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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】環状口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20231005BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K47/32
A61K47/36
A61K31/4178
A61K31/4245
A61P9/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019562101
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2018047823
(87)【国際公開番号】W WO2019131753
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2017249497
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】本庄 達哉
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇
(72)【発明者】
【氏名】奥田 豊
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/106936(WO,A1)
【文献】特表2016-514686(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161823(WO,A1)
【文献】特開2017-001999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/20
A61K 47/00
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物及び崩壊剤を含有し、
中央部に穴を有する環状であり、
全重量に対する前記崩壊剤の含有量が2重量%以上50重量%以下であり、
外径と内径との比が10:1~10:4であり、
圧縮成形されている、環状口腔内崩壊錠。
【請求項2】
口腔内崩壊時間が60秒以内である請求項1に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項3】
外径と内径との比が10:1~6:2である請求項1または請求項2に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項4】
内径が0mmより大きく4mm以下である請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項5】
前記崩壊剤は、ポリビニルピロリドン系崩壊剤及び/又はデンプン系崩壊剤である請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項6】
前記ポリビニルピロリドン系崩壊剤はクロスポビドンである請求項5に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項7】
前記デンプン系崩壊剤はコーンスターチ又はデンプングリコール酸ナトリウムである請求項5に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項8】
前記薬物は、オルメサルタンメドキソミル又はアジルサルタンである請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項9】
環状の口腔内崩壊錠の圧縮成形時の打錠圧(kN)に対する崩壊時間(秒)の勾配をaとし、前記環状の口腔内崩壊錠と同じ重量及び同じ外径を有するが、穴を有さない円盤状の口腔内崩壊錠の圧縮成形時の打錠圧(kN)に対する崩壊時間(秒)の勾配をbとすると、前記勾配aと前記勾配bとの比(a/b)が0.90以下であることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項10】
前記勾配aと前記勾配bとの比(a/b)が0.50以下である請求項9に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項11】
錠剤の表面には、少なくとも一本の溝からなる割線が設けられている請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項12】
前記割線は、平面視においてストレート形状またはラウンド形状を有している請求項11に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項13】
前記割線は、断面視において頂角θが90°±20°の範囲内にあるV字型の溝である請求項11または請求項12に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項14】
外径が6mm以上10mm以下である請求項11から請求項13までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【請求項15】
