(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/02 20060101AFI20231005BHJP
D06F 37/04 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
D06F58/02 J
D06F58/02 K
D06F58/02 F
D06F58/02 H
D06F58/02 Z
D06F37/04
(21)【出願番号】P 2019197379
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】本村 隆行
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-030507(JP,A)
【文献】特開2015-192760(JP,A)
【文献】特開2017-012632(JP,A)
【文献】特開2018-196673(JP,A)
【文献】特開2017-074187(JP,A)
【文献】特開2014-039776(JP,A)
【文献】特開2019-050917(JP,A)
【文献】特開2016-165357(JP,A)
【文献】特開2018-068765(JP,A)
【文献】特開2009-142351(JP,A)
【文献】特開2016-036480(JP,A)
【文献】特開2016-073534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0153135(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108368667(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F58/00-58/52
D06F37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気口及び排気口を有する外槽と、
前記外槽内に横軸周りに回転可能に設けられ、周壁に脱水孔群を有するドラムと、
前記外槽の外側において前記給気口と前記排気口との間を連通させるように設けられた循環風路と、
前記ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させるファン装置と、
前記循環風路中に設けられた除湿手段と、を備え、
前記ドラムの周壁において前記排気口と対向する対向面部を、前記脱水孔群を形成しない当該脱水孔群の非形成領域とし、前記排気口の大きさを前記非形成領域に合わせて拡げる構成としたドラム式洗濯機。
【請求項2】
給気口及び排気口を有する外槽と、
前記外槽内に横軸周りに回転可能に設けられ、周壁に脱水孔群を有するドラムと、
前記外槽の外側において前記給気口と前記排気口との間を連通させるように設けられた循環風路と、
前記ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させるファン装置と、
前記循環風路中に設けられた除湿手段と、を備え、
前記ドラムの周壁において、前記脱水孔群は、前記排気口との非対向面部に形成された多数の第1脱水孔からなり、前記排気口と対向する対向面部は、前記第1脱水孔の脱水孔群を形成しない当該第1脱水孔群の非形成領域であって、当該第1脱水孔とは異なる脱水孔として少なくとも当該第1脱水孔より小さく又は単位面積当たりの個数が少ない1個以上の第2脱水孔が形成され、
前記排気口の大きさを前記第1脱水孔群の非形成領域と対応させて拡げる構成としたドラム式洗濯機。
【請求項3】
前記対向面部は、前記ドラムにおける周壁の前側に位置して傾斜した傾斜面であって、前側から奥側へ向かうに従い径大となる向きに傾斜して当該周壁を拡径する傾斜面を持つ請求項1または2記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
前記排気口は、前記ドラムの前記対向面部と対向する前記外槽の周壁にあって、その周壁の周方向における当該排気口の大きさを、当該排気口の前後方向の大きさと同等以上となるように拡げた請求項1から3の何れか一項記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
前記循環風路の一部を構成し、前記排気口に接続される排気ダクトと、
前記排気ダクトを流れる循環風からリントを捕獲するフィルタと、を備え、
