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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電動トラック
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20231005BHJP
   B62D 21/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D21/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019130450
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021014208
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】木村 清
(72)【発明者】
【氏名】小此木 茂
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187976(JP,A)
【文献】特開2007-038961(JP,A)
【文献】特開2014-069686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリから供給される電力で走行する電動トラックであって、
一対のサイドレールが車幅方向において互いに対向するように設けられるラダーフレームと、
前記バッテリを含み、前記一対のサイドレール間に配置されると共に、前記一対のサイドレールのそれぞれに連結される電力供給ユニットと、を備え、
前記一対のサイドレールのそれぞれは、ウェブの両端に所定幅のフランジを設けて構成され、
前記フランジは、車幅方向において前記電力供給ユニットの少なくとも1つの角部と対向する位置に、前記所定幅よりも小さい幅からなるフランジ狭窄部が形成され
前記フランジ狭窄部は、前記電力供給ユニットの車両前方における2つの前記角部と互いに対向するように配置される、電動トラック。
【請求項2】
バッテリから供給される電力で走行する電動トラックであって、
一対のサイドレールが車幅方向において互いに対向するように設けられるラダーフレームと、
前記バッテリを含み、前記一対のサイドレール間に配置されると共に、前記一対のサイドレールのそれぞれに連結される電力供給ユニットと、を備え、
前記一対のサイドレールのそれぞれは、ウェブの両端に所定幅のフランジを設けて構成され、
前記フランジは、車幅方向において前記電力供給ユニットの少なくとも1つの角部と対向する位置に、前記所定幅よりも小さい幅からなるフランジ狭窄部が形成され
前記フランジ狭窄部は、前記電力供給ユニットの車両後方における2つの前記角部と互いに対向するように配置される、電動トラック。
【請求項3】
バッテリから供給される電力で走行する電動トラックであって、
一対のサイドレールが車幅方向において互いに対向するように設けられるラダーフレームと、
前記バッテリを含み、前記一対のサイドレール間に配置されると共に、前記一対のサイドレールのそれぞれに連結される電力供給ユニットと、を備え、
前記一対のサイドレールのそれぞれは、ウェブの両端に所定幅のフランジを設けて構成され、
前記フランジは、車幅方向において前記電力供給ユニットの少なくとも1つの角部と対向する位置に、前記所定幅よりも小さい幅からなるフランジ狭窄部が形成され
前記フランジ狭窄部は、アール形状である、電動トラック。
【請求項4】
バッテリから供給される電力で走行する電動トラックであって、
一対のサイドレールが車幅方向において互いに対向するように設けられるラダーフレームと、
前記バッテリを含み、前記一対のサイドレール間に配置されると共に、前記一対のサイドレールのそれぞれに連結される電力供給ユニットと、を備え、
前記一対のサイドレールのそれぞれは、ウェブの両端に所定幅のフランジを設けて構成され、
前記フランジは、車幅方向において前記電力供給ユニットの少なくとも1つの角部と対向する位置に、前記所定幅よりも小さい幅からなるフランジ狭窄部が形成され
前記フランジ狭窄部は、最も小さい幅からなる最狭窄部が、前記角部に対して車幅方向の直線上に並ぶように配置される、電動トラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動トラックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、環境負荷低減の観点に着目し、内燃機関に代えて走行用動力源としてモータを利用する電気自動車、及び当該内燃機関と当該モータとを併用するハイブリッド自動車等の電動車両の開発が進んでいる。特に、これらの電動車両においては、当該モータを駆動するために駆動用のバッテリが搭載され、当該バッテリから当該モータへ電力を供給することにより、車両を走行させるために必要となる動力が得られる。近年、このような電動車両に関し、トラック等の商用車の分野においても、その開発が行われている。例えば、特許文献1には、駆動用のバッテリパックを電動トラックのラダーフレームに保持する保持構造が開示されている。
