(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ギヤポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/10 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
F04C2/10 341G
F04C2/10 311Z
(21)【出願番号】P 2019207107
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 啓
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-308547(JP,A)
【文献】特開2004-011497(JP,A)
【文献】特開2013-068155(JP,A)
【文献】特開平06-200883(JP,A)
【文献】特許第6526371(JP,B1)
【文献】特開2017-089797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外歯を有するピニオンギヤと、
前記外歯に噛み合う内歯を有するリングギヤと、
前記リングギヤの外周面が摺動する摺動面を有しかつ、前記ピニオンギヤ及び前記リングギヤを回転可能に収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた油路であって、前記摺動面に開口する導入口と吐出ポートとをつなぐ油路を有しかつ、前記吐出ポートに吐出された高圧の作動油の一部を、前記導入口を通じて、前記リングギヤの外周面と前記摺動面との間に供給する高圧油供給部と、を備え、
前記高圧油供給部は、前記油路に内挿されかつ、前記油路よりも内径が小さい絞り
によって作動油の圧力を低下させる減圧プラグをさらに有し、
前記油路は、上流側の第1油路と、下流側の第2油路と、前記第1油路と前記第2油路とが交差する交差部と、を含み、
前記減圧プラグは、前記第2油路に内挿されていると共に、前記減圧プラグの先端は、前記交差部へ突出している、又は、前記第2油路と前記交差部との境界に位置しているギヤポンプ。
【請求項2】
請求項
1に記載のギヤポンプにおいて、
前記減圧プラグの先端は、
先細の外周面を有するテーパ部であり、前記減圧プラグの先端は、前記第2油路の内径よりも外径が小さいギヤポンプ。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のギヤポンプにおいて、
前記油路は、前記交差部を挟んで前記第1油路とは逆側に位置すると共に、前記交差部につながる第1延長部を有し、
前記第1延長部は、前記第1油路に沿うと共に、その先端が封止されているギヤポンプ。
【請求項4】
請求項1
~3のいずれか1項に記載のギヤポンプにおいて、
前記油路は、前記交差部を挟んで前記第2油路とは逆側に位置すると共に、前記交差部につながる第2延長部を有し、
前記第2延長部は、前記第2油路に沿うと共に、その先端が封止されているギヤポンプ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のギヤポンプにおいて、
前記減圧プラグは、前記絞りが所定長さを有するチョークであるギヤポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、ギヤポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内接ギヤポンプが記載されている。特許文献1に記載された内接ギヤポンプは、ギヤハウジングの摺動面に導入口を設けると共に、吐出ポートと導入口とをつなぐ油路を設けている。吐出ポートに吐出された高圧の作動油の一部は、油路及び導入口を通じてリングギヤの外周面と、ギヤハウジングの摺動面との間に供給される。
【0003】
導入口を通じてリングギヤの外周面とギヤハウジングの摺動面との間に供給された高圧の作動油は、リングギヤを回転中心の方へと押す。このことにより、リングギヤの歯先がクレセントに押し付けられる。リングギヤの歯先とクレセントとの間を通って作動油が漏れることが抑制される。また、リングギヤの外周面とギヤハウジングの摺動面との間を通って作動油が漏れることも抑制される。ハウジング内の漏れを抑制することによって、特許文献1に記載された内接ギヤポンプは、効率が向上する。
【0004】
また、特許文献1に記載された内接ギヤポンプは、油路に絞りを設けている。絞りは作動油の圧力を低下させる。絞りを設けることによってリングギヤを押す力を調整するから、特許文献1に記載された内接ギヤポンプは、リングギヤの歯先がクレセントに強く押し付けられることが抑制される。リングギヤの歯先が摩耗してしまうことが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ギヤポンプは、その内部で、二つのギヤが噛み合うと共に、回転する部材と静止した部材とが摺動し合う。このため、ギヤポンプの内部において、コンタミネーションが発生する場合がある。ギヤポンプが吸い込む作動油にコンタミネーションが含まれていなくても、ギヤポンプが吐出する作動油にコンタミネーションが含まれる場合がある。
【0007】
特許文献1に記載された内接ギヤポンプは、油路に絞りを設けている。吐出ポートに吐出された作動油にコンタミネーションが含まれていると、絞りの入口がコンタミネーションによって塞がってしまう恐れがある。