前記排気ダクトには、前記排気口から前記フィルタへ向かう途中で屈曲した屈曲部分が設けられるとともに、当該排気ダクトの屈曲部分よりも前記フィルタ側に位置させて蛇腹部が設けられている請求項1から4の何れか一項記載のドラム式洗濯機。
【請求項6】
前記蛇腹部は、その蛇腹状をなす山折部と谷折部との間の面部同士が相互に接触する圧縮状態で前記排気ダクトの一部として組み込まれている請求項5記載のドラム式洗濯機。
【請求項7】
前記フィルタは、水平面に対して所定の傾きを持った傾斜状或いは曲面状をなす請求項5または6記載のドラム式洗濯機。
【請求項8】
前記フィルタの下辺部に水を通すための通水部を設けた請求項5から7の何れか一項記載のドラム式洗濯機。
【請求項9】
前記除湿手段で生じた除湿水或いは前記循環風路内に存する水を受けるドレンタンクを備え、
前記循環風路には、前記フィルタを通った水をドレンタンク内へ流下させるための流下部が設けられている請求項
5から8の何れか一項記載のドラム式洗濯機。
【請求項10】
前記除湿手段で生じた除湿水或いは前記循環風路内に存する水を受けるドレンタンクと、
前記ドレンタンク内の水を排出するドレンポンプと、を備える請求項1から8の何れか一項記載のドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラム式洗濯機として、例えば衣類の洗濯機能と乾燥機能を備えた洗濯乾燥機が知られている。洗濯乾燥機においては、乾燥室として機能する水槽の外側に循環風路を設け、その水槽内の空気を、循環風路を通して送風装置の送風作用により循環させるとともに、当該循環風の除湿と加熱を、ヒートポンプの蒸発器と凝縮器により行う構成としている。
この種のものにおいて、脱水行程ではドラムを高速回転させて洗濯物(衣類)の遠心脱水が行われる。このとき、ドラム内の衣類から脱水された水が、外槽たる水槽の周壁における排気口から循環風路へ浸入して、循環風路中の糸屑捕獲用のフィルタ等を濡らす問題がある。そこで、循環風路において流入側となる排気口側の排気ホースを、その流入側部分と流出側部分とで、夫々の中心を左右方向にずらして、フィルタへの水の浸入を抑制するようにしたものが供されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の排気ホースでは、左右方向にずれた流入側部分と流出側部分との間で圧力損失が生じ、循環風量や流速が低下して、乾燥効率も低下する虞がある。
そこで、脱水時における循環風路への水の浸入を抑制しながらも圧力損失の低減を図ることが可能なドラム式洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のドラム式洗濯機は、給気口及び排気口を有する外槽と、前記外槽内に横軸周りに回転可能に設けられ、周壁に脱水孔群を有するドラムと、前記外槽の外側において前記給気口と前記排気口との間を連通させるように設けられた循環風路と、前記ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させるファン装置と、前記循環風路中に設けられた除湿手段と、を備え、前記ドラムの周壁において前記排気口と対向する対向面部を、前記脱水孔群を形成しない当該脱水孔群の非形成領域とし、前記排気口の大きさを前記非形成領域に合わせて拡げる構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態における洗濯乾燥機の内部を模式的に示す縦断側面図
【
図2】洗濯乾燥機の構成をヒートポンプとともに模式的に示す背面図
【
図3】排気ダクト付近をフィルタとともに示す縦断側面図
【
図5】ドラム周壁における脱水孔群と排気口の位置関係を示す断面図
【
図6】ドラム周壁における脱水孔群と排気口の位置関係を示す横断平面図
【
図9】フィルタ収容部に配置されたフィルタ部分を拡大して示す平面図
【
図10】第2実施形態のドラム周壁における第2脱水孔を第1脱水孔とともに示す図
【
図11】第3実施形態の排気口の形態を表す横断平面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示す洗濯乾燥機1は、ドラム10内の衣類を洗濯する洗濯機としての機能と、ドラム10内の衣類を乾燥する衣類乾燥機としての機能を備えた、いわゆる横軸型のドラム式洗濯機である。
【0008】
