(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ドアロック装置の状態判定装置、ドアロック装置の状態判定方法、及びドアロック装置の状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
E05B 81/74 20140101AFI20231005BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20231005BHJP
B61D 19/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E05B81/74
B60J5/00 H
B61D19/02 V
(21)【出願番号】P 2019197253
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋輔
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-50037(JP,A)
【文献】特開平1-214679(JP,A)
【文献】特開2002-38796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
E05F 15/00 - 15/79
B60J 5/00
B61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されてから前記ドアロック装置の施錠動作又は解錠動作が完了するまでの経過時間を算出する
経過時間算出部と、
前記経過時間算出部が算出した経過時間を記憶する記憶部と、
同一の鉄道車両に複数搭載される前記ドアロック装置に関する前記経過時間を前記記憶部から取得して、取得した過去の所定期間の経過時間に基づいて前記ドアロック装置に異常が発生していると判定する規定時間を算出する規定時間算出部と、
前記経過時間
が前記規定時間よりも長いときに前記ドアロック装置
に異常
が生じていると判定する判定部と
、を備える
ドアロック装置の状態判定装置。
【請求項2】
前記
経過時間算出部は、前記駆動信号が出力された後、前記ドアロック装置がドアを施錠した状態と前記ドアを解錠した状態とでドアロックスイッチの出力信号が切り替わるタイミングを前記ドアロック装置の動作が完了するタイミングとして前記経過時間を算出する
請求項1に記載のドアロック装置の状態判定装置。
【請求項3】
前記
経過時間算出部は、前記ドアロック装置による解錠時の前記経過時間を算出する
請求項1又は2に記載のドアロック装置の状態判定装置。
【請求項4】
ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されてから前記ドアロック装置の動作が完了するまでの経過時間を算出する
経過時間算出ステップと、
算出した経過時間を記憶する記憶ステップと、
同一の鉄道車両に複数搭載される前記ドアロック装置に関する前記経過時間を取得して、取得した過去の所定期間の経過時間に基づいて前記ドアロック装置に異常が発生していると判定する規定時間を算出する規定時間算出ステップと、
前記経過時間
が前記規定時間よりも長いときに前記ドアロック装置
に異常
が生じていると判定する判定ステップと
、を有する
ドアロック装置の状態判定方法。
【請求項5】
コンピュータに、
ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されてから前記ドアロック装置の動作が完了するまでの経過時間を算出する
経過時間算出処理と、
算出した経過時間を記憶する記憶処理と、
同一の鉄道車両に複数搭載される前記ドアロック装置に関する前記経過時間を取得して、取得した過去の所定期間の経過時間に基づいて前記ドアロック装置に異常が発生していると判定する規定時間を算出する規定時間算出処理と、
前記経過時間
が前記規定時間よりも長いときに前記ドアロック装置
に異常
が生じていると判定する判定処理と
、を実行させる
ドアロック装置の状態判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアロック装置の状態判定装置、ドアロック装置の状態判定方法、及びドアロック装置の状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両のドアを施錠するドアロック装置が開示されている。ドアロック装置は、往復動作するロックピンを有する。ロックピンはソレノイドで駆動される。ロックピンの動作に応じて、ドアが施錠又は解錠される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようなドアロック装置は、動作遅れ等の異常が生じることがある。したがって、ドアロック装置の異常を把握することが好ましい。しかし、特許文献1に記載の技術では、ドアロック装置の異常の有無を判定することに関して何ら検討されておらず、この点について改善の余地がある。
【0005】
この発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ドアロック装置の異常の有無を判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのドアロック装置の状態判定装置は、ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されてから前記ドアロック装置の施錠動作又は解錠動作が完了するまでの経過時間を算出する算出部と、前記経過時間に基づいて前記ドアロック装置の異常の有無を判定する判定部とを備える。上記構成において、ドアロック装置に動作遅れ等の異常が生じると、上記経過時間が長くなる。そのため、上記経過時間に基づいてドアロック装置の異常の有無を判定できる。
