(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】換気装置及び換気システム
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20231005BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20231005BHJP
F24F 11/39 20180101ALI20231005BHJP
F24F 11/50 20180101ALI20231005BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20231005BHJP
F24F 11/77 20180101ALI20231005BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20231005BHJP
F24F 110/30 20180101ALN20231005BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20231005BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20231005BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/08 101J
F24F11/39
F24F11/50
F24F11/64
F24F11/77
F24F11/80
F24F110:30
F24F110:10
F24F110:12
(21)【出願番号】P 2019176952
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219233
【氏名又は名称】東プレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】神武 直史
(72)【発明者】
【氏名】竹下 弘毅
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-092267(JP,A)
【文献】特開2018-021714(JP,A)
【文献】実開平02-117017(JP,U)
【文献】特開2004-316988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 7/08
F24F 11/39
F24F 11/50
F24F 11/64
F24F 11/77
F24F 11/80
F24F 110/30
F24F 110/10
F24F 110/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外の空気を室内に給気する給気ファン、及び前記給気ファンの給気風量を検出する給気風量センサを備えた給気流路と、
室内の空気を室外に排気する排気ファン、及び前記排気ファンの排気風量を検出する排気風量センサを備えた排気流路と、
前記給気流路を流れる空気と前記排気流路を流れる空気の間で熱交換を行う熱交換器と、
前記給気ファン、及び前記排気ファンの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
操作者が入力操作を行う操作部と、
前記操作部からの入力に基づいた、前記給気流路の設定給気風量、前記排気流路の設定排気風量を記憶する不揮発性メモリと、を有し、
建物に設置する際に、前記設定給気風量及び前記設定排気風量が、それぞれ有効設定給気風量及び有効設定排気風量となるように補正する演算を実施し、前記有効設定給気風量及び前記設定排気風量を前記不揮発性メモリに記憶し、
前記給気風量が前記
有効設定給気風量となるように前記給気ファンを制御し、且つ、前記排気風量が前記
有効設定排気風量となるように前記排気ファンを制御すること、
を特徴とする換気装置。
【請求項2】
前記演算は、有効換気量率および前記給気風量センサおよび/または前記排気風量センサのセンサ誤差値を用いて行うこと
を特徴とする請求項1に記載の換気装置。
【請求項3】
室外の空気を室内に給気する給気ファン、及び前記給気ファンの給気風量を検出する給気風量センサを備えた給気流路と、
室内の空気を室外に排気する排気ファン、及び前記排気ファンの排気風量を検出する排気風量センサを備えた排気流路と、
前記給気流路を流れる空気と前記排気流路を流れる空気の間で熱交換を行う熱交換器と、
前記給気ファン、及び前記排気ファンの駆動を制御する制御装置と、
前記給気流路の、室外空気の導入口近傍に設けられ、外気温度を検出する外気温度センサを備え、
前記制御装置は、
操作者が入力操作を行う操作部と、前記操作部からの入力に基づいた、前記給気流路の設定給気風量、前記排気流路の設定排気風量を記憶する不揮発性メモリと、を有し、
前記不揮発性メモリには、前記外気温度の第2の下限値が設定されており、
前記給気風量が前記設定給気風量となるように前記給気ファンを制御し、且つ、前記排気風量が前記設定排気風量となるように前記排気ファンを制御し、
前記外気温度センサで検出される外気温度が、前記第2の下限値よりも低い場合には、前記給気ファンを駆動する給気ファンモータの回転数が、モータの回転数を維持できる最低限の回転数となるように制御すること
を特徴とする換気装置。
【請求項4】
室外の空気を室内に給気する給気ファン、及び前記給気ファンの給気風量を検出する給気風量センサを備えた給気流路と、
室内の空気を室外に排気する排気ファン、及び前記排気ファンの排気風量を検出する排気風量センサを備えた排気流路と、
前記給気流路を流れる空気と前記排気流路を流れる空気の間で熱交換を行う熱交換器と、
前記給気ファン、及び前記排気ファンの駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
操作者が入力操作を行う操作部と、前記操作部からの入力に基づいた、前記給気流路の設定給気風量、前記排気流路の設定排気風量を記憶する不揮発性メモリと、を有し、
前記給気風量が前記設定給気風量となるように前記給気ファンを制御し、且つ、前記排気風量が前記設定排気風量となるように前記排気ファンを制御し、
給気ファン及び排気ファンの少なくとも一方の回転数が、予め設定した時間以上継続して基準回転数よりも低い場合には、前記給気風量センサ、または前記排気風量センサの故障を報知すること、
を特徴とする換気装置。
【請求項5】
前記操作部は、前記設定給気風量及び前記設定排気風量を、1[m
3
/h]以下の単位で入力可能であること
を特徴とする請求項
1~4のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項6】
前記給気流路の、室外空気の導入口近傍に設けられ、外気温度を検出する外気温度センサと、
前記排気流路の、室内空気の導入口近傍に設けられ、室内温度を検出する室内温度センサを備え、
前記不揮発性メモリには、前記外気温度の第1の下限値と、前記外気温度と前記室内温度の差分値が設定されており、
前記制御装置は、前記外気温度センサで検出される外気温度が前記第1の下限値よりも低いか、または前記外気温度センサと前記室内温度センサで検出される温度差が、前記差分値より大きい場合には、前記設定給気風量、及び設定排気風量が低減するように、前記給気ファン及び排気ファンを制御すること、
