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特許7360868積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20231005BHJP
   B21D 28/02 20060101ALI20231005BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02K15/02 E
H02K15/02 F
B21D28/02 C
H01F41/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019172781
(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公開番号】P2021052465
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【弁理士】
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】丸山 尊嗣
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-033711(JP,A)
【文献】特開2016-171652(JP,A)
【文献】特開2019-054727(JP,A)
【文献】特開2011-233577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
B21D 28/02
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の一方向に間欠的に順次送り出される帯状の金属板の一の表面のうち打抜部材となる所定領域の第1の箇所に接着剤を供給するように構成された第1の供給ユニットであって、前記第1の箇所は前記所定領域に含まれる仮想円の一部である、第1の供給ユニットと、
前記第1の供給ユニットよりも前記金属板の搬送方向の下流側に、前記第1の供給ユニットと隣り合って配置されており、前記一の表面における前記所定領域のうち前記第1の箇所とは異なる第2の箇所に接着剤を供給するように構成された第2の供給ユニットであって、前記第2の箇所は前記仮想円の残部である、第2の供給ユニットと、
前記第1の供給ユニット及び前記第2の供給ユニットによって接着剤が供給された後の前記金属板を前記所定領域において打ち抜いて、前記第1の箇所及び前記第2の箇所に接着剤が付与された前記打抜部材を形成するように構成された打抜ユニットとを備え
前記第1の供給ユニットは、前記仮想円の円周上に沿うように、前記仮想円の一部である前記第1の箇所に接着剤を供給するように構成されており、
前記第2の供給ユニットは、前記仮想円の円周上に沿うように、前記仮想円の残部である前記第2の箇所に接着剤を供給するように構成されている、積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記金属板のうち他の打抜部材となる他の所定領域であって、前記金属板の幅方向において前記所定領域と並ぶように位置する前記他の所定領域の少なくとも一部に接着剤を供給するように構成された第3の供給ユニットと、
前記第3の供給ユニットによって接着剤が供給された後の前記金属板を前記他の所定領域において打ち抜いて、前記少なくとも一部に接着剤が付与された前記他の打抜部材を形成するように構成された他の打抜ユニットとをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第3の供給ユニットは、前記他の所定領域に対して全体として円形状スポット状の複数の接着剤を供給するように構成されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の供給ユニットによる前記金属板への接着剤の供給動作と、前記第2の供給ユニットによる前記金属板への接着剤の供給動作とを独立して制御するように構成された制御部をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の供給ユニットと、前記第2の供給ユニットとは、前記金属板へ同一成分の接着剤を供給するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載された装置。
【請求項6】
前記第1の供給ユニット、前記第2の供給ユニット及び前記打抜ユニットは、同一の基台に搭載されているか、又は、それぞれ別体で構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載された装置。
【請求項7】
所定の一方向に間欠的に順次送り出される帯状の金属板の一の表面のうち打抜部材となる所定領域の第1の箇所に接着剤を供給することであって、前記第1の箇所は前記所定領域に含まれる仮想円の一部であることと、
前記第1の箇所に接着剤を供給することの後に、前記一の表面における前記所定領域のうち前記第1の箇所とは異なる第2の箇所に接着剤を供給することであって、前記第2の箇所は前記仮想円の残部であることと、
前記第2の箇所に接着剤を供給することの後に、前記金属板を前記所定領域において打ち抜いて、前記第1の箇所及び前記第2の箇所に接着剤が付与された前記打抜部材を形成することとを含み、
前記第1の箇所に接着剤を供給することは、前記仮想円の円周上に沿うように、前記仮想円の一部である前記第1の箇所に接着剤を供給することを含み、
前記第2の箇所に接着剤を供給することは、前記仮想円の円周上に沿うように、前記仮想円の残部である前記第2の箇所に接着剤を供給することを含む、積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
前記金属板のうち他の打抜部材となる他の所定領域であって、前記金属板の幅方向において前記所定領域と並ぶように位置する前記他の所定領域の少なくとも一部に接着剤を供給することと、
