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特許7360787ヘッドレスト高さ調整機構付きチャイルド安全シート
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ヘッドレスト高さ調整機構付きチャイルド安全シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/28 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B60N2/28
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018166549
(22)【出願日】2018-09-06
(65)【公開番号】P2019069757
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-07-14
(31)【優先権主張番号】17001495.5
(32)【優先日】2017-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518318060
【氏名又は名称】ブリタックス レーマー キンデルジッヒャーハイト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】BRITAX ROMER Kindersicherheit GmbH
【住所又は居所原語表記】Theodor-Heuss-Strasse 9 89340 Leipheim Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンセラー リヒャルト
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077876(JP,A)
【文献】特表2009-502595(JP,A)
【文献】特開2010-64737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャイルド安全シート(100)であって、
シートシェル(1)と、
ヘッドレスト(2)と、
前記チャイルド安全シート(100)の一体型ハーネスシステム(5)の紐(51)を案内するための、前記シートシェル(1)に摺動可能に連結された案内部品(3)と、
第1の構成および第2の構成に配置されるように構成された連結要素(4)を含む、前記ヘッドレスト(2)の高さを調整するための調整機構と、を備え、
前記第1の構成に配置されたとき、前記シートシェル(1)に対して前記案内部品(3)と一緒に前記ヘッドレスト(2)を移動させることができるように、前記連結要素(4)が前記ヘッドレスト(2)を前記案内部品(3)に連結し、
前記第2の構成に配置されたとき、前記案内部品(3)が前記シートシェル(1)に対して移動するのを防止するように、かつ前記シートシェル(1)に対する前記ヘッドレスト(2)の移動を可能にするように、前記連結要素(4)が前記シートシェル(1)を前記案内部品(3)に連結し、
前記シートシェル(1)は、
着座部(12)を備え、
前記調整機構は、前記着座部(12)と異なる高さで前記ヘッドレスト(2)を前記シートシェル(1)と係合させるように適合された係止機構をさらに備え、
前記係止機構は、前記シートシェル(1)に取り付けられた歯付きラック(9)と、係止要素(84)とをさらに備え、前記係止機構は、前記ヘッドレスト(2)が前記シートシェル(1)に係合しているときに、前記係止要素(84)が前記歯付きラック(9)に受け入れられるように構成され、
前記チャイルド安全シート(100)は、
前記連結要素(4)が前記第1の構成にあるとき、最低位置から、前記最低位置より前記着座部(12)から離れた中間位置の範囲の高さで、前記ヘッドレスト(2)が前記シートシェル(1)に係合可能なように構成されており、
前記連結要素(4)が前記第2の構成にある場合、前記中間位置から、前記中間位置よりも前記着座部(12)からさらに離れた最高位置までの範囲の高さで、前記ヘッドレスト(2)が前記シートシェル(1)に係合可能なように構成され、
前記連結要素(4)は、前記ヘッドレスト(2)が前記中間位置にある場合のみ、前記第1の構成から前記第2の構成への変更が可能であるように構成されている、チャイルド安全シート(100)。
【請求項2】
前記第1の構成に配置されたとき、前記ヘッドレスト(2)と前記案内部品(3)との間の距離は、それらの移動の際に一定となるように、前記連結要素(4)が前記ヘッドレスト(2)を前記案内部品(3)にさらに連結する、請求項1に記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項3】
前記係止機構は、前記連結要素(4)が前記第1の構成にあるときには、前記最低位置から前記中間位置まで、前記連結要素(4)が前記第2の構成にあるときには、前記中間位置から前記最高位置まで、前記ヘッドレスト(2)を移動させるように作動可能なアクチュエータ(8)をさらに備える、請求項1または2に記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項4】
前記シートシェル(1)は、背もたれ部(11)をさらに備え、前記連結要素(4)が前記第1の構成に配置されるとき、前記案内部品(3)は前記背もたれ部(11)に沿って摺動可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項5】
前記シートシェル(1)の前記背もたれ部(11)は、背もたれ開口(6)を備え、前記連結要素(4)が前記第1の構成に配置されるとき、前記案内部品(3)および前記連結要素(4)は、前記背もたれ開口(6)に摺動可能に取り付けられている、請求項4に記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項6】
前記ヘッドレスト(2)は、前記連結要素(4)が前記第2の構成にあるとき、前記案内部品(3)を受け入れるように適合されたヘッドレスト開口(7)を有し、前記ヘッドレスト(2)の前記ヘッドレスト開口(7)は、前記ヘッドレスト(2)が前記中間位置から前記最高位置に移動することができるように寸法決めされている、請求項1乃至5のいずれかに記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項7】
前記一体型ハーネスシステム(5)の係止部材(54)を受けるように適合された区画(55)と、
遮蔽要素(27)と、をさらに備え、
前記ヘッドレスト(2)が前記着座部(12)から最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、前記遮蔽要素(27)が前記係止部材(54)を受け入れないように前記区画(55)を遮蔽するように、前記遮蔽要素(27)が前記ヘッドレスト(2)に連結される、請求項1乃至6のいずれかに記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項8】
チャイルド安全シート(100)であって、
着座部(12)を有するシートシェル(1)と、
ヘッドレスト(2)と、
係止部材(54)を含む一体型ハーネスシステム(5)と、
第1の構成および第2の構成に配置されるように構成された連結要素(4)を含む、前記ヘッドレスト(2)の高さを調整するための調整機構と、
前記係止部材(54)を受け入れるように適合された区画(55)と、
遮蔽要素(27)と、を備え、
前記ヘッドレスト(2)が前記着座部(12)から最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、前記遮蔽要素(27)が前記係止部材(54)を受け入れないように前記区画(55)を遮蔽するように、前記遮蔽要素(27)が前記ヘッドレスト(2)に連結し、
前記調整機構は、前記着座部(12)と異なる高さで前記ヘッドレスト(2)を前記シートシェル(1)と係合させるように適合された係止機構をさらに備え、
前記係止機構は、前記シートシェル(1)に取り付けられた歯付きラック(9)と、係止要素(84)とをさらに備え、前記係止機構は、前記ヘッドレスト(2)が前記シートシェル(1)に係合しているときに、前記係止要素(84)が前記歯付きラック(9)に受け入れられるように構成され、
前記チャイルド安全シート(100)は、
前記連結要素(4)が前記第1の構成にあるとき、最低位置から、前記最低位置より前記着座部(12)から離れた中間位置の範囲の高さで、前記ヘッドレスト(2)が前記シートシェル(1)に係合可能なように構成されており、
前記連結要素(4)が前記第2の構成にある場合、前記中間位置から、前記中間位置よりも前記着座部(12)からさらに離れた最高位置までの範囲の高さで、前記ヘッドレスト(2)が前記シートシェル(1)に係合可能なように構成され、
