(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】鞍乗型車両のカバー構造
(51)【国際特許分類】
B62J 23/00 20060101AFI20231005BHJP
B62J 17/00 20200101ALI20231005BHJP
B62J 6/022 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
B62J23/00 A
B62J17/00
B62J6/022
(21)【出願番号】P 2018169396
(22)【出願日】2018-09-11
【審査請求日】2021-03-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】徐 志源
(72)【発明者】
【氏名】河内 薫
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/093184(WO,A1)
【文献】実開昭62-197483(JP,U)
【文献】国際公開第2015/071937(WO,A1)
【文献】実開昭62-036975(JP,U)
【文献】特開2014-069709(JP,A)
【文献】特開2017-171183(JP,A)
【文献】特開2016-068681(JP,A)
【文献】特開2017-171184(JP,A)
【文献】特開2008-189178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 17/00
B62J 6/02 - 6/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の前部を覆うカバー構造であって、
後方に向うにつれて上方に向うダウンフォース形成面を有する走行風案内部と、
前記ダウンフォース形成面の前側に延設された第1補助翼と、
前記第1補助翼の上方に、後方に向うにつれて上方に向う姿勢で配設された第2補助翼と、
前記走行風案内部よりも車幅方向中央側に設けられたヘッドライトと、
を備え、
前記走行風案内部の前端部が前記ヘッドライトの側方に位置しており、
前記ヘッドライトの照射面が、後方に進むにつれて下方に向うと共に前記走行風案内部の前端部に向う案内面を有する、鞍乗型車両のカバー構造。
【請求項2】
請求項1記載の鞍乗型車両のカバー構造であって、
前記第1補助翼及び前記第2補助翼が、前記ヘッドライトの照射面の前方に設けられている、鞍乗型車両のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鞍乗型車両のカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カウル構造に走行風が流れる流路を構成する筒状部を形成すること、筒状部は、前後に延び、後方に向かうにつれて高くなるように傾斜した傾斜面を有する傾斜壁を有していること、傾斜面においてダウンフォースを効果的に発生させることができることが開示されている。
【0003】
特許文献2にも同様の技術が開示されている。
【0004】
特許文献3には、ヘッドライトの前面に、車幅方向中央部から車両側方斜め後方に傾斜するヘッドライト傾斜面を形成すると共に、ヘッドライト傾斜面の車幅方向外側に、突出壁を形成し、ヘッドライト傾斜面と突出壁とによって第1導風溝を形成することが開示されている。特許文献3では、ヘッドライトの前面を側方に流れた走行風が、第1導風溝によって突出壁に沿って流れやすくなり、ヘッドライト縁部での風だまりの発生を抑制することができる旨記載されている。
【0005】
特許文献4には、ヘッドライトの下面の露出部分の後部に後方へ行くに従い下方へ傾斜する傾斜部を形成することが開示されている。この傾斜部により、ヘッドライトの下方を流れる走行風がエンジンやラジエータ側へ導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6259467号公報
【文献】特許第6166788号公報
【文献】特開2018-52416号公報
【文献】特開2003-72617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鞍乗型車両においては、車体の浮き上がりをさらに効果的に防ぐことが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様に係る鞍乗型車両のカバー構造は、鞍乗型車両の前部を覆うカバー構造であって、後方に向うにつれて上方に向うダウンフォース形成面を有する走行風案内部と、前記ダウンフォース形成面の前側に延設された第1補助翼と、前記第1補助翼の上方に、後方に向うにつれて上方に向う姿勢で配設された第2補助翼と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
この鞍乗型車両のカバー構造によると、鞍乗型車両の走行中、鞍乗型車両の前方から後方に向う走行風がダウンフォース形成面に当りつつダウンフォース形成面に沿って流れるため、鞍乗型車両にダウンフォースを発生させることができる。また、走行風は、第1補助翼及び第2補助翼にも当って、その後方のダウンフォース形成面に向けて流れる。走行風が第2補助翼に当ると、その上方に導かれる。これにより、第1補助翼の後方で負圧を生じさせることができる。すると、走行風は、第1補助翼の後方のダウンフォース形成面に沿って勢いよく流れ込むことが可能となる。これにより、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るカバー構造が適用された自動二輪車を示す概略側面図である。
【