【0008】
前述したように、ギヤポンプが吸い込む作動油からコンタミネーションを除去したとしても、ギヤポンプが吐出する作動油にコンタミネーションが含まれてしまう恐れがある。絞りの閉塞は、ギヤポンプ特有の技術課題である。この技術課題に対して、対策が必要である。
【0009】
ここに開示する技術は、ギヤポンプに設けた絞りの閉塞を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここに開示する技術は、絞りを有する減圧プラグを油路に取り付ける構成において、減圧プラグの取り付け方を工夫することにより、絞りの閉塞を抑制する。
【0011】
具体的に、ここに開示するギヤポンプは、
外歯を有するピニオンギヤと、
前記外歯に噛み合う内歯を有するリングギヤと、
前記リングギヤの外周面が摺動する摺動面を有しかつ、前記ピニオンギヤ及び前記リングギヤを回転可能に収容するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた油路であって、前記摺動面に開口する導入口と吐出ポートとをつなぐ油路を有しかつ、前記吐出ポートに吐出された高圧の作動油の一部を、前記導入口を通じて、前記リングギヤの外周面と前記摺動面との間に供給する高圧油供給部と、を備え、
前記高圧油供給部は、前記油路に内挿されかつ、前記油路よりも内径が小さい絞りによって作動油の圧力を低下させる減圧プラグをさらに有し、
前記油路は、上流側の第1油路と、下流側の第2油路と、前記第1油路と前記第2油路とが交差する交差部と、を含み、
前記減圧プラグは、前記第2油路に内挿されていると共に、前記減圧プラグの先端は、前記交差部へ突出している、又は、前記第2油路と前記交差部との境界に位置している。
【0012】
この構成によると、油路は、吐出ポートと導入口とをつなぐ。吐出ポートに吐出された高圧の作動油の一部は、油路及び導入口を通じて、リングギヤの外周面と、ハウジングの摺動面との間に供給される。作動油がリングギヤを回転中心の方へ押すことで、ハウジング内の漏れが抑制される。ギヤポンプの効率が向上する。
【0013】
油路には、減圧プラグが内挿されている。減圧プラグは絞りを有している。絞りは、作動油の圧力を低下させる。リングギヤを押す力が強くなり過ぎず、適切な力になる。
【0014】
油路は、第1流路と、第2油路と、第1油路と第2油路とが交差する交差部とを含む。減圧プラグは、第2油路に内挿されている。作動油は、吐出ポートから、第1油路、交差部、減圧プラグの絞り、及び、第2油路の順に流れて導入口へ至る。第1油路と第2油路とは交差しているため、作動油は、交差部において流れ方向を変える。
【0015】
ここで、前記の構成とは異なり、減圧プラグの先端が第2油路内に位置していると仮定する。第2油路内を流れる作動油は、第2油路に沿って流れる。作動油の流れは、第2油路の径方向へ向かう流れは無い、又は、ほとんど無い。減圧プラグの先端が第2油路内に位置していると、減圧プラグの先端は、第2油路内を流れる作動油の流れ方向に対して正対する。第2油路を流れる作動油にコンタミネーションが含まれていると、当該コンタミネーションが減圧プラグの先端に停滞し、絞りの入口を塞いでしまう。
【0016】
これに対し、前記構成のギヤポンプにおいて、減圧プラグの先端は交差部へ突出している、又は、減圧プラグの先端は第2油路と交差部との境界に位置している。交差部は作動油の流れ方向が変わる箇所であるから、減圧プラグの先端は、作動油の流れ方向に対して正対しない。作動油にコンタミネーションが含まれていても、コンタミネーションは減圧プラグの先端に停滞しにくい。よって、絞りの入口の閉塞が抑制される。
【0017】
前記構成のギヤポンプは、吐出ポートへ吐出される作動油にコンタミネーションが含まれていても絞りの閉塞が抑制されるから、高いポンプ効率を、長期間、安定して維持できる。ギヤポンプの信頼性が向上する。
【0018】
前記油路は、前記交差部を挟んで前記第1油路とは逆側に位置すると共に、前記交差部につながる第1延長部を有し、
前記第1延長部は、前記第1油路に沿うと共に、その先端が封止されている、としてもよい。
【0019】
作動油に含まれるコンタミネーションは、第1油路に沿って流れることによって交差部へ到達するから、第1油路に沿う方向の流体力を受ける。第1延長部は第1油路に沿っているため、コンタミネーションは、交差部から第1延長部の方へ向かう。減圧プラグの先端にコンタミネーションが停滞することが、さらに抑制される。
【0020】
また、第1延長部の先端は封止されているため、第1延長部内の作動油の流動は緩やかである。コンタミネーションが第1延長部内に一旦入ると、交差部の方へは戻りにくいため、減圧プラグの絞りの閉塞が抑制される。
【0021】
尚、第1延長部は、ハウジングに第1油路を形成する際に、第1油路と一緒に形成される捨て穴によって構成することができる。
【0022】
前記油路は、前記交差部を挟んで前記第2油路とは逆側に位置すると共に、前記交差部につながる第2延長部を有し、
前記第2延長部は、前記第2油路に沿うと共に、その先端が封止されている、としてもよい。
【0023】
