(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電動アクチュエータ及びその取り付け構造、並びに弁体駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20231005BHJP
H02K 5/00 20060101ALI20231005BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K5/00 A
H02K7/06 A
(21)【出願番号】P 2019125979
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】矢島 克英
(72)【発明者】
【氏名】大川 高徳
(72)【発明者】
【氏名】勝呂 浩成
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-106409(JP,A)
【文献】特開2013-207960(JP,A)
【文献】特開2007-028861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
H02K 5/00
H02K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と一体のロータ及びステータを収容し、外周面が円筒状に形成された金属製のモータケースを有するモータと、前記モータを保持する樹脂製のベース部材と、を備え、
前記ベース部材は、
前記モータケースの端部の周囲に設けられて前記モータケースの端部が固定され、外周面が前記回転軸と同軸の円柱状に形成された支持部と、前記支持部の前記モータケースとは反対側に一体に形成され、前記支持部より径方向外側に張り出す基部と、を有し、
前記支持部の外周には、シールリングが嵌め込まれていることを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アクチュエータを金属製の固定部材に取り付けてなる取り付け構造であって、
前記固定部材は、前記ベース部材から突出している前記モータケースを径方向に位置決めして収容可能な円筒状の第1内周面を有する第1収容部と、前記基部の前記モータケース側の取付面が当接する受け面と、を備え、
前記シールリングが前記固定部材と前記ベース部材との間を密封した状態に設けられていることを特徴とする電動アクチュエータの取り付け構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記第1収容部に連続して形成され、前記第1収容部の前記第1内周面より大径で、前記シールリングを収容可能な筒状の第2内周面を有する第2収容部をさらに備え、
前記支持部の外周面と前記第2内周面とにより前記シールリングが径方向に押圧状態に保持されることを特徴とする請求項2に記載の電動アクチュエータの取り付け構造。
【請求項4】
前記第2収容部に収容された前記シールリングは、前記ベース部材と前記固定部材との少なくとも一方との間に、前記回転軸の軸線方向に隙間が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電動アクチュエータの取り付け構造。
【請求項5】
前記支持部は、前記モータケースより大径であり、
前記固定部材は、前記第2収容部と前記第1収容部との間に、前記支持部の先端部を収容可能な筒状の第3内周面を有する第3収容部をさらに備え、
前記第3内周面の内径は、前記第1内周面の内径より大きく、かつ、前記第2内周面の内径よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電動アクチュエータの取り付け構造。
【請求項6】
前記第3内周面と前記支持部の外周面との間に第1隙間が形成され、
前記第1隙間は、前記第1内周面と前記モータケースの外周面との間の隙間よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の電動アクチュエータの取り付け構造。
【請求項7】
前記第3収容部の先端面と前記支持部の先端面との間に第2隙間が形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電動アクチュエータの取り付け構造。
【請求項8】
