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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】電気化学デバイス用粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0236 20160101AFI20231005BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20231005BHJP
   C04B 35/453 20060101ALI20231005BHJP
   C25B 15/00 20060101ALI20231005BHJP
   G01N 23/2252 20180101ALI20231005BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20231005BHJP
【FI】
H01M8/0236
C01G51/00 A
C04B35/453
C25B15/00 302Z
G01N23/2252
H01M8/12 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019199939
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072247
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】平田 宜寛
(72)【発明者】
【氏名】米田 稔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】深水 則光
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-160427(JP,A)
【文献】特開2017-202959(JP,A)
【文献】国際公開第2017/131176(WO,A1)
【文献】特開2017-139183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86- 4/98
H01M 8/00- 8/0297
H01M 8/08- 8/2495
C25B 1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイス用粉体の製造方法であって、
該製造方法は、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合してAl含有原料混合物を得る第一工程と、
該Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る第二工程と、
該焼成物を粉砕して、粉体を得る第三工程とを含み、
該電気化学デバイス用粉体は、下記式(1);
Zn Mn Co (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とする
ことを特徴とする電気化学デバイス用粉体の製造方法。
【請求項2】
電気化学デバイス用粉体であって、
該粉体は、下記式(1);
ZnMnCo (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物の粉体であって、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含み、
該粉体を加圧成型し、1000℃で加熱して得られる密度が4.0~4.5g/cmの焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域の個数が10個以下である
ことを特徴とする電気化学デバイス用粉体。
【請求項3】
前記粉体を加圧成型して得られる密度が2.8~3.2g/cmの成型体を1000℃で加熱した場合における収縮率が10~14%であることを特徴とする請求項に記載の電気化学デバイス用粉体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学デバイス用粉体の製造方法に関する。より詳しくは、固体酸化物形燃料電池および固体酸化物形電気分解セル等のセル間接続部材の保護層等の原料として用いられる粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料から電気へのエネルギー源の転換が進んでおり、電気化学デバイスである電池の利用の拡大が進んでいる。電池の中でもクリーンなエネルギー源として燃料電池が注目され、中でも、電解質としてイオン伝導性を有する固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)は発電効率に優れるために特に注目されている。SOFCは、作動温度が800℃~1000℃程度と高く、排熱を利用することができる上に、炭化水素および一酸化炭素ガス等、様々な燃料を利用することができるため、家庭用から大規模発電まで幅広い活用が期待されている。
【0003】
SOFCセルは、通常、空気極(カソ-ド)と燃料極(アノード)とこれらの間に介在する電解質層とを有しており、その両端をセル間接続部材で挟み込んだ構造を有している。セル間を電気的に接続し、かつ、空気ガスと燃料ガスとの隔壁としての役割をもつセル間接続部材としてはCrを含む合金が用いられているが、作動時に高温下にさらされることでCr蒸気が発生し、これにより空気極が被毒され、性能が低下することが問題となっている。この問題の対策として、セル間接続部材の合金の表面を導電性の金属酸化物でコーティングすることにより、性能の低下を抑制する方法が種々検討されており、Crを含有する合金からなる基材上に、Zn(CoMn1-x(0<x<1)を含む保護膜を形成した燃料電池用セル間接続部材や、Tiを含有するステンレス合金を基材とし、Alを含有するスラリーを用いて基材に塗膜を形成し、熱処理をして基材の表面に保護膜を形成するセル間接続部材の製造方法等が提案されている(特許文献1、2参照)。また、所定の組成のフェライト系ステンレス鋼を基材とし、その表面に所定の粒径のオーステナイト相を有する組織が形成された固体酸化物形燃料電池用セパレータが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-216508号公報
