(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】パラシュート装置及び飛行装置
(51)【国際特許分類】
B64D 17/72 20060101AFI20231005BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B64D17/72
B64C39/02
(21)【出願番号】P 2019221602
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】酒本 譲
(72)【発明者】
【氏名】下久 昌司
(72)【発明者】
【氏名】持田 佳広
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-021837(JP,B1)
【文献】特開2018-168927(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199573(JP,U)
【文献】登録実用新案第3067959(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/72
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラシュートと、
一端が開口し他端が閉鎖して形成された第1筒部材と、
前記第1筒部材内に収容され、一端が開口し他端が閉鎖して形成されて前記パラシュートを収容する第2筒部材と、
前記第1筒部材の他端に設けられたガス発生装置と、
を
有するパラシュート装置において、
機体部の上部に取り付けられて揚力及び推力を発生するメインロータと、前記機体部の後部に取り付けられたテールブームと、前記テールブームの先端部に設けられて機体の回転トルクを打ち消す推力を発生するテールロータと、を有する飛行装置に、前記メインロータ及び前記テールロータから離れる方向に前記パラシュートを射出するように前記テールブームに前記パラシュート装置が設けられ、
前記第2筒部材は、前記ガス発生装置から発生したガスにより前記第1筒部材の開口部から進出可能であ
り、前記第2筒部材が前記第1筒部材の開口部から押し出された状態において、当該第2筒部材の先端が前記テールロータを超えた位置にある
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項2】
前記第1筒部材の開口部の側に設けられており、前記第1筒部材からの前記第2筒部材の進出を可能にする孔を有するストッパ部材をさらに備え、
前記第2筒部材は、前記第1筒部材の開口部からの前記第2筒部材の進出時に前記ストッパ部材と衝突する他端側の外周面から突出した環状の突出部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のパラシュート装置。
【請求項3】
前記第2筒部材の開口部を閉鎖し、該開口部を前記パラシュートの放出時に開放するシールド部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のパラシュート装置。
【請求項4】
前記パラシュートは、
主傘体と、
前記主傘体に取り付けられた副傘体と、
を有し、
前記主傘体は、前記第2筒部材の他端に取り付けられていることを特徴とする請求項1から
3までのいずれか一項に記載のパラシュート装置。
【請求項5】
前記パラシュートは、
主傘体と、
前記主傘体に取り付けられた副傘体と、
を有し、
前記主傘体は、前記飛行装置の機体部に取り付けられていることを特徴とする請求項
1に記載のパラシュート装置。
【請求項6】
前記第1筒部材は、一端が前記主傘体に取り付けられ他端が前記機体部に取り付けられている索のうち、前記第1筒部材から進出して前記機体部に向かって延在する前記索の一部分を収納するポケットを有し、
前記索の一部分は、前記ポケット内で折り返されるように収納されている
ことを特徴とする請求項
5に記載のパラシュート装置。
【請求項7】
前記主傘体と前記副傘体とは、ばね弾性を有する索により互いに連結されていることを特徴とする請求項
4から6までのいずれか一項に記載のパラシュート装置。
【請求項8】
機体部と、
前記機体部の上方部に取り付けられて揚力及び推力を発生するメインロータと、
飛行方向において前記機体部の後方部に取り付けられたテールブームと、
前記テールブームの先端部に設けられて回転トルクを打ち消す推力を発生するテールロータと、
前記メインロータ及び前記テールロータから離れる方向にパラシュートを射出するように前記テールブームに設けられたパラシュート装置と、
を備え、
前記パラシュート装置は、
パラシュートと、
一端が開口し他端が閉鎖して形成された第1筒部材と、
前記第1筒部材内に収容され、一端が開口し他端が閉鎖して形成されて前記パラシュートを収容する第2筒部材と、
前記第1筒部材の他端に設けられたガス発生装置と、を有し、
前記第2筒部材は、前記ガス発生装置から発生したガスにより前記第1筒部材の開口部から進出可能であり、前記第2筒部材が前記第1筒部材の開口部から押し出された状態において、当該第2筒部材の先端が前記テールロータを超えた位置にある
ことを特徴とする飛行装置。
【請求項9】
前記第1筒部材の開口部及び前記第2筒部材の開口部は、前記飛行方向において後方を向いていることを特徴とする請求項
8に記載の飛行装置。
【請求項10】
前記第1筒部材の開口部の側に設けられており、前記第1筒部材からの前記第2筒部材の進出を可能にする孔を有するストッパ部材をさらに備え、
前記第2筒部材は、他端側の外周面から突出した環状の突出部を有し、
前記突出部は、前記第1筒部材の開口部からの前記第2筒部材の進出時に前記ストッパ部材と衝突し、
前記ストッパ部材と前記突出部との衝突時に前記第2筒部材の開口部の位置が、前記第1筒部材及び前記第2筒部材の軸線に沿って前記テールロータの位置よりも後方になるように設けられている
ことを特徴とする請求項
8又は9に記載の飛行装置。
【請求項11】
前記機体部の前記テールブームとは反対の側にエアバッグ装置が設けられていることを特徴とする請求項
8から10までのいずれか一項に記載の飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート装置及び飛行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遠隔操作及び自律飛行が可能なシングルロータのヘリコプター型の飛行装置が知られている。飛行装置は、機体部と、機体部の上部に取り付けられたメインロータと、機体部の後部に設けられたテールブームと、このテールブームの後端に設けられたテールロータと、を備える。