内径が1mm以上4mm以下である請求項11から請求項14までのいずれか1項に記載の環状口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口腔内崩壊錠に関し、特には環状の口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の錠剤やカプセル剤などの経口固形医薬品は、嚥下能力の低い小児や高齢者にとって服用が困難な場合があるため、近年では、そのような小児や高齢者に適した剤形として、口腔内で速やかに溶解もしくは崩壊する口腔内崩壊錠(OD錠)が開発されている。
【0003】
口腔内崩壊錠は、錠剤を口腔内で速やかに崩壊させるために、一般に打錠圧力を抑えて錠剤硬度を低くすることが望まれる。しかしながら、打錠圧力を抑えて錠剤硬度を低くすると、製造工程、包装工程、流通過程において錠剤が割れて歩留りが低下したり、或いは包装容器から取り出す際等に錠剤が割れて商品価値が低下するといった問題があった。
【0004】
また、打錠圧力を高くした場合、口腔内崩壊錠としての速やかな崩壊が損なわれるために、これら相反する性質の両立が課題となっていた。
【0005】
このため、錠剤としての形態を維持することが可能な錠剤硬度を確保しながら、口腔内崩壊錠としての口腔内での崩壊性を達成する試みとして、例えば、国際公開第2015/053227号(特許文献1)に記載されているように、溶出制御膜で被覆された薬物の細粒と、結晶セルロースを用いて造粒した賦形剤と結合剤からなる造粒物とを圧縮成形し、錠剤硬度を改善することにより崩壊性を向上させた口腔内崩壊錠を得る方法や、国際公開第2012/029838号(特許文献2)に記載されているように、錠剤の崩壊速度を有意に増大させるメタクリル酸コポリマー等の結合剤を添加して造粒し、圧縮成形し、錠剤硬度を改善することにより崩壊性を向上させた口腔内崩壊錠を得る方法などが開発されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載されているような口腔内崩壊錠の場合は、薬物を溶出制御膜で被覆した細粒を準備したり、或いは特定の結合剤やそれに見合う量の崩壊剤を配合しなければならず、選択すべき添加剤の種類やその配合比率、製造工程などが複雑となり、得られる錠剤が極めて高価になるという問題があった。また、組み合わせる薬物の種類によっては口腔内で速やかに崩壊させることができず、その結果、口腔内崩壊錠自体を製造することができなくなるという本質的な問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/053227号
【文献】国際公開第2012/029838号
【文献】特表2009-542646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、種々の薬物と組み合せることができ、そして製造工程や流通過程等において錠剤としての形態を維持することが可能な強度などを有しているにも拘らず、口腔内での優れた崩壊性を示すことができる口腔内崩壊錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、組み合せることが可能な薬剤の種類を極力制限しないようにするため、錠剤へ特定の添加剤等を加えるのではなく、錠剤の形状や製造条件などを工夫することにより、錠剤の形態を保持することが可能な同じ打錠圧において、錠剤の崩壊時間を短縮することについて鋭意検討を重ねた。
【0010】
その結果、中央に穴を設けた環状の錠剤とした場合、通常は同じ打錠圧であれば、同じ外径を有する円盤状の錠剤に比べて受圧面積の減少により単位面積当たりの打錠圧が増大することから、錠剤の密度が高くなり崩壊時間も長くなるものと考えられていたが、驚くことに環状の錠剤の場合は、錠剤としての形態を維持することが可能な打錠圧によって圧縮成形すれば、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状の錠剤よりも優れた崩壊性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
さらに本発明によれば、環状の錠剤とすることで、打錠圧力を高くしても円盤状の錠剤より崩壊遅延が抑制できることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明によれば、薬物及び崩壊剤を含有し、中央部に穴を有する環状であり、そして全重量に対する前記崩壊剤の含有量が2重量%以上50重量%以下である環状口腔内崩壊錠が提供される。
【0013】
ここで、環状の口腔内崩壊錠について圧縮成形時の打錠圧(kN)と崩壊時間(秒)との関係について単回帰分析を行い、得られた打錠圧(kN)に対する崩壊時間(秒)の勾配をaとし、そして環状の口腔内崩壊錠と同じ重量及び同じ外径を有するが、穴を有さない円盤状の口腔内崩壊錠についても上述と同様の単回帰分析を行い、得られた打錠圧に対する崩壊時間の勾配をbとした場合、勾配aと勾配bとの比(a/b)は好ましくは0.90以下であり、より好ましくは0.50以下である。
【0014】
なお、上述の勾配aと勾配bとの比(a/b)は、それが1よりも小さくなると、環状口腔内崩壊錠の単位打錠圧当たりの崩壊時間が円盤状口腔内崩壊錠の該崩壊時間よりも短くなることを意味し、さらに、同じ打錠圧における環状口腔内崩壊錠の絶対的な崩壊時間も円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間より短くなることが多いので、環状口腔内崩壊錠の崩壊性が円盤状口腔内崩壊錠よりも優れていることを示す有用な指標となる。
【0015】
