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特許7360945抗ヒトGPVI抗体を用いた血小板凝集の阻害
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】抗ヒトGPVI抗体を用いた血小板凝集の阻害
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20231005BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231005BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/62 Z
A61K39/395 D
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P7/02
A61P9/00
A61K39/395 N
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019542193
(86)(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 EP2018052664
(87)【国際公開番号】W WO2018141909
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】17154658.3
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518038906
【氏名又は名称】アクティコー バイオテック
(73)【特許権者】
【識別番号】520053762
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シテ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS CITE
(73)【特許権者】
【識別番号】503455916
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・13
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS 13
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】321004758
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・サクレー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ビリアルド,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンドロート-ペルス,マルティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】アベナルド,ギレス
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-507383(JP,A)
【文献】特表2013-514077(JP,A)
【文献】国際公開第2006/118350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K
C12Q
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/Geneseq
Uniprot/Geneseq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する単離されたヒト化タンパク質を含む、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気の治療に使用するための組成物であって、前記単離されたヒト化タンパク質は、前記対象に少なくとも2時間投与され、
前記タンパク質は、抗体分子または抗体断片であり、
前記抗体分子または抗体断片の重鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号7を含み、
前記抗体分子または抗体断片の軽鎖可変領域のアミノ酸配列が配列番号8を含む、
組成物。
【請求項2】
前記単離されたヒト化タンパク質は、前記対象に少なくとも4~6時間投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記単離されたヒト化タンパク質は、注入される、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記単離されたヒト化タンパク質は、静脈内注入によって注入される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
約0.5mg/kg~約50mg/kgの範囲の用量のヒト化タンパク質が前記対象に投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
約1mg/kg~約32mg/kgの範囲の用量のヒト化タンパク質が前記対象に投与される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
約8mg/kgの用量のヒト化タンパク質が前記対象に投与される、請求項5または請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
約125mg~約2000mgの範囲の用量のヒト化タンパク質が前記対象に投与される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
約500mg~約1000mgの範囲の用量のヒト化タンパク質が前記対象に投与される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記単離されたヒト化タンパク質の最初のボーラスが投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記最初のボーラスの投与は、投与される前記単離されたヒト化タンパク質の総投与量の約20%を含み、前記最初のボーラスは約15分で投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記タンパク質は15nM未満のhGPVIへの結合についてのKを有し、前記Kは、960~1071RUの可溶性ヒトGPVIおよびランニングバッファーとしてのPBS(pH7.4)を用いる表面プラズモン共鳴によって測定され、前記単離されたヒト化タンパク質はインビボにおいてGPVI枯渇表現型を誘導しない、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記単離されたヒト化タンパク質は、全長抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fv、Fabおよびユニボディからなる群から選択される抗体分子または抗体断片である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記単離されたヒト化タンパク質は、一価である、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記GPVIに関連する病気は、動脈と静脈の血栓症、再狭窄、急性冠症候群、アテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害、虚血性脳卒中を含む脳血管疾患、静脈血栓塞栓症疾患、血栓性微小血管症、および血管性紫斑病から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記GPVIに関連する病気は、冠動脈および大脳動脈の疾患から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記GPVIに関連する病気は、アテローム血栓症、虚血性イベント、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、脳卒中、経皮的冠動脈介入、ステント血栓症、虚血性再狭窄、急性虚血、重症下肢虚血、慢性虚血、大動脈疾患およびその派生疾患、末梢動脈疾患、静脈血栓症、急性静脈炎、肺塞栓症、癌関連の血栓症、炎症性血栓症、および感染に関連する血栓症から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記対象が、前記タンパク質の投与の前に、または前記タンパク質の投与と同時に、または前記タンパク質の投与の後に、血栓溶解剤で治療される、請求項1~17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記血栓溶解剤が組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記対象が、血管内治療および/もしくは血栓摘出術によって、以前に治療されたか、またはこれから治療される、請求項1~19のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心血管疾患の治療に関する。特に本発明は、それを必要とするヒト患者への新規な抗ヒト糖タンパク質VI抗体またはその断片の連続投与を含む、心血管疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、急性の冠動脈および脳血管障害は世界における主な死因である。また急性冠症候群に罹患してから治療後6ヶ月間における世界規模での再発および死亡の発生率はなお8~15%である。
【0003】
ST上昇を有する急性冠症候群の場合、冠動脈血管形成術およびステントの導入による機械的治療は冠動脈の流れを緊急に回復させるには非常に効率的であるが、その後の6ヶ月間における患者の約15%の罹患率/死亡率を防止するものではない。長期間の線維素溶解薬、抗凝固薬および抗凝集薬の組み合わせを用いる血栓溶解治療でさえもそれほど有望な結果は得られない。実際に、血栓症の医学的治療における向上にも関わらず、6ヶ月後の罹患率/死亡率はST上昇を有しない急性冠症候群で観察されるものと同様である。
【0004】
虚血性脳血管障害に関する治療は一般に、大部分の患者の治療の遅れや現在入手可能な抗血栓治療の出血のリスクが原因でなお非常に限られている。
【0005】
従って、心血管疾患の治療を向上させる臨床的必要性、特に入手可能な分子と比較して向上した特徴を有する新しい分子および前記分子を投与するための特定の投薬計画の臨床的必要性がなお存在する。直面する課題は、病的血栓症に対して優れた効率を有するが出血のリスクのない分子および投与プロトコルを得ることである。
【0006】
この要求に答えるために、その標的は健康な血管において出血を抑えることが求められる生理的止血よりも罹患した血管において生じる血栓形成においてより大きな役割を有するものでなければならない。これは、脳卒中を含む実験的血栓症すなわち血管リモデリングにおいて役割を担い、かつアテローム血栓症において重要であることが動物において実証されている血小板糖タンパク質VI(Glycoprotein VI:GPVI)の場合である。
【0007】
血栓症治療において現在使用されており、かつ血小板の最終活性化段階、すなわち血小板凝集を阻害するαIIbβ3インテグリン拮抗薬および血小板動員拮抗薬(P2Y12 ADP受容体阻害剤およびアスピリン)とは対照的に、GPVIは血小板血栓の形成のいくつかの工程、すなわち損傷した血管壁との相互作用による開始、二次的作用物質の分泌を生じさせる最初の血小板活性化による増幅、インテグリンおよび血小板凝固促進活性の活性化、フィブリンとの相互作用による増殖および安定化に関わっている(Mammadova-Bachら,2015.Blood.126(5):683-91)。従って、GPVI拮抗薬は血小板凝集だけでなく、血管の病変の発生を引き起こす二次的作用物質の遊離ならびに増殖因子およびサイトカイン分泌も防止することができる。最後に、GPVI発現は血小板および巨核球に限定され、従って抗血栓治療の完全に特異的な標的であることを表している。
【0008】
そこで、心血管疾患を治療するためにGPVI拮抗薬が開発された。
【0009】
国際公開第2001/000810号および国際公開第2003/008454号はどちらもGPVI細胞外ドメインとヒトIgのFcドメインとの間の融合タンパク質である可溶性GPVI組換えタンパク質について記載している。この可溶性組換えGPVIタンパク質はコラーゲンに結合するために血小板GPVIと競合する。最初はこの可溶性GPVIタンパク質により血栓症マウスモデルにおいて有望な結果が得られたが、これらの結果は立証されなかった。またこの手法は構造上、機能上および薬理上の欠点を含む。第1にこの化合物は高分子量キメラタンパク質(約160kDa)である。GPVI-Fcは血管損傷部位において露出されたコラーゲンを標的にし、その量および到達性は予測可能性が不十分であり、従って注入される製品の量はGPVI-Fcの使用上の潜在的限界となる。別の限界は融合タンパク質上で潜在的に露出された新エピトープに対する免疫化のリスクである。
【0010】
ヒトGPVIに対する中和モノクローナル抗体についても当該技術分野において記載されている。
【0011】
例えば、EP1224942およびEP1228768は、血栓性疾患の治療のためのマウスGPVIに特異的に結合するラット抗GPVIモノクローナル抗体JAQ1を開示している。JAQ1抗体は、マウス血小板上のGPVI受容体の不可逆的な内部移行を誘導する。
【0012】
EP1538165は、別のラット抗GPVIモノクローナル抗体(hGP 5C4)について記載しており、そのFab断片はコラーゲン刺激によって誘導される血小板の主要な生理的機能に対して顕著な阻害効果を有することが分かった。すなわち、コラーゲンによって媒介される生理的活性化マーカーPAC-IおよびCD62P-セレクチンの刺激はhGP 5C4のFabによって完全に防止され、hGP 5C4のFabはどんな内因活性も引き起こすことなくエクスビボでヒト血小板凝集を強力に阻害した。しかし、5C4はラット抗体であり、従って非常に限られた治療可能性しか示さない。
【0013】
国際公開第2005/111083号は、4種類のマウス抗GPVIモノクローナル抗体OM1、OM2、OM3およびOM4について記載しており、これらはインビトロでのGPVIのコラーゲンへの結合、コラーゲンに誘導される分泌およびトロンボキサンA2(TXA2)形成ならびにエクスビボでのカニクイザルへの静脈内注射後のコラーゲン誘導性血小板凝集を阻害することが分かった。OM4はラット血栓症モデルにおいて血栓形成を阻害するようにも見える。
【0014】
国際公開第2001/000810号は、8M14.3、3F8.1、9E18.3、3J24.2、6E12.3、1P10.2、4L7.3、7H4.6、9O12.2、7H14.1および9E18.2という名称の各種マウス抗GPVIモノクローナル抗体ならびにA9、A10、C9、A4、C10、B4、C3およびD11という名称のいくつかのヒトファージ抗体scFv断片についても記載している。抗体9E18.3、7H4.6および9O12.2ならびにscFv断片A10、A4、C10、B4、C3およびD11などのこれらの抗体およびscFv断片のいくつかは、GPVIのコラーゲンへの結合を阻害することが分かった。また、9O12.2Fab断片は、コラーゲン誘導性血小板凝集および分泌を完全に阻止し、フィブリン誘導性血小板凝集を阻止し、コラーゲン刺激性またはフィブリン刺激性血小板凝固促進活性および静的条件下でのコラーゲンまたはフィブリンへの血小板接着を阻害して血小板接着を減じて、動脈流条件下で血栓形成を防止することが分かった。
【0015】
国際公開第2008/049928号は、9O12.2に由来し、かつ(GlySer)ペプチドを介して結合された9O12.2モノクローナル抗体のVHおよびVLドメインからなるscFv断片について記載している。
【0016】
しかし、現在知られている抗GPVI抗体はどれもインビボでは心血管疾患を予防および/または治療するのに効率的でないことが分かった。特に、報告されている抗GPVI抗体の大部分は、特にそれらが動物由来であるという理由でヒトにおける医学的使用のための抗血栓薬の開発には適していないように見えた。
【0017】
特に、ヒトGPVIに対するいくつかのヒトファージ抗体scFvは阻害性であることが報告されているが、それらの親和性は低いように見える。さらに、9O12.2全長IgGなどの二価もしくは多価のリガンドによる血小板表面におけるGPVIの架橋結合により、GPVI二量体化およびGPVIの低親和性Fc受容体(FcγRIIA)への架橋結合を介して血小板の活性化が生じる。対照的に、一価の9O12.2FabおよびscFv断片は阻害性である。
【0018】
しかし、これらの断片はそれらのサイズおよびヒト患者においてそれらを免疫原性にさせるそれらの動物由来性により治療薬で使用することができなかった。さらに、scFv断片はそれらの治療可能性を制限する短い半減期を示す。
【0019】
従って、ヒトにおいて免疫原性を有しない中和GPVI拮抗薬がなお必要とされている。
【0020】
US2006/0088531は、約7.9×10-7MのヒトGPVIへの結合のためのKを示すヒトscFv断片10B12について記載している。Smethurst(Smethurstら,2004.Blood.103(3):903-11)は、ヒトGPVIのIg様C2型ドメイン1(D1)上の10B12によって結合されるエピトープについてさらに記載している。このエピトープは、ヒトGPVIの残基R58、K61、R66、K79およびR80(UniProtKB受入番号Q9HCN6に基づく番号付け)を含む。
【0021】
またO’Connor(O’Connorら,2006.J.Biol.Chem.281(44):33505-10)は、GPVIに対して低い親和性(5.4×10-7M)を有するヒトscFv断片1C3について記載しており、これはコラーゲン誘導性血小板凝集もGPVIのコラーゲンへの結合も阻止しなかったが、10B12抗体の阻害効果を増強させた。GPVI中の1C3エピトープはアミノ酸I168を含み、このエピトープがマウスからヒトに高度に保存されている領域である残基S164とS182との間の領域を包含しているかもしれないとさらに仮定される。
【0022】
そこで、ヒトにおける心血管疾患を効率的かつ満足に予防および/または治療するための手段として、先行技術の拮抗薬と比較して向上した親和性、有効性および半減期を有するヒト化抗体(すなわち、ヒトにおいて免疫原性を有しない抗体)が必要とされている。さらに、これらの拮抗薬は好ましくは容易に精製されるものでなければならない。
【0023】
当該技術分野において、GPVI枯渇表現型を誘導する抗GPVI抗体が記載されている(国際公開第2006/118350号、国際公開第2011/073954号、EP2363416)。特に国際公開第2006/118350号は、全ての哺乳類に対する抗GPVI抗体を開示している。この抗体によって結合されるGPVIのエピトープが記載されており、これはGPVIのIg様C2型ドメイン2のループ9および11に対応し、アミノ酸残基136~142および158~162にそれぞれ対応する。
【0024】
しかし、GPVI枯渇は制御できず、かつ不可逆的であるため望ましくない(すなわち、巨核球に対するGPVI枯渇により血小板の寿命を持続させたりさらに引き延ばしたりする)。
【0025】
治療においては迅速かつ安全であって長期的(数時間という範囲)な抗血小板効果が必要とされる。従って、GPVI枯渇表現型を誘導せず、かつ好ましくはインビボでの血小板数の減少を誘導しない(すなわち可逆的効果を有する)抗体を開発しなければならない。
【0026】
本出願人は抗GPVI抗体を開発したが、前記抗体またはその抗原結合断片は、新規なこれまで記載されていない立体構造エピトープに結合する。前記抗GPVI抗体はヒトGPVIに対して強力な親和性を有し、かつインビボにおいて血小板数を減少させたりGPVIを枯渇させたりすることなくGPVIのそのリガンド(コラーゲンやフィブリンなど)との相互作用を阻止する。少なくとも2時間にわたって連続投与した場合、本抗体(またはその断片)は長期的なインビボ効果を示す。従って、本発明はヒトGPVIまたはその断片に特異的な向上したヒト化中和抗体の治療的使用に関する。
【発明の概要】
【0027】
本発明は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するための、ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する単離されたヒト化タンパク質であって、当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間投与される単離されたヒト化タンパク質に関する。
【0028】
一実施形態では、本単離されたヒト化タンパク質は、好ましくは静脈内注入によって注入される。別の実施形態では、本単離されたヒト化タンパク質は腹腔内に注射される。
【0029】
一実施形態では、当該患者に約0.5mg/kg~約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg~約32mg/kg、より好ましくは約2.5mg/kg~約25mg/kg、さらにより好ましくは約5mg/kg~約15mg/kgの範囲、なおさらにより好ましくは約8mg/kgの用量のヒト化タンパク質が投与される。
【0030】
別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質の用量は、約125mg~約2000mg、好ましくは約250mg~約1000mgまたは約500mg~約1000mgの範囲である。
【0031】
一実施形態では、最初のボーラスが投与され、好ましくは前記最初のボーラス投与は、投与される本単離されたヒト化タンパク質の総投与量の約10~50%、好ましくは約20%を含み、好ましくは前記最初のボーラスは約5~30分、好ましくは約15分で投与される。
【0032】
一実施形態では、前記タンパク質は、
- hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、
- hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む立体構造エピトープに結合する。
【0033】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む。
【0034】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~136またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~136と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、hGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはhGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基とを含む。
【0035】
一実施形態では、前記タンパク質は15nM未満のhGPVIへの結合についてのKを有し、前記Kは960~1071RUの可溶性ヒトGPVIおよびランニングバッファーとしてのPBS(pH7.4)を用いる表面プラズモン共鳴によって測定され、かつ前記単離されたヒト化タンパク質はインビボにおいてGPVI枯渇表現型を誘導しない。
【0036】
一実施形態では、本発明に係る使用のためのhGPVIに結合する単離されたヒト化タンパク質は、全長抗体(whole antibody)、ヒト化抗体、一本鎖抗体、Fv、Fabからなる群から選択される抗体分子、またはユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群から選択される抗体断片、またはアフィボディー(affibody)、アフィリン(affilin)、アフィチン(affitin)、アドネクチン(adnectin)、アトリマー(atrimer)、エバシン(evasin)、DARPin、アンチカリン(anticalin)、アビマー(avimer)、フィノマー(fynomer)およびバーサボディー(versabody)からなる群から選択される単量体抗体模倣体、好ましくは一価の抗体である。
【0037】
一実施形態では、hGPVIに結合する本単離された抗体分子は、
- 重鎖の可変領域が以下のCDR:
VH-CDR1:GYTFTSYNMH(配列番号1)、
VH-CDR2:GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)、および
VH-CDR3:GTVVGDWYFDV(配列番号3)
のうちの少なくとも1つまたは配列番号1~3と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含み、かつ
- 軽鎖の可変領域が以下のCDR:
VL-CDR1:RSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、
VL-CDR2:RVSNRFS(配列番号5)、および
VL-CDR3:LQLTHVPWT(配列番号6)
のうちの少なくとも1つまたは配列番号4~6と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含む、
抗体分子である。
【0038】
一実施形態では、重鎖の可変領域はGYTFTSYNMH(配列番号1)、GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)およびGTVVGDWYFDV(配列番号3)のCDRを含み、かつ軽鎖の可変領域はRSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、RVSNRFS(配列番号5)およびLQLTHVPWT(配列番号6)のCDRを含むか、あるいは前記配列番号1~6と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意のCDRを含む。
【0039】
一実施形態では、重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号7であり、かつ軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号8であるか、あるいは前記配列番号7または8と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意の配列である。
【0040】