【0007】
ドアロック装置の状態判定装置において、前記算出部は、前記駆動信号が出力された後、前記ドアロック装置がドアを施錠した状態と前記ドアを解錠した状態とでドアロックスイッチの出力信号が切り替わるタイミングを前記ドアロック装置の動作が完了するタイミングとして前記経過時間を算出してもよい。
【0008】
上記構成では、ドアロックスイッチという鉄道車両において一般的に搭載されている構成を利用してドアロック装置の動作の完了を判定する。したがって、ドアロック装置の動作の完了を判定する上で特殊な追加部品は不要であり、部品点数の増加を避けることができる。
【0009】
ドアロック装置の状態判定装置において、前記算出部は、前記ドアロック装置による解錠時の前記経過時間を算出してもよい。
ドアを解錠する場合、ドアロック装置の駆動信号が出力されると、ドアの動作を含むことなく、ドアロック装置が動作する。つまり、ドアロック装置の駆動信号が出力されてから、ドアロック装置による解錠の動作が完了するまでの経過時間を的確に把握できる。そのため、ドアロック装置の状態を把握する上で好適である。
【0010】
ドアロック装置の状態判定装置において、前記判定部は、前記経過時間が規定時間よりも長いときに前記ドアロック装置に異常が生じていると判定してもよい。上記構成のように、経過時間が規定時間よりも長いときにドアロック装置に異常が生じていると判定することで、ドアロック装置の異常を容易に把握できる。
【0011】
ドアロック装置の状態判定装置において、前記ドアロック装置は、鉄道車両に複数搭載されるものであり、前記判定部は、同一の前記鉄道車両における複数の前記ドアロック装置に関する前記経過時間に基づいて前記規定時間を算出してもよい。
【0012】
同一車両に搭載される複数のドアロック装置は、新品状態からの劣化度合いが同程度であると想定される。このような、劣化度合いの似た物同士を比較すべくこれらに基づいて規定時間を算出すれば、劣化度合いと切り分けてドアロック装置の異常の有無を判定できる。また、同一車両のドアロック装置から規定時間を算出すれば、規定時間を算出するための実験やシミュレーションを予め行うことを必要としない。
【0013】
上記課題を解決するためのドアロック装置の状態判定方法は、ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されてから前記ドアロック装置の動作が完了するまでの経過時間を算出する算出ステップと、前記経過時間に基づいて前記ドアロック装置の異常の有無を判定する判定ステップとを有する。上記構成において、ドアロック装置に動作遅れ等の異常が生じると、上記経過時間が長くなる。そのため、上記経過時間に基づいてドアロック装置の異常の有無を判定できる。
【0014】
上記課題を解決するためのドアロック装置の状態判定プログラムは、コンピュータに、ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されてから前記ドアロック装置の動作が完了するまでの経過時間を算出する算出処理と、前記経過時間に基づいて前記ドアロック装置の異常の有無を判定する判定処理とを実行させる。上記構成において、ドアロック装置に動作遅れ等の異常が生じると、上記経過時間が長くなる。そのため、上記経過時間に基づいてドアロック装置の異常の有無を判定できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドアロック装置の異常の有無を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】鉄道車両におけるドアの開閉に係る機構の概略図。
【
図3】状態判定処理の処理手順を表したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、
図1~
図3を参照して、ドアロック装置の状態判定装置をドア制御ユニットに具体化した一実施形態を説明する。
先ず、鉄道車両のドア、ドア開閉装置、及びドアロック装置の概略構成を説明する。
【0018】
図1に示すように、鉄道車両には、当該鉄道車両の出入口である開口部を開閉するドア10が設けられている。ドア10は、両開きドアである。一対のドア10は、戸吊部材42で上側から吊られている。戸吊部材42は、ドア10毎に2つずつ設けられている。戸吊部材42は、車両の前後方向に延びているレール47に沿ってスライドする。すなわち、一対のドア10は、車両の前後方向にスライド移動するスライドドアである。また、一対のドア10は、出入口を開放する開状態となる際には、互いに離間する方向にスライド動作し、出入口を閉じる閉状態となる際には、互いに近接する方向にスライド動作する。なお、鉄道車両には複数の出入口が設けられ、それら出入口に対応する一対のドア10がそれぞれ設けられている。なお、
図1では、複数の一対のドア10のうちの1つのみを図示している。
【0019】
鉄道車両の出入口の周囲、具体的には、当該出入口よりも上側には、上記ドア10を駆動するためのドア開閉装置20が配置されている。ドア開閉装置20は、駆動源となる電動モータ22を備えている。電動モータ22は、例えばラック&ピニオン等で構成されるドア駆動機構24を介して2つのドア10と連結されている。詳細には、ドア駆動機構24は、ドア10毎の2つの戸吊部材42のうち、ドア10のスライド方向において出入口の外側に位置する外側戸吊部材42Aに連結されている。電動モータ22の出力軸が一方向に回転すると各ドア10が開状態とされ、電動モータ22の出力軸が他方向に回転すると各ドア10が閉状態とされる。