前記連結要素(4)は、前記ヘッドレスト(2)が前記中間位置にある場合のみ、前記第1の構成から前記第2の構成への変更が可能であるように構成されている、チャイルド安全シート(100)。
【請求項9】
前記遮蔽要素(27)は、前記ヘッドレスト(2)が前記着座部(12)から前記最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、前記遮蔽要素(27)が前記係止部材(54)の受容に対して前記区画(55)を遮蔽するように、前記ヘッドレスト(2)に連結される、請求項8に記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項10】
前記ヘッドレスト(2)が前記最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、前記係止部材(54)が前記区画(55)内に嵌め込まれないように、前記遮蔽要素(27)は、前記区画(55)内で利用可能な空間を減少させるようにさらに構成されている、請求項8または9に記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項11】
前記遮蔽要素(27)と前記ヘッドレスト(2)との間の連結は、前記ヘッドレスト(2)が前記最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも高い位置に配置されたときに、前記係止部材(54)を前記区画(55)によって受け入れることができるようにされる、請求項8乃至10のいずれかに記載のチャイルド安全シート(100)。
【請求項12】
前記シートシェル(1)が背もたれ部(11)をさらに備え、前記区画(55)が前記背もたれ部(11)に一体化されている、請求項8乃至11のいずれかに記載のチャイルド安全シート(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルド安全シートのヘッドレストの高さを調整する調整機構を備えたチャイルド安全シートに関する。特に、本発明は、ユーザがチャイルド安全シートを一体モードで長期間使用するのを防止し、チャイルド安全シートを非一体モードで時期尚早に使用することを防止する誤用防止機構を備えた複合チャイルド安全シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児のような小児は、一体型ハーネスシステムのような特別な拘束装置を備え、車両の助手席に取り付けられた安全シートにしっかりと保持される。この年齢層では、連結装置としてハーネスバックルを使用した3点または5点ハーネスを備えた安全シートが最も安全な走行方法である。安全シートの3点または5点ハーネスは、子供の肩と臀部をシートにしっかりと固定する。3点または5点のハーネスで子供を適切に固定するには、ハーネスの肩紐が子供の肩に適切に案内されることが重要である。これにより、前方衝突の際には、子供の身体が効果的に拘束および減速される。さらに、子供の頭部を保護するために、チャイルドシートのヘッドレストは、衝撃からの力が頭部から外れるように、正確に調整される必要がある。
【0003】
子供のサイズおよび年齢にしたがって肩紐およびヘッドレストの調整を容易にするために、これまでのチャイルド安全シートには、ハーネスとヘッドレストを連結する調整機構を備えるものがある。このため、ヘッドレストの調整によってハーネスが正しく調整され、その逆もある。
【0004】
年長児は、ハイバックブースターシート付きの3点アダルトシートベルトを使用することができる。これは、3点アダルトシートベルトを子供の体に正しく配置するためである。また、そのようなチャイルドシートは、高さ調整可能なヘッドレストを備える。
【0005】
上記から、チャイルド安全シートは、一体型ハーネスシステムと共に使用するか、またはチャイルド安全シートに子供を拘束するために車両の安全ベルトに接続して使用することができる。子供を拘束するためにアダルトシートベルトなどの車両に直接接続する手段を使用するチャイルド安全シートは、いわゆる非一体型に分類される。
【0006】
いわゆる複合チャイルドシート、または、いわゆるグループ123チャイルドシートも存在する。複合チャイルドシートは、小児及び年長児のための異なる安全システムを1つのシートに組み合わせることを可能にする。小児のために使用される場合、子供を固定するために、複合チャイルドシートの一体型ハーネスシステムが使用される。これはいわゆる一体モードである。一体型ハーネスは、3点ハーネスまたは5点ハーネスの何れかであり得る。3点ハーネスは2つの肩紐を備える。各肩紐の一端には、ハーネスバックルと係合するように適合された舌部が接続されている。各肩紐の他端は、複合チャイルドシートに連結されている。5点ハーネスは2本の紐をさらに備える。各紐の一端は、複合チャイルドシートのシートベースに接続されている。バックル舌部は、各紐に摺動可能に接続される。子供を固定するために、バックル舌部をハーネスバックルに挿入する。シートベースから舌部まで延びる紐の部分は、子供の臀部/大腿部の上に案内される。複合チャイルドシートの舌部から背もたれまで延びる紐の部分は、子供の肩の上に案内される。子供が成長すると、その子供は車両の安全ベルトによって複合チャイルドシートに固定される。そして、一体型ハーネスシステムはしまうことができる。これは、いわゆる非一体モードである。複合チャイルドシートは、より広い範囲の子供の年齢層にわたって使用することができる。
【0007】
一体モードは約1歳に開始し、約4歳以上で終了する。非一体モードは約3歳で始まり、12歳で終わる。したがって、チャイルド安全シートが一体モードまたは非一体モードの何れかで使用できる約3~4歳の重複範囲がある。このため、いくつかの潜在的な誤用の原因が存在する。すなわち、チャイルド安全シートが一体モードで長期間使用される場合がある。同様に、一体モードから非一体モードへの変更が時期尚早である可能性がある。上述した重複範囲である約3~4歳の範囲外で一体モードから非一体モードへの変更を実行すると、チャイルド安全シートが適切なモードで使用されない場合、車両事故における子供の重傷のリスクが大幅に増加する。
【0008】
さらに、一体モードから非一体モードへの従来の複合チャイルドシートの変換は、一般的に非常に面倒である。上述したように、複合チャイルドシートが一体型ハーネスシステムと共に使用されるとき、すなわち一体モードで使用されるとき、一体型ハーネスシステムは一般にヘッドレストに連結される。一体モードでは、従来の複合シートは、ヘッドレストおよびハーネスを調整するためのアジャスタをシートの後部に備える。非一体モードへの変換のために、従来の複合チャイルド安全シートの多くは、ハーネスを取り外す必要がある。これが行われた場合にのみ、ヘッドレストをさらに持ち上げることができる。しかしながら、ヘッドレストのさらなる持ち上げは、第2のアジャスタによって行われなければならない。このため、従来のチャイルド安全シートは、シートが使用される一体モードまたは非一体モードに応じて、ヘッドレストの高さを調整するために2つの別々のアジャスタを使用する。これにより、変換が煩雑になるばかりでなく、ユーザが一体型ハーネスシステムを再装備する必要がある場合に特にリスクが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、一体モードと非一体モードとの間のより簡単で迅速な変換を可能にする使い易さが向上したチャイルド安全シートを提供し、非一体モードの長期間の使用を防止し、および/または非一体モードの時期尚早の使用を防止する誤用防止機構付きのチャイルド安全シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載のチャイルド安全シートおよび請求項10に記載のチャイルド安全シートによって達成される。本発明のさらに有利な実施形態は、請求項2~9および請求項11~15に示される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、シートシェルと、ヘッドレストと、チャイルド安全シートの一体型ハーネスシステムの紐を案内するために、シートシェルに摺動可能に連結される案内部品と、連結要素を備えるヘッドレストの高さを調整するための調整機構と、を含むチャイルド安全シートが提供されている。連結要素は、第1の構成および第2の構成に配置されるように構成される。第1の構成に配置されるとき、連結要素は、ヘッドレストを案内部品と連結して、シートシェルに対する案内部品と共にヘッドレストの移動を可能にする。第2の構成に配置されるとき、連結要素は、案内部品がシートシェルに対して移動するのを防止し、シートシェルに対するヘッドレストの移動を可能にするように、シートシェルを案内部品に連結する。