【文献】特開2018-160427号公報
【文献】特開2018-131643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したとおり、セル間接続部材には、セル間を電気的に接続する優れた導電性とともに、固体酸化物形燃料電池に用いた場合の空気極の被毒を抑制できるものであることが求められている。上記特許文献1~3のセル間接続部材や固体酸化物形燃料電池用セパレータはいずれも空気極の被毒を抑制するために基材の表面に保護層を形成したものであり、保護層の形成方法として、基材に塗膜を湿式成膜し、熱処理を施すことで微粉末を焼結させて基材の表面に保護層を形成する方法が記載されているが、保護層を形成する過程で塗膜の収縮による割れが発生し、Cr蒸気による空気極の被毒を十分に抑制できるセル間接続部材とならないことが課題となっている。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、製造過程での塗膜の収縮が緩和され、導電性に優れた燃料電池のセル間接続部材の保護層の形成に適した材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、製造過程での塗膜の収縮が緩和され、導電性に優れた燃料電池のセル間接続部材の保護層の形成に適した材料について検討した。そして、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合してAl含有原料混合物を得る第一工程、該Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る第二工程、及び、該焼成物を粉砕して、粉体を得る第三工程を含む製造方法により得られた粉体を燃料電池のセル間接続部材の保護層を形成する材料として用いると、該粉体を基材に塗布して塗膜を形成した後の熱処理工程で塗膜の収縮を緩和し、割れを抑制して導電性に優れた、セル間接続部材の保護層を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合してAl含有原料混合物を得る第一工程と、該Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る第二工程と、該焼成物を粉砕して、粉体を得る第三工程とを含むことを特徴とする電気化学デバイス用粉体の製造方法である。
【0009】
上記電気化学デバイス用粉体は、下記式(1);
ZnMnCo (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とすることが好ましい。
なお、本明細書中、主成分とは、上記電気化学デバイス用粉体に80質量%以上含まれる成分を意味し、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上含まれる成分を意味する。
【0010】
本発明はまた、電気化学デバイス用粉体であって、該粉体は、下記式(1);
ZnMnCo (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物の粉体であって、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含み、
該粉体を加圧成型し、1000℃で加熱して得られる密度が4.0~4.5g/cmの焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域の個数が10個以下であることを特徴とする電気化学デバイス用粉体でもある。
【0011】
上記粉体を加圧成型して得られる密度が2.8~3.2g/cmの成型体を1000℃で加熱した場合における収縮率が10~14%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電気化学デバイス用粉体の製造方法により製造された粉体は、焼結時の収縮が緩和され、高い開気孔率と高い導電率とを有する保護層を形成することができる。このため本発明の製造方法は、保護層の割れやクラックの発生に起因する特性の低下が抑制されたセル間接続部材の形成を可能とする保護層の材料として好適な粉体の有用な製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1で得られた粉体のX線回折チャートを示した図である。
図2】実施例1で得られた粉体について、Al偏在領域の数の測定方法に従って作製した成型体の断面のSEM画像を示した図である。
図3】比較例1で得られた粉体について、Al偏在領域の数の測定方法に従って作製した成型体の断面のSEM画像を示した図である。
図4】実施例1で得られた粉体について、Al偏在領域の数の測定方法に従って作製した成型体の断面の、エネルギー分散型X線検出器を用い、Al-Kαの特性X線の強度に基づいて明暗が強調されたマッピング画像を示した図である。
図5】比較例1で得られた粉体について、Al偏在領域の数の測定方法に従って作製した成型体の断面の、エネルギー分散型X線検出器を用い、Al-Kαの特性X線の強度に基づいて明暗が強調されたマッピング画像を示した図である。