を特徴とする請求項
1,3,4のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記給気ファンを駆動する給気ファンモータ及び/または前記排気ファンを駆動する排気ファンモータの回転数を、所望の回転数に制御可能であること、
を特徴とする請求項
1,3,4のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項8】
前記給気流路の入口部近傍には、塵埃除去用のフィルタが設けられ、前記不揮発性メモリには、前記給気ファン、及び排気ファンの上限回転数が記憶されており、
前記制御装置は、前記給気ファン及び排気ファンの少なくとも一方の回転数が前記上限回転数を超えた場合には、前記フィルタの交換を促す警報を報知すること
を特徴とする請求項
1,3,4のいずれか1項に記載の換気装置。
【請求項9】
第1のフロアに設けられた第1の換気装置、及び前記第1のフロアよりも高層の第2のフロアに設けられた第2の換気装置を備えた換気システムであって、
前記第1の換気装置及び第2の換気装置は、
室外の空気を室内に給気する給気ファン、及び前記給気ファンの給気風量を検出する給気風量センサを備えた給気流路と、
室内の空気を室外に排気する排気ファン、及び前記排気ファンの排気風量を検出する排気風量センサを備えた排気流路と、
前記給気流路と前記排気流路の間で熱交換を行う全熱交換器と、
前記給気ファン、及び前記排気ファンの駆動を制御する制御装置と、
前記給気流路の、室外空気の導入口近傍に設けられ、外気温度を検出する外気温度センサと、を備え、
前記制御装置は、
操作者が入力操作を行う操作部と、前記操作部からの入力に基づいた前記給気流路の設定給気風量、前記排気流路の設定排気風量、前記外気温度の第1の下限値を記憶する不揮発性メモリと、を有し、
且つ、前記給気風量が前記設定給気風量となるように前記給気ファンを制御し、前記排気風量が前記設定排気風量となるように前記排気ファンを制御し、
更に、前記外気温度センサで検出される外気温度が前記第1の下限値よりも低い場合には、
前記第2の換気装置の制御装置は、前記設定給気風量を変化させず、前記設定排気風量を低減し、
前記第1の換気装置の制御装置は、前記設定給気風量、及び、前記設定排気風量を低減するように制御し、冬期において前記第1のフロアと前記第2のフロアの温度差を解消すること
を特徴とする換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、換気装置及び換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内の気密性が高い建物は、一日中(24時間の間)内部空間を換気する換気装置を設ける場合がある。このような換気装置を設置することにより、建物内の空気を換気することができ、更には、全熱交換機能を備える換気装置であれば、建物の外部へ排出する空気と建物の内部に供給する空気との間で熱交換が行われるので、省エネ性、快適性を高めることが可能となる。
このような換気装置の従来例として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、モータにより駆動される給気用送風機及び排気用送風機を備え、各送風機により住宅内への給気、排気を行うと共に、熱交換器により給気と排気との間で熱交換を行うことが記載されている。
【0004】
該特許文献1では、強弱の複数段階で風量を設定すること、及び、試運転により給気系統、及び排気系統の圧力損失を計算し、この計算結果に基づいて給気用送風機、及び排気用送風機の回転数を設定して所望の換気風量を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1では、強弱の複数段階が風量と対応しているのみで、住宅によっては換気風量が、過小、或いは過大となる場合が有る。過小風量となった場合には換気不足となり、適正な性能を得ることができなくなる。また、過大風量となった場合には、騒音や不要な電力消費が生じるという問題が発生する。
【0007】
また、各送風機を駆動するためのモータ特性により回転数のばらつきが生じることがあり、試運転により計算した圧力損失に基づいて設定した回転数で給気用送風機、及び排気用送風機を駆動させると、その住宅に適した換気風量を得られない場合が生じる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、建物毎に最適な給気風量及び排気風量を設定することが可能な換気装置、及び換気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る換気装置は、室外の空気を室内に給気する給気ファン、及び前記給気ファンの給気風量を検出する給気風量センサを備えた給気流路と、室内の空気を室外に排気する排気ファン、及び前記排気ファンの排気風量を検出する排気風量センサを備えた排気流路と、前記給気流路を流れる空気と前記排気流路を流れる空気の間で熱交換を行う熱交換器と、前記給気ファン、及び前記排気ファンの駆動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、操作者が入力操作を行う操作部と、前記操作部からの入力に基づいた、前記給気流路の設定給気風量、前記排気流路の設定排気風量を記憶する不揮発性メモリと、を有し、建物に設置する際に、前記設定給気風量及び前記設定排気風量が、それぞれ有効設定給気風量及び有効設定排気風量となるように補正する演算を実施し、前記有効設定給気風量及び前記有効設定排気風量を前記不揮発性メモリに記憶し、前記給気風量が前記有効設定給気風量となるように前記給気ファンを制御し、且つ、前記排気風量が前記有効設定排気風量となるように前記排気ファンを制御すること、を特徴とする。
【0010】
本発明に係る換気システムは、第1のフロアに設けられた第1の換気装置、及び前記第1のフロアよりも高層の第2のフロアに設けられた第2の換気装置を備えた換気システムであって、前記第1の換気装置及び第2の換気装置は、室外の空気を室内に給気する給気ファン、及び前記給気ファンの給気風量を検出する給気風量センサを備えた給気流路と、室内の空気を室外に排気する排気ファン、及び前記排気ファンの排気風量を検出する排気風量センサを備えた排気流路と、前記給気流路と前記排気流路の間で熱交換を行う全熱交換器と、前記給気ファン、及び前記排気ファンの駆動を制御する制御装置と、前記給気流路の、室外空気の導入口近傍に設けられ、外気温度を検出する外気温度センサと、を備え、前記制御装置は、操作者が入力操作を行う操作部と、前記操作部からの入力に基づいた前記給気流路の設定給気風量、前記排気流路の設定排気風量、前記外気温度の第1の下限値を記憶する不揮発性メモリと、を有し、且つ、前記給気風量が前記設定給気風量となるように前記給気ファンを制御し、前記排気風量が前記設定排気風量となるように前記排気ファンを制御し、更に、前記外気温度センサで検出される外気温度が前記第1の下限値よりも低い場合には、前記第2の換気装置の制御装置は、前記設定給気風量を変化させず、前記設定排気風量を低減し、前記第1の換気装置の制御装置は、前記設定給気風量、及び、前記設定排気風量を低減するように制御し、冬期において前記第1のフロアと前記第2のフロアの温度差を解消することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、換気装置を建物に施工した後に、給気風量及び排気風量を設定することが可能となる。このため、建物毎にそれぞれ現地で風量を設定することができるので、各建物に適した給気風量、排気風量を設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る換気装置を住宅に設置した様子を模式的に示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る換気装置の構成を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る換気装置の、制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、通常モードと設定モードの変化を示す説明図である。