請求項1に記載の電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの駆動により前記回転軸の軸線方向に沿って移動可能な弁体と、を備えていることを特徴とする弁体駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータ及びその取り付け構造、並びに弁体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気体や液体の流路を開閉するために弁体駆動装置が知られている。この弁体駆動装置は、弁体を電動アクチュエータにより駆動させるものであり、例えば、液体や気体等の流体が流通する流路を構成する部材等に装着されることにより流体の流通量を調整する。この弁体駆動装置は、例えば、アイドルエアーコントロールバルブ(IACV)や、電子制御サスペンションとして用いられている。このような弁体駆動装置として、特許文献1に記載の直動機構が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の直動機構は、モータの回転動力を軸線方向における直動部材の進退動作に変換して出力している。具体的には、特許文献1に記載の直動機構は、モータ、ガイド部材及び直動部材を備えており、モータは、ケーシング及びケーシングから外部に突出し、外周面に雄ねじが形成された回転軸を備え、回転軸の雄ねじと螺合する雌ねじ部材をガイド部材により回転軸の軸線方向に沿って案内することにより、雌ねじ部材と一体の直動部材を進退させる構成である。また、直動機構は、モータのケーシングと一体に樹脂製のベース部材を備えている。このベース部材が、装着対象である流路を構成する部材に固定されることにより、直動部材が流路内に配置され、モータの駆動により直動部材が進退することで、流路内を流通する流体の流通量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の弁体駆動装置において、流路構成部材内に収容されるモータが熱を発するため、効率よく放熱する必要がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、モータの放熱性を向上させることができる電動アクチュエータ及びその取り付け構造、並びに弁体駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動アクチュエータは、回転軸と一体のロータ及びステータを収容し、外周面が円筒状に形成された金属製のモータケースを有するモータと、前記モータを保持する樹脂製のベース部材と、を備え、前記ベース部材は、前記モータケースの端部が固定され、外周面が前記回転軸と同軸の円柱状に形成された支持部と、前記支持部の前記モータケースとは反対側に一体に形成され、前記支持部より径方向外側に張り出す基部と、を有し、前記支持部の外周には、シールリングが嵌め込まれている。
【0008】
モータケースが金属製であり、その端部のみがベース部材に固定されているので、露出しているモータケースの外周面から放熱させることができる。この場合、シールリングがモータケースの外周に設けられていると、モータケースからの放熱を阻害することとなるが、シールリングはベース部材の支持部に嵌め込まれているので、シールリングによりモータケースの放熱性が低下することを抑制できる。また、ベース部材は樹脂製であり、モータケースに比べて高温とならないことから、シールリングを高耐熱性の素材により構成する必要がなく、シールリングの製造コストを低減できる。
【0009】
本発明の電動アクチュエータの取り付け構造は、上記電動アクチュエータを金属製の固定部材に取り付けてなる取り付け構造であって、前記固定部材は、前記ベース部材から突出している前記モータケースを径方向に位置決めして収容可能な円筒状の第1内周面を有する第1収容部と、前記基部の前記モータケース側の取付面が当接する受け面と、を備え、前記シールリングが前記固定部材と前記ベース部材との間を密封した状態に設けられている。
【0010】
ベース部材のモータケース側の取付面が固定部材の受け面に当接し、ベース部材と固定部材との間にシールリングが設けられているので、これらを確実にシールすることができ、例えば、固定部材内を液体や気体などの流体が流通している場合に、流体の固定部材からの漏れを防止できる。
また、第1収容部の第1内周面によりモータケースが径方向に位置決めされることから、第1収容部の第1内周面とモータケースの外周面との隙間が小さい。このため、モータの熱をモータケースの外周面から固定部材の第1収容部の第1内周面に効率よく伝達できる。しかも、シールリングも固定部材とベース部材との間に設けられるので、モータケースからの放熱を阻害することがない。これにより、固定部材からの放熱が促進される。
【0011】
本発明の電動アクチュエータの取り付け構造の好ましい態様としては、前記固定部材は、前記第1収容部に連続して形成され、前記第1収容部の前記第1内周面より大径で、前記シールリングを収容可能な筒状の第2内周面を有する第2収容部をさらに備え、前記支持部の外周面と前記第2内周面とにより前記シールリングが径方向に押圧状態に保持されるとよい。
【0012】
ここで、電動アクチュエータが固定部材に取り付けられる際に、シールリングをベース部材と固定部材との間で電動アクチュエータの取り付け方向に押圧して密封する構造であると、取り付け方向に対する反力が生じるため、取り付け作業性が悪化するおそれがある。