交差部につながる第2延長部を設けると、交差部の付近の油路の容積が大きくなる。交差部の付近において、コンタミネーションが移動する自由度が高くなる。コンタミネーションは、減圧プラグの先端から離れる方向へ移動しやすい。減圧プラグの先端にコンタミネーションが停滞しにくい。また、第2延長部の先端も封止されているため、コンタミネーションが第2延長部内に入れば、当該コンタミネーションは交差部の方へ戻りにくい。減圧プラグの絞りの閉塞が抑制される。
【0024】
尚、第2延長部も、ハウジングに第2油路を形成する際に、第2油路と一緒に形成される捨て穴によって構成することができる。
【0025】
第1延長部及び第2延長部の両方をハウジングに設けると、減圧プラグの絞りの閉塞が、より効果的に抑制される。
【0026】
前記減圧プラグの先端は、先細の外周面を有するテーパ部であり、前記減圧プラグの先端は、前記第2油路の内径よりも外径が小さい、としてもよい。
【0027】
減圧プラグの先端の面積が小さいため、コンタミネーションは、減圧プラグの先端に、さらに停滞しにくくなる。減圧プラグの絞りの閉塞が、さらに抑制される。
【0028】
前記減圧プラグは、前記絞りが所定長さを有するチョークである、としてもよい。
【0029】
チョークは、内径がオリフィスに比べて大きい。小さなコンタミネーションは、絞りを通過できる。チョークは、コンタミネーションによる閉塞を抑制する上で有利である。
【発明の効果】
【0030】
前記のギヤポンプによると、減圧プラグの絞りがコンタミネーションによって閉塞することが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線断面図、及び、A方向から見た矢視図である。
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線断面図、及び、B方向から見た矢視図である。
【
図5】
図5は、ギヤポンプの運転時における、ピニオンギヤ及びリングギヤの噛み合い箇所付近を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】
図6は、減圧プラグが配設された、油路の第1交差部を拡大して示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6とは異なる構成の、油路の第1交差部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図8は、
図6及び
図7とは異なる構成の、油路の第1交差部を拡大して示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図6~
図8とは異なる構成の、油路の第1交差部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、ギヤポンプ1の実施形態について、図面を参照しながら説明をする。尚、以下の説明は、ギヤポンプ1の一例である。
【0033】
(ギヤポンプの全体構成)
図1は、ギヤポンプ1の断面図である。
図2は、
図1のII-II線端面図である。ギヤポンプ1は、シャフト2と、ピニオンギヤ3と、リングギヤ4と、ギヤハウジング5と、フロントカバー6と、リヤカバー7と、を備えている。ギヤポンプ1は、内接ギヤポンプである。尚、
図2においては、理解を容易にするために、シャフト2、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4には、端面を示すハッチングの図示を省略している。
【0034】
シャフト2は、
図1における紙面左右方向に伸びている。シャフト2は、図示を省略する原動機に接続されている。原動機は、例えば電気モータである。
【0035】
ピニオンギヤ3は、シャフト2に固定されている。ピニオンギヤ3とシャフト2とは同軸である。ピニオンギヤ3は、シャフト2と共に回転する。ピニオンギヤ3は、外歯31を有している。
【0036】
リングギヤ4は、ピニオンギヤ3に噛み合う。リングギヤ4は、シャフト2に対して偏心して配置されている。リングギヤ4の内周面には、内歯41が形成されている。
図2の紙面右側の領域において、ピニオンギヤ3の外歯31の一部がリングギヤ4の内歯41の一部に噛み合う。尚、図面では示さないが、リングギヤ4の外周面42には、潤滑コーティングが設けられている。潤滑コーティングは、例えば無機材料とフッ素系樹脂とを含む材料によって構成してもよい。
【0037】
ギヤハウジング5は、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4を収容する。ギヤハウジング5には、貫通孔53が形成されている。シャフト2は、貫通孔53内に位置する。
【0038】
ピニオンギヤ3及びリングギヤ4は、回転可能に、ギヤハウジング5に収容される。ギヤハウジング5は、リングギヤ4の外周面42が摺動する摺動面51を有している。リングギヤ4の外周面42は、横断面円形状を有している。ギヤハウジング5の摺動面51も、横断面円形状を有している。摺動面51は、シャフト2に対して偏心している。
【0039】
ギヤハウジング5は、摺動面51に直交する側面52を有している。摺動面51及び側面52は、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4を収容する空間50を形成する。当該空間50は、
図1における紙面左側に開放されている。ピニオンギヤ3の第1側面(
図1の右の側面)32、及び、リングギヤ4の第1側面(