【
図5】
図5は、SAファン、EAファンの風量の設定の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る換気装置の、各制御モード、及び故障検出モードの処理を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、標準モード制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、陽圧モード制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、エコ風量モード制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、保全モードと微弱風量モード制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、故障検出制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、本発明の第2実施形態に係る住宅用換気システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態の構成説明]
図1は、本発明の第1実施形態に係る換気装置を住宅(建物)に設置したときの、空気の流れを示すフロー図、
図2は、換気装置のフロー図である。
図3は、
図2に示した制御装置及びその周辺機器の電気的な構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、住宅100の天井部101の近傍には換気装置1が設置されている。該換気装置1は、室外空気(OA;Out Air)を取り込み、フィルタ2、全熱交換器11、及びダクト111aを経由して住宅100内に供給する。
図1では、一例として2つの居室102内に空気を供給する構成を示している。
【0015】
更に、換気装置1は、住宅100の室内空気(RA;Return Air)を取り込み、ダクト111b、及び全熱交換器11を経由して住宅100の外部へ排出する。
図1では、一例として、住宅100の廊下103より空気を取り込んで、外部へ排出する構成を示している。
【0016】
図2に示すように換気装置1は、室外空気(OA)を導入する第1導入口Q1と、住宅100内に全熱交換器11を通過した空気(SA;Supply Air)を供給する第1放出口Q2と、室内空気(RA)を導入する第2導入口Q3と、全熱交換器11を通過した空気(EA;Exhaust Air)を室外へ排出する第2放出口Q4を備えている。
図2において、第1導入口Q1から第1放出口Q2に向かう流路を給気流路P1とし、第2導入口Q3から第2放出口Q4に向かう流路を排気流路P2とする。
図1に示す塵埃除去用のフィルタ2は、第1導入口Q1の上流側に設けられている。
【0017】
換気装置1は更に、SAファンF1(給気ファン)と、EAファンF2(排気ファン)と、全熱交換器11(熱交換器)と、制御装置21を備えている。
【0018】
SAファンF1は、給気流路P1に設けられており、該SAファンF1の出力側は、全熱交換器11を経由して第1放出口Q2に接続されている。また、給気流路P1の室外空気の導入口近傍には、外気温度を測定する外気温度センサ14と、給気流路P1に導入される空気の風速を測定する給気風速センサ12が設けられている。
【0019】
EAファンF2は、排気流路P2に設けられており、該EAファンF2の入力側は全熱交換器11に接続され、出力側は第2放出口Q4に接続されている。また、排気流路P2の室内空気の導入口近傍には、室内の温度を測定する室内温度センサ15が設けられ、更に、排気流路P2の出口の近傍には、排気流路P2から外部に排出される空気の風速を測定する排気風速センサ13が設けられている。
【0020】
給気風速センサ12、及び排気風速センサ13は、例えばプロペラ式のセンサであり、プロペラの回転数により流路に流れる空気の風速を測定する。更に、空気が流れるダクトの断面積に基づいて、風量を演算する。即ち、給気風速センサ12は、住宅100内に供給する給気風量を測定する給気風量センサとしての機能を備えている。また、排気風速センサ13は、住宅100内から室外へ排出される排気風量を測定する排気風量センサとしての機能を備えている。なお、各風速センサ12、13の設置位置は一例を示しており、流路内であれば他の場所に設置してもよい。また、以下では給気風量と排気風量を総称して換気風量という場合がある。
【0021】
全熱交換器11は、給気流路P1を流れる空気と排気流路P2を流れる空気との間で潜熱と顕熱を交換する熱交換を行う。従って、例えば冬期のように室内の空気温度よりも室外の空気温度の方が低い場合には、給気流路P1に流れる空気は、排気流路P2を流れる空気から熱を奪って昇温され、且つ加湿され、第1放出口Q2より居室102内に供給される。
【0022】
一方、例えば夏期のように室内の空気温度よりも室外の空気温度の方が高い場合には、給気流路P1に流れる空気は、排気流路P2を流れる空気に熱を放出して降温され、且つ除湿され、第1放出口Q2より居室102内に放出される。
【0023】
図3に示すように、制御装置21は、前述したSAファンF1及びEAファンF2を駆動するSAファンモータ25(給気ファンモータ)、及びEAファンモータ26(排気ファンモータ)と、各ファンモータ25、26の駆動を制御するモータドライバ24と、電源回路27を備えている。各ファンモータ25、26は、例えばDCブラシレスモータであり、回転数を任意の数値(所望の回転数)に制御可能なモータである。
【0024】
電源回路27は、制御装置21を作動させるための計装用電力、及び、各ファンモータ25、26を駆動するための動力用電力を供給する。
【0025】
制御装置21は更に、制御回路22と、各種の設定操作を行う手元コントローラ23を備えている。
【0026】
制御回路22は、例えば電子基板により構成され、換気装置1を総括的に制御する制御部31と、記憶部32と、操作入出力部33と、入力部34と、出力部35を備えている。例えば、制御回路22は、外気温度センサ14、室内温度センサ15、給気風速センサ12、排気風速センサ13にて検出された温度、風速に基づいて、SAファンモータ25及びEAファンモータ26の回転数を制御する指令信号を出力する。
【0027】
