柱の下側部分はコンクリート構造部に埋設されている。したがって、支柱の軸方向と直交する方向に支柱に作用する力がコンクリート構造部に強固に支持される。
【0009】
また、定着部は、支柱の下端から上端に向かう方向にコンクリート構造部に係止される被係止部を有する。したがって、支柱に対してその軸方向上側に作用する力がコンクリート構造部に強固に支持される。
【0010】
よって、支柱の上側部分に大きな荷重が作用しても、支柱構造は、当該荷重を支持することができる。よって、支柱構造は、高い耐荷重性を有するので、建物の屋根で点検又は他の作業を行う人が屋根から落下することを防止するための構造物として利用可能である。
【0011】
また、本発明の支柱構造は、支柱の下側部分と定着部をコンクリート構造部に埋設することで構築できる。よって、より少ない施工作業で、本発明の支柱構造を、作業者が落下することを防止するための構造物として構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】建物の屋根の断面構造の一例を示す。
図2図1の部分拡大図に対応し、本発明の第1実施形態による支柱構造を示す。
図3図1の部分拡大図に対応し、本発明の第2実施形態による支柱構造を示す。
図4】コンクリートに形成した穴へのモルタル充填作業の説明図である。
図5図4のV-V矢視図である。
図6】本発明の第3実施形態による支柱構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図1は、建物の屋根1の断面構造の一例を示す。図2は、図1の部分拡大図に対応し、本発明の第1実施形態による支柱構造10を示す。図2は、支柱3の軸を含む平面による断面図である。
【0015】
以下において、支柱構造10が1つの支柱3を有する場合を説明するが、支柱構造10は、(例えば図2の紙面と垂直な方向に)間隔をおいて設けられた複数の支柱3を有していてよい。この場合、後述のコンクリート構造部7は、複数の支柱3に共有されていてよいが、定着部5、防水部11などの他の要素は、各支柱3に設けられ、各支柱3の構成と支柱3に設けられる各要素に関する構成は、以下で説明する構成と同じであってよい。
【0016】
支柱構造10は、図1のように建物の屋根1に設けられる。支柱構造10は、図2に示すように、支柱3、定着部5、コンクリート構造部7、防水層9、防水部11、締付け部15、シールカバー13、及びシーリング材19を備える。
【0017】
支柱3は、その全体が一体的に形成されている。第1実施形態では、支柱3は、互いに別個の部材同士を結合させた箇所が無い1つの部材として一体的に形成されたものである。第1実施形態において、互いに別個の部材同士を結合させた箇所は、溶接による結合箇所を含む。また、第1実施形態において、互いに別個の部材同士を結合させた箇所は、他の手段(例えばボルト)による結合箇所を更に含んでよい。
【0018】
支柱3は、金属で形成されていてよい。例えば、支柱3はステンレス鋼で形成されていてよい。また、支柱3は中実に形成されていてよい。すなわち、支柱3は、後述のコンクリート構造部7内の所定深さからコンクリート構造部7の上面1aよりも上方の所定高さまでの連続範囲において中実に形成されていてよい。この連続範囲は、後述のねじ穴3a,3bが形成された部分を含まない。ねじ穴3a,3bが支柱3の下端部及び上端部に形成されている場合又は他の場合、上記の連続範囲は、支柱3の下端部及び上端部以外の全範囲であってよい。
【0019】
金属製(例えばステンレス鋼製)の支柱3の軸に直交する各方向の寸法(支柱3の断面が円形の場合には当該断面の直径)は、一例では20mm以上であり50mm以下であってよく、別の例では30mm以上40mm以下であってよいが、これらの数値範囲に限定されない。
【0020】
定着部5は、支柱3の下側部分(例えば下端部)に結合されている。定着部5は、互いに別個の部材同士の結合箇所が無い1つの部材として一体的に形成されたものであってよい。例えば、定着部5は、支柱3の下側部分(例えば下端部)に形成されたねじ穴3aに螺合する雄ねじ部5aを有するボルトであってよい。この螺合によって定着部5は支柱3に結合している。図2の例では、ねじ穴3aは、支柱3の下端面に開口するように形成されており、当該下端面から支柱3の軸方向に延びている。
【0021】
