(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】配送システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0834 20230101AFI20231005BHJP
B65G 61/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q10/0834
B65G61/00 540
(21)【出願番号】P 2019168122
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100182420
【氏名又は名称】冨永 宗平
(72)【発明者】
【氏名】木阪 武史
(72)【発明者】
【氏名】大岩根 直樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 宏成
(72)【発明者】
【氏名】杉村 多恵
(72)【発明者】
【氏名】辰本 裕樹
【審査官】庄司 琴美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-117427(JP,A)
【文献】特開2010-039961(JP,A)
【文献】特開2005-056136(JP,A)
【文献】特開2018-185229(JP,A)
【文献】特開平10-253379(JP,A)
【文献】特開2012-108753(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044427(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配送者の運転スキルに関するスキル情報を格納する格納部と、
複数の配送物を配送する配送ルートを算出し、前記配送ルートの配送難度を算出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記スキル情報と前記配送難度とに基づいて、前記配送ルートを配送する配送者を決定
し、
前記配送難度は、前記配送ルートのルート難度と条件難度とに基づいて設定され、
前記条件難度は、時間帯と、天気の分類との組み合わせによりレベル分けされ、
前記スキル情報は、前記配送者が運転する配送車両と障害物との距離が所定値以下となったときに検知するセンサの検知回数により設定される
ことを特徴とする、配送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットショッピングなどの需要拡大により配送物の数が増加しており、物流を担う配送者の不足が問題となっている。そこで、配送の効率化を図ることが種々検討されている。
【0003】
例えば、アプリケーションプログラミングインターフェース(API)を利用する配送管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、物流業界では、配送者の不足を解消すべく、特許文献1に記載されるような配送の効率化だけでなく、配送者数の増加が望まれている。例えば、配送者の勤務時間を固定せず、各日において勤務時間が異なるシフト勤務を採用し、勤務時間が固定される固定勤務では勤務できなかった人材を、配送者として採用することが検討される。
【0006】
しかし、配送者数を増加させると、配送者の運転スキルのばらつきが大きくなる。そのため、比較的運転スキルの低い配送者が、比較的高い運転スキルを要求される配送に割り当てられる場合があり、配送の安全性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、配送者による配送の安全性の向上を図ることができる配送システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、複数の配送者の運転スキルに関するスキル情報を格納する格納部と、複数の配送物を配送する配送ルートを算出し、前記配送ルートの配送難度を算出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記スキル情報と前記配送難度とに基づいて、前記配送ルートを配送する配送者を決定する、配送システムを含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記スキル情報は、前記配送者の配送実績に基づいて設定される、上記[1]に記載の配送システムを含んでいる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配送システムによれば、制御部が、配送者の運転スキルに関するスキル情報と、配送ルートの配送難度とに基づいて、配送ルートを配送する配送者を決定する。つまり、配送者の運転スキルと、配送ルートの配送難度とを考慮して、配送者が配送ルートに割り当てられる。そのため、配送者による配送の安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の配送システムの一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すスキル情報格納領域に格納されるスキル情報を説明するための説明図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す配送条件情報格納領域に格納される条件難度情報を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す制御部により算出される配送難度を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す制御部により、スキル情報格納領域から抽出されるスキル情報を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を用いて、本発明の一実施形態としての配送システム1について説明する。
【0013】