一実施形態では、重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号7であり、かつ軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列は配列番号9であるか、あるいは前記配列番号7または9と少なくとも60%の同一性を共有するアミノ酸配列を有する任意の配列である。
【0041】
一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は、動脈と静脈の血栓症、再狭窄、急性冠症候群、およびアテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害から選択される心血管疾患である。
【0042】
一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は、動脈と静脈の血栓症、再狭窄、急性冠症候群、アテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害、心筋梗塞、肺塞栓症、重症下肢虚血および末梢動脈疾患から選択される心血管疾患である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
「糖タンパク質VI(GPVI)」は、血小板とコラーゲンとの相互作用に関与する血小板膜糖タンパク質である。GPVIは血小板の表面で発現される膜貫通コラーゲン受容体である。一実施形態では、ヒトGPVIのアミノ酸配列は、配列番号13(受入番号:BAA89353.1)または配列番号13と少なくとも約90%の同一性、好ましくは配列番号13と少なくとも約91、92、93、94、95、96、97、98、99%またはそれ以上の同一性を示す任意のアミノ酸配列である。
(配列番号13)
MSPSPTALFCLGLCLGRVPA(シグナルペプチド)
QSGPLPKPSLQALPSSLVPLEKPVTLRCQGPPGVDLYRLEKLSSSRYQDQAVLFIPAMKRSLAGRYRCSYQNGSLWSLPSDQLELVATGVFAKPSLSAQPGPAVSSGGDVTLQCQTRYGFDQFALYKEGDPAPYKNPERWYRASFPIITVTAAHSGTYRCYSFSSRDPYLWSAPSDPLELVVTGTSVTPSRLPTEPPSSVAEFSEATAELTVSFTNKVFTTETSRSITTSPKESDSPAGPARQYYTKGN(細胞外ドメイン)
LVRICLGAVILIILAGFLAEDWHSRRKRLRHRGRAVQRPLPPLPPLPQTRKSHGGQDGGRQDVHSRGLCS(膜貫通ドメインと細胞質ドメイン)
【0044】
GPVIの細胞外ドメインは2つのIg様C2型ドメイン、すなわちドメイン間ヒンジによって結合されたD1およびD2からなる。一実施形態では、D1は配列番号13のアミノ酸残基21~109を含む。一実施形態では、D1とD2とのドメイン間ヒンジは配列番号13のアミノ酸残基110~113を含む。一実施形態では、D2は配列番号13のアミノ酸残基114~207を含む。
【0045】
数字の前の「約」は前記数字の値の±10%を意味する。
【0046】
「抗体」または「免疫グロブリン」-本明細書で使用される「免疫グロブリン」という用語は、あらゆる関連する特異的免疫反応性を有するか否かに関わらず2本の重鎖および2本の軽鎖の組み合わせを有するタンパク質を含む。「抗体」とは、目的の抗原(例えばヒトGPVI)に対する有意な公知の特異的免疫反応活性を有するそのような組立体を指す。「抗GPVI抗体」という用語は、ヒトGPVIタンパク質に対する免疫学的特異性を示す抗体を指すように本明細書で使用される。本明細書のどこかで説明されているように、ヒトGPVIに対する「特異性」はGPVIの種相同体との交差反応を除外しない。抗体および免疫グロブリンはそれらの間の鎖間共有結合の有無に関わらず軽鎖および重鎖を含む。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている。「免疫グロブリン」という一般名称は、生化学的に識別することができる5つの異なるクラスの抗体を含む。5つの全てのクラスの抗体が本発明の範囲内であるが、以下の考察は一般にIgGクラスの免疫グロブリン分子に関するものである。IgGに関して、免疫グロブリンは、約23,000ダルトンの分子量の2本の同一のポリペプチド軽鎖と約53,000~70,000ダルトンの分子量の2本の同一の重鎖とを含む。これらの4本の鎖はジスルフィド結合によって「Y字型」に結合されており、軽鎖は「Y字型」の口部から開始し、かつ可変領域を通してずっと続く重鎖を囲んでいる。抗体の軽鎖はカッパまたはラムダ([κ]、[λ])のいずれかとして分類される。各重鎖クラスはカッパまたはラムダ軽鎖のいずれかに結合されていてもよい。一般に、免疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞または遺伝子操作された宿主細胞のいずれかによって産生される場合、軽鎖および重鎖は共有結合的に互いに結合されており、2本の重鎖の「尾部」領域は共有結合的ジスルフィド結合または非共有結合によって互いに結合されている。重鎖におけるアミノ酸配列はY字型の分岐した端部にあるN末端から各鎖の底部にあるC末端まで続いている。当業者であれば、重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、それらの中にいくつかのサブクラス(例えばγ1~γ4)があることを分かっているであろう。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDまたはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などは十分に特性解析されており、機能分化を与えることが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの修飾型は本開示を考慮すれば当業者には容易に識別可能であり、従って本発明の範囲内である。前述のとおり、抗体の可変領域により抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識して特異的に結合することができる。すなわち、抗体の軽鎖可変領域(VLドメイン)および重鎖可変領域(VHドメイン)は一緒になって3次元抗原結合部位を画定する可変領域を形成する。この4つからなる抗体構造は「Y」の各アームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位はVHおよびVL鎖のそれぞれにある3つの相補性決定領域(CDR)によって画定される。
【0047】
「単離された抗体」-本明細書で使用される「単離された抗体」は、その天然環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然環境の夾雑成分は抗体の診断もしくは治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク性もしくは非タンパク性成分が挙げられる。好ましい実施形態では、当該抗体は、(1)ローリー法で測定した場合に抗体の80、85、90、91、92、93、94、95重量%またはそれ以上を超えるまで、最も好ましくは99重量%を超えるまで精製されているか、(2)スピニングカップシークエネーターを用いて、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで精製されているか、あるいは(3)還元もしくは非還元条件下でクマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いるSDS-PAGEにより均質性が示されるまで精製されている。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1種の成分が存在していないため、組換え細胞内の原位置の抗体を含む。但し通常は、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0048】
「親和性バリアント」-本明細書で使用される「親和性バリアント」という用語は、参照抗GPVI抗体と比較した場合にアミノ酸配列において1つ以上の変化を示すバリアント抗体を指し、親和性バリアントは参照抗体と比較してヒトGPVIタンパク質との親和性の変化を示す。典型的には、親和性バリアントは参照抗GPVI抗体と比較した場合にヒトGPVIに対して向上した親和性を示す。その向上は、ヒトGPVIに対するより低いK、ヒトGPVIに対するより高いK、ヒトGPVIに対するより速い結合速度(on-rate)またはヒトGPVIに対するより遅い解離速度(off-rate)のいずれか、あるいは非ヒトGPVI相同体との交差反応性のパターンにおける変化であってもよい。親和性バリアントは典型的に、参照抗GPVI抗体と比較した場合にアミノ酸配列(例えばCDRなど)における1つ以上の変化を示す。そのような置換により、天然に生じるアミノ酸残基または天然に生じないアミノ酸残基であってもよい異なるアミノ酸残基によるCDR内の所与の位置に存在する元のアミノ酸の再配置が生じてもよい。アミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもよい。
【0049】
「結合部位」-本明細書で使用される「結合部位」という用語は、目的の標的抗原(例えばヒトGPVI)への選択的結合に関与するタンパク質の領域を含む。結合ドメインまたは結合領域は少なくとも1つ結合部位を含む。例示的な結合ドメインとしては抗体可変領域が挙げられる。本発明のタンパク質は、単一の抗原結合部位または複数の(例えば、2つ、3つまたは4つの)抗原結合部位を含んでいてもよい。但し好ましくは、本発明のタンパク質は単一の抗原結合部位を含む。
【0050】
「保存的アミノ酸置換」-本明細書で使用される「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、ペプチド化学の当業者がポリペプチドの二次構造および親水性/疎水性(hydropathic nature)が実質的に変わっていないことを期待するような同様の特性を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。従って、アミノ酸置換は一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいている。上記特性のいくつかを考慮した例示的な置換は当業者によく知られており、アルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとトレオニン、グルタミンとアスパラギン、およびバリンとロイシンとイソロイシンが挙げられる。さらに残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてアミノ酸置換を行ってもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸とグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としてはリジンとアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有する荷電していない極性の頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、アスパラギンとグルタミン、およびセリンとトレオニンとフェニルアラニンとチロシンが挙げられる。保存的変化を表し得るアミノ酸の他の群としては、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、および(5)phe、tyr、trp、hisが挙げられる。同様の側鎖を有するアミノ酸残基の他のファミリーが当該技術分野で定義されおり、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が挙げられる。このように、免疫グロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置換されていてもよい。別の実施形態では、アミノ酸の鎖は側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成において異なる構造的に同様の鎖で置換されていてもよい。
【0051】
「キメラ」-本明細書で使用される「キメラ」タンパク質は、本来は天然に結合されない第2のアミノ酸配列に結合された第1のアミノ酸配列を含む。そのアミノ酸配列は、通常は融合タンパク質において1つになる別個のタンパク質中に存在してもよく、あるいは通常は同じタンパク質中に存在してもよいが、融合タンパク質において新しい配列で配置されている。キメラタンパク質は例えば化学合成によって、あるいはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作製および翻訳することによって作り出してもよい。
【0052】
「CDR」-本明細書で使用される「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖および軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域内に存在する非隣接抗原結合部位を意味する。Kabat(Kabatら,1991.J.Immunol.147(5):1709-19)ならびにChothiaおよびLesk(Chothia C.およびA.M.Lesk,1987.J.Mol.Biol.196(4):901-17)から推定される以下の規則に従ってCDRを同定した。
- CDR-L1:
開始-およそ残基24
前の残基は常にCys
後の残基は常にTrp。典型的にはTRP-TYR-GLNであるが、TRP-LEU-GLN、TRP-PHE-GLN、TRP-TYR-LEUであってもよい
長さは10~17残基
- CDR-L2:
開始-L1の終了後に常に16残基
前の残基は一般にILE-TYRであるが、VAL-TYR、ILE-LYS、ILE-PHEであってもよい
長さは常に7残基
- CDR-L3:
開始-L2の終了後に常に33残基
前の残基は常にCys
後の残基は常にPHE-GLY-XXX-GLY(配列番号21)
長さは7~11残基
- CDR-H1:
開始-およそ残基26(CYSの後に常に4残基)、[Chothia/AbM定義]Kabat定義は5残基後から開始
前の残基は常にCYS-XXX-XXX-XXX(配列番号22)
後の残基は常にTRP。典型的にはTRP-VALであるが、TRP-ILE、TRP-ALAであってもよい
長さは10~12残基(AbM定義)、Chothia定義は最後の4残基を除外する
- CDR-H2:
開始-CDR-H1の終了(Kabat/AbM定義)後に常に15残基
前の残基は典型的にLEU-GLU-TRP-ILE-GLY(配列番号23)であるが、多くの変形が可能である
後の残基はLYS/ARG-LEU/ILE/VAL/PHE/THR/ALA-THR/SER/ILE/ALA
長さはKabat定義の16~19残基(AbM定義は7残基前で終了)
- CDR-H3:
開始-CDR-H2の終了後に常に33残基(常にCYSの後に2残基)
前の残基は常にCYS-XXX-XXX(典型的にはCYS-ALA-ARG)
後の残基は常にTRP-GLY-XXX-GLY(配列番号24)
長さは3~25残基
【0053】
「CH2ドメイン」-本明細書で使用される「CH2ドメイン」という用語は、通常は約アミノ酸231から約アミノ酸340まで延在する重鎖分子の領域を含む。CH2ドメインは別のドメインと密接に対をなしていないという点で独特である。それどころか、2つのN結合された分岐鎖状炭水化物鎖がインタクトな天然のIgG分子の2つのCH2ドメイン間に挿入されている。この炭水化物はドメイン-ドメイン対形成の代わりとなってCH2ドメインの安定化を助けることができると推測されている(Burton,Molec.Immunol.22(1985)161-206)。
【0054】
「~に由来する」-本明細書で使用される、指定のタンパク質(例えば抗GPVI抗体またはその抗原結合断片)「に由来する」という用語は、タンパク質の由来を指す。一実施形態では、特定の開始タンパク質に由来するタンパク質またはアミノ酸配列はCDR配列またはそれに関連する配列である。一実施形態では、特定の開始タンパク質に由来するアミノ酸配列は隣接していない。例えば一実施形態では、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのCDRは開始抗体に由来している。一実施形態では、特定の開始タンパク質またはアミノ酸配列に由来するタンパク質またはアミノ酸配列は、開始配列またはその領域のアミノ酸配列と本質的に同一のアミノ酸配列を有し、その領域は少なくとも3~5個のアミノ酸、少なくとも5~10個のアミノ酸、少なくとも10~20個のアミノ酸、少なくとも20~30個のアミノ酸または少なくとも30~50個のアミノ酸からなり、あるいはそれ以外に開始配列にその由来を有するものとして当業者によって同定可能である。一実施形態では、開始抗体に由来する1つ以上のCDR配列を変化させて、GPVI結合活性を維持するバリアントCDR配列、例えば親和性バリアントを作製する。
【0055】
「二重特異性抗体」-本明細書で使用される「二重特異性抗体」という用語は、Vドメインの鎖間であるが鎖内でない対形成が達成され、それにより二価の断片すなわち2つの抗原結合部位を有する断片が得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を有するsFv断片(sFvのパラグラフを参照)を構築することによって調製された小さい抗体断片を指す。二重特異性抗体は、2つの抗体のVHドメインとVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する2つの「交差」sFv断片からなるヘテロ二量体である。二重特異性抗体については、例えば欧州特許第0404097号、国際公開第1993/011161号およびHolliger(Holligerら,1993.Proc.Natl.Acad.Sci.90(14):6444-6448)により完全に記載されている。
【0056】
「操作された」-本明細書で使用される「操作された」という用語は、合成手段(例えば、組換え技術、ペプチドの酵素結合または化学的結合によるインビトロでのペプチド合成、あるいはこれらの技術のいくつかの組み合わせ)による核酸またはポリペプチド分子の操作を含む。好ましくは本発明の抗体は操作されており、例えば、ヒト化および/またはキメラ抗体、および抗原結合、安定性/半減期またはエフェクター機能などの1つ以上の特性を向上させるように操作されている抗体が挙げられる。
【0057】
「エピトープ」-本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体が結合するタンパク質上に位置する特異的なアミノ酸配列を指す。エピトープは多くの場合、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、特異的3次元構造特性ならびに特異的電荷特性を有する。エピトープは直鎖状であっても立体構造であってもよく、すなわち必ずしも隣接していなくてもよい抗原の様々な領域に2つ以上のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0058】
「フレームワーク領域」-本明細書で使用される「フレームワーク領域」または「FR領域」という用語は、可変領域の一部であるがCDRの一部ではないアミノ酸残基を含む(例えばCDRのKabat/Chothia定義を用いる)。従って、可変領域フレームワークは約100~120個のアミノ酸長であるがCDRの外側のアミノ酸のみを含む。重鎖可変領域の具体例およびKabat/Chothiaによって定義されるCDRについては、フレームワーク領域1はアミノ酸1~25を包含する可変領域のドメインに対応してもよく、フレームワーク領域2はアミノ酸36~49を包含する可変領域のドメインに対応してもよく、フレームワーク領域3はアミノ酸67~98を包含する可変領域のドメインに対応してもよく、かつフレームワーク領域4はアミノ酸110から可変領域の終わりまでの可変領域のドメインに対応してもよい。軽鎖のフレームワーク領域は軽鎖可変領域CDRのそれぞれによって同様に分離されている。天然に生じる抗体では、各単量体抗体に存在する6つのCDRは、抗体が水性環境においてその3次元構成をとるにつれて抗原結合部位を形成するように特異的に配置されたアミノ酸の短い非隣接配列である。重鎖および軽鎖可変ドメインの残りの部分はアミノ酸配列において分子間の可変性をほとんど示さず、フレームワーク領域と呼ばれている。フレームワーク領域は大部分が[β]シート立体構造をなし、CDRは[β]シート構造に接続し、かつ場合によってはその一部を形成するループを形成する。このようにして、これらのフレームワーク領域は、6つのCDRを鎖間の非共有結合性相互作用によって正しい向きに位置決めする足場を形成するように機能する。位置決めされたCDRによって形成される抗原結合部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに相補的な表面を画定する。この相補的な表面は免疫反応性抗原エピトープへの抗体の非共有結合を促進する。CDRの位置は当業者によって容易に特定することができる。
【0059】
「断片」-本明細書で使用される「断片」という用語は、インタクトすなわち完全抗体または抗体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む抗体または抗体鎖の一部または領域を指す。「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合するか抗原結合(すなわちヒトGPVIへの特異的結合)のためにインタクトな抗体(すなわち、由来元のインタクトな抗体)と競合する免疫グロブリンまたは抗体のタンパク質断片を指す。本明細書で使用される抗体分子の「断片」という用語は、抗体の抗原結合断片、例えば、抗体軽鎖可変(VL)ドメイン、抗体重鎖可変(VH)ドメイン、一本鎖抗体(scFv)、F(ab’)2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、単一ドメイン抗体断片(DAb)、1アーム(一価)の抗体、二重特異性抗体あるいはそのような抗原結合断片の組み合わせ、組立または結合によって形成されるあらゆる抗原結合分子を含む。例えばインタクトすなわち完全抗体または抗体鎖の化学もしくは酵素処理または組換え手段によって断片を得ることができる。
【0060】
抗体の「Fc」断片は、ジスルフィドによって互いに保持されている両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能はFc領域における配列によって決定され、この領域は特定の種類の細胞上に存在するFc受容体(FcR)によって認識される部分でもある。
【0061】
「Fv」-本明細書で使用される「Fv」という用語は、完全な抗原認識および結合部位を含む最小の抗体断片である。この断片は、密な非共有結合性会合状態の1本の重鎖および1本の軽鎖の可変領域ドメインの二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合に寄与し、かつ抗体に抗原結合特異性を与える6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖のそれぞれから3つのループ)が生じる。但し、単一の可変ドメイン(すなわち抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても結合部位全体よりも親和性は低いが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0062】
「重鎖領域」-本明細書で使用される「重鎖領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖の定常ドメインに由来するアミノ酸配列を含む。重鎖領域を含むタンパク質は、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上側、中央および/または下側ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインのうちの少なくとも1つあるいはそのバリアントまたは断片を含む。一実施形態では、本発明の結合分子は免疫グロブリン重鎖のFc領域(例えば、ヒンジ部、CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含んでいてもよい。別の実施形態では、本発明の結合分子は定常ドメインの少なくとも1つの領域(例えば、CH2ドメインの全てまたは一部)を欠失している。特定の実施形態では、定常ドメインの少なくとも1つおよび好ましくは全てがヒト免疫グロブリン重鎖に由来している。例えば好ましい一実施形態では、重鎖領域は完全ヒトヒンジドメインを含む。他の好ましい実施形態では、重鎖領域は完全ヒトFc領域(例えば、ヒト免疫グロブリンからのヒンジ、CH2およびCH3ドメイン配列)を含む。特定の実施形態では、重鎖領域の構成要素である定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子からのものである。例えば、タンパク質の重鎖領域は、IgG1分子に由来するCH2ドメインおよびIgG3またはIgG4分子に由来するヒンジ領域を含んでいてもよい。他の実施形態では、定常ドメインは異なる免疫グロブリン分子の領域を含むキメラドメインである。例えば、ヒンジはIgG1分子からの第1の領域とIgG3またはIgG4分子からの第2の領域とを含んでいてもよい。上に記載したように、天然に生じる(野生型)免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において変化するように重鎖領域の定常ドメインを修飾し得ることが当業者によって理解されるであろう。すなわち、本明細書に開示されている本発明のタンパク質は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2またはCH3)のうちの1つ以上および/または軽鎖定常ドメイン(CL)に対する変化または修飾を含んでいてもよい。例示的な修飾としては、1つ以上のドメインにおける1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換が挙げられる。
【0063】
「ヒンジ領域」-本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、CH1ドメインをCH2ドメインに結合する重鎖分子の領域を含む。このヒンジ領域は、およそ25残基を含み、かつ柔軟であるため、2つのN末端抗原結合領域を独立して移動させることができる。ヒンジ領域を3つの異なるドメイン、すなわち上側、中央および下側ヒンジドメインに細分することができる(Rouxら,1998.J.Immunol.161(8):4083-90)。