洗濯乾燥機1において外郭をなす外箱2は、矩形箱状をなしている。外箱2の前面部2aは、やや前下がりの傾斜状に形成されており、前面部2aには、図示しない洗濯物出入口を開閉する扉3が設けられている。詳しい図示は省略するが、外箱2における天板部2bの前部には、電源オンオフキーや表示部を備えた操作パネル4(
図1参照)が設けられている。前記表示部は、ユーザのタッチ操作を受け付けるタッチパネルを有し、ユーザに対する種々の表示や、運転コース等の設定を行うことができる。
【0009】
図1、
図2に示すように、外箱2の内部には、ドラム10と、このドラム10を収容する水槽7が設けられている。ドラム10は、内部に衣類を収容することが可能な有底円筒状をなす回転槽であり、水槽7は、水を溜めることが可能な有底円筒状をなす外槽である。
【0010】
水槽7は、その軸線が前後方向を向く横向きで、且つやや前上がりの傾斜状態で、図示しないサスペンションにより弾性的に支持されている。水槽7の前面開口部は、ベローズ7aを介して前記洗濯物出入口に接続されている。図示は省略するが、外箱2内の上部には、水槽7内へ給水するための給水機構が設けられており、この給水機構は、給水ホースを介して水道の蛇口に接続されている。
【0011】
水槽7の後側底部には排水口7bが設けられている。排水口7bには、排水弁8を介して排水管9が接続されている。排水弁8が閉鎖された状態で前記給水機構から水槽7内に水が供給された場合、その水は水槽7内に貯留される。排水弁8が開放されることに伴い、水槽7内に貯留されていた水は、排水管9を通して機外へ排出される。
【0012】
ドラム10は、水槽7と同様に、軸線が前後方向を向く横向きで、且つやや前上がりの傾斜状態で配置されている。ドラム10の前面開口部は、水槽7の前面開口部及び洗濯物出入口に連通しており、扉3を開放することで、洗濯物出入口から、水槽7とドラム10の各前面開口部を通してドラム10に対して衣類を出し入れすることができる。ドラム10には、
図1に示すように多数の脱水孔10aが設けられている。なお、脱水孔10aは、洗濯運転時には通水用の孔部、乾燥運転時には通風孔の孔部として機能する。
【0013】
水槽7の背面側には、例えばDCブラシレスモータからなるドラムモータ11が設けられている。ドラムモータ11の回転軸は、水槽7の背面を貫通してドラム10の背面に連結されており、ドラム10は、ドラムモータ11により直接回転駆動される。この場合、ドラム10は、後述する脱水行程において、正転方向つまり正面から見て時計回り方向(
図4の矢印B方向)に連続回転され、洗い行程やすすぎ行程において、正転と反転が繰り返される。
【0014】
図1に示すように、水槽7における前側上部の右寄り部位には、空気を排出するための排気口12が設けられ、
図2に示す背面側上部の左寄り部位には、乾燥風を供給するための給気口13が設けられている。そして、
図1、
図2に示すように、外箱2内部には、水槽7の外側において給気口13と排気口12との間を連通させる循環風路15が設けられている。循環風路15は、その入口側が水槽7の排気口12に接続され、出口側が給気口13に接続されている。
【0015】
具体的には、循環風路15は、排気ダクト16、フィルタダクト17、後部排気ダクト18、ヒートポンプダクト19、及び給気ダクト20をこの順に連通接続したダクトとして構成されている。
図1、
図3、
図4等に示すように、排気ダクト16は、その下端部が排気口12に接続され、上端部が蛇腹部21を介してフィルタダクト17の入口部に接続されている。フィルタダクト17は、外箱2内の右側上部を後方に延びて設けられ、その後端部に、後部排気ダクト18の上端部が接続されている。フィルタダクト17内には、乾燥風から糸くず等のリントを捕獲するためのリントフィルタ22が設けられている。排気ダクト16及びフィルタダクト17の詳細については後述する。
【0016】
図2に示すように、後部排気ダクト18は、水槽7の後方を下方に延び、その下端がヒートポンプダクト19の右端部(同図で左端側)に接続されている。ヒートポンプダクト19は、外箱2下部の後方寄りの位置にて右左方向に延び、その左端側(同図で右端側)にファン装置23が設けられている。ファン装置23は、例えばファンケーシング24内に遠心ファン23a及びこれを駆動するファンモータ23bを備えている。ファンケーシング24の出口部に、給気ダクト20の下端部(基端部)が接続されている。給気ダクト20は、外箱2内の左側に位置して水槽7後方を上方に延び、その上端部(先端部)が前記給気口13に接続されている。
【0017】