【0012】
2つの構成のために、連結要素を配置することができ、チャイルド安全シートのヘッドレストの高さ調整は、一体型ハーネスシステムまたはチャイルド安全シートに子供を固定するための車両の安全ベルトと共に使用されるときに達成され得る。チャイルド安全シートは、一体モードまたは非一体モードで使用できる。チャイルド安全シートが非一体モードで使用される場合でも、一体型ハーネスシステムを取り外す必要はない。チャイルド安全シートの一体モードは、チャイルド安全シートに子供を固定するための一体型ハーネスシステムの使用によって規定される。非一体モードは、チャイルド安全シートに子供を固定するための車両の安全ベルトの使用によって規定される。本発明の調整機構は、ヘッドレストが、非一体モードが必須となる年齢に対応する高さに達したときに、一体型ハーネスシステムの紐をヘッドレストから案内するための案内部品を外すために、連結要素のみを作動させる必要があるという利点を有する。好ましくは、第1の構成は一体モード中に使用される。好ましくは、第2の構成は非一体モード中に使用される。有利なことに、案内部品は、一体型ハーネスシステムの肩紐を案内するように構成されたハーネススライダである。第1の構成では、調整機構の連結要素によるヘッドレストと案内部品との連結のために、ヘッドレストの調整により、一体型ハーネスの肩紐が正確に位置決めされ、逆も同様である。連結要素が第2の構成に配置されると、一体型ハーネスシステムの肩紐を案内するための案内部品がヘッドレストから切り離される。シートシェルに対するヘッドレストの移動が可能である一方、案内部品はシートシェルに対する移動が防止される。すなわち、第2の構成に配置されるとき、連結要素は、ヘッドレストの移動の際に案内部品が固定位置にとどまるように、シートシェルを案内部品に連結する。連結要素が第2の構成にあるとき、案内部品を固定することにより、一体型ハーネスをチャイルド安全シートに取り付けたままにすることができる。ヘッドレストからの案内部品の分離のために、ヘッドレストの移動は、もはや案内部品とは関係しない。したがって、一体型ハーネスはヘッドレストが非一体モードで調整されるのを妨げない。したがって、ヘッドレストの高さは、依然として第1の構成と同じように調整することができる。これは、チャイルド安全シートが使用される構成とは無関係に、1つの要素のみが高さ調整のために作動される必要があるという利点を有する。第2の利点は、一体型ハーネスがチャイルド安全シート上に留まることができることである。チャイルドシートが非一体モードで使用されるときにそれを取り外す必要はない。一体型ハーネスを取り外す必要がないので、特に、非一体モードから一体モードに戻して変換する場合に、ユーザによる誤使用が防止される。
【0013】
有利なことに、シートシェルは着座部を備える。着座部は、子供の脚の底部および一部を受け入れるように構成される。
【0014】
好ましくは、チャイルド安全シートは、ヘッドレストが最低位置から、連結要素が第1の構成にある場合に、最低位置よりも着座部から離れた中間位置までの高さでシートシェルと係合することができるように構成される。また、チャイルド安全シートは、ヘッドレストが、中間位置から、連結要素が第2の構成にある場合、中間位置よりも着座部から離れた最高位置までの高さでシートシェルと係合することができるように構成されていることが好ましい。最低位置と中間位置との間の範囲は、第1の構成におけるヘッドレストの調整範囲を規定する。最低位置は、ヘッドレストの最低可能位置を規定する。好ましくは、この最低位置は、ヘッドレストが1歳の子供に適合するように選択される。中間位置は、連結要素が第1の構成、好ましくは一体モードであるときのヘッドレストの最高可能位置を規定する。言い換えれば、中間位置より上では、一体型ハーネスシステムの紐のための案内部品は、ヘッドレストの移動から切り離される。例えば、一体型ハーネスシステムの肩紐の出口を有する案内部品を中間位置を越えて更に上昇させることは不可能である。さらに、連結要素が第1の構成に配置されている限り、ヘッドレストは中間位置よりも高い位置に配置されなくてもよい。これは、チャイルド安全シートに座っている年長児の場合、一体型ハーネスシステムの紐を子供の肩の上に正しく案内したり、ヘッドレストの高さを適切に調整することができないことを意味する。したがって、年長児のために一体型ハーネスシステムを使用しようとするユーザは、これがほとんど不可能であることを認識するであろう。したがって、チャイルド安全シートが一体モードで長期間使用されることは避けられる。
【0015】
この中間位置は、ヘッドレストが4歳の子供に適合するように選択されると有利である。最低位置と中間位置との間の距離は、好ましくは9cmと13cmの間、有利には、10.5cmと11.1cmの間、最も好ましい値は11.1cmである。
【0016】
最高位置は、連結要素が第2の構成、好ましくは非一体モードであるときのヘッドレストの最高可能位置を規定する。最高位置は、好ましくは、ヘッドレストを配置できる最高可能位置である。この最高位置は、ヘッドレストが12歳の子供に適合するように選択されると有利である。中間位置と最高位置との間の距離は、好ましくは12cm~16cmの間、有利には13.5cm~14.5cmの間、最も好ましい値は14.2cmである。
【0017】
調整範囲は、人体測定データから取ることができる。一体モードでは、着座部から測定した場合、肩の高さは28cmから39.1cmまで可変でなければならない。案内部品は、好ましくは、一体型ハーネスの肩紐が、子供の肩の上で略水平に案内部品から離れて案内されるように配置されるので、案内部品は、着座部から測定して27cmと着座部から測定して40cmの間、有利には着座部から測定して28cmと着座部から測定して39.5cmの間で移動するように適合される。最低位置は、着座部から27cmと28cmの間に位置することが好ましい。中間位置は、着座部から39cmと39.5cmの間に位置することが好ましい。非一体モードでは、着座部から測定した場合、肩の高さは39.1cmから53.3cmまで可変である必要がある。
【0018】
ヘッドレストは、チャイルドシートに座っている子供の肩に接触しそうになると、ヘッドレストの下縁が正確に位置決めされるので、ヘッドレストは、着座部から測定して27cmと着座部から測定して55cmの間の範囲、有利には着座部から測定して28cmと着座部から測定して53.5cmの間で移動するように適合される。最低位置は、着座部から27cmと28cmの間に位置することが好ましい。最高位置は、着座部から53.0cmと53.5cmの間に位置することが好ましい。
【0019】
有利なことに、連結要素は、ヘッドレストが中間位置にある場合にのみ、第1の構成から第2の構成への変更が可能であるように構成される。これは、ヘッドレストが第1の構成において最高可能位置に配置されている場合、第1の構成から第2の構成への変更のみが可能であることを意味する。利点は、誤用が防止され、年長児が一体型ハーネスシステムで長期間固定されることを防止することである。したがって、ヘッドレストを中間位置を越えた高さに調整することが必要となると、ユーザは、車両の安全ベルトで子供を固定することが強制される。
【0020】
有利なことに、非一体モードでは、一体型ハーネスの肩紐を、チャイルド安全シートの背もたれカバーの後ろに収納してもよいし、隠してもよい。子供の背が肩紐に直接接触していないので、後者が非一体モードで使用されるとき、カバーの背後に肩紐が隠されていることにより、シートに座っている子供の快適さが増す。
【0021】
有利なことに、連結要素は、第1の構成に配置されると、ヘッドレストと案内部品との間の距離がそれらの移動の際に、一定に保たれるように、ヘッドレストを案内部品にさらに連結する。好ましくは、この距離は、案内部品がヘッドレストの下縁に位置するように選択される。これにより、ハーネスシステムの肩紐は、チャイルド安全シートに座っている子供の肩の上に略平行に通過できるように配置される。これは、肩紐の正しい位置である。連結要素が第1の構成にある限り、距離は変化しないので、ヘッドレストの調整により、一体型ハーネスが自動的に調整され、逆も同様である。一体型ハーネスの調整は、案内部品、ひいてはそれを通って案内される肩紐が正しい高さにあるようなものである。
【0022】
有利なことに、調整機構は、着座部から異なる高さでヘッドレストをシートシェルと係合させるように適合された係止機構をさらに備える。係止機構はヘッドレストを異なる高さに固定する利点を有する。これにより、子供のさまざまなサイズと年齢に応じてヘッドレストを調整することができる。好ましくは、係止機構は、ヘッドレストを徐々に変位できるように適合されている。あるいは、ヘッドレストの連続的な変位が有利かもしれない。