図6図4のマッピング画像において、5以上の絶対強度を有する画素と、5未満の絶対強度を有する画素とを区分けして、二値化されたマッピング画像を示した図である。
図7図5のマッピング画像において、5以上の絶対強度を有する画素と、5未満の絶対強度を有する画素とを区分けして、二値化されたマッピング画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0015】
1.電気化学デバイス用粉体の製造方法
本発明の電気化学デバイス用粉体の製造方法(以下、本発明の製造方法と記載する)は、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合してAl含有原料混合物を得る第一工程、該Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る第二工程、及び、該焼成物を粉砕して、粉体を得る第三工程を含む。
【0016】
上記第一工程において用いるMn原料、Co原料、Zn原料およびAl原料は、これらの元素の単体又は化合物であればよく、化合物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩酸塩、硫酸塩の1種又は2種以上を用いることができる。
【0017】
上記第一工程において、目的物の収率向上と経済性とを考慮すると、Zn原料とMn原料との混合割合は、Mn原料が含むMn元素1molに対して、Zn原料が含むZn元素が0.90~1.10molとなる割合であることが好ましい。より好ましくは、0.95~1.05molとなる割合であり、更に好ましくは、0.98~1.02molとなる割合である。
また、Mn原料とCo原料との混合割合は、Mn原料が含むMn元素1molに対して、Co原料が含むCo元素が0.90~1.10molとなる割合であることが好ましい。より好ましくは、0.95~1.05molとなる割合であり、更に好ましくは、0.98~1.02molとなる割合である。
【0018】
上記第一工程において、Al含有原料混合物を得るために使用するAl原料の量は、Mn原料が含むMn元素1molに対して、Al原料を含むAl元素が3.6~13.5mol%となる量であることが好ましい。このような割合で用いることで、得られる電気化学デバイス用粉体の焼結時の収縮率が低くなり、この粉体により形成されたセル間接続部材の保護層は、クラックの発生が抑制され、かつ導電性により優れたものとなる。より好ましくは、4.5~11.7mol%となる量であり、更に好ましくは、7.2~9.9mol%となる量である。
上記第一工程において、原料混合物が所定量のAlを含有していることで、焼成時にAlがZnMnCo粒子内に均一に固溶し、過度な収縮を抑制しつつ、導電率が高い保護層を形成可能なZnMnCo粉末が得られる。
【0019】
上記第一工程において、Zn原料とMn原料とCo原料とを含む原料混合物とAl原料とを混合する方法は、これらの原料成分を全て添加して混合する方法であればよく、これらの原料成分が十分に混合されることになる限り特に制限されず、混合は、乾式混合、湿式混合のいずれであってもよいが、湿式混合が好ましい。
また混合には、遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミル、メディアレス粉砕機等を用いることができる。遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミルのいずれかを用いる場合に使用するメディアとしては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、窒化珪素ビーズ等が挙げられる。アルミナビーズを用いた場合、混合中に摩耗したビーズの一部がAl原料として原料混合物に添加される場合がある。
使用するメディアは、直径0.1~3mmのものが好ましい。メディアの直径がこの範囲外であると、粉砕効率の低下や、平均粒子径と比表面積のバランスが崩れる場合がある。
【0020】
上記第一工程において湿式混合を行う場合、溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールの1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、水である。
溶媒の使用量は、固形分濃度が20~60質量%となるように設定することが好ましい。
なお、本明細書における固形分とは、湿式混合に供する全成分から溶媒を除した成分をいい、固形分濃度とは、湿式混合に供する全成分に対する固形分の質量の割合をいう。
【0021】
上記第一工程の混合は、必要に応じて分散剤を添加して行ってもよい。分散剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム、ポリリン酸アミンのアルコール中和品、縮合ナフタレンスルホン酸アンモニウム、非イオン系界面活性剤、ポリカルボン酸アルキルアミン塩などが挙げられる。
分散剤の使用量は、混合する原料成分の合計質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましい。
【0022】
上記第一工程において湿式混合を行う場合、第二工程の前に原料混合物から溶媒を除去することが好ましい。溶媒を除去する方法は特に制限されないが、溶媒を十分に除去することができる点で加熱する方法が好ましい。
加熱する場合の温度は、80~200℃が好ましい。より好ましくは、100~150℃である。
【0023】
上記第一工程で得られるAl含有原料混合物は、平均粒子径が0.1~1.5μmであることが好ましい。このような平均粒子径であると、より低温で所望の化合物を合成することができ、導電性が向上しやすくなる。より好ましくは、0.3~1.2μmであり、更に好ましくは、0.4~1.1μmである。