図1の右の側面)43はそれぞれ、ギヤハウジング5の側面52を摺動する。
【0040】
フロントカバー6は、ギヤハウジング5に隣接して配設されている。フロントカバー6は、ギヤハウジング5に接すると共に、空間50を閉じる第1側面61を有している。ピニオンギヤ3の第2側面(
図1の左の側面)33、及び、リングギヤ4の第2側面(
図1の左の側面)44はそれぞれ、フロントカバー6の第1側面61を摺動する。フロントカバー6には、シャフト2が通る支持孔62が貫通して形成されている。シャフト2は、ベアリング63と軸受部材64とを介して、フロントカバー6に支持されている。
【0041】
リヤカバー7は、ギヤハウジング5を間に挟んで、フロントカバー6とは反対側に配設されている。フロントカバー6、ギヤハウジング5、及び、リヤカバー7は、互いに固定されることによって一体化している。フロントカバー6、ギヤハウジング5及びリヤカバー7によって、ギヤポンプ1のハウジング10が構成されている。
【0042】
フロントカバー6及びギヤハウジング5には、空間50の内部、言い替えるとハウジング10の内部に作動油を吸い込む吸込ポート11が形成されている。吸込ポート11の入口は、
図1に示すように、フロントカバー6の外周面に開口している。吸込ポート11の出口は、フロントカバー6の第1側面61及びギヤハウジング5の側面52のそれぞれに開口している。吸込ポート11の出口はまた、
図2に破線で示すように、シャフト2の回転方向に沿うように、周方向に延びている。
【0043】
フロントカバー6、ギヤハウジング5、及びリヤカバー7には、ハウジング10の内部から作動油を吐き出す吐出ポート12が形成されている。吐出ポート12の出口は、
図1に示すように、リヤカバー7の外周面に開口している。尚、吸込ポート11の入口の向きと、吐出ポート12の出口の向きとは、
図1に例示するように同じ方向であってもよいし、図示は省略するが、異なる方向であってもよい。
【0044】
吐出ポート12の入口は、フロントカバー6の第1側面61及びギヤハウジング5の側面52のそれぞれに開口している。吐出ポート12の入口はまた、
図2に破線で示すように、吸込ポート11に対して、シャフト2を挟んだ反対側において、シャフト2の回転方向に沿うように、周方向に延びている。
【0045】
ギヤハウジング5には、クレセント54が設けられている。クレセント54は、ピニオンギヤ3とリングギヤ4との噛み合いが離れる箇所に配設されている。クレセント54は、後述する高圧領域と低圧領域とを分離する。
【0046】
クレセント54は、シャフト2の回転方向に沿うように、所定の角度範囲に亘って周方向に伸びている。より詳細に、クレセント54は、第1円弧面541と、第2円弧面542との二つの円弧面を有し、第1円弧面541及び第2円弧面542はそれぞれ、ギヤハウジング5の側面52に立設している(
図3も参照)。クレセント54は、
図2に示すように、シャフト2の軸方向に沿って見たときに、三日月形状を有している。ピニオンギヤ3の外歯31の歯先は、クレセント54の第1円弧面541に当接する。リングギヤ4の内歯41の歯先は、クレセント54の第2円弧面542に当接する。
【0047】
ここで、ハウジング10内は、リングギヤ4の回転中心Oを中心として周方向に、吸込ポート11が開口する低圧領域と、クレセント54が配設されている昇圧領域と、吐出ポート12が開口する高圧領域との三領域に分けることができる。
【0048】
次に、ギヤポンプ1の運転を簡単に説明する。原動機によってシャフト2が、
図2の白抜きの矢印の方向に回転すると、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4がそれぞれ、低圧領域から、昇圧領域を経て、高圧領域に至る方向に回転する。
【0049】
ハウジング10内の低圧領域において、噛み合っていたピニオンギヤ3の外歯31とリングギヤ4の内歯41とが離れるに伴って、吸込ポート11から外歯31と内歯41との間に作動油が吸い込まれる。吸い込まれた作動油は、ピニオンギヤ3及びリングギヤ4の回転に伴い、低圧領域から、昇圧領域を経て高圧領域へ運ばれる。
【0050】
ハウジング10内の高圧領域においては、離れていたピニオンギヤ3の外歯31とリングギヤ4の内歯41とが次第に近づいて噛み合う。このことにより、作動油が、外歯31と内歯41との間から吐出ポート12を通じて吐き出される。
【0051】
(ハウジング内の作動油の漏れを抑制する構成)
ギヤポンプ1は、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間に高圧の作動油を供給する高圧油供給部8を備えている。
図3は、高圧油供給部8の構成を例示している。
図3は、
図2のIII-III断面に相当する。
【0052】
高圧油供給部8は、高圧の作動油によって、リングギヤ4を、昇圧領域の外周囲からリングギヤ4の回転中心Oの方へと押して移動させ、ハウジング10内で作動油が漏れることを抑制する。高圧油供給部8は、摺動面51に開口する導入口81と、吐出ポート12と導入口81とをつなぐ油路9と、油路9に内接された減圧プラグ82とを有している。
【0053】
導入口81は、