【0023】
有利なことに、調整機構の係止機構は、連結要素が第1の構成にあるときにヘッドレストを最低位置から中間位置に移動させ、連結要素が第2の構成にあるときに、中間位置から最高位置に移動するように作動可能なアクチュエータをさらに備える。第1の構成および第2の構成の両方においてヘッドレストを移動させるように作動可能なアクチュエータは、ヘッドレストの高さ調整が1つの単一の作動要素によって行われ得るという利点を有する。同アクチュエータの作動は、連結要素の第1の構成および第2の構成におけるヘッドレストの高さを調整するのに十分である。アクチュエータは、ヘッドレストの上部に配置されることが好ましい。これにより、シートが車両に設置されているとき、または子供がチャイルド安全シートに座らせているときでさえ、ヘッドレストの調整が可能になる。
【0024】
好ましくは、係止機構は、シートシェルに取り付けられた歯付きラックと係止要素とを備え、係止機構は、ヘッドレストがシートシェルと係合したときに係止要素が歯付きラックによって受けられるように構成される。歯付きラックは、シートシェルと一体的に形成されてもよく、あるいは別個の構成要素であってもよい。歯付きラックおよび係止要素は、ヘッドレストを徐々に変位できる簡単な機構を提供する。アクチュエータの作動時に係止要素が歯付きラックから外れるように、係止機構が構成されているとさらに好ましい。これにより、ヘッドレストの高さ調整は、アクチュエータのみを作動することにより必ず行うことができる。すなわち、アクチュエータを作動することにより、ヘッドレストが歯付きラックとの係合から解放され、ヘッドレストをシートシェルの上または下に移動させることが可能になる。
【0025】
有利なことに、シートシェルは、連結要素が第1の構成に配置されるとき、案内部品が背もたれ部に沿って摺動可能である背もたれ部をさらに備える。これは、好ましくは、チャイルド安全シートが一体モードで使用されるときに一体型ハーネスシステムの調整を可能にする。好ましくは、シートシェルの背もたれ部は、背もたれ開口を備え、連結要素が第1の構成に配置されるとき、案内部品および連結要素は背もたれ開口に摺動可能に取り付けられる。背もたれ開口は、有利には、案内部品の案内レールを提供する。背もたれ開口が連結要素の案内レールをも提供するならば、さらに有利である。好ましくは、シートシェルの背もたれ開口は、ヘッドレストが最低位置から中間位置に移動することができるように寸法決めされる。
【0026】
有利なことに、ヘッドレストは、連結要素が第2の構成にあるときに案内部品を受け入れるように適合されたヘッドレスト開口を有し、ヘッドレスト開口は、ヘッドレストが中間位置から最高位置に移動できるように寸法決めされる。ヘッドレスト開口は、一旦連結要素が第2の構成に配置されると、案内部品が中間位置に固定されているときでさえ、ヘッドレストを調整することを可能にする。
【0027】
好ましくは、連結要素は、変換スイッチ、旋回レバー、または摺動要素である。これらは、安価で生産しやすい構成要素である。
【0028】
有利なことに、チャイルド安全シートは、一体型ハーネスシステムの係止部材を受け入れるように適合された区画と、遮蔽要素と、をさらに備え、遮蔽要素は、ヘッドレストが着座部から最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、遮蔽要素が係止部材の受容に対して区画を遮蔽するように、ヘッドレストに連結される。有利なことは、以下の本発明の第2の態様に関して記述され、明らかになるであろう。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、着座部を有するシートシェルと、ヘッドレストと、係止部材を備える一体型ハーネスシステムと、ヘッドレストの高さを調整する調整機構と、係止部材を受け入れるように適合された区画と、遮蔽要素と、を含むチャイルド安全シートが提供される。遮蔽要素は、ヘッドレストが着座部から最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、遮蔽要素が係止部材の受け入れに対して区画を遮蔽するように、ヘッドレストに連結される。
【0030】
最も低い非一体位置は、一体モードから非一体モードへの切り替えが許容されるヘッドレストの最低位置を規定する。好ましくは、ヘッドレストの最も低い非一体型ヘッドレスト位置は、3歳の子供に対応している。ヘッドレストが最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、遮蔽要素が係止部材の受け入れに対して区画を遮蔽するので、非一体モードの時期尚早な使用は避けられる。一体型ハーネスシステムの係止部材を収納しようとするユーザは、これが不可能であることに気付くであろう。したがって、ユーザは、チャイルド安全シートをさらに一体モードで使用しなければならないことを認識するであろう。係止部材は、好ましくは、一体型ハーネスシステムのバックル舌部を備える。
【0031】
有利なことに、ヘッドレストが最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、係止部材が収納されるために区画内に利用可能な空間がないか、または空間が不十分である。ヘッドレストが最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、区画には外部からアクセスできない可能性もある。好ましくは、区画は、係止部材を受け入れるためのポケットを備える。
【0032】
好ましくは、ヘッドレストと遮蔽要素との間の連結は、剛的な接続によって達成される。これにより、ヘッドレストのいかなる動きも遮蔽要素に確実に変換される。
【0033】
有利なことに、遮蔽要素は、係止部材が区画に受け入れられる限り、着座部からの最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さの配置に抗してヘッドレストを遮蔽するようにヘッドレストにさらに連結される。好ましくは、ヘッドレストの遮蔽は、遮蔽要素と区画に受け入れられた係止部材との間の物理的接触によって生じる。これにより、チャイルド安全シートが非一体モードで時期尚早に使用されることはやはり回避される。チャイルド安全シートは、車両の安全ベルトを用いて子供がチャイルド安全シートに固定されるとき、非一体モードで使用される。したがって、一体型ハーネスシステムの係止部材が区画内に収納される限り、チャイルド安全シートは一体モードで使用することができない。係止部材が区画内に収納されるか、区画によって受け取られる状況は、通常、非一体モードで年長児のために使用されるチャイルド安全シートが、一体モードで小児に使用されるチャイルド安全シートに戻して変形されるときに生じる。この状況では、ユーザはまだそれに従わない子供のために非一体モードを使用することが起こり得る。しかしながら、このような状況は、本発明によればユーザがヘッドレストを最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い位置に持ってくることができないので生じない。したがって、小児に非一体モードを使用しようとするユーザは、ヘッドレストを適切に調整するためには一体モードに切り替える必要があることを認識するであろう。
【0034】
有利なことに、遮蔽要素は、ヘッドレストが最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、係止部材が区画内に収まらないように区画内で利用可能な空間を縮小するようにさらに構成される。これは、ヘッドレストが少なくとも最も低い可能な非一体型ヘッドレスト位置に配置されるまで、係止部材が確実に収納されないようにする簡単な方法である。さらに、ヘッドレストが非一体型ヘッドレスト位置よりも低く配置されている限り、係止部材が区画に受け入れられるのに十分な空間がないので、係止部材が区画内に収納されている限り、ヘッドレストを最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低く下げることはできないことになる。係止部材は、区画の空間をさらに縮小させようとする遮蔽要素を物理的に遮蔽する。好ましくは、遮蔽要素の遮蔽がヘッドレストの遮蔽を引き起こすように、遮蔽要素はヘッドレストに連結される。
【0035】
有利なことに、遮蔽要素とヘッドレストとの間の連結は、さらに、ヘッドレストが最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも高い高さに配置されたときに、係止部材が区画によって受け入れ可能なようになっている。これにより、そうするためにヘッドレストの最低許容高さに達したときに非一体モードに切り替えることができる。
【0036】