Al含有原料混合物の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0024】
上記第二工程は、Al含有原料混合物を焼成して、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%である焼成物を得る工程である。
Al含有原料混合物を焼成する温度は、750~1050℃であることが好ましい。より好ましくは、800~1000℃である。
また、Al含有原料混合物を焼成する時間は、0.5~24時間であることが好ましい。より好ましくは、1~12時間である。
また、焼成雰囲気は、大気、酸素等から適宜選択することができる。
【0025】
上記第二工程で得られる焼成物は、Al量が焼成物全量に対して0.4~1.5質量%であるものであればよい。このようなAl量であると、セル間接続部材の保護層の材料として用いた場合に塗膜を焼結する際の収縮率が低くなり、クラックの発生を抑制できる。また、導電率がより優れたものとなる。焼成物全量に対するAl量は、0.5~1.3質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.8~1.1質量%である。
なお、ここでいうアルミニウム量(Al量)とは、アルミニウム元素の質量を意味する。
【0026】
上記第三工程は、第二工程で得られる焼成物を粉砕して、粉体を得る工程である。焼成物を粉砕する方法は特に制限されず、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれであってもよいが、湿式粉砕が好ましい。
また粉砕には、遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミル、メディアレス粉砕機等を用いることができる。遊星ボールミル、ビーズミル、振動ミルのいずれかを用いる場合に使用するメディアとしては、ガラスビーズ、アルミナビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、窒化珪素ビーズ等が挙げられる。アルミナビーズを用いた場合、混合中に摩耗したビーズの一部がAl原料として焼成物に添加される場合がある。
使用するメディアは、直径0.1~3mmのものが好ましい。メディアの直径がこの範囲外であると、粉砕効率の低下や、平均粒子径と比表面積のバランスが崩れる場合がある。
【0027】
上記第三工程において湿式混合を行う場合、溶媒としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコールの1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、水である。
溶媒の使用量は、固形分濃度が20~60質量%となるように設定することが好ましい。
【0028】
上記第三工程において湿式粉砕を行う場合、粉砕後の粉体から溶媒を除去する工程を行うことが好ましい。溶媒を除去する方法は特に制限されないが、溶媒を十分に除去することができる点で加熱する方法が好ましい。
加熱する場合の温度は、80~200℃が好ましい。より好ましくは、100~150℃である。
【0029】
上記第三工程で得られる粉体は、平均粒子径が0.1~2.0μmであるものが好ましい。粉体がこのような平均粒子径のものであると、密着性の高い塗膜が得られる。粉体の平均粒子径は、より好ましくは、0.2~1.0μmであり、更に好ましくは、0.3~0.5μmである。
粉体の平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0030】
上記第三工程で得られる粉体は、BET比表面積が5~20m/gであることが好ましい。より好ましくは、8~18m/gであり、更に好ましくは、10~15m/gである。
粉体のBET比表面積は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0031】
上記第三工程で得られる粉体は、スピネル型単相の結晶構造を有することが好ましい。スピネル型単相の結晶構造を有するとは、X線回折法によって、スピネル相のみで構成されると評価できることをいう。「単相の結晶構造を有する」とは、X線回折測定において特定の1種の結晶相以外の他の結晶相、すなわち異相が確認されないことを意味し、典型的にはそのような異相が存在するとしてもX線回折の検出限界以下の場合が該当する。粉体がスピネル型単相のみで構成されることは、X線回折チャートから判断できる。粉体のX線回折によるピークの位置と、同等の結晶構造を有するスピネル型の金属複合酸化物のX線回折によるピークの位置とがほぼ一致するX線回折チャートにおいて、スピネル型の結晶相以外の他の結晶相が確認されない場合は、当該粉体は、スピネル型の結晶相のみで構成されているといえる。
【0032】
本発明の製造方法は、上記第一から第三工程を含む限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、上述した第一工程での湿式混合や第三工程での湿式粉砕の後に溶媒を除去する加熱工程の他、第一工程で得られたAl含有原料混合物や第三工程で得られた粉体を解砕する工程等が挙げられる。
【0033】
本発明の製造方法で得られる電気化学デバイス用粉体は、下記式(1);
ZnMnCo (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とするものであることが好ましい。粉体がこのような組成の金属酸化物を主成分とするものであると、電気化学デバイス用粉体としてより適したものとなる。式(1)中において、x、y、zは、0.5<x<1.5、0.5<y<1.5、0.5<z<1.5、x+y+z=3であることが好ましい。より好ましくは、0.8<x<1.2、0.8<y<1.2、0.8<z<1.2、x+y+z=3である。