前記少なくとも一部に接着剤を供給することの後に、前記金属板を前記他の所定領域において打ち抜いて、前記少なくとも一部に接着剤が付与された前記他の打抜部材を形成することとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも一部に接着剤を供給することは、前記他の所定領域に対して全体として円形状スポット状の複数の接着剤を供給することを含む、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、帯状の金属板を間欠的に送り出すことと、当該金属板の片面に供給ヘッドから接着剤を塗布することと、当該金属板をパンチで所定形状に打ち抜いて、接着剤が付着した一の打抜部材を形成することと、当該一の打抜部材を、既に打ち抜かれた他の打抜部材に対して接着剤で接着させながら積層することとを含む、積層鉄心の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-124828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、金属板の片面に接着剤を塗布することは、打抜部材となる所定領域の複数箇所に対して、接着剤をスポット状に略同時に付与することを含む。そのため、供給ヘッドには、打抜部材となる所定領域の全体をカバーするように、当該複数箇所にそれぞれ対応する複数のノズルが設けられている。
【0005】
この場合、接着剤が複数のノズルに至るまでの流路が供給ヘッド内において複雑化し、流路に接着剤の詰まりが発生しやすい傾向にある。したがって、メンテナンス作業に手間と時間を要し、積層鉄心の製造コストが増加する懸念がある。また、複数のノズルに至るまでの各流路の経路差が大きくなり、複数のノズルのそれぞれから吐出される接着剤の量がばらつく傾向にある。そのため、積層鉄心の平面度、平行度及び直角度に影響が生ずる懸念がある。
【0006】
そこで、本開示は、積層鉄心の製造コストを削減し且つ高精度の積層鉄心を製造することが可能な積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
積層鉄心の製造装置の一例は、所定の一方向に間欠的に順次送り出される帯状の金属板のうち打抜部材となる所定領域の第1の箇所に接着剤を供給するように構成された第1の供給ユニットと、第1の供給ユニットよりも金属板の搬送方向の下流側に配置されており、所定領域のうち第1の箇所とは異なる第2の箇所に接着剤を供給するように構成された第2の供給ユニットとを備えていてもよい。積層鉄心の製造装置の一例は、第1の供給ユニット及び第2の供給ユニットによって接着剤が供給された後の金属板を所定領域において打ち抜いて、第1の箇所及び第2の箇所に接着剤が付与された打抜部材を形成するように構成された打抜ユニットをさらに備えていてもよい。
【0008】
積層鉄心の製造方法の一例は、所定の一方向に間欠的に順次送り出される帯状の金属板のうち打抜部材となる所定領域の第1の箇所に接着剤を供給することと、第1の箇所に接着剤を供給することの後に、所定領域のうち第1の箇所とは異なる第2の箇所に接着剤を供給することを含んでいてもよい。積層鉄心の製造方法の一例は、第2の箇所に接着剤を供給することの後に、金属板を所定領域において打ち抜いて、第1の箇所及び第2の箇所に接着剤が付与された打抜部材を形成することをさらに含んでいてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る積層鉄心の製造装置及び積層鉄心の製造方法によれば、積層鉄心の製造コストを削減し且つ高精度の積層鉄心を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、固定子積層鉄心の一例を示す斜視図である。
図2図2は、積層鉄心の製造装置の一例を示す概略図である。
図3図3は、プレス加工装置の一例を示す概略断面図である。
図4図4は、プレス加工装置に含まれる加工ユニット(打抜ユニット及び接着ユニット)の一例を示す上面図である。
図5図5は、固定子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの一例を示す図である。
図6図6は、固定子積層鉄心の打抜加工のレイアウトの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
[固定子積層鉄心の構成]
まず、図1を参照して、固定子積層鉄心1(積層鉄心)の構成について説明する。固定子積層鉄心1は、固定子(ステータ)の一部である。固定子は、固定子積層鉄心1に巻線が取り付けられることにより構成される。固定子と回転子(ロータ)とが組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。
【0013】
固定子積層鉄心1は、円筒形状を呈している。固定子積層鉄心1の中央部分には、中心軸Axに沿って延びるように固定子積層鉄心1を貫通する貫通孔1aが設けられている。貫通孔1aは、固定子積層鉄心1の高さ方向(上下方向)に延びている。貫通孔1a内には、回転子が配置可能である。
【0014】
固定子積層鉄心1は、ヨーク部2と、複数のティース部3とを含む。ヨーク部2は、円環状を呈しており、中心軸Axを囲むように延びている。複数のティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向かうようにヨーク部2の径方向に沿って延びている。複数のティース部3は、ヨーク部2の内縁から中心軸Ax側に向けて突出している。複数のティース部3は、ヨーク部2の周方向において、略等間隔で並んでいてもよい。隣り合うティース部3の間には、巻線(図示せず)を配置するための空間であるスロット4が画定されている。
【0015】
固定子積層鉄心1は、複数の打抜部材Wが積み重ねられた積層体である。打抜部材Wは、後述する金属板MS(例えば、電磁鋼板)が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、固定子積層鉄心1に対応する形状を呈している。打抜部材Wの中央部分には、貫通孔W1aが設けられている。打抜部材Wは、ヨーク部2に対応するヨーク部W2と、各ティース部3に対応する複数のティース部W3とを有している。隣り合うティース部W3の間には、スロット4に対応するスロットW4が画定されている。
【0016】
固定子積層鉄心1は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に打抜部材Wの板厚偏差を相殺して、固定子積層鉄心1の平面度、平行度及び直角度を高めることを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定されていてもよい。
