(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/10 20060101AFI20231005BHJP
C07C 69/653 20060101ALI20231005BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
C07C67/10
C07C69/653
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019162334
(22)【出願日】2019-09-05
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】白井 智大
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-030611(JP,B1)
【文献】特開平10-204047(JP,A)
【文献】特開2016-014003(JP,A)
【文献】特開2009-256305(JP,A)
【文献】特開2004-359616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/10
C07C 69/653
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される含フッ素アルキルヨウ化物と(メタ)アクリル酸金属塩とを、
非水溶性有機溶媒及び水の混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させることを特徴とする、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法。
Rf-(CH
2)
n-I (1)
(式(1)中、Rfは、炭素数1~16のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、nは1~4の整数である)
【請求項2】
前記Rfが、水素原子数の10~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基である、請求項1に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法。
【請求項3】
前記相間移動触媒が第四級アンモニウム塩または第四級ホスホニウム塩である、請求項1
または請求項2に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類は、適切なモノマーと共重合させることにより、含フッ素重合体を与え、例えば撥水撥油剤や界面活性剤等の原料として用いられている。
【0003】
従来、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類は、含フッ素アルキルヨウ化物と(メタ)アクリル酸金属塩を、tert-ブタノール等の溶媒中で反応させる方法により製造されていた(例えば、特許文献1、2参照)。しかし、この方法では反応時に150℃以上の高温が必要であり、反応温度が溶媒の沸点を超えるため、反応容器として圧力容器を用いる必要があった。また、系中に水が存在すると目的の反応が阻害されるため、反応に用いる溶媒は脱水処理や水分の混入を防ぐ措置が必要であった。さらに、反応に伴い副生する金属ヨウ化物塩を除去する際、ろ過設備、遠心分離設備、あるいは特殊な蒸発設備が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4649689号公報
【文献】特開2004-359616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、温和な条件下で反応が実施でき、簡便かつ工業的に実施可能な含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の新規な製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で示される含フッ素アルキルヨウ化物と(メタ)アクリル酸金属塩とを、有機溶媒及び水の混合溶媒中、相間移動触媒の存在下で反応させることを特徴とする、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法を提供するものである。
【0008】
Rf-(CH2)n-I (1)
【0009】
(式(1)中、Rfは、炭素数1~16のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、nは1~4の整数である)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、常圧かつ温和な条件下で実施でき、溶媒の脱水処理が不要で簡便に精製が可能であり、工業生産に適した含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造方法が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る含フッ素アルキルヨウ化物が示される一般式(1)において、Rfは直鎖又は分岐の炭素数1~16のフッ素化脂肪族炭化水素基であり、直鎖の炭素数1~16のフッ素化脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0012】
本発明に係る含フッ素アルキルヨウ化物が示される一般式(1)において、nは1~4の整数であり、2~4が好ましく、2がより好ましい。
【0013】
本発明に係る含フッ素アルキルヨウ化物が示される一般式(1)において、Rfは水素原子数の10~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは水素原子数の50~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子数の70~100%がフッ素原子で置換されたフッ素化脂肪族炭化水素基である。
【0014】