図2に示すように、ヒートポンプダクト19内には、ヒートポンプ26を構成する蒸発器27と凝縮器28が右左(同図で左右)に順に位置して配置されている。ヒートポンプ26は、圧縮機29と、凝縮器28と、減圧手段たる絞り弁30と、蒸発器27とを、冷媒配管31によりサイクル接続した冷凍サイクルとして構成されており、封入された冷媒は冷媒配管31を循環する。ヒートポンプ26において、凝縮器28は乾燥風を加熱する加熱手段として機能し、蒸発器27は乾燥風から湿気を除去する除湿手段として機能する。
【0018】
即ち、ヒートポンプ26は、乾燥運転時に圧縮機29が駆動されることにより、圧縮機29から吐出された高温高圧の冷媒が凝縮器28に流入し、凝縮器28で放熱して凝縮される。凝縮器28で液化した冷媒は、絞り弁30を通って減圧され、蒸発器27に流入する。蒸発器27での熱交換により気化した冷媒は、圧縮機29に戻され、再び圧縮機29にて圧縮され高温高圧となって吐出されるという循環が行われる。
【0019】
上記したヒートポンプ26の駆動とともに、ファン装置23が駆動されることにより、
図1、
図2に矢印Aで示すように、水槽7(ドラム10)内の空気が、排気口12から排気ダクト16、フィルタダクト17、後部排気ダクト18を通ってヒートポンプダクト19に至る。このとき、フィルタダクト17を通る空気は、これに含まれる糸くず等がリントフィルタ22により捕獲される。
【0020】
また、後部排気ダクト18を通った空気は、ヒートポンプダクト19内を流れて蒸発器27及び凝縮器28を順に通った後、給気ダクト20に流れ、給気口13及び脱水孔10aを通ってドラム10内に供給されるという循環が行われる。こうして、ドラム10内の衣類から湿気を奪って多量の蒸気を含んだ空気が、ヒートポンプダクト19内の蒸発器27部分を通って冷却されることにより、蒸気が凝縮されて除湿され、その除湿空気が凝縮器28部分を通ることにより加熱されて乾いた温風となり、再びドラム10内に供給され、衣類の乾燥に供される。
【0021】
図1、
図2に示すように、ヒートポンプダクト19の底部には、ドレンタンク32が設けられるとともに、ドレンポンプ33が付設されている。ドレンタンク32は、蒸発器27で除湿した除湿水、或いは循環風路15内に存する水を受けて貯留するドレンパンとして構成されている。ドレンポンプ33は、その駆動によりドレンタンク32内の水(前記除湿水を含む)を機外へ排出するようになっている。
【0022】
図示は省略するが、ヒートポンプ26や循環風路15の要部には、冷媒の温度や乾燥風の温度を検出するための複数個の温度センサ群が設けられている。
図1に示す洗濯乾燥機1の動作全般を制御する制御装置34は、温度センサ群の検出温度に基づいてヒートポンプ26及びファン装置23を駆動するとともに、ドラム10を一方向に回転させることにより、乾燥運転を実行する。また、制御装置34は、乾燥運転の実行後にドレンポンプ33を駆動し、又、洗濯運転のみ実行した場合でも、当該洗濯運転の脱水行程終了後にドレンポンプ33を駆動することにより、ドレンタンク32内の水を機外へ排水する構成とされている。
【0023】
本実施形態では、ドラム10の周壁35において、前記排気口12と対向する対向面部35Bを脱水孔10a群の非形成領域とし、排気口12の大きさを非形成領域に合わせて拡げる構成としている。係る構成について、
図5、
図6も参照しながら詳述する。なお、
図6に示す二点鎖線120は、排気口12の後端を通る接線であり、ドラム10の中心軸線に対して直交するものとする。
【0024】
ドラム10の周壁35は、全体として円筒状をなしており、当該周壁35における二点鎖線120よりも前側の領域を対向面部35B、その余の領域を非対向面部35Aとする。
即ち、
図5、
図6に示すドラム10の周壁35において、非対向面部35Aは、その径方向外側にて排気口12と対向しない部分であり、前記非形成領域以外の領域に相当する。脱水孔10a群は、非対向面部35Aの略全域にわたって所定間隔で或いは周知の配列をなすピッチ(後述する
図10の配列ピッチPa)で形成された、多数の脱水孔10aからなる。脱水孔10aは、
図6に示すように何れも同径Daの丸孔で、非対向面部35Aたる周壁35を貫通する。なお、
図5では説明の便宜上、周壁35の断面部分でのみ脱水孔10aを表しているが、脱水孔10aは、周壁35の全周にわたって形成されるものとする。
【0025】
これに対し、ドラム10の周壁35における対向面部35Bは、脱水孔10a群の非形成領域として、一つの脱水孔10aも形成されていない。対向面部35Bは、その径方向外側において排気口12と対向する、ドラム10周壁35の前側部分にある。