【0003】
また、飛行装置が、例えば、何らかの原因でメインロータ及びテールロータの少なくとも一方が停止して正常な自律飛行ができずに降下するような異常事態に陥った場合に、飛行装置全体を吊り下げるためのパラシュートを備える飛行装置も知られている(例えば、特許文献1参照)。このような飛行装置において、パラシュートは、メインロータを回転させる駆動ギアに連結された中空状のメインシャフト内に収容されている。また、飛行装置の本体には、補助パラシュートが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、飛行装置が異常事態に陥り、飛行装置は機体部を地上側に下げてテールブームが上方に向けられた状態で落下するような状態において、メインシャフト内からパラシュートが射出されても、パラシュートがメインロータに絡まって適切に開傘しないことがある。また、本体から射出された補助パラシュートは、飛行装置の落下時の状況によってはメインロータに絡まるおそれが高く、パラシュートとしての機能が阻害されるおそれがある。
【0006】
また、パラシュート装置をメインロータのメインシャフトに収容可能な構造に飛行装置を変更する必要がある。
【0007】
そこで本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、飛行装置の構造を変更することなく装着でき、飛行装置の降下時に確実にパラシュートを開傘可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、パラシュートと、一端が開口し他端が閉鎖して形成された第1筒部材と、前記第1筒部材内に収容され、一端が開口し他端が閉鎖して形成されて前記パラシュートを収容する第2筒部材と、前記第1筒部材の他端に設けられたガス発生装置と、を備え、前記第2筒部材は、前記ガス発生装置から発生したガスにより前記第1筒部材の開口部から進出可能であることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1筒部材の開口部の側に設けられており、前記第1筒部材からの前記第2筒部材の進出を可能にする孔を有するストッパ部材をさらに備え、前記第2筒部材は、前記第1筒部材の開口部からの前記第2筒部材の進出時にストッパ部材と衝突する他端側の外周面から突出した環状の突出部を有していてもよい。
【0010】
また、前記第2筒部材の開口部を閉鎖し、該開口部を前記パラシュートの放出時に開放するシールド部材が設けられていてもよい。
【0011】
また、機体部の上部に取り付けられて揚力及び推力を発生するメインロータと、前記機体部の後部に取り付けられたテールブームと、前記テールブームの先端部に設けられて機体の回転トルクを打ち消す推力を発生するテールロータと、を有する飛行装置に、前記メインロータ及び前記テールロータから離れる方向に前記パラシュートを射出するように前記テールブームに設けられていてもよい。
【0012】
また、前記パラシュートは、主傘体と、前記主傘体に取り付けられた副傘体と、を有し、前記主傘体は、前記第2筒部材の他端に取り付けられていてもよい。
【0013】
また、前記パラシュートは、主傘体と、前記主傘体に取り付けられた副傘体と、を有し、前記主傘体は、前記飛行装置の機体部に取り付けられていてもよい。
【0014】
また、前記第1筒部材は、一端が前記主傘体に取り付けられ他端が前記機体部に取り付けられている索のうち、前記第1筒部材から進出して前記機体部に向かって延在する前記索の一部分を収納するポケットを有し、前記索の一部分は、前記ポケット内で折り返されるように収納されていてもよい。
【0015】
また、前記主傘体と前記副傘体とは、ばね弾性を有する索により互いに連結されていてもよい。
【0016】
さらに、上記目的を達成するために、本発明に係る飛行装置によれば、機体部と、前記機体部の上方部に取り付けられて揚力及び推力を発生するメインロータと、飛行方向において前記機体部の後方部に取り付けられたテールブームと、前記テールブームの先端部に設けられて回転トルクを打ち消す推力を発生するテールロータと、前記メインロータ及び前記テールロータから離れる方向にパラシュートを射出するように前記テールブームに設けられたパラシュート装置と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記パラシュート装置は、一端が開口し他端が閉鎖して形成された第1筒部材と、前記第1筒部材内に収容され、一端が開口し他端が閉鎖して形成されて前記パラシュートを収容する第2筒部材と、前記第1筒部材の他端に設けられたガス発生装置と、を備え、前記第2筒部材は、前記ガス発生装置から発生したガスにより前記第1筒部材の開口部から進出可能であってもよい。
【0018】
また、前記第1筒部材の開口部及び前記第2筒部材の開口部は、前記飛行方向において後方を向いていてもよい。
【0019】
また、前記第1筒部材の開口部の側に設けられており、前記第1筒部材からの前記第2筒部材の進出を可能にする孔を有するストッパ部材をさらに備え、前記第2筒部材は、他端側の外周面から突出した環状の突出部を有し、前記突出部は、前記第1筒部材の開口部からの前記第2筒部材の進出時に前記ストッパ部材と衝突し、前記ストッパ部材と前記突出部との衝突時に前記第2筒部材の開口部の位置が、前記第1筒部材及び前記第2筒部材の軸線に沿って前記テールロータの位置よりも後方になるように設けられていてもよい。
【0020】
また、前記機体部の前記テールブームとは反対の側にエアバッグ装置が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、飛行装置の構造を変更することなく取り付け可能で、降下時に確実にパラシュートを開傘可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施の形態に係るパラシュート装置を有する飛行装置の構成を概略的に説明するための側面図である。
【
図2】本実施の形態に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の機能ブロック図である。