記憶部32は、制御部31の演算処理に要する各種のプログラム、演算データ、SAファンF1及びEAファンF2の駆動に関する各種のデータを記憶する。また、記憶部32は、電源のオフ時においてもデータを保持する不揮発性メモリ32aを備えており、後述する風量設定値、風量を減量する比率などを記憶する。
【0028】
操作入出力部33は、手元コントローラ23との間でデータの送受信を行う。
【0029】
入力部34は、外気温度センサ14、室内温度センサ15、給気風速センサ12、排気風速センサ13で検出された各種のデータを入力する。また、モータドライバ24より、各ファンモータ25、26の回転数のデータを入力する。
【0030】
出力部35は、SAファンモータ25及びEAファンモータ26の回転数の指令信号を、モータドライバ24に出力する。
【0031】
手元コントローラ23は、例えばユーザが操作し易い場所に設置されている。該手元コントローラ23は、有線或いは無線にて制御回路22と接続されている。手元コントローラ23は、演算処理を実行し操作入出力部33との間で通信を行うマイコン41(例えば、ワンチップマイコン)と、操作者による各種の入力操作を行う操作部43と、各種の情報を表示する表示部42を備えている。
【0032】
操作部43は、給気ファンF1、排気ファンF2の風量設定、及び、駆動、停止の操作を行うための操作子(図示省略)を備えている。各ファンF1、F2の風量設定は、1[m3/h]の単位で入力が可能とされている。即ち、僅少な風量設定が可能とされている。また、操作部43は、換気装置1の各種の制御モードの設定を行うための操作子(図示省略)を備えている。制御モードの詳細については後述する。
【0033】
表示部42は、給気ファンF1、排気ファンF2の現在の駆動状況、風量、或いはモータの回転数、現在の運転モード、故障予備検知、フィルタ詰まり等を表示する。表示部42は、例えば液晶ディスプレイである。なお、操作部43と表示部42を兼用したタッチパネルセンサで構成することも可能である。
【0034】
なお、手元コントローラ23の代わりとして、ネットワークに接続されたユーザ端末を用いることも可能である。
【0035】
次に、換気装置1に設定されている各運転モードについて説明する。運転モードは、「通常モード」と「設定モード」に大別することができる。
【0036】
通常モードとして、標準モード、陽圧モード、エコ風量モード、保全モード、微弱風量モードを設定することができる。詳細については後述する。
【0037】
設定モードでは、換気装置1を設置した後の竣工試験時などに、SAファンF1の設定風量(設定給気風量)、及び、EAファンF2の設定風量(設定排気風量)を、不揮発性メモリ32aに書き込む処理を行う。ここで、設定給気風量および設定排気風量は、それぞれ有効設定給気風量および有効設定排気風量である必要がある。有効設定給気風量および有効設定排気風量とは、法令で求められる邸別ごとの必要換気量を満たすための機械換気量である。必要換気量は、邸別の気積に建物の種別ごとに法令で規定される必要換気回数を乗算した値であり、あらかじめ住宅の設計時に算出しておく。
【0038】
そして、この必要換気量の値を設定風量の値として操作者が操作部に入力する。記憶部32には、換気装置毎にあらかじめ設定される有効換気量率および風量センサの検出誤差を想定したセンサ誤差値が記憶されており、制御部31が、操作部43からの入力の値に記憶部32に記憶された有効換気量率を除算し、さらにセンサ誤差値を加算する演算を行う。この演算で得られた補正値が機械換気量であり、記憶部32は、機械換気量を各種制御に用いられる実際の設定給気風量および設定排気風量として不揮発性メモリ32aに書き込む処理を行う。
【0039】
例えば、気積が200m3の住宅の場合、住宅が必要な必要換気回数は0.5[回/h]であるため、必要換気量は100[m3/h]となる。操作者は、操作部43に100の値を設定風量として入力する。実際には100[m3/h]の必要換気量を確保するためには、これ以上の機械換気量が必要となる。換気装置の種別によって室への給気までの抵抗値が異なり、換気装置の種別によって有効換気量率が記憶されている。また、風量センサが必ずしも正確な検出ができるとは限らず誤差を考慮したセンサ誤差値も記憶されている。有効換気量率が97%で、センサ誤差値が1[m3/h]である場合、機械換気量は105[m3/h]となる。記憶部32は、105[m3/h]の値を設定給気風量および設定排気風量として記憶しておき、当該設定風量を各種制御に用いることとなる。
【0040】
なお、操作部43が入力を受付ける値は気積の値だけでも良いものとする。この場合、記憶部32にはさらに必要換気回数があらかじめ記憶部32に記憶されているものとし、必要換気量も制御部が算出する。また、任意の必要換気回数を操作部から入力し設定できるようにしてもよい。
【0041】
更に、SAファンモータ25及びEAファンモータ26の回転数を不揮発性メモリ32aに書き込む処理を行う。また、設定として、陽圧モード、エコ風量モード時の換気風量と、標準モードとの換気風量との比率(何%減量させるか)などの設定入力を行う。
【0042】
以下、本実施形態に係る換気装置1による、「1.標準モード」、「2.陽圧モード」、「3.エコ風量モード」、「4.保全モード」、「5.微弱風量モード」、の各モードの詳細、及び、換気装置1が備える、「6.風速センサの故障検知機能」、「7.フィルタメンテナンス時期表示機能」について説明する。
【0043】
<1.標準モード>
標準モードは、SAファンF1とEAファンF2を同時に駆動させ、給気と排気を同時に行うモードである。給気風速センサ12、及び排気風速センサ13で検出される風速から算出される給気流路P1、排気流路P2の風量が予め設定した基準設定風量(不揮発性メモリ32aに記憶した基準設定風量)となるように、SAファンモータ25、及びEAファンモータ26の回転数を制御する。つまり、設定モードにて設定されている基準設定風量となるように、各ファンモータ25、26の回転数が制御される。
【0044】
このため、長期間の使用による経時変化によりフィルタが詰まった場合でも常に基準設定風量で換気することができる。また、SAファンF1とEAファンF2の回転数を独立して制御することができるので、給気流路P1と排気流路P2との間に空気流のアンバランスが生じた場合でも、これを解消して安定した給気、排気を行うことができる。即ち、従来における換気装置では、1つのモータで、給気・排気ファンを駆動していたので、2つの風量を個別に変更することができなかったが、本実施形態に係る換気装置1では給気と排気で個別に風量を変更することが可能である。
【0045】
また、従来の換気装置では、工場からの出荷時或いは住宅への施工時にSAファンF1及びEAファンF2の風量設定を行うので、換気装置1を住宅に施工した後においては、設定変更することができない。例えば、住宅への施工時において、換気装置に設けられたディップスイッチ等でSAファンF1、EAファンF2の風量を設定して試運転を行っている。この際、設定風量は所望する風量に対して少なく設定することはできないので、設定風量よりも大きい風量に設定せざるを得なかった。
【0046】
本実施形態に係る換気装置1では、不揮発性メモリ32aにSAファンF1、EAファンF2の風量を設定することができる。不揮発性メモリ32aにより、多くの情報を記憶保存できるので、住宅の施工時において手元コントローラ23により風量設定を僅少な単位(例えば1[m3/h])で設定可能である。