図1に示すように、配送システム1は、配送者を配送ルートに割り当てるためのシステムであって、配送者の運転スキルと配送ルートの難度とに基づいて、配送ルートの配送者を決定する。
【0014】
配送システム1は、制御部2と、格納部の一例としてのデータベース3とを備える。
【0015】
制御部2は、データベース3から情報を抽出可能であり、データベース3に格納される情報に基づいて配送者を決定する。制御部2は、中央処理装置(CPU)、ROMおよびRAMなどを備える。また、制御部2は、好ましくは、通信ネットワーク(例えば、インターネットなど)に接続可能であり、通信ネットワークから天気予報などを取得可能である。
【0016】
データベース3は、有線および/または無線により、制御部2と通信可能に接続されている。データベース3は、スキル情報格納領域4と、配送条件情報格納領域5と、配送地域情報格納領域6とを備える。
【0017】
スキル情報格納領域4は、複数の配送者の運転スキルに関するスキル情報を格納する。
【0018】
配送者は、例えば、シフト勤務しており、希望する日時に勤務する。具体的には、シフト勤務では、1日を複数の時間帯に区分しており、配送者は、希望する時間帯に勤務する。本実施形態では、1日を6つの時間帯、具体的には、早朝(AM6:00~9:00)、朝(AM9:00~12:00)、昼(PM12:00~3:00)、夕(PM3:00~6:00)、夜(PM6:00~9:00)および深夜(PM9:00~AM6:00)に区分している。
【0019】
図2に示すように、スキル情報は、複数の配送者の運転スキル評価を含む。
【0020】
運転スキル評価は、配送者の運転スキルの指標であって、複数にレベル分けされる。本実施形態では、運転スキル評価は、配送者の配送実績(過去の配送回数)に基づいて設定され、配送実績が多いほど高いレベルに設定される。運転スキル評価は、例えば、数値により規定される。
【0021】
本実施形態では、運転スキル評価は、3つのレベル、具体的には、1~3に区分される。このような運転スキル評価において、1~3の順に、レベルが高くなり、過去の配送回数が多くなる。つまり、1が、最も運転スキルが低く、過去の配送回数が少ない。また、3が、最も運転スキルが高く、過去の配送回数が多い。なお、
図2では、便宜上、配送者数が、5人(第1配送者~第5配送者)であるが、配送者数は特に制限されず、また、運転スキル評価のレベル分けの数も、特に制限されない。
【0022】
このようなスキル情報は、配送者の運転スキルの変動(例えば、配送回数の増加)に応じて適宜更新される。
【0023】
配送条件情報格納領域5は、配送条件情報を格納する(
図1参照)。
【0024】
図3に示すように、配送条件情報は、複数の条件難度を含む。条件難度は、環境条件による配送の難しさの指標であって、上記した各時間帯と、天気の分類との組み合わせにより、複数にレベル分けされる。
【0025】
天気の分類として、例えば、晴(空全体に対して雲の占める面積が9割未満)、曇(空全体に対して雲の占める面積が9割以上)、雨(直径0.5mm以上の水滴が降っている状態)、雪(結晶状態の氷滴が降っている状態)などが挙げられる。
【0026】
また、条件難度は、例えば、数値により規定される。
【0027】
本実施形態では、条件難度は、上記した各時間帯(早朝、朝、昼、夕、夜および深夜)と、天気の分類(晴、曇、雨および雪)との組み合わせにより、6つにレベル(1~6)分けされる。このような条件難度のレベルにおいて、1~6の順に配送の難しさが増加し、1が最も配送が容易であり、6が最も配送が難しい。
【0028】
配送地域情報格納領域6は、配送地域情報を格納する(
図1参照)。
【0029】
配送地域情報は、配送に関する地域の情報であって、例えば、地図情報、道路情報(例えば、道幅など)、渋滞多発位置情報、事故多発位置情報などを含む。
【0030】
<配送者の割り当て>
次いで、配送システム1における配送者の配送ルートに対する割り当て処理について説明する。
【0031】
図1に示すように、配送システム1の処理では、まず、制御部2に、複数の配送物の配送先(配送位置情報)と、それら配送物の希望配送時間帯とが入力される。そして、制御部2は、複数の配送物のうち希望配送時間帯が同じ配送物をグループ化して、複数の配送物を希望配送時間帯毎に分類する。
【0032】
本実施形態では、複数の配送物は、朝(AM9:00~12:00)に配送が希望される第1グループと、昼(PM12:00~3:00)に配送が希望される第2グループと、夜(PM6:00~9:00)に配送が希望される第3グループとに分類される。
【0033】
次いで、制御部2は、各グループに含まれる複数の配送先(配送位置情報)に基づいて、グループ毎に複数の配送物を配送する配送ルートを算出する。配送ルートは、複数の配送先を含み、複数の配送先を所定順序で巡回する。
【0034】
そして、制御部2は、各グループの配送ルートについて、配送ルートの走行距離が所定値以下であるか否かを判断する。
【0035】
配送ルートの走行距離が所定値を超過する場合、その配送ルートのすべての配送先を、希望配送時間帯に巡回することが困難であるため、制御部2は、今回の配送ルートの本数よりも配送ルートの本数が多くなるように配送ルートを再計算する。そして、各グループのすべての配送ルートの走行距離が所定値以下となるまで、制御部2は、配送ルートの算出を繰り返す。
【0036】
本実施形態では、制御部2は、第1グループの配送ルートとして2つの配送ルートAおよびBを算出し、第2グループの配送ルートとして1つの配送ルートCを算出し、第3グループの配送ルートとして2つの配送ルートDおよびEを算出する。
【0037】
次いで、制御部2は、配送地域情報格納領域6から配送地域情報を抽出し、
図4に示すように、配送地域情報に基づいて、配送ルートのルート難度を算出する。
【0038】
詳しくは、制御部2は、配送地域情報に基づいて、各配送ルートに配送の難しさを向上させる要因(以下、難度向上要因とする。)が含まれるか否かを判断し、難度向上要因が比較的多い配送ルートのルート難度を比較的高く算出し、難度向上要因が比較的少ない配送ルートのルート難度を比較的低く算出する。