【0017】
高さ方向(中心軸Axの延在方向)において隣り合う打抜部材W同士は、接着剤ADによって接着されている。接着剤ADは、例えば、ヨーク部W2の表面に配置されたスポット状の複数の接着剤AD1を含んでいてもよい。複数の接着剤AD1は、ヨーク部W2の周方向に沿って略等間隔に並んでいてもよい。接着剤ADは、例えば、各ティース部W3の表面にそれぞれ配置されたスポット状の複数の接着剤AD2を含んでいてもよい。一のティース部W3において、二つ以上の接着剤AD2が当該一のティース部W3の長手方向(打抜部材Wの径方向)に沿って並んでいてもよい。接着剤AD1の面積は、接着剤AD2の面積よりも大きく設定されていてもよいし、接着剤AD2の面積と同等に設定されていてもよいし、接着剤AD2の面積よりも小さく設定されていてもよい。
【0018】
[固定子積層鉄心の製造装置]
続いて、図2を参照して、積層鉄心の製造装置100について説明する。製造装置100は、帯状の金属板MSから積層体10を製造するように構成されている。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120と、プレス加工装置130と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0019】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0020】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置130は、例えば、送出装置120によって送り出される金属板MSを複数のパンチにより順次打ち抜き加工して、複数の打抜部材Wを形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130は、打ち抜き加工の過程で、金属板MSに接着剤を塗布するように構成されていてもよい。プレス加工装置130は、打ち抜き加工によって得られた複数の打抜部材Wを順次積層して積層体10を形成するように構成されていてもよい。プレス加工装置130の詳細については、後述する。
【0021】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及びプレス加工装置130を動作させるための指示信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置120及びプレス加工装置130に当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0022】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、図3及び図4を参照して、プレス加工装置130の詳細について説明する。プレス加工装置130は、図3に示されるように、下型140と、上型150と、プレス機160とを含む。下型140は、ベース141と、ダイホルダ142(基台)と、ダイ部材D1~D3と、供給ユニットU1,U2と、複数のガイドポスト143と、搬送機構144とを含む。
【0023】
ベース141は、例えば床面上に固定されており、プレス加工装置130全体の土台として機能する。ダイホルダ142は、ベース141上に支持されている。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1~C3が形成されている。複数の排出孔C1~C3は、ダイホルダ142の内部を上下方向(図3の矢印Z参照)に延びていてもよい。複数の排出孔C1~C3には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材W、廃材等)が排出される。
【0024】
ダイ部材D1~D3及び供給ユニットU1,U2は、ダイホルダ142の上部に取り付けられている。ダイ部材D1、ダイ部材D2、供給ユニットU1(第1の供給ユニット)、供給ユニットU2(第2の供給ユニット)及びダイ部材D3(打抜ユニット)は、金属板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。
【0025】
ダイ部材D1は、ダイプレートD11と、ダイD12とを含む。ダイプレートD11は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD12を保持するように構成されている。ダイD12は、後述するパンチP1と共に、金属板MSを打抜加工するための第1の打抜ユニットを構成している。図3に例示されるように、ダイD12には、上下方向に貫通する複数のダイ孔D13が形成されている。
【0026】
複数のダイ孔D13は、複数のスロットW4にそれぞれ対応する形状を呈していてもよい。複数のダイ孔D13の数は、積層体10に形成される複数のスロットW4の数と同数であってもよい。複数のダイ孔D13は、全体として円形状をなすように、所定の仮想円の円周上において略等間隔で並んでいてもよい。
【0027】
複数のダイ孔D13は、排出孔C1と連通している。複数のダイ孔D13内にパンチP1が挿抜されることにより、第1の打抜ユニットによって、複数のダイ孔D13の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0028】
図3及び図4に示されるように、ダイ部材D2は、ダイプレートD21と、ダイD22とを含む。ダイプレートD21は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD22を保持するように構成されている。ダイD22は、後述するパンチP2と共に、金属板MSを打抜加工するための第2の打抜ユニットを構成している。ダイD22には、上下方向に貫通するダイ孔D23が形成されている。
【0029】
ダイ孔D23は、貫通孔W1aに対応する形状を呈していてもよい。図3に戻って、ダイ孔D23は、排出孔C2と連通している。ダイ孔D23内にパンチP2が挿抜されることにより、第2の打抜ユニットによって、ダイ孔D23の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0030】