【
図3】パラシュート装置を軸線に沿って断面にした縦断面図である。
【
図4】第1筒部材(シリンダ)に対して第2筒部材(テレスコピックピストン)が進出した状態にあるパラシュート装置を軸線に沿って断面にした縦断面図である。
【
図5】(a)は、
図3に記載のパラシュート装置をV(a)側から見た端面図であり、(b)は、
図3に記載のパラシュート装置をV(b)側から見た端面図である。
【
図6】ストッパ部材を軸線に沿って断面にした縦断面図である。
【
図7】異常状態における飛行装置の安全装置の作動工程1~4を説明するための概略図である。
【
図8】異常状態における飛行装置の安全装置の作動工程5を説明するための概略図である。
【
図9】(a)は、変形例に係るパラシュート装置を軸線に沿って断面にした縦断面図であり、(b)は、変形例に係るパラシュート装置の端面図である。
【
図10】第1筒部材(シリンダ)に対して第2筒部材(テレスコピックピストン)が進出した状態にある変形例に係るパラシュート装置を軸線に沿って断面にした縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
本実施の形態に係るパラシュート装置1は、例えば、シングルロータのヘリコプター型の飛行装置(ドローン)を安全に降下させるためのものである。パラシュート装置1は、公知の飛行装置に適用され、適用される飛行装置は、特定の飛行装置に限定されない。例えば、本発明の実施の形態に係るパラシュート装置1は、
図1に示す飛行装置100に適用される。
【0025】
図1は、本実施の形態に係るパラシュート装置1を有する飛行装置100の構成を概略的に説明するための側面図である。飛行装置100は、機体部110と、メインロータ120と、テールブーム130と、テールロータ140と、スキッド150と、を備える。
【0026】
なお、説明の便宜上、飛行装置100の機体部110を基準にして、飛行方向を「前方F」とし、飛行方向において、テールブーム130の側を「後方B」とする。また、機体部110の地上側を「下方D」とし、機体部110の地上とは反対側(空側)を「上方U」とする。
【0027】
機体部110は、飛行装置100の本体部分である。機体部110は、飛行装置100の各種制御を行う機能部を収容している。
【0028】
メインロータ120は、上方Uを向く機体部110の部分に取り付けられて上方Uへの揚力及び水平各方向への推力を発生する。機体部110の上方Uからロータシャフト120aが突き出ている。ロータシャフト120aの機体部110とは反対側の端部に、メインロータ120が回転可能に取り付けられている。
【0029】
テールブーム130は、飛行装置100の飛行方向(前方F)に対して機体部110の後方B側に取り付けられている。テールロータ140は、テールブーム130の先端部に回転可能に設けられており、メインロータ120により発生する機体の回転トルクを打ち消すための推力を発生する。
【0030】
スキッド150は、下方Dを向く機体部110の部分に設けられている。
【0031】
図2は、本実施の形態に係るパラシュート装置1を搭載した飛行装置100の機能ブロック図である。機体部110は、電源部111と、センサ部112と、モータ駆動部113_1,113_2と、飛行制御部114と、異常検出部115と、降下制御部116と、通信部117と、記憶部118と、安全装置制御部119と、を含む。
【0032】
これらの機能部のうち、飛行制御部114、異常検出部115及び降下制御部116は、例えば、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)及び各種メモリを含むマイクロコントローラ等によるプログラム処理によって実現される。
【0033】
電源部111は、バッテリ111aと電源回路111bとを含む。バッテリ111aは、例えば二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。電源回路111bは、バッテリ111aの出力電圧に基づいて電源電圧を生成し、上記機能部を実現する各ハードウェアに電源電圧を供給する回路である。電源回路111bは、例えば複数のレギュレータ回路を含み、上記ハードウェア毎に適切な大きさの電源電圧を供給する。
【0034】
センサ部112は、飛行装置100の状態を検知する機能部である。センサ部112は、飛行時における飛行装置100の傾きを検出する。センサ部112は、例えば、角速度センサ112aと、加速度センサ112bと、磁気センサ112cと、角度算出部112dと、を含む。
【0035】
角速度センサ112aは、角速度(回転速度)を検出するセンサである。例えば、角速度センサ112aは、x軸、y軸及びz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸ジャイロセンサである。
【0036】
加速度センサ112bは、加速度を検出するセンサである。例えば、加速度センサ112bは、x軸、y軸及びz軸の3つの基準軸に基づいて加速度を検出する3軸加速度センサである。
【0037】
磁気センサ112cは、地磁気を検出するセンサである。例えば、磁気センサ112cは、x軸、y軸及びz軸の3つの基準軸に基づいて方位(絶対方向)を検出する3軸地磁気センサ(電子コンパス)である。
【0038】
角度算出部112dは、角速度センサ112a及び加速度センサ112bの少なくとも一方の検出結果に基づいて、飛行時における飛行装置100の傾きを算出する。ここで、「飛行装置100の傾き」とは、地面(水平方向)に対する飛行装置100の機体部110の角度のことである。
【0039】
例えば、角度算出部112dは、角速度センサ112aの検出結果に基づいて、地面に対する機体部110の角度を算出してもよいし、角速度センサ112a及び加速度センサ112bの検出結果に基づいて、地面に対する機体部110の角度を算出してもよい。なお、角速度センサ112aや加速度センサ112bの検出結果を用いた角度の算出方法は、公知の計算式を用いてもよい。
【0040】
また、角度算出部112dは、角速度センサ112a及び加速度センサ112bの少なくとも一方の検出結果に基づいて算出した角度を、磁気センサ112cの検出結果に基づいて補正してもよい。
【0041】
なお、センサ部112は、上述した角速度センサ112a、加速度センサ112b及び磁気センサ112cに加えて、例えば、気圧センサ、風量(風向き)センサ、超音波センサ、GPS受信機及びカメラ等を含んでもよい。