【0064】
超可変ループ(HV)は構造に基づいて定められるが、相補性決定領域(CDR)は配列可変性に基づいて定められるため(Kabat,Elvin A.(1983).Sequences of proteins of immunological interest(免疫学的関心のあるタンパク質の配列)(第5版),メリーランド州ベテスダ:米国公衆衛生局,国立衛生研究所)、「超可変ループ」および「相補性決定領域」という用語は厳密には同義ではなく、HVおよびCDRの限界はいくつかのVHおよびVLドメインにおいて異なってもよい。VLおよびVHドメインのCDRは典型的にKabat/Chothia定義(上を参照)によって定めることができる。一実施形態では、VLおよびVHドメインのCDRは、軽鎖可変ドメインに残基24~39(CDR-L1)、55~61(CDR-L2)および94~102(CDR-L3)、および重鎖可変ドメインに残基26~35(CDR-H1)、50~66(CDR-H2)および99~109(CDR-H3)のアミノ酸を含んでいてもよい。従って、HVは対応するCDR内に含まれていてもよく、本明細書においてVHおよびVLドメインの「超可変ループ」という場合、特に明記しない限り、対応するCDRも包含するものとして解釈されるべきであり、その逆もまた同様である。本明細書に定義されているように、可変ドメインのより高度に保存された領域をフレームワーク領域(FR)と呼ぶ。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFR(それぞれFR1、FR2、FR3およびFR4)を含み、大部分が3つの超可変ループによって接続された[β]シート構造をなしている。各鎖の超可変ループはFRによって他の鎖の超可変ループと非常に近接して一緒に保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。抗体の構造解析により、配列と相補性決定領域によって形成された結合部位の形状との関係が明らかになった(Chothiaら,1992.J.Mol.Biol.227(3):799-817;Tramontanoら,1990.J.Mol.Biol.215(1):175-182)。それらの高い配列可変性にも関わらず、6つのループのうちの5つは「カノニカル構造」と呼ばれる主鎖立体構造の小さいレパートリーのみを採用している。これらの立体構造は第一にループの長さによって決定され、第二にそれらの充填による立体構造、水素結合または普通でない主鎖立体構造をとる能力を決定するループおよびフレームワーク領域内の特定の位置にあるキーとなる残基の存在によって決定される。
【0065】
「ヒト化」-本明細書で使用される「ヒト化」という用語とは、マウスの免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(Fv、Fab、Fab’または抗体の他の抗原結合部分配列など)を指す。例えばヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が元の抗体(ドナー抗体)のCDRからの残基で置換されているが元の抗体の所望の特異性、親和性および能力を維持しているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0066】
「ヒト化置換」-本明細書で使用される「ヒト化置換」という用語は、非ヒト抗GPVI抗体(例えばマウスの抗GPVI抗体)のVHまたはVLドメイン内の特定の位置に存在するアミノ酸残基が参照ヒトVHまたはVLドメイン内の同等の位置で生じるアミノ酸残基で置換されているアミノ酸置換を指す。参照ヒトVHまたはVLドメインはヒト生殖系列によってコードされるVHまたはVLドメインであってもよく、その場合、置換された残基を「生殖系列置換」と呼んでもよい。ヒト化/生殖系列置換は、本明細書で定義されている抗GPVI抗体のフレームワーク領域および/またはCDRにおいてなされていてもよい。
【0067】
「高いヒト相同性」-重鎖可変(VH)ドメインおよび軽鎖可変(VL)ドメインを含む抗体は、VHドメインおよびVLドメインが一緒になって最も近く一致するヒト生殖系列VHおよびVL配列と少なくとも70、75、80、85、90、95%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を示す場合に高いヒト相同性を有するものとみなされる。高いヒト相同性を有する抗体としては、ヒト生殖系列配列と十分に高い配列同一性の割合(%)を示す天然の非ヒト抗体のVHおよびVLドメインを含む抗体ならびにそのような抗体の操作された特にヒト化バリアントが挙げられ、「完全ヒト」抗体も挙げられる。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1つ以上のヒトVHドメインと75%、80%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性または配列相同性を示してもよい。他の実施形態では、本発明のタンパク質のVHドメインと最も近く一致するヒト生殖系列VHドメイン配列とのアミノ酸配列同一性または配列相同性は、85%以上、90%%以上、95%以上、97%以上または最大99%またはさらには100%であってもよい。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインは、最も近く一致するヒトVH配列と比較してフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1つ以上(例えば1~20個)のアミノ酸配列の不一致を含んでいてもよい。別の実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1つ以上のヒトVLドメインと80%以上の配列同一性または配列相同性を示してもよい。他の実施形態では、本発明のタンパク質のVLドメインと最も近く一致するヒト生殖系列VLドメイン配列とのアミノ酸配列同一性または配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上または最大99%またはさらには100%であってもよい。
【0068】
一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインは、最も近く一致するヒトVL配列と比較してフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたって1個以上(例えば1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~5個)のアミノ酸配列の不一致を含んでいてもよい。高いヒト相同性を有する抗体とヒト生殖系列VHおよびVLとの配列同一性の割合を解析する前にカノニカルフォールド(canonical fold)を決定してもよく、これによりH1およびH2またはL1およびL2(およびL3)についてカノニカルフォールドの同一の組み合わせを有するヒト生殖系列セグメントのファミリーの同定が可能になる。その後に、配列相同性をスコア化するために、目的の抗体の可変領域と最高度の配列相同性を有するヒト生殖系列ファミリーメンバーを選択する。超可変ループL1、L2、L3、H1およびH2のChothiaカノニカルクラスの決定は、ウェブページwww.bioinf.org.uk/abs/chothia.html.pageで公的に入手可能なバイオインフォマティクスツールを用いて行うことができる。そのプログラムの出力はデータファイル内のキーとなる残基の要件を示す。これらのデータファイルでは、キーとなる残基の位置は各位置において許容されるアミノ酸と共に示される。目的の抗体の可変領域の配列を入力として与え、最初にコンセンサス抗体配列とアラインメントしてKabat/Chothia番号付けスキームを割り当てる。カノニカルフォールドの解析は、MartinおよびThorntonによって開発された自動化方法(Martinら,1996.J.Mol.Biol.263(5):800-815)によって得られる1セットのキーとなる残基のテンプレートを使用する。H1およびH2またはL1およびL2(およびL3)についてカノニカルフォールドの同じ組み合わせを使用する公知の特定のヒト生殖系列Vセグメントを用いて、配列相同性の点で最も一致するファミリーメンバーを決定することができる。バイオインフォマティクスツールを用いて、目的の抗体のVHおよびVLドメインフレームワークのアミノ酸配列とヒト生殖系列によってコードされる対応する配列との配列同一性の割合を決定することができるが、実際には当該配列の手動アラインメントも行うことができる。VBase(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)またはPluckthun/Honeggerデータベース(http://www.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines)などのいくつかのタンパク質データベースからヒト免疫グロブリン配列を同定することができる。ヒト配列を目的の抗体のVHまたはVLドメインのV領域と比較するために、www.expasy.ch/tools/#alignのようなウェブサイトを介して入手可能であるような配列アラインメントアルゴリズムを使用することができるが、限られたセットの配列を用いて手動アラインメントも行うことができる。カノニカルフォールドの同じ組み合わせおよび各鎖のフレームワーク領域1、2および3と最高度の相同性を有するファミリーのヒト生殖系列軽鎖および重鎖配列を選択して目的の可変領域と比較し、FR4もヒト生殖系列JHおよびJKまたはJL領域に対して確認する。全体的な配列相同性の割合の計算において、FR1、FR2およびFR3の残基をカノニカルフォールドの同一の組み合わせを有するヒト生殖系列ファミリーからの最も近く一致する配列を用いて評価することに留意されたい。カノニカルフォールドの同じ組み合わせを有する同じファミリーの最も近く一致するものまたは他のメンバーとは異なる残基のみをスコア化する(注:あらゆるプライマーによってコードされる相違箇所を除外する)。但し、ヒト化のために、カノニカルフォールドの同じ組み合わせを有しない他のヒト生殖系列ファミリーのメンバーと同一のフレームワーク領域中の残基は、上記ストリンジェントな条件に従ってこれらが「マイナス」とスコア化されるという事実にも関わらず「ヒト」と見なすことができる。この仮定はヒト化のための「ミックスアンドマッチ」手法に基づいており、この手法では、Quおよび同僚(Quら,Clin.Cancer Res.5:3095-3100 (1999))ならびにOnoおよび同僚(Onoら,Mol.Immunol.36:387-395(1999))によって行われたように、FR1、FR2、FR3およびFR4のそれぞれを別々にその最も近く一致するヒト生殖系列配列と比較し、故にヒト化分子は異なるFRの組み合わせを含む。Chothiaの番号付けスキームを改変したものであるIMGT番号付けスキーム(Lefrancら,Nucleic acid res 27:209-212(1999);http://im.gt.cines.fr)を用いて個々のフレームワーク領域の境界を割り当ててもよい。高いヒト相同性を有する抗体は、以下で詳細に考察するように、ヒトもしくはヒト様カノニカルフォールドを有する超可変ループまたはCDRを含んでいてもよい。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインまたはVLドメインのいずれかにおける少なくとも1つの超可変ループまたはCDRは、非ヒト抗体のVHまたはVLドメインから得られるかそれらに由来していてもよく、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造に実質的に同一である予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造をなお示す。当該技術分野において、ヒト生殖系列によってコードされるVHドメインおよびVLドメインの両方に存在する超可変ループの一次アミノ酸配列は、定義上は高度に可変であるが、VHドメインのCDR H3を除く全ての超可変ループは、カノニカルフォールドと呼ばれるたった数個の構造上異なる立体構造をとり(Chothiaら,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Tramontanoら,Proteins 6:382- 94(1989))、これらは超可変ループの長さおよびいわゆるカノニカルアミノ酸残基の存在の両方に依存するということが十分に確立されている(Chothiaら,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。インタクトなVHまたはVLドメインの超可変ループの実際のカノニカル構造は、構造解析(例えばX線結晶構造解析)によって決定することができるが、特定の構造に典型的なキーとなるアミノ酸残基に基づいてカノニカル構造を予測することもできる(以下でさらに考察する)。要するに、各カノニカル構造を決定する残基の特異的パターンは、未知の構造のVHまたはVLドメインの超可変ループにおいてカノニカル構造を認識するのを可能にする「サイン(signature)」を形成し、従って一次アミノ酸配列のみに基づいてカノニカル構造を予測することができる。高いヒト相同性を有する抗体における任意の所与のVHまたはVL配列の超可変ループについて予測されるカノニカルフォールド構造は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.html、www.biochem.ucl.ac.uk/~martin/antibodies.htmlおよびwww.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines/Vbase_hVk.htmlから公的に入手可能なアルゴリズムを用いて解析することができる。これらのツールにより、公知のカノニカル構造のヒトVHまたはVLドメイン配列に対してアラインメントされる問い合わせVHまたはVL配列ならびに問い合わせ配列の超可変ループについてなされるカノニカル構造の予測が可能になる。VHドメインの場合、以下の判断基準の少なくとも1つ目、好ましくは両方が満たされる場合に、H1およびH2ループをヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造に「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することができる。
【0069】
1.最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスと同一の長さ(残基数によって決定される)。
【0070】
2.対応するヒトH1およびH2カノニカル構造クラスについて記載されているキーとなるアミノ酸残基と少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性(上記解析のために、H1およびH2ループを別々に処理し、それぞれをその最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスに対して比較することに留意されたい)。上記解析は目的の抗体のH1およびH2ループのカノニカル構造の予測に依存する。目的の抗体のH1およびH2ループの実際の構造が例えばX線結晶構造解析に基づき公知である場合、ループの長さが最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスの長さとは異なる(典型的には+1または+2のアミノ酸だけ異なる)が目的の抗体のH1およびH2ループの実際の構造はヒトカノニカルフォールド構造に一致すれば、目的の抗体のH1およびH2ループをヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することもできる。ヒトVHドメインの第1および第2の超可変ループ(H1およびH2)のヒトカノニカル構造クラスに存在するキーとなるアミノ酸残基については、「Chothiaら,J.Mol.Biol.227:799-817(1992)」によって記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。特に、Chothiaらの802頁の表3(これは参照により本明細書に明確に組み込まれる)は、ヒト生殖系列において認められるH1カノニカル構造の重要な部位にある好ましいアミノ酸残基を列挙し、803頁の表4は(これも参照により明確に組み込まれる)は、ヒト生殖系列において認められるCDR H2カノニカル構造の重要な部位にある好ましいアミノ酸残基を列挙している。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメイン中のH1およびH2はどちらも、ヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造を示す。高いヒト相同性を有する抗体は、超可変ループH1およびH2が少なくとも1つのヒト生殖系列VHドメインにおいて生じることが知られているカノニカル構造の組み合わせと同一であるカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成するVHドメインを含んでいてもよい。H1およびH2におけるカノニカルフォールド構造の特定の組み合わせのみがヒト生殖系列によってコードされるVHドメインにおいて実際に生じることが観察されている。一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメイン中のH1およびH2は非ヒト生物種のVHドメインから得られてもよく、ヒト生殖系列または体細胞突然変異したVHドメインにおいて生じることが知られているカノニカルフォールド構造の組み合わせに同一である予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせをなお形成する。非限定的な実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVHドメイン中のH1およびH2は非ヒト生物種のVHドメインから得られてもよく、かつ1-1、1-2、1-3、1-6、1-4、2-1、3-1および3-5のカノニカルフォールドの組み合わせのうちの1つを形成する。高いヒト相同性を有する抗体は、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、かつヒトVHとの構造的相同性を示す超可変ループを含むVHドメインを含んでいてもよい。高いヒト相同性を有する抗体のVHドメイン中のH1およびH2に存在するカノニカルフォールドおよびそれらの組み合わせが全体的一次アミノ酸配列同一性の点で高いヒト相同性を有する抗体のVHドメインと最も近い一致を表すヒトVH生殖系列配列について「正しい」ものであれば有利であり得る。例として、最も近い配列の一致がヒト生殖系列VH3ドメインとの一致である場合、H1およびH2がヒトVH3ドメインにおいても天然に生じるカノニカルフォールドの組み合わせを形成すると有利であり得る。これは、非ヒト生物種に由来する高いヒト相同性を有する抗体、例えばラクダ科の従来の抗体に由来するVHおよびVLドメインを含む抗体、特にヒト化ラクダ科VHおよびVLドメインを含む抗体の場合に特に重要であり得る。従って一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗GPVI抗体のVHドメインはフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたってヒトVHドメインと70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、あるいは最大99%またはさらには100%の配列同一性または配列相同性を示してもよく、また同じ抗体のH1およびH2は非ヒトVHドメインから得られるが、同じヒトVHドメインにおいて天然に生じることが知られているカノニカルフォールドの組み合わせと同じである予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成する。他の実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインのL1およびL2はそれぞれ非ヒト生物種のVLドメインから得られ、それぞれがヒト抗体において生じるカノニカルフォールド構造と実質的に同一である予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造を示す。VHドメインと同様に、VλおよびVκの両型のVLドメインの超可変ループは一つには長さによって決まり、かつ特定のカノニカル位置におけるキーとなるアミノ酸残基の存在によっても決まる限られた数の立体構造またはカノニカル構造をとることができる。高いヒト相同性を有する目的の抗体における非ヒト生物種、例えばラクダ科種のVLドメインから得られたL1、L2およびL3ループは、以下の判断基準の少なくとも1つ目、好ましくは両方が満たされる場合にヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造に「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することができる。
【0071】
1.最も近く一致するヒト構造クラスと同一の長さ(残基数によって決定される)。
【0072】
2.VλまたはVκレパートリーのいずれかからの対応するヒトL1またはL2カノニカル構造クラスについて記載されているキーとなるアミノ酸残基と少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性(上記解析のために、L1およびL2ループを別々に処理し、それぞれをその最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスに対して比較することに留意されたい)。上記解析は目的の抗体のVLドメインのL1、L2およびL3ループのカノニカル構造の予測に依存する。L1、L2およびL3ループの実際の構造が例えばX線結晶構造解析に基づき公知である場合、目的の抗体に由来するL1、L2またはL3ループを、ループの長さが最も近く一致するヒトカノニカル構造クラスの長さとは異なる(典型的には+1または+2のアミノ酸だけ異なる)が目的の抗体内のループの実際の構造がヒトカノニカルフォールドに一致すれば、ヒト抗体において生じることが知られているカノニカルフォールド構造と「実質的に同一である」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化することもできる。ヒトVλおよびVκドメインのCDRについてヒトカノニカル構造クラスに存在するキーとなるアミノ酸残基は、「Moreaら,Methods,20:267-279(2000)」および「Martinら,J.Mol.Biol.,263:800-815(1996)」に記載されている。ヒトVκドメインの構造的レパートリーは「Tomlinsonら,EMBO J.14:4628-4638(1995)」にも記載されており、Vλドメインの構造的レパートリーは「Williamsら,J.Mol.Biol.,264:220-232(1996)」に記載されている。全てのこれらの文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインのL1およびL2は、ヒト生殖系列VLドメインにおいて生じることが知られているカノニカルフォールド構造の組み合わせと同一である予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成してもよい。非限定的な実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVλドメインのLIおよびL2は、11-7、13-7(A、B、C)、14-7(A、B)、12-11、14-11および12-12のカノニカルフォールドの組み合わせのうちの1つを形成してもよい(Williamsら,J.Mol.Biol.264:220-32(1996)に定義され、かつhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVL.htmlに図示されている)。非限定的な実施形態では、VκドメインのL1およびL2は、2-1、3-1、4-1および6-1のカノニカルフォールドの組み合わせのうちの1つを形成してもよい(Tomlinsonら,EMBO J.14:4628-38(1995)に定義され、かつhttp://www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVK.htmlに図示されている)。
【0073】
さらなる実施形態では、高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインのL1、L2およびL3の3つ全てが実質的にヒト構造を示してもよい。高いヒト相同性を有する抗体のVLドメインがヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、かつVLドメインの超可変ループもヒトVLとの構造的相同性を示すことが好ましい。
【0074】
一実施形態では、高いヒト相同性を有する抗GPVI抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4にわたってヒトVLドメインと70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上または最大99%またはさらには100%の配列同一性を示してもよく、また超可変ループL1および超可変ループL2は同じヒトVLドメインにおいて天然に生じることが知られているカノニカルフォールドの組み合わせと同じである予測もしくは実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成してもよい。当然ながら、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性を示し、かつヒトVHの超可変ループとの構造的相同性も示すVHドメインをヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性を示し、かつヒトVLの超可変ループとの構造的相同性も示すVLドメインと組み合わせて、ヒトにコードされるVH/VL対との最大の配列および構造的相同性を有するVH/VL対を含む高いヒト相同性を有する抗体を得ることが想定される。