【0047】
例えば、換気装置1の施工時に実施する試運転で、まずその住宅に設計されている風量を制御回路22に入力すると、その風量となるように、各ファンモータ25、26の制御が行われる。次に、十分時間が経過し、各ファンF1、F2が設定風量となったときに、設定操作により、各ファンモータ25、26の回転数を基準回転数として、不揮発性メモリ32aに書き込む。一旦風量が設定されると、電源遮断や停電等があっても電源投入後において、各ファンF1、F2は設定風量となるよう制御される。設定風量は僅少な単位で設定可能であるので、無駄な風量や静圧が高くならず、消費電力を低減し、騒音を軽減することができる。また、住宅に換気装置1を施工した後においても、風量の基準設定を行うことができるので、経時変化が生じた場合でも、適切な風量に設定することができる。
【0048】
<2.陽圧モード>
陽圧モードは、給気ファンF1による風量を設定モードで設定した設定風量とし、排気ファンF2による風量を基準設定風量よりも少ない風量(例えば、設定の80%)として、住宅内を陽圧にするモードである。風量差により住宅内が陽圧となるので、花粉やPM2.5(細かい粒子状物質)などが窓や扉の隙間から住宅内に浸入することを防止し、花粉症やPM2.5の対策とすることができる。
【0049】
<3.エコ風量モード>
エコ風量モードは、自然換気量が多いと判断される場合に換気風量を低減して消費電力を低減するモードである。例えば、冬期においては室内温度と室外温度との差が大きくなり、住宅の隙間などにより、住宅の内外での空気の出入りが多くなる。即ち、自然換気量が増大する。従って、換気装置1による給気、排気の風量を低減しても、住宅内を十分に換気することができる。
【0050】
そこで、エコ風量モードでは、室外温度の下限値(第1の下限値;例えば、10℃)と室内温度と室外温度との差の閾値(例えば10deg)を設定し、外気温度センサ14で測定される室外温度が10℃を下回った場合で、かつ、外気温度センサ14で測定される室外温度と室内温度センサ15で測定される室内温度の差が10deg以上の場合には、冬期であると判断する。また、室外温度の下限値のみ、または室外温度と室内温度の差の閾値のみで冬期であると判断してもよい。
【0051】
そして、SAファンF1、及びEAファンF2の双方の設定風量を所定の比率だけ低減する。例えば、20%低減して設定風量の80%の風量に設定する。上記の比率(20%)は、例えば設定時に設定することができ、設定した数値は不揮発性メモリ32aに記憶される。
【0052】
また、上述した陽圧モードとエコ風量モードを同時に実行することも可能である。この場合には、EAファンF2の風量は、例えば設定風量の64%(80%×80%=64%)とする。なお、室外温度の下限値(第1の下限値)は、10℃に限定されるものではなく、10℃以外の温度に設定することも可能である。
【0053】
<4.保全モード>
保全モードは、全熱交換器11の結露、凍結を防止するために、微弱な風量とするモードである。例えば、寒冷地の冬期は室外温度が極めて低いことがある。このような場合には、低温の外気、例えば、氷点下15℃(第2の下限値)以下の外気をそのまま給気流路P1内に取り込むと、全熱交換器11内に結露が生じたり、或いは全熱交換器11が凍結する等の問題が発生する。このため、SAファンモータ25を回転が維持出来る最低限の回転数(所定の回転数;例えば、400[rpm])で回転させ、EAファンモータ26は、通常の設定風量となるよう制御させる。
【0054】
<5.微弱風量モード>
微弱風量モードは、換気経路内結露を防止するために、運転停止の変わりに微弱な風量とするモードである。例えば、本来は24時間連続運転することが望ましいが、冬期の換気の冷たさのため、ユーザにより換気装置1を停止される場合がある。換気装置が停止すると、住宅内の高温多湿な空気が換気経路内に逆流し、外部の空気に冷やされることによって換気経路内の結露が生じる恐れがある。また換気経路内にはほとんど空気の動きが無いため、カビ等が発生する恐れもある。このため、SAファンモータ25、及びEAファンモータ26の双方を最低限の回転数(所定の回転数;例えば、400[rpm];なお、前述の保全モードの最低限の回転数と同回転数でなくてもよい)で回転させることで、ユーザに冬期の換気の冷たさを感じさせずに、換気経路内結露やカビの発生を防止することができる。これは手元コントローラ23から操作を行う。
【0055】
<6.風速センサの故障検知機能>
風速センサの故障検知機能は、給気風量或いは排気風量を算出するための風速センサ(給気風速センサ12、排気風速センサ13)の検出値が異常である場合にユーザに報知する機能である。
図2に示した給気風速センサ12、排気風速センサ13の検出値が異常となって、実際の風速よりも高い値を出力する誤作動が生じた場合には、風量が過多と判断され各ファンモータ25、26の回転数が低下するように制御されることになる。
【0056】
これに起因して風量不足に陥ってしまう。このような問題の発生を防止するために、施工時に正常な運転状態で基準回転数を記録させておき、所定時間(例えば、72時間)以上継続してSAファンF1、或いはEAファンF2の回転数が基準回転数を下回った場合に、各風速センサ12、13のいずれかに故障が発生しているものと判断する。そして、手元コントローラ23の表示部42に故障の発生を示す警報を表示する。ユーザは、各風速センサ12、13に異常が発生していることを認識することができ、修理点検を依頼することができる。その結果、センサ異常による風量不足を防止することができる。
【0057】
<7.フィルタメンテナンス時期表示機能>
フィルタメンテナンス時期表示機能は、外気に含まれる塵埃などを除去するフィルタ2に目詰まりが生じている場合には、目詰まりによりフィルタ2の機能が低下する前に、目詰まりの発生を検出してフィルタ2のメンテナンス時期を報知する機能である。
【0058】
図2に示したように、本実施形態に係る換気装置1の給気流路P1には、外気に含まれる塵埃を除去するためのフィルタ2が設けられている。フィルタ2の目詰まりが進むと給気流路P1より供給される風量が低下するので、風量を一定に維持するようにSAファンモータ25の回転数が上昇するように制御される。このため、SAファンモータ25の回転数が予め設定した閾値以上になった場合に、フィルタ2に目詰まりが生じているものと判断して、ユーザに警報を表示する。
【0059】
この際、換気装置1を設置する建物毎に、空気が流れる換気経路の抵抗が異なる。即ち、各建物毎に、目詰まりを判断する基準とする回転数が異なる。本実施形態では、各建物毎に目詰まりと判断するための回転数の閾値(上限回転数)を各建物毎の基準回転数に基づいて(例えば基準回転数+150回転など)設定して、不揮発性メモリ32aに記憶する。従って、各建物毎に設定された閾値に基づいて、フィルタ2の目詰まりを判断することができ、正確なフィルタ交換時期を報知することができる。即ち、フィルタ2を必要以上に早く交換したり、或いは、完全に目詰まりが生じるまで使用し続けることを防止できる。
【0060】
[第1実施形態の作用の説明]
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る換気装置1の処理動作を、
図4~
図11を参照して説明する。