【0003】
このような電動トラックでは、航続距離を確保するためにハイブリッドトラック等と比較してより大容量のバッテリを搭載する必要がある。そして、電動トラックにおいては、ラダーフレームのサイドレールに対して車幅方向の外側にバッテリを設けるよりも、ラダーフレームのサイドレール間にバッテリを設ける方が、当該バッテリが占める空間を確保しやすく好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-113063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、トラックのサイドレールは、ウェブの両端からフランジが車幅方向内側を向くように断面コ字形状に形成されているのが一般的である。そのため、上記のようなレイアウトでバッテリを配置する場合、車両側方からの衝突発生により、万が一、サイドレールが変形したときには、バッテリは、ウェブに対して面接触するのではなく、比較的接触面積が小さいフランジ端部から集中的に衝撃を受けることになる。このため、一対のサイドレール間にバッテリが配置される電動トラックに側突が発生した場合には、バッテリに対する被害が拡大する可能性が生じ、側突安全性を確保することができない虞があった。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フレーム間に配置されたバッテリの側突安全性を確保することができる電動トラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<本発明の第1の態様>
本発明の第1の態様に係る電動トラックは、バッテリから供給される電力で走行する電動トラックであって、一対のサイドレールが車幅方向において互いに対向するように設けられるラダーフレームと、前記バッテリを含み、前記一対のサイドレール間に配置されると共に、前記一対のサイドレールのそれぞれに連結される電力供給ユニットと、を備え、前記一対のサイドレールのそれぞれは、ウェブの両端に所定幅のフランジを設けて構成され、前記フランジは、車幅方向において前記電力供給ユニットの少なくとも1つの角部と対向する位置に、前記所定幅よりも小さい幅からなるフランジ狭窄部が形成されている。
【0008】
電動トラックは、バッテリを含む電力供給ユニットが一対のサイドレールのそれぞれに接続され、これによりラダーフレームの電力供給ユニットが配置される部分において、側突に対するラダーフレームの剛性が向上する。一方、ラダーフレームは、車幅方向において電力供給ユニットの角部に対向する位置で相対的に剛性が低下するため、側突による衝撃がその剛性を超える場合には電力供給ユニットの角部周辺において変形する虞がある。このとき、変形したサイドレールは、比較的接触面積が小さいフランジ端部において集中的に電力供給ユニットに対して衝撃を与えることにより、電力供給ユニットの内部に収容されたバッテリを損傷させる虞が生じる。
【0009】
そこで、本発明の第1の態様に係る電動トラックは、電力供給ユニットの角部に対向するラダーフレームのフランジにおいてフランジ狭窄部を設け、サイドレールが変形した場合であっても電力供給ユニットとサイドレールとの接触を抑制する。従って、本発明の第1の態様に係る電動トラックによれば、フレーム間に配置されたバッテリの側突安全性を確保することができる。
<本発明の第2の態様>
本発明の第2の態様に係る電動トラックにおいては、上記した本発明の第1の態様において、前記フランジ狭窄部は、前記電力供給ユニットの車両前方における2つの前記角部と互いに対向するように配置されてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様に係る電動トラックによれば、ラダーフレームが変形する場合に、電力供給ユニットとサイドレールとが接触する可能性が最も高い電力供給ユニットの前方角部においてフランジ狭窄部が配置されるため、両者が接触することによりバッテリが損傷する虞をより低減することができる。
<本発明の第3の態様>
本発明の第3の態様に係る電動トラックにおいては、上記した本発明の第1又は2の態様において、前記フランジ狭窄部は、前記電力供給ユニットの車両後方における2つの前記角部と互いに対向するように配置されてもよい。
【0011】
本発明の第3の態様に係る電動トラックによれば、ラダーフレームが変形する場合に、電力供給ユニットとサイドレールとが接触する可能性が比較的高い電力供給ユニットの後方角部においてフランジ狭窄部が配置されるため、両者が接触することによりバッテリが損傷する虞をより低減することができる。
<本発明の第4の態様>
本発明の第4の態様に係る電動トラックにおいては、上記した本発明の第1乃至3のいずれかの態様において、前記フランジ狭窄部は、アール形状であってもよい。
【0012】