【0075】
「免疫特異性である」「~に特異的である」または「~に特異的に結合する」-本明細書で使用されるように、抗体は検出可能な濃度で、好ましくは約10-1以上、約10-1以上、10-1以上、1.5×10-1以上、10-1以上または5×10-1以上の親和定数Kで抗原と反応する場合に、抗原に対して「免疫特異性である」「特異的である」または「特異的に結合する」という。また、抗体のその同種抗原に対する親和性は一般に解離定数Kとしても表され、特定の実施形態では、抗体は、10-6M以下、10-7M以下、1.5×10-8M以下、10-8M以下、5×10-9M以下または10-9M以下のKで結合する場合に抗原に特異的に結合する。抗体の親和性は、従来の技術、例えば、Scatchard Gらによって記載されている技術(The attractions of proteins for small molecules and ions(小分子およびイオンのためのタンパク質の引力).Ann NY Acad Sci 1949;51:660-672)を用いて容易に決定することができる。抗体のその抗原、細胞または組織に対する結合特性は一般に、例えば、ELISA、免疫蛍光系アッセイ(免疫組織化学(IHC)など)などの免疫検出法および/または蛍光活性化細胞分類(FACS)または表面プラズモン共鳴(SPR、BIAcore)を用いて決定および評価することができる。
【0076】
「単離された核酸」-本明細書で使用される「単離された核酸」は、他のゲノムDNA配列ならびに天然配列に天然に付随するリボソームおよびポリメラーゼなどのタンパク質または複合体から実質的に分離された核酸である。この用語は、その天然に生じる環境から取り出された核酸配列を包含し、組換えもしくはクローン化DNA単離体および化学合成された類似体または異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。実質的に純粋な核酸としては核酸の単離された形態が挙げられる。当然ながら、これは最初に単離された核酸を指すが、人為的に単離された核酸に後で追加された遺伝子または配列を除外するものではない。
【0077】
「ポリペプチド」という用語は、その従来の意味、すなわち100個未満のアミノ酸からなる配列として使用される。通常ポリペプチドとは単量体の実体を指す。「タンパク質」という用語は100個以上のアミノ酸配列および/または多量体の実体を指す。本発明のタンパク質は当該産物の特定の長さに限定されない。この用語は例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などのタンパク質の発現後修飾ならびに当該技術分野で知られている他の修飾(天然に生じるものと天然に生じないもの両方)を指さず、すなわちそれらを除外する。タンパク質はタンパク質全体またはその部分配列であってもよい。本発明の文脈において目的の特定のタンパク質は、CDRを含み、かつ抗原に結合することができるアミノ酸部分配列である。「単離されたタンパク質」は、同定されてその天然環境の成分から分離および/または回収されたものである。好ましい実施形態では、単離されたタンパク質を、(1)ローリー法で測定した場合にタンパク質の80、85、90、95重量%を超え、最も好ましくは96、97、98または99重量%を超えるまで精製されているか、(2)スピニングカップシークエネーターを用いて、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで精製されているか、あるいは(3)還元もしくは非還元条件下でクマシーブルーまたは好ましくは銀染色を用いるSDS-PAGEにより均質性が示されるまで精製されている。単離されたタンパク質は、タンパク質の天然環境の少なくとも1種の成分が存在していないため、組換え細胞内の原位置のタンパク質を含む。但し通常は、単離されたタンパク質は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0078】
「同一性」または「同一」-本明細書で使用される「同一性」または「同一」という用語は、2つ以上のアミノ酸配列間の関係において使用される場合、2つ以上のアミノ酸残基からなる配列間の一致数によって決定されるアミノ酸配列間の配列関連性(sequence relatedness)の程度を指す。「同一性」とは、特定の数学モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち「アルゴリズム」)によって扱われるギャップアラインメント(存在すれば)を有する2つ以上の配列のより短い配列間の一致率の尺度である。関連するアミノ酸配列の同一性は公知の方法によって容易に計算することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、Arthur M.Lesk,Computational Molecular Biology:Sources and Methods for Sequence Analysis(コンピュータ分子生物学:配列解析のための情報源および方法)(ニューヨーク:Oxford University Press,1988)、Douglas W.Smith,Biocomputing:Informatics and Genome Projects(情報科学およびゲノムプロジェクト)(ニューヨーク:Academic Press,1993)、Hugh G.GriffinおよびAnnette M.Griffin,Computer Analysis of Sequence Data,Part 1(配列データのコンピュータ解析、第1部)(ニュージャージー:Humana Press,1994)、Gunnar von Heinje,Sequence Analysis in Molecular Biology:Treasure Trove or Trivial Pursuit(分子生物学における配列解析:貴重な発見またはトリビアル・パスート)(Academic Press,1987)、Michael GribskovおよびJohn Devereux,Sequence Analysis Primer(配列解析プライマー)(ニューヨーク:M.Stockton Press,1991)およびCarilloら,1988.SIAM J.Appl.Math.48(5):1073-1082に記載されているものが挙げられる。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大の一致を与えるように設計されている。同一性の決定方法は、公的に入手可能なコンピュータプログラムに記述されている。好ましいコンピュータプログラムによる2つの配列間の同一性の決定方法としては、GAP(Devereuxら,1984.Nucl.Acid.Res.12(1 Pt 1):387-395;ジェネティクスコンピュータグループ(Genetics Computer Group)、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター、ウィスコンシン州マディソン)、BLASTP、BLASTN、TBLASTNおよびFASTA(Altschulら,1990.J.Mol.Biol.215(3):403-410)などのGCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、国立生物工学情報センター(NCBI)および他の提供源(BLASTマニュアル,Altschulら,NCB/NLM/NIH,メリーランド州ベセズダ,20894;Altschulら,1990.J.Mol.Biol.215(3):403-410)から公的に入手可能である。また周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して同一性を決定してもよい。
【0079】
「修飾された抗体」-本明細書で使用される「修飾された抗体」という用語は、天然に生じないように変化させた合成型の抗体、例えば少なくとも2つの重鎖領域を含むが2本の完全な重鎖を含まない抗体(ドメイン欠失抗体またはミニボディなど)、2つ以上の異なる抗原または単一抗原上の異なるエピトープに結合するように変化させた多特異性抗体(例えば、二重特異性、三重特異性など)、scFv分子に接合された重鎖分子などを含む。ScFv分子は当該技術分野で知られており、例えば米国特許第5,892,019号に記載されている。また「修飾された抗体」という用語は、多価型抗体(例えば同じ抗原の3つ以上のコピーに結合する三価、四価などの抗体)を含む。別の実施形態では、本発明の修飾された抗体は、CH2ドメインを欠失している少なくとも1つの重鎖領域を含み、かつ受容体リガンド対の1つのメンバーの結合領域を含むタンパク質の結合ドメインを含む融合タンパク質である。
【0080】
「哺乳類」-本明細書で使用される「哺乳類」という用語は、ヒト、家畜、動物園の動物、スポーツ動物またはペット動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどのあらゆる哺乳類を指す。好ましくは、哺乳類は霊長類であり、より好ましくはヒトである。
【0081】
「モノクローナル抗体」-本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体群から得られる抗体を指し、すなわち、その群に含まれる個々の抗体は微量で存在し得る天然に生じる可能性のある突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられる。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して向けられる異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は他の抗体が混入されずに合成し得るという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語は、任意の特定の方法によって抗体を作製する必要があるものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明で有用なモノクローナル抗体は、「Kohlerら,Nature,256:495(1975)」によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製してもよく、あるいは、細菌細胞、真核動物細胞または植物細胞における組換えDNA法(例えば米国特許第4,816,567号を参照)を用いて調製してもよい。また「モノクローナル抗体」を、例えば、「Clacksonら,Nature,352:624-628(1991)」および「Marksら,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)」に記載されている技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離してもよい。
【0082】
「天然配列」-本明細書で使用される「天然配列」ヌクレオチドという用語は、自然由来のポリヌクレオチドと同じヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを指す。従って、「天然配列」タンパク質は、自然由来の(例えば任意の生物種に由来する)タンパク質(例えば抗体)と同じアミノ酸配列を有するタンパク質である。そのような天然配列ポリヌクレオチドおよびタンパク質は自然から単離したり、組換えもしくは合成手段によって作製したりすることができる。本明細書で使用されるポリヌクレオチド「バリアント」という用語は1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入の点で本明細書に具体的に開示されているポリヌクレオチドとは典型的に異なるポリヌクレオチドである。そのようなバリアントは天然に生じたものであってもよく、あるいは例えば本明細書に記載されている1つ以上のポリヌクレオチド配列を修飾し、本明細書に記載されているようにコードされたタンパク質の1つ以上の生物活性を評価し、かつ/または当該技術分野で周知の複数の技術のいずれかを用いることによって合成により作製したものであってもよい。本明細書で使用されるタンパク質「バリアント」という用語は、1つ以上の置換、欠失、付加および/または挿入の点で本明細書に具体的に開示されているタンパク質とは典型的に異なるタンパク質である。そのようなバリアントは天然に生じたものであってもよく、あるいは例えば1つ以上の上記タンパク質配列を修飾し、本明細書に記載されているようにタンパク質の1つ以上の生物活性を評価し、かつ/または当該技術分野で周知の複数の技術のいずれかを用いることによって合成により作製したものであってもよい。修飾は本発明のポリヌクレオチドおよびタンパク質の構造においてなされていてもよく、望ましい特性を有するタンパク質バリアントまたは誘導体をコードする機能性分子がなお得られる。タンパク質のアミノ酸配列を変化させて、本明細書に記載されているタンパク質の均等物またはさらに改良されたバリアントまたは領域を作製したい場合、当業者は典型的にコードするDNA配列のコドンの1つ以上を変化させる。例えば、他のタンパク質(例えば抗原)または細胞に結合するその能力を大きく損失することなく、タンパク質構造において特定のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。タンパク質の生物学的機能活性を定めるのはタンパク質の結合能力および性質であるため、特定のアミノ酸配列の置換はタンパク質配列および当然ながらその基礎をなすDNAコード配列においてなされていてもよく、それにも関わらず同様の特性を有するタンパク質が得られる。従って、本開示の組成物のアミノ酸配列または前記タンパク質をコードする対応するDNA配列において、それらの生物学的有用性または活性を大きく損失することなく様々な変更を加えることができるものと想定される。多くの例では、タンパク質バリアントは1つ以上の保存的置換を含む。「保存的置換」とは、あるアミノ酸がペプチド化学の当業者がタンパク質の二次構造および親水性/疎水性が実質的に変化していないことを期待するような同様の特性を有する別のアミノ酸で置き換えられる置換である。従って上に概説したように、アミノ酸置換は一般にアミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づいている。上記特性のいくつかを考慮した例示的な置換は当業者によく知られており、アルギニンとリジン、グルタミン酸とアスパラギン酸、セリンとトレオニン、グルタミンとアスパラギン、およびバリンとロイシンとイソロイシンが挙げられる。さらに残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいてアミノ酸置換を行ってもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸としてはアスパラギン酸とグルタミン酸が挙げられ、正に荷電したアミノ酸としてはリジンとアルギニンが挙げられ、同様の親水性値を有する荷電していない極性の頭部基を有するアミノ酸としては、ロイシンとイソロイシンとバリン、グリシンとアラニン、アスパラギンとグルタミン、およびセリンとトレオニンとフェニルアラニンとチロシンが挙げられる。保存的変化を表し得るアミノ酸の他の群としては、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr、(2)cys、ser、tyr、thr、(3)val、ile、leu、met、ala、phe、(4)lys、arg、his、および(5)phe、tyr、trp、hisが挙げられる。バリアントは、追加または代わりとして、非保存的変化を含んでもよい。好ましい実施形態では、タンパク質バリアントは、5つ以下のアミノ酸の置換、欠失または付加によって天然配列とは異なる。バリアントは、追加(または代わりとして)、例えばタンパク質の免疫原性、二次構造および親水性/疎水性に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって修飾されていてもよい。
【0083】
「薬学的に許容される賦形剤」-本明細書で使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含む。前記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与した場合に副作用、アレルギー反応または他の有害反応を生じさせない。ヒトへの投与のために、製剤は例えばFDA局またはEMAなどの規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度基準を満たすものでなければならない。
【0084】
「特異性」-本明細書で使用される「特異性」という用語は、所与の標的、例えばGPVIと特異的に結合する(例えば免疫反応する)能力を指す。タンパク質は単一特異性であり、かつ標的に特異的に結合する1つ以上の結合部位を含んでいてもよく、あるいはタンパク質は多特異性であり、かつ同じまたは異なる標的に特異的に結合する2つ以上の結合部位を含んでいてもよい。一実施形態では、本明細書に記載されている抗体は2つ以上の標的に対して特異的である。例えば一実施形態では、多特異性結合分子はGPVIおよび第2の分子に結合する。
【0085】
「sFv」または「scFv」としても省略される「一本鎖Fv」-本明細書で使用される「一本鎖Fv」、「sFv」または「scFv」という用語は、単一のアミノ酸鎖になるように結合されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvアミノ酸配列はsFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成するのを可能にするペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。sFvの概説については、Pluckthunの「The Pharmacology of Monoclonal Antibodies(モノクローナル抗体の薬理作用),第113巻,RosenburgおよびMoore編,Springer-Verlag,ニューヨーク,269~315頁(1994)」、「Borrebaeck 1995、以下」を参照されたい。
【0086】
「対象」-本明細書で使用される「対象」という用語は、哺乳類、好ましくはヒトを指す。一実施形態では、対象は、医療的ケアを受けるのを待っているか受けている途中である、または過去に医療処置の対象であったか現在対象であるか今後対象になる、あるいは疾患の発現について監視されている「患者」すなわち温血動物、より好ましくはヒトであってもよい。
【0087】
「合成」-本明細書で使用されるタンパク質に関する「合成」という用語は、天然に生じないアミノ酸配列を含むタンパク質を含む。例えば、天然に生じないタンパク質は天然に生じるタンパク質の修飾された形態(例えば、付加、置換または欠失などの突然変異を含む)、あるいは直鎖状アミノ酸配列において本来はそこには天然に結合されない第2のアミノ酸配列(天然に生じても生じなくてもよい)に結合されている第1のアミノ酸配列(天然に生じても生じなくてもよい)を含むタンパク質である。
【0088】
「治療的有効量」とは、標的に対して有意なマイナスまたは有害な副作用を引き起こすことなく、(1)GPVI関連疾患の発症を遅らせるか予防する、(2)GPVI関連疾患の1つ以上の症状の進行、増悪または悪化を減速または停止する、(3)GPVI関連疾患の症状の寛解をもたらす、(4)GPVI関連疾患の重症度または発生率を低下させる、または(5)GPVI関連疾患を治癒させることを目的とした薬剤のレベルまたは量を意味する。治療的有効量は、予防処置のためにGPVI関連疾患の発症前に投与してもよい。代わりまたは追加として、治療的有効量は治療処置のためにGPVI関連疾患の開始後に投与してもよい。
【0089】
「治療する」または「治療」または「軽減」-本明細書で使用される「治療する」または「治療」または「軽減」という用語は、治療処置および予防処置の両方を指し、その目的は、標的とされる病理学的疾患または障害を予防するか減速させる(和らげる)ことである。治療を必要とするものとしては、既に疾患に罹患しているものならびに疾患に罹患しやすいものまたは疾患が予防されるべきものが挙げられる。対象すなわち哺乳類は、本発明に係る治療量のタンパク質が投与された後に、対象すなわち哺乳類が、病原性細胞の数の減少、総病原性細胞の割合の減少および/または特定の疾患または病気に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和、罹患率および死亡率の低下および/または生活の質の問題の改善のうちの1つ以上の観察可能および/または測定可能な改善を示す場合に、標的化された病的状態または疾患に対する「治療」が成功となる。治療の成功をおよび疾患の改善を評価するための上記パラメータは、医師が精通している通常の手順によって容易に測定可能である。
【0090】
「可変領域」または「可変ドメイン」-本明細書で使用される「可変」という用語は、可変ドメインVHおよびVLの特定の領域が抗体間で配列において広範囲に異なるという事実を指し、その標的抗原に対する各特定の抗体の結合および特異性において使用される。但し可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分配されていない。それは抗原結合部位の一部を形成するVLドメインおよびVHドメインのそれぞれにある「超可変ループ」と呼ばれる3つのセグメントに集中している。Vλ軽鎖ドメインの第1、第2および第3の超可変ループを本明細書ではL1(λ)、L2(λ)およびL3(λ)と呼び、VLドメインに残基24~33(9、10または11個のアミノ酸残基からなるL1(λ))、49~53(3個の残基からなるL2(λ))および90~96(6個の残基からなるL3(λ))を含むものとして定義してもよい(Moreaら,Methods 20:267-279(2000))。Vκ軽鎖ドメインの第1、第2および第3の超可変ループを本明細書ではL1(κ)、L2(κ)およびL3(κ)と呼び、VLドメインに残基25~33(6、7、8、11、12または13個の残基からなるL1(κ))、49~53(3個の残基からなるL2(κ))および90~97(6個の残基からなるL3(κ))を含むものとして定義してもよい(Moreaら,Methods 20:267-279(2000))。VHドメインの第1、第2および第3の超可変ループを本明細書ではH1、H2およびH3と呼び、VHドメインに残基25~33(7、8または9個の残基からなるH1)、52~56(3または4個の残基からなるH2)および91~105(長さにおいて非常に可変であるH3)を含むものとして定義してもよい(Moreaら,Methods 20:267-279 (2000))。特に明記しない限り、L1、L2およびL3という用語はそれぞれVLドメインの第1、第2および第3の超可変ループを指し、VκおよびVλアイソタイプの両方から得られる超可変ループを包含する。H1、H2およびH3という用語はそれぞれVHドメインの第1、第2および第3の超可変ループを指し、[ガンマ]、[イプシロン]、[デルタ]、[アルファ]または[ミュー]を含む公知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られる超可変ループを包含する。超可変ループL1、L2、L3、H1、H2およびH3はそれぞれ、本明細書に上に定義されている「相補性決定領域」すなわち「CDR」の一部を含んでいてもよい。
【0091】
「結合価」-本明細書で使用される「結合価」という用語は、タンパク質中の可能な標的結合部位の数を指す。各標的結合部位は1つの標的分子または標的分子上の特異的部位に特異的に結合する。タンパク質が2つ以上の標的結合部位を含む場合、各標的結合部位は同じまたは異なる分子に特異的に結合することができる(例えば、異なるリガンドまたは異なる抗原あるいは同じ抗原上の異なるエピトープに結合することができる)。主題の結合分子は、好ましくはヒトGPVI分子に特異的な少なくとも1つの結合部位を有する。好ましくは、本明細書に提供されているタンパク質は一価である。
【0092】
本発明の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するまたはそれを治療するのに使用するための、ヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する単離されたヒト化タンパク質であり、前記単離されたヒト化タンパク質は、当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって投与される(または投与される予定である)。
【0093】
一実施形態では、ヒトGPVIに結合する本単離されたヒト化タンパク質は、ヒトGPVIに対する単離されたヒト化抗体である。
【0094】
一実施形態では、本単離されたタンパク質は精製されている。
【0095】
一実施形態では、本タンパク質はGPVIの細胞外ドメインに結合する。
【0096】
一実施形態では、本タンパク質はヒトGPVIのIg様C2型ドメイン2(Ig-like C2-type domain 2 (D2))(D2)に結合する。
【0097】
従って一実施形態では、本タンパク質は、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~207またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~207と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含むエピトープに結合する。
【0098】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0099】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42,43、44、45、46、47、48、49、50個またはそれ以上アミノ酸残基を含む。
【0100】
一実施形態では、前記エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Q、136T、171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8つ)を含む。一実施形態では、前記エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Q、171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7つ)を含む。