供給ユニットU1,U2はそれぞれ、金属板MSに対して接着剤ADを供給するように構成されている。供給ユニットU1は、供給プレートU11と、液源U12と、送液機構U13と、駆動機構U14とを含む。
【0031】
供給プレートU11は、例えば、矩形状を呈する板状体である。供給プレートU11の内部には、図3及び図4に示されるように、接着剤ADが流通可能に構成された流路U11aと、複数の吐出口U11bとが形成されている。流路U11aは、複数の吐出口U11bのそれぞれに至るように、分岐して延びている。
【0032】
複数の吐出口U11bは、上方から見て、供給プレートU11の中心部から放射状に並んでいる。図4に示される例では、径方向に並ぶ3つの吐出口U11bによって一つの第1の吐出口ユニットが構成されていると共に、複数の第1の吐出口ユニットが、全体として円弧状(優弧状)をなすように、所定の仮想円の円周上において略等間隔で並んでいる。換言すれば、図4に示される例では、複数の吐出口U11bが全体として、上流側(ダイ部材D2側)に向けて開放されたC字形状を呈している。
【0033】
図4の例において、径方向に並ぶ3つの吐出口U11bのうち径方向外方に位置する一つの吐出口U11bは、金属板MSのうち打抜部材Wが形成される所定領域のヨーク部W2と対応するように位置している。図4の例において、径方向に並ぶ3つの吐出口U11bのうち径方向内方に位置する2つの吐出口U11bは、金属板MSのうち打抜部材Wが形成される所定領域のティース部W3と対応するように位置している。当該一つの吐出口U11bの開口面積は、当該2つの吐出口U11bの開口面積よりも大きく設定されていてもよい。
【0034】
液源U12は、接着剤ADを貯留する容器である。接着剤ADとしては、例えば、アクリル系又はエポキシ系の接着剤が用いられてもよい。接着剤ADは、1液型の接着剤であってもよいし、2液混合型の接着剤であってもよい。液源U12は、配管U15によって、流路U11aに接続されている。
【0035】
送液機構U13は、配管U15の中途に配置されている。送液機構U13は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、液源U12の接着剤ADを流路U11aに送液するように構成されている。送液機構U13は、例えば、ポンプであってもよい。
【0036】
駆動機構U14は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、供給プレートU11を上下動させるように構成されている。駆動機構U14は、例えば、供給プレートU11の上面(表面)がダイプレートD11,D21,D31の上面(表面)と略一致する上昇位置と、供給プレートU11の上面(表面)がダイプレートD11,D21,D31の上面(表面)よりも下方に位置する降下位置との間で、供給プレートU11を移動させるように構成されていてもよい。駆動機構U14は、ダイホルダ142内ではなく、下型140の外側に配置されていてもよい。
【0037】
供給ユニットU2は、供給ユニットU1と同様に、供給プレートU21と、液源U22と、送液機構U23と、駆動機構U24とを含む。供給ユニットU2は、主として、供給プレートU21に形成されている複数の吐出口U21bの配置の点で、供給ユニットU1と相違している。
【0038】
複数の吐出口U21bは、上方から見て、供給プレートU21の中心部から放射状に並んでいる。図4に示される例では、径方向に並ぶ3つの吐出口U21bによって一つの第2の吐出口ユニットが構成されていると共に、複数の第2の吐出口ユニットが、全体として円弧状(劣弧状)をなすように、所定の仮想円の円周上において略等間隔で並んでいる。換言すれば、図4に示される例では、複数の吐出口U21bが全体として、下流側(ダイ部材D3側)に向けて開放されたC字形状を呈している。
【0039】
図4の例において、径方向に並ぶ3つの吐出口U21bのうち径方向外方に位置する一つの吐出口U21bは、金属板MSのうち打抜部材Wが形成される所定領域のヨーク部W2と対応するように位置している。図4の例において、径方向に並ぶ3つの吐出口U21bのうち径方向内方に位置する2つの吐出口U21bは、金属板MSのうち打抜部材Wが形成される所定領域のティース部W3と対応するように位置している。当該一つの吐出口U21bの開口面積は、当該2つの吐出口U21bの開口面積よりも大きく設定されていてもよい。
【0040】
図3及び図4に示されるように、ダイ部材D3は、ダイプレートD31と、ダイD32と、駆動機構D34とを含む。ダイプレートD31は、中央部に設けられた貫通孔内にダイD32を保持するように構成されている。ダイD32は、ダイプレートD31に対して、鉛直方向に沿って延びる中心軸周りに回転可能となるように保持されていてもよい。ダイプレートD31とダイD32との間にダイD32を保持する回転ホルダが介在しており、回転ホルダがダイプレートD31に対して回転可能に保持されていてもよい。
【0041】
ダイD32は、後述するパンチP3(打抜ユニット)と共に、金属板MSを打抜加工するための第3の打抜ユニットを構成している。ダイD32には、上下方向に貫通するダイ孔D33が形成されている。ダイ孔D33は、打抜部材Wの外形に対応する形状を呈していてもよい。ダイ孔D33は、例えば、全体として円形状を呈していてもよい。
【0042】
図3に戻って、ダイ孔D33は、排出孔C3と連通している。ダイ孔D33内にパンチP3が挿抜されることにより、第3の打抜ユニットによって、ダイ孔D33の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対して、接着剤ADにより相互に接着されつつ積層される。所定枚数の打抜部材Wがダイ孔D33内において積層されると、得られた固定子積層鉄心1が排出孔C3を通じて搬送機構144に載置される。
【0043】
駆動機構D34は、ダイD32又は図示しない回転ホルダに接続されている。駆動機構D34は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、ダイD32の中心軸周りにダイD32を回転させる。そのため、金属板MSから打ち抜かれた打抜部材Wが、先行して打ち抜かれた打抜部材W上に積み重ねられた後に、ダイD32が所定角度回転することで、後続の打抜部材Wが先行する打抜部材Wに対して転積される。駆動機構D34は、例えば、回転モータ、歯車、タイミングベルト等の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0044】