図5】ダウンフォース形成面に沿った断面において風の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係る鞍乗車両のカバー構造について説明する。以下の説明では、鞍乗型車両が自動二輪車である例で説明する。しかしながら、本カバー構造が適用される鞍乗型車両は、自動二輪車の他、自動三輪車、ATV(All Terrain Vehicle)等であってもよい。
図1はカバー構造10が適用された自動二輪車100を示す概略側面図である。
【0013】
自動二輪車100は、フレーム110と、前輪120と、後輪130と、ハンドル装置140と、エンジン150とを備える。なお、以下の説明において、上下、前後及び左右について言及する場合、各方向は、次のように定義される。まず、自動二輪車の2つの車輪が路面に接地する側が下であり、その反対側が上である。自動二輪車が走行する際の進行方向が前であり、その反対側が後ろである。さらに、ユーザが運転者として前を向いて自動二輪車100に搭乗した状態で、当該ユーザを基準として左右が定義される。
【0014】
フレーム110は、棒状の部材等の組合わせによって構成されている。フレーム110の先端のヘッドパイプにステアリングシャフトが回転可能に挿通され、このステアリングシャフトにアッパーブラケット112とアンダーブラケットとが支持されている。アッパーブラケット112とアンダーブラケットとによって、フロントフォーク114が下方に向けて延在するように支持されている。フロントフォーク114の下側に前輪120が回転可能に支持されている。
【0015】
ハンドル装置140がアッパーブラケット112に支持されている。ハンドル装置140は、アッパーブラケット112及びアンダーブラケットに支持されていてもよいし、フロントフォーク114に支持されていてもよい。運転車がハンドル装置140を操作することで、ステアリングシャフト、アッパーブラケット112、アンダーブラケット及びフロントフォーク114が回転し、これと共に前輪120が回転し、自動二輪車100が操舵される。
【0016】
フレーム110の前後方向中間部の下部には、エンジン150が搭載されている。ここでは、動力機関としてエンジン150が搭載されているが、別例として、電気モータが搭載されてもよい。
【0017】
エンジン150の前側、ここでは、エンジン150よりも前側から上寄りの位置に、ラジエータ160が設けられている。ラジエータ160は、ブラケット等を介してフレーム110に支持されている。ラジエータ160は、パイプを介してエンジン150に連結されている。エンジン150には、冷却水を流すためのウオータージャケットが形成されている。ウオータージャケット内を流れる冷却水は、ラジエータ160に送込まれて当該ラジエータ160で冷却された後、エンジン150内に戻される。この冷却水によってエンジン150が冷却される。ラジエータ160は、動力機関を冷却する装置の一部である。
【0018】
ラジエータ160が設けられていることは必須ではない。例えば、エンジン150が空冷式エンジンである場合には、ラジエータ160は省略可能である。
【0019】
フレーム110の前後方向中間部の上部には、乗員である運転者が着座するシート162が設けられている。シート162の前方に燃料タンク170が設けられている。シート162に着座した運転者がハンドル装置140を把持して当該ハンドル装置140を操作する。
【0020】
フレーム110の上部であってシート162の後方には、同乗者が着座可能なタンデムシート164が設けられている。
【0021】
フレーム110の後部に、スイングアーム118が後方に向けて下向き姿勢で支持されている。スイングアーム118の後端部に後輪130が回転可能に支持されている。上記エンジン150の駆動によって後輪130が回転駆動される。
【0022】
自動二輪車100の両側部のうち燃料タンク170の下方領域は、第1サイドカバー181によって覆われている。第1サイドカバー181の上側縁部は、燃料タンク170の下側縁部に隣接して配置されている。第1サイドカバー181の前側縁部は、燃料タンク170の下側縁部の前部から後方に向うにつれて下方に向っている。第1サイドカバー181の下側部分は、エンジン150の上部の側方を覆っている。
【0023】
自動二輪車100の両側部のうち第1サイドカバー181の後方領域であって、シート162、タンデムシート164の下方領域は、第2サイドカバー182によって覆われている。第2サイドカバー182は適宜分割されている。
【0024】
本自動二輪車100に適用されるカバー構造10は、自動二輪車100の前部の前方及び両側方を覆う。
図2はカバー構造10を示す側面図である。
図2において後述するアウターシュライトが2点鎖線で示されている。
図3はカバー構造10を示す正面図であり、
図4はカバー構造10を示す一部破断斜視図である。
図4において後述する追加翼部材60の一方が省略されている。
図5は後述するダウンフォース形成面に沿った断面において風の流れを示す説明図である。
【0025】
カバー構造10は、走行風案内部36と、第1補助翼28と、第2補助翼62とを備える。走行風案内部36と、第1補助翼28と、第2補助翼62とは、自動二輪車100の左右それぞれに設けられている。
【0026】
走行風案内部36は、ダウンフォース形成面37を有している。ダウンフォース形成面37は、後方に向うにつれて上方に向うように形成されている。走行風案内部36は、自動二輪車100の前部の両側部に形成されている。
【0027】
第1補助翼28は、ダウンフォース形成面37の前側に形成されている(
図4及び
図5参照)。
【0028】
第2補助翼62は、第1補助翼28の上方に設けられている。第2補助翼62は、後方に向うにつれて上方に向う姿勢で配設されている(
図2、
図3及び
図5参照)。
【0029】