【0034】
電気化学デバイス用粉体が上記式(1)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物を主成分とするものである場合、本発明の電気化学デバイス用粉体は、ZnMnCoに加え、ZnMnCoにAl元素が複合化した酸化物を含むことが好ましい。
【0035】
本発明の製造方法で得られる電気化学デバイス用粉体中のアルミニウム成分の含有量は、アルミニウム量が上述した第二工程で得られた焼成物中のアルミニウム量と同様となる量であることが好ましい。
【0036】
2.電気化学デバイス用粉体
本発明はまた、電気化学デバイス用粉体であって、
該粉体は、下記式(1);
ZnMnCo (1)
(式中、x、y、zは、0<x<3、0<y<3、0<z<3、x+y+z=3の数を示す。)で表されるスピネル型単相の結晶構造を有する金属酸化物の粉体であって、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含み、該粉体を加圧成型して1000℃で加熱して得られる密度が4.0~4.5g/cmの焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域の個数が10個以下であることを特徴とする電気化学デバイス用粉体でもある。
エネルギー分散型X線分析法によるAlの原子数濃度が20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上である領域とは、Alが偏在している領域であり、焼結体の断面を電子顕微鏡にて倍率5000倍で撮影した24μm×18μmの視野において、このような領域の数が10個以下であるような粉体をセル間接続部材の保護層の材料として用いることで、導電率の高いセル間接続部材を得ることができる。
上記Alが偏在している領域の数は、10個以下であることが好ましい。より好ましくは、8個以下である。
上記Alが偏在している領域の数は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
本発明の電気化学デバイス用粉体は、粉体全量に対して0.4~1.5質量%のAlを含むものであるが、Al量は、0.7~1.2質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.8~1.1質量%である。
なお、ここでいうAl量とは、Al元素の質量を意味する。
【0038】
本発明の電気化学デバイス用粉体は、粉体を加圧成型して得られる密度が2.8~3.2g/cmの成型体を1000℃で加熱した場合における収縮率が10~14%であることが好ましい。このような収縮率であると、該粉体を用いてセル間接続部材を製造した場合の、製造過程での塗膜の収縮を十分に緩和することができる。上記収縮率は、より好ましくは、10.5~13%であり、更に好ましくは、11~12%である。
【実施例
【0039】
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
【0040】
(a)比表面積
比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM-1220)を用いて、BET流動法により測定した。純窒素ガス気流下にて、230℃で30分間保持することにより脱気し、吸着ガスとして窒素30体積%とヘリウム70体積%の混合気体を用いて測定した。
【0041】
(b)平均粒子径(D50)
レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル(株)製、MT-3300EXII)を用いて、下記条件で測定した。
計測モード:MT-3300
粒子屈折率:2.40
溶媒屈折率:1.333
(c)X線回折パターン
X線回折装置((株)リガク製、RINT TTRIII、線源CuKα、モノクロメータ使用、管電圧50kV、電流300mA、長尺スリットPSA200(全長200mm、設計開口角度0.057度))を用いて、下記条件で回折パターンを取得した。
測定方法:平行法(連続)
スキャンスピード:2.5度/分
サンプリング幅:0.04度
2θ:20~60度
(d)元素の定量分析
JIS K 0116に準じて、ICP発光分光分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製、SPS3100-24HV)を用いて、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP発光分光分析法)により、実施例及び比較例で得られた焼成物の各元素の質量%をそれぞれ求め、それらの値に基づいて、各元素のモル比をそれぞれ計算した。Alの含有量は、Zn、Mn、Co、OおよびAlの合計の原子数に占める、Alの原子数の割合として求めた。
【0042】
(e)Al偏在領域の数の測定
電気化学デバイス用粉体を加圧成型し、成形体の断面を走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM-EDS)により、Alの特性X線(Kα線)を用いて倍率5000倍で観察し、24μm×18μmの領域を128×96画素の解像度で表示したEDSマッピング像を得た。得られたEDSマッピング像において、検出されたAlのKα線の絶対強度が画素ごとに数値化され、数値の大小に応じて明暗を区別した状態で表示される。具体的には、絶対強度が大きい画素は明るく、絶対強度が小さい画素は黒色で表示される。絶対強度が大きい画素においては、Alの含有量が多く、絶対強度が小さい画素においては、Alの含有量が少ないことを表している。また、EDSマッピング像において、Alの絶対強度の大きい画素が集合している領域がある場合、当該領域において、Alが偏在していることを表している。また、得られたEDSマッピング像を元に、Alが偏在している箇所、およびAlが偏在していない箇所をスポット分析したところ、Alの原子数濃度はそれぞれ20~43%、0.2~3%であることを特定した。この像の中で、Kα線の絶対強度が5以上の画素がAlの原子数濃度20%以上に対応しており、該画素が5個以上、辺を共有して集まっている領域を、Alの原子数濃度20%以上であって、該視野全体の面積の0.039%以上を占める領域と認定してその数を確認した。