複数のガイドポスト143は、図3に示されるように、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト143は、ガイドブッシュ151a(後述する)と共に、上型150を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト143は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0045】
搬送機構144は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、ダイD32から落下した固定子積層鉄心1を後続の装置(例えば、溶接装置など)に送り出すように構成されている。搬送機構144は、例えばベルトコンベアであってもよい。
【0046】
上型150は、パンチホルダ151と、ストリッパ152と、複数のパンチP1~P3とを含む。パンチホルダ151は、ダイホルダ142と対向するようにダイホルダ142の上方に配置されている。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1~P3を保持するように構成されている。
【0047】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられている。複数のガイドブッシュ151aはそれぞれ、複数のガイドポスト143に対応するように位置している。ガイドブッシュ151aは円筒状を呈しており、ガイドポスト143がガイドブッシュ151aの内部空間を挿通可能である。なお、ガイドポスト143が上型150に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ151aが下型140に設けられていてもよい。
【0048】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが設けられている。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも小さく設定されている。
【0049】
ストリッパ152は、パンチP1~P3で金属板MSを打ち抜く際にパンチP1~P3に食いついた金属板MSをパンチP1~P3から取り除くように構成されている。ストリッパ152は、ダイ部材D1~D3とパンチホルダ151との間に配置されている。
【0050】
ストリッパ152は、接続部材152aを介してパンチホルダ151と接続されている。接続部材152aは、長尺状の本体部と、本体部の上端に設けられた頭部とを含む。接続部材152aの本体部は、貫通孔151bの下部に挿通されており、貫通孔151b内を上下動可能である。接続部材152aの本体部の下端は、ストリッパ152に固定されている。接続部材152aの本体部の周囲には、パンチホルダ151とストリッパ152とを離間させる方向の付勢力をこれらに作用させるように構成された付勢部材152b(例えば、圧縮コイルばねなど)が取り付けられていてもよい。
【0051】
接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部に配置されている。接続部材152aの頭部の外形は、上方から見たときに、接続部材152aの本体部の外形よりも大きく設定されている。そのため、接続部材152aの頭部は、貫通孔151bの上部を上下動可能であるが、貫通孔151bの段差がストッパとして機能して、貫通孔151bの下部に移動できないようになっている。そのため、ストリッパ152は、パンチホルダ151に対して相対的に上下移動可能となるように、パンチホルダ151に吊り下げ保持されている。
【0052】
ストリッパ152には、パンチP1~P3に対応する位置に貫通孔がそれぞれ設けられている。各貫通孔はそれぞれ、上下方向に延びている。各貫通孔はそれぞれ、上方から見たときに、対応するダイ孔D13,D23,D33と連通する。各貫通孔内にはそれぞれ、パンチP1~P3の下部が挿通されている。パンチP1~P3の当該下部はそれぞれ、各貫通孔内においてスライド可能である。
【0053】
パンチP1~P3は、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチP1の下端部は、ダイ孔D13に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、矩形状断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP1の数は、ダイ孔D13の数と同数であってもよい。複数のパンチP1は、全体として円形状をなすように、所定の仮想円の円周上において略等間隔で並んでいてもよい。
【0054】
パンチP2の下端部は、ダイ孔D23に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、円形状断面を呈する柱状体であってもよい。パンチP2の数は、ダイ孔D23の数と同数であってもよい。
【0055】
パンチP3の下端部は、ダイ孔D33に対応する形状を呈している。当該下端部は、例えば、円形状断面を呈する柱状体であってもよい。
【0056】
プレス機160は、上型150の上方に位置している。プレス機160のピストンは、パンチホルダ151に接続されており、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作する。プレス機160が動作すると、そのピストンが伸縮して、上型150が全体的に上下動する。
【0057】
[積層体の製造方法]
続いて、図3図5を参照して、固定子積層鉄心1の製造方法について説明する。
【0058】
金属板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D1に到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が金属板MSに到達して、ストリッパ152とダイ部材D1とで金属板MSが挟持された後も、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。