【0039】
例えば、制御部2は、比較的道幅の狭い道路を通過する配送ルートは、比較的道幅の広い道路を通過する配送ルートよりも、多くの難度向上要因を含むと判断し、渋滞多発位置および/または事故多発位置を通過する配送ルートは、それら位置を通過しない配送ルートよりも、多くの難度向上要因を含むと判断する。
【0040】
本実施形態では、配送ルートAのルート難度が2であり、配送ルートBのルート難度が5であり、配送ルートCのルート難度が1であり、配送ルートDのルート難度が4であり、配送ルートEのルート難度が6である。
【0041】
また、制御部2は、各グループに対応する希望配送時間帯における天気予報を取得する。制御部2は、例えば、インターネットなどの通信ネットワークから天気予報を取得してもよく、ユーザの操作により天気予報が入力されてもよい。
【0042】
そして、制御部2は、配送条件情報格納領域5から配送条件情報を抽出し、所定時間帯と、所定時間帯における天気予報との組み合わせから、条件難度を決定する(
図3参照)。例えば、朝における天気予報が晴である場合、第1グループの条件難度は1である。また、昼における天気予報が雨である場合、第2グループの条件難度は3である。また、夜における天気予報が雪である場合、第3グループの条件難度は3である。
【0043】
次いで、制御部2は、各配送ルートの配送難度を、各配送ルートのルート難度および各グループの条件難度に基づいて算出する。配送難度は、配送の難しさの指標である。例えば、ルート難度および条件難度のそれぞれが数値により規定される場合、配送難度は、ルート難度および条件難度の和として算出される。配送難度の数値が増加するにつれて、配送の難しさが上昇する。
【0044】
本実施形態では、第1グループにおける配送ルートAの配送難度は3であり、第1グループにおける配送ルートBの配送難度は6であり、第2グループにおける配送ルートCの配送難度は4であり、第3グループにおける配送ルートDの配送難度は9であり、第3グループにおける配送ルートEの配送難度は11である。
【0045】
次いで、制御部2は、配送者の勤務スケジュールに基づいて、各グループの希望配送時間帯に勤務する配送者の運転スキル評価を、スキル情報格納領域4から抽出する(
図2参照)。なお、配送者の勤務スケジュールは、事前にデータベース3に格納されていてもよく、配送システム1の処理時において制御部2に入力されてもよい。
【0046】
本実施形態では、
図5に示すように、朝(第1グループ)に第1配送者(運転スキル評価1)および第3配送者(運転スキル評価2)が勤務し、昼(第2グループ)に第1配送者(運転スキル評価1)および第2配送者(運転スキル評価3)が勤務し、夜(第3グループ)に第4配送者(運転スキル評価2)および第5配送者(運転スキル評価3)が勤務する。
【0047】
次いで、制御部2は、運転スキル評価と配送難度とに基づいて、各配送ルートを配送する配送者を決定する。
【0048】
詳しくは、制御部2は、各時間帯において勤務する配送者を、運転スキル評価の高い順から優先して、各時間帯における配送ルートの配送難度が高い順に割り当てる。
【0049】
つまり、制御部2は、まず、各時間帯において最も運転スキル評価の高い配送者を、各時間帯において最も配送難度が高い配送ルートに割り当てる。その後、制御部2は、割り当てた配送者および配送ルートを除いて、残りの配送者のうち最も運転スキル評価の高い配送者を、残りの配送ルートのうち最も配送難度の高い配送ルートに割り当てる。そして、制御部2は、配送ルートがなくなるまで、配送者の配送ルートに対する割り当てを繰り返す。
【0050】
例えば、
図4および
図5に示すように、制御部2は、第1グループに関する朝において、運転スキル評価が最も高い2である第3配送者を、配送難度が最も高い6である配送ルートBに割り当て、運転スキル評価が1である第1配送者を、配送難度が3である配送ルートAに割り当てる。
【0051】
また、制御部2は、第2グループに関する昼において、運転スキル評価が最も高い3である第2配送者を、優先して配送ルートCに割り当て、運転スキル評価が1である第1配送者を、配送ルートに割り当てない。
【0052】
また、制御部2は、第3グループに関する夜において、運転スキル評価が最も高い3である第5配送者を、配送難度が最も高い11である配送ルートEに割り当て、運転スキル評価が2である第4配送者を、配送難度が9である配送ルートDに割り当てる。
【0053】
<作用効果>
配送システム1では、制御部2が、配送者の運転スキルに関するスキル情報と、配送ルートの配送難度とに基づいて、配送ルートを配送する配送者を決定する。つまり、配送者の運転スキルと、配送ルートの配送難度とを考慮して、配送者が配送ルートに割り当てられる。そのため、配送者による配送の安全性の向上を図ることができる。
【0054】
<変形例>
上記した実施形態では、配送者の運転スキル評価が配送実績に基づいて設定されるが、運転スキル評価は、これに限定されない。例えば、運転スキル評価は、各配送者の運転スキルを評価するための試験により設定されてもよい。また、運転スキル評価は、各配送者が運転する配送車両に、障害物と配送車両との距離が所定値以下となったときに検知するセンサを設け、センサの検知回数により設定されてもよい。
【0055】
また、上記した実施形態では、配送難度が、条件難度およびルート難度の和として算出されたが、配送難度は、これに限定されない。例えば、配送難度は、条件難度およびルート難度の積として算出することもできる。
【0056】
なお、配送システム1は、制御部2とデータベース3とを別々に備えてもよく、制御部2とデータベース3とを一体に備えるコンピュータとして構成されてもよい。
【0057】
これら変形例によっても、上記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 配送システム
2 制御部
3 データベース