図2に示すように、昇圧領域に位置している。より詳細に、導入口81は、クレセント54に対し、径方向に向かい合っている。導入口81は、後述するように、吐出ポート12から吐出される高圧の作動油の一部を、ハウジング10内に導入する。ハウジング10内に導入した高圧の作動油が低圧領域へと流れることを抑制するために、導入口81は、昇圧領域のうち、昇圧領域の中間位置から高圧側の領域が好ましい。導入口81は、高圧側の領域のうち、クレセント54の第2円弧面542の端点と回転中心Oを結ぶ線から周方向に、10~40°の角度φだけ離れた位置に設けることがさらに好ましい。また、導入口81から導入した高圧の作動油によって、リングギヤ4の歯先をクレセント54に効果的に押し付けるために、導入口81は、クレセント54に向かい合って設けることが好ましい。
【0054】
導入口81は、
図3に例示するように、摺動面51において、シャフト2の軸方向の中央位置又は略中央位置に設けられている。導入口81の開口形状は、
図3の構成例では、円形状である。尚、導入口81の開口形状は特定の形状に限定されない。
【0055】
油路9は、
図3の構成例では、ギヤハウジング5及びフロントカバー6に設けられている。油路9は、フロントカバー6に設けた吐出ポート12と、導入口81とをつないでいる。油路9の構成の詳細は、後述する。
【0056】
減圧プラグ82は、油路9の断面積を縮小するように構成されている。減圧プラグ82は、絞りを有している。吐出ポート12から導入口81に向かって油路9内を流れる作動油は、減圧プラグ82によって減圧される。導入口81を通じてギヤハウジング5内に導入する作動油の圧力は、吐出ポート12から吐出される作動油の圧力よりも低い。ギヤハウジング5内に導入する作動油の圧力は、減圧プラグ82の構造を変更することによって、調整することができる。減圧プラグ82の構成の詳細も、後述する。
【0057】
前述したように、ギヤポンプ1の運転中に、吐出ポート12から吐出された作動油の一部は、油路9及び導入口81を通じて、リングギヤ4の外周面とギヤハウジング5の摺動面51との間に導入される。高圧の作動油によって、リングギヤ4は、昇圧領域の外周囲から回転中心Oの方へと押されて移動する。これにより、リングギヤ4の歯先がクレセント54に押し付けられるから、昇圧領域において、リングギヤ4の歯先とクレセント54との間を通って作動油が漏れることが抑制される。また、高圧領域において、リングギヤ4の外周面とギヤハウジング5の摺動面51との間を通って作動油が漏れることも抑制される。ハウジング10内の漏れを抑制することによって、ギヤポンプ1の効率が向上する。
【0058】
ここで、油路9に減圧プラグ82を設けることによって、ハウジング10内に導入する作動油の圧力を下げているため、リングギヤ4の歯先がクレセント54に強く押し付けられることが抑制される。リングギヤ4の歯先が摩耗してしまうことが抑制される。
【0059】
また、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間に導入した作動油は、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間の潤滑油としても機能する。これにより、リングギヤ4とギヤハウジング5との間の焼き付きが抑制される。また、前述したように、ハウジング10内の漏れを抑制しているため、ハウジング10内の発熱を抑制することができる。このことによっても、リングギヤ4とギヤハウジング5との間の焼き付きが抑制される。
【0060】
ギヤポンプ1はまた、凹部511を有している。
図4は、凹部511の構成を例示している。
図4は、
図2のIV-IV断面に相当する。
【0061】
凹部511は、ギヤハウジング5の摺動面51に設けられている。凹部511は、
図5に拡大して示すように、摺動面51から径方向の外方に凹んでいる。尚、
図5は、理解を容易にするために、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との隙間の大きさを誇張して描いている。凹部511によって、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間隔は、部分的に広がる(
図5のL参照)。
【0062】
凹部511は、
図4の構成例では、シャフト2の軸方向に延びる溝形状を有している。凹部511の深さは、例えば1~数ミリ程度としてもよい。
【0063】
凹部511の形状は、溝形状に限らない。後述するように、凹部511は、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間に生じるくさび効果を低減する機能を有していればよい。凹部511は、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間隔を部分的に広げるものであればよい。凹部511は、図示は省略するが、例えば摺動面51から凹んだ複数の穴によって構成してもよい。また、凹部511は、長さの短い複数の溝を、シャフト2の軸方向に並べることによって構成してもよい。尚、
図4に示すような溝形状の凹部511は、加工が容易という利点がある。
【0064】
また、凹部511は、
図4に示すように、一つのみ設けてもよい。図示は省略するが、凹部511は、摺動面51の周方向に、複数、設けてもよい。
【0065】
凹部511は、