【0059】
このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1~P3は引き続き降下する。そのため、パンチP1~P3の先端部はそれぞれ、ストリッパ152の各貫通孔内を下方に移動し、さらにダイ孔D13,D23,D33に到達する。この過程で、パンチP1が金属板MSをダイ孔D13に沿って打ち抜く。これにより、スロット4に対応するスロットW4が金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、プレス機160が動作して、上型150を上昇させる。
【0060】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位がダイ部材D2に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP2による金属板MSの半抜き加工又は打抜加工が行われる。これにより、貫通孔1aに対応する貫通孔W1aが金属板MSに形成される。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0061】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図5の加工部位A1を参照)が供給ユニットU1に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動する。
【0062】
ここで、コントローラCtrの駆動機構U14への指示に基づいて、供給プレートU11が上昇位置に位置している場合について説明する。このとき、プレス機160によって上型150が降下すると、金属板MSの加工部位A1は、供給プレートU11及びストリッパ152によって挟持される。
【0063】
続いて、コントローラCtrが送液機構U13に指示して、接着剤ADを複数の吐出口U11bに向けて押し出すことにより、複数の吐出口U11bから吐出された接着剤ADが金属板MSに供給される。これにより、図5に示されるように、金属板MSのうち打抜部材Wとなる所定領域Rの第1の箇所R1に、接着剤ADが塗布される(図5の薄灰色部分を参照)。
【0064】
なお、図5の例において、所定領域Rは、打抜部材Wの外周縁に対応する仮想線と、複数のティース部W3及び複数のスロットW4で画定される打抜部材Wの内周縁とで囲まれる領域である。また、第1の箇所R1は、所定領域Rの一部であって、複数の吐出口U11bに対応する部分である。そのため、図5の例において、第1の箇所R1は、全体として、金属板MSの上流側に向けて開放されたC字形状(優弧状)を呈している。
【0065】
一方、供給プレートU11が降下位置に位置している場合について説明する。このとき、プレス機160によって上型150が降下すると、金属板MSの加工部位A1の表面はストリッパ152と当接するが、金属板MSの加工部位A1の裏面は供給プレートU11とは当接しない。そのため、上型150の上下動に際して、金属板MSが複数の吐出口U11bから離間した状態が保たれるので、金属板MSには接着剤ADが塗布されない。
【0066】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図5の加工部位A2を参照)が供給ユニットU2に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動する。
【0067】
ここで、供給ユニットU1において接着剤ADが塗布された状態で加工部位A2が供給ユニットU2に到達する場合、コントローラCtrは駆動機構U24に指示して、供給プレートU21を上昇位置に位置させてもよい。このとき、プレス機160によって上型150が降下すると、金属板MSの加工部位A2は、供給プレートU21及びストリッパ152によって挟持される。
【0068】
続いて、コントローラCtrが送液機構U23に指示して、接着剤ADを複数の吐出口U21bに向けて押し出すことにより、複数の吐出口U21bから吐出された接着剤ADが金属板MSに供給される。これにより、図5に示されるように、所定領域Rの第2の箇所R2に、接着剤ADが塗布される(図5の濃灰色部分を参照)。このとき、供給ユニットU1において塗布された接着剤ADと合わせて、加工部位A2は、所定領域Rに対して全体的に接着剤ADが塗布された状態となる(図5の加工部位A2を参照)。
【0069】
なお、第2の箇所R2は、所定領域Rのうち第1の箇所R1とは異なる部分であって、複数の吐出口U21bに対応する部分である。そのため、図5の例において、第2の箇所R2は、全体として、金属板MSの下流側に向けて開放されたC字形状(劣弧状)を呈している。
【0070】
一方、供給ユニットU1において接着剤ADが塗布されなかった状態で加工部位A2が供給ユニットU2に到達する場合、コントローラCtrは駆動機構U24に指示して、供給プレートU21を降下位置に位置させてもよい。このとき、プレス機160によって上型150が降下すると、金属板MSの加工部位A2の表面はストリッパ152と当接するが、金属板MSの加工部位A2の裏面は供給プレートU21とは当接しない。そのため、上型150の上下動に際して、金属板MSが複数の吐出口U21bから離間した状態が保たれるので、金属板MSには接着剤ADが塗布されない。このとき、加工部位A2は、所定領域Rに接着剤ADが一切塗布されていない状態となる。
【0071】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位(図5の加工部位A3を参照)がダイ部材D3に到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、パンチP3による金属板MSの打抜加工(外径抜き加工)が行われる。これにより、下面に接着剤ADが塗布された打抜部材W、又は、接着剤ADが一切塗布されていない打抜部材Wが形成される。後者の打抜部材Wは、固定子積層鉄心1の最下層を構成し、前者の打抜部材Wは、固定子積層鉄心1の最下層以外を構成してもよい。
【0072】
打ち抜かれた打抜部材Wは、先行して打ち抜かれた打抜部材Wに対してダイ孔D33内において積層されつつ、接着剤ADによって接合される。このとき、打抜部材Wの転積を行うために、パンチP3による金属板MSの打抜加工が行われる前に、コントローラCtrが駆動機構D34に指示して、ダイ孔D33内の打抜部材Wと共にダイD32を所定角度回転させてもよい。ダイ孔D33内において、所定枚数の打抜部材Wが積層されると、固定子積層鉄心1が完成する。