これに対し、上記態様では、シールリングが支持部の外周面と第2収容部の第2内周面とにより支持部の径方向に押圧されることから、取り付け方向に対する反力が小さくなるので、取り付け作業性が良い。
【0013】
本発明の電動アクチュエータの取り付け構造の好ましい態様としては、前記第2収容部に収容された前記シールリングは、前記ベース部材と前記固定部材との少なくとも一方との間に、前記回転軸の軸線方向に隙間が形成されているとよい。
【0014】
上記態様では、シールリングとベース部材との間又はシールリングと固定部材との間の少なくとも一方に回転軸の軸線方向に隙間が形成されていることから、シールリングが電動アクチュエータの取り付け方向に押圧されることを防止でき、取り付け作業性をさらに向上できる。また、シールリングの潰し率も適正値で管理しやすい。
【0015】
本発明の電動アクチュエータの取り付け構造の好ましい態様としては、前記支持部は、前記モータケースより大径であり、前記固定部材は、前記第2収容部と前記第1収容部との間に、前記支持部の先端部を収容可能な筒状の第3内周面を有する第3収容部をさらに備え、前記第3内周面の内径は、前記第1内周面の内径より大きく、かつ、前記第2内周面の内径よりも小さく設定されているとよい。
【0016】
上記態様では、第1収容部と第2収容部との間で、電動アクチュエータと固定部材との隙間が屈曲状態となるので、シールリングが第2収容部の第2内周面と支持部の外周面とにより押圧されて変形したときに、シールリングの一部が上記隙間から第1収容部側に入り込むことを抑制して、シールリングの過度の変形を防止できる。
【0017】
本発明の電動アクチュエータの取り付け構造の好ましい態様としては、前記第3内周面と前記支持部の外周面との間に第1隙間が形成され、前記第1隙間は、前記第1内周面と前記モータケースの外周面との間の隙間よりも大きいとよい。
【0018】
上記態様では、第1隙間が第1内周面とモータケースの外周面との間の隙間より大きいので、第3収容部への支持部の挿入に阻害されることなく、第1内周面とモータケースの外周面とにより固定部材への径方向の位置決めが確実になされる。
【0019】
本発明の電動アクチュエータの取り付け構造の好ましい態様としては、前記第3収容部の先端面と前記支持部の先端面との間に第2隙間が形成されているとよい。
【0020】
上記態様では、第3収容部の先端面と支持部の先端面との間に第2隙間が形成されているので、第3収容部への支持部の挿入に阻害されることなく、固定部材の受け面に基部の取付面を確実に取り付けることができる。
【0021】
本発明の弁体駆動装置は、上記電動アクチュエータと、前記電動アクチュエータの駆動により前記回転軸の軸線方向に沿って移動可能な弁体と、を備えている。
【0022】
本発明では、弁体駆動装置が上記電動アクチュエータを備えているので、弁体駆動装置が固定部材に取り付けられた際に、固定部材と弁体駆動装置とを密封して固定でき、弁体駆動装置の位置決め性、放熱性を向上できる。このため、アイドルエアーコントロールバルブ(IACV)や、電子制御サスペンションとして好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、モータの放熱性を向上させることができる電動アクチュエータ及びその取り付け構造、並びに弁体駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動アクチュエータを備える弁体駆動装置を示す斜視図である。
【
図2】上記実施形態の弁体駆動装置を示す側面図である。
【
図3】上記実施形態の弁体駆動装置の取り付け構造を示す断面図である。
【
図4】
図3に示す弁体駆動装置の取り付け構造を示す断面図の一部を拡大して示す図である。
【
図5】上記実施形態の変形例に係る弁体駆動装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータ及びその取り付け構造、並びに弁体駆動装置について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、モータ31の回転軸311の回転中心軸線を軸線Lとし、回転軸311の回転中心軸が延在している方向を軸線L方向とする。また、回転軸311が突出している一方側を出力側L1とし、回転軸311が突出している側とは反対側(他方側)を反出力側L2として説明する。
【0026】
(流量制御装置の構成)
本実施形態は、アイドルエアーコントロールバルブ(IACV)や、電子制御サスペンションとして用いられる流量制御装置の流路構成部材51に弁体駆動装置10を取り付けた実施形態であり、流路構成部材51の流路510を流通する液体や気体などの流体の流量を制御する。
【0027】
(弁体駆動装置の概略構成)
弁体駆動装置10は、
図1~