【0061】
図4は、手元コントローラ23の状態遷移を示す説明図である。手元コントローラ23に設けられる操作部43でモード変更操作する(例えば、図示省略のモード変更キーを押す)ことにより、通常モードと設定モードが交互に切り替わることを示している。即ち、通常モード時にモード変更操作が行われると設定モードに切り替わり、設定モード時にモード変更操作が行われると、設定モードに切り替わることになる。
【0062】
図5は、設定モードが選択された際の操作手順を示すフローチャートであり、以下、
図5を参照して設定モードが選択された際の操作手順について説明する。なお、
図5に示す処理は、例えば住宅100に換気装置1を設置した竣工試験時などに実施される。また、
図5に示す各ステップの処理は、
図2に示した制御部31により実行される。
【0063】
初めに、ステップS11において、制御部31は、SAファンF1の風量の設定を行う。
【0064】
ステップS12において、制御部31は、SAファンF1の基準設定風量を不揮発性メモリ32aに記憶する処理を実施する。この処理は、手元コントローラ23の操作部43より操作者が入力することにより行われる。この入力と制御部31による演算によって基準設定風量が設定される。
【0065】
ステップS13において、制御部31は、EAファンF2の風量の設定を行う。
【0066】
ステップS14において、制御部31は、EAファンF2の基準設定風量を不揮発性メモリ32aに記憶する処理を実施する。この処理は、手元コントローラ23の操作部43より操作者が入力することにより行われる。この入力と制御部31による演算によって基準設定風量が設定される。
【0067】
ステップS15において、制御部31は、SAファンF1の基準設定風量をSAファンF1の設定風量とする。また、EAファンF2の基準設定風量をEAファンF2の設定風量とする。
【0068】
ステップS16において、制御部31は、換気装置1を一定の風量となる標準モード(詳細は後述)で運転する。
【0069】
ステップS17において、制御部31は、SAファンF1の実風量、即ち、給気風速センサ12で検出される風速に基づいて算出される風量と、SAファンF1の設定風量が一致するか否かを判断する。一致しない場合にはステップS16に処理を戻す。一致する場合にはステップS18に処理を進める。
【0070】
ステップS18において、制御部31は、SAファンモータ25の回転数を基準回転数として不揮発性メモリ32aに書き込む。
【0071】
ステップS19において、制御部31は、換気装置1を一定の風量となる標準モードで運転する。
【0072】
ステップS20において、制御部31は、EAファンF2の実風量、即ち、排気風速センサ13で検出される風速に基づいて算出される風量と、EAファンF2の設定風量が一致するか否かを判断する。一致しない場合にはステップS19に処理を戻す。一致する場合にはステップS21に処理を進める。
【0073】
ステップS21において、制御部31は、EAファンモータ26の回転数を基準回転数として不揮発性メモリ32aに書き込む。
【0074】
このように、設定モードでは、各住宅に設置する換気装置1に適したSAファンF1及びEAファンF1の基準設定風量、及びSAファンモータ25及びEAファンモータF2の基準回転数を不揮発性メモリ32aに書き込むことができる。
【0075】
図6は、通常モードにおいて、各種の制御を選択する処理を示すフローチャートである。以下、
図6に示すフローチャートを参照して、各種の制御を選択する処理について説明する。
【0076】
操作部43にて、標準モードが設定されている場合には、ステップS31において、制御部31は標準モード制御を実施する。
【0077】
操作部43にて、陽圧モードが設定されている場合には、ステップS32において、制御部31は陽圧モード制御を実施する。
【0078】
操作部43にて、エコ風量モードが設定されている場合には、ステップS33において、制御部31は、エコ風量モード制御を実施する。
【0079】
操作部43にて、保全モードまたは微弱風量モードが設定されている場合には、ステップS34において、制御部31は保全モードまたは微弱風量モード制御を実施する。
【0080】
操作部43にて、故障検出制御が設定されている場合には、ステップS35において、制御部31は、風速センサの故障検出、及び、フィルタのメンテナンス時期を報知する制御を実施する。
【0081】
次に、
図7に示すフローチャートを参照して、標準モード制御の処理手順について説明する。初めに、ステップS41において、制御部31は、給気風速センサ12及び排気風速センサ13で検出される回転数を取得する。
【0082】
ステップS42において、制御部31は、各風速センサ12、13で検出された回転数に基づいて、給気、排気の実風量を計算する。各風速センサ12、13の回転数に基づいて給気、排気の速度を検出することができ、更に空気が流れるダクトの断面積に基づいて、実風量を計算することができる。
【0083】
ステップS43において、制御部31は、給気の実風量と給気の設定風量を比較する。実風量が大きい場合には、ステップS44に処理を進め、実風量が小さい場合には、ステップS45に処理を進め、実風量と設定風量が一致している場合には、ステップS46に処理を進める。
【0084】
ステップS44において、制御部31は、SAファンモータ25の回転数を低下させる。即ち、実風量が設定風量よりも大きいので、SAファンモータ25の回転数を低下させることにより、実風量が設定風量に近づくように制御する。その後、ステップS46に処理を進める。
【0085】
ステップS45において、制御部31は、SAファンモータ25の回転数を上昇させる。即ち、実風量が設定風量よりも小さいので、SAファンモータ25の回転数を上昇させることにより、実風量が設定風量に近づくように制御する。
【0086】
ステップS46において、制御部31は、排気の実風量と排気の設定風量を比較する。実風量が大きい場合には、ステップS47に処理を進め、実風量が小さい場合には、ステップS48に処理を進め、実風量と設定風量が一致している場合には、本処理を終了する。
【0087】
ステップS47において、制御部31は、EAファンモータ26の回転数を低下させる。即ち、実風量が設定風量よりも大きいので、EAファンモータ26の回転数を低下させることにより、実風量が設定風量に近づくように制御する。その後、本処理を終了する。
【0088】
ステップS48において、制御部31は、EAファンモータ26の回転数を上昇させる。即ち、実風量が設定風量よりも小さいので、EAファンモータ26の回転数を上昇させることにより、実風量が設定風量に近づくように制御する。その後、本処理を終了する。
【0089】
このように、標準モードでは、SAファンF1による風量、及びEAファンF2による風量が、それぞれ設定風量となるように制御されるので、給気量、排気量を所望の風量に設定して住宅内を換気することが可能となる。
【0090】
次に、
図8に示すフローチャートを参照して、陽圧モードの処理手順について説明する。
【0091】
初めに、ステップS51において、制御部31は、手元コントローラ23の操作部43において、陽圧モードをオフからオンに切り替える操作が行われたか否かを判断する。陽圧モードがオンとされた場合にはステップS52に移行し、オンとされない場合にはステップS53に移行する。