本発明に係る含フッ素アルキルヨウ化物が示される一般式(1)において、Rfの具体的構造としては、C2F5-、C4F9-、C6F13-、C8F17-、C10F21-、C12F25-、C2F5-CH=CH-C2F4-、C2F5-CH=CH-C4F8-、C2F5-CH=CH-C6F12-、C4F9-CH=CH-C2F4-、C4F9-CH=CH-C4F8-、C4F9-CH=CH-C6F12-、C6F13-CH=CH-C2F4-、C6F13-CH=CH-C4F8-、C6F13-CH=CH-C6F12-、(CF3)2CF-、(CF3)2CF-(CF2)2-、(CF3)2CF-(CF2)4-などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、(メタ)アクリル酸金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム等の金属塩であってよく、固体の形態で用いてもよく、水中で(メタ)アクリル酸と対応する金属水酸化物とを中和することにより得られる水溶液の形態で用いてもよい。
【0016】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応に用いられる(メタ)アクリル酸金属塩の量は、反応に具する含フッ素アルキルヨウ化物に対して、好ましくは0.8当量~5当量、さらに好ましくは1当量~3当量である。
【0017】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応は有機溶媒及び水の混合溶媒中で実施される。有機溶媒及び水の混合溶媒中で実施することにより、溶媒の脱水処理や水分の混入を防ぐ措置が不要になる点で有効である。
【0018】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応の選択性、精製の簡便化及び溶媒の回収の観点から、有機溶媒は水と分離する非水溶性有機溶媒が好ましい。非水溶性有機溶媒は、反応後に液/液分離により金属ヨウ化物を含む水溶性の副生成物や不純物が容易に除去できる点で有効である。また、簡便に精製できるため、反応に用いた非水溶性有機溶媒を蒸留等で回収し、再利用する際にも有効である。
【0019】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応に適用可能な非水溶性有機溶媒としては、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造に係る反応に不活性なものであれば特に限定はされないが、具体的には例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p-シメン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、アニソール、ジメトキシベンゼン、ジフェニルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。中でも、トルエン、キシレン、テトラリン、アニソール、クロロベンゼンが好ましい。
【0020】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、非水溶性有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応に用いられる相間移動触媒としては、第四級アンモニウム塩または第四級ホスホニウム塩から選ばれる相間移動触媒が好ましく用いられる。
【0022】
第四級アンモニウム塩としては、具体的には例えば、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBACl)、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)などのテトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラプロピルアンモニウム塩、テトラヘキシルアンモニウム塩、テトラオクチルアンモニウム塩、テトラデシルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリエチルアンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、オクチルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩、フェニルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0023】
第四級ホスホニウム塩としては、具体的には例えば、テトラブチルホスホニウムクロリド(TBPCl)、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヨージドなどのテトラブチルホスホニウム塩、テトラメチルホスホニウム塩、テトラエチルホスホニウム塩、テトラプロピルホスホニウム塩、テトラヘキシルホスホニウム塩、テトラデシルホスホニウム塩、テトラオクチルホスホニウム塩、トリエチルオクタデシルホスホニウム塩、トリオクチルエチルホスホニウム塩、ヘキサデシルトリエチルホスホニウム塩、テトラフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0024】
これらの内でも、反応性及び入手性の観点から、テトラブチルアンモニウム塩またはテトラブチルホスホニウム塩が好ましく用いられる。
【0025】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、相間移動触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応に用いられる相間移動触媒の量は、反応に具する含フッ素アルキルヨウ化物に対して、好ましくは0.1モル%~20モル%、さらに好ましくは1モル%~10モル%である。
【0027】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応温度は60℃~100℃の範囲で、好ましくは80℃~100℃の範囲である。常圧下、温和な条件下で反応が進行するため、圧力容器などの特殊な反応設備を用いる必要がない点で有効である。