図2に示すように、高圧領域に設けられている。前述したように、高圧油供給部8の導入口81から導入される高圧の作動油によって、リングギヤ4は、昇圧領域の外周囲から回転中心Oの方へと押されて移動している。高圧領域においてリングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との隙間が小さくなるから、くさび効果が生じる(
図5の矢印参照)。凹部511は、くさび効果が生じる高圧領域のうち、くさび効果が大きく生じる箇所の近傍に設けることが好ましい。
【0066】
凹部511は、高圧油供給部8とは異なり、高圧の作動油をギヤハウジング5内に導入する機能を有していない。凹部511は、吐出ポート12とは非接続である。
【0067】
高圧領域における摺動面51に、凹部511を設けることによって、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との間隔が、部分的に広くなるから、くさび効果が低減する。くさび効果が低減するため、ギヤポンプ1の回転数が高いときに、リングギヤ4が高圧領域の外周囲から回転中心Oの方へと押されて移動することが抑制される。その結果、高圧領域において、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との隙間を通じて作動油が漏れることが抑制される。それと共に、昇圧領域において、リングギヤ4の内歯41とクレセント54との間から作動油が漏れることも抑制される。尚、ギヤポンプ1が低回転数で運転しているときには、くさび効果がもともと低いから、高圧領域において、リングギヤ4の外周面42とギヤハウジング5の摺動面51との隙間を通じて作動油が漏れることが抑制されると共に、昇圧領域において、リングギヤ4の内歯41とクレセント54との間から作動油が漏れることも抑制される。
【0068】
(油路及び減圧プラグの構成)
油路9は、
図3及び
図6に示すように、第1油路91と、第2油路92と、第3油路93と、第1交差部94と、第2交差部95とを有している。第1交差部94は、第1油路91と第2油路92とが交差する箇所である。第2交差部95は。第2油路92と第3油路93とが交差する箇所である。
【0069】
第1油路91は、フロントカバー6に設けられている。尚、
図2は、ギヤハウジング5の横断面を示しているため、第1油路91を仮想線で示している。第1油路91は、吐出ポート12につながる。第1油路91は,油路9において上流側の油路である。第1油路91は、吐出ポート12と、第1交差部94との間においてフロントカバー6の径方向に伸びている。第1油路91は、第1交差部94を挟んで第1延長部911と連続している。第1延長部911は、第1交差部94を挟んで第1油路91とは逆側に位置している。第1延長部911は、フロントカバー6の外周面65から径方向の内方に伸びている。第1延長部911の開口端には、留め栓912が取り付けられている。第1延長部911は封止されている。第1油路91及び第1延長部911は、例えばドリルを用いて、フロントカバー6の外周面65から吐出ポート12まで、径方向の内方に穴開け加工を施すことにより形成できる。第1延長部911は、第1油路91の形成時に、フロントカバー6に形成される、いわゆる捨て穴である。
【0070】
第2油路92は、第1油路91よりも下流側の油路である。第2油路92は、フロントカバー6及びギヤハウジング5に設けられている。第2油路92は、フロントカバー6及びギヤハウジング5に跨がって伸びている。第2油路92は、第1油路91と直交する。第2油路92は、後述する第3油路93とも直交する。第2油路92は、第1交差部94を挟んで第2延長部921と連続している。第2延長部921は、第1交差部94を挟んで第2油路92とは逆側に位置している。第2延長部921は、フロントカバー6の第2側面66から第1側面61へ向かって伸びている。第2側面66は、フロントカバー6において第1側面61とは反対側の側面である。第2延長部921の開口端には、留め栓922が取り付けられている。第2延長部921は封止されている。第2油路92及び第2延長部921は、例えばドリルを用いてフロントカバー6の第2側面66から第1側面61まで軸方向に穴開け加工を施すと共に、ギヤハウジング5の端面55から第3油路93まで、例えばドリルを用いて穴開け加工を施すことにより形成可能である。端面55は、ギヤハウジング5においてフロントカバー6に当接する面である。フロントカバー6とギヤハウジング5とを組み付けることによって、フロントカバー6及びギヤハウジング5に跨がる第2油路92が形成される。第2延長部921は、第2油路92の形成時にフロントカバー6に形成される、いわゆる捨て穴である。
【0071】
尚、図示は省略するが、第2油路92、より詳細には、第2油路92における、少なくとも第1交差部94の近傍部分には、ねじ溝が形成されている。
【0072】
第3油路93は、ギヤハウジング5に設けられている。第3油路93は、摺動面51に開口する導入口81につながる。第3油路93は、導入口81と、第2交差部95との間において径方向に伸びている。第3油路93は、第2交差部95を挟んで第3延長部931と連続している。第3延長部931は、ギヤハウジング5の外周面56から径方向の内方に伸びている。第3延長部931の開口端には、留め栓932が取り付けられている。第3延長部931は封止されている。第3油路93及び第3延長部931は、例えばドリルを用いて、ギヤハウジング5の外周面56から摺動面51まで、径方向の内方に穴開け加工を施すことにより形成可能である。第3延長部931は、第3油路93の形成時に、ギヤハウジング5に形成される、いわゆる捨て穴である。