【0042】
通信部117は、外部装置180と通信を行うための機能部である。ここで、外部装置180は、飛行装置100の動作を制御し、飛行装置100の状態を監視する送信機やサーバ等である。通信部117は、例えば、アンテナ及びRF(Radio Frequency)回路等によって構成されている。通信部117と外部装置180との間の通信は、例えば、ISMバンド(2.4GHz帯)の無線通信によって実現される。
【0043】
通信部117は、外部装置180から送信された飛行装置100の操作情報を受信して飛行制御部114に出力するとともに、センサ部112によって計測された各種計測データ等を外部装置180へ送信する。また、通信部117は、異常検出部115によって飛行装置100の異常が検出された場合、飛行装置100に異常が発生したことを示す情報を外部装置180に送信する。さらに、通信部117は、飛行装置100が地上に落下した場合、飛行装置100が落下したことを示す情報を外部装置180に送信する。
【0044】
モータ駆動部113_1は、メインロータ120に対応して設けられている。モータ駆動部113_2は、テールロータ140に対応して設けられている。モータ駆動部113_1,113_2は、飛行制御部114からの指示に応じて、駆動対象のモータをそれぞれ駆動する機能部である。
【0045】
なお、以下の説明において、各モータ駆動部113_1~113_2を特に区別しない場合には、単に、「モータ駆動部113」と表記する。
【0046】
モータ駆動部113は、飛行制御部114から指示された回転数でメインロータ120及びテールロータ140のモータがそれぞれ回転するように、モータを駆動する。例えば、モータ駆動部113は、ESC(Electronic Speed Controller)である。
【0047】
飛行制御部114は、飛行装置100の各機能部を統括的に制御する機能部である。飛行制御部114は、飛行装置100が安定して飛行するようにメインロータ120及びテールロータ140をそれぞれ制御する。具体的には、飛行制御部114は、通信部117によって受信した外部装置180からの操作情報(上昇や下降、前進や後退等の指示)と、センサ部112の検出結果とに基づいて、飛行装置100が安定した状態で所望の方向に飛行するように、メインロータ120及びテールロータ140のモータの適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部113にそれぞれ指示する。
【0048】
飛行制御部114は、例えば風等の外部からの影響によって飛行装置100の姿勢が乱れた場合、角速度センサ112aの検出結果に基づいて、飛行装置100が水平になるように、メインロータ120のモータ及びテールロータ140のモータの適切な回転数をそれぞれ算出し、算出した回転数を各モータ駆動部113にそれぞれ指示する。
【0049】
また、例えば、飛行制御部114は、飛行装置100のホバリング時に飛行装置100のドリフトを防止するために、加速度センサ112bの検出結果に基づいてメインロータ120のモータ及びテールロータ140のモータの適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部113にそれぞれ指示する。
【0050】
また、飛行制御部114は、通信部117を制御して、外部装置180との間で上述した各種データの送受信を実現する。
【0051】
記憶部118は、飛行装置100の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部118は、フラッシュメモリおよびROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。
【0052】
記憶部118に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する残容量閾値118a及び傾き閾値118b等である。
【0053】
異常検出部115は、飛行時の異常を検出する機能部である。具体的には、異常検出部115は、センサ部112の検出結果と、バッテリ111aの状態と、メインロータ120及びテールロータ140の動作状態とを監視し、飛行装置100が異常状態であるか否かを判定する。
【0054】
ここで、「異常状態」とは、飛行装置100の自律飛行が不可能になるおそれがある状態である。例えば、メインロータ120及びテールロータ140の少なくとも一方が故障し又はバッテリ111aの残容量がゼロになり、飛行中に飛行装置100が機体部110を地上側にしてかつテールブーム130を空側にして、全体として飛行装置100が傾いて降下していく状態を異常状態と言う。
【0055】
異常検出部115は、メインロータ120及びテールロータ140の故障を検出した場合に、飛行装置100が異常状態であると判定する。ここで、メインロータ120及びテールロータ140の故障とは、例えば、飛行制御部114が指定した回転数でそれぞれのモータが回転しないこと又は全く回転しないこと、メインロータ120及びテールロータ140が破損したこと等を言う。
【0056】
また、異常検出部115は、飛行装置100の異常な傾きを検出した場合に、飛行装置100が異常であると判定する。例えば、異常検出部115は、角度算出部112dによって算出した角度が所定の閾値(以下、「傾き閾値」ともいう)118bを超えている状態が所定期間継続した場合に、飛行装置100が異常状態であると判定する。
【0057】
傾き閾値118bは、例えば、飛行装置100が前後方向に移動するときの角度(ピッチ角)や飛行装置100が左右方向に移動するときの角度(ロール角)を予め実験により取得し、それらの角度よりも大きい値に設定すればよい。傾き閾値118bは、例えば、予め記憶部118に記憶されている。
【0058】
降下制御部116は、飛行装置100の降下を制御するための機能部である。具体的には、降下制御部116は、異常検出部115によって飛行装置100が異常状態であることが検出された場合に、飛行装置100を安全に降下させるための降下準備処理を実行する。
【0059】