図5に示すように、自動二輪車100の走行中に、自動二輪車100の前方から後方に向う走行風F5がダウンフォース形成面37に当りつつ当該ダウンフォース形成面37に沿って流れる。これにより、自動二輪車100にダウンフォースを発生させることができる。
【0030】
また、走行風F1、F2、F3は、第1補助翼28及び第2補助翼62にも当って、その後方のダウンフォース形成面37側に流れる。走行風F3が第2補助翼62に当ると、第2補助翼62は後方に向うにつれて上方に向う姿勢とされているため、当該走行風F3は第2補助翼62の後方で上方に導かれる。これにより、第1補助翼28の後方で負圧を生じさせることができる。すると、第1補助翼28に流れ込んだ走行風F2は、第1補助翼28の後方のダウンフォース形成面37に沿って勢いよく流れ込むことができる。これにより、走行風F5がダウンフォース形成面37に沿って勢いよく流れ、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0031】
カバー構造10が、自動二輪車100の前部の前方及び両側部を覆う領域は任意である。例えば、カバー構造10は、自動二輪車100の前部の両側方の上下方向の上部のみを覆っていてもよいし、上下方向全体を覆っていてもよい。カバー構造10は、どのような分割構造とされていてもよい。
【0032】
カバー構造10の一例を前提として、走行風案内部36と、第1補助翼28と、第2補助翼62との構成例について説明する。
【0033】
カバー構造10は、フロントカウル20と、一対のサイドカウル30と、一対のシュラウドインナ40と、一対のシュラウドアウタ50とを備える。
【0034】
フロントカウル20は、ハンドル装置140の前方、及びフロントフォーク114の上部及びステアリングシャフトの前方領域を覆っている。一対のサイドカウル30は、自動二輪車100の両側部において、フロントカウル20の両側部の後部から後方に向って第1サイドカバー181まで延在している。一対のサイドカウル30は、フロントフォーク114の上側の一部領域及びステアリングシャフトの両側方領域を覆っている。一対のシュラウドアウタ50は自動二輪車100の両側に設けられ、一対のシュラウドアウタ50も自動二輪車100の両側に設けられている。自動二輪車100の左右それぞれにおいて、シュラウドインナ40及びシュラウドアウタ50が、部分的に2重構造となるように一体化されている。シュラウドインナ40及びシュラウドアウタ50の一体化構造物は、自動二輪車100の両側部において、サイドカウル30に部分的に重なっている。この一体化構造物は、サイドカウル30の前部から前後方向中間部に至る部分から後方に向うにつれて下方に向う方向に延出し、ラジエータ160の側方を覆っている。シュラウドがシュラウドインナ及びシュラウドアウタの合体構造とされていることは必須ではなく、単一のカバーによって構成されていてもよい。
【0035】
上記一対のサイドカウル30のそれぞれに走行風案内部36が形成されている。フロントカウル20に一対の第1補助翼28が形成されている。一対の第1補助翼28のそれぞれの上側に、第2補助翼62を有する追加翼部材60が一対設けられている。
【0036】
各部についてより具体的に説明する。
【0037】
サイドカウル30は、樹脂、強化樹脂等によって形成された部材であり、ブラケット等を介してフレーム110に支持されて、自動二輪車100の前部の側方を覆っている。このサイドカウル30は、ダウンフォース形成面37及び内側壁面32が形成された第1カバーの一例である。
【0038】
サイドカウル30の前部は、フロントカウル20の後端部に重なっている。サイドカウル30の前後方向中間部は、フロントフォーク114のうち中間部よりも上方の部分、ヘッドパイプに挿通されたステアリングシャフトの側方を覆っている。サイドカウル30の後端部は、上下に2つに分れて、燃料タンク170及び第1サイドカバー181に重なっている。サイドカウル30の上側縁部は、ハンドル装置140の下方で前後方向に沿って延在している。サイドカウル30の下側縁部は、ラジエータ160よりも上方で、フロントカウル20に装着されたヘッドライト70の後端部から後方に向けて下方に向うように延在している。
【0039】
サイドカウル30の外面のうち前部から後方に至る途中部分では、上下方向中間部及び下部が、その上側及び後側の段部を介して車幅方向外側に膨出している。その膨出部分の上側において上向きの段差面によって、走行風案内底面36fが形成される。
【0040】
走行風案内底面36fは、ダウンフォース形成面37と後方走行風案内底面38とを含む。
【0041】
ダウンフォース形成面37は、サイドカウル30の前端部から後方に向うにつれて上方に向うように延在している細長い面である。ダウンフォース形成面37は、後方に向うに連れて車幅方向外側に向うようにも延在している(
図3及び
図4参照)。ダウンフォース形成面37の幅方向は、車幅方向に沿うか又は車幅方向外側に向うにつれて下方に向うように傾斜している。ダウンフォース形成面37の前側部分は、前端に向けて徐々に幅広になる部分を含む(
図4参照)。
【0042】
後方走行風案内底面38は、ダウンフォース形成面37の後端部から後方に向けて延在する細長い面である。後方走行風案内底面38は、車両前後方向に沿って水平姿勢か、又は、後方に向うにつれて上方に向う傾斜姿勢で延在する。後方走行風案内底面38の幅方向は、車幅方向に沿うか又は車幅方向外側に向うにつれて下方に向うように傾斜している。後方走行風案内底面38の後端部から下方に向う延長面39が形成されている。
【0043】
サイドカウル30のうちダウンフォース形成面37の上側部分は、ダウンフォース形成面37の内側を仕切る内側壁面32に形成されている。内側壁面32は、ダウンフォース形成面37の車幅方向内側の縁部から上方に向けて延出している。ここでは、内側壁面32は、上方に向うにつれて車幅方向外側に向うように傾斜している(