【0073】
[作用]
以上の例によれば、供給ユニットU1,U2は、打抜部材Wとなる所定領域Rの異なる箇所(第1の箇所R1及び第2の箇所R2)に対してそれぞれ接着剤ADを供給する。そのため、打抜部材Wの所定領域Rとなる全体をカバーするように接着剤ADが供給される場合と比較して、個々の供給ユニットU1,U2の小型化や、接着剤ADの流路U11a,U21aの簡略化が図られる。そのため、接着剤ADの詰まりが生じ難くなり、メンテナンス作業の頻度が小さくなる。したがって、固定子積層鉄心1の製造コストを削減することが可能となる。
【0074】
また、個々の供給ユニットU1,U2の小型化や、接着剤ADの流路U11a,U21aの簡略化に伴い、複数の吐出口U11b,U21bに至るまでの各流路U11a,U21aの経路差が小さくなる。そのため、複数の吐出口U11b,U21bからの接着剤ADの吐出量にばらつきが生じ難くなる。したがって、固定子積層鉄心1の平面度、平行度及び直角度が向上するので、高精度の固定子積層鉄心1を製造することが可能となる。
【0075】
さらに、個々の供給ユニットU1,U2の小型化に伴い、これらの供給ユニットU1,U2が製造装置100の他のユニット(例えば、打抜部材Wの転積のための駆動機構D34)などと干渉し難くなる。そのため、製造装置100全体としての小型化を図ることが可能となると共に、供給ユニットU1,U2のレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0076】
以上の例によれば、コントローラCtrが送液機構U13,U23及び駆動機構U14,U24を個々に制御することにより、供給ユニットU1,U2が独立して動作する。そのため、接着剤ADが供給される打抜部材Wと、接着剤ADが一切供給されない打抜部材Wとの双方を形成することが可能となる。
【0077】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0078】
(1)円筒状を呈する非分割型の固定子積層鉄心1以外の他の固定子積層鉄心を製造する際に、上述した製造装置100を用いてもよい。他の固定子積層鉄心は、例えば、複数の鉄心片が組み合われてなる分割型の鉄心ブロックで構成されていてもよい。あるいは、他の固定子積層鉄心は、例えば、一つのヨークに複数のティースが設けられており、ティース間において折り曲げられることによって環状となる折り曲げ型の打抜部材が複数積層された積層体で構成されていてもよい。
【0079】
(2)固定子積層鉄心1以外の他の積層鉄心(例えば、回転子積層鉄心)を製造する際に、上述した製造装置100を用いてもよい。
【0080】
(3)接着剤ADを金属板MSに供給しない場合、コントローラCtrが送液機構U13の動作を停止させてもよいし、コントローラCtrが駆動機構U14を制御して供給プレートU11を降下位置に移動させてもよいし、コントローラCtrがこれらの双方を実行してもよい。
【0081】
(4)供給ユニットU1,U2は、金属板MSの搬送方向において隣接するように配置されていてもよい。この場合、供給ユニットU1によって金属板MSに接着剤ADが供給された直後に、供給ユニットU2によって金属板MSに接着剤ADが供給される。あるいは、金属板MSの搬送方向において、供給ユニットU1,U2の間に他の加工ユニットが配置されていてもよい。
【0082】
(5)供給ユニットU1,U2及び各打抜ユニットは、以上の例のように、一つのダイホルダ142に搭載されていてもよい。供給ユニットU1,U2は、プレス加工装置130内において、各打抜ユニットとは物理的に分離されていてもよい。あるいは、供給ユニットU1,U2は、プレス加工装置130とは物理的に別体の装置として構成されていてもよい。
【0083】
(6)供給ユニットU1,U2は、金属板MSの下面に対して接着剤ADを供給するように構成されていてもよいし、金属板MSの上面に対して接着剤ADを供給するように構成されていてもよい。
【0084】
(7)以上の例では、2つの供給ユニットU1,U2により金属板MSに対して2回に分けて接着剤ADを供給したが、3つ以上の供給ユニットを用いて、接着剤ADを3回以上に分けて金属板MSに供給してもよい。
【0085】
(8)図6に例示されるように、金属板MSの幅方向に並ぶ複数列においてそれぞれ打抜部材Wを形成する、いわゆる「複数列取り加工」を行う場合に、製造装置100を適用してもよい。図6の例では、上列の加工部位A1において、所定領域Rの右半分にあたる第1の箇所R1に接着剤ADを塗布している。続いて、図6の上列の加工部位A2において、所定領域Rの左半分にあたる第2の箇所R2に接着剤ADを塗布している。その後、図6の上列の加工部位A3において、所定領域Rにおいて金属板MSを打ち抜いて、打抜部材Wを形成している。一方、図6の例では、下列の加工部位B1において、所定領域Rに対して全体的に接着剤ADを塗布している。続く、図6の下列の加工部位B2においては、金属板MSの加工(打抜加工及び接着剤ADの塗布)が行われない。その後、図6の上列の加工部位B3において、所定領域Rにおいて金属板MSを打ち抜いて、打抜部材Wを形成している。なお、図6の上列及び下列においても、所定領域Rの異なる部分に対して接着剤ADを2回以上に分けて供給してもよい。
【0086】
[他の例]