【0101】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0102】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個のアミノ酸残基を含む。
【0103】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0104】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個のアミノ酸残基を含む。
【0105】
一実施形態では、前記エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Qおよび/または136Tのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4または5つ)を含む。一実施形態では、前記エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128Gおよび/または133Qのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3または4つ)を含む。
【0106】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0107】
一実施形態では、前記エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基を含む。
【0108】
一実施形態では、前記エピトープはGPVI配列中の以下の残基:171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば1、2または3つ)を含む。
【0109】
一実施形態では、本単離されたタンパク質は立体構造エピトープに結合する。
【0110】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVIの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアミノ酸残基を含む。
【0111】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVIのIg様C2型ドメイン2(D2)の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアミノ酸残基を含む。
【0112】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)の114~207からの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのアミノ酸残基を含む。
【0113】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0114】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~187、好ましくは115~187、より好ましくは116~187、より好ましくは117~187、より好ましくは118~186、より好ましくは119~185、より好ましくは120~184、さらにより好ましくは121~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50個またはそれ以上のアミノ酸残基を含む。
【0115】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Q、136T、171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8つ)を含む。一実施形態では、前記立体構造エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Q、171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5、6または7つ)を含む。
【0116】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0117】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個のアミノ酸残基を含む。
【0118】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0119】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個のアミノ酸残基を含む。
【0120】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Qおよび/または136Tのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4または5つ)を含む。一実施形態では、前記立体構造エピトープは、GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128Gおよび/または133Qのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3または4つ)を含む。
【0121】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0122】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基を含む。
【0123】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、GPVI配列中の以下の残基:171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば1、2または3つ)を含む。
【0124】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む。
【0125】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~142、好ましくは115~141、より好ましくは116~140、より好ましくは117~139、より好ましくは118~138、より好ましくは119~137、より好ましくは120~136、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28個のアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基と
を含む。
【0126】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と
を含む。
【0127】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基114~135、好ましくは115~135、より好ましくは116~135、より好ましくは117~135、より好ましくは118~135、より好ましくは119~135、より好ましくは120~135、さらにより好ましくは121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21個のアミノ酸残基と、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基165~187、好ましくは166~186、より好ましくは167~185、より好ましくは168~184、さらにより好ましくは169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22個のアミノ酸残基と
を含む。
【0128】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、を含む。
【0129】
従って一実施形態では、本タンパク質は、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、を含む立体構造エピトープに結合する。
【0130】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、を含む。
【0131】
従って一実施形態では、本タンパク質は、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列からの少なくとも1つのアミノ酸残基と、を含む立体構造エピトープに結合する。
【0132】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Qおよび/または136Tのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4または5つ)と、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2または3つ)と
を含む。
【0133】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128Gおよび/または133Qのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2、3または4つ)と、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:171T、172Aおよび/または174Hのうちの少なくとも1つ(例えば、1、2または3つ)と
を含む。
【0134】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128G、133Qおよび136Tと、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:171T、172Aおよび174Hと
を含む。
【0135】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:125S、126S、128Gおよび133Qと、
- GPVI配列(配列番号13)中の以下の残基:171T、172Aおよび174Hと
を含む。
【0136】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列、および
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列
からなる。
【0137】
従って一実施形態では、本タンパク質は、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列、および
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~183と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列
からなる立体構造エピトープに結合する。
【0138】
一実施形態では、前記立体構造エピトープは、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列、および
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列
からなる。
【0139】
従って一実施形態では、本タンパク質は、
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136、またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基121~135もしくは121~136と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列、および
- ヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180またはヒトGPVI(配列番号13)のアミノ酸残基169~180と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する配列
からなる立体構造エピトープに結合する。
【0140】
一実施形態では、本発明において使用するためのヒトGPVIに結合する単離されたタンパク質は、15nM以下、好ましくは10nM以下、より好ましくは5nM以下のヒトGPVI(好ましくは可溶性ヒトGPVI)への結合についてのKを有する。
【0141】
一実施形態では、本単離されたタンパク質は、約8×10-4sec-1以下、好ましくは約6×10-4sec-1以下、より好ましくは約4×10-4sec-1以下のヒトGPVIへの結合についてのkoffを有する。
【0142】
一実施形態では、本単離されたタンパク質は、少なくとも約5×10-1sec-1、好ましくは少なくとも約5.5×10-1sec-1、より好ましくは少なくとも約5.9×10-1sec-1、より好ましくは少なくとも約6×10-4sec-1のヒトGPVIへの結合についてのkonを有する。
【0143】
一実施形態では、約700~約1600共鳴単位(RU)(約8.5~約11.3fmol/mm2に対応する)、好ましくは約850~約1200RU、より好ましくは約950~約1075RUの範囲の用量で固定化された可溶性GPVIおよび/またはランニングバッファーとしてのPBS(pH7.4)および/またはデータを解析するためのBIAevaluationバージョン3.0ソフトウェアを用いる表面プラズモン共鳴(SPR、BIAcore)によってKを決定してもよい。一実施形態では、可溶性GPVIは、hFc配列へのリンカーを介して(例えばGly-Gly-Argリンカーなどを介して)そのC末端において融合されたGPVIの細胞外ドメインに対応する。この可溶性GPVIを可溶性GPVI-Fcと呼ぶ場合もある。
【0144】
リガンドに対するタンパク質の親和性を決定するための方法は当該技術分野でよく知られている。可溶性GPVIに対するタンパク質の親和性を決定するための方法の例は以下に示されている。
【0145】
可溶性ヒトGPVIへの本タンパク質の結合は、BIAcore 2000システム(スウェーデンのウプサラ)を用いる表面プラズモン共鳴を用いて解析する。
【0146】
可溶性GPVI-Fcを約700~約1600RU(約8.5~約11.3fmol/mm2に対応する)、好ましくは約850~約1200RU、より好ましくは約950~約1075RU、さらにより好ましくは約960~約1071RUの範囲の用量で、アミンカップリング法(ウィザード(Wizard)法)を用いてカルボキシ-メチルデキストランCM5センサーチップ上に固定化させる。次いでこのタンパク質を、PBS(pH7.4)(10mMのリン酸塩、138mMのNaCl、2.7mMのKCl、25.4℃でpH7.42)中で固定化されたGPVI-Fcの上を20μL/分の流速および25℃で通す。速度定数(kon、koff)および親和性は、データを結合モデルに当てはめることによってBIAevaluationバージョン3.0ソフトウェアを用いて決定する。PBS(pH7.4)はランニングバッファーである。
【0147】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、全長抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、二量体一本鎖抗体、Fv、Fab、F(ab)’、脱フコシル化抗体、双特異性抗体、二重特異性抗体、三重特異性抗体および四重特異性抗体からなる群から選択される抗体分子またはその断片である。
【0148】
別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、ユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群から選択される抗体断片である。
【0149】
別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、アフィボディー、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、バーサボディーおよびデュオカリン(Duocalin)からなる群から選択される抗体模倣体である。
【0150】
ドメイン抗体は当該技術分野でよく知られており、抗体の重鎖または軽鎖のいずれかの可変領域に対応する抗体の最も小さい機能的結合単位を指す。
【0151】
ナノボディは当該技術分野でよく知られており、天然に生じる重鎖抗体の独特な構造および機能特性を含む抗体由来の治療用タンパク質を指す。これらの重鎖抗体は、単一の可変ドメイン(VHH)および2つの定常ドメイン(CH2およびCH3)を含んでいてもよい。
【0152】
ユニボディは当該技術分野でよく知られており、IgG4抗体のヒンジ領域を欠失している抗体断片を指す。ヒンジ領域の欠失により、従来のIgG4抗体の本質的に半分のサイズであり、かつIgG4抗体の二価の結合領域ではなく一価の結合領域を有する分子が生じる。
【0153】
アフィボディーは当該技術分野でよく知られており、ブドウ球菌性プロテインAのIgG結合ドメインの1つに由来する58個のアミノ酸残基からなるタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク質を指す。
【0154】
DARPin(設計アンキリン反復タンパク質(Designed Ankyrin Repeat Protein))は当該技術分野でよく知られており、非抗体タンパク質の結合能力を十分に引き出すために開発された抗体模倣体DRP(設計反復タンパク質)技術を指す。
【0155】
アンチカリンは当該技術分野でよく知られており、結合特異性がリポカリンに由来する別の抗体模倣技術を指す。アンチカリンはデュオカリンと呼ばれる二重標的化タンパク質としてフォーマットされていてもよい。
【0156】
アビマーは当該技術分野でよく知られており、別の抗体模倣技術を指す。
【0157】
バーサボディーは当該技術分野でよく知られており、別の抗体模倣技術を指す。バーサボディーは15%超のシステインを有する3~5kDaの小さいタンパク質であり、高いジスルフィド密度の足場を形成し、典型的なタンパク質が有する疎水性コアの代わりとなる。
【0158】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は一価であり、一価の全長抗体、一価のヒト化抗体、一本鎖抗体、Fv、Fabまたはユニボディ、ドメイン抗体およびナノボディからなる群から選択される抗体断片、あるいはアフィボディー、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマーおよびバーサボディーからなる群から選択される単量体抗体模倣体から好ましくは選択される。
【0159】
別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、治療薬に結合された抗体またはその断片を含むイムノコンジュゲートである。
【0160】
別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は造影剤に結合されたタンパク質を含む複合体である。前記タンパク質を例えば画像診断用途のために使用することができる。
【0161】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質はモノクローナル抗体またはその断片である。
【0162】
別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質はポリクローナル抗体またはその断片である。
【0163】
従って本発明の別の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するまたはその治療に使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片であり、前記抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって投与される(または投与される予定である)。
【0164】
一実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片の重鎖の可変領域は、以下のCDR:
VH-CDR1:GYTFTSYNMH(配列番号1)、
VH-CDR2:GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)、および
VH-CDR3:GTVVGDWYFDV(配列番号3)
のうちの少なくとも1つを含む。
【0165】
CDRの番号付けおよび定義は、Kabat/Chothia定義に従っている。
【0166】
一実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片の軽鎖の可変領域は、以下のCDR:
VL-CDR1:RSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、
VL-CDR2:RVSNRFS(配列番号5)、および
VL-CDR3:LQLTHVPWT(配列番号6)
のうちの少なくとも1つを含む。
【0167】
CDRの番号付けおよび定義は、Kabat/Chothia定義に従っている。
【0168】
一実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、
- 重鎖にGYTFTSYNMH(配列番号1)、GIYPGNGDTSYNQKFQG(配列番号2)およびGTVVGDWYFDV(配列番号3)のうちの少なくとも1つのCDR、および/または
- 軽鎖にRSSQSLENSNGNTYLN(配列番号4)、RVSNRFS(配列番号5)およびLQLTHVPWT(配列番号6)のうちの少なくとも1つのCDR
を含む。
【0169】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その重鎖に配列番号1、配列番号2および配列番号3の3つのCDRを含む。
【0170】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その軽鎖に配列番号4、配列番号5および配列番号6の3つのCDRを含む。
【0171】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その重鎖に配列番号1、配列番号2および配列番号3の3つのCDRと、その軽鎖に配列番号4、配列番号5および配列番号6の3つのCDRとを含む。
【0172】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、その重鎖に配列番号1、配列番号2および配列番号3の3つのCDRと、その軽鎖に配列番号4、配列番号5および配列番号6の3つのCDRとを含み、任意で前記配列のいずれかにおけるアミノ酸の1つ、2つ、3つまたはそれ以上は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0173】
本発明によれば、重鎖および軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3のいずれかを、対応する配列番号に列挙されている特定のCDRまたはCDRセットと少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有するアミノ酸配列を有するものとして特徴づけてもよい。
【0174】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片は、
(i)配列番号1、2および3にそれぞれ示されている重鎖CDR1、CDR2およびCDR3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3)アミノ酸配列と、
(ii)配列番号4、5および6にそれぞれ示されている軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3(VL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列と
を有する抗体であり、任意で前記配列のいずれかにおけるアミノ酸の1つ、2つ、3つまたはそれ以上は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0175】
一実施形態では、本発明において使用するための抗GPVI抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むかそれからなる重鎖可変領域を含む。
(配列番号7)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYNMHWVRQAPGQGLEWMGGIYPGNGDTSYNQKFQGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGTVVGDWYFDVWGQGTLVTVSS
【0176】
一実施形態では、本発明において使用するための抗GPVI抗体またはその抗原結合断片は、配列番号8の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域を含む。
(配列番号8)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRSSQSLENSNGNTYLNWYQQKPGKAPKLLIYRVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCLQLTHVPWTFGQGTKVEITR
【0177】
一実施形態では、本発明において使用するための抗GPVI抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域を含む。
(配列番号9)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASQSLENSNGNTYLNWYQQKPGKAPKLLIYRVSNRFSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCLQLTHVPWTFGQGTKVEIKR
【0178】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗GPVI抗体(ACT017抗体)またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むかそれからなる重鎖可変領域と配列番号8の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域とを含む。
【0179】
本発明の別の実施形態では、本発明において使用するための抗GPVI抗体(ACT006抗体)またはその抗原結合断片は、配列番号7の配列を含むかそれからなる重鎖可変領域と配列番号9の配列を含むかそれからなる軽鎖可変領域とを含む。
【0180】