本発明の第4の態様に係る電動トラックによれば、サイドレールのフランジにアール形状のフランジ狭窄部を備えているため、車両走行時のフレーム入力においてもフランジ狭窄部に応力が集中することを防ぐことができる。
<本発明の第5の態様>
本発明の第5の態様に係る電動トラックにおいては、上記した本発明の第1乃至4のいずれかの態様において、前記フランジ狭窄部は、最も小さい幅からなる最狭窄部が、前記角部に対して車幅方向の直線上に並ぶように配置されてもよい。
【0013】
本発明の第5の態様に係る電動トラックによれば、電力供給ユニットの角部が、フランジ狭窄部のうちの最も小さい幅からなる最狭窄部に対向するように構成されているため、電力供給ユニットがラダーフレームに接触することにより損傷を受ける虞をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動トラックの全体構成を概略的に示す上面図である。
図2】電動トラックに搭載される電力供給ユニットの概形を表す斜視図である。
図3】ラダーフレームと電力供給ユニットとを接続する弾性支持部の構成及び接続形態を示す断面図である。
図4】側突によりラダーフレームが変形した場合の電動トラックの上面図である。
図5】電力供給ユニットの角部の近傍におけるラダーフレームの部分拡大図である。
図6】下方フランジのフランジ狭窄部とバッテリハウジングの第1バッテリ収容部との相対位置を模式的に示す平面図である。
図7】ラダーフレームにおいてフランジ狭窄部が形成される位置を表す上面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るラダーフレームの下方フランジと電力供給ユニットとの相対位置を模式的に示す平面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るラダーフレームの下方フランジと電力供給ユニットとの相対位置を模式的に示す平面図である。
図10】本発明の第4実施形態に係るラダーフレームの下方フランジと電力供給ユニットとの相対位置を模式的に示す平面図である。
図11】ラダーフレームと電力供給ユニットとを接続する弾性支持部の構成及び接続形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動トラック1の全体構成を概略的に示す上面図である。図1に示すように、本実施形態に係る電動トラック1は、ラダーフレーム2、キャブ3、荷箱4、車輪機構5、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、及び電力供給ユニット8を備える。尚、図1では、電動トラック1の上面からキャブ3及び荷箱4を透過するように見た場合の上面図として表している。
【0016】
ラダーフレーム2は、「一対のサイドレール」としての左サイドレール2L及び右サイドレール2Rと複数のクロスメンバCM1~CM8とを有する。左サイドレール2L及び右サイドレール2Rは、電動トラック1の車両長手方向Xに沿って延在し、車幅方向Yにおいて互いに対向するように平行に配置される。複数のクロスメンバCM1~CM8は、それぞれの位置において左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとを連結している。すなわち、ラダーフレーム2は、いわゆる梯子型フレームを構成している。そして、ラダーフレーム2は、キャブ3、荷箱4、駆動ユニット6、駆動電力供給部7、電力供給ユニット8、及び電動トラック1に搭載されるその他の重量物を支持する。
【0017】
キャブ3は、図示しない運転席を含む構造体であり、ラダーフレーム2の前部上方において支持されている。一方、荷箱4は、電動トラック1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、ラダーフレーム2の後部上方に設けられている。
車輪機構5は、本実施形態においては、車両前方に位置する左右の前輪5a、前輪5aの車軸としてのフロントアクスル5b、車両後方に位置し且つ左右に各2つ配置された後輪5c、及び後輪5cの車軸としてのリアアクスル5dから構成される。そして、本実施形態に係る電動トラック1においては、後輪5cが駆動輪として機能するように駆動力が伝達され、電動トラック1が走行することになる。尚、車輪機構5は、図示しないサスペンション機構を介してラダーフレーム2に懸架され、電動トラック1の重量を支持する。
【0018】
駆動ユニット6は、モータ6a、減速機構6b、及び差動機構6cを有する。モータ6aは、後述する駆動電力供給部7から交流電力が供給されることにより、電動トラック1の走行に必要な駆動力を発生させる。減速機構6bは、図示しない複数のギアを含み、モータ6aから入力される回転トルクを減速して差動機構6cに出力する。差動機構6cは、減速機構6bから入力される動力を左右の後輪5cに対して振り分ける。すなわち、駆動ユニット6は、減速機構6b及び差動機構6cを介して、モータ6aの駆動トルクを車両の走行に適した回転速度に減速してリアアクスル5dに駆動力を伝達する。これにより駆動ユニット6は、リアアクスル5dを介して後輪5cを回転させて電動トラック1を走行させることができる。尚、駆動ユニット6は、車両長手方向Xの前方において、ラダーフレーム2に取り付けられるクロスメンバCM5に懸架されている。