【0073】
吐出ポート12に吐出された高圧の作動油の一部は、第1油路91、第1交差部94,第2油路92、第2交差部95及び第3油路93の順に流れて、導入口81に至る。第1交差部94及び第2交差部95のそれぞれにおいて、作動油の流れ方向は変わる。
【0074】
減圧プラグ82は、第2油路92に内挿されている。減圧プラグ82は、
図6に先端部分を拡大して示すように、本体部821、テーパ部822、及び、絞り823を有している。本体部821には、詳細な図示は省略するが、その外周面にねじ溝が形成されている。本体部821のねじ溝は、第2油路92における、第1交差部94の近傍部分のねじ溝に螺合する。
【0075】
テーパ部822は、減圧プラグ82の先端部分に設けられている。テーパ部822は、先細の外周面を有する部分である。減圧プラグ82の先端の外径は、本体部821の外径よりも小さい。従って、減圧プラグ82の先端の外径は、第2油路92の内径よりも小さい。
【0076】
絞り823は、減圧プラグ82の中心に設けられている。絞り823は、減圧プラグ82の軸方向に伸びる貫通孔によって構成されている。絞り823の内径、及び、長さは、導入口81を通じてギヤハウジング5内へ導入する作動油の圧力に応じて、設定される。本構成例の絞り823は、その内径が比較的大きいと共に、長さが比較的長い。絞り823は、いわゆるチョークである。
【0077】
減圧プラグ82の先端は、第1交差部94内に位置している。より詳細に、減圧プラグ82の先端は、第2油路92と第1交差部94との境界941よりも、第1交差部94内へ突出している。減圧プラグ82の突出量は、第1油路91の内径Dに対して、2/3D以下の範囲で、適宜、設定をすればよい。減圧プラグ82は、留め栓922を取り付ける前に、フロントカバー6の第2側面66に開口する第2延長部921を通じて、第2油路92にねじ込まれる。減圧プラグ82と第2油路92との螺合によって、減圧プラグ82の先端は、第2油路92内の所定の位置に固定される。
【0078】
ギヤポンプ1は、ピニオンギヤ3とリングギヤ4とが噛み合うと共に、回転するピニオンギヤ3及びリングギヤ4と、静止したギヤハウジング5及びフロントカバー6とが干渉し合う。このため、ギヤポンプ1の内部においてコンタミネーションが発生する場合がある。発生したコンタミネーションは、吐出ポート12を通じて吐出される。第1油路91に流入した作動油にコンタミネーション100が含まれていると、減圧プラグ82の絞り823が詰まってしまう恐れがある。
【0079】
第1交差部94付近の作動油の流れについて詳細に説明をすると、第1交差部94は、第1油路91と第2油路92とが交差する箇所であるため、作動油の流れ方向は、第1交差部94において変化する。
図6の構成例では、第1油路91と第2油路92とが直交するため、作動油の流れは、第1交差部94において約90°変化する。
【0080】
前記構成のギヤポンプ1ではまた、減圧プラグ82の先端が、第1交差部94内に突出している。このため、
図6に破線の矢印で示すように、第1交差部94内において作動油は、減圧プラグ82の先端を迂回するように流れる。第1交差部94内に突出している減圧プラグ82の先端は、作動油の流れに対して正対しない。作動油内に含まれるコンタミネーション100は、減圧プラグ82の先端に停滞しにくい。
【0081】
また、第1交差部94においてコンタミネーション100には、
図6に白抜きの矢印で示すように、第1油路91から第1延長部911へ向かう方向の流体力が作用する。この流体力によってコンタミネーション100は、第1延長部911の方へ流れやすくなる。このことによっても、コンタミネーション100が、減圧プラグ82の先端に停滞しにくくなる。
【0082】
さらに、減圧プラグ82の先端部にテーパ部822を設けることによって、減圧プラグ82の先端の面積が小さい。コンタミネーション100は、減圧プラグ82の先端に、さらに停滞しにくくなる。
【0083】
これらの結果、減圧プラグ82の絞り823の入口が塞がることが抑制される。高圧油供給部8は、導入口81へ高圧の作動油を安定的に供給できる。ギヤポンプ1は、高いポンプ効率を、長期間、安定して維持できる。ギヤポンプ1の信頼性が向上する。
【0084】
また、第1延長部911は封止されているため、第1延長部911内の作動油の流動は緩やかである。第1延長部911ヘコンタミネーション100が入ると、コンタミネーション100は、第1交差部94の方へ戻りにくい。その結果、減圧プラグ82の絞り823の閉塞が、継続して抑制される。第1延長部911は、コンタミネーション100が溜まる部分としても機能する。
【0085】
また、第1交差部94には、第2延長部921もつながっている。第1交差部94の付近の流路の容積は大きい。第1交差部94の付近において、コンタミネーション100が移動する自由度が高い。コンタミネーション100は、減圧プラグ82の先端から離れる方向へも移動しやすい。このこともまた、減圧プラグ82の先端に、コンタミネーション100が停滞することを抑制する。
【0086】