【0020】
また、鉄道車両の出入口よりも上側には、全閉状態にある一対のドア10をロックするドアロック装置30が配置されている。ドアロック装置30は、一対のドア10につき1つのみ設けられている。ドアロック装置30は、ドア10のスライド方向に関して出入口の中央近傍に位置している。
【0021】
図2に示すように、ドアロック装置30は、駆動源となるソレノイド32を備えている。ソレノイド32のコイル33は円筒状になっている。コイル33には、電源31から電圧が印加される。コイル33の内部からは、棒状のロックピン34が突出している。ロックピン34は、圧縮ばね36によってコイル33から突出する方向に付勢されている。また、ソレノイド32には、コイル33に流れる電流Aを測定する電流計測器39Aが内蔵されている。電源31とコイル33とを接続する配線には、電源31の電圧Vを測定する電圧計測器39Bが取り付けられている。
【0022】
ドアロック装置30において、電源31からソレノイド32のコイル33に電圧が印加されて当該コイル33が励磁されている場合、ロックピン34は圧縮ばね36の弾性力に抗してコイル33の内部に引き戻される。一方、電源31からコイル33に電圧が印加されておらず当該コイル33が消磁されている場合、ロックピン34は、圧縮ばね36の弾性力を受けてコイル33から突出する。
【0023】
図1に示すように、ドアロック装置30において、ロックピン34は、図示しない連結機構を介して突出棒37に連結されている。突出棒37は、ロックピン34の動作に応じて動作する。ここで、一対のドア10のうち、一方のドア10の戸吊部材42には、ドア10が全閉状態にあるときに上記の突出棒37と係合する固定部材45が取り付けられている。固定部材45は、一方のドア10における2つの戸吊部材42のうち、ドア10のスライド方向において出入口の中央寄りに位置する中央戸吊部材42Bに取り付けられている。
【0024】
ドア10が全閉状態にあるときに、ソレノイド32のコイル33が消磁されることに応じてロックピン34がコイル33から突出すると、突出棒37が動作して当該突出棒37が固定部材45に係合する。この結果として、一方のドア10はスライド移動不能な施錠状態になる。一方のドア10がスライド移動不能になると、ドア駆動機構24を介して他方のドア10もスライド移動不能になる。また、ソレノイド32のコイル33が励磁されることに応じてロックピン34がコイル33内に引き戻されると、突出棒37と固定部材45との係合が解除される。そして、ドア10は解錠状態になる。
【0025】
ロックピン34の動作は、図示しない伝達機構を介してドアロックスイッチ(DLS)38に伝達される。
図2に示すように、ドアロックスイッチ38は、ロックピン34がコイル33から突出したロック位置にあるときは出力信号としてロック信号LSを出力する。ドアロックスイッチ38は、ロックピン34がコイル33の内部に引き戻されたロック解除位置にあるときは、出力信号であるロック信号LSの出力を停止する。このように、ドアロックスイッチ38は、ドアロック装置30がドア10を施錠した状態と解錠した状態とでロック信号LSの出力のオンオフを切り替える。
【0026】
次に、ドア開閉装置20及びドアロック装置30の電気的構成について説明する。
図1に示すように、ドア開閉装置20及びドアロック装置30は、ドア制御ユニット50で制御される。ドア制御ユニット50は、一対のドア10毎に、鉄道車両の出入口の近傍に搭載されている。ドア制御ユニット50は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、ドア制御ユニット50は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行するマイクロコンピュータ等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。また、ドア制御ユニット50は、不揮発性の記憶部を備えている。ドア制御ユニット50には、ドアロックスイッチ38からのロック信号LSが入力される。また、ドア制御ユニット50には、電流計測器39Aからの電流A及び電圧計測器39Bからの電圧Vが入力される。
【0027】
ドア制御ユニット50は、鉄道車両の走行やドア10の開閉を制御する上位装置としての車両制御装置12と接続されている。
図2に示すように、ドア制御ユニット50は、車両制御装置12からの指令信号Wに基づいて動作する。なお、車両制御装置12は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、車両制御装置12は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行するマイクロコンピュータ等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。また、車両制御装置12は、不揮発性のデータベース14を備えている。このデータベース14は、ドア制御ユニット50から入力される情報を集約して記憶する。
【0028】