図3に示すように、駆動源として電動アクチュエータ30を用いており、電動アクチュエータ30の駆動により移動する弁体20を備えている。この弁体20の先端部は、円錐面の中心部が先端方向(出力側L1)に突出した形状に形成されている。また、弁体駆動装置10の弁体20を移動する機構は、例えば、特許文献1に記載の直動機構と同様に、モータの回転軸の雄ねじと螺合する雌ねじ部材をガイド部材により回転軸の軸線L方向に沿って案内することにより、雌ねじ部材と一体の弁体20を進退させる構成である。
【0028】
(電動アクチュエータの構成)
電動アクチュエータ30は、
図1~
図3に示すように、モータ31と、樹脂製のベース部材32と、を備えている。また、電動アクチュエータ30は、流路構成部材51に取り付けた際に押圧された状態となるシールリング40をベース部材32に設けている。
【0029】
(モータの構成)
モータ31は、
図1~
図3に示すように、回転軸311と一体のロータ(図示省略)及びステータ(図示省略)を収容し、外周面が円筒状に形成された金属製のモータケース312を備えている。このモータケース312は、例えば、鋼板等の金属により構成され、円筒状の周壁313と、周壁313の先端側(出力側L1)に一体の端板314と、を有している。また、回転軸311は、出力側L1の先端部がモータケース312の端板314から直交する方向(軸線L方向)に延出している。このようなモータケース312の端板314とは反対側(反出力側L2)の端部(図示省略)は、ベース部材32に埋設状態に固定されている。
【0030】
(ベース部材の構成)
ベース部材32は、
図1及び
図2に示すように、インサート成形によりモータケース312と一体に形成された樹脂製の部材である。このインサート成形においては、モータケース312は、射出成形金型内に周壁313の端板314とは反対側(反出力側L2)の端部の外周面が露出され、他の部分が保持された状態で位置決めされる。そして、その露出した端部の周囲に樹脂が一体に成形されることにより、モータケース312と一体にベース部材32が形成される。
【0031】
このベース部材32は、モータケース312の端板314とは反対側(反出力側L2)の端部を固定しており、外周面が回転軸311と同軸の円柱状に形成された支持部321と、支持部321のモータケース312とは反対側(反出力側L2)に一体に形成され、支持部321より径方向外側に張り出す基部322と、基部322の反出力側L2に位置する本体部323と、本体部323の側面に接続されるコネクタ接続部324と、を備えている。この基部322のモータケース312側(出力側L1)の面は、流路構成部材51への取付面320とされている。
【0032】
なお、本実施形態では、支持部321の外径は、モータケース312の外径より大きく形成されている。この支持部321の外周面には、シールリング40が嵌め込まれている。また、基部322の外周面が支持部321の外周面と同様に円柱状に形成され、回転軸311と同軸に配置されている。基部322の外径は、支持部321の外径よりも大きく形成されている。
【0033】
本体部323は、外周面が一部円筒状に形成された部材である。この本体部323の側面には、回転軸311の軸線L方向に直交する方向に延びる中空状のコネクタ接続部324が接続されている。これら本体部323及びコネクタ接続部324の内部には、モータ31への通電用の配線(図示省略)が設けられ、コネクタ接続部324に装着されるコネクタ(図示省略)を介して外部配線と接続される。
【0034】
(シールリングの構成)
シールリング40は、ゴム製のOリング等からなる。このシールリング40は、
図1及び
図2に示すように、支持部321の外周面に嵌め込まれている。本実施形態では、シールリング40の反出力側L2の面は、取付面320に当接している。このシールリング40は、
図3に示すように、弁体駆動装置10が後述する流路構成部材51に固定された際に、流路構成部材51を密封(シール)するために設けられる部材である。
なお、支持部321の軸線L方向の長さは、シールリング40の直径(線径又は太さ)よりも十分に大きい。例えば、シールリング40の直径の1.2倍以上のように大きく設定しておくとよい。
【0035】
(流路構成部材の構造及び電動アクチュエータの取り付け構造)
弁体駆動装置10が取り付けられる流路構成部材51は、本発明の固定部材に相当し、
図3に示すように、内部に気体や液体などの流体が流通する流路510が形成された筒状に形成されている。この流路構成部材51の端部には、円形断面の開口部511が形成されている。具体的には、図示を省略するが、筒状の流路構成部材51の外周面には、流路510と直交する方向に貫通孔が形成され、この貫通孔から流路510を介して開口部511に向けて流体が流通する。なお、本実施形態では、貫通孔から流路510を介して開口部511に向けて流体が流通することとしたが、これに限らず、開口部511から流路510を介して貫通孔に向けて流体が流通してもよい。