本発明によれば、本明細書の上に記載されている重鎖もしくは軽鎖可変領域のアミノ酸の1つ、2つ、3つまたはそれ以上は異なるアミノ酸で置換されていてもよい。
【0181】
別の実施形態では、本発明において使用するための抗体(またはその断片)は、本明細書に記載されているACT017抗体のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、かつそれらの抗体は本発明に記載されているタンパク質の所望の機能的特性を保持している。
【0182】
別の実施形態では、本発明において使用するための抗体(またはその断片)は、本明細書に記載されているACT006抗体のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含み、かつそれらの抗体は本発明に記載されているタンパク質の所望の機能的特性を保持している。
【0183】
本発明によれば、重鎖可変領域は、配列番号7と60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する配列を包含する。
【0184】
本発明によれば、軽鎖可変領域は、配列番号8または配列番号9と60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の同一性を有する配列を包含する。
【0185】
本発明において使用するための抗体のいずれか(例えばACT017またはACT006)において、指定された可変領域およびCDR配列は保存的配列修飾を含んでいてもよい。保存的配列修飾とは、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に著しく影響を与えたりそれを変化させたりしないアミノ酸修飾を指す。そのような保存的修飾としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。修飾は、部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発などの当該技術分野で知られている標準的な技術によって、本発明において使用するための抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は典型的に、アミノ酸残基が同様の物理化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。指定された可変領域およびCDR配列は、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失または置換を含んでいてもよい。置換がなされる場合、好ましい置換は保存的修飾である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当該技術分野で定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、本発明において使用するための抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置換することができ、変化させた抗体を、本明細書に記載されているアッセイを用いて、保持されている機能(すなわち本明細書に記載されている特性)について試験することができる。
【0186】
一実施形態では、本発明において使用するための抗体(またはその断片)は、ACT017またはACT006抗体と本質的に同じエピトープに結合する。本発明では、ACT017またはACT006抗体と本質的に同じエピトープに結合する抗体をそれぞれACT017様またはACT006様抗体と呼ぶ。
【0187】
一実施形態では、本発明において使用するための抗体(またはその断片)は、hGPVIへの結合のために本明細書の上に記載されている抗体、特にACT017およびACT006から選択される抗体と競合する。
【0188】
本発明のいくつかの実施形態では、VHおよびVLドメインまたはそれらのCDRを含む抗hGPVI抗体またはその断片は、そのアミノ酸配列が完全または実質的にヒトであるCH1ドメインおよび/またはCLドメインを含んでいてもよい。GPVI結合タンパク質がヒトの治療的使用を目的とした抗体である場合、抗体の定常領域全体またはその少なくとも一部が完全または実質的にヒトアミノ酸配列を有するのが通常である。従って、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCLドメイン(および存在すればCH4ドメイン)の1つ以上またはあらゆる組み合わせは、そのアミノ酸配列に関して完全または実質的にヒトであってもよい。有利には、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメインおよびCLドメイン(および存在すればCH4ドメイン)は全て、完全または実質的にヒトアミノ酸配列を有していてもよい。ヒト化もしくはキメラ抗体または抗体断片の定常領域の文脈において「実質的にヒト」という用語は、ヒト定常領域との少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%または少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を指す。この文脈における「ヒトアミノ酸配列」という用語は、生殖系列遺伝子、再編成された遺伝子および体細胞突然変異した遺伝子を含むヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を指す。本発明は、「完全ヒト」ヒンジ領域の存在が明らかに必要とされている実施形態を除き、ヒト配列に対して1つ以上のアミノ酸の付加、欠失または置換によって変化させた「ヒト」配列の定常ドメインを含むタンパク質の使用も想定している。本発明において使用するための抗hGPVI抗体における「完全ヒト」ヒンジ領域の存在は、免疫原性を最小限に抑えると共に本抗体の安定性を最適化するのに有益であり得る。重鎖および/または軽鎖の定常領域内、特にFc領域内で1つ以上のアミノ酸の置換、挿入または欠失を行うことができると考えられる。アミノ酸置換により、異なる天然に生じるアミノ酸または非天然もしくは修飾されたアミノ酸で置換されたアミノ酸が生じてもよい。例えばグリコシル化パターンにおける変化(例えば、N-もしくはO-結合されたグリコシル化部位の付加または欠失)などの他の構造修飾も許容される。本抗体の使用目的に応じて、Fc受容体へのその結合特性に関して本抗体を修飾すること、例えばエフェクター機能を調節することが望ましい場合がある。例えばシステイン残基をFc領域に導入し、それによりこの領域における鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にしてもよい。このようにして作製されたホモ二量体抗体は向上したエフェクター機能を有し得る。「Caronら,J.Exp.Med.176:1191-1195(1992)およびShopes,B.J.Immunol.148:2918-2922(1992)」を参照されたい。
【0189】
一実施形態では、配列番号7の配列の重鎖可変領域は、配列番号10によってコードされる。
(配列番号10)
CAGGTTCAGCTGGTTCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGAGCCTCAGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACATTTACCAGTTACAATATGCACTGGGTAAGACAGGCTCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGAGGTATTTATCCAGGAAATGGTGATACTTCCTACAATCAGAAGTTCCAGGGCCGAGTTACTATGACTCGGGACACTTCCACCTCTACAGTGTACATGGAGCTCAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCGGTCTATTACTGTGCAAGAGGCACCGTGGTCGGCGACTGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTGAGCAGT
【0190】
一実施形態では、配列番号8の配列の軽鎖可変領域は、配列番号11によってコードされる。
(配列番号11)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGAAGTAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCTTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACATCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCACCCGG
【0191】
一実施形態では、配列番号9の配列の軽鎖可変領域は、配列番号12によってコードされる。
(配列番号12)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGTGCCAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCCTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAACGC
【0192】
一実施形態では、本発明において使用するための抗GPVI抗体またはその断片をコードする核酸配列は発現ベクターに含まれている。一実施形態では、当該発現ベクターは、配列番号10、配列番号11および配列番号12または前記配列番号10~12と少なくとも60%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を共有する核酸配列を有する任意の配列のうちの少なくとも1つを含む。
【0193】
一実施形態では、当該ベクターは、配列番号10の配列および重鎖の定常領域をコードする配列を含む。重鎖の定常領域をコードする配列の非限定的な例は配列番号14である。
(配列番号14)
GCCTCCACCAAGGGTCCCTCAGTCTTCCCACTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGTGGCACAGCTGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCAGAACCAGTGACTGTGTCATGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCTGCTGTCTTGCAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTCGAGCCTAAGTCATGCGACAAGACTCAC。
【0194】
一実施形態では、当該ベクターは、配列番号11または配列番号12の配列および軽鎖の定常領域をコードする配列を含む。軽鎖の定常領域をコードする配列の非限定的な例は配列番号15である。
(配列番号15)
ACTGTGGCTGCACCAAGTGTGTTCATCTTCCCACCTAGCGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTCGTGTGCCTCCTGAACAACTTCTACCCACGGGAGGCCAAGGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAAGATAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACTCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAGCACAAGGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCCCCTGTCACAAAGAGCTTCAACCGGGGAGAGTGT
【0195】
一実施形態では、当該ベクターはシグナルペプチドをコードする配列を含む。シグナルペプチド配列の非限定的な例としては、限定されるものではないが、配列番号16および配列番号17が挙げられる。
(配列番号16)
ATGGATATGCGTGTACCAGCTCAACTACTTGGACTTCTATTGCTTTGGCTTCGTGGTGCTAGATGT
(配列番号17)
ATGGACTGGACTTGGAGAATCCTATTCTTGGTTGCTGCAGCTACAGGTGCTCATTCA
【0196】
一実施形態では、当該ベクターは配列番号10および重鎖の定常領域をコードする配列(例えば配列番号14など)およびシグナルペプチド配列を含む。そのようなベクターの例は配列番号18を含むベクターである。配列番号18はクローニング部位をさらに含む。
(配列番号18)
GCGGCCGCCACCATGGACTGGACTTGGAGAATCCTATTCTTGGTTGCTGCAGCTACAGGTGCTCATTCACAGGTTCAGCTGGTTCAGTCAGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGAGCCTCAGTGAAGGTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACATTTACCAGTTACAATATGCACTGGGTAAGACAGGCTCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATGGGAGGTATTTATCCAGGAAATGGTGATACTTCCTACAATCAGAAGTTCCAGGGCCGAGTTACTATGACTCGGGACACTTCCACCTCTACAGTGTACATGGAGCTCAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACCGCGGTCTATTACTGTGCAAGAGGCACCGTGGTCGGCGACTGGTACTTCGATGTGTGGGGCCAAGGCACCCTGGTCACCGTGAGCAGTGCCTCCACCAAGGGTCCCTCAGTCTTCCCACTGGCACCCTCCTCCAAGAGCACCTCTGGTGGCACAGCTGCCCTGGGCTGCCTGGTCAAGGACTACTTCCCAGAACCAGTGACTGTGTCATGGAACTCAGGCGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCTGCTGTCTTGCAGTCCTCAGGACTCTACTCCCTCAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCTCCAGCAGCTTGGGCACCCAGACCTACATCTGCAACGTGAATCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAAGTCGAGCCTAAGTCATGCGACAAGACTCACTGATGAGGATCC
【0197】
一実施形態では、当該ベクターは、配列番号8および軽鎖の定常領域をコードする配列(例えば配列番号15など)およびシグナルペプチド配列を含む。そのようなベクターの例は配列番号19を含むベクターである。配列番号19はクローニング部位をさらに含む。
(配列番号19)
GACGTCACCATGGATATGCGTGTACCAGCTCAACTACTTGGACTTCTATTGCTTTGGCTTCGTGGTGCTAGATGTGACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGAAGTAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCTTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACATCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCACCCGGACTGTGGCTGCACCAAGTGTGTTCATCTTCCCACCTAGCGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTCGTGTGCCTCCTGAACAACTTCTACCCACGGGAGGCCAAGGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAAGATAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACTCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAGCACAAGGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCCCCTGTCACAAAGAGCTTCAACCGGGGAGAGTGTTGATGATATC
【0198】
一実施形態では、当該ベクターは、配列番号9および軽鎖の定常領域をコードする配列(例えば配列番号15など)およびシグナルペプチド配列を含む。そのようなベクターの例は配列番号20を含むベクターである。配列番号20はクローニング部位をさらに含む。
(配列番号20)
GACGTCACCATGGATATGCGTGTACCAGCTCAACTACTTGGACTTCTATTGCTTTGGCTTCGTGGTGCTAGATGTGACATCCAGATGACCCAGAGCCCAAGCAGCCTGAGCGCCAGCGTGGGTGACAGAGTGACCATCACCTGTAGTGCCAGTCAGAGCCTTGAGAACAGCAACGGAAACACCTACCTGAATTGGTACCAGCAGAAGCCAGGTAAGGCTCCAAAGCTGCTGATCTACAGAGTTTCCAACCGATTCTCTGGTGTGCCAAGCAGATTCAGCGGTAGCGGTAGCGGTACCGACTTCACCCTCACCATCAGCAGCCTCCAGCCAGAGGACTTCGCCACCTACTACTGCCTCCAGCTGACTCATGTCCCATGGACCTTCGGTCAGGGCACCAAGGTGGAGATCAAACGCACTGTGGCTGCACCAAGTGTGTTCATCTTCCCACCTAGCGATGAGCAGTTGAAATCTGGAACTGCCTCTGTCGTGTGCCTCCTGAACAACTTCTACCCACGGGAGGCCAAGGTACAGTGGAAGGTGGATAACGCCCTCCAATCCGGTAACTCCCAGGAGAGTGTCACAGAGCAAGATAGCAAGGACAGCACCTACAGCCTCAGCAGCACCCTGACTCTGAGCAAAGCAGACTACGAGAAGCACAAGGTCTACGCCTGCGAAGTCACCCATCAGGGCCTGAGTTCCCCTGTCACAAAGAGCTTCAACCGGGGAGAGTGTTGATGATATC
【0199】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているベクターは単離された宿主細胞に含まれている。前記宿主細胞は本発明において使用するための抗体の組換え産生のために使用してもよい。一実施形態では、宿主細胞は原核生物、酵母もしくは真核生物細胞、好ましくは哺乳類細胞、例えばSV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651)、ヒト胚腎臓株(293または懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら,J.Gen.Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、マウス骨髄腫細胞SP2/0-AG14(ATCC CRL 1581、ATCC CRL 8287)またはNSO(HPA culture collections No.85110503)、サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065)、マウス乳癌(MMT 060562、ATCC CCL 51)、TRI細胞(Matherら,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞およびヒト肝癌株(Hep G2)ならびにDSMのPERC-6細胞株などであってもよい。これらの宿主細胞のそれぞれに使用するのに適した発現ベクターも一般に当該技術分野で知られている。なお、「宿主細胞」という用語は一般に培養された細胞株を指す。本発明に従って使用するための抗原結合タンパク質をコードする発現ベクターが導入されている人間そのものは、「宿主細胞」の定義から明示的に除外される。
【0200】
本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片を作製するための方法は当該技術分野でよく知られている。好適な方法の例は、本抗hGPVI抗体またはその断片の発現のために適した条件下で本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその断片をコードする単離されたポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞を培養すること、および発現された抗hGPVI抗体またはその断片を回収することを含む。この組換えプロセスは、インビボでの治療的使用を目的としたモノクローナル抗体などの本発明において使用するための抗hGPVI抗体またはその断片の大規模作製のために使用することができる。これらのプロセスは当該技術分野において利用可能であり、当業者に知られている。
【0201】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質をクロマトグラフィー、好ましくは親和性クロマトグラフィー、より好ましくはプロテインL-アガロース上での親和性クロマトグラフィーによって精製してもよい。
【0202】
従って一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質はプロテインL(PpL)に結合するためのドメインを含む。PpL結合活性を本発明のタンパク質上に移動させるための方法は、「Muzardら,Analytical Biochemistry 388,331-338,2009」および「Lakhrifら,MAbs.2016;8(2):379-88」に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0203】
本発明において使用するための抗体(特に明記しない限りあるいは文脈に明らかに矛盾しない限り、本出願で使用される「抗体」という用語によって包含される)、好ましくはACT017様またはACT006様抗体の断片および誘導体は、当該技術分野で知られている技術によって作製することができる。「断片」はインタクトな抗体の一部、一般に抗原結合部位または可変領域を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)およびFv断片、二重特異性抗体、隣接するアミノ酸残基の1つの連続した配列からなる一次構造を有するタンパク質である任意の抗体断片(本明細書では「一本鎖抗体断片」または「一本鎖タンパク質」という)、例えば限定されるものではないが、(1)一本鎖Fv分子、(2)1つの軽鎖可変ドメインのみを含む一本鎖タンパク質または関連する重鎖部分を含まない軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含むその断片、(3)1つの重鎖可変領域のみを含む一本鎖タンパク質または関連する軽鎖部分を含まない重鎖可変領域の3つのCDRを含むその断片、ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられる。本抗体の断片は標準的な方法を用いて得ることができる。例えば、FabまたはF(ab’)断片を従来の技術に従って単離された抗体のプロテアーゼ消化により作製してもよい。当然のことながら、例えばインビボでのクリアランスを遅くし、かつより望ましい薬物動態学的プロファイルを得るための公知の方法を用いて免疫反応性断片を修飾することができ、この断片をポリエチレングリコール(PEG)で修飾してもよい。PEGをFab’断片に連結して部位特異的に結合させる方法は、例えば、「Leongら,Cytokines 16(3):106-119(2001)」および「Delgadoら,Br.J.Cancer 73(2):175-182(1996)」に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0204】
あるいは、本発明において使用するための抗体、好ましくはACT017様またはACT006様抗体をコードするDNAを、断片をコードするように修飾してもよい。次いで、修飾したDNAを発現ベクターに挿入し、適当な細胞を形質転換またはトランスフェクトするために使用し、次いで所望の断片を発現させる。
【0205】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するまたはそれを治療するのに使用するための組成物であり、前記組成物は、本明細書の上に記載されているヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する少なくとも1種の単離されたヒト化タンパク質を含み、かつ前記組成物は当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって投与される(または投与される予定である)。
【0206】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するまたはそれを治療するのに使用するための医薬組成物であり、前記医薬組成物は、本明細書の上に記載されているヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する少なくとも1種の単離されたヒト化タンパク質と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含み、かつ前記医薬組成物は、当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって投与される(または投与される予定である)。
【0207】
これらの組成物に使用し得る薬学的に許容される賦形剤としては、限定されるものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒトの血清アルブミンなどの血清タンパク質、酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、グルコースなどの糖類、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0208】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するまたはそれを治療するのに使用するための医薬組成物であり、前記医薬組成物のpHは4~6であり、好ましくは約5.0である。