好ましくは、シートシェルは背もたれ部をさらに備え、区画は背もたれ部に一体化されている。チャイルド安全シートの背もたれ部に一体化された区画は、容易に到達可能であるという利点を有する。さらなる利点は、一体モードから非一体モードに切り替えるときに、一体型ハーネスシステム全体を取り外す必要がないことである。好ましくは、一体型ハーネスシステムは、背もたれ部のカバーの下に収納されてもよい。係止部材は区画内に収納される。
【0037】
本発明の第1の態様によるチャイルド安全シートは、本発明の第2の態様の任意の特徴と組み合わせることができ、その逆も同様であることが理解される。事実、第1の態様の誤用防止機構および第2の態様の誤用防止機構が1つの単一のチャイルド安全シートに一体化されていると特に有利である。これは、一体モードから非一体モードへの時期尚早な切り替えと、一体モードの長期間使用に対して最大限の保護を提供する。
【0038】
有利なことに、チャイルド安全シートは、一体型ハーネスシステムまたは車両の安全ベルトと共に使用するように構成された複合チャイルド安全シートである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して例により説明する。
図1a】ヘッドレストが最低可能位置に配置された一体型ハーネスシステムを備えた本発明に係るチャイルド安全シートを示す。
図1b】一体モードでヘッドレストが最高可能位置に配置された一体型ハーネスシステムを備えたチャイルド安全シートを示す。
図2】非一体モードで車両の安全ベルトと共に使用されるチャイルド安全シートであって、ヘッドレストが最高可能位置に配置された場合を示す。
図3】本発明に係る一体モードを長期間使用することを防止する誤用防止機構を備えたチャイルド安全シートの分解図を示す。
図4a】本発明に係る一体モードを長期間使用することを防止する誤用防止機構を備えた高さ調整機構の、ヘッドレストが最低可能位置にある状態における断面図を示す。
図4b】本発明に係る一体モードを長期間使用することを防止する誤用防止機構を備えた高さ調整機構の、ヘッドレストが中間位置にある状態、すなわち一体モードで最高可能位置にある状態における断面図を示す。
図5a】一体モードを長期間使用することを防止する誤用防止機構を備えたチャイルド安全シートの連結要素の第1の構成から第2の構成までの変換のステップの概略を説明する図である。
図5b】一体モードを長期間使用することを防止する誤用防止機構を備えたチャイルド安全シートの連結要素の第1の構成から第2の構成までの変換のステップの概略を説明する図である。
図6】ヘッドレストを最高可能位置に配置した本発明に係る非一体モードの高さ調整機構の断面図を示す。
図7】ヘッドレストをシートシェルに係合させるための係止機構を示す。
図8a】チャイルド安全シートを一体モードにして、非一体モードの時期尚早な使用を防止するための誤用防止機構の断面図を示す。
図8b】一体モードから非一体モードへの変更が可能である場合に、非一体モードの時期尚早な使用を防止するための誤用防止機構の断面図を示す。
図8c】チャイルド安全シートを非一体モードにして、非一体モードの時期尚早な使用を防止するための誤用防止機構の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1aには、本発明によるチャイルド安全シート100が示されている。チャイルド安全シート100は、シートシェル1と、ヘッドレスト2と、を備える。シートシェル1は、子供を収容するためのものである。シートシェル1はカバーで覆われている。カバーはパッド入りである。シートシェル1は、特に、子供の背を受けるための背もたれ部11を備える。シートシェル1は、特に、子供の臀部および脚の一部を受けるための着座部12をさらに備える。ヘッドレスト2はその最低位置に示されている。すなわち、ヘッドレスト2とシートシェル1の着座部12との間の距離は最小限である。この位置は、約1歳の小児に適している。ヘッドレスト2は、子供の頭部を受けるための中央領域21を有する。さらに、ヘッドレスト2は、2つの側方部22を備える。これらの側方部22は、側翼を有する。それらはパッド入りでもよい。側方部22は、特に側突の場合には、子供の頭部を囲み、保護する。チャイルド安全シート100は、一体型ハーネスシステム5をさらに備える。一体型ハーネスシステム5のうち、肩紐51、ラップ紐52およびバックル舌部を備えたハーネスバックル53が示されている。図1aに示す一体型ハーネスシステム5は、5点ハーネスシステムである。肩紐51は、シートシェル1の裏側(図示せず)からシートシェル1の前側に案内部品3を通って案内される。
【0041】
図1aにおいて、チャイルド安全シートは、いわゆる一体モードで示されていて、すなわち、チャイルド安全シート100は、一体型ハーネスシステム5と共に使用される。一体モードでは、案内部品3とヘッドレスト2は互いに連結されている。この連結は、連結要素(詳細は後述)を有する調整機構によって達成される。この連結によって、ヘッドレスト2の動きにより、案内部品3の動きが生じる。このために、案内部品3はシートシェル1に沿って摺動可能である。このために、案内部品3は、ハーネススライダとして設計されてもよい。好ましくは、ハーネススライダは、シートシェル1の背もたれ部11に沿って摺動し、一体型ハーネス5の高さを調整するように構成されている。
【0042】
図1bは、図1aのチャイルド安全シート100を依然として一体モードで示している。図1bにおいて、ヘッドレスト2は一体モードで最高可能位置に移動されている。以下では、この位置を、非一体モードにおける最高可能位置から区別するために、「中間位置」と呼ぶ。非一体モードにおける最高可能位置は、チャイルド安全シート100内で達成可能なヘッドレストの最高可能位置である。
【0043】
一体モードでの高さの調整は、アクチュエータ8を作動することによって達成することができる。図1bに示すアクチュエータ8はハンドル81を備える。ハンドル81はヘッドレスト2の上部に一体化される。アクチュエータ8が作動されている限り、ヘッドレストは、最低位置と中間の位置との間の高さに調整されてもよい。高さ調整機構の詳細は、図4図7を参照して後述する。
【0044】
図1aと図1bとを比較すると、一体モードでのヘッドレスト2と案内部品3との連結が明白になる。ヘッドレスト2と案内部品3との間の距離は一定のままである。これにより、一体型ハーネスの肩紐51を、チャイルド安全シートの乗員の肩の上で案内部品3から略水平に案内することができる。これは、正面衝突の場合に子供の最も効率的な拘束を保証するために、肩紐51の最適な経路である。ヘッドレスト2の下縁23は、肩紐51用の案内部品3の出口のわずかに上に位置する。したがって、ヘッドレスト2の高さを調整するために、ヘッドレスト2の下縁23をチャイルド安全シートの乗員の肩の上の正しい位置に持ってくるには十分である。したがって、案内部品3とヘッドレスト2との連結により、肩紐51の誤用または誤配置が大幅に低減される。
【0045】
図2は、図1aおよび1bの非一体モードのチャイルド安全シート100を示す。これは、チャイルド安全シート100に子供を固定するために車両の安全ベルト500が使用されることを意味する。一体型ハーネスはもはや示されていない。しかしながら、本発明によれば、チャイルド安全シート100が非一体モードで使用されるとき、一体型ハーネスを取り外す必要はない。好ましくは、一体型ハーネスは、少なくとも部分的に、シートシェルのカバーまたはシートシェルの背もたれ部によって覆われる。図2図1bとを比較すると、案内部品3は移動していない、すなわち、ヘッドレストが中間位置に位置決めされたときの高さに固定されていることが明らかである。ヘッドレスト2の高さが高くなっている。これは、本発明によれば、非一体モードでは、案内部品3とヘッドレスト2との間の連結が解除されるため可能である。非一体モードにおけるヘッドレスト2の高さの調整は、アクチュエータ8を作動することによって達成することができる。好ましくは、アクチュエータ8は、ヘッドレスト2の上部に配置されたハンドル81を備える。非一体モードの高さ調整機構の詳細は、図5bおよび図6に関して後述する。
【0046】
ヘッドレスト2の高さ調整は、同アクチュエータ8を作動することによって、非一体モードでも一体モードでも行うことができる。
【0047】
図1a、1bおよび2を参照して記載されたチャイルド安全シート100は、いわゆる複合チャイルド安全シートである。このような複合チャイルド安全シートは、約1歳から12歳の子供のために使用することができる。これは、上述したように、一体型ハーネスを備えたチャイルド安全シートから、車両の安全ベルトと共に使用することができるチャイルド安全シートへ変形することができるためである。
【0048】