【0026】
図5に示すように、対向面部35Bの位置するドラム10の前側部分は、当該前端側が若干径小となるように窄ませた形状となっており、当該前端側に、前カバー36を取着している。図示は省略するが、前カバー36の中央部には、前記洗濯物出入口に連通する当該ドラム10の前面開口部が設けられている。また、対向面部35Bは、前記の窄ませた部分、つまり、前カバー36の直ぐ裏側から奥側へ向かうに従い次第に径大となるように拡径する傾斜面37を持たせている。
【0027】
対向面部35Bは、その傾斜面37により当該対向面部35Bと非対向面部35Aとが断面「へ」字状をなすような、比較的緩やかな傾斜でもって非対向面部35Aに連ねられている(
図5参照)。よって、脱水行程においてドラム10を高速回転させるとき、ドラム10内の前側に位置する衣類から脱水された水は、対向面部35Bの傾斜面37を伝って奥側の非対向面部35Aへ至り、その非対向面部35Aの脱水孔10aから流出する。それ故、脱水行程において、脱水孔10aが形成されていない対向面部35Bであっても傾斜面37の存在により支障なく脱水することが可能でありながらも、衣類から脱水された水がドラム10の脱水孔10aから水槽7の排気口12へ直接向かうことがない。
【0028】
図4、
図6に示すように、排気口12は、ドラム10の対向面部35Bと対向する水槽7の周壁7cにあって、その周壁7cにおける前側上部の右寄り部位に設けられている。排気口12は、水槽7の周方向に長い長円状に開口し、当該周方向の大きさL2と前後方向の大きさL1とを拡げ、開口面積が極力大きくなるように形成されている。
【0029】
具体的には、
図6の平面視において、排気口12の前後方向の大きさL1は、水槽7前端部から二点鎖線120の位置にわたり、個々の脱水孔10aが排気口12から覗かない長さに設定されている。この場合、排気口12は、対応する対向面部35Bをより緩やかな傾斜面37となるように拡げること、つまり脱水孔10a群の形成領域を奥方(後方)へ狭めることに伴い、二点鎖線120を奥方へずらして、前後方向の大きさL1を拡げることが可能である。
【0030】
水槽7の周方向における排気口12の大きさL2(
図4の矢印B方向の長さ)は、L1よりも大きくなるように設定されることで(L2>L1)、排気口12は長円状をなしている。このように、排気口12の前記周方向の大きさL2を、前後方向の大きさL1と同等以上(L2≧L1)となるように拡げたとしても、対向面部35Bとの関係で、脱水時における当該排気口12への水の浸入量を増加させることがなく、L1,L2を大きくした分、圧力損失の低減を図ることができる。
【0031】
図3、
図4に示すように、排気ダクト16は、排気口12の大きさL1,L2に対応する断面長円状をなすとともに、その排気口12からフィルタダクト17へ向かう途中に屈曲部分16bが設けられている。
【0032】
排気ダクト16は、
図3に示すように、排気口12から上方に延びる下半部16aと、前記蛇腹部21が設けられた上半部16cと、それら下半部16aの中心軸線161及び上半部16cの中心軸線162が相互に鈍角をなすように屈曲した屈曲部分16bと、が連なる構成とされている。これにより、排気ダクト16において、その下半部16aはドラム10の径方向に対して交差する方向である上下方向を指向し(
図4参照)、屈曲部分16bは、フィルタダクト17へ向かうに従い上側へ向かうように蛇腹部21を傾斜させている。
【0033】
蛇腹部21は、ゴム等の可撓性を有する材料からなり、
図7に示すように、両端部の接続口21a,21bの間に、複数の山折部38及び谷折部39が中心軸線162方向に沿って交互に繰り返される形状を有し、全体として蛇腹状をなしている。
山折部38は、蛇腹部21の外周面側で折り曲げられた部分であり、山折部38の頂点は、両接続口21a,21bの内周面よりも外側へ突出している。谷折部39は、蛇腹部21の内周面側で折り曲げられた部分であり、谷折部の頂点は、両接続口21aの内周面よりも内側へ突出している。
【0034】
図7は、蛇腹部21の自然状態として外力、特には中心軸線162方向の外力が加えられていない状態を示している。蛇腹部21は、自然状態において山折部38の頂点と谷折部39の頂点との間の面部40同士が相互に離間している。蛇腹部21は、中心軸線162方向の外力が加えられると、圧縮されて