【0209】
本発明の別の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気を治療するまたはそれを治療するのに使用するための薬であり、前記薬は、本明細書の上に記載されているヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する少なくとも1種の単離されたヒト化タンパク質を含み、かつ前記薬は当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって投与される(または投与される予定である)。
【0210】
一実施形態では、本発明において使用するための組成物、医薬組成物または薬は、例えば血栓溶解剤などのGPVIに関連する病気を治療するのに有用な別の薬剤をさらに含む。血栓溶解剤の一例は、そのままのt-PAおよび組換え型t-PAならびにそのままのt-PAの酵素および/または線維素溶解活性を保持する修飾型t-PAなどのt-PAである。本明細書で使用されるt-PAは、当該技術分野におけるその一般的な意味を有し、かつ組織型プラスミノーゲン活性化因子を指す。修飾型t-PAの酵素活性は、プラスミノーゲンをプラスミンに変換する当該分子の能力を評価することによって測定してもよい。修飾型t-PAの線維素溶解活性は、当該技術分野で知られている任意のインビトロ血餅溶解試験によって決定してもよい。T-PAはアルテプラーゼ(アクチバーゼ(登録商標)またはアクチライス(Actilyse)(登録商標))として市販されている。組換え型t-PAは当該技術分野において記載されており、かつ当業者によって知られている。修飾型t-PAは当該技術分野において記載されており、かつ当業者によって知られており、限定されるものではないが、欠失もしくは置換されたアミノ酸またはドメインを有するt-PA、修飾されたグリコシル化状態、および他の分子に結合または融合されたバリアントが挙げられる。修飾型t-PAの例は例えば欧州特許第0352119号、国際公開第93/24635号、欧州特許第0382174号および国際公開第2013/034710号に記載されており、これらの特許は参照により本明細書に組み込まれる。
【0211】
一実施形態では、本発明において使用するための組成物、医薬組成物または薬は、国際公開第2013/034710号に記載されている突然変異型t-PAをさらに含む。
【0212】
一実施形態では、前記突然変異型t-PAは、配列番号25(ヒトwt t-PA成熟型に対応する)または配列番号26(tc-t-PAのヒトwt t-PAの第1の鎖に対応する)、好ましくは配列番号25または配列番号26と配列番号27(tc-t-PAのヒトwt t-PAの第2の鎖に対応する)との会合からなる配列あるいは少なくとも80%の同一性を有するそのバリアントを含み、前記配列は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンおよびヒスチジンから選択される親水性アミノ酸、好ましくはアルギニンによる配列番号25または配列番号26のリジン結合部位の任意のアミノ酸の再配置からなる突然変異、および/またはセリンによる配列番号25または配列番号26の275位のアルギニンの再配置からなる突然変異を含む。
【0213】
一実施形態では、前記突然変異型t-PAは、配列番号25(ヒトwt t-PA成熟型に対応する)または配列番号26(2本鎖t-PAのヒトwt t-PAの第1の鎖に対応する)、好ましくは配列番号25または配列番号26と配列番号27(2本鎖t-PAのヒトwt t-PAの第2の鎖に対応する)との会合からなる配列あるいは少なくとも80%の同一性を有するそのバリアントを含み、前記配列は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシンおよびヒスチジンから選択される親水性アミノ酸、好ましくはアルギニンによる配列番号25または配列番号26の253位のトリプトファンの再配置からなる突然変異および/またはセリンによる配列番号25または配列番号26の275位のアルギニンの再配置からなる突然変異を含む。
【0214】
一実施形態では、前記突然変異型t-PAは、以下の突然変異:
- アルギニンによる配列番号25または配列番号26の125位のプロリンの再配置、
- N末端におけるフィンガードメインの欠失および/または配列番号25または配列番号26におけるEGF様ドメインの欠失および/またはグルタミンによる配列番号25または配列番号26の117位のアスパラギンの再配置、
- アスパラギンによる配列番号25または配列番号26の103位のトレオニンの再配置および/またはグルタミンによる配列番号25または配列番号26の117位のアスパラギンの再配置および/またはアラニン-アラニン-アラニン-アラニン(AAAA)による配列番号25の296~299位のリジン-ヒスチジン-アルギニン-アルギニン(KHRR)の再配置、
- セリンによる配列番号25または配列番号26の84位のシステインの再配置、
- グルタミン酸またはグリシンによる配列番号25または配列番号26の275位のアルギニンの再配置および/または配列番号25または配列番号26におけるクリングル1ドメインの欠失
のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0215】
従って一実施形態では、本発明において使用するための組成物、医薬組成物または薬は、本明細書の上に記載されているヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する少なくとも1種の単離されたヒト化タンパク質、好ましくは本明細書の上に記載されている少なくとも1種の抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片と、t-PA(そのまま、組換え型または修飾型のいずれか)とを含む。
【0216】
本発明の目的の1つは、第1の部分に本明細書の上に記載されているヒト糖タンパク質VI(hGPVI)に結合する少なくとも1種の単離されたヒト化タンパク質(好ましくは本明細書の上に記載されている少なくとも1種の単離された抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片)と、第2の部分に少なくとも1種のt-PA(そのまま、組換え型または修飾型のいずれか)とを含む部分のキットである。
【0217】
従って別の目的は、それを必要とする対象におけるGPVIに関連する病気の治療に使用するための本明細書の上に記載されている部分のキットである。
【0218】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、GPVIシグナル伝達および/またはGPVIのリガンドのシグナル伝達を阻害する抗hGPVI抗体またはその抗原結合断片である。本明細書で使用される「阻害する」という用語は、本発明において使用するためのタンパク質がそのリガンドとのGPVI相互作用、GPVIシグナル伝達および/またはGPVIシグナル伝達経路の分子の活性化を阻止、減少、防止または中和できることを意味する。
【0219】
GPVIのリガンドの例としては、限定されるものではないが、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンが挙げられる。
【0220】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は中和抗hGPVI抗体またはその断片である。
【0221】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、GPVIのそのリガンド(例えば、コラーゲン、フィブリンまたは下流シグナル伝達および血小板活性化を誘導することができるあらゆる他のGPVIリガンドなど)への結合を阻害する。
【0222】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、例えばコラーゲンなどのGPVIのリガンドに応答した血小板の活性化、分泌および凝集を阻害および/または防止する。一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、GPVIの例えばコラーゲンなどのリガンドへの血小板接着を阻害および/または防止する。
【0223】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、例えばフィブリンなどのGPVIのリガンドに応答したGPVI依存性トロンビン産生を阻害および/または防止する。一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、コラーゲンおよび/または組織因子に応答した血小板によって触媒されるトロンビン産生を阻害および/または防止する。
【0224】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、GPVIを介するGPVIのリガンド(例えばフィブリンなど)による血小板動員を阻害および/または防止する。
【0225】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、約1~約200μg/mL、好ましくは約2~約100μg/mL、より好ましくは約5~約50μg/mLの範囲の濃度で存在する場合に、全血中の血小板の飽和すなわち多血小板血漿を誘導する。
【0226】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、少なくとも約15μg/mL、好ましくは少なくとも約10μg/mLの濃度で使用した場合にコラーゲン誘導性血小板凝集を阻害する。好ましくは、本発明において使用するためのタンパク質はそのような濃度で使用した場合にコラーゲン誘導性血小板凝集を完全に阻害する。
【0227】
一実施形態では、コラーゲン誘導性血小板凝集を阻害するための本発明において使用するためのタンパク質のIC50は、約0.5~約10μg/mL、好ましくは約1~約6μg/mL、より好ましくは約2~約3.2μg/mLの範囲である。
【0228】
一実施形態では、コラーゲン誘導性血小板凝集の速度を50%低下させる本発明において使用するためのタンパク質の濃度は、約0.5~約5μg/mL、好ましくは約1~約3μg/mLの範囲、より好ましくは約2μg/mLである。
【0229】
一実施形態では、コラーゲン誘導性血小板凝集の強度を低下させる本発明において使用するためのタンパク質の濃度は、約0.5~約10μg/mL、好ましくは約1~約6μg/mLの範囲、より好ましくは約3.2μg/mLである。
【0230】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質はインビボ投与した場合、例えば0.01~500mgの範囲の用量で投与した場合などに、GPVIの枯渇を誘導しない。
【0231】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質はインビボ投与した場合、例えば0.01~500mgの範囲の用量で投与した場合などに、血小板数の減少すなわち血小板減少症を誘導しない。
【0232】
GPVIに関連する病気の例は当該技術分野でよく知られており、限定されるものではないが、炎症、血栓症、異常な巨核球および/または血小板の増殖、分化、形態、遊走、凝集、脱顆粒および/または機能を伴う疾患、血栓疾患(例えば冠動脈の血栓性閉塞など)、定量的もしくは定性的血小板機能不全を示す疾患および内皮機能不全を示す疾患、脳血管疾患、冠動脈疾患、血小板凝集を引き起こし得るあらゆる血管損傷により生じる疾患、GPVIのリガンドに応答した異常なシグナル伝達を伴う疾患、GPVIを正常に発現する細胞またはGPVIを発現しない細胞のいずれかにおける異常なレベルのGPVI発現および/または活性を伴う疾患、あるいは血小板が炎症反応を調節することによって寄与する骨髄および末梢血における疾患が挙げられる。
【0233】
一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は、動脈と静脈の血栓症、再狭窄、急性冠症候群、アテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害、心筋梗塞、肺塞栓症、重症下肢虚血および末梢動脈疾患から選択される心血管疾患である。
【0234】
一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は静脈血栓症である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は再狭窄である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は急性冠症候群である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気はアテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は心筋梗塞である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は肺塞栓症である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は重症下肢虚血である。一実施形態では、前記GPVIに関連する病気は末梢動脈疾患である。
【0235】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、炎症および/または血栓症において白血球および血小板を調節する。従って、一実施形態によれば、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して炎症および/または血栓症を治療する。
【0236】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して血小板接着凝集および脱顆粒を調節し、好ましくは防止する。
【0237】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、血栓性疾患(例えば冠動脈の血栓性閉塞など)、定量的もしくは定性的血小板機能不全を示す疾患および内皮機能不全を示す疾患を治療する。これらの疾患としては、限定されるものではないが、冠動脈および大脳動脈疾患が挙げられる。
【0238】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、虚血性脳卒中などの脳血管疾患、静脈血栓塞栓症疾患(例えば、下肢の腫脹、疼痛および潰瘍形成を伴う疾患、肺塞栓症、腹部の静脈血栓症など)、血栓性微小血管症、血管性紫斑病を治療する。
【0239】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、冠動脈疾患(例えば、不安定狭心症、心筋梗塞、急性心筋梗塞、冠動脈疾患、冠動脈の血管新生(coronary revascularization)、冠動脈再狭窄、心室血栓塞栓症(ventricular thromboembolism)、アテローム性動脈硬化症、冠動脈疾患(例えば動脈閉塞性疾患)、プラーク形成、心虚血(心血管疾患および経皮的冠動脈血管形成(バルーン血管形成)術などの冠動脈手術に関連する合併症など)を治療する。冠動脈手術に関して、当該手術の前、間または後における上に記載されているタンパク質の投与により、そのような治療を達成することができる。好ましい実施形態では、そのような投与を利用して血管形成後の急性心虚血を予防することができる。
【0240】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、血小板凝集を引き起こし得るあらゆる血管損傷から生じる疾患を治療する。そのような血管損傷としては、限定されるものではないが、それ以外はインタクトである血管内に露出している高度に血栓形成性の表面を生じさせる血管損傷などの血管壁損傷、例えば、ADP、トロンビンおよび/またはエピネフリンの放出を引き起こす血管壁損傷、アテローム性プラーク部位における血管狭窄、破裂および/または裂傷部位で生じる流体剪断応力、およびバルーン血管形成術またはアテローム切除術による生じる損傷が挙げられる。
【0241】
さらに特定の実施形態では、本タンパク質は、作用物質に誘導される血小板形態変化(例えば、GPIb-vWFによって媒介される血小板活性化)、血小板内顆粒成分の放出、シグナル伝達経路の活性化、またはGPVIと相互作用しない作用物質による血小板活性化時のカルシウム動員の誘導などの他の血小板の性状または機能に影響を与えないことが好ましい。
【0242】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、GPVIのリガンド(限定されるものではないが、コラーゲン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチンおよびラミニンなど)または他の細胞外マトリックスタンパク質に応答したシグナル伝達異常を伴う疾患を治療する。
【0243】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、通常GPVIを発現する細胞またはGPVIを発現しない細胞のいずれかにおける異常なレベルのGPVI発現および/または活性を伴う疾患を治療する。例えば、本タンパク質を使用して、通常GPVIを発現しない癌性(例えば腫瘍)細胞におけるGPVIの異常な発現を伴う疾患を調節することができる。そのような障害としては、例えば腫瘍細胞の遊走および転移への進行を伴う疾患を挙げることができる。
【0244】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して血小板の免疫調節機能を調節する。
【0245】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して骨髄および末梢血における疾患を治療する。
【0246】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を使用して、血小板が炎症反応を調節することによって寄与する疾患、例えば、限定されるものではないが感染、関節炎、線維症または限定されるものではないが癌細胞増殖および/または転移などの細胞機能を血小板が調節する疾患に付随する持続的または長期的炎症を治療する。
【0247】
GPVIに関連する疾患、障害または病気のさらなる例としては、限定されるものではないが、例えば、アテローム血栓症を含む動脈血栓症、虚血性イベント、急性冠動脈症候群、心筋梗塞(心臓発作)、急性の脳血管虚血(脳卒中)、経皮的冠動脈介入、ステント血栓症、虚血性疾患、再狭窄、虚血(急性および慢性)、大動脈疾患およびその派生疾患(大動脈瘤、血栓症など)、末梢動脈疾患、静脈血栓症、急性静脈炎および肺塞栓症、癌関連の血栓症(トルソー症候群)、炎症性血栓症および感染に関連する血栓症などの心血管疾患および/または心血管系イベントが挙げられる。
【0248】
一実施形態では、本発明の医薬組成物または薬は、動脈もしくは静脈血栓症、再狭窄、急性冠症候群、またはアテローム性動脈硬化症に起因する脳血管障害、好ましくは血栓症を治療するためのものであるかそれらを治療するのに使用するためのものである。
【0249】
一実施形態では、当該対象はGPVIに関連する疾患、障害または病気、好ましくは心血管疾患および/またはイベントによって冒されているもの、好ましくはそれらと診断されているものである。
【0250】
一実施形態では、当該対象は、本発明において使用するためのタンパク質の投与の前の48時間未満、好ましくは24時間未満、12時間以内に心血管系イベント(例えば、血栓症、脳卒中、心筋梗塞または脳血管障害など)を経験したものである。
【0251】
一実施形態では、当該対象は治療プロトコルの一部として本明細書の上に記載されているタンパク質、組成物、医薬組成物または薬を摂取する。
【0252】
一実施形態では、前記治療プロトコルは、本発明のタンパク質の投与の前、それと同時またはその後に、例えば血栓溶解剤、好ましくはt-PA(そのままのt-PAおよび組換え型t-PAならびにそのままのt-PAの酵素および/または線維素溶解活性を保持する修飾型t-PAを含む)などのGPVIに関連する病気を治療するのに有用な別の薬剤の投与をさらに含む。
【0253】
一実施形態では、前記治療プロトコルは、本発明のタンパク質の投与の前、それと同時またはその後に、血管内治療および/または血栓摘出術(塞栓摘出術としても知られている)による当該対象の治療をさらに含む。
【0254】
従って一実施形態では、治療される対象は、血管内治療および/または血栓摘出術によって過去に治療されたかこれから治療されるものである。
【0255】
一実施形態では、約0.5mg/kg~約50mg/kgの範囲、好ましくは約1mg/kg~約32mg/kgの範囲、より好ましくは約8mg/kgの用量の本発明において使用するためのタンパク質が当該患者に投与される(または投与される予定である)。別の実施形態では、約2.5mg/kg~約25mg/kg、好ましくは約5mg/kg~約15mg/kgの範囲、より好ましくは約8mg/kgの用量のヒト化タンパク質が当該患者に投与される。一実施形態では、約0.5mg/kg、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または約50mg/kgの用量の本発明において使用するためのタンパク質が当該対象に投与される(または投与される予定である)。
【0256】
一実施形態では、約30mg~約3000mgの範囲、好ましくは約60mg~約2000mg、より好ましくは約100~約1000mgの範囲、さらにより好ましくは約500mgの用量の本発明において使用するためのタンパク質が当該患者に投与される(または投与される予定である)。一実施形態では、約30、60、62.5、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500または約3000mgの用量の本発明において使用するためのタンパク質が当該対象に投与される(または投与される予定である)。別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質の用量は、約100mg~約2000mg、約125mg~約2000mg、好ましくは約250mg~約1000mgまたは約500mg~約1000mgの範囲である。
【0257】
本組成物は当該対象への投与のために製剤化される。本組成物を非経口、吸入スプレー、直腸内または経鼻投与するか、埋め込み型リザーバーを介して投与してもよい。本明細書で使用される投与という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、クモ膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0258】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は好ましくは静脈内注入によって注入される。別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は腹腔内に注射される。別の実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は皮内に注射される。
【0259】
注射に適した形態の例としては、限定されるものではないが、例えば無菌水溶液などの溶液、ゲル、分散液、乳濁液、懸濁液または使用前に液体を添加して溶液または懸濁液を調製するために使用するのに適した固体形態、例えば粉末およびリポソーム形態などが挙げられる。
【0260】
本組成物の無菌注射剤は、水性もしくは油性懸濁液であってもよい。これらの懸濁液を、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用する当該技術分野で知られている技術に従って製剤化してもよい。無菌注射剤は、非経口的に許容される非毒性希釈剤または溶媒に入れた無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。用いることができる許容可能なビヒクルおよび溶媒としては、水、リンガー液および等張の塩化ナトリウム溶液が挙げられる。また無菌固定油は、従来通りに溶媒または懸濁媒として用いられる。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなどのあらゆる無刺激性固定油を用いてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は注射剤の調製に有用であり、天然の薬学的に許容される油、例えば特にそれらのポリオキシエチル化された形態のオリーブ油またはヒマシ油も有用である。これらの油溶液または懸濁液は、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤または分散剤あるいは乳濁液および懸濁液などの薬学的に許容される剤形の製剤によく使用される同様の分散剤も含有していてもよい。また製剤のために、Tweens、Spansおよび他の乳化剤などのその他のよく使用される界面活性剤あるいは薬学的に許容される固体、液体または他の剤形の製造によく使用される生物学的利用能増強剤を使用してもよい。
【0261】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、当該対象に約2時間、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5または約12時間にわたって投与される(または投与される予定である)。
【0262】
一実施形態では、本発明において使用するためのタンパク質は、当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間(例えば約2時間、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5または約12時間)にわたって連続投与される。本明細書で使用される「連続投与される」という用語は、実質的に一定の投与速度での長時間にわたる化合物の投与を指す。
【0263】
別の実施形態では、本タンパク質の最初のボーラスが注射された後に、本タンパク質の残りの用量の連続投与が行われる。
【0264】