【0019】
駆動電力供給部7は、いわゆるインバータであり、電力供給ユニット8から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ6aへ供給し、電動トラック1に対するアクセル操作に応じてモータ6aの回転速度を制御する。
電力供給ユニット8は、主に電動トラック1を走行させるためのエネルギー源としてモータ6aに電力を供給するバッテリ30(図3参照)を含む。電力供給ユニット8は、電動トラック1に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型で大容量のバッテリモジュールBM(図3参照)を内部に複数備える。この他、電力供給ユニット8は、後述するPDU20を介して電動トラック1に搭載される図示しない電動補機群に対しても電力を供給することができる。電力供給ユニット8の構成については詳細を後述する。
【0020】
ここで、本実施形態におけるラダーフレーム2は、電力供給ユニット8の車幅方向Yにおける両端をそれぞれ弾性的に支持する複数の弾性支持部ESを有している。複数の弾性支持部ESは、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rのそれぞれに対して車幅方向Yの外側にそれぞれ3つ(合計6つ)設けられている。ただし、弾性支持部ESは、電力供給ユニット8の重量及び寸法に応じ、その数量を適宜変更することができる。複数の弾性支持部ESについても、詳細構成を後述する。
【0021】
図2は、電動トラック1に搭載される電力供給ユニット8の概形を表す斜視図である。本実施形態における電力供給ユニット8は、バッテリハウジング10、PDU20、複数のバッテリモジュールBMからなるバッテリ30(図2では図示を省略、図3参照)からなる。
バッテリハウジング10は、車両長手方向Xに対していずれも同じ長さの略直方体形状である第1バッテリ収容部11と第2バッテリ収容部12とが一体となるように形成されている。ただし、第1バッテリ収容部11は、車両長手方向Xの前方におけるPDU20を収容する部分において高さが低くなるように形成されており、クロスメンバCM4と干渉しない形状となっている。そして、第1バッテリ収容部11のPDU20を収容する部分とクロスメンバCM4とがサイドレール間において車高方向Zに並ぶように配置することにより、空間を有効に活用してバッテリ30の占有空間を最大化することに貢献している。
【0022】
また、第1バッテリ収容部11は、車幅方向Yに対して、上記した左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとの間に収まる幅に設定されている。一方、第2バッテリ収容部12は、車幅方向Yの長さがラダーフレーム2と同等、又はラダーフレーム2よりも広い幅に設定され、車高方向Zの下方から第1バッテリ収容部11に連結されている。
すなわち、バッテリハウジング10は、車両長手方向Xに垂直な平面における断面形状が逆T型となる形状を備えている。そして、バッテリハウジング10は、第1バッテリ収容部11と第2バッテリ収容部12との幅の違いにより生じる段差部分を左サイドレール2L及び右サイドレール2Rがそれぞれ通るように配置される。これにより、電力供給ユニット8は、左サイドレール2Lと右サイドレール2Rとの間、及びその下方のスペースを有効に利用して、バッテリ容量を確保している。
【0023】
また、バッテリハウジング10は、第2バッテリ収容部12の車幅方向Yの外側面であるハウジング側面12Sにおいて、弾性支持部ESを接続するための複数の取付領域13が設けられている。
PDU20は、それぞれのバッテリモジュールBMから電力を集約すると共に、集約した電力の一部を電動補機群のそれぞれにハーネス(いずれも図示せず)を介して配電するいわゆる配電部(Power Distribution Unit)である。PDU20は、本実施形態においてはバッテリ30と共にバッテリハウジング10に収容されているが、サイドレール間のレイアウトによってはバッテリハウジング10の外部に設けてもよい。
【0024】
図3は、ラダーフレーム2と電力供給ユニット8とを接続する弾性支持部ESの構成及び接続形態を示す断面図である。より詳しくは、図3は、電力供給ユニット8及び弾性支持部ESの車両長手方向Xに垂直な断面を車両後方から見た場合の断面図である。
ここで、電力供給ユニット8は、バッテリハウジング10の大きさに応じた数の複数のバッテリモジュールBMを収容している。バッテリモジュールBMの形状及び配置については種々の変更が可能である。
【0025】