また、第2延長部921も封止されているため、第2延長部921内の作動油の流動も緩やかである。第2延長部921ヘコンタミネーション100が入ると、コンタミネーション100は、第1交差部94の方へ戻りにくい。減圧プラグ82の絞り823の閉塞が、継続して抑制される。第2延長部921は、コンタミネーション100が溜まる部分としても機能する。
【0087】
しかも、減圧プラグ82の絞り823はチョークであり、その内径は、オリフィスに比べて大きい。小さいコンタミネーションは、減圧プラグ82の絞り823を通過できる。このことによってもまた、減圧プラグ82の絞り823の閉塞が抑制できる。
【0088】
(第1変形例)
図7は、減圧プラグ82の配置に関する変形例を示している。減圧プラグ82の先端は、第2油路92と第1交差部94との境界941に位置づけてもよい。この構成においても、減圧プラグ82の先端が、作動油の流れ方向が変化する第1交差部94に面しており、減圧プラグ82の先端は、作動油の流れ方向と正対しない。このため、コンタミネーション100が減圧プラグ82の先端に停滞することが抑制される。
【0089】
(第2変形例)
図8は、第2延長部921を省略した構成例を示している。この構成においても、第1交差部94において作動油の流れ方向が変化するため、減圧プラグ82の先端が、第1交差部94内に位置していると、または、図示は省略するが、減圧プラグ82の先端が、第2油路92と第1交差部94との境界941に位置していると、コンタミネーション100が減圧プラグ82の先端に停滞しにくい。また、
図8では図示していないが、第1油路91に沿って流れるコンタミネーション100には、第1交差部94において第1延長部911へ向かう方向の流体力が作用するため、コンタミネーション100は、第1延長部911へ入りやすくなる。コンタミネーション100が減圧プラグ82の先端に停滞することが抑制される。
【0090】
(第3変形例)
図9は、第1延長部911を省略した構成例を示している。この構成においても、第1交差部94において作動油の流れ方向が変化するため、減圧プラグ82の先端が、第1交差部94内に位置していると、または、図示は省略するが、減圧プラグ82の先端が、第2油路92と第1交差部94との境界941に位置していると、コンタミネーション100が減圧プラグ82の先端に付着することが抑制される。
【0091】
(第4変形例)
図10は、第1延長部911及び第2延長部921を省略した構成例を示している。この構成においても、第1交差部94において作動油の流れ方向が変化するため、減圧プラグ82の先端が、第1交差部94内に位置していると、または、図示は省略するが、減圧プラグ82の先端が、第2油路92と第1交差部94との境界941に位置していると、コンタミネーション100が減圧プラグ82の先端に停滞することが抑制される。
【0092】
(第5変形例)
図11は、第1延長部911と第2延長部921とが直交しないで交差している構成例を示している。この構成例においても、第1交差部94において作動油の流れ方向が変化する。減圧プラグ82の先端が、第1交差部94内に位置していると、または、図示は省略するが、減圧プラグ82の先端が、第2油路92と第1交差部94との境界941に位置していると、コンタミネーション100が減圧プラグ82の先端に停滞することが抑制される。尚、減圧プラグ82の突出量は、図示した突出量に限らず、適宜の量に設定することが可能である。
【0093】
(第6変形例)
図12は、減圧プラグの先端部分の変形例を示している。減圧プラグ820は、テーパ部822に代えて、縮径部824を有している。縮径部824は、減圧プラグ82の先端部に位置している。縮径部824は、本体部821よりも外径が小さい。減圧プラグ82の先端部分は、外径が階段状に縮小している。この構成の減圧プラグ820も、その先端の外径が小さいため、コンタミネーション100の停滞が抑制される。尚、減圧プラグ820の先端の位置は、前述した各構成例に準じて、第1交差部94内、または、第2油路92と第1交差部94との境界941に位置づければよい。
【0094】
(その他の構成例)
図示は省略するが、油路は、ギヤハウジングに形成してもよい。つまり、油路は、ギヤハウジング5に設けた吐出ポート12につながっていてもよい。
【0095】
尚、
図6~
図12に示す第1油路91(及び第1延長部911)、並びに、第2油路92(及び第2延長部921)の内径は、一例である。第1油路91、第2油路92、及び第3油路93の内径はそれぞれ、適宜設定することができる。図例とは異なり、第1油路91の内径が、第2油路92の内径よりも小さくてもよい。また、第1油路91の内径と第2油路92の内径とが同じでもよい。
【0096】
ここに例示するギヤポンプ1は、クレセント54が動かない固定式に構成しているが、可動式のクレセントを設けてもよい。また、ここに開示する技術は、クレセントを備えていない内接ギヤポンプに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 ギヤポンプ
10 ハウジング
3 ピニオンギヤ
31 外歯
4 リングギヤ
41 内歯
42 外周面
5 ギヤハウジング
51 摺動面
6 フロントカバー
7 リヤカバー
8 高圧油供給部
81 導入口
82 減圧プラグ
820 減圧プラグ
822 テーパ部
823 絞り
824 縮径部
9 油路
91 第1油路
911 第1延長部
92 第2油路
921 第2延長部
94 第1交差部