図3参照)。これにより、ダウンフォース形成面37に流れ込んだ空気が上側に流れ込み難くなり、運転者の手、腕、顔等に向けて風が流れ込み難くなる。
【0044】
サイドカウル30のうち後方走行風案内底面38の上側部分は、後方走行風案内底面38の内側を仕切る内側壁面33に形成されている。内側壁面33は、後方走行風案内底面38の車幅方向内側の縁部から上方に向けて延出している。ここでは、内側壁面33は、上下方向に沿う面に形成されている。内側壁面33は、延長面39の後方部分にも延在している。
【0045】
サイドカウル30のうち内側壁面33よりも上側部分及び後側部分は、内側壁面33の周縁部から徐々に車幅方向内側に向うように曲る曲面に形成されている。
【0046】
シュラウドインナ40は、樹脂、強化樹脂等によって形成された部材であり、ブラケット等を介してフレーム110に支持されて、自動二輪車100の前部の両側方であってサイドカウル30の下方を覆っている。このシュラウドインナ40は、サイドカウル30とは別体に形成され、サイドカウル30の外側に配設された状態で外側壁面43を形成する第2カバーの一例である。
【0047】
一般的に自動二輪車100におけるシュラウドは、主としてラジエータ160を覆うカバーであり、ここでは、シュラウドは、シュラウドインナ40とシュラウドアウタ50との合体構成とされている。シュラウドインナ40は主としてシュラウドの内側部分を構成し、シュラウドアウタ50は主としてシュラウドの外側部分を構成する。
【0048】
シュラウドインナ40は、第1インナ部42と第2インナ部46とを備える。
【0049】
第1インナ部42の上部は、前後方向に長い細長い板状に形成されており、サイドカウル30の上記膨出部分を車幅方向外側から覆っている。第1インナ部42の上側縁部は、ダウンフォース形成面37から上方に延出している。この上方延出部分の車幅方向内側の面は、ダウンフォース形成面37の外側を仕切る外側壁面43である。外側壁面43は、後方走行風案内底面38から上方にも延出しているが、これは必須ではない。第1インナ部42の上部の後側縁部は、延長面39から後方に延出しているが、これは必須ではない。
【0050】
ここでは、走行風案内部36は、ダウンフォース形成面37を底面とし、内側壁面32及び外側壁面43を両側面とし、上側に開口する溝形状に形成されている。走行風案内部36は、ダウンフォース形成面37を有していればよく、内側壁面32及び外側壁面43の両方又は一方を有していることは必須ではない。
【0051】
第1インナ部42の下部は、第1インナ部42の上部から後方に向けて下向きに延出して、ラジエータ160の側方を覆っている。
【0052】
第1インナ部42は、第2インナ部46よりもシュラウドアウタ50の厚み分、段部を介して車幅方向内側に凹んでいる。第1インナ部42の外側にシュラウドアウタ50が重ね合せて配置される。
【0053】
第2インナ部46は、第1インナ部42の前側縁部及び下側縁部に連なり、第1インナ部42の前方及び下方に延在している。第2インナ部46の上側寄りの部分に、コーナリングランプ等の補助灯48が組込まれる。第2インナ部46の下部は、第1インナ部42の下部と共に、後方に向けて下向きに延出して、ラジエータ160の側方を覆っている。
【0054】
シュラウドアウタ50は、樹脂、強化樹脂等によって形成された部材である。シュラウドアウタ50は、ブラケット等を介してフレーム110に支持されて、自動二輪車100の前部の両側方であってサイドカウル30の下方を覆っている(
図2において2点鎖線で示されるシュラウドアウタ50参照)。このシュラウドアウタ50は、シュラウドインナ40とは別体に形成され、シュラウドインナ40のうち外側壁面43を形成する部分を覆う第3カバーの一例である。
【0055】
シュラウドアウタ50の上部は、シュラウドインナ40の第1インナ部42の上部を覆える板状に形成されている。シュラウドアウタ50の上部がシュラウドインナ40の第1インナ部42の上部を車幅方向外側から覆った状態で、シュラウドアウタ50の上側縁部は、外側壁面43を上方に超えている(
図2及び
図3において2点鎖線で示すシュラウドアウタ50参照)。このため、シュラウドアウタ50は、シュラウドインナ40のうち外側壁面43を形成する部分を覆っている。
【0056】
シュラウドアウタ50の上部の後側縁部は、第1インナ部42の上部の後側縁部を後方に超えている。このため、シュラウドアウタ50は、第1インナ部42の上部の後側縁部のうち延長面39から後方に延出している部分を覆っている。
【0057】
シュラウドアウタ50の前側斜め下側の縁部は、シュラウドインナ40の第1インナ部42及び第2インナ部46との境界に一致して配置される。このため、シュラウドアウタ50の外面は、第1インナ部42を覆った状態で、第2インナ部46の外面に対して後方斜め上方に位置する。第1インナ部42と第2インナ部46との間に段部が存在することから、シュラウドアウタ50の外面と、第2インナ部46の外面との段差をなるべく小さくすることができる。
【0058】
シュラウドアウタ50の後部の上下方向中間部は、シュラウドインナ40の第1インナ部42の上部と下部との間で凹んだ部分を覆っており、これにより、ラジエータ160の側方をなるべく全体的に覆えるようにしている。
【0059】
フロントカウル20は、上側覆い部22と、中間覆い部24と、下側覆い部26とを含む。
【0060】
中間覆い部24は、車幅方向中央部から後方に向うにつれて徐々に幅広となって自動二輪車100の前部の前方及び両側方を覆う形状とされている。中間覆い部24の両側部のうち車幅方向中央部に近い領域は、後方に向うにつれて車幅方向外側に急に広がり、中間覆い部24の両側部のうち車幅方向外側に近い領域は、後方に向うにつれて車幅方向外側に緩やかに広がる。中間覆い部24の両側部の後部に、一対のサイドカウル30の前部が重なっている。