【0036】
弁体駆動装置10は、流路構成部材51の開口部511とは反対側に取り付けられ、その取り付け方向は、弁体20を先端とした状態で軸線L方向に沿って流路構成部材51に取り付けられ、軸線L方向の出力側L1に向けた弁体20が開口部511と対向して配置されている。
【0037】
この流路構成部材51は、アルミニウム合金等の金属により形成され、弁体駆動装置10が取り付けられるベース部材32から突出しているモータケース312を収容可能な円筒状の第1内周面521を有する第1収容部52と、シールリング40を収容可能な筒状の第2内周面531を有する第2収容部53と、第2収容部53と第1収容部52との間に位置し、支持部321の先端部を収容可能な筒状の第3内周面541を有する第3収容部54と、基部322の取付面320が当接する受け面55と、を備えている。すなわち、第1収容部52から開口部511の反対方向に第3収容部54、第2収容部53、受け面55が順に形成されている。
【0038】
第1収容部52は、開口部511と同軸に設けられ、第1収容部52と開口部511との間に、流路510が形成されている。本実施形態では、流路510は、断面円形状に形成され、その端部が第1収容部52に連続するとともに、他方側の端部が開口部511に連通している。この流路510内には、弁体20が配置される。
【0039】
第1収容部52の第1内周面521の内径は、開口部511の内径より大きく形成され、かつ、モータケース312の外径と同じ又はわずかに大きく形成されている。このため、モータケース312が収容される際に、第1収容部52は、モータケース312を径方向に位置決めして収容する。具体的には、モータケース312の周壁313の外周面と第1内周面521とにより、径方向の位置決めがされ、モータケース312の周壁313の外周面と第1内周面521とが接触するか、わずかな隙間をあけて対向して配置される。
【0040】
第2収容部53は、第1収容部52より開口部511とは反対側に位置しており、シールリング40を収容する。この第2収容部53は、第3収容部54を介して第1収容部52に連続して形成されている。この第2収容部53の第2内周面531の内径は、第1収容部52の第1内周面521の内径より大きく、かつ、シールリング40の外径よりも若干小さく形成されている。
なお、このシールリング40が嵌め込まれている支持部321の外径は、シールリング40の内径より若干大きく形成されている。したがって、シールリング40は、支持部321の外周面と第2内周面521との間で径方向に押圧される。
【0041】
第3収容部54は、第1収容部52と第2収容部53との間に位置し、支持部321の先端部を収容可能な部位である。この第3収容部54の第3内周面541の内径は、第1収容部52の第1内周面521の内径より大きく、かつ、第2収容部53の第2内周面531の内径よりも小さく設定されている。
【0042】
図4は、
図3に示す弁体駆動装置10の取り付け構造を示す断面図におけるシールリング40近傍を拡大して示す図である。
シールリング40は、径方向に押圧されているため、軸線L方向に延びるように変形する。このシールリング40が収容された第2収容部53は、
図4に示すように、ベース部材32(基部322)と流路構成部材51との間に、軸線L方向に隙間g3が形成されている。このため、シールリング40が弁体駆動装置10の取り付け方向に押圧されることが防止される。
なお、本実施形態では、隙間g3は、シールリング40の出力側L1にのみ形成されていることとしたが、これに限らず、軸線L方向の両側に分けて設けられることとしてもよい。
【0043】
また、
図4に示すように、第3内周面541と支持部321の外周面との間に第1隙間g1が形成されている。この第1隙間g1は、第1内周面521とモータケース312の周壁313の外周面との間の隙間g0よりも大きく設定されている。なお、前述したように、モータケース312の周壁313の外周面の外径は、第1収容部52の第1内周面521の内径とほぼ同じか、わずかに小さく設定されている。
【0044】
また、第3内周面541の先端面と、支持部321の先端面との間には、第2隙間g2が形成されている。この第2隙間g2が形成されることにより、流路構成部材51の受け面55への基部322の取付面320への固定を阻害することが防止される。
【0045】
このような構成により、ベース部材32のモータケース側(出力側L1)の取付面320が流路構成部材51の受け面55に当接しさせた状態に取り付けると、ベース部材32と流路構成部材51との間に設けられるシールリング40がこれらをシールして、流体の流路構成部材51からの漏れを防止できる。
この場合、第2収容部53内に配置されるシールリング40は、第2収容部53の第2内周面531と支持部321の外周面とにより、径方向に押圧状態で保持される。