具体的な測定方法を以下に示す。
【0043】
ZnMnCoO粉体19.8gおよびポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬(株)製、けん化度78-82mol%)0.2gを秤量して、乳鉢で混合して造粒物を得た。得られた造粒物を、高さが6mmとなるように幅6mm×長さ45mmの金型に充填し、一軸プレス機にて100MPaで1分間加圧成型して、成型体を得た。成型体の密度は、2.8~3.2g/cmであった。続いて、成形体を1000℃で加熱することにより、焼結体を得た。焼結体の密度は、4.0~4.5g/cmであった。
成型体をクロスセクションポリッシャ(日本電子(株)製、SM-09010)にて、電圧5.0kVで20時間、Arイオンエッチング加工して、試料の断面を露出させた。
露出した断面をSEMを用いて倍率5000倍で観察して、24μm×18μmの観察視野を決定した。実施例1で製造したZnMnCoOのSEM画像を図2に、比較例1で製造したZnMnCoOのSEM画像を図3に示す。この観察視野において、エネルギー分散型X線検出器(オックスフォード社製、INCA X-sight)を用いて、以下に示す条件で、Al-Kαの特性X線の強度に基づいて明暗が強調されたマッピング画像を取得した。実施例1で製造したZnMnCoOのマッピング画像を図4に、比較例1で製造したZnMnCoOのマッピング画像を図5に示す。
<測定条件>
加速電圧:15kV
プロセスタイム:5
デッドタイム:30~40%
解像度:128×96画素
スキャン回数:10回
【0044】
取得したマッピング画像において、5以上の絶対強度を有する画素と、5未満の絶対強度を有する画素とを区分けして、二値化されたマッピング画像を取得した。実施例1で製造したZnMnCoOの二値化後のマッピング画像を図6に、比較例1で製造したZnMnCoOの二値化後のマッピング画像を図7に示す。二値化されたマッピング画像において、画素が辺を共有しながら5個以上連なっている領域をAl偏在箇所と認定し、その数を数えた。
【0045】
[実施例1]
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co、キシダ化学(株)製)50.4g、酸化アルミニウム(Al、キシダ化学(株)製)2.88gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで180分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は0.50μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、MnCoの回折線のみが観察された。ZnMnCoOはMnCoと同様のスピネル型構造を有することから、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は1.00質量%であった。第一工程において、ZnMnCoOに対して酸化アルミニウムをAlとして0.90質量%添加しているので、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.10質量%であることを確認した。
上記焼成物100gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで200分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.9m/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.41μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。図1は、実施例1で得られた粉砕物のX線回折チャートである。得られた粉砕物のピークの位置と、同等の結晶構造を有するMnCoのみで構成される金属複合酸化物のピーク位置が一致していることが確認できる。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は1.10質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、焼成物のAl量は1.00質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.10質量%であることを確認した。
【0046】
[実施例2]
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co、キシダ化学(株)製)50.4g、酸化アルミニウム(Al、キシダ化学(株)製)2.40gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度95%、直径1mmのジルコニアビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで30分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は1.0μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.75質量%であった。第一工程において、ZnMnCoOに対して酸化アルミニウムをAlとして0.75質量%添加しており、ジルコニアビーズを使用していることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0質量%であることを確認した。