定着部5は、支柱3の下端から上端に向かう方向にコンクリート構造部7に当接してコンクリート構造部7に係止される被係止部5bを有する。
【0022】
コンクリート構造部7は、建物の屋根1の上面1aを形成している。コンクリート構造部7の内部には、支柱3の下側部分と定着部5とが埋設されている。支柱3の上側部分は、屋根1(すなわちコンクリート構造部7)の上面1aから上方に突出している。このような構成により、コンクリート構造部7は、支柱3の上側部分に作用する荷重を支持する。
【0023】
コンクリート構造部7は、屋根1の上面1aを形成しているコンクリート7aと、コンクリート7a内に配置された鉄筋7bとを備える。支柱3の下側部分と定着部5は、コンクリート7aに埋設されている。
【0024】
コンクリート7aに、定着部5が係止されるようになっていてよい。すなわち、定着部5の被係止部5bは、支柱3の下端から上端に向かう方向にコンクリート7aに当接して該コンクリート7aに係止される。図2の例では、定着部5はボルトであり、被係止部5bはボルト5の頭である。ボルト5は、例えばM12のボルトであってよい。
【0025】
なお、コンクリート7aの打設時に、定着部5が結合された支柱3は図2の位置に配置された状態で適宜の手段により支持されていてよい。例えば、支柱3は、適宜の支持機構を介してコンクリート7aの型枠に支持されてよい。この状態で、コンクリート7aを打設することにより支柱3の下側部分と定着部5をコンクリート7aに埋設することができる。
【0026】
防水層9は、屋根1の上面1aを覆うように設けられている。防水層9には支柱3が貫通している。すなわち、防水層9は、屋根1の上面1aに沿って支柱3を囲むように延びている。
【0027】
防水層9は、防水シートを含んでよい。図2の例では、防水層9は、防水プレート(例えば塩ビ鋼板)9aと防水シート9bとを含む。防水プレート9aと防水シート9bとは、支柱3の周囲において両者の間に後述の防水シート11を上下に挟むように部分的に重なっている。防水シート9bは、防水プレート9aよりも支柱3から離れた領域において上面1aに沿って広がっている。
【0028】
防水部11は、屋根1の上面1aよりも上方において、支柱3の上側部分の外周面に取り付けられている。防水部11は、その上端部から屋上の上面1a(図2では防水層9)までの範囲において、支柱3の外周面全体を覆っている。防水部11の下端部は、防水層9と水密に結合されている。
【0029】
防水部11は、例えば軟質塩化ビニル系の防水シートであってよい。この場合、防水シート11は、溶着又は他の手段(例えば接着剤)により支柱3の外周面に取り付けられてよい。防水シート11の下端部は、図2の例では、支柱3の外周面から屋根1の上面1aに沿って支柱3の外側へ延びるとともに支柱3を囲むように支柱3の周方向に延びている。
【0030】
図2の例では、防水シート11の下端部は、防水プレート9aと防水シート9bとの間に位置し、接着剤又は溶着により防水プレート9aに結合されてよい。防水プレート9aは、ビス21によりコンクリート7aに結合されてよい。防水シート9bは、防水シート11の下端部に接着剤又は溶着により結合されていてよい。
【0031】
シールカバー13は、防水部11の上端を上方から覆うように支柱3に取り付けられていることにより、防水部11の上端と支柱3の外周面との間に雨水が進入することを防止する。例えば、シールカバー13は、支柱3の外周面から突出した鍔状の部材であり、支柱3が貫通している中央穴を有する。当該中央穴を形成するシールカバー13の内周面と支柱3の外周面との隙間は、水密に閉じられている。
【0032】
例えば、シールカバー13を溶接で支柱3に取り付ける場合には、当該隙間は、この溶接により形成された溶接部17(溶接時に溶融し、その後、固まった金属部分)により閉じられていてよい。ただし、シールカバー13は、他の手段で支柱3に取り付けられてもよく、上記隙間は、他の手段で水密に閉じられていてもよい。
【0033】
締付け部15は、防水部11の上端部を支柱3の外周面に締め付けることにより、当該外周面と防水部11との間に雨水が進入することを防止する。すなわち、締付け部15と支柱3の外周面とで防水部11の上端部を挟み込んでいる。
【0034】