図7の自然状態から
図8の圧縮状態になり、山折部38の頂点と谷折部39の頂点との間の面部40同士が相互に接触する。即ち、蛇腹部21を圧縮状態とすることにより、複数の谷折部39の頂点が相互に近づき、蛇腹部21の内周面は、複数の谷折部39が密に隣接した略面状の内周面となる(
図8参照)。このように、山折部38の頂点と谷折部39の頂点との間の面部40同士が完全に或いは殆ど密着するほど蛇腹部21が圧縮された状態で循環風路15に組み込まれているものとする。
【0035】
これにより、蛇腹部21は、ドラム10に衣類が投入されていないとき或いは水槽7内に給水されていないとき、係る圧縮状態を維持する。このため、蛇腹部21の内面において水が残留し難い構成となり、蛇腹部21に残留した水分に起因するカビの発生や凍結等を抑制しうる。なお、洗い行程やすすぎ行程では、ドラム10内に投入された衣類と水槽7内に給水された多量の水の存在により水槽7が下方に沈み込み、蛇腹部21が圧縮状態から開放されることとなる。従って、洗い行程やすすぎ行程はもとより脱水行程においても、充分な振動吸収効果を発揮することが可能となる。また、脱水行程後に乾燥行程が実行されるとき、蛇腹部21は、脱水行程での脱水により山折部38の頂点と谷折部39の頂点との間の面部40同士が密着状態に近づくことで(内周面が面状に近づくことで)、当該内周面の蛇腹形状による圧力損失を抑制し、循環風量の低下や騒音をも抑制しうる。
【0036】
前記フィルタダクト17は、
図3に示すように全体として前後に長い角筒状をなしている。フィルタダクト17の前部には、フィルタ装置41が設けられており、その前側に排気ダクト16(蛇腹部21)の接続部21bが接続されている。フィルタダクト17は、後方に向けて緩やかに下降傾斜していて、後下端部が後部排気ダクト18の上端部に接続されている。
【0037】
フィルタ装置41は、前記リントフィルタ22がフィルタダクト17内の風路を仕切るようにして収容されるフィルタ収容部42を備える。
図9に示すように、リントフィルタ22は例えば、合成樹脂製の枠体43と、その枠体43の開口を塞ぐように設けられる不織布製のフィルタ体44とを備える。リントフィルタ22は、水平面に対し所定傾きを持った傾斜状或いは曲面状(例えば
図3の側面図で円弧状)をなすとともに、フィルタ収容部42の後下隅側に凸の湾曲板状に形成されている。
【0038】
図3、
図9に示すように、フィルタ収容部42には、リントフィルタ22における枠体43の上辺部を係止する上側係止部42bと、枠体43の下辺部を係止する下側係止部42cとが設けられている。リントフィルタ22は、上側係止部42bと下側係止部42cとに対し、枠体43の上辺部と下辺部とが夫々着脱可能に係止されて隙間無く嵌合する。また、枠体43の下辺部には、通水部としての小孔43aが当該下辺部に沿って複数設けられている(
図9参照)。
【0039】
係るリントフィルタ22において、複数の小孔43aは、枠体43を板厚方向へ貫通し且つフィルタダクト17を通る空気の流れ(矢印A方向)と略直交する向きで配置される。また、リントフィルタ22における枠体43の下辺部つまり複数の小孔43aが形成された部分は、
図3に示すフィルタ収容部42の底部42aの前端側に位置することから、小孔43aは水分だけを通し易いものといえる。なお、フィルタ収容部42の底部42aをフィルタダクト17の底部42aとも称し、当該ダクト17における底部42aよりも後方側の底部17aと区別する。
【0040】
なお、
図1にも示すように、外箱2の天板部2bにおけるフィルタ装置41に対応する部位には、フィルタカバー45が設けられている。フィルタカバー45には、図示しない手掛け部が設けられており、手掛け部に手指を掛けてフィルタカバー45を開放することにより、リントフィルタ22を掃除することが可能となる。
【0041】
図3に示すように、フィルタダクト17において前後方向に延びる一続きの底部42a,17aは、夫々後方に向けて緩やかに下降傾斜した流下部とされている。従って仮に、排気ダクト16側から水が浸入し、リントフィルタ22に達したとしても、その水はリントフィルタ22表面を伝って下辺側の小孔43aから、底部42aへ流れ落ちる。こうして流れ落ちた水は、フィルタダクト17の底部42a,17aを順に流下し、後部排気ダクト18を通して、ヒートポンプダクト19底部へ至り、ドレンタンク32にて受けられる。
【0042】