降下制御部116は、異常検出部115による異常の検出に応じて制御信号を安全装置制御部119に出力する。制御信号を受信した安全装置制御部119は、パラシュート装置1にパラシュート30の射出を指示する制御信号を出力して、パラシュート装置1にパラシュート30を射出させる。さらに、降下制御部116は、安全装置制御部119へのパラシュート30の射出指示の後に、エアバッグ装置6のエアバッグへのガス供給を指示する制御信号をエアバッグ装置6に出力して、エアバッグ装置6のエアバッグを膨張させる。
【0060】
以上の飛行装置100には、安全装置としてパラシュート装置1及びエアバッグ装置6が設けられている。本実施の形態に係るパラシュート装置1は、メインロータ120及びテールロータ140から離れる方向にパラシュート30を射出するようにテールブーム130に設けられている。パラシュート装置1は、パラシュート30と、一端が開口し他端が閉鎖して形成されて第1筒部材(以下、「シリンダ」ともいう)10と、第1筒部材10内に収容されていて、一端が開口し他端が閉鎖して形成されてパラシュート30を収容する第2筒部材(以下、「テレスコピックピストン」ともいう)20と、第1筒部材10の他端に設けられたガス発生装置40と、を備え、第2筒部材20は、ガス発生装置40から発生したガスにより第1筒部材10の開口部13から進出可能である。以下、パラシュート装置1の構成について具体的に説明する。
【0061】
<パラシュート装置>
パラシュート装置1は、パラシュート30を後方Bに射出するようにテールブーム130に設けられている。本実施の形態におけるパラシュート30の射出方向は、テールブーム130の延長方向であるが、メインロータ120及びテールロータ140に絡まらないように離れる方向であれば特に限定されない。例えば、パラシュート30の射出方向は、テールブーム130の延在方向に延びる仮想線から、テールロータ140とは反対側に約90°までの範囲内にあってもよい。
【0062】
図3は、パラシュート装置1を軸線xに沿って断面にした縦断面図である。パラシュート装置1は、シリンダ10と、テレスコピックピストン20と、パラシュート30と、ガス発生装置40と、ストッパ部材50と、シールド部材55と、を有する。
図4は、シリンダ10に対してテレスコピックピストン20が進出した状態にあるパラシュート装置1を軸線xに沿って断面にした縦断面図である。
図5(a)は、
図3に記載のパラシュート装置1をV(a)側から見た端面図であり、
図5(b)は、
図3に記載のパラシュート装置1をV(b)側から見た端面図である。
【0063】
(シリンダ)
シリンダ10は、金属又は樹脂により形成されている。シリンダ10は、軸線xに交差する断面が円形の円筒状の部材である。軸線xは、シリンダ10の中心を通って延びている。シリンダ10は、一端が開口し、他端が閉鎖した有底筒状の部材である。シリンダ10は、中空の円筒部11と、底部12と、を有する。円筒部11は、テレスコピックピストン20を収容する。円筒部11の内径は、テレスコピックピストン20の最大外径よりも僅かに大きくなっている。シリンダ10において、円筒部11の一端は、底部12とは反対側に開口し開口部13を形成している。円筒部11の開口部13側の先端の外周面にはねじ山11aが形成されている。
【0064】
底部12は、開口部13とは反対側の円筒部11の他端に設けられていてシリンダ10の他端を閉鎖する。底部12は、中央部分に底部12の厚さ方向に貫通している円形の収容孔14を有する。収容孔14には、ガス発生装置40が収容されている。
【0065】
シリンダ10の外周面には少なくとも2つのタブ15,16が設けられている。タブ15,16は、軸線xに沿って所定の間隔をあけてシリンダ10の外周面に一体に立設されている。なお、タブ15,16は、シリンダ10の外周面に別体に立設してもよい。タブ15は、軸線x方向において、開口部13の側に設けられている。タブ16は、軸線x方向において、底部12の側に設けられている。タブ15,16はそれぞれ孔17,18を有する。
【0066】
タブ15,16は、シリンダ10を開口部13又は底部12の側から軸線xに沿って見た場合、周方向において、シリンダ10の外周面の同じ位置に設けられていてもよい。パラシュート装置1は、タブ15,16の孔17,18にねじ等の締結具を通して飛行装置100のテールブーム130に取り付けられている。
【0067】
(テレスコピックピストン)
テレスコピックピストン20は、金属又は樹脂により形成されている。テレスコピックピストン20は、シリンダ10と同軸にシリンダ10内に収容されている。テレスコピックピストン20は、軸線xに沿ってシリンダ10から進出自在である。テレスコピックピストン20は、円筒状の円筒部21と、底部22と、を有する。円筒部21にはパラシュート30が収納されている。
【0068】
テレスコピックピストン20において、円筒部21の一端は、底部22とは反対側に開口して開口部23を形成している。円筒部21は、開口部23の側に横孔21aを有する。横孔21aは、円筒部21を径方向に貫通している。開口部23は、後述するシールド部材55によって閉鎖されている。
【0069】
円筒部21の外径は、シリンダ10の円筒部11における内径よりも小さい。テレスコピックピストン20の円筒部21の外周面とシリンダ10の円筒部11の内周面との間には環状の隙間S1が形成されている。
【0070】
底部22は、開口部23とは反対側の円筒部21の他端に設けられていてテレスコピックピストン20の他端を閉鎖する。底部22は、中央部分に底部22の厚さ方向に貫通している円形の貫通孔24を有する。
【0071】
テレスコピックピストン20において、円筒部21の内周面及び底部22の内面によってパラシュート30を収容する収容空間S2が画定されている。
【0072】
貫通孔24には、底部22に対して回転自在な棒状部材25が取り付けられている。棒状部材25は、一端が収容空間S2内に突出している。棒状部材25の一端には孔25aが形成されている。孔25aには、パラシュート30を棒状部材25に連結する連結索31aの一端が結び付けられている。連結索31aは、テレスコピックピストン20の軸線xに沿った長さよりも十分に長い。これにより、パラシュート30は、テールロータ140から十分に離れた位置において飛行装置100を吊り下げることができる。
【0073】
貫通孔24に収容されている棒状部材25の外周面には環状の凹部が設けられていてもよい。凹部には、シールリング25bが設けられている。シールリング25bにより、後述するガス充填室S3内のガスが貫通孔24を通じて収容空間S2内に漏出することが防がれている。
【0074】