そして、弾性支持部ESは、フレーム側ブラケットES1、弾性連結体ES2、及びバッテリ側ブラケットES3を備える。フレーム側ブラケットES1は、金属製の取り付け部材であり、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rの車幅方向Yにおける外側の面に対して、それぞれボルト締結されている。弾性連結体ES2は、車高方向Zの上部においてラバーブッシュを介してフレーム側ブラケットES1に接続され、車高方向Zの下部においてバッテリ側ブラケットES3に接続されている。バッテリ側ブラケットES3は、金属製の取り付け部材であり、バッテリハウジング10の上記した取付領域13にそれぞれ固定されている。
【0026】
これにより複数の弾性支持部ESは、電力供給ユニット8をラダーフレーム2に弾性的に懸架し、電動トラック1の走行に伴いフレームの捩れや横曲げに伴う応力が発生した場合であっても、その緩衝効果により電力供給ユニット8へ伝達される当該応力を低減することができる。すなわち、電力供給ユニット8の収容物としてのバッテリ30が当該応力により損傷する虞を低減することができる。
【0027】
一方、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rにとってみても、それぞれに接続される弾性支持部ES及び電力供給ユニット8のバッテリハウジング10を介して両者が互いに弾性的に連結されることになる。このため、複数の弾性支持部ESは、電力供給ユニット8と共にサイドレール間を連結することによりラダーフレーム2自体の剛性を向上させながら、フレームの捩れや横曲げに対して応力を低減することになり、クロスメンバと同等の機能を発揮することになる。
【0028】
ここで、電動トラック1に他車両等による側突が発生した場合の電力供給ユニット8に対する影響について説明する。図4は、側突によりラダーフレーム2が変形した場合の電動トラック1の上面図である。尚、荷箱4の図示は省略している。図4は、より具体的には、電動トラック1の電力供給ユニット8が搭載された部分に対して車幅方向Yの左側から他車両BCが衝突し、ラダーフレーム2が変形する状況を想定した模式的な上面図である。
【0029】
電動トラック1は、図4の領域R1及び領域R5で示すように、キャブ3、並びにフロントアクスル5b及びリアアクスル5dを含む車輪機構5の周辺においては比較的剛性が高いため、側突に対しても変形が少ない。より具体的には、ラダーフレーム2の領域R1は、路面と左右の前輪5aとの摩擦力により変位が規制されつつ、フロントアクスル5b、及びクロスメンバCM1~CM3が密集することにより補強される部分であるため、側突に伴う衝撃に対して変形の発生が抑制される。同様に、ラダーフレーム2の領域R5は、路面と左右の後輪5cとの摩擦力により変位が規制されつつ、リアアクスル5d、及びクロスメンバCM5~CM8が密集することにより補強される部分であるため、側突に伴う衝撃に対して変形の発生が抑制される。
【0030】
このとき、電力供給ユニット8は、弾性連結体ES2を介して左サイドレール2L及び右サイドレール2Rにそれぞれ接続されているため、クロスメンバのようにラダーフレームを補強する機能を発揮することができる。このため、ラダーフレーム2は、領域R3で示す電力供給ユニット8の搭載部分に側突が発生した場合であっても、当該側突箇所におけるサイドレールの変形は少なくなる。
【0031】
しかしながら、電力供給ユニット8を支持する最前列の弾性連結体ES2とキャブ3との間の領域R2、及び最後列の弾性連結体ES2とクロスメンバCM5との間の領域R4は、領域R1、領域R3、及び領域R5と比較して、ラダーフレーム2の剛性が相対的に低くなる。そのため、電動トラック1のラダーフレーム2は、電力供給ユニット8の搭載部分に対する上記のような側突発生時に、その剛性を超える衝撃を受けた場合には、当該衝撃に耐えきれずに領域R2及び領域R4において変形する可能性が生じる。
【0032】
このとき、電力供給ユニット8は、変形したラダーフレーム2の車幅方向Yにおける内側において、左サイドレール2L又は右サイドレール2Rのフランジ端部から集中的に衝撃を受けることになるため、収容するバッテリ30に対する被害が拡大する可能性が生じ、側突安全性を確保することができない虞がある。
そこで、本発明に係る電動トラック1は、以下に説明するように、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rに切り欠きを設けることにより、側突発生時において各サイドレールからの集中的な衝撃による電力供給ユニット8の損傷を抑制する。
【0033】
図5は、電力供給ユニット8の角部CPの近傍におけるラダーフレーム2の部分拡大図である。より具体的には、図5は、図4において破線楕円DCで示す部分の拡大斜視図であり、電力供給ユニット8のバッテリハウジング10のうち第1バッテリ収容部11の右前方の角部CPと、当該角部CPに対向する右サイドレール2Rの一部とについて、車幅方向Yの内側から見た場合の斜視図である。
【0034】