【0028】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、反応時間は1時間~96時間の範囲で、好ましくは6時間~48時間の範囲である。
【0029】
本発明による含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類の製造において、精製の操作としては、例えば、上記工程における反応の後に、分離した水相を分液することにより、金属ヨウ化物を含む水溶性の副生成物や不純物を簡便に除去することができる。得られた有機相に対して、蒸留、濃縮、再結晶、濾過、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法を用いることにより、目的物を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0031】
なお、分析に当たっては下記機器を使用した。
1H-NMR,19F-NMR:ブルカー製AVANCE II 400
ガスクロマトグラフィー:島津製作所製GC-2014
GC-MS:島津製作所製GCMS-QP2010 Ultra
【0032】
参考例1
1-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン(a2)の合成
【0033】
【0034】
150mLのSUS製オートクレーブに1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,14,14,14-ペンタコサフルオロ-1-ヨード-7-テトラデセン(a1)100.00g(東ソー・ファインケム製、0.130mol)及びジターシャリブチルペルオキシド0.13g(日油製、0.003mol)を仕込み、密閉後内部を窒素置換した。その後115℃に昇温し、エチレン2.00g(エア・ウォーター製、0.142mol)を0.5~1.0MPaの圧力を保ちながら添加した。さらに115℃で1時間反応した後、冷却して化合物(a2)103.50gを白色固体として取得した。収率は99.9%であった。
【0035】
生成物の分析結果を下記に示す。
1H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.48(m,2H,C6F13
CH=CHC6F12),3.17(m,2H,CH
2
I),2.65(m,2H,CH
2
CF2)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.41(t,J=9.8Hz,3F,CF3),-114.39(m,4F,CF
2
CH), -115.50(m,2F,CF
2
CH2),-122.08(m,6F,CF2CF2CF2), -123.33(m,2F,CF2),-123.89(m,6F,CF2CF2CF2),-126.69(m,2F,CF2)
【0036】
実施例1
2-メチルプロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘプタデセニル(化合物(A))の製造
【0037】
【0038】
還流冷却器を備えた100mLの4つ口ナスフラスコに1-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン(a2)15.00g(18.75mmol)、o-キシレン45g(富士フィルム和光純薬製)及びテトラブチルホスホニウムクロリド0.28g(東京化成工業製、0.94mmol)を仕込み、撹拌下95℃に昇温した。その後、メタクリル酸ナトリウム2.23g(富士フィルム和光純薬製、20.60mmol)を8.9gの水に溶かした水溶液を滴下し、95℃で12時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は96%、化合物(A)の選択率は71%であった。得られた結果を表1に示した。
【0039】
撹拌を停止し、分離した水相を除去した。有機層を濃縮し、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルろ過により不純物を溶出させた後、ヘキサン/酢酸エチル=4/1で目的物を溶出させ、減圧濃縮することにより化合物(A)8.50g(11.2mmol)を無色油状物として取得した。収率は59.8%(モル換算、以下同じ)であった。
【0040】
生成物の分析結果を下記に示す。
1H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.49(m,2H,C6F13
CH=CHC6F12),6.14(m,1H,CH),5.60(m,1H,CH),4.45(t,J=6.4Hz,2H,CH
2
O),2.51(m,2H,CH
2
CF2),1.95(m,3H,CH3)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.30(t,J=9.8Hz,3F,CF3),-114.10(m,2F,CF
2
CH2),-114.34(m,4F,CF
2
CH),-122.05(m,6F,CF2CF2CF2), -123.36(m,2F,CF2),-123.86(m,6F,CF2CF2CF2),-126.66(m,2F,CF2)
GC-MS:計算値[C20H11F25O2]+:758、実測値:758
【0041】
実施例2~9
実施例1において、(メタ)アクリル酸金属塩、有機溶媒、相間移動触媒、反応時間を種々変更し、同様の反応を実施した。ガスクロマトグラフィーにより転化率と化合物(A)の選択率を分析し、得られた結果を表1に示した。
【0042】
実施例10
実施例1において、(メタ)アクリル酸金属塩の調製において、メタクリル酸0.12g(富士フィルム和光純薬製、1.4mmol)及び10%水酸化ナトリウム水溶液0.53gを混合し、得られた水溶液を反応に用いた以外、同様に反応を実施した。ガスクロマトグラフィーにより転化率と化合物(A)の選択率を分析し、得られた結果を表1に示した。
【0043】
実施例11
2-メチルプロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(化合物(B))の製造
【0044】
【0045】