底部22は、円筒部21の外周面から突出してシリンダ10の円筒部11の内周面に対して摺動可能に接触している環状の突出部26を有している。突出部26は、テレスコピックピストン20の円筒部21の外周面から隙間S1の分だけ突出している。突出部26がテレスコピックピストン20の最大外径となる部分である。
【0075】
底部22は、底面22aと、外周面22bと、当接面22c、とを有する。底面22aは、シリンダ10の底部12に面する面である。外周面22bは、突出部26において、シリンダ10の円筒部11の内周面に面する面である。軸線xに沿って突出部26の外周面22bには凹部が形成されており、この凹部に環状のシールリング26aが設けられている。シールリング26aにより、後述するガス充填室S3内のガスが突出部26とシリンダ10の円筒部11の内周面との間を通じて隙間S1内に漏出することが防がれている。
【0076】
当接面22cは、突出部26において、開口部23に面する環状の面である。当接面22cは、後述するストッパ部材50に当接(衝突)する。
【0077】
シリンダ10の底部12とテレスコピックピストン20の底部22とが接触した状態において、テレスコピックピストン20の開口部23側の端部は、シリンダ10の開口部13から突出している。
【0078】
テレスコピックピストン20は、後述するガス発生装置40により発生させられたガスが底部22の底面22aに作用することにより、シリンダ10の開口部13から外部に押し出される(
図4参照)。この状態において、シリンダ10の円筒部11と、底部12と、テレスコピックピストン20の底部22とによりガス充填室S3が画定されている。
【0079】
(パラシュート)
パラシュート30は、メインシュート(主傘体)31と、ドローグシュート(副傘体)32と、を有する。メインシュート31は、折り畳まれた状態において、テレスコピックピストン20の収容空間S2に収容されている。メインシュート31は、連結索31aによってテレスコピックピストン20の底部22の棒状部材25の一端に連結されている。
【0080】
棒状部材25又は機体110とは反対側の連結索31aの他端は、メインシュートのエッジ(周縁)から延びている複数の索31b(
図7参照)に連結されている。索31bは、メインシュート31の周縁部に、互いに離間して接続されている。メインシュート31が開いた状態(
図7参照)をメインシュート31の頂点側から見た場合の形状が円形状である場合、連結索31aとは反対側の各索31bの一端は、メインシュート31の周方向に沿って、メインシュート31の周縁部に等間隔に連結されている。
【0081】
連結索31aは、例えば、金属材料(例えば、ステンレス鋼)、又は、繊維材料(例えば、ナイロン紐)により形成されている。索31bは、繊維材料(例えば、ナイロン紐)により形成されている。
【0082】
ドローグシュート32は、折り畳まれた状態において、テレスコピックピストン20の収容空間S2に収容されている。ドローグシュート32は、連結索32aを介してメインシュート31の頂点部に連結されている。メインシュート31とは反対側の連結索32aの他端は、ドローグシュート32のエッジ(周縁)から延びている複数の索32b(
図7参照)に連結されている。索32bは、ドローグシュート32の周縁部に、互いに離間して接続されている。
【0083】
ドローグシュート32が開いた状態(
図7参照)をドローグシュート32の頂点側から見た場合の形状が円形状である場合、連結索32aとは反対側の各索32bの一端は、ドローグシュート32の周方向に沿って、ドローグシュート32の周縁部に等間隔に連結されている。開いた状態のドローグシュート32は、開いた状態のメインシュート31よりも直径において小さい。
【0084】
連結索32a及び索32bは、例えば、繊維材料(例えば、ナイロン紐)により形成されている。
【0085】
(ガス発生装置)
ガス発生装置40は、パラシュート30を射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置40は、シリンダ10の底部12に形成された収容孔14に収容されている。
【0086】
ガス発生装置40は、ハウジング41と、ガス発生剤42と、リード線43と、を有する。ハウジング41は、収容孔14に収容されており、ガス発生剤42を保持する。ハウジング41は、シリンダ10のガス充填室S3に向かって開口している。
【0087】
ハウジング41は、例えば、樹脂から構成されている。好ましくは、ハウジング41は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等によって構成されている。なお、ハウジング41は、樹脂に限らず金属によって形成されていてもよい。
【0088】
ガス発生剤42は、封止部材(図示せず)によって表面の一部が覆われた状態において、ハウジング41に収容されている。封止部材は、ガス充填室S3に面する側でガス発生剤42を覆っている。封止部材は、ガス発生剤42からガスが発生した場合に、発生したガスの圧力によって容易に破壊される材料によって構成されている。例えば、封止部材は、ポリエステル等の薄膜である。
【0089】
リード線43は、ガス発生剤42を点火するための電気配線である。リード線43は、例えば、ビニール線、すずめっき線又はエナメル線等により形成されている。リード線43の一端は、ガス発生剤42を点火するための薬剤である点火薬(図示せず)に接続されている。リード線43の他端は、例えば、安全装置制御部119に電気的に接続されている。
【0090】
点火薬は、例えば、樹脂等を混ぜ込んだ液状の点火薬をリード線43の先端に塗り固めることにより、リード線43の一端に固定されている。点火薬は、例えば、ハウジング41内において、点火薬の一部がガス発生剤42と接触した状態(例えば、点火薬の少なくとも一部がガス発生剤に埋め込まれた状態)で固定されている。
【0091】
点火薬は、リード線43を介して安全装置制御部119から出力された点火信号に応じて発熱して点火され、ガス発生剤42を化学的に反応させることにより、ガスを発生させる。
【0092】
(ストッパ部材)
ストッパ部材50は、シリンダ10の開口部13及びテレスコピックピストン20の開口部23の側に設けられている。ストッパ部材50は、開口部13の側からシリンダ10に被されている。ストッパ部材50は、シリンダ10のねじ山11aと螺合している。
図6は、ストッパ部材50を軸線xに沿って断面にした縦断面図である。