例1.積層鉄心(1)の製造装置(100)の一例は、所定の一方向に間欠的に順次送り出される帯状の金属板(MS)のうち打抜部材(W)となる所定領域(R)の第1の箇所(R1)に接着剤(AD)を供給するように構成された第1の供給ユニット(U1)と、第1の供給ユニット(U1)よりも金属板(MS)の搬送方向の下流側に配置されており、所定領域(R)のうち第1の箇所(R1)とは異なる第2の箇所(R2)に接着剤(AD)を供給するように構成された第2の供給ユニット(U2)とを備えていてもよい。積層鉄心(1)の製造装置(100)の一例は、第1の供給ユニット(U1)及び第2の供給ユニット(U2)によって接着剤(AD)が供給された後の金属板(MS)を所定領域(R)において打ち抜いて、第1の箇所(R1)及び第2の箇所(R2)に接着剤が付与された打抜部材(W)を形成するように構成された打抜ユニット(D3,P3)をさらに備えていてもよい。この場合、第1及び第2の供給ユニットは、打抜部材となる所定領域の異なる箇所(第1及び第2の箇所)に対してそれぞれ接着剤を供給する。そのため、打抜部材の所定領域となる全体をカバーするように接着剤が供給される場合と比較して、個々の供給ユニットの小型化や、接着剤の流路の簡略化が図られる。そのため、接着剤の詰まりが生じ難くなり、メンテナンス作業の頻度が小さくなる。したがって、積層鉄心の製造コストを削減することが可能となる。また、個々の供給ユニットの小型化や、接着剤の流路の簡略化に伴い、複数のノズルに至るまでの各流路の経路差が小さくなる。そのため、第1及び第2の供給ユニットがそれぞれ、接着剤を吐出するための複数のノズルを含んでいたとしても、複数のノズルからの接着剤の吐出量にばらつきが生じ難くなる。したがって、積層鉄心の平面度、平行度及び直角度が向上するので、高精度の積層鉄心を製造することが可能となる。さらに、個々の供給ユニットの小型化に伴い、これらの供給ユニットが製造装置の他のユニットなどと干渉し難くなる。そのため、製造装置全体としての小型化を図ることが可能となると共に、第1及び第2の供給ユニットのレイアウトの自由度を高めることが可能となる。
【0087】
例2.例1の装置(100)は、金属板(MS)のうち他の打抜部材となる他の所定領域であって、金属板(MS)の幅方向において所定領域と並ぶように位置する他の所定領域の少なくとも一部に接着剤(AD)を供給するように構成された第3の供給ユニットをさらに備えていてもよい。加えて、例1の装置(100)は、第3の供給ユニットによって接着剤(AD)が供給された後の金属板(MS)を他の所定領域において打ち抜いて、少なくとも一部に接着剤(AD)が付与された他の打抜部材を形成するように構成された他の打抜ユニットを備えていてもよい。この場合、金属板の幅方向に並ぶ複数列においてそれぞれ打抜部材(打抜部材及び他の打抜部材)を形成する、いわゆる「複数列取り加工」を行う場合でも、例1と同様の作用効果が得られる。
【0088】
例3.例2の装置(100)において、第3の供給ユニットは、他の所定領域に対して全体的に接着剤(AD)を供給するように構成されていてもよい。
【0089】
例4.例1~例3のいずれかの装置(100)は、第1の供給ユニット(U1)による金属板(MS)への接着剤(AD)の供給動作と、第2の供給ユニット(U2)による金属板(MS)への接着剤(AD)の供給動作とを独立して制御するように構成された制御部(Ctr)をさらに備えていてもよい。ところで、第2の供給ユニットは第1の供給ユニットよりも下流側に位置しているので、第2の供給ユニットによる金属板への接着剤の供給は、第1の供給ユニットによる金属板への接着剤の供給とは異なる工程で行われる。そのため、例えば、金属板の所定領域が第1の供給ユニットに位置するときに第1及び第2の供給ユニットによる接着剤の供給が同時に停止し、その後、金属板の所定領域が第2の供給ユニットに位置するときに第1及び第2の供給ユニットによる接着剤の供給が同時に動作すると、所定領域の第2の箇所にのみ接着剤が付与されてしまう。ところが、例3によれば、第1及び第2の供給ユニットが独立して動作するので、第1及び第2の供給ユニットによる接着剤の供給が行われない(接着剤が付与されない)打抜部材を形成することが可能となる。
【0090】
例5.例1~例4のいずれかの装置(100)において、第1の供給ユニット(U1)と、第2の供給ユニット(U2)とは、金属板(MS)の搬送方向において隣り合っていてもよい。
【0091】
例6.例1~例5のいずれかの装置(100)において、第1の供給ユニット(U1)、第2の供給ユニット(U2)及び打抜ユニット(D3,P3)は、同一の基台(142)に搭載されているか、又は、それぞれ別体で構成されていてもよい。
【0092】
例7.積層鉄心(1)の製造方法の一例は、所定の一方向に間欠的に順次送り出される帯状の金属板(MS)のうち打抜部材(W)となる所定領域(R)の第1の箇所(R1)に接着剤(AD)を供給することと、第1の箇所(R1)に接着剤(AD)を供給することの後に、所定領域(R)のうち第1の箇所(R1)とは異なる第2の箇所(R2)に接着剤(AD)を供給することを含んでいてもよい。積層鉄心(1)の製造方法の一例は、第2の箇所(R2)に接着剤(AD)を供給することの後に、金属板(MS)を所定領域(R)において打ち抜いて、第1の箇所(R1)及び第2の箇所(R2)に接着剤(AD)が付与された打抜部材(W)を形成することをさらに含んでいてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0093】
例8.例7の方法は、金属板(MS)のうち他の打抜部材となる他の所定領域であって、金属板(MS)の幅方向において所定領域(R)と並ぶように位置する他の所定領域の少なくとも一部に接着剤(AD)を供給することをさらに含んでいてもよい。加えて、例6の方法は、少なくとも一部に接着剤を供給することの後に、金属板を他の所定領域において打ち抜いて、少なくとも一部に接着剤が付与された他の打抜部材を形成することをさらに含んでいてもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。
【0094】
例9.例8の方法において、少なくとも一部に接着剤(AD)を供給することは、他の所定領域に対して全体的に接着剤(AD)を供給することを含んでいてもよい。
【0095】
例10.例7~例9のいずれかの方法において、第2の箇所(R2)に接着剤(AD)を供給することは、第1の箇所(R1)に接着剤(AD)を供給することの直後に行われてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1…固定子積層鉄心(積層鉄心)、100…製造装置、142…ダイホルダ(基台)、Ctr…コントローラ(制御部)、D3…ダイ部材(打抜ユニット)、MS…金属板、P3…パンチ(打抜ユニット)、R…所定領域、R1…第1の箇所、R2…第2の箇所、U1…供給ユニット(第1の供給ユニット)、U2…供給ユニット(第2の供給ユニット)、W…打抜部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6