【0061】
中間覆い部24の上側縁部は、後方に向うにつれて上方に向うように延在しており、中間覆い部24の上下方向寸法は、後方に向うにつれて徐々に大きくなる。
【0062】
中間覆い部24の車幅方向中央部は、後方に向うにつれて下方に向うように傾斜している。中間覆い部24の両側部は、下方に向うにつれて車幅方向内側に向っている。
【0063】
中間覆い部24のうち車幅方向中央の両側には、一対のヘッドライト装着用開口24hが形成されている。
【0064】
ヘッドライト装着用開口24hは、車幅方向中央から車幅方向外側に向けて、上下方向における幅が同じ部分、車幅方向外側に向けて順次幅が大きくなる部分、車幅方向外側に向けて幅が順次小さくなる部分が連なる形状に形成されている。このヘッドライト装着用開口24hにヘッドライト70が装着される。
【0065】
サイドカウル30は、中間覆い部24のうちヘッドライト装着用開口24hよりも外側の部分の外面に重ね合される。この状態で、ダウンフォース形成面37の前端部は、中間覆い部24に対して、ヘッドライト装着用開口24hの車幅方向外側部分の下部から外側部分に配置される。
【0066】
上側覆い部22は、緩やかに湾曲する半カップ状に形成されている。上側覆い部22は、前側斜め上方に向けて凸となる姿勢で、中間覆い部24の上側縁部からハンドル装置140の前方に向けて延出している。
【0067】
上側覆い部22の上部には、ウインドウスクリーン23が設けられている。ウインドウスクリーン23は、運転者がシート162に着座しハンドル装置140を掴んだ状態で、運転者の顔の前方を覆う。
【0068】
下側覆い部26は、一対の中央部分27と、一対の第1補助翼28と、一対の延長部分29とを含む(
図4参照)。
【0069】
中間覆い部24の下側縁部の車幅方向中間部に、一対の中央部分27が設けられる。一対の中央部分27は、車幅方向中央で間隔をあけて設けられる。中央部分27は、中間覆い部24の車幅方向中間部から前方に向けて下を向く姿勢で突出して設けられている。一対の中央分27は、連結部27aを介して連結されている。
【0070】
中間覆い部24の下側縁部の車幅方向外側部分に、一対の延長部分29が設けられる。一対の延長部分29は、中間覆い部24のうちヘッドライト装着用開口24hが形成された部分の外方下部より車幅方向外側に延出している。この延長部分29の上にサイドカウル30のうちダウンフォース形成面37を形成した部分が重ね合せて配置される。延長部分29上に配置されたダウンフォース形成面37の前端部は、ヘッドライト装着用開口24hに装着されるヘッドライト70の側方に位置することになる。
【0071】
一対の第1補助翼28は、一対の中央部分27の車幅方向外側に設けられている。第1補助翼28は、中間覆い部24の下側縁部及び延長部分29の前側縁部から前方に向けて下を向く姿勢で突出して設けられている。第1補助翼28のうち車幅内側部分は、中央部分27に連なっている。第1補助翼28の上面は、中央部分27に対して凹んで形成されている。
【0072】
第1補助翼28のうち車幅外側部分は、延長部分29の前端部分と連続している。延長部分29の上面にダウンフォース形成面37が配置されていることから、第1補助翼28は、ダウンフォース形成面37の前側に延設されている。ここでは、第1補助翼28は、後方から前方に向う途中でやや急に下向き傾斜する部分を含むが、これは必須ではない。
【0073】
第1補助翼28のうち車幅方向内側部分は、中間覆い部24のうちヘッドライト装着用開口24hが形成された部分の下側縁部から延出している。
【0074】
第1補助翼28は、車幅方向外側に向かうにつれて下向きに向う方向にも傾斜している。
【0075】
フロントカウル20に一対の追加翼部材60が設けられる。追加翼部材60は、樹脂等によって形成され、ブラケット等を介してフレーム110に支持される。
【0076】
追加翼部材60は、第2補助翼62と、翼支持部64とを含む。
【0077】
第2補助翼62は、第1補助翼28の上方に広がって配置可能な方形板状に形成されている。
【0078】
翼支持部64は、第2補助翼62の車幅方向外側縁部から下向きに延出する側板部64aと、側板部64aの下端部の前部と第2補助翼62の車幅方向内側縁部の前部とを連結する連結棒状部64bとを含む。
【0079】
側板部64aが第1補助翼28の車幅方向外側縁部から上方に立上がると共に、連結棒状部64bが第1補助翼28の前側縁部に沿った姿勢で、第2補助翼62が第1補助翼28上に配置される。この状態では、第2補助翼62は、第1補助翼28の上方に、当該第1補助翼28と間隔をあけた状態で支持される。この支持状態で、第2補助翼62は、第1補助翼28の上方において、後方に向うにつれて上方に向う姿勢で配設される。ここでは、第2補助翼62は、車幅方向外側に向うにつれて上方に向う姿勢ともなっているが、これは必須ではない。上記側板部64aの外側は、シュラウドインナ40の前部によって覆われている。
【0080】
第2補助翼62の後側縁部は、第1補助翼28の後側縁部の上方に位置する。このため、第2補助翼62の上面によって案内される走行風は、第1補助翼28の後方縁部の上方及びダウンフォース形成面37の前端部の上方付近に流れ込む。
【0081】
翼支持部64の下側に、第1長尺部分66aと第2長尺部分66bとがL字状に連なる支持部66が設けられている。支持部66の上側の第1長尺部分66aは連結棒状部64bと一体化されている。支持部66の下側の第2長尺部分66bは後方斜め下方に延在してフレーム110等に連結される。
【0082】