上記焼成物100gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度95%、直径1mmのジルコニアビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで110分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.9m/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.46μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.75質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、ジルコニアビーズを使用していることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0質量%であることを確認した。
【0047】
[実施例3]
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co、キシダ化学(株)製)50.4gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度93%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで120分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は0.54μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.44質量%であった。第一工程において、酸化アルミニウムを添加していないことから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.44質量%であることを確認した。
上記焼成物100gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度93%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで160分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.7m/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.40μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.92質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、焼成物のAl量は0.44質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.48質量%であることを確認した。
【0048】
[比較例1]
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co、キシダ化学(株)製)50.4gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.9%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで30分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は1.7μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.02質量%であった。第一工程において、酸化アルミニウムを添加していないことから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.02質量%であることを確認した。
上記焼成物100g、および酸化アルミニウム1.92gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.9%、直径1mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで160分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は11.4m/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.47μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.36質量%であった。第三工程では酸化アルミニウムを添加しておらず、焼成物のAl量は0.02質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.34質量%であることを確認した。
【0049】
[比較例2]
酸化亜鉛(ZnO、キシダ化学(株)製)51.5g、四酸化三マンガン(Mn、キシダ化学(株)製)48.2g、四酸化三コバルト(Co、キシダ化学(株)製)50.4gを、500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mL、分散剤(ポリアクリル酸アンモニウム溶液70~110、富士フイルム和光純薬(株)製)7.6gを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで180分間、湿式混合した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱して水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、原料混合物を得た。上記原料混合物の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒子径は0.51μmであった。
上記原料混合物を酸化アルミニウム製の坩堝に入れ、この坩堝を電気炉内に置き、大気雰囲気下、950℃で2時間加熱した後、メノウ乳鉢で解砕することにより焼成物を得た。上記焼成物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記焼成物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は0.02質量%であった。第一工程において、酸化アルミニウムを添加していないことから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.02質量%であることを確認した。
上記焼成物100g、および酸化アルミニウム1.92gを500mL容量の樹脂製ポットに秤量し、純度99.99%、直径0.5mmのアルミナビーズ150mL、およびイオン交換水150mLを加え、遊星ボールミル(フリッチュ(株)製、P-5)を用いて、180rpmで245分間、湿式粉砕した。次いで、ビーズを除去し、150℃で加熱し、水分を除去後、メノウ乳鉢で解砕することにより、粉砕物を得た。上記粉砕物のBET比表面積は12.1m/gであり、レーザー回折散乱法による平均粒子径は0.40μmであった。上記粉砕物をX線回折装置を用いて分析したところ、組成式:ZnMnCoOで表されるスピネル型構造単相であることを確認した。また、上記粉砕物をICP発光分光分析に供した結果、元素Alの含有量は1.09質量%であった。第三工程において、ZnMnCoOに対して酸化アルミニウムをAlとして0.90質量%添加しており、焼成物のAl量は0.02質量%であることから、ビーズの磨耗によるAl添加量は0.17質量%であることを確認した。
【0050】
[焼結体の作製、収縮率、開気孔率、導電率、およびAl偏在領域の数の測定]
上記の様にして得られた粉砕物19.8gと、ポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬(株)製、けん化度78-82mol%)0.2gを乳鉢で混合し、造粒物を得た。上記造粒物を、高さが6mmとなるように幅6mm×長さ45mmの金型に充填し、一軸プレス機にて100MPaで1分間加圧することにより、成型密度が2.8~3.2g/cmである棒状の成型体を得た。
上記成型体をジルコニア製の多孔質板に乗せて電気炉内に置き、1000℃で2時間焼成し、棒状の焼結体を得た。上記成型体と焼結体の長さをノギスで測定し、焼結体の長さと成型体の長さの割合から収縮率を算出した。また、上記焼結体の開気孔率を、JIS R 1634に準じてアルキメデス法により測定した。また、上記焼結体に白金線を巻きつけた後、JIS R 1661に準じて大気中、800℃で四端子法により導電率を測定した。更に上記焼結体の断面をSEM-EDSで観察してAl偏在領域の数を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すとおり、実施例1~3で得られたZnMnCoOは、焼結体の収縮率が低く抑えられ、かつ高い導電率を示した。実施例1~3で得られたZnMnCoOは、いずれも高い開気孔率を有し、焼結体の収縮率に寄与したものと考えられる。これに対して、第一工程、第三工程でそれぞれAlをビーズの磨耗物として添加した比較例1で得られたZnMnCoOは、実施例に比べ焼結体の収縮率が高いことが分かる。これは、実施例のZnMnCoOに比べて粉砕物のAl量が低いことから、Alによる収縮抑制効果が十分でなかったと考えられる。
また、第三工程でAlを粉末として添加した比較例2で得られたZnMnCoOは、焼結体の収縮率は実施例と同等であったが、導電率は低いことが分かる。開気孔率については、第一工程、第三工程によらず、Al量が多いほど高くなり、収縮抑制効果が向上するものと考えられる。一方で導電率については、実施例1~3にて第一工程で原料混合物がAlを含有していることで、焼成時にAlがZnMnCoO粒子内に均一に固溶して過度な収縮を抑制しつつ高い導電性を発揮できるのに対し、第三工程でAlを粉末として添加している比較例2では、焼成物のAl量が実施例に比べ大幅に低く、AlはZnMnCoOに均一に固溶せず、独立して存在しているため、導電率の向上に寄与しなかったと考えられる。
図4および図5は、それぞれ実施例1および比較例1で得られた粉体について、Al偏在領域の数の測定方法に従って作製した成型体の断面の、エネルギー分散型X線検出器を用い、Al-Kαの特性X線の強度に基づいて明暗が強調されたマッピング画像を示した図である。図5において、Alが検出されていない画素が多く見られる一方で、図4においては、Alが全体にわたって均一に検出されていることが確認できる。
また、実施例1~3では、比較例2に比べてAl偏在領域の数が有意に少なく、このことも実施例1~3が比較例2に比べて導電率が高い要因になっていると考えられる。なお、比較例1でAl偏在領域の数は少ないのは、Alの添加量が少ないためである。
これらより、本発明の製造方法で製造された電気化学デバイス用粉体を塗布し、加熱して保護層を形成することで、加熱時の収縮を緩和して開気孔率、導電性の高い保護層を形成できることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7