特に環状口腔内崩壊錠の勾配aと円盤状口腔内崩壊錠の勾配bとの比(a/b)が0.50以下となるようにするためには、環状口腔内崩壊錠の全重量に対する崩壊剤の含有量を好ましくは5重量%以上50重量%以下、より好ましくは5重量%以上30重量%以下とすることが有効である。
【0016】
また、本願明細書において「打錠圧(kN)」とは、比較すべき環状の口腔内崩壊錠と円盤状の口腔内崩壊錠の圧縮成形方法が互いに同じであれば圧縮成形方法に制限はなく、基本的に錠剤を圧縮成形する際の一般的な打錠圧を意味する。このため、本発明における「打錠圧(kN)」は、例えば直接粉体を打錠する際の打錠圧であっても、粉体を造粒した後の造粒物を打錠する際の打錠圧であってもよく、例えば乾式による圧縮成形時の打錠圧であっても、湿式による圧縮成形時の打錠圧であってもよい。
【0017】
また、本願明細書において「崩壊時間(秒)」とは、第16改正日本薬局方に記載されている崩壊試験法に従って試験液として水を用いた場合の崩壊時間を意味している。
【0018】
このように、本発明の環状口腔内崩壊錠は、錠剤としての形態を維持することが可能な打錠圧によって圧縮成形されているにも拘らず、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状の錠剤よりも優れた口腔内での崩壊性を示す。なお、本発明において錠剤としての形態を維持するのに適した打錠圧としては4kN以上であれば足りるが、成形された錠剤の硬度などを考慮すると、4~16kNの打錠圧であることがより好ましい。また、そのような打錠圧で圧縮整形された本発明の環状口腔内崩壊錠は、崩壊時間を好ましくは60秒以内に抑えることができ、より好ましくは30秒以内に抑えることもできる。
【0019】
さらに、上述のような優れた崩壊性を発現させるためには、本発明の環状口腔内崩壊錠は、外径と内径との比を10:1~6:2とすることが好ましく、10:1~10:4とすることがより好ましい。また、環状口腔内崩壊錠の内径は0mmより大きく4mm以下とすることが好ましい。
【0020】
本発明の環状口腔内崩壊錠は、例えば内径を2mm一定とした場合、外径が6~12mmの範囲内であれば、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状の錠剤よりも優れた崩壊性を示し、さらに打錠圧力を高くしても該円盤状の錠剤よりも崩壊遅延を抑制することもできる。
【0021】
特に外径を10mm、内径を2mmとした環状口腔内崩壊錠の場合、その単位打錠圧当たりの崩壊時間(勾配a)を、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状の錠剤の単位打錠圧当たりの崩壊時間(勾配b)と比較すると、その勾配比(a/b)は最も小さな値となることから、単位打錠圧当たりの崩壊時間においても円盤状口腔内崩壊錠よりも短くなり、優れた崩壊性を示す。
【0022】
また、本発明の環状口腔内崩壊錠は、例えば外径を10mm一定とした場合、内径が1~4mmの範囲内であれば、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状の錠剤よりも優れた崩壊性を示し、さらに驚くべきことに、内径が小さくなるほど崩壊時間が短くなる傾向を示す。
【0023】
本発明の環状口腔内崩壊錠は、錠剤の表面に溝からなる割線を設けることにより、錠剤の表面に同様の溝からなる割線を設けた円盤状口腔内崩壊錠よりも良好な分割性を示すことができる。また、割線は平面視においてストレート形状またはラウンド形状を有していることが好ましく、断面視において頂角θが90°±20°の範囲内にあるV字型の溝であることが好ましい。一般に錠剤の片面に1本の割線を設けることが多いが、片面に2本の十字割線としてもよく、または錠剤の両面に割線を設けても良い。
【0024】
このように、本発明の環状口腔内崩壊錠は、錠剤としての形態を維持することが可能な打錠圧によって圧縮成形されているにも拘らず、割線を有している場合は、同じ条件で圧縮成形された同じ重量の同じ外径の割線を有する円盤状口腔内崩壊錠剤よりも優れた分割性を示すことができる。なお、本発明において錠剤としての形態を維持するのに適しており、そして優れた分割性を示す打錠圧としては4kN以上であれば足りるが、成形された錠剤の硬度などを考慮すると4~16kNの打錠圧であることが好ましく、特に優れた分割性を得るためには6~14kNの打錠圧であることがより好ましい。
【0025】
なお、本願明細書における「分割性」は、N数/10錠の口腔内崩壊錠について、第17版日本薬局方に記載されている「6.02 製剤均一性試験法」の中の「2.質量偏差試験」に従って算出された標準偏差(%)および判定値(%)により評価した。標準偏差(%)は小さいほど分割後の各錠剤片の質量のバラツキが小さく、判定値(%)は小さいほど分割し易く、分割性に優れていることを意味している。
【0026】
また、本発明の割線を有する環状口腔内崩壊錠は、内径が一定(例えば2mm)であれば、(例えば6~10mmの範囲内の)外径に拠らず、いずれの外径においても、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示し、さらに打錠圧を高くしても該円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことができる。
【0027】