図2に示すように、ドア制御ユニット50は、車両制御装置12からの指令信号Wに応じてドア開閉装置20及びドアロック装置30を駆動する駆動制御部52を備えている。駆動制御部52は、ドア開閉装置20及びドアロック装置30を駆動させるための駆動信号を出力する。駆動制御部52は、ドアロック装置30の解錠動作を駆動させるための駆動信号として、ソレノイド32を励磁させる励磁信号EM1を電源31に出力する。励磁信号EM1が出力された場合、電源31からソレノイド32に電圧が印加される。そして、ソレノイド32が励磁状態となる。また、駆動制御部52は、ドアロック装置30の施錠動作を駆動させるための駆動信号として、ソレノイド32を消磁させる消磁信号EM2を電源31に出力する。消磁信号EM2が出力された場合、電源31からソレノイド32への電圧の印加が停止される。そして、ソレノイド32は消磁状態となる。
【0029】
ドアロック装置30においては、異物の詰りや偏摩耗によって、ロックピン34が動作する際の摺動抵抗が大きくなることがある。また、ドアロック装置30が取り付けられている車体側の変形に応じて、摺動抵抗が大きくなることもある。ロックピン34が動作する際の摺動抵抗が大きくなると、ソレノイド32に励磁信号EM1や消磁信号EM2が出力されたときに、ロックピン34が動作し始めるタイミングが遅くなったり、ロックピン34が動き出した後の当該ロックピン34の動作速度が遅くなったりする。そこで、ドア制御ユニット50は、ドアロック装置30の異常の有無を判定する状態判定装置60を備えている。
【0030】
また、ドアロック装置30においては、上記のような摺動抵抗の増加に加え、ソレノイド32及びそれに繋がる電気系統に断線や短絡等の不具合が生じて、ソレノイド32に流れる電流が小さくなってしまうこともある。この場合も、ロックピン34が動作し始めるタイミングが遅くなったり、ロックピン34が動作を開始した後における当該ロックピン34の動作速度が遅くなったりする。状態判定装置60は、こういった異常の有無も判定する。
【0031】
ドア制御ユニット50の状態判定装置60は、ドアロック装置30を駆動させるための駆動信号が出力されてから、その駆動信号に応じたドアロック装置30の動作が完了するまで経過時間を算出する算出部61を備えている。算出部61は、ドアロック装置30の解錠動作に係る経過時間を算出する。すなわち、算出部61は、ソレノイド32への励磁信号EM1が出力されてから、コイル33内へのロックピン34の引き戻しが完了して突出棒37と固定部材45との係合が解除されるまでの経過時間である解錠経過時間Hを算出する。算出部61は、ドアロックスイッチ38が出力するロック信号LSがオンからオフに切り替わるタイミングを、コイル33内へのロックピン34の引き戻しが完了したタイミングとして解錠経過時間Hを算出する。
【0032】
ドア制御ユニット50の状態判定装置60は、解錠経過時間Hに基づいてドアロック装置30の異常の有無を判定する判定部62を備えている。判定部62は、解錠経過時間Hが、予め定められた規定時間H1よりも長いときに、ロックピン34の動作に遅れが生じている、すなわちドアロック装置30に異常が生じていると判定する。また、判定部62は、コイル33に流れる電流Aで電源31の電圧Vを除した値である抵抗値Rが、予め定められた規定抵抗RQとは異なっているときに、ソレノイド32及びそれに繋がる電気系統に不具合が生じている、すなわちドアロック装置30に異常が生じていると判定する。このように、判定部62は、電流Aと電圧Vとの関係性に基づいて、電気系統の不具合を判定する。なお、上記の規定抵抗RQは、ソレノイド32に電圧を印加したときの電圧と電流との関係性を実験やシミュレーションによって予め調べることによって算出されている。
【0033】
判定部62は、ドアロック装置30の異常の有無を判定するための基準の値として、規定時間H1を算出する。判定部62は、1編成を構成する複数の車両のうち、同一の車両に搭載されている複数のドアロック装置30に関する解錠経過時間Hに基づいて規定時間H1を算出する。ここで、算出部61は、解錠経過時間Hを算出した場合、当該解錠経過時間Hを車両制御装置12に送信する。車両制御装置12は、この解錠経過時間Hをデータベース14に記憶する。車両制御装置12には、鉄道車両に搭載されている複数のドア制御ユニット50から解錠経過時間Hが送信される。そして、データベース14には、鉄道車両に搭載されている複数のドアロック装置30に係る解錠経過時間Hに関して、過去の所定期間に亘るデータが記憶されている。判定部62は、規定時間H1を算出するのに際し、車両制御装置12のデータベース14にアクセスし、同一の車両に搭載されている複数のドアロック装置30に関する解錠経過時間Hについて、過去の所定期間分のデータを取得する。そして、判定部62は、取得したデータの平均時間を算出するとともに、この平均時間よりも長い時間を規定時間H1として算出する。
【0034】
次に、ドア制御ユニット50が実行する状態判定処理について説明する。
ドア制御ユニット50は、車両制御装置12からドア10を開く指令信号Wを受信すると、一連の状態判定処理を開始する。なお、ドア制御ユニット50が車両制御装置12からドア10を開く指令信号Wを受信する状態では、ドア10が全閉状態になっていて、ロックピン34がコイル33から突出したロック位置にある。そして、ドアロックスイッチ38からはロック信号LSが出力されている。
【0035】