例えば、締付け部15は、自身と支柱3の外周面とで防水部11の上端部を挟むとともに支柱3の外周面を囲むように支柱3の周方向に延びるバンドであってよい。このバンドの一端部を、図示しない適宜の機構により当該バンドの他端部に固定してよい。この機構は、当該一端部を当該他端部に固定する位置を調整可能であり、これにより、防水部11の上端部を支柱3の外周面に締め付ける力が調整可能になっていてよい。
【0035】
シーリング材19は、防水部11の上端を自身の内部に埋め込むようにシールカバー13の下面と防水部11の上端との隙間に充填されている。シーリング材19は、例えばシリコンを主成分とするものであってよい。シーリング材19は、上記隙間に充填される時には不定形であり、当該充填の後に硬化するものであってよい。
【0036】
落下防止のために、図2の例では、防水部11よりも上方において、支柱3の上側部分には手摺23が結合されている。例えば、手摺23は、ボルト25により支柱3に結合されている。この場合、支柱3の上側部分には(図1では、支柱3の上端面に開口する)ねじ穴3bが形成されている。このねじ穴3bには、手摺23に形成された穴を貫通するボルト25の雄ねじ部25aが螺合している。このボルト25の頭25bと支柱3(支柱3の上端面)とで手摺23を挟み込むことにより、手摺23が支柱3に結合されている。
【0037】
上述した構成により支柱3に結合された手摺23は、当該支柱3から別の支柱3まで(例えば図2の紙面と垂直な方向)に延びて、上述と同様の構成により当該別の支柱3に結合されていてよい。
【0038】
図2の例では、上述の手摺23として第1及び第2の手摺23a,23bが支柱3に結合されており、第1の手摺23aは、図2の支柱3から図2の紙面の奥側へ別の支柱3まで延びており、第2の手摺23bは、図2の支柱3から図2の紙面の手前側へ更に別の支柱3まで延びている。なお、図2では、1つのボルト25が第1及び第2の手摺23a,23bの穴を貫通しており、当該ボルト25の頭25bと支柱3(支柱3の上端面)とで、第1及び第2の手摺23a,23bを挟み込んでいる。また、第1及び第2の手摺23a,23bの間には、第1及び第2の手摺23a,23bのどちらか一方に点溶接されたスペーサ27が設けられてもよい。
【0039】
なお、手摺23を支柱3に結合させる代わりに、頭部にリングが形成されたボルト(アイボルト)をねじ穴3bに螺合させてもよい。このリングに通すことで当該リングに掛けたロープを、屋根1の点検又は作業を行う人の命綱として利用することができる。
【0040】
(第1実施形態の効果)
上述した第1実施形態によると、支柱3の下側部分はコンクリート構造部7に埋設されている。したがって、支柱3の軸方向と直交する方向に支柱3に作用する力がコンクリート構造部7に強固に支持される。また、定着部5は、支柱3の下端から上端に向かう方向にコンクリート構造部7に係止される被係止部5bを有する。したがって、支柱3に対してその軸方向上側に作用する力がコンクリート構造部7に強固に支持される。
【0041】
よって、支柱3の上側部分に大きな荷重が作用しても、支柱構造10は、当該荷重を支持することができる。このように、支柱構造10は、高い耐荷重性を有するので、落下防止のための構造物として利用できる。例えば、図2のように、支柱3に設けた手摺23に過大な荷重(例えば1トンを超える荷重)が作用しても、この荷重を支柱構造10により支持できる。
【0042】
また、支柱構造10は、定着部5が結合された支柱3の下側部分をコンクリート構造部7内に埋設することで構築できる。よって、作業者が落下することを防止するための構造を、より少ない施工作業で構築できる。
【0043】
支柱3は、屋根1の上面1aを覆う防水層9を貫通しているが、支柱3の上側部分の外周面には防水部11が取り付けられ、この防水部11の下端部は、防水層9と水密に結合されている。また、防水部11の上端を上方から覆う鍔状のシールカバー13が支柱3に取り付けられている。したがって、支柱3の外周面を通って雨水が屋根1の内部へ進入することを防止できる。よって、支柱3が屋根1の上面1aの防水層9を貫通していても、屋根1の防水性能が損なわれない。
【0044】
(第2実施形態)
図3は、図1の部分拡大図に対応し、本発明の第2実施形態による支柱構造10を示す。以下において、第2実施形態について説明するが、以下で説明しない点は、第1実施形態と同じであってよい。
【0045】