【0092】
ステップS52において、EAファンF1の設定風量を80%に変更する。即ち、設定風量を20%だけ低減する。
【0093】
ステップS53において、制御部31は、手元コントローラ23の操作部43において、陽圧モードをオンからオフに切り替える操作が行われたか否かを判断する。陽圧モードがオフとされた場合にはステップS54に移行し、オフとされない場合には、本処理を終了する。
【0094】
ステップS54において、EAファンF1の設定風量を変更前の設定風量に変更する。即ち、設定風量を100%に戻す制御を行う。
【0095】
このように、陽圧モードでは、住宅内に供給する空気が、住宅内から外部へ排出される空気よりも多くなるように制御して、住宅内を陽圧に維持する。従って、住宅内に花粉やPM2.5が浸入することを防止できる。
【0096】
次に、
図9に示すフローチャートを参照して、エコ風量モードの処理手順について説明する。
初めに、ステップS61において、制御部31は、外気温度センサ14で検出される室外温度と、室内温度センサ15で検出される室内温度を取得する。
【0097】
ステップS62において、制御部31は、室外温度が10℃以下かつ/または室外温度と室内温度の差が10deg以上であるか否かを判断する。10℃以下かつ/または室外温度と室内温度の差が10deg以上である場合には、ステップS63に処理を進め、10℃以下かつ/または室外温度と室内温度の差が10deg以上でない場合には、ステップS65に処理を進める。
【0098】
ステップS63において、制御部31は、前回の測定時においても室外温度が10℃以下かつ/または室外温度と室内温度の差が10deg以上であったか否かを判断する。10℃以下かつ/または室外温度と室内温度の差が10deg以上であった場合には、本処理を終了する。10℃以下かつ/または室外温度と室内温度の差が10deg以上でなかった場合には、ステップS64に処理を進める。
【0099】
ステップS64において、制御部31は、SAファンF1及びEAファンF2の設定風量を80%に低減する。その後、本処理を終了する。
【0100】
ステップS65において、制御部31は、SAファンF1及びEAファンF2の設定風量を変更前の設定風量に戻す。その後、本処理を終了する。
【0101】
このように、エコ風量モードでは、室外温度が10℃以下となった場合、または室内温度と室外温度との温度差が10deg以上となった場合には、換気する風量を80%に低減する。即ち、室外温度が低く、住宅のドアの開閉などにより自然に換気される量が増大する場合には、SAファンF1及びEAファンF2による風量を低減することにより消費電力を低減することが可能となる。
【0102】
次に、
図10に示すフローチャートを参照して、保全モードと微弱風量モードの処理手順について説明する。
初めに、ステップS71において、制御部31は、外気温度センサ14により測定される室外温度を取得する。
【0103】
ステップS72において、制御部31は、室外温度が氷点下15℃(-15℃)以下であるか否かを判断する。氷点下15℃以下である場合にはステップS75に処理を進め、そうでなければステップS73に処理を進める。
【0104】
ステップS73において、制御部31は、操作部43において微弱風量モードの操作入力が有るか否かを判断する。ユーザが操作部43より微弱風量モードを設定して操作入力が有ると判断された場合には、ステップS76に処理を進め、そうでなければステップS74に処理を進める。
【0105】
ステップS74において、制御部31は、SAファンF1及びEAファンF2が設定風量となるように制御する。
【0106】
ステップS75において、制御部31は、SAファンモータ25の回転数を、最低限の回転数である400[rpm]に設定する。
【0107】
ステップ76において、制御部31は、SAファンモータ25、及びEAファンモータ26の回転数を、最低限の回転数である400[rpm]に設定する。その後、本処理を終了する。
【0108】
このように、保全モードでは、室外温度が極めて低い場合には、SAファンF1を最低限の回転数で駆動することにより、全熱交換器11が結露することや凍結することを防止する。
【0109】
また、微弱風量モードでは、ユーザが手元コントローラ23から操作を行い、SAファンF1及びEAファンF2を最低限の回転数で駆動することにより、ユーザに冬期の換気の冷たさを感じさせずに、ダクト内結露やカビの発生を防止できる。
【0110】
次に、
図11に示すフローチャートを参照して、故障検出制御の処理手順について説明する。初めに、ステップS81において、制御部31は、SAファンモータ25、及びEAファンモータ26の回転数を測定する。
【0111】
ステップS82において、制御部31は、SAファンモータ25の回転数は、基準回転数よりも低いか否かを判断する。基準回転数よりも低い場合には、ステップS83に処理を進め、そうでなければステップS85に処理を進める。
【0112】
ステップS83において、SAファンモータ25の回転数が低下してから72時間以上が経過したか否かを判断する。72時間が経過している場合には、ステップS84に処理を進め、そうでなければステップS85に処理を進める。
【0113】
ステップS84において、制御部31は、給気風速センサ12に異常が発生していることを表示部42に表示して、異常の発生をユーザに報知する。その後、ステップS85に処理を進める。
【0114】
ステップS85において、制御部31は、EAファンモータ26の回転数は、基準回転数よりも低いか否かを判断する。基準回転数よりも低い場合には、ステップS86に処理を進め、そうでなければステップS88に処理を進める。
【0115】
ステップS86において、EAファンモータ26の回転数が低下してから72時間以上が経過したか否かを判断する。72時間が経過している場合には、ステップS87に処理を進め、そうでなければステップS88に処理を進める。
【0116】
ステップS87において、制御部31は、排気風速センサ13に異常が発生していることを表示部42に表示して、異常の発生をユーザに報知する。その後、ステップS88に処理を進める。
【0117】
ステップS88において、制御部31は、SAファンモータ25の設定回転数に、所望の回転数(例えば、150[rpm])を加算して閾値回転数とする。
【0118】
ステップS89において、制御部31は、SAファンモータ25の回転数が閾値回転数を超えたか否かを判断する。閾値回転数を超えた場合には、ステップS90に処理を進め、そうでなければ本処理を終了する。
【0119】
ステップS90において、制御部31は、フィルタ2のメンテナンスが必要であることを示す警告を表示部42に表示する。その後、本処理を終了する。
【0120】
このように、故障検出制御では、給気風速センサ12及び排気風速センサ13が故障の傾向にある場合に、完全に故障に至る前に給気風速センサ12及び排気風速センサ13の異常をユーザに知らせることができる。また、フィルタ2が目詰まりの傾向にある場合には、完全に目詰まりを引き起こす前に、フィルタ2の交換を促す警報をユーザに報知することができる。このため、ユーザは風速センサの修理点検作業、フィルタ2の交換作業を早い時点で実施することが可能となる。
【0121】
[第1実施形態の効果の説明]