第1長尺部分66aは細長板状に形成されており、フロントカウル20の前側縁部から当該フロントカウル20の内側に延在している。第2長尺部分66bは細長板状に形成されており、シュラウドインナ40の前側縁部に沿って配設され、当該シュラウドインナ40の内側に延在している。支持部66は、ネジ止等でフロントカウル20、シュラウドインナ40等にも固定されている。支持部66によって、フロントカウル20の前端縁部の内側及びシュラウドインナ40の前端縁部の内側を隠すことができる。
【0083】
一対のヘッドライト装着用開口24hのそれぞれに一対のヘッドライト70が装着される。ヘッドライト70は、ライトカバー71を含む。ライトカバー71には、電球、HID(High Intensity Discharge)ランプ、発光ダイオード等の光源が組込まれており、光源からの光がライトカバー71を通過して自動二輪車100の前方に照射される。ヘッドライト70がヘッドライト装着用開口24hに装着された状態で、ヘッドライト70は、走行風案内部36よりも車幅方向中央側に位置する。
【0084】
ヘッドライト70の照射面72は、ヘッドライト装着用開口24hに応じた形状に形成されている。即ち、照射面72は、車幅方向中央から車幅方向外側に向けて、上下方向における幅が同じ部分、車幅方向外側に向けて順次幅が大きくなる部分、車幅方向外側に向けて幅が順次小さくなる部分が連なる形状に形成される。
【0085】
照射面72のうち車幅方向内側から車幅方向中間部に至る案内面73は、後方に向うにつれて車幅方向外側に向うように傾斜して、走行風案内部36の前端部に向っている。また、案内面73は、後方に向うにつれて下方に向うように傾斜している。案内面73のうち照射面72のうち車幅方向中間部の下部73aは、周辺部分の曲面にあわせて案内面73に対して異なる傾斜角度となっているが、これは必須ではない。
【0086】
照射面72の案内面73に当った風は、照射面72に沿って車幅方向外側及び下方に向うように案内され、走行風案内部36の前端部に向けて案内される。
【0087】
ヘッドライト70の照射面72のうち案内面73の車幅方向外側部分は、走行風案内部36の上方に配設される。この部分も、後方に向うにつれて車幅方向外側に向うように傾斜している。また、この部分は、下方に向けて車幅方向内側に向うように傾斜している。
【0088】
このヘッドライト70の照射面72の前方に第1補助翼28及び第2補助翼62が設けられている。ここで、照射面72の前方に第1補助翼28及び第2補助翼62が設けられているとは、当該照射面72、特に、案内面73を含む面を境界として、これよりも前方に第1補助翼28及び第2補助翼62が位置することをいう。
【0089】
このように構成された自動二輪車100のカバー構造10における走行風の流れについて、より具体的に説明する。
【0090】
自動二輪車100の走行中に、自動二輪車100の前方から後方に向う走行風F5がダウンフォース形成面37に当りつつダウンフォース形成面37に沿って流れることで、自動二輪車100にダウンフォースを発生させることができる。
【0091】
第1補助翼28の上方には第2補助翼62が設けられている。第1補助翼28と第2補助翼62との間の空間に対して車幅方向外側には、仕切壁として側板部64a及びシュラウドインナ40が配設されている。この仕切壁によって、第1補助翼28と第2補助翼62との間に流れ込んだ走行風が車幅方向外側に逃げることが抑制される。このため、第1補助翼28と第2補助翼62との間の前方開口を通って第1補助翼28の上方に流れ込んだ走行風F1、F2のほとんどが、第1補助翼28に沿ってダウンフォース形成面37に流れ込む。
【0092】
この際、第1補助翼28は、ダウンフォース形成面37の前端部よりも車幅方向内側に延出しているため、より多くの走行風F1、F2をダウンフォース形成面37に流れ込ませることができる。しかも、第1補助翼28は、車幅方向外側に向うにつれて下方に向う。第2補助翼62は、車幅方向外側に向うにつれて上方に向う。このため、第1補助翼28と第2補助翼62との間であってダウンフォース形成面37よりも内側に流れ込んだ走行風F1、F2は、第1補助翼28の上面及び第2補助翼62の下面によって円滑に車幅方向外側(ダウンフォース形成面37の前側)に案内され、走行風F1、F2は、ダウンフォース形成面37に円滑に流れ込むことができる。
【0093】
第1補助翼28自体が、後方に向うにつれて上方に向う形状であるため、第1補助翼28によってより多くの走行風を集めることができると共に、第1補助翼28自体によってもダウンフォースを発生させることができる。
【0094】
第2補助翼62の上面は後方に向うにつれて上方に向う姿勢とされ、その後側縁部は、第1補助翼28の後側縁部の上方に位置している。このため、第2補助翼62の上面に当った走行風F3は、後方に向うにつれて上方に向い、そのままの勢いで第1補助翼28の後側縁部の上方に流れ込む。このため、走行風F3の勢いによって、第1補助翼28の後方で負圧を生じさせることができる。このため、第1補助翼28からダウンフォース形成面37に流れ込もうとする走行風F2は、当該負圧によってダウンフォース形成面37に向けて勢いよく流れ込むことができる。
【0095】
これにより、走行風F5がダウンフォース形成面37に沿って勢いよく流れ、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0096】
この際、第2補助翼62は、ダウンフォース形成面37の前端部よりも車幅方向内側に延出しているため、より多くの走行風F3を集めて、第1補助翼28の後側縁部の上方に流れ込ませることができる。また、第2補助翼62は、車幅方向外側に向うにつれて上に向う姿勢とされているため、第2補助翼62の上面に当った走行風F3が車幅方向外側に逃げることを抑制しつつ、第1補助翼28の後側縁部の上方に流れ込ませることができる。
