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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ドア開閉装置及びドアチェック装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/619 20150101AFI20231005BHJP
   E05C 17/22 20060101ALI20231005BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E05F15/619
E05C17/22 A
B60J5/04 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019232905
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101073
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】藤川 義満
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0266080(US,A1)
【文献】特開2004-346598(JP,A)
【文献】実公昭47-038056(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/619
E05C 17/22
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア内に固定される装置本体と、
棒状で、長手方向に沿って、ギア領域及び位置決め凹部を形成された摺接領域を有し、一端部が前記ドアから突出して車体側に連結され、他端側が前記装置本体内に配置されるラックと、
を備え、
前記装置本体は、
前記ギア領域のギアと噛み合うピニオンと、
前記ピニオンを正逆回転させる駆動源と、
前記駆動源と前記ピニオンの間の連結状態を遮断可能なクラッチと、
前記ラックを進退可能にガイドするガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、前記ラックの位置決め凹部に係脱する位置決め部、及び前記摺接領域に向かって前記位置決め部を付勢する付勢部を有するチェック部材と、
を備え、
前記ラックは、前記摺接領域から前記ギア領域への前記位置決め部の移動を規制し、前記ラックに長手方向に沿って形成される凹溝の側面で構成されている移動規制部を有する、ドア開閉装置。
【請求項2】
ドア内に固定される装置本体と、
棒状で、長手方向に沿って、ギア領域及び位置決め凹部を形成された摺接領域を有し、一端部が前記ドアから突出して車体側に連結され、他端側が前記装置本体内に配置されるラックと、
を備え、
前記装置本体は、
前記ギア領域のギアと噛み合うピニオンと、
前記ピニオンを正逆回転させる駆動源と、
前記駆動源と前記ピニオンの間の連結状態を遮断可能なクラッチと、
前記ラックを進退可能にガイドするガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、前記ラックの位置決め凹部に係脱する位置決め部、及び前記摺接領域に向かって前記位置決め部を付勢する付勢部を有するチェック部材と、
を備え、
前記摺接領域は、前記ギア領域とは反対側に位置し、
前記チェック部材は、前記位置決め部を前記摺接領域に圧接することにより、前記ギア領域のギアを前記ピニオンに向かって付勢するように配置されている、ドア開閉装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記ラックをガイドするラックガイド部と、前記ピニオンが収容されるピニオン収容部とを備える、請求項1に記載のドア開閉装置。
【請求項4】
前記摺接領域は、前記ギア領域とは反対側に位置し、
前記チェック部材は、前記位置決め部を前記摺接領域に圧接することにより、前記ギア領域のギアを前記ピニオンに向かって付勢するように配置されている、請求項1に記載のドア開閉装置。
【請求項5】
前記ラックを長手方向のいずれか一方に付勢する弾性体を備える、請求項1からのいずれか1項に記載のドア開閉装置。
【請求項6】
ドア内に固定される装置本体と、
棒状で、長手方向に沿って、ギア領域及び位置決め凹部を形成された摺接領域を有し、一端部が前記ドアから突出して車体側に連結され、他端側が前記装置本体内に配置されるラックと、
を備え、
前記装置本体は、
前記ギア領域のギアと噛み合うピニオンと、
前記ラックを進退可能にガイドするガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、前記ラックの位置決め凹部に係脱する位置決め部、及び前記摺接領域に向かって前記位置決め部を付勢する付勢部を有するチェック部材と、