図3は、本発明のチャイルド安全シート100の分解図である。図3で示されているのは、カバーおよび詰め物が除去されたシートシェル1である。シートシェル1は、背もたれ部11と、着座部12と、を備えている。背もたれ部11には、2つの開口6が見える。さらに、歯付きラック9は、シートシェル1に一体化されている。歯付きラック9は、シートシェル1の背もたれ部11に取り付けられていることが図示されている。図示の実施形態の歯付きラック9は、シートシェル1と一体的に形成されている。しかし、別個の部品として形成することもできる。図3はさらに、ヘッドレスト2(カバーおよび詰め物が除去されている)を示す。ヘッドレスト2は、2つの開口7を備える。一体型ハーネスシステムの肩紐を案内するための案内部品3も示されている。さらに、連結要素4が示されている。案内部品3と連結要素4とを接続するバー34も示されている。さらに、アクチュエータ8が示されている。アクチュエータ8は、ハンドル81と、変換要素82と、バネなどの弾性部品83と、係止バーなどの係止要素84と、を備える。歯付きラック9およびアクチュエータ8は、本発明の係止機構に備えられている。連結要素4および係止機構は、本発明の高さ調整機構の一部である。係止機構の詳細については、図7に関して詳述する。
【0049】
背もたれ部11の開口6は、チャイルド安全シートが一体モードで使用されるとき、案内部品3および連結要素4の案内レールを提供する。背もたれ開口6の目的および機能は、後述の図4aおよび4bの説明において明らかになるであろう。
【0050】
チャイルド安全シート100が非一体モードで使用されるとき、ヘッドレストの開口7は案内部品を受け入れるようになっている。ヘッドレストの開口7によって、案内部品3が中間位置に固定されていても、ヘッドレスト2を非一体モードで調整することが可能となる。ヘッドレスト開口7の更なる目的および機能は、後述する図5bおよび6の説明において明らかになるであろう。
【0051】
図4a、4b、5a、5bおよび6は、ヘッドレストの調整を、最低位置から最高位置へ順番に示している。具体的には、図5aおよび5bにおいて、第1の構成から第2の構成への連結要素4の変換が示されている。
【0052】
図4aには、開口7を有するヘッドレスト2、案内部品3、および連結要素4が示されている。連結要素4は、高さ調整機構の一部である。さらに、一体型ハーネスシステムの肩紐51が示されている。肩紐51は案内部品3を通って案内される。さらに、各開口6を有するシートシェルの背もたれ部11の一部が見える。ヘッドレスト2は、連結要素4によって案内部品3に連結されている。ヘッドレスト2は凹部24を備える。凹部24は、連結要素4において対応する係合部材41を受け入れるようになっている。図4aに示す実施形態によれば、案内部品3と連結要素4は、バー34によって互いに接続されている。他の連結手段も可能である。図4aに示す連結要素4は、変換スイッチとして設計されている。この変換スイッチ4は、バー34の周りに旋回可能に取り付けられている。シートシェルは、バー34の端を受け入れるように適合されたレールまたは凹部(図示せず)などの案内手段を備えていてもよい。上記案内手段を備える場合、前記案内手段は、さらに、シートシェルの背もたれ部11に沿ったバー34の移動、例えば摺動を可能にするように適合される必要がある。図4aにおいて、連結要素4は、第1の構成に配置される。この第1の構成では、連結要素4がヘッドレスト2を案内部品3に接続する。連結要素4、ヘッドレスト2および案内部品3の3つの構成要素は複合構成物を形成する。この複合構成物は、シートシェルの背もたれ部11の開口6に沿って移動させることができる。図4aにおいて、ヘッドレスト2は最低可能位置に配置されている。
【0053】
図4bは、ヘッドレスト2の高さを調整した後の、図4aに関連するヘッドレスト2、案内部品3および連結要素4の位置の変化を示している。一体モード中の高さ調整は、矢印Aで示すように、アクチュエータを作動させ、ヘッドレスト2をシートシェルに対して上方に引っ張ることで達成できる。アクチュエータが作動している限り、ヘッドレスト2はシートシェルとの係合から解放される。前記作動の詳細は、図7に関連して、より詳細に後述する。連結要素4の構成は変更されていない。連結要素4は依然として第1の構成にある。これは、図4aに関連して上述したのと同じ方法で、ヘッドレスト2および案内部品3が連結要素4によって互いに依然として連結されていることを意味する。ヘッドレスト2が図4bに示す位置に到達するために、案内部品3および連結要素4は、少なくとも部分的に、背もたれ部11の開口6に沿って移動している。背もたれ開口6は、ヘッドレスト2、案内部品3および連結要素4の構成要素を側方移動に対して安定させるための案内レールとしての役割を果たす。図4bにおいて、案内部品3は、背もたれ部11の開口6の上端に到達している。したがって、案内部品3は、停止部に達している。連結要素4が第1の構成にある限り、ヘッドレスト2の高さをさらに増加させることは不可能である。ヘッドレスト2と案内部品3との連結により、案内部品3、特に案内部品3の肩紐出口のものとヘッドレスト2との間の距離は一定のままである。したがって、第1の構成に配置された連結要素4は、一体モードで使用されるチャイルド安全シートに対応している。案内部品3の移動とともに、案内部品3を通って案内される肩紐51がシートシェルの背もたれ部11に沿って移動している。これにより、一体型ハーネスシステムの高さを調整することができる。ヘッドレスト2をシートシェル、好ましくはシートの背もたれ部11に係合させるために適合される係止機構については、図7を参照して詳細に説明する。
【0054】
図5aおよび図5bは、ヘッドレスト2が中間位置に到達したとき、すなわち一体モードで最高可能位置に到達したときの第1の構成から第2の構成への連結要素4の変換を示している。
【0055】
図5aにおいて、チャイルド安全シートの連結要素4は、第1の構成にある。図5aに示すチャイルド安全シートの構成は、図4bに示すものに対応する。したがって、連結要素4は、案内要素3とヘッドレスト2とを連結する。連結は、図4aに関連して上述したように、ヘッドレスト2の凹部24によって受け入れられている連結要素4の端部41によって達成され得る。
【0056】
図5bは、調整機構の連結要素4が第2の構成に配置されたチャイルド安全シートを示す。ヘッドレスト2は、依然として中間位置、すなわち、図5aに示されているのと同じ高さに配置されている。案内部品3は、ヘッドレストの開口7の上端に当接するように示されている。案内部品3は、シートシェルの背もたれ部11の開口6の上端に当接する。図5aと比較すると、図5bでは、連結部品4がバー34の周りに旋回または回転されている。旋回/回転は矢印Bで示されている。連結要素4は、もはやヘッドレスト2の凹部24に受け入れられない。しかし、連結要素4は、案内部品3と係合したままである。図5bに示す実施形態では、後者の係合は、バー34を介して達成される。第2の構成の場合は、図5bに示すように、調整機構の連結要素4は、もはや案内部品3をヘッドレスト2に連結しない。すなわち、ヘッドレスト2は、案内部品3に接続されずに自由に移動することができる。さらに、図5bに明示されるように、連結要素4の各係合部材42は、シートシェルの背もたれ部11の凹部25内に受容される。これにより、連結要素4は案内部品4をシートシェルの背もたれ部11に連結する。したがって、案内部品4が、それ以上移動することが防止される。言い換えれば、ヘッドレスト2の高さは、案内部品4が固定されたままで調整されてもよい。案内部品3は、中間位置よりもシートシェルの着座部から高い位置に配置することができない。これにより、ユーザが一体型ハーネスシステムを有する、すなわち一体モードのチャイルド安全シートを、既に一体モードシートの対象外に成長した子供用に使用することが防止される。
【0057】
好ましい実施形態では、例えば図5aに示される第1の構成と、例えば図5bに示されるような第2の構成の間の連結要素4の変換は、ヘッドレスト2が中間位置に配置されている場合にのみ、可能である。これは、ヘッドレスト2の凹部24、背もたれ部11の凹部25、および案内部品4の対応する係合部材41および42の寸法を適切に選択することによって達成され得る。図5bにおいて、ヘッドレスト2は中間位置にある。この場合、ユーザが案内部品4をバー34の周りで旋回/回転させると、背もたれ部11の凹部25は、連結要素4の対応する係合部材42を受け入れることができるように位置決めされる。ヘッドレスト2が中間位置よりも低い高さにあると仮定すると、ユーザが案内部品4をバー34の周りで旋回/回転しようとすると、案内部品4の係合部材42は、背もたれ部11の一部に当接して、案内部品4の係合部材41がヘッドレスト2の凹部24から完全に外れるのを防止する。したがって、ヘッドレスト2が中間位置に達していなければ、ヘッドレスト2と案内部品3との間の連結は損なわれない。類似の考察は、連結要素4の第2の構成から第1の構成への変換に当てはまる。