【0097】
また、第2補助翼62自体によってもダウンフォースを発生させることができる。
【0098】
主としてダウンフォースを発生させるダウンフォース形成面37は、自動二輪車100の前部及び両側方を覆うカバー構造10に形成されているため、前輪120の接地感向上に貢献する。特に、ダウンフォース形成面37は、カバー構造10のうちフロントフォーク114を横切る位置に形成されているため、ダウンフォースを、効果的にフロントフォーク114を介して前輪120に伝達することができる。
【0099】
また、照射面72の案内面73は、走行風案内部36の側方に位置しており、当該照射面72は、後方に進むにつれて下方に向うと共に走行風案内部36の前端部に向う案内面73を有する。案内面73に当った走行風F4は、案内面73に沿って、後方に進むにつれて下方に向いつつ、車幅方向外側に向って走行風案内部36の前端部に向けて案内される。このため、照射面72の案内面73に当った走行風F4が、上方に逃げることを抑制して、走行風案内部36に向けて流れ込ませることができる。これにより、より効果的にダウンフォースを発生させることができる。
【0100】
走行風案内部36に沿って流れる走行風F5は、ダウンフォース形成面37の上を流れる。ダウンフォース形成面37の車幅方向内側に内側壁面32が形成されているため、当該走行風F5をダウンフォース形成面37に沿って円滑に案内することができる。また、ダウンフォース形成面37の車幅方向外側に外側壁面43が形成されているため、当該走行風F5が車幅方向外側に逃げることを抑制しつつ、走行風F5をダウンフォース形成面37に沿って円滑に案内することができる。これにより、効果的にダウンフォースを形成することができる。しかも、内側壁面32は、上方に向うにつれて車幅方向外側に向うように傾斜しているため、ダウンフォース形成面37に流れ込んだ空気が上側に逃げ難くなり、この点からも効果的にダウンフォースを得ることができる。
【0101】
なお、自動二輪車100を正面から視て、ダウンフォース形成面37を観察可能であるため、走行風は直接的にダウンフォース形成面37にも流れ込むことができる。
【0102】
ダウンフォース形成面37は、後方に向うにつれて車幅方向外側に向っているため、走行風F5が自動二輪車100の外側に向うことになる。このため、走行風F5は、乗員の顔等を避けた位置で流れ出易い。
【0103】
また、ダウンフォース形成面37の後方には、後方走行風案内底面38が形成されている。後方走行風案内底面38は、ダウンフォース形成面37の後方延長よりも下側の位置で後方に向けて延長された面である。このため、ダウンフォース形成面37から後方に流れ出す走行風F6は、後方走行風案内底面38の上方において分散されて勢いが弱まった風とすることができる。
【0104】
このように構成されたカバー構造10によると、自動二輪車100の走行中の走行風F5がダウンフォース形成面37に当りつつダウンフォース形成面37に沿って流れるため、自動二輪車100にダウンフォースを発生させることができる。また、走行風F1、F2、F3は、第1補助翼28及び第2補助翼62にも当って、その後方のダウンフォース形成面37に向けて流れる。走行風F3が第2補助翼62に当ると、その上方に導かれて、第1補助翼28の後方上方に流れ込む。これにより、第1補助翼28の後方で負圧を生じさせることができる。すると、走行風F2は、第1補助翼28の後方のダウンフォース形成面37に沿って勢いよく流れ込むことが可能となる。これにより、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0105】
また、ダウンフォース形成面37の内側に内側壁面32が設けられ、外側に外側壁面43が設けられているため、ダウンフォース形成面37に流れ込んだ走行風F5が外に逃げ難い。このため、ダウンフォース形成面37に流れ込んだ走行風F5がダウンフォースを効果的に発生させることができる。
【0106】
また、第1カバーであるサイドカウル30によってダウンフォース形成面37及び内側壁面32を形成し、これとは別体の第2カバーであるシュラウドインナ40で外側壁面43を形成するため、溝形状をなす走行風案内部36を形成し易い。シュラウドインナ40は、ラジエータ160の側方を覆う機能及び外側壁面43を形成する機能を併有するため、構成の簡易化を図ることができる。
【0107】
また、シュラウドインナ40によって外側壁面43を形成し、これとは別の第3カバーであるシュラウドアウタ50によって外側壁面43を覆っているため、設計の自由度が優れる。例えば、シュラウドインナ40によって、ダウンフォース形成面37上を通る走行風F5の案内に適した形状の外側壁面43を形成し、シュラウドアウタ50によって、保護或は意匠性に適した形状を付与することができる。シュラウドアウタ50は、ラジエータ160の側方を覆う機能及び外側壁面43の外側を覆う機能を併有するため、構成の簡易化を図ることができる。
【0108】
また、サイドカウル30でダウンフォース形成面37及び内側壁面32を形成しているため、フロントカウルにダウンフォース形成面を形成する場合と比較して、幅広でかつ長いダウンフォース形成面37を形成し易い。
【0109】
また、ヘッドライト70の照射面72の案内面73によって、ヘッドライト70の正面に当った風が走行風案内部36に向けて案内されるため、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0110】
しかも、ヘッドライト70の照射面72の前方に第1補助翼28及び第2補助翼62が存在している。このため、自動二輪車100の前方から当る走行風を、照射面72の案内面73と第1補助翼28及び第2補助翼62との間で集めて、さらに効果的に走行風案内部36に向けて案内することができる。これにより、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0111】