を備え
前記ラックは、前記摺接領域から前記ギア領域への前記位置決め部の移動を規制し、前記ラックに長手方向に沿って形成される凹溝の側面で構成されている移動規制部を有する、ドアチェック装置。
【請求項7】
ドア内に固定される装置本体と、
棒状で、長手方向に沿って、ギア領域及び位置決め凹部を形成された摺接領域を有し、一端部が前記ドアから突出して車体側に連結され、他端側が前記装置本体内に配置されるラックと、
を備え、
前記装置本体は、
前記ギア領域のギアと噛み合うピニオンと、
前記ラックを進退可能にガイドするガイド部と、
前記ガイド部に設けられ、前記ラックの位置決め凹部に係脱する位置決め部、及び前記摺接領域に向かって前記位置決め部を付勢する付勢部を有するチェック部材と、
を備え
前記摺接領域は、前記ギア領域とは反対側に位置し、
前記チェック部材は、前記位置決め部を前記摺接領域に圧接することにより、前記ギア領域のギアを前記ピニオンに向かって付勢するように配置されている、ドアチェック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア開閉装置及びドアチェック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア本体に設けた電動モータを正逆回転駆動し、その回転軸に減速機を介して設けたピニオンを正逆回転させることにより、これに噛合するラックを進退させてドアを開閉するようにしたドア開閉装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、アクチュエータとピニオンとの間にクラッチを設け、手動操作時には、クラッチで動力を遮断して、軽い力で手動操作できるようにしたドア開閉装置が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、前者のドア開閉装置では、ドアを所定開度に位置決めするドアチェック機構を備えたものではない。
【0005】
また、後者のドア開閉装置では、ドアチェック機構を備えるものの、ドア開閉装置とは別体で設けられているため大型化し、ドア内への窓ガラス等の配置に大きな制約を生じさせるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平6-6680号公報
【文献】特開2006-9400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、コンパクトな構成のドア開閉装置及びドアチェック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ドア内に固定される装置本体と、棒状で、長手方向に沿って、ギア領域及び位置決め凹部を形成された摺接領域を有し、一端部が前記ドアから突出して車体側に連結され、他端側が前記装置本体内に配置されるラックとを備え、前記装置本体は、前記ギア領域のギアと噛み合うピニオンと、前記ピニオンを正逆回転させる駆動源と、前記駆動源と前記ピニオンの間の連結状態を遮断可能なクラッチと、前記ラックを進退可能にガイドするガイド部と、前記ガイド部に設けられ、前記ラックの位置決め凹部に係脱する位置決め部、及び前記摺接領域に向かって前記位置決め部を付勢する付勢部を有するチェック部材とを備えるドア開閉装置である。
【0009】
この構成によれば、駆動源を駆動してピニオンを回転させると、ピニオンに噛合するラックが移動して装置本体から突出し、車体に対してドアが回動する。チェック部材は別体ではなく、装置本体に設けられているので、小型化して、ドア内に窓ガラス等を配置する十分なスペースを確保できる。
【0010】
前記ラックは、前記摺接領域から前記ギア領域への前記位置決め部の移動を規制する移動規制部を有するのが好ましい。
【0011】
この構成によれば、振動等により位置決め部が摺動領域から離脱してギア領域に向かうことがなく、良好な動作状態を維持できる。
【0012】
前記移動規制部は、前記ラックに長手方向に沿って形成される凹溝の側面で構成されているのが好ましい。
【0013】
この構成によれば、ラックに凹溝を形成しただけの簡単な構成で、摺動領域からの位置決め部の離脱を防止できる。
【0014】
前記ガイド部は、前記ラックをガイドするラックガイド部と、前記ピニオンが収容されるピニオン収容部とを備えるのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ラックとピニオンのギア同士が噛合する部分を覆うことにより、埃等が付着することを防止できる。そして、長期に亘って良好な動作状態を維持し、耐久性を向上させることが可能となる。
【0016】