還流冷却器を備えた100mLの4つ口ナスフラスコに1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルヨージド(a3)15.00g(Matrix Scientific製、31.65mmol)、o-キシレン45g(富士フィルム和光純薬製)及びテトラブチルホスホニウムクロリド0.47g(東京化成工業製、1.58mmol)を仕込み、撹拌下95℃に昇温した。その後、メタクリル酸ナトリウム3.78g(富士フィルム和光純薬製、34.82mmol)を11.2gの水に溶かした水溶液を滴下し、100℃で12時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は95%、化合物(B)の選択率は82%であった。得られた結果を表1に示した。
【0046】
撹拌を停止し、分離した水相を除去した。有機層を減圧蒸留し、1.0kPaで86~89℃の留分の化合物(B)9.82g(22.7mmol)を無色液体として取得した。収率は71.8%であった。
【0047】
実施例12~14
実施例11において、(メタ)アクリル酸金属塩、有機溶媒、相間移動触媒、反応時間を種々変更し、同様の反応を実施した。ガスクロマトグラフィーにより転化率と化合物(B)の選択率を分析し、得られた結果を表1に示した。
【0048】
実施例15
2-プロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘプタデセニル(化合物(C))の製造
【0049】
【0050】
還流冷却器を備えた10mLの試験管に1-ヨード-3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,11,11,12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,16-ペンタコサフルオロ-9-ヘキサデセン(a2)1.00g(1.25mmol)、o-キシレン3.0g(富士フィルム和光純薬製)及びテトラブチルホスホニウムクロリド17mg(東京化成工業製、0.06mmol)を仕込み、撹拌下95℃に昇温した。別途、6mLサンプル瓶中でアクリル酸0.10g(富士フィルム和光純薬製、1.4mmol)及び10%水酸化ナトリウム水溶液0.53gを混合して得られた水溶液を滴下し、95℃で48時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は95%、化合物(C)の選択率は70%であった。得られた結果を表1に示した。
【0051】
撹拌を停止し、分離した水相を除去した。有機層を濃縮し、ヘキサンを展開溶媒とするシリカゲルろ過により不純物を溶出させた後、ヘキサン/酢酸エチル=4/1で目的物を溶出させ、減圧濃縮することにより化合物(C)0.57g(0.77mmol)を無色油状物として取得した。収率は61%であった。
【0052】
生成物の分析結果を下記に示す。
1H-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:テトラメチルシラン) δ(ppm):6.49(m,2H,C6F13
CH=CHC6F12),6.44(m,1H,CH),6.13(m,1H,CH),5.87(m,1H,CH),4.46(t,J=6.4Hz,2H,CH
2
O),2.49(m,2H,CH
2
CF2)
19F-NMR (溶媒:重クロロホルム、内部標準:トリフルオロメチルベンゼン) δ(ppm):-81.29(t,J=9.8Hz,3F,CF3),-114.02(m,2F,CF
2
CH2),-114.28(m,4F,CF
2
CH),-121.99(m,6F,CF2CF2CF2), -123.30(m,2F,CF2),-123.88(m,6F,CF2CF2CF2),-126.60(m,2F,CF2)
GC-MS:計算値[C19H9F25O2]+:744、実測値:744
【0053】
実施例16
2-プロペン酸3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル(化合物(D))の製造
【0054】
【0055】
100mLの4つ口ナスフラスコに1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチルヨージド(a3)15.00g(Matrix Scientific製、31.65mmol)、o-キシレン45g(富士フィルム和光純薬製)及びテトラブチルホスホニウムクロリド0.47g(東京化成工業製、1.58mmol)を仕込み、撹拌下95℃に昇温した。別途、6mLサンプル瓶中でアクリル酸2.51g(富士フィルム和光純薬製、34.82mmol)及び10%水酸化カリウム水溶液20.00gを混合して得られた水溶液を滴下し、95℃で12時間撹拌した。ガスクロマトグラフィーで分析した結果、転化率は96%、化合物(D)の選択率は77%であった。得られた結果を表1に示した。
【0056】
撹拌を停止し、分離した水相を除去した。有機層を減圧蒸留し、1.0kPaで70~73℃の留分の化合物(D)8.90g(21.3mmol)を無色液体として取得した。収率は67.3%であった。
【0057】
比較例1
従来技術と同様の原料を用いて、82℃の加熱還流条件下で反応を行ったところ、反応が全く進行せず、常圧下で含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類を製造することは不可能であった。
【0058】
得られた結果を表1に示した。
なお、表1における略称は下記の通りである。
PMA:メタクリル酸カリウム
SMA:メタクリル酸ナトリウム
PA:アクリル酸カリウム
SA:アクリル酸ナトリウム
TBACl:テトラブチルアンモニウムクロリド
TBAI:テトラブチルアンモニウムヨージド
TBPCl:テトラブチルホスホニウムクロリド
【0059】
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の製造方法で得られる含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類は、撥水撥油剤等の機能性材料の原料として有用である。