以上説明した本実施形態の洗濯乾燥機1では、ドラム10の周壁35において水槽7の排気口12と対向する対向面部35Bを、脱水孔10a群を形成しない当該脱水孔10a群の非形成領域とし、排気口12の大きさを前記非形成領域と対応させて拡げる構成とした。
これによれば、例えば脱水行程でドラム10を比較的高速度で回転させても、ドラム10の径方向において脱水孔10aと水槽7の排気口12とが対向しないため、衣類から脱水された水がドラム10の脱水孔10aから水槽7の排気口12へ直接向かうことがなく、循環風路への水の浸入を抑制することができる。また、排気口12を、ドラム10における脱水孔10a群の非形成領域と対応する範囲で拡げるものとすれば、循環風路への水の浸入を抑制しながらも、排気口12を拡げた分、圧力損失を低減させることができ、乾燥効率を向上させることができる。
【0043】
対向面部35Bは、ドラム10における周壁35の前側に位置して傾斜した傾斜面37であって、前側から奥側へ向かうに従い径大となる向きに傾斜して当該周壁35を拡径する傾斜面37を持つ。これによれば、例えば脱水行程の遠心脱水により衣類から脱水された水は、対向面部35Bの傾斜面37を伝って奥側の非対向面部35Aへ至り、その非対向面部35Aの脱水孔10aから流出させることができる。よって、ドラム10の対向面部35Bにおいて、脱水孔10aが無くても衣類の脱水に支障を来さないようにすることができる。
【0044】
排気口12は、ドラム10の対向面部35Bと対向する外槽(水槽7)の周壁35にあって、その周壁35の周方向における当該排気口12の大きさL2を、当該排気口12の前後方向の大きさL1に対して同等以上(L2≧L1)となるように拡げた。これによれば、排気口12を大きくしたものにおいて、ドラム10の対向面部35Bと対向する限られたスペースで、排気口12の開口面積を極力拡げることが可能となる。
【0045】
排気ダクト16には、排気口12からリントフィルタ22(以下「フィルタ22」と略す)へ向かう途中で屈曲した屈曲部分16bが設けられるとともに、当該排気ダクト16の屈曲部分16bよりもフィルタ22側に位置させて蛇腹部21が設けられている。これによれば、排気ダクト16の屈曲部分16bよりも排気口12側に位置させて蛇腹部21を設けたものよりも、排気口12から離れた分だけ蛇腹部21への水の浸入を抑制することができ、蛇腹部21におけるカビ等の発生や凍結を抑制することができる。
【0046】
蛇腹部21は、その蛇腹状をなす山折部38と谷折部39との間の面部40同士が相互に接触する圧縮状態で排気ダクト16の一部として組み込まれている。これによれば、蛇腹部21において、内周面を面状に近づけて水が残留し難いものとすることができ、残留した水分に起因するカビの発生や凍結等を抑制しうる。なお、上記のように、乾燥行程における蛇腹部21の圧縮度を、山折部38の頂点と谷折部39の頂点との間の面部40同士が密着状態に近づくように設定することで、蛇腹部21内周面の蛇腹形状による圧力損失つまり循環風への抵抗を抑制し、循環風量の低下や騒音をも抑制することができる。
【0047】
フィルタ22は、水平面に対して所定の傾きを持った傾斜状或いは曲面状をなすことから、当該フィルタ22へ水が浸入し或いは結露が生じたとしても、これを傾斜面或いは曲面を伝って流下させ易くできる。このため、フィルタ22に付着した水の滞留が原因となってカビや雑菌が発生したり、フィルタの掃除に手間がかかったりする不具合を軽減することができる。
【0048】
フィルタ22の下辺部に水を通すための通水部として例えば複数の小孔43aを設けた。これによれば、フィルタ22へ水が浸入し或いは結露が生じたとしても、フィルタ表面から下辺部の通水部を通して流下させることができ、上記した不具合を解消することができる。なお、通水部は、複数の小孔43aに限らず、スリット状に形成する等、通水部の形状や個数等を適宜変更してもよい。
【0049】
除湿手段で生じた除湿水或いは循環風路15内に存する水を受けるドレンタンク32を備え、循環風路15には、フィルタ22を通った水をドレンタンク32内へ流下させるための流下部が設けられている。例えば流下部として、上記の如く下降傾斜したフィルタダクト17の底部42a,17aを含む構成とすることにより、フィルタ22を通った水を当該底部42a,17aからドレンタンク32内へと導くことができ、循環風路15内に水が滞留することを抑制することができる。また、ドレンタンク32内の水を排出するドレンポンプ33を設けることにより、ドレンポンプ33を駆動させて、ドレンタンク32内の水を機外へ排出することが可能となる。