前記摺接領域は、前記ギア領域とは反対側に位置し、前記チェック部材は、前記位置決め部を前記摺接領域に圧接することにより、前記ギア領域のギアを前記ピニオンに向かって付勢するように配置されているのが好ましい。
【0017】
この構成によれば、位置決め部による付勢力をラックとピニオンのギアの噛合状態を高めるように作用させることができ、動力の伝達状態を良好なものとすることが可能となる。
【0018】
前記ラックを長手方向のいずれか一方に付勢する弾性体を備えるのが好ましい。
【0019】
この構成によれば、弾性体によってラックを付勢することにより、ラックとピニオンの間のバックラッシュの発生を抑制できる。
【0020】
本発明の他の態様は、ドア内に固定される装置本体と、棒状で、長手方向に沿って、ギア領域及び位置決め凹部を形成された摺接領域を有し、一端部が前記ドアから突出して車体側に連結され、他端側が前記装置本体内に配置されるラックとを備え、前記装置本体は、前記ギア領域のギアと噛み合うピニオンと、前記ラックを進退可能にガイドするガイド部と、前記ガイド部に設けられ、前記ラックの位置決め凹部に係脱する位置決め部、及び前記摺接領域に向かって前記位置決め部を付勢する付勢部を有するチェック部材とを備えるドアチェック装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、チェック部材を装置本体に設けるようにしたので、装置全体を小型化してドア内に窓ガラス等を配置できる十分なスペースを確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係るドア開閉装置を備えたドアの閉鎖状態を示す概略図。
図2】本実施形態に係るドア開閉装置を備えたドアの開放状態を示す概略図。
図3図1のドア開閉装置の斜視図。
図4図3の部分分解斜視図。
図5図4のケース本体の斜視図。
図6図4の蓋体を反対側から見た斜視図。
図7図4のラックの斜視図。
図8図7に示すラックを異なる方向から見た斜視図。
図9図4で露出した内部機構を示す正面図。
図10】他の実施形態に係るドア開閉装置の内部機構を示す正面図。
図11】他の実施形態に係るドア開閉装置の内部機構を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1及び図2は、本実施形態に係るドア開閉装置1を備えたドア2の閉鎖状態及び開放状態をそれぞれ示す概略図である。ドア2は、ヒンジ3を介して車体4に回動可能に取り付けられている。手動動作時は、ハンドル5を操作すると、ドア2はヒンジ3を中心として回動し、車体4に形成される乗降口を開閉する。
【0025】
図3及び図4に示すように、ドア開閉装置1は装置本体6とラック7を備える。
【0026】
装置本体6は、ラック7のガイド部としての機能を有するケース8に、ピニオン9、駆動源であるモータ10、クラッチ11、太陽歯車、遊星歯車及び軸部材27からなる減速機構12、及びチェック部材13を設けたものである。モータ10、クラッチ11及び減速機構12については従来公知の構造であるので、詳細な構成についての説明は省略し、図4に2点鎖線で取付位置のみを図示する。
【0027】
ケース8は、第1ケース部14、第2ケース部15、及び第3ケース部16を備える。第1ケース部14にはモータ10が収容されている。第1ケース部14は、ブラケット17を介してドア2の内面に設けたインナーパネル(図示せず)に固定されている。第2ケース部15は、第1ケース部14と同一軸心上に配置され、第1ケース部14とは互いに連通している。第2ケース部15の内部にはクラッチ11及び減速機構12が収容されている。
【0028】
第3ケース部16は、ケース本体18と蓋体19を備える。
【0029】
図5に示すように、ケース本体18は、第1ケース部14及び第2ケース部15の軸心方向とは直交する方向に延びるラックガイド部20と、このラックガイド部20の一端側で側方に膨らんだピニオン収容部21とを備える。
【0030】
ラックガイド部20は、底壁20a、一対の側壁20b,20c、及び一端壁20dで構成され、他端と天井部分が開口している。底壁20aには、所定間隔で長手方向に延びる第1突条22及び第2突条23が形成されている。第1突条22は、途中2箇所が切除され、第3ケース部16を第2ケース部15に取り付けるためのねじ30(図9参照)との干渉が回避されている。第1突条22と第2突条23の間は、後述するラック7のガイド突条40を摺動可能にガイドするガイド溝24となっている。一方の側壁20bの一端側は切除され、後述するピニオン収容部21と連通している。両側壁20b,20cの外面には2箇所ずつ係止受部25が形成されている。各係止受部25は、所定間隔で形成した一対の凸部25aと、これら凸部25aの間に形成した爪部25bとで構成されている。一方の側壁20cにはさらに、ピニオン収容部21に対向する部分に厚肉部26が形成されている。厚肉部26は、側壁20bの内面から突出し、ラック7の側面をガイドするガイド凸部26aを有する。厚肉部26には所定間隔で一対のねじ孔26bが形成されている。