図3に示すように、ドア制御ユニット50は、状態判定処理を開始すると、ステップS10の処理を実行する。ステップS10において、ドア制御ユニット50の算出部61は、駆動制御部52によってソレノイド32に励磁信号EM1が出力されたか否かを判定する。算出部61は、励磁信号EM1が出力されていない場合(ステップS10:NO)、再度ステップS10の処理を実行する。すなわち、算出部61は、励磁信号EM1が出力されるまでステップS10の処理を繰り返す。そして、算出部61は、励磁信号EM1が出力されると(ステップS10:YES)、処理をステップS20に進める。
【0036】
ステップS20において、算出部61は、解錠経過時間Hのカウントを開始する。そして、算出部61は処理をステップS30に進める。ステップS30において、判定部62は、電流計測器39Aと電圧計測器39Bの検出結果を参照する。そして、判定部62は、電流Aで電圧Vを除した値である抵抗値Rが規定抵抗RQに等しいか否かを判定する。判定部62は、抵抗値Rが規定抵抗RQとは異なっている(R≠RQ)場合(ステップS30:NO)、処理をステップS100に進める。
【0037】
ステップS100において、判定部62は、ソレノイド32に係る電気系統に不具合が生じていると判定する。そして、判定部62は、ソレノイド32に係る電気系統に不具合が生じている旨を示す第1情報J1を車両制御装置12に出力する。車両制御装置12は、第1情報J1を受信すると、ソレノイド32に係る電気系統に不具合が生じていることをデータベース14に記憶する。ステップS100の処理を実行すると、判定部62は状態判定処理の一連の処理を一旦終了する。
【0038】
さて、ステップS30において、判定部62は抵抗値Rが規定抵抗RQと等しい(R=RQ)場合(ステップS30:YES)、処理をステップS40に進める。ステップS40において、算出部61は、ロック信号LSの出力がオフに切り替わったか否かを判定する。算出部61は、ロック信号LSの出力が継続されている場合(ステップS40:NO)、ステップS30の処理に戻る。この場合、判定部62がステップS30の処理を実行する。算出部61及び判定部62は、ロック信号LSの出力がオフに切り替わるまでステップS30及びステップS40の処理を繰り返す。そして、算出部61は、ロック信号LSの出力がオフに切り替わると(ステップS40:YES)、処理をステップS50に進める。
【0039】
ステップS50において、算出部61は、ステップS20で開始した解錠経過時間Hのカウントを終了する。そして、算出部61は、ステップS50に至った時点での解錠経過時間Hを最終的な解錠経過時間Hとして算出する。なお、算出部61は、算出した解錠経過時間Hを車両制御装置12に送信する。この後、算出部61は、処理をステップS60に進める。
【0040】
ステップS60において、ドア制御ユニット50の判定部62は、規定時間H1を算出する。既に説明したとおり、判定部62は、同一の車両に搭載されている複数のドアロック装置30に関する解錠経過時間Hに基づいて、規定時間H1を算出する。この後、判定部62は、処理をステップS70に進める。なお、ステップS60が算出ステップ及び算出処理に相当する。
【0041】
ステップS70において、判定部62は、解錠経過時間Hが規定時間H1以下であるか否かを判定する。判定部62は、解錠経過時間Hが規定時間H1よりも長い(H>H1)場合(ステップS70:NO)、処理をステップS110に進める。
【0042】
ステップS110において、判定部62は、ロックピン34の動作に遅れが生じていると判定する。そして、判定部62は、ロックピン34の動作に遅れが生じている旨を示す第2情報J2を車両制御装置12に出力する。車両制御装置12は、第2情報J2を受信すると、ロックピン34の動作に遅れが生じていることをデータベースに14に記憶する。ステップS110の処理を実行すると、判定部62は状態判定処理の一連の処理を一旦終了する。
【0043】
一方、ステップS70において、判定部62は、解錠経過時間Hが規定時間H1以下である(H≦H1)場合、ステップS80に処理を進める。ステップS80において、判定部62は、ドアロック装置30が正常であると判定する。ステップS80の処理を実行すると、判定部62は、状態判定処理の一連の処理を一旦終了する。なお、ステップS70,S80,S110が判定処理及び判定ステップに相当する。
【0044】
なお、車両制御装置12のデータベース14に記憶された、電気系統の不具合や、ロックピン34の動作の遅れに関する情報は、例えば鉄道車両の点検時に作業員によって読み出され、ドアロック装置30の交換や修理に活用される。
【0045】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ドア10が施錠されている状態では、ロックピン34がコイル33から突出しているとともに突出棒37が固定部材45に係合している。そして、ドアロックスイッチ38からのロック信号LSの出力がオンになっている。この状態でドアを開く指令信号Wをドア制御ユニット50が受信すると、ドア制御ユニット50の駆動制御部52は、ソレノイド32への励磁信号EM1を出力する。そして、この励磁信号EM1に応じてソレノイド32が励磁され、ロックピン34がコイル33内に引き戻される。ロックピン34が引き戻されると、ドアロックスイッチ38からのロック信号LSの出力がオフに切り替わる。
【0046】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)状態判定処理では、ドアロック装置30が解錠動作に要する解錠経過時間Hが規定時間H1以内であるか否かを判定している。そして、解錠経過時間Hが規定時間H1よりも長い場合には、ロックピン34の動作に遅れが生じていると判定する。こうした判定により、ドアロック装置30の異常を把握することができる。