【0050】
図10、
図11は、本発明の第2、第3実施形態を示している。以下では、上記した実施形態と実質的に異なる点について述べることとする。
図10に示す第2実施形態のドラム10の周壁35には、対向面部35Bに脱水孔10b群が設けられている。説明の便宜上、係る対向面部35Bにおける個々の脱水孔10bを「第2脱水孔10b」、上記した非対向面部35Aにおける個々の脱水孔10aを「第1脱水孔10a」と称し、両脱水孔10a,10bを区別する。
【0051】
即ち、ドラム10の対向面部35Bには、第1脱水孔10aとは異なる第2脱水孔10bが複数設けられている。第2脱水孔10bは、
図10に示すように何れも同径Dbの丸孔で、対向面部35Bたる周壁35を貫通する。第2脱水孔10bの径寸法Dbは、例えば第1脱水孔10aの径寸法Daを標準的な値としたとき、その標準的な値よりも小さい値に設定されている(Db<Da)。また、第2脱水孔10bは、対向面部35Bの略全域にわたるように所定間隔で配置されており、その配列ピッチPbは、第1脱水孔10aの配列ピッチPaよりも大きくなるように設定されている(Pb>Pa)。よって、複数の第2脱水孔10bからなる第2脱水孔10b群は、第1脱水孔10a群よりも単位面積当たりの個数が少ないものといえる。
【0052】
従って、本第2実施形態のドラム10において、対向面部35Bの第2脱水孔10bは、水槽7の排気口12と対向するものの、第1脱水孔10aに比して循環風路15内への水の浸入量を少なくすることができるものといえる。なお、第2脱水孔10bは、少なくとも第1脱水孔10aより小さく又は単位面積当たりの個数が少なくなるように形成されていればよく、何れにしても、排気口12から循環風路15内への水の浸入量を少なくすることができる。
【0053】
図11に示す第3実施形態の排気口12´は、水槽7の周方向における当該排気口12の大きさL2´を、前後方向と同じ大きさL1となるように設定することで(L2´=L1)、円形状をなしている。この場合、排気ダクト16´は、排気口12´に合わせた横断面円形状をなす円筒状のダクトが用いられる。
【0054】
このように、排気口12´を円形状或いは略円形状に形成したとしても、その全体の大きさL2´(=L1)を、対向面部35Bに対応させて開口面積が極力大きくなるように設定することで、圧力損失の低減を図ることができる等、上記した実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
本発明は上記し且つ図面に示した各実施形態に限定されるものではなく、上記した各実施形態あるいは変形例を組み合わせたり、構成の一部を省略する等、適宜変更して実施し得るものである。
ドラム10の対向面部35Bにおける脱水孔は
図10の第2脱水孔10bに限らず、第1脱水孔10aに比して排気口12への水の浸入を抑制可能な形態の脱水孔であればよく、第1脱水孔10aと径寸法のみを異ならせてもよい。また、排気口12を拡げることに伴い、対応する対向面部35Bを拡げるとき、つまり例えば
図10中、排気口12後端の接線120を右側(ドラム10の奥方)へずらすとき、前列の第1脱水孔10bに対し、当該接線120が接し或いは重畳する位置まで排気口12を前後方向に大きくしてもよい。
【0056】
対向面部35Bは、全体として傾斜した傾斜面37をなすように形成したが、対向面部35Bのうちの一部を傾斜させた段付き状に形成する等、形状を変更してもよい。また、フィルタ22を通った水をドレンタンク32内へ流下させるための流下部は、フィルタダクト17において下降傾斜した底部42a,17aを含むものとしたが、例えばフィルタダクト17の底部に溝部や管部を設け(何れも図示せず)、その溝部や管部を流下部としてドレンタンク32内へ水を流下させるようにしてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
図面中、1は洗濯乾燥機(ドラム式洗濯機)、7は水槽(外槽)、10はドラム、10aは第1脱水孔、10bは第2脱水孔、12,12´は排気口、13は給気口、15は循環風路、16,16´は排気ダクト、16bは屈曲部分、21は蛇腹部、22はリントフィルタ(フィルタ)、23はファン装置、27は蒸発器(除湿手段)、32ドレンタンク、33はドレンポンプ、35は周壁、35Aは非対向面部、35Bは対向面部、37は傾斜面、38山折部、39は谷折部、40は面部、43aは小孔(通水部)、を示す。