なお、上記カバー構造10は例示であって、上記のようなカバー構造10に走行風案内部36、第1補助翼28、第2補助翼62等が設けられている必要は無い。自動二輪車の前方及び両側方を覆うように形成された単一のカバー構造に、走行風案内部が形成され、これに、第1補助翼、第2補助翼が設けられてもよい。ラジエータの側方を覆うシュラウドに対応する部分を備えないカバー構造に、走行風案内部が形成され、これに、第1補助翼、第2補助翼が設けられてもよい。また、第1補助翼、第2補助翼の一方又は両方が、カバー構造を構成するいずれかのカバー構造に一体形成されていてもよい。
【0112】
内側壁面32、外側壁面43は省略されてもよい。ヘッドライト70の照射面72が案内面73を有していることは必須ではない。
【0113】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0114】
以上のように、本明細書は、下記の各態様を含んでいる。
【0115】
第1の態様に係る鞍乗型車両のカバー構造は、鞍乗型車両の前部を覆うカバー構造であって、後方に向うにつれて上方に向うダウンフォース形成面を有する走行風案内部と、前記ダウンフォース形成面の前側に延設された第1補助翼と、前記第1補助翼の上方に、後方に向うにつれて上方に向う姿勢で配設された第2補助翼とを備える。
【0116】
これにより、鞍乗型車両の走行中、鞍乗型車両の前方から後方に向う走行風がダウンフォース形成面に当りつつダウンフォース形成面に沿って流れるため、鞍乗型車両にダウンフォースを発生させることができる。また、走行風は、第1補助翼及び第2補助翼にも当って、その後方のダウンフォース形成面側に流れる。走行風が第2補助翼に当ると、その上方に導かれる。これにより、第1補助翼の後方で負圧を生じさせることができる。すると、走行風は、第1補助翼の後方のダウンフォース形成面に沿って勢いよく流れ込むことが可能となる。これにより、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0117】
第2の態様は、第1の態様に係る鞍乗型車両のカバー構造であって、前記走行風案内部は、前記ダウンフォース形成面の内側を仕切る内側壁面と、前記ダウンフォース形成面の外側を仕切る外側壁面とを有する。
【0118】
これにより、ダウンフォース形成面の内側に内側壁面が設けられ、ダウンフォース形成面の外側に外側壁面が設けられているため、ダウンフォース形成面に流れ込んだ走行風が外に逃げ難い。このため、ダウンフォース形成面に流れ込んだ走行風がダウンフォースを効果的に発生させることができる。
【0119】
第3の態様は、第2の態様に係る鞍乗型車両のカバー構造であって、前記ダウンフォース形成面及び前記内側壁面が形成された第1カバーと、前記第1カバーとは別体に形成され、前記第1カバーの外側に配設された状態で、前記外側壁面を形成する第2カバーと、を備える。
【0120】
これにより、第1カバーでダウンフォース形成面及び内側壁面を形成し、これとは別体の第2カバーで外側壁面を形成するため、溝形状をなす走行風案内部を形成し易い。
【0121】
第4の態様は、第3の態様に係るカバー構造であって、前記第2カバーとは別体に形成され、前記第2カバーのうち前記外側壁面を形成する部分を覆う第3カバーをさらに備える。
【0122】
このように、外側壁面を形成する第2カバーと、前記第2カバーのうち外側壁面を形成する部分を覆う第3カバーとを別体とすることで、設計の自由度が優れる。
【0123】
第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両のカバー構造であって、前記ダウンフォース形成面は、前記鞍乗型車両の前部の側方を覆うサイドカウルに形成されているものである。
【0124】
これにより、ダウンフォース形成面は、サイドカウルに形成されているため、幅広で長く形成し易い。
【0125】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る鞍乗型車両のカバー構造であって、前記走行風案内部よりも車幅方向中央側に設けられたヘッドライトをさらに備え、前記走行風案内部の前端部が前記ヘッドライトの側方に位置しており、前記ヘッドライトの照射面が、後方に進むにつれて下方に向うと共に前記走行風案内部の前端部に向う案内面を有するものである。
【0126】
これにより、ヘッドライトの照射面の案内面によって、ヘッドライトの照射面に当った風が走行風案内部に向けて案内される。このため、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0127】
第7の態様は、第6の態様に係る鞍乗型車両のカバー構造であって、前記第1補助翼及び前記第2補助翼が、前記ヘッドライトの照射面の前方に設けられているものである。
【0128】
これにより、ヘッドライトの照射面の前方に設けられた第1補助翼及び第2補助翼によって、風をさらに効果的に走行風案内部に向けて案内することができる。このため、ダウンフォースをさらに効果的に得ることができる。
【0129】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0130】
10 カバー構造
20 フロントカウル
28 第1補助翼
30 サイドカウル
32 内側壁面
36 走行風案内部
37 ダウンフォース形成面
40 シュラウドインナ
43 外側壁面
50 シュラウドアウタ
60 追加翼部材
62 第2補助翼
70 ヘッドライト
72 照射面
73 案内面
100 自動二輪車