【0047】
(2)ドアロック装置30の異常を引き起こす要因は、摺動抵抗の増加に加え、電気系統の不具合も考えられる。このことを考慮して、状態判定処理では2段階の判定を行っている。先ず、電源31の電圧Vとコイル33に流れる電流Aとの関係が適切であるか否かを判定している。これにより、ソレノイド32に係る電気系統の不具合の有無を把握する。そして、電気系統に不具合が生じていなければ、ドアロック装置30が解錠動作に要する解錠経過時間Hが規定時間H1以内であるか否かを判定している。これにより、電気系統に不具合が生じていないことを前提として、ロックピン34の動作に遅れが生じているか否かを判定できる。したがって、仮にロックピン34の動作に遅れが生じていると判定される場合には、その要因が摺動抵抗の増加に起因するものであると推定できる。このように、状態判定処理によれば、単にドアロック装置30の異常を把握できるというだけでなく、ドアロック装置30の異常の要因を切り分けることができる。
【0048】
(3)ロックピン34の解錠動作の完了を把握する上で、ドアロックスイッチ38という既存の部品を利用することから、ロックピン34の解錠動作の完了を把握するために例えばロックピン34の動作を監視するカメラを設置する等、新たな特殊部品を追加する必要がない。したがって、ドアロック装置30の異常の把握のために、部品点数が増加することを抑制できる。
【0049】
(4)ソレノイド32及びそれに繋がる電気系統の不具合は、ロックピン34の動作に遅れが生じる要因になる。そのため、この電気系統の状態を把握することは、ドアロック装置30の状態を把握する上で重要である。ロックピン34の解錠動作を行う場合には、ソレノイド32を励磁することから、ソレノイド32のコイル33に流れる電流Aについて情報を得ることができる。したがって、ソレノイド32及びそれに繋がる電気系統の不具合を把握できる。
【0050】
(5)判定部62は、同一車両における複数のドアロック装置30に関する解錠経過時間Hに基づいて規定時間H1を算出している。ここで、同一車両に搭載される複数のドアロック装置30は、それぞれにかかる負荷に応じて劣化度合いがやや異なるものの、全体としては新品状態からの劣化度合いが同程度であると想定される。このような、劣化度合いの似た物同士を比較すべくこれらに基づいて規定時間H1を算出すれば、劣化度合いと切り分けてドアロック装置30の異常の有無を判定できる。また、同一車両のドアロック装置30から規定時間H1を算出すれば、規定時間H1を算出するための実験やシミュレーションを予め行うことが不要であり、これら実験やシミュレーションを行う手間を省くことができる。
【0051】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・規定時間H1の算出方法は上記実施形態の例に限定されない。規定時間H1は、ロックピン34の動作の遅れを判定できる長さであって、鉄道車両が安全に運行する上で支障がない程度の比較的軽微な動作の遅れを判定できる長さであればよい。
【0052】
・規定時間H1の算出に関して、1編成のうちの複数車両や、1編成のうちの全車両のドアロック装置の解錠経過時間Hを基にして当該規定時間H1を定めてもよい。
・規定時間H1の算出に関して、同一車両や1編成の複数車両に搭載されるドアロック装置のうち、全てのドアロック装置の解錠経過時間Hを規定時間H1の算出に利用するのではなく、条件を満たすもののみを選択して規定時間H1を算出してもよい。例えば、複数のドアロック装置の解錠経過時間Hを最短のものから順に並べて上位の複数個を選択し、これら複数個の平均値として規定時間H1を定めてもよい。
【0053】
・規定時間H1の算出に関して、ドアに掛かる負荷の違いが予めわかっている場合には、同じくらいの負荷が掛かるドアのドアロック装置の解錠経過時間Hを基にして当該規定時間H1を定めてもよい。
【0054】
・規定時間H1の算出に関して、実験やシミュレーションによって固定の規定時間H1を予め算出してもよい。
【0055】
・ソレノイド32に係る電気系統の不具合の判定に関して、電源31の電圧V又はソレノイド32に流れる電流Aのいずれか一方のみを利用してもよい。例えば、ソレノイド32に電圧が印加した状態においてソレノイド32に流れる電流Aの時系列を監視し、電流Aの変動が過度に大きい場合、すなわち電流Aが不安定な場合に、ソレノイド32に係る電気系統に不具合があると判定してもよい。
【0056】
・ドアロック装置30の解錠動作に合わせてソレノイド32に係る電気系統の不具合を判定することは必須ではない。つまり、ドアロック装置30の解錠動作に合わせてロックピン34の動作遅れだけを判定してもよい。
【0057】
・ドアロック装置30の施錠動作時に、ドアロック装置30の異常の有無を判定してもよい。ここで、ドアロック装置30を解錠動作させる場合とは異なり、ドアロック装置30を施錠動作させる場合にはソレノイド32が消磁される。つまり、ドアロック装置30を施錠動作させる場合にはソレノイド32に電圧が印加されないことから、ドアロック装置30の施錠動作に際しては電圧V等の電気系統に係る情報は取得できない。したがって、ドアロック装置30の施錠動作に合わせてソレノイド32に係る電気系統の不具合を把握することはできない。しかし、ドアロック装置30を施錠動作させる場合でも、ロックピン34の動作の遅れについては把握することができる。具体的には、ドアロック装置30の施錠動作に関して、当該施錠動作の前段階においてドア10が開状態から閉状態へと動作する間、ソレノイド32は励磁されていてロックピン34はコイル33内に引き戻されている。そして、ドア10が全閉状態になると、ソレノイド32が消磁されてロックピン34が圧縮ばね36の弾性力でコイル33から突出するとともに突出棒37と固定部材45とが係合する。