【0093】
ストッパ部材50は、円筒部51と、蓋部52と、を有する。円筒部51は、軸線xに沿って延びている筒状の部分である。円筒部51は、シリンダ10の円筒部11の外側に位置する。円筒部51は、その内周面にねじ山51aを有している。ストッパ部材50のねじ山51aは、シリンダ10のねじ山11aと螺合している。
【0094】
蓋部52は、シリンダ10の底部12とは反対側の円筒部51の端部に設けられている。蓋部52は、中央に円形の孔52aを有し、シリンダ10とテレスコピックピストン20との間の隙間S1の分だけ開口部13を覆っている。蓋部52のシリンダ10の底部12に面する環状面52bは、シリンダ10からのテレスコピックピストン20の進出時に当接面22cと面接触する。
【0095】
孔52aの内径は、テレスコピックピストン20の円筒部21の外径と略同じ大きさである。孔52aは、シリンダ10の開口部13からのテレスコピックピストン20の進出を可能にする。孔52aの内周面52cは、シリンダ10の円筒部11から突出しているテレスコピックピストン20の円筒部21の外周面と接触している。
【0096】
ストッパ部材50には円筒部51と蓋部52とを径方向から貫通する横孔53が形成されている。ストッパ部材50の横孔53と、テレスコピックピストン20の横孔21aとが整合した状態において、ピンPが挿通されている。これにより、軸線x方向におけるテレスコピックピストン20の移動が防がれている。
【0097】
シリンダ10の底部12とは反対側に面する蓋部52の側には複数のねじ穴54が形成されている。複数のねじ穴54は、軸線xを中心に形成されている(
図5(a)参照)。ストッパ部材50がシリンダ10に被された状態において、ストッパ部材50の蓋部52の端面と、テレスコピックピストン20の先端とは軸線xにおいて、略同じ位置にある。テレスコピックピストン20の開口部23は、円形のシールド部材55により閉鎖されている。シールド部材55は、その周縁部に沿ってビス54aをねじ穴54にねじ込むことによりストッパ部材50に取り付けられている。
【0098】
<エアバッグ装置>
エアバッグ装置6は、飛行方向において、機体部110の前方Fに設けられている。エアバッグ装置6は、ガス発生装置(図示せず)を有している。安全装置制御部119からの出力された点火信号に応じてガス発生装置によりガスが発生させられ、エアバッグが膨張する。なお、エアバッグ装置6は、公知の構成及び作動原理とすることができる。
【0099】
<安全装置の作動工程>
次に、
図7,8を用いて、飛行装置100の安全装置の作動工程について説明する。
図7は、異常状態における飛行装置100の安全装置の作動工程1~4を説明するための概略図である。
図8は、異常状態における飛行装置100の安全装置の作動工程5を説明するための概略図である。
【0100】
<第1工程>
飛行中に、例えば、メインロータ120が停止して飛行装置100が異常状態に陥って正常に飛行することができなくなった場合、異常検出部115は、飛行装置100が異常状態にあることを判定し、降下制御部116に降下準備処理を実行させる。降下制御部116は、安全装置制御部119に対してパラシュート30を射出する制御信号を出力する。
【0101】
<第2工程>
制御信号を受けた安全装置制御部119は、パラシュート装置1のガス発生装置40にリード線43を介して点火信号を出力する。点火された点火薬が発熱して点火することにより、ガス発生剤42はガスを発生させる。
【0102】
ガス発生剤42から発生したガスにより、テレスコピックピストン20は、軸線xに沿って移動しようとする。テレスコピックピストン20の移動により、シリンダ10に対するテレスコピックピストン20の軸線xに沿った移動を制限していたピンPが破断する。これにより、テレスコピックピストン20は、シールド部材55を押し破りシリンダ10の開口部13から外方へ押し出される。テレスコピックピストン20は、突出部26がストッパ部材50の蓋部52に衝突するまで外方に押し出される。テレスコピックピストン20が押し出された状態において、テレスコピックピストン20の先端は、軸線xに沿った方向において、テールロータ140を超えた位置にある。
【0103】
安全装置制御部119は、パラシュート装置1への制御信号の出力とともに、エアバッグ装置6へ制御信号を出力する。制御信号を受信したエアバッグ装置6は、エアバッグを膨らます。
【0104】
<第3工程>
テレスコピックピストン20が押し出されてストッパ部材50と衝突すると、テレスコピックピストン20の内部に収容されているパラシュート30のうちドローグシュート32が慣性の作用により、テレスコピックピストン20の開口部23から放出される。
【0105】
<第4工程>
テレスコピックピストン20から射出されたドローグシュート32は、開傘することによりメインシュート31をテレスコピックピストン20から引っ張り出す。次いで、引っ張り出されたメインシュート31が開傘する。
【0106】
<第5工程>
メインシュート31が風を孕むことにより、テレスコピックピストン20内に収容されていた連結索31aがテレスコピックピストン20の外側に向かって引っ張り出され、メインシュート31は、テールロータ140から十分に離れた位置まで移動する。これにより、飛行装置100は、機体部110を地上側に向け、テールブーム130を上空にしてパラシュート30に吊られた状態で地上に向かって降下していく。
【0107】
メインシュート31をテレスコピックピストン20に連結する連結索31aは、テレスコピックピストン20の底部22に対して相対的に回転自在な棒状部材25に取り付けられている場合、例えば、飛行装置100が旋回しながら降下した場合であっても、連結索31aが捩れてメインシュート31の射出及び開傘に不都合な影響が働くことはない。
【0108】
以上のようなパラシュート装置1によれば、シリンダ10及びテレスコピックピストン20が入れ子式に構成されており、テレスコピックピストン20がシリンダ10に対して進出可能になっている。テレスコピックピストン20は、パラシュート30が飛行装置100から離れる方向にシリンダ10から射出されるので、メインシュート31及びドローグシュート32がメインロータ120及びテールロータ140に絡まることを回避することができる。
【0109】