【0031】
ピニオン収容部21は、ラックガイド部20の底壁20aと連続する底壁21aと、この底壁21aを囲む略円弧状の側壁21bとで構成され、ラックガイド部20とは一方の側壁20bの切除部分を介して連通している。底壁21aの中央部分には開口部21cが形成され、減速機構12の軸部材27が突出している。
【0032】
ピニオン収容部21にはピニオン9が配置されている。ピニオン9の中心孔に軸部材27が嵌合し、両者は一体的に回転するようになっている。側壁21bの外面3箇所には、ラックガイド部20に設けたのと同様な係止受部25が形成されている。また、側壁21bの外面2箇所には、係止受部25の間に形成された膨出部分にねじ孔21dがそれぞれ形成されている。
【0033】
図6に示すように、蓋体19は、ケース本体18のラックガイド部20及びピニオン収容部21をそれぞれ覆う矩形状部19a及び円形状部19bからなる板状体で構成されている。
【0034】
蓋体19には、ケース本体18の各係止受部25に対応する位置に係止部28がそれぞれ形成されている。各係止部28は、略U字状に突出し、両側縁が係止受部25の各凸部25aにガイドされ、中央部に形成される係止孔28aに爪部25bが係止されるようになっている。そして、ケース本体18の天井側開口に蓋体19を重ね合わせ、係止受部25に係止部28を係止させることにより、ケース本体18に蓋体19が取り付けられるようになっている。
【0035】
蓋体19には、ケース本体18の各ねじ孔21d,26bに対応する位置に貫通孔29がそれぞれ形成されている。貫通孔29を介してねじ孔21d、26bにねじ30(図4参照)を螺合することにより、ケース本体18に対する蓋体19の取付状態を強固なものとしている。具体的に、ピニオン9が配置される部分と、後述するチェック部材13が配置される部分の取付状態を強固なものとしている。
【0036】
矩形状部19aには、長手方向に延びる突条部19cが形成されている。突条部19cは、蓋体19でケース本体18の開口部を閉鎖したときに、後述するラック7の第2側面7bに沿い、ラック7をガイドする。また矩形状部19aには、ストッパ収容部31が形成されている。ストッパ収容部31は有底筒状で、ケース本体18側に開口している。ストッパ収容部31の底面中央には貫通孔が形成されている。
【0037】
ストッパ収容部31には、チェック部材13が配置されている。すなわち、位置決め部であるストッパ32と、これを付勢する付勢部であるコイルスプリング33とが配置されている。ストッパ32は、鍔部32aを有し、そこから先端側に突出する軸部32bの先端部分は半球状となっている。鍔部から後端側に軸部32cが突出し、ストッパ収容部31の貫通孔を挿通している。コイルスプリング33は、軸部32cの周囲に配置されている。ストッパ32及びコイルスプリング33をストッパ収容部31に収容した状態では、コイルスプリング33の付勢力によってストッパ32が後述するラック7の摺接領域37に圧接する。ストッパ収容部31は、ねじ30を螺合するために形成した貫通孔29のうち、隣接する2つの貫通孔29の近傍に形成されている。このため、コイルスプリング33の付勢力が作用している部分での蓋体19の取付状態を強固なものとして、ストッパ32のがたつきや外れ等を防止できるようになっている。
【0038】
円形状部19bには、ピニオン収容部21側の内面中央部に環状凸部34によって軸受凹部35が形成されている。軸受凹部35には、軸部材27の先端部分が回転可能に収納されている。環状凸部23は、ピニオン9の軸方向端面を支持し、ピニオン9の傾きを抑制する。
【0039】
図7及び図8に示すように、ラック7は、一端から他端に向かって延びる、第1~4側面7a~7dを有する断面矩形の棒状である。
【0040】
第1側面7aにはギア領域36が設けられている。ギア領域36には、長手方向に沿って所定ピッチで歯切りされることにより複数のギア36aが形成されている。
【0041】
第1側面7aに直交する第2側面7bには摺接領域37が設けられている。摺接領域37は、第2側面7bの表面から窪んだ凹溝38で構成されている。凹溝38は、第2側面7bの一端の途中から他端に至るまでの範囲で、ギア領域36とは反対側の半部に形成されている。ギア領域36と摺接領域37は、長手方向に直交する方向(第1側面7aに直交する方向)から見たとき、オーバーラップする位置に形成されている。このため、ラック7をピニオン9との噛合状態を維持できる必要最小限の長さとすることができる。また、凹溝38の側面38aが、凹溝38の底面を摺接するストッパ32のギア領域側への移動を規制する移動規制部として機能する。凹溝38の底面の2箇所には位置決め凹部39が設けられている。各位置決め凹部39は、両端から中央に向かって徐々に深くなるように形成されている。各位置決め凹部39にストッパ32が位置することにより、ラック7の移動が規制され、ドア2が所定開度に位置決めされるようになっている。