第2実施形態では、コンクリート構造部7は、コンクリートの上面1aに形成された穴7a1を有する。この穴7a1を形成するための穴用型枠(例えば厚紙で形成された中空の円柱形型枠)をコンクリート7aの打設前に配置する。コンクリート7aの打設後に、当該穴用型枠の上端部は、コンクリート7aの上面1aから上方に突出していてよい。コンクリート7aの打設後に、当該穴用型枠をコンクリート7aから取り外すと、当該型枠を配置していた箇所に穴7a1が形成されている。
【0046】
なお、上記の穴用型枠は、先に打設したコンクリート7aの下側部分7a2の上面に対して適宜の手段で固定し、その後、コンクリート7aの上側部分7a3を打設してよい。例えば、下側部分7a2の上面に仮枠アンカーを取り付け、この仮枠アンカーに上記の穴用型枠を固定し、その後、コンクリート7aの上側部分7a3を打設してよい。その後、穴用型枠(又は、穴用型枠と仮枠アンカーの両方)をコンクリート7aから取り外すと、当該型枠を配置していた箇所に穴7a1が形成されている。
【0047】
上述のように形成した穴7a1に支柱3の下側部分と定着部5を配置する。この時、定着部5の下端面(ボルト5の先端面)が穴7a1の底面に接していてよい。この状態で、穴7a1にモルタル29を充填する。これにより、モルタル29の内部に支柱3の下側部分が埋設される。
【0048】
第2実施形態による支柱構造10によると、モルタル29はコンクリート7aに強固に結合されているので、第1実施形態の場合と同様の効果が得られる。このような強固な結合力が得られるように、穴7a1の深さや断面積が設定されてよい。
【0049】
また、第2実施形態では、コンクリート7aの上面1aに形成した穴7a1に支柱3の下側部分を配置して穴7a1にモルタル29を充填すればよいので、コンクリート7aの打設時に、支柱3を他の構造体に支持させる大掛かりな支持機構を設けなくてもよくなる。
【0050】
図4は、図3の部分拡大図に相当するが、穴7a1へのモルタル充填作業の説明図である。図5は、図4のV-V矢視図である。例えば、図4図5のように、穴7a1に支柱3の下側部分を配置した状態で、穴7a1の底部にのみモルタル29を入れ、穴7a1における開口近傍の内周面と支柱3の外周面との間に複数の仮固定部材8(キャンバー)を配置することにより、支柱3を仮固定する。次いで、穴7a1の底部におけるモルタル29が硬化した後、仮固定部材8を取り外し、穴7a1の全体にモルタル29を新たに充填する。したがって、支柱3の下側部分をコンクリート構造部7に埋設する作業が簡単になる。
【0051】
なお、第2実施形態において、例えば穴7a1の内径が大きい場合には、モルタル29の代わりにコンクリートを穴7a1に充填してもよい。
【0052】
(第3実施形態)
図6は、図2に対応する図であるが、本発明の第3実施形態による支柱構造10を示す。以下において、第3実施形態について説明するが、以下で説明しない点は、第1実施形態と同じであってよい。
【0053】
第3実施形態では、支柱3の下側部分におけるねじ穴3aは、支柱3の軸方向に直交する方向に形成されている。このねじ穴3aに定着部5の雄ねじ部5aが螺合している。定着部5は、支柱3の軸方向に直交する方向に支柱3から突出している部分を上述の被係止部5bとして有する。
【0054】
ねじ穴3aは、図6のように支柱3を貫通していてよい。この場合、定着部5が支柱3の軸方向に直交する方向に貫通するように、その雄ねじ部5aがねじ穴3aに螺合している。したがって、定着部5は、支柱3の外周面において互いに反対側の位置から互いに反対方向に突出している部分を被係止部5bとして有する。定着部5は、例えばM16のボルトであってよい。
【0055】
また、支柱3は中実に形成されていてよい。すなわち、支柱3は、コンクリート構造部7内の所定深さからコンクリート構造部7の上面1aよりも上方の所定高さまでの連続範囲において中実に形成されていてよい。この連続範囲は、後述のねじ穴3a,3cと貫通穴3dが形成された部分を含まない。ねじ穴3a,3cと貫通穴3dが支柱3の下端部及び上端部に形成されている場合又は他の場合、上記の連続範囲は、支柱3の下端部及び上端部以外の全範囲であってよい。
【0056】
支柱3は、コンクリート7aの打設前において、図6に示すように支持機構31を介して複数枚の合板32に支持されている。合板32は、コンクリート7aを打設するための型枠として用いられる。支持機構31は、図6の例では、ボルト33、ナット35、棒状板37、ボルト39、支持部材41,43、及び軸足ボルト42を有する。