また、パラシュート装置1のシリンダ10の開口部13及びテレスコピックピストン20の開口部23は、飛行装置100の後方Bを向いているのでドローグシュート32及びメインシュート31がメインロータ120及びテールロータ140に絡まることを確実に回避することができる。
【0110】
また、ガス発生装置40から発生したガスによりシリンダ10の開口部13から押し出されたテレスコピックピストン20は、ストッパ部材50によりその移動が止められるので、ドローグシュート32は慣性の作用によりテレスコピックピストン20の開口部23から外部に飛び出すようになっている。
【0111】
また、テレスコピックピストン20の開口部23は、テレスコピックピストン20が押し出されることにより破断可能なシールド部材55により閉鎖されているので、不用意にドローグシュート32がテレスコピックピストン20の外部に進出することが妨げられるとともに雨水等の侵入を防止できる。
【0112】
また、メインシュート31は、テレスコピックピストン20の底部22に連結索31aを介して取り付けられているので、メインシュート31をテレスコピックピストン20に簡単な構成において連結することができる。この構成によれば、テレスコピックピストン20の収容空間S2内で連結索31aを全て収容することができ、連結索31aの引き回しが簡単になる。
【0113】
また、飛行装置100は機体部110の前方Fの部分にエアバッグ装置6を備えているので、衝撃を緩和した飛行装置100の着地が可能になる。
【0114】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。また、例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。例えば、上記の実施の形態のパラシュート装置1において、メインシュート31の連結索31aの一端は、棒状部材25に連結されていたが、機体部110に連結されていてもよい。
【0115】
図9(a)は、変形例に係るパラシュート装置1Aを軸線に沿って断面にした縦断面図であり、
図9(b)は、変形例に係るパラシュート装置1Aの端面図である。パラシュート装置1Aは、シリンダ10と、テレスコピックピストン20と、パラシュート30と、ガス発生装置40と、ストッパ部材50と、シールド部材55と、を有する。以下、パラシュート装置1と異なるパラシュート装置1Aの部分について主として説明し、パラシュート装置1と同じ部分については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0116】
パラシュート装置1Aにおいて連結索31aの他端は、シリンダ10の収容空間S2から外部に出て、機体部110に連結されている。シールド部材55は、連結索31aが収容空間S2から外部に出るための切欠き部を有している。
【0117】
パラシュート装置1Aのシリンダ10は、収納ポケット(ポケット)Poを有する。収納ポケットPoは、連結索31aのうち、シリンダ10から外側に進出して機体部110に向かって延在する連結索31aの一部分を収納している。
【0118】
収納ポケットPoは、タブ15,16に対して径方向の反対側でシリンダ10の円筒部11の外周面に設けられている。収納ポケットPoは、シリンダ10の開口部13の側に設けられている。収納ポケットPoは、軸線xに交差する断面がU字状である。収納ポケットPoは、軸線x方向においてシリンダ10の開口部13と同じ方向にのみ開口している。軸線x方向においてシリンダ10の底部12を向く収納ポケットPoの側は、閉鎖されている。なお、収納ポケットPoの開口部は、テープ等により閉鎖されていてもよい。
【0119】
シリンダ10から機体部110に延びていく間の連結索31aの一部分が収納ポケットPo内で折り返されるようにして収納されている。収納ポケットPo内に収納される連結索31aの量は、テレスコピックピストン20がストッパ部材50に接触するまでの移動量よりも少なくとも大きい。これにより、パラシュート装置1Aにおいて、テレスコピックピストン20の円筒部21が、シリンダ10から進出することが可能になる。
【0120】
また、メインシュート31の射出時に連結索31aによる引張荷重を、テールブーム130の強度よりも高い強度を有する機体部110において受けるので、メインシュート31を確実に保持することができる。
【0121】
また、収納ポケットPo内に連結索31aが折り返されるようにして収納されることにより、シリンダ10からテレスコピックピストン20がストッパ部材50と当接するまで進出することができる。すなわち、連結索31aがゆとりをもって収納されていることから、テレスコピックピストン20が進出する際に収納ポケットPo内の連結索31aが伸長するので、シリンダ10からのテレスコピックピストン20の進出が妨げられることはない。
【0122】
また、上記の実施の形態において、メインシュート31とドローグシュート32とは、ばね弾性を有する金属材料により形成された連結索により互いに連結されていてもよい。
【0123】
シリンダ10からのテレスコピックピストン20の進出時に、シールド部材55を破壊すると、シールド部材55によるドローグシュート32の押さえ付けがなくなり、ドローグシュート32は慣性により飛び出す。また、連結索がばね弾性を有する場合は、ばね弾性作用によりドローグシュート32は外方に勢いよく押し出される。
【0124】
また、例えば、上記の実施の形態において、シリンダ10及びテレスコピックピストン20は、軸線xに交差する断面が円形の円筒状の部材である場合を例示したが、これに限られず、多角形(例えば、四角形)の角筒状であってもよい。
【0125】
また、例えば、上記の実施の形態において、異常検出部115は、予め実験により取得した傾き閾値118bに基づいて異常状態を判定する場合を例示したが、これに限られず、機械学習や深層学習等のAI技術に基づいて異常状態を判定してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1 パラシュート装置、10 シリンダ(第1筒部材)、20 テレスコピックピストン(第2筒部材)、26 突出部、30 パラシュート、31 主傘体(メインシュート)、32 副傘体(ドローグシュート)、32a 連結索(索)、40 ガス発生装置、50 ストッパ部材、52a 孔、55 シールド部材、6 エアバッグ装置、100 飛行装置、110 機体部、120 メインロータ、130 テールブーム、140 テールロータ、150 スキッド、x 軸線、Po 収納ポケット(ポケット)