【0042】
第1側面7aに直交する第3側面7cには、ギア領域36のギア36aの歯底に沿って側方に向かって突出するガイド突条40が形成されている。ガイド突条40は、ラックガイド部20の底壁に形成したガイド溝24に配置され、このガイド溝24に沿って摺動する。ガイド突条40に沿って複数の凹部41が形成されている。これら凹部41によってラック7の剛性低下を抑制しつつ軽量化が図られている。
【0043】
ラック7の一端部には貫通孔7eが形成されている。ラック7の一端側は、ドア2の端面より突出し、貫通孔7eを介して車体側に取り付けた固定具42(図1参照)に回転可能に連結されている。
【0044】
次に、前記構成のドア開閉装置1の動作について説明する。
【0045】
図1に示すように、ドア2により車体4の乗降口を閉鎖した状態では、ラック7がドア2内に侵入している。ここで、モータ10を駆動してピニオン9を、図9中、矢印r1方向に正回転させると、ギアの噛合位置が変化し、ラック7が矢印s1方向に移動する。ラック7は、移動中、ガイド突条40をケース8側のガイド溝24にガイドされる。また、チェック部材13によってこのガイド状態が維持されるように圧接される。さらに、ラック7の第4側面7dはケース8に形成したガイド凸部26aによってガイドされる。このガイド位置は、ラック7のギアとピニオン9の噛合位置の丁度反対側である。したがって、ラック7をがたつきなくスムーズに移動させ、ドア2の自動開放動作を安定させることができる。
【0046】
図2に示すように、ドア2により車体4の乗降口を開放した状態では、ラック7の一端側がドア2から突出している。ここで、モータ10を駆動してピニオン9を、図9中、矢印r2方向に逆回転させると、ギアの噛合位置が変化し、ラック7が矢印s2方向に移動する。この場合もドア2の自動開放動作と同様に、ラック7のガイド突条40がケース側のガイド溝24を摺接し、第4側面7dがガイド凸部26aによってガイドされ、しかもラック7はチェック部材13によって押圧された状態を維持する。したがって、ラック7をがたつきなくスムーズに移動させ、ドア2の自動閉鎖動作を安定させることができる。
【0047】
ドア2を手動で開閉する場合、クラッチ11によりモータ10とピニオン9の間を遮断して負荷を軽減する。ドア2は、摺接領域37に圧接するストッパ32が位置決め凹部39に位置することにより所定開度に位置決めされる。ここでは、ストッパ32が2箇所の位置決め凹部39にそれぞれ位置することにより、ドア2を開度の異なる2箇所に位置決めできるようになっている。
【0048】
このように、前記実施形態に係るドア開閉装置1によれば、次のような効果を奏する。
【0049】
(1)ケース8を構成する蓋体19にストッパ収容部31を設け、このストッパ収容部31にチェック部材13であるストッパ32及びコイルスプリング33を配置するようにしている。このため、チェック部材13を備えたチェック機能を別途設ける必要がなく、全体としてドア開閉装置1をコンパクトな構成とすることができる。したがって、ドア2内に窓ガラスを配置する十分なスペースを確保することが可能となる。
【0050】
(2)ケース本体18にガイド溝24を形成し、このガイド溝24にラック7に形成したガイド突条40を位置させているので、ラック7の移動状態を安定させることができる。
【0051】
(3)ラック7に移動規制部を形成しているので、衝撃や振動等が作用したとしても、ストッパ32がギア領域36へと移動することがなく、動作不良が発生することもない。移動規制部をラック7に形成した凹溝38の側面38aで構成しているので、構造を簡略化して安価に製作することができる。
【0052】
(4)コイルスプリング33によってストッパ32をラック7の摺接領域37に圧接しているが、ストッパ32及びコイルスプリング33が配置されるストッパ収容部31の近傍をねじ止めすることによって蓋体19をケース本体18に固定している。このため、蓋体19の取付強度が高められ、コイルスプリング33の付勢力によってがたつきや外れ等が発生することはない。
【0053】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0054】
前記実施形態では、ラック7の第2側面7bにのみ摺接領域37を設けるようにしたが、第3側面7cにも位置決め凹部39を有する摺接領域37を設けるようにしてもよい。そして、第3側面7cに設けた摺接領域37にも別途設けたストッパ32を圧接させ、ラック7の両側面7b,7cにストッパ32を摺接させるようにすればよい。