【0058】
図6は、ヘッドレスト2の高さを調整した後の、図5bに対するヘッドレスト2、案内部品3および連結要素4の位置の変化を示している。連結要素4が非一体モードなどの第2の構成である場合の高さ調整は、連結要素4が第1の構成、例えば一体モードにある場合と同じ方法で達成される。すなわち、高さ調整は、一体モードと同じアクチュエータを作動させ、矢印Cで示すようにヘッドレスト2をシートシェルに対して上方に引っ張ることによって行うことができる。アクチュエータが作動している限り、ヘッドレスト2はシートシェルとの係合から解放される。前記作動の詳細は、図7に関連して以下でより詳細に説明される。連結要素4の構成は、図5bのものに関して変更されていない。これは、図5bに関して上記で詳細に説明したように、連結要素4が案内部品3をシートシェルの背もたれ部11に連結することを意味する。ヘッドレスト2はもはや案内部品3に接続されていない。ヘッドレスト2が図6に示す位置に到達するために、ヘッドレスト2は少なくとも部分的にシートシェルの背もたれ部11に沿って移動している。ヘッドレスト2は、1つ以上の開口7を備える。ヘッドレスト開口7は、案内部品3が、ヘッドレスト2が非一体モードで動くことを妨げないようにすることができる。言い換えれば、ヘッドレスト2の基準フレームから見た場合、案内部品3は、矢印Cが示すように、非一体モードでヘッドレスト2の高さを高くすると、ヘッドレスト開口7に沿ってヘッドレスト開口7の上停止部からヘッドレスト開口7の下停止部に向かって移動する。シートシェルの背もたれ部11に関しては、ヘッドレスト2が背もたれ部11に対して上方に移動し、それによりヘッドレスト2の高さを上昇させている間、案内部品4は固定位置、好ましくは中間位置のままである。上述したように案内部品4と協働するヘッドレスト開口7は、加えて、ヘッドレスト2の横方向移動に対する安定化に寄与する。
【0059】
図6において、ヘッドレスト2は最高可能位置、すなわち最高位置に達している。ヘッドレスト2の開口7の下端は案内部品3に当接する。したがって、それは停止部に達する。ヘッドレスト2の高さをさらに高くすることはできない。連結要素4は、案内部品3をヘッドレスト2に連結しないので、ヘッドレスト2の高さ調整時に、案内部品3を通って案内される肩紐51は、シートシェルの背もたれ部11の固定位置に留まる。一体型ハーネスシステムを、チャイルド安全シートから取り外す必要はない。ヘッドレスト2の高さ調整は、一体型ハーネスシステムが設置されていても、非一体モードで行われてもよい。快適性の理由から、一体型ハーネスの肩紐51をチャイルド安全シートのカバーの後ろに収納することが可能である。しかしながら、例えば、クリーニング、メンテナンス、交換などの目的のために、一体型ハーネスシステムをチャイルド安全シートから取り外すことも可能である。ヘッドレスト2をシートシェル、好ましくはシートの背もたれ部11に係合させるように適合された係止機構については、図7を参照して詳細に説明する。
【0060】
図7は、ヘッドレスト2をシートシェル、好ましくはシートシェルの背もたれ部11と異なる高さで係合させるために使用され得る係止機構を示す。図7では、ヘッドレスト2がシートシェルの背もたれ部11と係合している構成が示されている。すなわち、ヘッドレスト2はシートシェルに一定の高さで固定されている。係止機構は、チャイルド安全シートの高さ調整機構の一部である。係止機構は、歯付きラック9と、アクチュエータ8と、を備える。アクチュエータ8はハンドル(図7には示されていないが、図3において、符号81で示されている)、変換要素82、およびバネなどの弾性部品83と、係止バーなどの係止要素84と、を備える。アクチュエータ8は、チャイルド安全シートのヘッドレスト2に連結されている。歯付きラック9は、シートシェル、好ましくはシートシェルの背もたれ部11に一体化されている。歯付きラック9は、係止バー84を受けるように構成されたノッチ91を備える。ノッチは、ヘッドレスト2が所与の数の異なる高さで調整可能であるように離間されている。歯付きラック9によって、ヘッドレスト2の漸進的な高さ調整が可能である。歯付きラック9は、シートシェルと一体的に形成されてもよい。しかし、歯付きラック9を別個に形成し、その後にシートシェルに一体化することも可能である。
【0061】
係止機構は、変換要素82と歯付きラック9との間に係止バー84を係止することによって係止される。このようにして、係止バー84は、それが配置されている歯付きラック9のノッチ91から取り外すことができない。変換要素82は、ハンドルの動きを係止バー84の動きに変換する。係止バー84は、ヘッドレスト2の1つ以上の凹部26内に摺動可能に取り付けられている。これは、例えば、係止バー84の端部が対応する凹部26に受け入れられることによって達成され得る。これにより、係止バー84がヘッドレスト2に接続される。例えば引っ張ることによってハンドルを作動させると、変換要素82は同じ方向に移動する。変換要素82の動きは、弾性部品83の力に抗する。ハンドルが上方に引っ張られると、変換要素82は、最初に弾性要素83を圧縮する。一定の閾値または停止部に達すると、弾性要素83はもはや圧縮しない。変換要素82のこの位置では、変換要素82の受け部85は、係止バー84が配置されている歯付きラック9のノッチ91と同じ位置となり、その結果、係止バー84は受け部85内に自由に移動することができる。
【0062】
ハンドルが次いで、さらに引っ張られると、アクチュエータ8が連結されているヘッドレスト2が上方に引っ張られる。ヘッドレスト2を上方に引くことによって、ヘッドレスト2に一体化された係止バー84のための凹部26も上方に移動する。これにより、係止バー84が歯付きラック9のノッチ91から受け部85内に移動する。ヘッドレスト2に対する係止バー84の動きは、凹部26によって制限される。係止バー84が歯付きラック9のノッチ91から外に移動すると、ヘッドレスト2はシートシェルとの係合から解放される。次いで、ヘッドレスト2の高さは調整可能である。ヘッドレスト2は、シートシェルの背もたれ部11の上下に移動させることができる。適切な高さが見つかると、ユーザはアクチュエータ8の作動を停止する。次に、弾性要素83は、変換要素82をその休止位置に戻すように移動させる。休止位置に戻る途中で、変換要素82は、係止バー84を歯付きラック9と係合するように移動させる。係止バー84は、変換要素82によって凹部26に沿って歯付きラック9のノッチ91の1つに移動されてもよい。ヘッドレスト2は、次いで、シートシェルに対して、特に、背もたれ部11またはシートシェルの着座部に対して、一定の高さに固定されている。
【0063】
本発明のチャイルド安全シートによれば、ヘッドレスト2の高さを一体モードおよび非一体モードの両方で調整するには、1つのアクチュエータ8で十分である。これは、同じ係止機構が両方のモードに適していることを意味する。図7に関連して説明した係止機構は、調整機構の連結要素が第1の構成にあるとき、および連結要素が第2の構成にあるときに使用することができる。これは、歯付きラック9が、最低位置、すなわち最低可能位置、すなわち一体モードにおける最低可能位置から最高位置、すなわち最高可能位置、すなわち、非一体モードにおける最高可能位置までのヘッドレスト2の高さ調整を可能にするように選択されることが好ましいことを意味する。
【0064】
前述した実施形態の誤用防止機構は、一体モードの長期間の使用を防止する。しかしながら、それらは必ずしもチャイルド安全シートのユーザが非一体モードで時期尚早に使用することを防止するとは限らない。上述したように、本発明の1つの利点は、一体型ハーネスシステムが、一体から非一体モードに切り替わる際に必ずしも取り外される必要がないことである。したがって、ヘッドレストが中間位置にまだ到達していない場合であっても、ユーザによる非一体モードへの変更を妨げない。
【0065】
図8a、8b、および8cに関して以下で説明される実施形態は、非一体モードの時期尚早な使用に対する誤用防止機構を提供する。同一のチャイルド安全シートで一体モードの長期間の使用を防止する誤用防止機構に加えて、時期尚早な非一体モードを防止するための誤用防止機構を用いることもできる。チャイルド安全シートの同実施形態において、両方の誤用防止機構が併せて使用される場合、強化された/最適な誤用防止保護が提供される。
【0066】