【0058】
上記の施錠動作を利用してドアロック装置30の異常の有無を判定する場合、ソレノイド32への消磁信号EM2が出力されてから、ロックピン34のコイル33からの突出が完了してドアロックスイッチ38がオンに切り替わるまでの施錠経過時間を、施錠動作用の規定時間と比較すればよい。これによって、ロックピン34の動作の遅れを判定することができる。例えば、ドアロック装置30の施錠動作時と解錠動作時との双方に関して経過時間に係る判定を行えば、少なくともロックピン34の動作の遅れについては、2重で監視することができる。
【0059】
・ドアロック装置30の構成は上記実施形態の例に限定されない。例えば、ロックピン34の動作が、伝達機構を介することなくドアロックスイッチ38に直接伝達される構成でもよい。また、ロックピン34がドア10に直接係合してドア10を施錠するような構成でもよい。
【0060】
・ドアロック装置30の構成を変更することに関して、ソレノイド32が消磁されたときに引っ張りばねによってロックピン34がソレノイド32の内部に引き戻され、ソレノイド32を励磁したときにロックピン34がソレノイド32から突出する構成としてもよい。また、復帰用のばねを用いることなく、ソレノイド32のみでロックピン34の往復動作を駆動するようにしてもよい。
【0061】
・ドアロック装置は、ドア10の開閉を駆動する電動モータ22によってドア10の解錠状態と施錠状態とを制御する構成のものでもよい。こうした構成では、電動モータ22の出力軸を一方向に回転させる駆動信号に応じて、ドアロック装置の解錠動作とドア10の開動作とが一連の動作として行われる。つまり、ドア10が全閉状態であるときに電動モータ22の出力軸が一方向に回転すると、先ず、ドア10が解錠状態となるようにドアロック装置が動作し、それに続いてドア10が開状態とされる。また、電動モータ22の出力軸を他方向に回転させる駆動信号に応じて、ドア10の閉動作とドアロック装置の施錠動作とが一連の動作として行われる。つまり、ドア10が開状態であるときに電動モータ22の出力軸が他方向に回転すると、先ずドア10が閉状態とされ、それに続いてドア10が施錠状態となるようにドアロック装置が動作する。こうしたドアロック装置では、電動モータ22の出力軸を一方向に回転させる駆動信号が、ドアロック装置の解錠動作を駆動させるための駆動信号と、ドア10の開く駆動信号とを兼ねている。また、電動モータ22の出力軸を他方向に回転させる駆動信号が、ドア10を閉じる駆動信号と、ドアロック装置の施錠動作を駆動させるための駆動信号とを兼ねている。
【0062】
ここで、上記のようなドアロック装置における施錠動作では、電動モータ22の出力軸を他方向に回転させる駆動信号が出力されると、先ず、ドア10が閉動作する。このことから、電動モータ22に対する上記の駆動信号が出力されてから、ドアロック装置の施錠動作が完了するまでの経過時間は、ドア10が閉動作している間の経過時間を含んでいる。そこで、ドアロック装置の施錠動作に係る異常の有無を把握する上では、ドア10が閉じたことを検出するドアクローズスイッチ(DCS)の検出信号を利用してもよい。具体的には、駆動信号が出力されてから、ドアロック装置の施錠動作が完了するまでの経過時間とは別に、駆動信号が出力されてから、ドア10が閉じたことをドアクローズスイッチが検出するまでのドア閉経過時間を算出する。そして、ドアロック装置の施錠動作に係る規定時間として実験等により予め定められた施錠用規定時間と、上記のドア閉経過時間とを加算した時間を規定時間として定める。そして、駆動信号が出力されてから、ドアロック装置の施錠動作が完了するまでの経過時間と、規定時間とを比較し、経過時間が規定時間よりも長い場合にドアロック装置に動作遅れがあると判定する。なお、上記経過時間からドア閉経過時間を減じた時間が施錠用規定時間よりも長い場合に、ドアロック装置に動作遅れがあると判定してもよい。
また、上記のようなドアロック装置における解錠動作では、電動モータ22に対する駆動信号が出力されると、ドア10の動作を含むことなくドアロック装置が先ず動作する。したがって、電動モータ22に対する駆動信号が出力されてからドアロックスイッチがオフに切り替わるまでの経過時間を算出することにより、ドアロック装置の解錠動作に係る経過時間を的確に把握できる。したがって、この経過時間に基づいて、ドアロック装置の動作の遅れの有無を判定することができる。なお、ドアロック装置が施錠動作や解錠動作をしている間において電動モータ22に印加される電圧や電動モータ22に流れる電流を検出すれば、電動モータ及びそれに繋がる電気系統の不具合についても把握できる。
【0063】
・ドアロック装置の施錠動作又は解錠動作が完了するタイミングを判別する方法は、ドアロックスイッチを利用したものに限定されない。例えば、カメラによってロックピンの動作を監視することで、ドアロック装置の施錠動作又は解錠動作が完了するタイミングを判別してもよい。
【0064】
・ドアロック装置30の異常を報知するための報知ランプやブザーを例えば運転台に設けてもよい。そして、ロックピン34の動作遅れや、電気系統の不具合等が検出されたときに、報知ランプを点灯させたりブザーを鳴らしたりしてもよい。
【0065】