ここで、右サイドレール2Rは、従来の一般的なトラックにおけるサイドレールと同様に、車幅方向Yに垂直な面を構成するウェブ2Wと、ウェブ2Wの車高方向Zの上下端部からそれぞれ車幅方向Yの内側に延在する所定幅の上方フランジ2UF及び下方フランジ2LFと、により断面コ字形状に形成されている。尚、左サイドレール2Lについても、右サイドレール2Rと同様に、ウェブ2W、上方フランジ2UF、及び下方フランジ2LFから構成されている。
【0035】
そして、右サイドレール2Rには、図5に示すように、車幅方向Yにおいてバッテリハウジング10の角部CPと車幅方向Yにおいて対向する位置に、所定幅よりも小さい幅からなるフランジ狭窄部SPが形成されている。フランジ狭窄部SPは、下方フランジ2LFとバッテリハウジング10の角部CPとの離間間隔を広げることができる。そのため、バッテリハウジング10の角部CPは、電動トラック1に対する側突発生時にラダーフレーム2が変形した場合であっても、下方フランジ2LFの端部との接触を抑制し、電力供給ユニット8が損傷する虞を低減することができる。
【0036】
図6は、下方フランジ2LFのフランジ狭窄部SPとバッテリハウジング10の第1バッテリ収容部11との相対位置を模式的に示す平面図である。尚、図6においては、第1バッテリ収容部11におけるPDU20及びバッテリ30のそれぞれの収容位置の境界を破線で示している。
図6に見られるように、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rのそれぞれの下方フランジ2LFに形成されたフランジ狭窄部SPは、その切り欠き形状がアール形状となるように形成されている。このため、下方フランジ2LFは、例えば電動トラック1の走行に伴うラダーフレーム2の捩れや横曲げ等により、車両走行時のフレーム入力においてもフランジ狭窄部SPに応力が集中することを防ぐことができる。
【0037】
また、フランジ狭窄部SPは、図中の破線矢印で示す位置において、最も小さい幅からなる最狭窄部を有し、当該最狭窄部がバッテリハウジング10の角部CPに対して車幅方向Yの直線上に並ぶように配置される。これにより、電力供給ユニット8は、バッテリハウジング10の角部CPがラダーフレーム2に接触することにより損傷する虞をより低減することができる。
【0038】
図7は、ラダーフレーム2においてフランジ狭窄部SPが形成される位置を表す上面図である。より具体的には、図7は、電力供給ユニット8の第1バッテリ収容部11を囲む位置におけるラダーフレーム2の上面図である。
図7に示すように、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rのそれぞれの下方フランジ2LFに形成されるフランジ狭窄部SPは、本実施形態においては、電力供給ユニット8の車両前方における2つの角部CP、及び電力供給ユニット8の車両後方における2つの角部CPとそれぞれ互いに対向するように4か所に配置されている。これにより、図4に示す領域R2及び領域R4のように、ラダーフレーム2において剛性が相対的に低く変形が生じやすい部分において、ラダーフレーム2からの衝撃による電力供給ユニット8の損傷を抑制することができる。
【0039】
以上のように、本発明に係る電動トラック1は、電力供給ユニット8の角部CPに対向するラダーフレーム2の下方フランジ2LFにおいてフランジ狭窄部SPを設け、左サイドレール2L又は右サイドレール2Rが変形した場合であっても電力供給ユニット8とラダーフレーム2との接触を抑制する。これにより、本発明の第1の態様に係る電動トラック1によれば、ラダーフレーム2が変形した場合であっても、電力供給ユニット8が下方フランジ2LFの端部から集中的に衝撃を受ける虞を低減することができ、フレーム間に配置されたバッテリ30の側突安全性を確保することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の電動トラック1は、上記した第1実施形態における電力供給ユニット8の構成及びフランジ狭窄部SPの配置が第1実施形態の構成と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0040】
図8は、本発明の第2実施形態に係るラダーフレーム2の下方フランジ2LFと電力供給ユニット8との相対位置を模式的に示す平面図である。第2実施形態の電力供給ユニット8は、バッテリ30(図8では図示を省略)を収容するバッテリハウジング10の車両長手方向Xの前方の面にPDU20が設けられる構成である。すなわち、第2実施形態のPDU20は、バッテリハウジング10の外部からバッテリハウジング10の前面に接続されるように配置されている。
【0041】