さらに、第1内周面521とモータケース312の周壁313の外周面との間の隙間g0が小さいので、第1内周面521とモータケース312の周壁313の外周面とにより流路構成部材51への径方向の位置決めが確実になされる。
【0046】
このように、本実施形態では、弁体駆動装置10を流路構成部材51に取り付ける際に、シールリング40が支持部321の外周面と第2収容部53の第2内周面531とにより支持部321の径方向に押圧されることから、取り付け方向に対する反力が小さくなるので、取り付け作業性が良い。この場合、支持部321の軸線L方向の長さがシールリング40の直径(線径)よりも大きく、シールリング40と流路構成部材51との間に軸線L方向に隙間g3が形成されることから、シールリング40が弁体駆動装置10の取り付け方向に押圧されることを防止でき、取り付け作業性を向上できる。また、シールリング40の潰し率も適正値で管理しやすい。
【0047】
また、第1収容部52と第2収容部53との間で、電動アクチュエータ30と流路構成部材51との第1隙間g1及び第2隙間g2が屈曲状態となるので、シールリング40が第2収容部53の第2内周面531と支持部321の外周面とにより押圧されて変形したときに、シールリング40の一部が上記各隙間g1,g2から第1収容部52側に入り込むことを抑制できる。これにより、この取り付け構造において、シールリング40の過度の変形を防止できる。
【0048】
(弁体駆動装置の駆動)
流路構成部材51に取り付けられた弁体駆動装置10のモータ31の駆動により、弁体20は、
図3の二点鎖線で示すように、流路510内を軸線L方向に沿う方向に移動させられる。この弁体20の移動により、流路構成部材51内の流路510を流通する流体の流量が調整される。
【0049】
本実施形態では、モータケース312が金属製であり、その端部のみがベース部材32に固定されているので、モータケース312の周壁313の外周面から放熱させることができる。この場合、モータケース312の周壁313の外周面と第1収容部52の第1内周面521との隙間g0が極めて小さいので、その間で速やかに熱伝達して放熱を促進することができる。シールリング40がモータケース312の周壁313の外周面に設けられていると、モータケース312からの放熱を阻害することとなるが、シールリング40は、ベース部材32の支持部321に嵌め込まれているので、シールリング40によりモータケース312の放熱が阻害されることを抑制でき、モータ31の放熱性を向上させることができる。
【0050】
また、ベース部材32は樹脂製であり、モータ31に比べて高温とならないことから、シールリング40を高耐熱性の素材により構成する必要がなく、シールリング40の製造コストを低減できる。
【0051】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、基部322の外周面は、円柱状に形成されていることとしたが、これに限らない。
図5は、上記実施形態の変形例に係る弁体駆動装置10Aを示す斜視図である。なお、以下の説明では、上記実施形態と同じ又は略同じ構成については、同じ番号を付し、説明を省略又は簡略化する。
弁体駆動装置10Aは、基部322Aを備えている。この基部322Aは、コネクタ接続部324の延出方向と直交する方向に延びる平面視略ひし形状に形成されている。この基部322Aの軸線L方向に直交する縦方向及び横方向の寸法は、上記基部322と同様に、支持部321の外径よりも大きく形成されている。この場合、縦方向より横方向に大きく張り出しており、その張り出し部分に貫通孔325が形成されている。
本変形例では、基部322Aの左右に張り出している部分にそれぞれ貫通孔325が設けられているので、この貫通孔325にねじ等を挿入することにより、弁体駆動装置10Aをより強固に流路構成部材51にねじ止めすることが可能となる。また、この基部322Aの張り出し部分の表面により、広い取付面320が確保される。
【0053】
上記実施形態では、シールリング40は、Oリングにより構成されることとしたが、これに限らず、例えば、板状のガスケットにより構成されてもよい。この場合、ガスケットは、径方向に圧縮されないが、本発明は、シールリング40の形状によらず、軸線L方向に押圧されるものを除外するものではない。
【符号の説明】
【0054】
10,10A…弁体駆動装置、20…弁体、30…電動アクチュエータ、31…モータ、311…回転軸、312…モータケース、313…周壁、314…端板、32…ベース部材、320…取付面、321…支持部、322,322A…基部、323…本体部、324…コネクタ接続部、40…シールリング、51…流路構成部材(固定部材)、510…流路、511…開口部、52…第1収容部、521…第1内周面、53…第2収容部、531…第2内周面、54…第3収容部、541…第3内周面、55…受け面、L…軸線、L1…出力側、L2…反出力側