一実施形態では、前記最初のボーラス投与は、投与される本単離されたヒト化タンパク質の総投与量の約10~50%、好ましくは約20%を含む。一実施形態では、前記最初のボーラス投与は、投与される本単離されたヒト化タンパク質の総投与量の約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または約50%を含む。
【0265】
一実施形態では、前記最初のボーラスは約5~30分、好ましくは約15分で投与される。
【0266】
一実施形態では、本投与に使用するためのタンパク質の総投与量の約20%が最初の15分の投与の間に投与された後に、次の5時間45分の間に残りの80%の連続投与が行われる。
【0267】
一実施形態では、前記特定の投薬計画(任意に最初のボーラスを含む、少なくとも2時間にわたる連続投与)により本タンパク質の長期的効果が可能になり、これは実施例において実証されているように、前記タンパク質の投与の終了後に観察することができる。一実施形態では、血小板凝集に対する本タンパク質の効果は本タンパク質の投与の終了後に少なくとも約1、2、3、4、5、6、12、18、24、36または48時間にわたって観察される。
【0268】
一実施形態では、医薬組成物中に存在する本発明において使用するためのタンパク質は、例えば1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、50mg/mLまたは100mg/mLの濃度などの約1~約100mg/mLの範囲の濃度で供給することができる。一実施形態では、本タンパク質は100mg(10mL)または500mg(50mL)のいずれかの使い捨てバイアルに入れて約10mg/mLの濃度で供給される。
【0269】
一実施形態では、本医薬組成物はPBS(pH7.2~7.7)中に本発明のタンパク質を含んでいてもよい。
【0270】
一実施形態では、本医薬組成物は、20mMのクエン酸ナトリウム緩衝液および130mMのNaCl(pH5.0)中に本発明のタンパク質を含んでいてもよい。
【0271】
本発明の別の目的はGPVIに関連する病気の治療方法であり、前記方法は、本明細書の上に記載されているhGPVIに結合する単離されたヒト化タンパク質あるいは本明細書の上に記載されている組成物、医薬組成物または薬を、それを必要とする対象に投与することを含む。本発明によれば、本発明の方法は、前記タンパク質、組成物、医薬組成物または薬を当該対象に少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって投与することを含む。
【0272】
一実施形態では、本発明のGPVIに関連する病気の治療方法は、当該患者を血管内治療および/または血栓摘出術により治療することをさらに含む。一実施形態では、前記血管内治療および/または血栓摘出術は本発明のタンパク質(好ましくは本抗体)の投与の前、それと同時またはその後に行う。
【0273】
一実施形態では、本発明のGPVIに関連する病気の治療方法は、例えば血栓溶解剤などのGPVIに関連する病気を治療するのに有用な別の薬剤、好ましくはt-PA(そのままのt-PAおよび組換え型t-PAならびにそのままのt-PAの酵素および/または線維素溶解活性を保持する修飾型t-PAを含む)を投与することをさらに含む。一実施形態では、前記さらなる薬剤は本発明のタンパク質(好ましくは本抗体)の投与の前、それと同時またはその後に投与される。
【0274】
一実施形態では、本発明の方法は、約0.5mg/kg~約50mg/kgの範囲、好ましくは約1mg/kg~約32mg/kgの範囲、より好ましくは約8mg/kgの用量の本発明に記載されているタンパク質を投与することを含む。別の実施形態では、本発明の方法は、約2.5mg/kg~約25mg/kg、好ましくは約5mg/kg~約15mg/kgの範囲、より好ましくは約8mg/kgの用量の本発明に記載されているタンパク質を投与することを含む。一実施形態では、本発明の方法は、約0.5mg/kg、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または約50mg/kgの用量の本発明に記載されているタンパク質を投与することを含む。
【0275】
一実施形態では、本発明の方法は、約30mg~約3000mgの範囲、好ましくは約60mg~約2000mg、より好ましくは約100~約1000mgの範囲、さらにより好ましくは約500mgの用量の本発明に記載されているタンパク質を投与することを含む。一実施形態では、本発明の方法は、約30、60、62.5、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1500、2000、2500または約3000mgの用量の本発明に記載されているタンパク質を投与することを含む。別の実施形態では、本発明の方法は、約100mg~約2000mg、約125mg~約2000mg、好ましくは約250mg~約1000mgまたは約500mg~約1000mgの範囲の用量の本発明に記載されているタンパク質を投与することを含む。
【0276】
一実施形態では、本発明に記載されているタンパク質は好ましくは点滴によって注射される。
【0277】
一実施形態では、本発明の方法は、本タンパク質を約2時間、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5または約12時間にわたって投与することを含む。
【0278】
一実施形態では、本発明の方法は、本タンパク質を少なくとも2時間、好ましくは少なくとも4~6時間にわたって(例えば、約2時間、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5または約12時間にわたって)連続投与することを含む。
【0279】
別の実施形態では、本発明の方法は、本タンパク質の最初のボーラスを投与した後に本タンパク質の残りの用量の連続投与を行うことを含む。
【0280】
一実施形態では、前記最初のボーラス投与は、投与される本単離されたヒト化タンパク質の総投与量の約10~50%、好ましくは約20%を含む。一実施形態では、前記最初のボーラス投与は、投与される本単離されたヒト化タンパク質の総投与量の約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または約50%を含む。
【0281】
一実施形態では、前記最初のボーラスは約5~30分、好ましくは約15分で投与される。
【0282】
一実施形態では、本投与に使用するためのタンパク質の総投与量の約20%が最初の15分の投与の間に投与された後に、次の5時間45分の間に残りの80%の連続投与が行われる。
【0283】
一実施形態では、本発明の方法はGPVI受容体機能および下流シグナル伝達を阻害し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0284】
一実施形態では、GPVI受容体機能および下流シグナル伝達を阻害するための方法は、血小板数、血小板表面におけるGPVIの発現または出血時間に影響を与えない。
【0285】
一実施形態では、GPVI受容体機能および下流シグナル伝達を阻害するための方法は効率的かつ可逆的である。
【0286】
一実施形態では、本発明の方法はGPVIのそのリガンド(好ましくは、限定されるものではないがコラーゲン)への結合を阻害し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0287】
一実施形態では、GPVIのそのリガンドへの結合を阻害するための方法は、血小板数、血小板表面におけるGPVIの発現または出血時間に影響を与えない。
【0288】
一実施形態では、GPVIのそのリガンドへの結合を阻害するための方法は効率的かつ可逆的である。
【0289】
一実施形態では、本発明の方法は、血小板のコラーゲンへの接着を阻害および/または防止し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0290】
一実施形態では、本発明の方法は、コラーゲン誘導性血小板凝集を阻害および/または防止し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0291】
一実施形態では、本発明の方法は、コラーゲンに応答した血小板活性化、特に血小板凝集を阻害および/または防止し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0292】
一実施形態では、本発明の方法は、コラーゲンおよび/または組織因子に応答したトロンビン産生を阻害および/または防止し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0293】
一実施形態では、本発明の方法は、GPVIのフィブリンへの結合を阻害し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0294】
一実施形態では、本発明の方法は、GPVIを介したフィブリンによる血小板動員を阻害および/または防止し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0295】
一実施形態では、本発明の方法は、フィブリンに応答したGPVI依存性トロンビン産生を阻害および/または防止し、それによりGPVIに関連する病気を治療するためのものである。
【0296】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質を対象に投与することによりインビボにおいてGPVIの枯渇は誘導されない。
【0297】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質を対象に投与することにより血小板数の減少は誘導されない。従って一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質を対象に投与することにより血小板減少症は誘導されない。
【0298】
一実施形態では、本明細書の上に記載されているタンパク質を対象に投与することにより出血時間の延長は誘導されない。
【0299】
一実施形態では、本発明の方法は治療的有効量の本タンパク質を対象に投与することを含む。
【0300】
本発明はさらに、GPVIに関連する疾患を治療するための血栓溶解剤(好ましくはt-PA(そのままのt-PAおよび組換え型t-PAならびにそのままのt-PAの酵素および/または線維素溶解活性を保持する修飾型t-PAを含む))の効力を高めるための方法に関し、前記方法は、前記血栓溶解剤と本発明のタンパク質(好ましくは治療的有効量の本発明のタンパク質)との組み合わせを当該対象に投与することを含む。
【0301】
一実施形態では、本発明の方法により当該対象に投与される血栓溶解剤(好ましくはt-PA)の用量を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0302】
図1図1は、カニクイザル(n=4)への増加用量のACT017(1、2、4、8mg/kg)の15分間の注入終了から30分後および2時間後に測定したコラーゲン誘導性血小板凝集の平均±SEMでの強度(A)および速度(B)を示すグラフの組み合わせである。
図2図2は、あらゆる治療前(T0)または増加用量(1、2、4、8mg/kg)のビヒクルもしくはACT017の注入から24時間後に測定したカニクイザルの血中血小板数を示すグラフである。
図3図3は、治療前(時間=0)ならびにカニクイザルへのACT017(1、2、4、8mg/kg)またはビヒクルの注入から30分後および2時間後に4匹の対象において測定した出血時間を示すグラフの組み合わせである。
図4図4は、カニクイザル(n=8)へのACT017の2種類の用量(2および8mg/kg)の1時間の注入開始後の異なる時間に測定したコラーゲン誘導性血小板凝集の平均±SDでの強度(A)および速度(B)を示すグラフの組み合わせである。
図5図5は、2mg/kgのACT017の1時間の注入開始後の異なる時間にカニクイザル(n=8)の血小板に対するフローサイトメトリーによって測定したGPVI発現レベルを示すグラフである(MFI:平均蛍光強度)。
図6図6は、カニクイザルへの8mg/kgのACT017の25分間のボーラス注射(n=4)、8mg/kgのACT017の1時間の注入(n=8)、または2mg/kgのACT017の15分間のボーラスとその後の6mg/kgのACT017の5時間45分の注入(n=4)、の終了後の異なる時間(20分~24時間)で測定したコラーゲン誘導性血小板凝集の平均±SDでの強度を示すグラフである。
図7図7は、野生型GPVI-Fc(黒色のグラフ)およびGPVI二重変異体(灰色のグラフ)のコラーゲンへの結合を示すグラフである。
図8図8は、ACT017の野生型GPVI-Fc(黒色のグラフ)または二重変異体(灰色のグラフ)への結合を示すグラフである。
図9図9は、異なる時間(15分~168時間)においてコホート4の2人の健康な対象で測定した血小板凝集率(%)を示すグラフである。コホート4の対象に500mgのACT017またはプラセボを投与した。「スクリーニング時間」は、ACT017またはその適合プラセボの投与の1週間前または24時間前の血小板凝集率(%)の測定値を表す。「投与前」はACT017またはその適合プラセボの投与のベースライン測定値を表す。健康な対象1のグラフは黒色で表されており、健康な対象2のグラフは灰色で表されている。
【実施例
【0303】
以下の実施例によって本発明をさらに例示する。
【0304】
実施例1:非ヒト霊長類における生物学的データ
【0305】
材料および方法
動物
本研究ではどんな治療も過去に受けたことのない28匹のカニクイザルを使用した。
【0306】
治療
最初に、増加用量のACT017(1、2、4、8mg/kg)またはそのビヒクルを15分間にわたって静脈内投与した(n=4~8)。投与から30分後および2時間後の時点で血液を採取した。
【0307】
第2の実験では、ACT017をボーラス注射または注入によって動物に投与した。3つの治療群、すなわち25分のボーラス注射によって8mg/kgで投与されるACT017(n=4)、1時間の注入によって8mg/kgで投与されるACT017(n=8)、15分のボーラス注射によって2mg/kgおよびその後に5時間45分の注入により6mg/kgで投与されるACT017(n=4)を本研究に含めた。投与から20分~24時間後の異なる時間で血液を採取した。
【0308】
解析
血小板凝集:遠心分離(120×g、15分、20℃)後に多血小板血漿(PRP)をサルから得て、即座に使用した。その凝集の速度および強度をAPACT(登録商標)血小板凝集計および各種濃度の本発明のFabを含むPRPに対して2.5mg.mL-1のコラーゲン(Hormコラーゲン、Nycomed社、DE)濃度を用いて測定し、連続的に記録した。血小板凝集の強度を光透過における増加率(%)として測定した。注射の開始後の指示された時間における平均±SDが提示されている。
【0309】
EDTA抗凝固処理血液中で血小板数を測定した。サルのパラメータに設定したscil Vet abc自動セルカウンター(Scil Animal Care Company社、フランスのホルツハイム)で血小板数を決定した。
【0310】
標準的な臨床診断法(Ivy法)に従い、かつ0.5cmのSurgicutt(商標)出血時間装置を用いて、覚醒状態のサルの前腕の表面で出血時間を測定した。
【0311】
GPVI発現:注射前および増加用量のACT017または同等量のビヒクルの注射から30分後に血液試料をEDTA上に採取し、カニクイザルGPVIと交差反応する市販のFITC結合抗ヒトGPVIモノクローナル抗体(クローン1G5、Biocytex社)と共にインキュベートし、Beckman Coulter Galliosフローサイトメーターで蛍光を測定した。
【0312】
結果
ACT017投与の効果を非ヒト霊長類において特徴づけた。8匹のカニクイザルがこの研究に参加した。
【0313】
最初に、増加用量のACT017(1、2、4、8mg/kg)を15分間にわたって静脈内投与した。投与から30分後および2時間後の時点で血液を採取した。血小板凝集は用量依存的に可逆的に阻害された(図1)。1から2mg/kgおよび2から4mg/kgへと用量を増加させると効果が高まったが、8mg/kgでは4mg/kgと比較した場合にさらなる効果は生じなかった。注射から24時間後に測定した血小板数は、注射前に得られた値と比較した場合に変化していなかった(図2)。ビヒクルあるいは2、4または8mg/kgのACT017での治療後に出血時間における有意な延長は観察されなかった(図3)。次に、ウォッシュアウト期間後に、カニクイザルに1時間の潅流として投与されるACT017(2または8mg/kg)を与えた。血小板凝集およびGPVI発現を治療の開始後の異なる時間(1、1.5、2、4および7時間)で測定した(図4および図5)。コラーゲン誘導性血小板凝集は可逆的に阻害され、その効果の持続期間は2mg/kgと比較して8mg/kgで治療したカニクイザルにおいて引き延ばされた(図4)。血小板上でのGPVI発現は、治療前の値と比較した場合に治療開始後の異なる時間で安定なままであった(図5)。
【0314】
まとめると、これらの結果から、非ヒト霊長類においてACT017の投与は、血小板数、血小板表面におけるGPVIの発現および出血時間に対して影響を与えることなくGPVI機能を効率的かつ可逆的に阻害することが確認される。
【0315】
また上記結果によれば、1時間の注入後の血小板凝集に対するACT017の阻害効果は、限られた期間において効率的であるように見えた。実際、ACT017は投与の開始後の2時間の間のみ、すなわち1時間の誘導の終了後に最大で1時間にわたって、血小板凝集に対して明白かつ安定な阻害を誘導した(図4を参照)。2時間後には、この阻害が8mg/kgで延長されていたとしても、ACT017阻害剤の効果は全ての試験された用量において消失した。
【0316】
第2の実験では、8mg/kgの用量のACT017の血小板凝集に対する効果を、1時間および6時間の投与を含む異なる投与時間後に、さらに特徴づけた。血小板凝集は時間依存的に可逆的に阻害された(図6)。
【0317】
8mg/kgでの25分間のボーラス注射は、0.5時間で測定したコラーゲン誘導性血小板凝集の完全な阻害を誘導した。2時間では血小板凝集の阻害は消失し、凝集強度は24±34%の値に戻った。24時間の時点ではACT017の効果を観察できない。
【0318】
8mg/kgでの1時間の注入により、コラーゲン誘導性血小板凝集の長期的阻害が生じた。但し、この阻害は2時間までのみ全ての動物について完全なもの(<5%)であった。ACT017の投与から4時間後および7時間後に阻害は消失し、凝集の総平均強度はそれぞれ16±29%および25±32%であった。従って25分間の投与に関しては、ACT017の阻害効果は、その1時間の投与後の短時間の間のみ明白であるように見える。
【0319】
8mg/kgでの6時間の注入により、少なくとも9時間持続するコラーゲン誘導性血小板凝集の十分な阻害が生じた。実際、6時間の注入の開始後から9時間の間、血小板凝集強度は2%未満であった。さらに、解析は9時間~24時間の間は行われなかったので、当該効果のより長い持続期間の可能性は排除されるものではない。24時間の時点では、ACT017の効果は4匹の動物のうちの3匹についてほぼ完全に逆戻りし、かつ平均凝集強度は47±30%に達した。
【0320】
結論として8mg/kgの同じ用量では、6時間の注入は、投与の終了後から少なくとも3時間にわたってコラーゲン誘導性血小板凝集を阻害する長期的有効性を実証する。
【0321】
実施例2:健康な志願者におけるACT017の安全性、忍容性、薬物動態および薬力学の研究
【0322】
材料および方法
本研究は、健康な志願者におけるACT017の安全性、忍容性、薬物動態および薬力学に対する無作為化、二重盲検、プラセボ対照漸増単回投与研究である。
【0323】
対象
本研究に含めた対象は、30~60歳の年齢(両端の値を含む)のBMI≧18kg/mかつ≦30kg/mの健康な男性対象または妊娠しておらず授乳中でない女性対象であった。計48人の対象を6つの漸増用量レベルコホートに登録し、各コホートは8人の対象(6人が有効成分、2人がプラセボ)からなっていた。各コホートを2つのサブコホートに分け、すなわち1つのコホート(1人は有効成分、1人はプラセボ)には最初に投薬し、それ以外のコホート(5人は有効成分、1人はプラセボ)にはその48時間後に投薬した。
【0324】
各投薬期間の1日目に、対象は研究センターに入り、投薬後少なくとも48時間までそこに滞在した。経過観察訪問は7日目に行われた。対象は1日目から3日目の朝まで入院した。
【0325】
治療
治験薬は500mgのACT017および適合プラセボ溶液を含む50mLバイアルであった。6時間の注入の間に治療が行われた。
【0326】
各用量は、最終投与量の約4分の1に相当する最初のボーラスの15分間の注射を含む6時間の注入として投与した。
コホート1:治療A:62.5mgのACT017(n=6)、治療B:適合プラセボ(n=2)。
コホート2:治療A:125mgのACT017(n=6)、治療B:適合プラセボ(n=2)。
コホート3:治療A:250mgのACT017(n=6)、治療B:適合プラセボ(n=2)。
コホート4:治療A:500mgのACT017(n=6)、治療B:適合プラセボ(n=2)。
コホート5:治療A:1000mgのACT017(n=6)、治療B:適合プラセボ(n=2)。
コホート6:治療A:2000mgのACT017(n=6)、治療B:適合プラセボ(n=2)。
【0327】
解析
ACT017のための薬物動態採血は対象ごとに15個の試料を必要とした。
【0328】
ACT017のための採尿は対象ごとにおよそ5回の採尿間隔を必要とした。
【0329】
安全性および忍容性解析は以下の試験を含んでいた。
・有害事象:本研究の最初から最後まで
・バイタルサイン:頻繁
・ECG(心電図):バイタルサインよりも少ない頻度
・血液検査を含む臨床検査:2回
・凝固パラメータ:5回
・出血時間:4回
・血小板数:7回
・血小板凝集(コラーゲン):6回
・免疫原性/ADA:3回
【0330】
血小板凝集:最初の15分で当該用量の25%が投与され、その後の5時間45分で当該用量の75%が投与されるプラセボまたは500mgのACT017が静脈内に投与された健康な対象から、遠心分離(120×g、15分、20℃)後に多血小板血漿(PRP)を得て、即座に使用した。凝集強度をAPACT(登録商標)血小板凝集計および2.5mg.mL-1のコラーゲン濃度(Hormコラーゲン、各種濃度の本発明のFab)を用いて測定して連続的に記録した。血小板凝集の強度を光透過における増加率(%)として測定した。
【0331】
結果
図9に示すように、対象2における血小板凝集率(%)は、投与の開始から15分後にのみ、ベースラインのパーセンテージと比較して約70%減少し、その後の8時間にわたって約10%に維持され、次いで再び上昇して24時間後に約70%の凝集に達し、次いで投与から48時間後にベースラインに戻る。投与から168時間後に血小板凝集に対する効果は認められない。従って対象2において観察された効果は可逆的である。対象1では、血小板凝集率(%)は当該経験の168時間の間に変化しないようである。
【0332】
実施例3:GPVIに対するACT017のエピトープ親和性に関する研究
【0333】
GPVI上のACT017のエピトープは、GPVI上の2つの領域(配列番号13中のアミノ酸121~135およびアミノ酸169~183)を含む立体構造エピトープであるとエピトープマッピングによって過去に同定された。このエピトープを確認するために、以下の変異体:S125P、S126Q、G128R、Q133K、T136S、T171D、A172LおよびH174Vを含む二重変異体を構築し、コラーゲンおよびACT017に対するこの変異体の親和性を測定した。
【0334】
材料および方法
以下のように可溶性GPVI-Fcを作製した:トリペプチドGGRを介してヒトIgG1 Fcドメインに融合された最初のメチオニンからアスパラギン269までのヒトGPVIの外部ドメインをコードする遺伝子をコドンの最適化後に合成した。この遺伝子をpTT5ベクターにクローニングした後、HEK293-6E細胞
にトランスフェクトした。分泌されたGPVI-Fcを、MAbselect matrix(GE Healthcare社、17519901)を用いた親和性クロマトグラフィー、およびその後のNuvia(商標)HR-S陽イオン交換樹脂(BioRad社、156051)上でのポリッシングクロマトグラフィー(polishing chromatography)によって、上記細胞の馴化培地から精製した。
【0335】
GPVI-Fcのコラーゲンへの結合に対する二重変異体の効果-マイクロタイトレーションプレートをコラーゲンのPBS溶液(20μg/mL、1ウェルあたり100μL)で4℃にて一晩コーティングした。非特異的結合部位を200μLの1%BSAのPBS溶液で30分間飽和させた。次いでこれらのプレートを増加する濃度の野生型もしくは二重変異体のGPVI-Fc調製物(0.1%BSAおよび0.1%Tween20を含む100μLのPBS溶液)と共に30分間インキュベートした。3回の洗浄工程後に、プレートをペルオキシダーゼ結合二次ヒト抗Fc(ab)と共に30分間インキュベートした。最後に、100μLの基質溶液を各ウェルに4分間添加し、比色定量反応を25μLのNaOH(3M)で止めた。
【0336】
ACT017のGPVI-Fcへの結合に対する二重変異体の効果-マイクロタイトレーションプレートをGPVI-FcのPBS(20μg/mL、1ウェルあたり100μL)溶液で4℃にて一晩コーティングした。非特異的結合部位を200μLの1%BSAのPBS溶液で30分間飽和させた。次いでこれらのプレートを増加する濃度のACT017調製物(0.1%BSAおよび0.1%Tween20を含む100μLのPBS溶液)と共に30分間インキュベートした。3回の洗浄工程後に、プレートをペルオキシダーゼ結合二次ヒト抗IgGと共に30分間インキュベートした。最後に、100μLの基質溶液を各ウェルに4分間添加し、比色定量反応を25μLのNaOH(3M)で止めた。
【0337】
解析
450nmでの吸光度をFlustar Optimaで測定する。
【0338】
結果
図7に示すように、GPVI-Fcの二重変異体は依然として、用量依存的にコラーゲンに結合することができ、これはコラーゲンに対するGPVIの親和性がこれらの変異体の存在下で主に保存されていることを示す。但し図8に示すように、ACT017は野生型GPVI-Fcに結合することができるが、高濃度であっても二重変異体には結合することはできない。従って、これらの結果により、GPVI配列上のACT017のエピトープの位置が確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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