この場合には、電力供給ユニット8の前方の角部CPは、バッテリハウジング10の角ではなくPDU20の前方の角に相当する。このため、ラダーフレーム2の下方フランジ2LFは、PDU20の前方の角に対向する位置においてフランジ狭窄部SPが形成されることになる。このため、本発明の第2実施形態によれば、電力供給ユニット8がPDU20をバッテリハウジング10の外部に設ける構成である場合であっても、ラダーフレーム2からの衝撃による電力供給ユニット8の損傷を抑制することができる。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の電動トラック1は、上記した第2実施形態における電力供給ユニット8の構成及びフランジ狭窄部SPの配置が第2実施形態の構成と異なる。以下、第2実施形態と異なる部分について説明することとし、第2実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
図9は、本発明の第3実施形態に係るラダーフレーム2の下方フランジ2LFと電力供給ユニット8との相対位置を模式的に示す平面図である。第3実施形態の電力供給ユニット8は、上記した第2実施形態と同様にPDU20がバッテリハウジング10の外部からバッテリハウジング10の前面に接続されるように配置されている。ただし、第3実施形態に係るPDU20は、車幅方向Yの長さがバッテリハウジング10よりも短い。
【0043】
この場合、電動トラック1に対する側突によりラダーフレーム2が上記の領域R2において変形したときに、電力供給ユニット8とラダーフレーム2の下方フランジ2LFとがバッテリハウジング10の角部CPにおいて接触する虞が生じる。このため、第3実施形態に係るラダーフレーム2においては、バッテリハウジング10の角部CPに対向する位置においてフランジ狭窄部SPが形成される。
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の電動トラック1は、上記した第2実施形態における電力供給ユニット8の構成及びフランジ狭窄部SPの配置が第2実施形態の構成と異なる。以下、第2実施形態と異なる部分について説明することとし、第2実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0044】
図10は、本発明の第4実施形態に係るラダーフレーム2の下方フランジ2LFと電力供給ユニット8との相対位置を模式的に示す平面図である。第4実施形態の電力供給ユニット8は、上記した第2実施形態と同様にPDU20がバッテリハウジング10の外部からバッテリハウジング10の前面に接続されるように配置されている。ただし、第4実施形態に係るPDU20は、車幅方向Yの長さがバッテリハウジング10よりも短く、上記の第3実施形態における幅よりも長い。
【0045】
この場合、電動トラック1に対する側突によりラダーフレーム2が上記の領域R2において変形したときに、電力供給ユニット8とラダーフレーム2の下方フランジ2LFとがバッテリハウジング10及びPDU20のそれぞれの角部CPにおいて接触する虞が生じる。このため、第4実施形態に係るラダーフレーム2においては、バッテリハウジング10及びPDU20のそれぞれの角部CPに対向する位置においてフランジ狭窄部SPが形成される。
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の電動トラック1は、上記した第1実施形態におけるバッテリハウジング10の形状、及び電力供給ユニット8の支持構造が第1実施形態の構成と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
図11は、ラダーフレーム2と電力供給ユニット8とを接続する弾性支持部ESの構成及び接続形態を示す断面図である。より詳しくは、図11は、電力供給ユニット8及び弾性支持部ESの車両長手方向Xに垂直な断面を車両後方から見た場合の断面図である。
第5実施形態の電力供給ユニット8は、直方体形状のバッテリハウジング10´を有し、左サイドレール2L及び右サイドレール2Rよりもハウジング全体が車幅方向Yに対して内側に配置されている。
【0047】
また、第5実施形態に係る弾性支持部ESは、フレーム側ブラケットES1が左サイドレール2L及び右サイドレール2Rの内側にそれぞれ接続され、バッテリ側ブラケットES3が電力供給ユニット8の側面に接続されている。
これにより、第5実施形態の電力供給ユニット8は、ハウジングが直方体形状に形成されている場合であっても、上記した第1実施形態と同様に、ラダーフレーム2の下方フランジ2LFにフランジ狭窄部SPを設けることにより、バッテリハウジング10´とラダーフレーム2との接触に伴う電力供給ユニット8の損傷を抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 電動トラック
2 ラダーフレーム
2L 左サイドレール
2R 右サイドレール
2W ウェブ
2UF 上方フランジ
2LF 下方フランジ
8 電力供給ユニット
10 バッテリハウジング
20 PDU
30 バッテリ
CP 角部
SP フランジ狭窄部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11