【0055】
また、図10に示すように、ラック7の位置決め凹部39を有する摺接領域37を第4側面7dに設け、この第4側面7dに設けた摺接領域37をチェック部材13で押圧するようにしてもよい。すなわち、コイルスプリング33の付勢力によりストッパ32を摺接領域37に圧接するようにしてもよい。これによれば、ラック7をストッパ32で押して、ラック7のギア36aとピニオン9とが噛合する方向に力を作用させてがたつき等の発生を防止できる。
【0056】
前記実施形態では、ラック7は直線状に形成するようにしたが、湾曲させるのが好ましい。すなわち、ドア2とピニオン9の回動中心の位置が近傍であれば、ラック7を直線状に移動させるようにしてもよいが、離れればピニオン9に対するラック7の位置関係が大きく変位する。そこで、ラック7を湾曲させることにより、ドア2の回動位置が変化しても、ピニオン9に対して確実にラック7を噛合できるようにする。
【0057】
前記実施形態では、ラック7に形成した移動規制部は、凹溝38の側面38aで構成するようにしたが、別途突条を形成し、その側面で構成するようにしてもよい。要するに、ストッパ32のギア領域側への移動を阻止できる構成であれば、種々の構成を採用することができる。
【0058】
前記実施形態では、ラック7はピニオン9の回転により移動させるだけの構成としたがラック7を長手方向に付勢する弾性体を設けるようにするのが好ましい。弾性体はコイルスプリング33であってもよいし、ウレタン等であってもよい。弾性体によってラック7に作用させる力は引っ張り力であってもよいし、押圧力であってもよい。図11の例では、ラックガイド部20内にコイルスプリング43を配置し、このコイルスプリング43でラック7をラックガイド部20から突出する方向に付勢するようにしている。
【0059】
前記実施形態では特に言及しなかったが、ラック7の移動位置をセンサ等によって検出し、その検出結果に基づいてドア2の開度を特定するようにしてもよい。例えば、ラック7の所定位置に永久磁石を埋め込み、ケース8側にこの永久磁石の位置を検出するホールICを設けた構成を採用することができる。
【0060】
前記実施形態では、モータ10等を搭載してドア2を自動開閉できるようにしたが、ドアチェック装置のみで構成することもできる。すなわち、前記ドア開閉装置1を、駆動機構(第1ケース部14及び第2ケース部15とその内部構成部品)以外の部品で構成することにより、ドア2を開閉する際の所定位置での位置決め機能のみを奏するようにすることができる。ピニオン9は、ラック7を移動させる際の動作の妨げにならなければ設けておいてもよい。この場合、駆動機構は後に追加することも可能である。ピニオン9が予め取り付けられているのであれば、その中心孔に駆動機構側の軸部材27を嵌合し、ドアチェック装置に駆動機構を取り付けるだけで、ドア開閉装置1を得ることができる。
【0061】
前記実施形態では、ケース本体18にガイド溝24を形成し、ラック7にガイド突条40を設けるようにしたが、ラック7にガイド溝24を形成し、ケース本体18にガイド突条40を設けるようにしてもよい。
【0062】
前記実施形態では、摺接領域37に位置決め凹部39を2つ設けるようにしたが、1又は3以上設けるようにしてもよい。
【0063】
前記実施形態では、ラック7のギア領域36と摺接領域37は、長手方向に直交する方向から見たとき、重なる位置に形成するようにしたが、それぞれの少なくとも一部が重なるように形成してもよい。また、ギア領域36と摺接領域37の重なる方向は、長手方向に直交する方向であればよく、前記実施形態の方向に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 ドア開閉装置
2 ドア
3 ヒンジ
4 車体
5 ハンドル
6 装置本体
7 ラック
8 ケース(ガイド部)
9 ピニオン
10 モータ(駆動源)
11 クラッチ
12 減速機構
13 チェック部材
14 第1ケース部
15 第2ケース部
16 第3ケース部
17 ブラケット
18 ケース本体
19 蓋体
20 ラックガイド部
21 ピニオン収容部
22 第1突条
23 第2突条
24 ガイド溝
25 係止受部
26 厚肉部
27 軸部材
28 係止部
29 貫通孔
30 ねじ
31 ストッパ収容部
32 ストッパ(位置決め部)
33 コイルスプリング(付勢部)
34 環状凸部
35 軸受凹部
36 ギア領域
37 摺接領域
38 凹溝
39 位置決め凹部
40 ガイド突条
41 凹部
42 固定具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11