以上説明したように、第1実施形態に係る換気装置1では、以下に示す効果を達成することができる。
(1)各ファンF1、F2の設定風量を手元コントローラ23を操作することにより不揮発性メモリ32aに書き込むことができるので、設定風量を工場出荷時に書き込む必要がなく、施工管理が容易になる。
【0122】
(2)各ファンF1、F2の設定風量を、各住宅毎に1[m3/h]の単位で細かく設定することができるので、過換気となることを防止できる。更に、省エネ性を向上することができる。また、給気音が低下するので、居住環境を向上させることができる。
【0123】
(3)陽圧モードに設定することにより、住宅の居室内を陽圧に維持することができるので、花粉やPM2.5、塵埃などが室内に浸入することを防止でき、居住環境を向上させることができる。
【0124】
(4)エコ風量モードに設定することにより、冬期においては換気風量を低減することができる。このため、過換気とすることがなく、且つ省エネ性を向上させることができる。
【0125】
(5)保全モードに設定することにより、極寒時にファンモータ25の回転数を最低限の回転数(例えば、400[rpm])まで低下させて運転維持するので、全熱交換器内に結露がすることや凍結することを防止できる。
【0126】
(6)微弱風量モードに設定することにより、各ファンモータ25、26の回転数を最低限の回転数(例えば、400[rpm])まで低下させて運転維持するので、ユーザに冬期の換気の冷たさを感じさせずに、ダクト内結露やカビの発生を防止できる。
【0127】
(7)故障検出制御を行うことにより、各風速センサ12、13が故障に至る前に予備的に検知できるので、各風速センサ12、13が故障して機能が停止する前に修理を行うことが可能となる。
【0128】
(8)更に、故障検出制御を行うことにより、フィルタ2が完全に目詰まりする前の時点で目詰まり傾向にあることを検出し、表示部42にて報知されるので、最適な時期にフィルタを交換することができる。
【0129】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、前述した第1実施形態にて説明した換気装置1を住宅の複数のフロアに設置して、住宅内を換気するものである。即ち、第2実施形態は、2つの換気装置を備えた換気システムである。
【0130】
図12は、2つの換気装置1a、1bからなる換気システムを住宅に設置したときの、空気の流れを示すフロー図、
図2は、換気装置のフロー図である。なお、
図12では、2階建の住宅201を例に挙げて説明するが、3階建以上の住宅においても適用することが可能である。
【0131】
図12に示すように、住宅201の1階(第1のフロア)には換気装置1b(第1の換気装置)が設けられている。室外より取り込まれる空気は、フィルタ2b、換気装置1bを経由し、且つダクト211aを経由して1階居室202内に供給される。また、1階居室202内の空気はダクト211bを経由して換気装置1bに供給され、換気装置1bを通過した後、室外へ排出される。
【0132】
また、住宅201の2階(第1のフロアよりも高層の第2のフロア)には換気装置1a(第2の換気装置)が設けられている。室外より取り込まれる空気は、フィルタ2a、換気装置1aを経由し、且つダクト211aを経由して2階居室203内に供給される。また、1階居室202内の空気はダクト211bを経由して換気装置1bに供給され、換気装置1bを通過した後、室外へ排出される。
【0133】
また、1階居室202と2階居室203との間を移動、昇降するための廊下・階段204が設けられており、該廊下・階段204を介して1階居室202と2階居室203との間で空気が流れるようになっている。
【0134】
各換気装置1a、1b、及びフィルタ2a、2bの構成は、前述した第1実施形態で示した換気装置1と同様である。
第2実施形態では、室外温度が下限値(例えば、10℃)を下回った場合には、1階に設置された換気装置1bについては、前述した「3.エコ風量モード」にて示した処理を実施する。即ち、SAファンF1、及びEAファンF2の双方の設定風量を通常時の風量に対して所定の比率だけ低減する。例えば、20%低減して通常時の80%の風量に設定する。
【0135】
一方、2階に設置された換気装置1aについては、SAファンF1の設定風量を変更せず、通常の風量とする。また、EAファンF2の設定風量を20%低減して通常時の80%の風量に設定する。
【0136】
即ち、2階建の住宅は、冬期は暖房により暖気が廊下や階段を通じて2階に滞留しやすい、一方、1階には室外から浸入した冷気が滞留する。このため、2階居室203は換気風量が不足するので、2階に設置された換気装置1aのSAファンF1についてのみ、通常時の風量とし、2階に設置された換気装置1aのEAファンF2、及び1階に設置された換気装置1bのSAファンF1とEAファンF2の風量を所定の比率だけ低減する。
【0137】
このような制御を行うことにより、住宅内の暖気が階段を経由して1階に廻り、1階居室202と2階居室203との間の温度差が解消される。更に、換気風量が1階、2階ともに確保されるので、室内空気の汚染度を低減することが可能となる。
【0138】
なお、第2実施形態では、2階建住宅の1階と2階にそれぞれ換気装置1a、1bを設置して各階を換気する例について説明したが、本発明に係る住宅用換気システムはこれに限定されるものではなく、3階以上の住宅についても適用することができる。3階以上の住宅に適用する場合には、最上階に設置した換気装置のSAファンF1のみを通常の風量とし、最上階のEAファンF2、及び低層階に設置したSAファンF1及びEAファンF2の風量を低減すればよい。
【0139】
また、1階と最上階(例えば、3階建住宅の場合は1階と3階)にのみ換気装置を設置し、最上階に設置した換気装置のSAファンF1の風量のみを通常時の風量とし、それ以外のファンの風量を低減する構成とすることも可能である。
【0140】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。例えば、実施例では住宅としたが、これに限られるものではなく、住宅以外のあらゆる建物に適用してもよく、階層が3階以上であっても良い。また、各階層に設けられる換気装置が複数台であってもよく、複数の換気システムがそれぞれの換気装置を制御するようにしてもよい。なお、操作部はユーザと異なる操作者が操作を行う場合もあるため、ユーザと操作者と異なる用語を使用したが、ユーザ自身が操作者であっても良い。その他、この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0141】
1、1a、1b 換気装置
2、2a、2b フィルタ
11 全熱交換器(熱交換器)
12 給気風速センサ
13 排気風速センサ
14 外気温度センサ
15 室内温度センサ
21 制御装置
22 制御回路
23 手元コントローラ
24 モータドライバ
25 SAファンモータ
26 EAファンモータ
27 電源回路
31 制御部
32 記憶部
32a 不揮発性メモリ
33 操作入出力部
34 入力部
35 出力部
41 マイコン
42 表示部
43 操作部
100、201 住宅
101 天井部
102 居室
103 廊下
111a、111b ダクト
202 1階居室
203 2階居室
204 廊下・階段
211a、211b ダクト