・鉄道車両の外部に専用のサーバを設け、ドア制御ユニット50から入力される情報を集約して記憶するデータベースとして機能させてもよい。そして、外部回線通信網によってドア制御ユニット50をサーバと接続し、ドアロック装置30の異常の有無や解錠経過時間H等、ドア制御ユニット50からサーバに各種の情報を送るようにしてもよい。
【0066】
・ドア制御ユニット50の記憶部に、当該ドア制御ユニット50が制御するドアロック装置30の異常の有無や、解錠経過時間H等の情報を記憶してもよい。例えば、複数のドア制御ユニット50を互いに情報を授受できるように接続しておけば、規定時間H1の算出に際してデータベース14から情報を読み込む必要はなくなる。
【0067】
・ドアロック装置の状態判定装置として機能させるコンピュータは、ドア制御ユニット50に限定されない。例えば、車両制御装置12や鉄道車両の外部のサーバをドアロック装置の状態判定装置として機能させてもよい。ドアロック装置を駆動させるための駆動信号が出力されるタイミングと、ドアロック装置の動作が完了するまでのタイミングとに関する情報を、状態判定装置として機能させる対象となるコンピュータで取得するようにすれば、当該コンピュータで解錠経過時間や施錠経過時間を算出することができる。そして、状態判定装置として機能させる対象となるコンピュータにおいて、これら解錠経過時間や施錠経過時間が規定時間より長いときに、ドアロック装置に異常が生じていると判定すればよい。すなわち、状態判定装置として機能させる対象となるコンピュータが、算出部及び判定部を有する構成となる。
【0068】
・例えば車両制御装置12を状態判定装置として利用する場合、車両制御装置12が出力する指令信号Wを、ドアロック装置を駆動させるための駆動信号として扱ってもよい。ここで、ドアロック装置が、上記実施形態で示したソレノイドを利用したタイプのものであるとする。この場合、ドア10が全閉状態であるときに車両制御装置12がドア10を開く指令信号Wを出力すると、その指令信号Wを受信したドア制御ユニット50が励磁信号EM1を出力してドアロック装置30を解錠動作させる。そして、ドアロックスイッチ38からのロック信号LSの出力がオフに切り替わり、その情報が車両制御装置12に出力される。この一連の過程において、車両制御装置12は、指令信号Wを出力してから、ロック信号LSがオフに切り替わった情報を取得するまでの経過時間を算出し、その経過時間を規定時間と比較することによって、ドアロック装置30の異常の有無を判定することができる。なお、この場合の規定時間は、車両制御装置12が指令信号Wを出力してからその信号がドア制御ユニット50で受信するまでの経過時間や、ロック信号LSがオフに切り替わったことが車両制御装置12に入力されるまでの経過時間等を考慮した値として設定される。
【0069】
また、上記のように車両制御装置12が出力する指令信号Wをドアロック装置を駆動させるための駆動信号として扱う場合において、ドアロック装置の施錠動作に合わせてドアロック装置の異常の有無を判定する。この場合、ドア10の開状態において、車両制御装置12がドア10を閉じる指令信号Wを出力すると、その指令信号Wを受信したドア制御ユニット50は、先ずドア10を閉動作させる。そして、ドア10が全閉状態になった後、ドア制御ユニット50はドアロック装置30を施錠動作させる。そして、ドアロックスイッチ38からのロック信号LSの出力がオンに切り替わり、その情報が車両制御装置12に出力される。この場合、車両制御装置12が指令信号Wを出力してから、ロック信号LSがオンに切り替わった情報を当該車両制御装置12が取得するまでの経過時間は、ドア10が閉動作している間の経過時間を含んでいる。そこで、車両制御装置12が出力する指令信号Wをドアロック装置の駆動信号として扱う場合においては、上記したドアクローズスイッチの検出信号を利用すればよい。すなわち、ドアクローズスイッチの検出信号を利用して、指令信号Wが出力されてからドアが閉じるまでのドア閉経過時間を算出しておけば、電動モータ22の回転によってドア10の閉鎖とドアロック装置の施錠動作とを駆動する変更例の場合と同様にして、ドアロック装置の施錠動作の遅れの有無を把握できる。
【0070】
・上記変更例のように、車両制御装置12が指令信号Wを出力してからドアロック装置の動作が完了するまでの経過時間に基づいて、ドアロック装置の異常の有無を判定する場合において、鉄道車両の外部のサーバで、上記の経過時間を算出してドアロック装置の異常の有無を判定するようにしてもよい。
【0071】
・ドアは片開きであってもよい。すなわち、片開きのドアをロックするロック装置に関して、当該ドアロック装置の異常の有無を判定してもよい。
【0072】
ドアロック装置の異常を判定する手法は、駆動信号が出力されてから、ドアロック装置の施錠動作又は解錠動作が完了するまでの経過時間に基づいた手法であればよく、経過時間と規定時間とを比較する手法に限定されない。例えば、ドアの開閉毎に取得される経過時間を順に並べていって経過時間の長さの推移(変化の傾向)を監視する。そして、変化の傾向が例えば一定の上昇率を越えたときにドアロック装置に異常が生じていると判定してもよい。また、一つ前のタイミングで取得した経過時間と次のタイミング経過時間との変化の割合が基準値以上であるときにドアロック装置に異常が生じていると判定してもよい。
【符号の説明】
【0073】
12…車両制御装置、30…ドアロック装置、32…ソレノイド、34…ロックピン、38…ドアロックスイッチ、50…ドア制御ユニット、60…状態判定装置、61…算出部、62…判定部。