【0057】
ボルト33は、その上端部が支柱3の下端面に開口するねじ穴3cに螺合している。ナット35は、ボルト33の中間部に螺合している。
【0058】
棒状板37と2つのボルト39を1組として、2組が設けられている。一方の組の棒状板37は、図6の左右方向に延びており、他方の組の棒状板37は、図6の紙面と垂直な方向に延びており、当該他方の組の2つのボルト39は図示されていない。2本の棒状板37の中間部は、支柱3の下端面とナット35とにより挟み込まれている。
【0059】
各棒状板37は、支柱3の軸方向と直交する方向に細長く延びており、支柱3の軸方向の厚みを有する。各棒状板37の各端部にはねじ穴が形成され、当該ねじ穴を支柱3の軸方向にボルト39が貫通するように、当該ねじ穴にボルト39が螺合している。
【0060】
2つの支持部材(Pコン)41,43には、支柱3の軸方向に貫通するねじ穴が形成されている。支持部材41のねじ穴には、ボルト33の下側部分と軸足ボルト42の上側部分が螺合している。支持部材43のねじ穴には、軸足ボルト42の下側部分が螺合している。軸足ボルト42は、複数枚の合板32を貫通しており、2つの支持部材41,43により複数枚の合板32を挟み込んでいる。
【0061】
また、各ボルト39の下端面は、最上部の合板32の上面に当接している。複数枚の合板32は、図示しない部材などにより建物の構造体に支持されていてよい。
【0062】
なお、合板32と支持部材41,43と軸足ボルト42は、打設したコンクリート7aが十分な強度を発現した後に撤去されてよい。
【0063】
図6の例では、防水部11よりも上方において、支柱3の上側部分にはロープ用の貫通穴3d(この図では2つの貫通穴3d)が形成されている。この貫通穴3dに通すことで支柱3に掛けたロープを、屋根1の点検又は作業を行う人の命綱として利用することができる。
【0064】
第3実施形態による支柱構造10においても、第1実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0065】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上述した各実施形態による支柱構造10は、上述した複数の要素の全て有していなくてもよく、上述した複数の要素のうち一部のみを有していてもよい。
【0066】
また、以下の変更例1~3のいずれかを単独で採用してもよいし、変更例1~3の2つ以上を任意に組み合わせて採用してもよい。この場合、以下で述べない点は、上述と同じである。
【0067】
(変更例1)
上述した第1実施形態、第2実施形態、又は第3実施形態のいずれかにおいて、一部の構成を上述した他の実施形態における対応する構成に置き換えてもよい。例えば、第1実施形態又は第2実施形態において、支柱3に結合させる手摺23に関する構成を第3実施形態のロープ用の貫通穴3dに置き換えてもよい。
【0068】
(変更例2)
上述した各実施形態において、防水プレート9aが省略されてもよい。この場合、他の点は上述と同じであってよい。例えば、防水シート11の下端部は、適宜の手段によりコンクリート7aに結合されてよい。
【0069】
(変更例3)
防水層9と防水部11の各々は、アスファルト熱工法により形成されたアスファルト防水材であってもよい。この場合、防水部11の下端部は、防水層9と一体的に形成されていることにより、防水層9と水密に結合されていてよい。
【符号の説明】
【0070】
1 屋根、1a 上面、3 支柱、3a ねじ穴、3b ねじ穴、3c ねじ穴、3d 貫通穴、5 定着部(ボルト)、5a 雄ねじ部、5b 被係止部(頭)、7 コンクリート構造部、7a コンクリート、7a1 穴、7b 鉄筋、9 防水層(防水シート、防水プレート、アスファルト防水材)、9a 防水プレート、9b 防水シート、10 支柱構造、11 防水部(防水シート、アスファルト防水材)、13 シールカバー、15 締付け部、17 溶接部、19 シーリング材、21 ビス、23 手摺、23a 第1の手摺、23b 第2の手摺、25 ボルト、25a 雄ねじ部、25b 頭、27 スペーサ、29 モルタル、31 支持機構、32 合板、33 ボルト、35 ナット、37 棒状板、39 ボルト、41,43 支持部材、42 軸足ボルト

図1
図2
図3
図4
図5
図6