図8aは、非一体モードの時期尚早な使用を防止する誤用防止機構を備えたチャイルド安全シートを示す。図8aには、チャイルド安全シートのシートシェル1が示されており、背もたれ部11と着座部12と、ヘッドレスト2と、一体型ハーネスシステム5の肩紐51を案内する案内部品3と、を備える。案内部品3は、好ましくは、ハーネススライダである。肩紐51に加えて、一体型ハーネスシステム5の係止部材54が示されている。好ましくは、係止部材54は、一体型ハーネスシステム5のハーネスバックル(図示せず)内に固定されるように適合されたバックル舌部である。さらに、遮蔽要素27がヘッドレスト2に連結されることが示されている。チャイルド安全シートの背もたれ部11は、前部111と後部112とを備える。前部111は、チャイルド安全シートに座らせた子供の背を受け入れるように適合された背もたれ部12の一部である。背もたれ部12の後部112は、子供からそれた部分である。背もたれ部12の前部111は、開口551を備える。開口551は、係止部材54が嵌入されるように寸法決めされている。背もたれ部12の前部111と後部112との間に区画55が配置されている。区画55の寸法は、それが係止部材54を受け入れるように、または複数の係止部材54が使用される場合、すべての係止部材54を受け入れるように適合されている。区画54は、1つ以上のポケットを備えてもよい。示されたチャイルド安全シートは一体モードで使用される。すなわち、一体型ハーネスシステム5は、チャイルド安全シートに座らせた子供を固定するために使用される。この場合、遮蔽要素27は、係止部材54を受け入れないように区画を遮蔽する。図8aに示すように、遮蔽要素27は、背もたれ部12の前部111の開口551を遮蔽する。係止部材54を開口551を通して区画55内にもたらすことは不可能である。遮蔽要素27は、開口551を遮蔽するだけでなく、区画55への入口を遮蔽する。図示された遮蔽要素27は、また、係止部材54がその中に嵌まり込まないように、区画55内で利用可能な空間を減少させるように寸法決めされている。遮蔽要素27は、ヘッドレスト2に連結される。遮蔽要素27は、ヘッドレスト2と一体的に形成されてもよい。しかしながら、遮蔽要素27は、ヘッドレストに連結される、例えば取り付けられる別個の部品であってもよい。
【0067】
さらに、図8aに示すチャイルド安全シートは、特に図3乃至図6に関して上で詳細に説明したように、案内部品3をヘッドレスト2またはシートシェル1にそれぞれ連結するための第1の構成および第2の構成に配置されるように構成された連結要素(図示せず)を含む調整機構を備えることが有利である。この場合、チャイルド安全シートは、非一体モードの時期尚早な使用を防止する誤用防止機構に加えて、一体モードを長期間使用することを防止する誤用防止機構を備える。
【0068】
図示された一体モードでは、ユーザが係止部材54を区画55内に収納することは不可能である。したがってヘッドレスト2が最も低い非一体型ヘッドレスト位置に到達したときにのみ係止部材54を区画55内に収納することが可能でとなるように、区画55および遮蔽要素27の寸法を選択することによって、非一体モードの時期尚早な使用は避けられる。
【0069】
図8bは、ヘッドレスト2が着座部12に対してより高い位置に持ち上げられた、図8aのチャイルド安全シートを示す。ヘッドレスト2は、最も低い非一体型ヘッドレスト位置に配置される。この位置は、係止部材54を区画55内に収納することが可能な、ヘッドレスト2の最も低い高さ(着座部12に対する)として規定される。図示された実施形態では、ヘッドレスト2を最も低い非一体型ヘッドレスト位置より上に持ち上げると、遮蔽要素27が区画55の遮蔽を解除するように、遮蔽要素27はヘッドレスト2に連結されている。このために、遮蔽要素27は、ヘッドレスト2にしっかりと接続されてもよい。遮蔽要素27は、ヘッドレスト2と一体的に形成されてもよい。図示された実施形態では、遮蔽要素27の下縁は、開口551の上縁と同じ高さにある。開口551は、係止部材54によって嵌入されるような寸法であると仮定すると、図示の実施形態の最も低い非一体型ヘッドレスト位置は、遮蔽要素27が開口551を完全にクリア/非遮断するときに到達する。ヘッドレストの高さから始めて最も低い非一体型ヘッドレスト位置と等しいかそれを超えるときにのみ、ユーザは、係止部材54または複数の係止部材54を区画55内に格納/収納することができる。ヘッドレスト2が最も低い非一体型ヘッドレスト位置よりも低い高さに配置されている限り、遮蔽要素27は区画55を遮蔽する。これが当てはまる限り、区画55内の係止部材54の格納は不可能である。
【0070】
図8bでは、係止部材54はまだ区画55に格納されていない。したがって、チャイルド安全シートは一体モードである。しかしながら、開口551がクリア/非遮蔽されるので、係止部材54を区画55に格納することが可能である。換言すれば、チャイルド安全シートは一体モードから非一体モードに切り替えることができる。これは、係止部材54を区画55内に格納することによって達成され得る。
【0071】
図8cは、図8bのチャイルド安全シート、すなわちヘッドレスト2が最も低い非一体型ヘッドレスト位置に配置されている状態を示している。図8cでは、係止部材54が区画55に格納されている。チャイルド安全シートの一体モードから非一体モードへの変更が行われている。非一体モードでは、子供は車両の安全ベルトによってチャイルド安全シートに固定される必要がある。ヘッドレスト2を更に持ち上げると、遮蔽要素27も上昇する。一方、区画55に係止部材54を格納した状態でヘッドレスト2を非一体モードで下降させると、以下のような状況が発生することがある。遮蔽要素27がヘッドレスト2にしっかりと接続されると、遮蔽要素27は、ヘッドレスト2の下降時に下降する。ユーザがヘッドレスト2を最も低い非一体型ヘッドレスト位置の下に下ろそうとすると、遮蔽要素27は、このように係止部材54と接触する。したがって、係止部材54は、遮蔽要素27が物理的に上方へ移動するのを遮蔽する。遮蔽要素27を遮蔽すると、ヘッドレスト2が遮蔽される。このため、係止部材54が区画55内に格納されている限り、ヘッドレスト2は、最も低い非一体型ヘッドレスト位置より実質的に低い高さまで下降することができない。これは、ユーザが小さすぎる子供のために非一体モードから一体モードに戻すことを防止する。
【0072】
上述したように、図8a、図8bおよび図8cに示すチャイルド安全シートは、特に、図3図6に関して説明したように、案内部品3をヘッドレスト2またはシートシェル1にそれぞれ連結するための第1および第2の構成に配置されるように構成された連結要素を含む調整機構を備えることが有利である。この場合、最も低い非一体型ヘッドレスト位置は、連結要素の第1の構成から第2の構成への変更が可能な中間位置よりも着座部12から離れていない位置にある。中間位置は、一体モードにおけるヘッドレスト2の最高可能位置を規定する。最も低い非一体型ヘッドレスト位置は、非一体モードにおけるヘッドレスト2の最低可能位置を規定する。好ましくは、中間位置は、4歳の子供に対応している。好ましくは、最も低い非一体型ヘッドレスト位置は、3歳の子供に対応している。最も低い非一体型ヘッドレスト位置と中間位置との間で、チャイルド安全シートは、一体モードと非一体モードの両方で使用され得る。
【符号の説明】
【0073】
1 シートシェル
11 シートシェル1の背もたれ部
111 背もたれ部11の前部
112 背もたれ部11の後部
12 シートシェル1の着座部
100 チャイルド安全シート
2 ヘッドレスト
21 ヘッドレスト2の中央領域
22 ヘッドレスト2の側部
23 ヘッドレスト2の下縁
24 ヘッドレスト2の凹部
25 背もたれ部11の凹部
26 アクチュエータ8の係止要素/係止バー84を受けるためのヘッドレスト2の凹部
27 遮蔽要素
3 案内部品
34 案内部品3と連結要素4とを接続するバー
4 連結要素
41 ヘッドレスト2の凹部24に対応する連結要素4の係合部材
42 背もたれ部11の凹部25に対応する連結要素4の係合部材
5 一体型ハーネスシステム
51 一体型ハーネスシステムの5の肩紐
52 一体型ハーネスシステムの5のラップ紐
53 一体型ハーネスシステム5のハーネスバックル
54 一体型ハーネスシステム5の係止部材/バックル舌部
55 係止部材54用の区画
551 区画55の開口
500 車両の安全ベルト
6 背もたれ部11の開口/背もたれ開口
7 ヘッドレスト2の開口/ヘッドレスト開口
8 アクチュエータ
81 アクチュエータ8のハンドル
82 アクチュエータ8の変換要素
83 アクチュエータ8の弾性部品
84 アクチュエータ8の係止要素/係止バー
85 係止バー84の受け部
9 歯付きラック
91 歯付きラック9のノッチ
A 一体モードのヘッドレスト2の動きを示す矢印
B 連結要素4の旋回/回転方向を示す矢印
C 非一体モードにおけるヘッドレスト2の移動を示す矢印
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図8c