さらに、本発明の割線を有する環状口腔内崩壊錠は、(例えば1~4mmの範囲内の)内径に拠らず、いずれの打錠圧においても、同じ重量の同じ外径の割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことができる。
【0028】
また、本発明の割線を有する環状口腔内崩壊錠は、(例えば6~14kNの範囲内の)打錠圧に拠らず、いずれの打錠圧においても、同じ重量の同じ外径の割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことができる。
【0029】
なお、本願明細書では、「~」を用いて示された数値(比率)範囲は、「~」の前後に記載される数値(比率)をそれぞれ最小値(比率)および最大値(比率)として含む範囲を示している。
【0030】
本発明の環状口腔内崩壊錠の崩壊特性を向上させるための有用な崩壊剤としては、ポリビニルピロリドン系崩壊剤又はデンプン系崩壊剤を挙げることができ、またそれらの両崩壊剤を併用して使用してもよい。また、崩壊剤がポリビニルピロリドン系崩壊剤である場合は、クロスポビドンであることが好ましく、崩壊剤がデンプン系崩壊剤である場合は、コーンスターチ又はデンプングリコール酸ナトリウムであることが好ましい。
【0031】
本発明の環状口腔内崩壊錠は、特定の添加剤を加えるのではなく、錠剤を環状とすることにより、同じ打錠圧における錠剤の形態保持性を維持しながら崩壊性を向上させたものである。このため、本発明の環状口腔内崩壊錠では、特に組み合せ可能な薬剤の種類が制限されるものではなく、例えばオルメサルタンメドキソミル又はアジルサルタンなどの薬物を好適に使用することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、薬物及び崩壊剤を含有し、中央部に穴を有する環状であり、そして全重量に対する前記崩壊剤の含有量が2重量%以上50重量%以下とすることにより、種々の薬物と組み合せることができ、そして製造工程や流通過程等において錠剤としての形態を維持することが可能な強度などを有しているにも拘らず、口腔内での優れた崩壊性を示すことができる環状の口腔内崩壊錠及びその製造方法が提供される。
【0033】
また、本発明により提供される環状の口腔内崩壊錠は、崩壊時間を好ましくは60秒以内に抑えることができ、より好ましくは30秒以内に抑えることができる。
【0034】
さらに、本発明の環状の口腔内崩壊錠は、その圧縮成形時の打錠圧(kN)と崩壊時間(秒)との関係について単回帰分析を行い、得られた打錠圧(kN)に対する崩壊時間(秒)の勾配をaとし、そして該環状の口腔内崩壊錠と同じ重量及び同じ外径を有するが、穴を有さない円盤状の口腔内崩壊錠についても上述と同様の単回帰分析を行い、得られた打錠圧に対する崩壊時間の勾配をbとすると、勾配aと勾配bとの比(a/b)が好ましくは0.90以下となり、より好ましくは0.50以下となるので、打錠圧の増加による崩壊遅延が抑制され、その結果、高い打錠圧の採用により錠剤の割れ・欠けを防止することと、優れた崩壊性を両立させることができる。
【0035】
本発明の環状口腔内崩壊錠は、錠剤の表面に溝からなる割線を設けることにより、錠剤の表面に同様の溝からなる割線を設けた円盤状口腔内崩壊錠よりも良好な分割性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実施例14の外径10mm/内径1mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図2】実施例4の外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図3】実施例15の外径10mm/内径3mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図4】実施例16の外径10mm/内径4mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図5】比較例4の外径10mm/錠剤重量360mgの円盤状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図6】薬物にオルメサルタンメドキソミルを配合し、且つクロスポビドンの添加量が30重量%である実施例5及び比較例5の崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図7】薬物にアジルサルタンを配合し、且つクロスポビドンの添加量が30重量%である実施例9及び比較例9の崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図8】薬物を配合せず、クロスポビドンを30重量%添加した試験例10及び比較例10の崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図9】クロスポビドンの配合量が0重量%である試験例0の環状口腔内崩壊錠と比較例0円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図10】クロスポビドンの添加量が2重量%である実施例1の環状口腔内崩壊錠と比較例1の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図11】クロスポビドンの配合量が3重量%である実施例2の環状口腔内崩壊錠と比較例2の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図12】クロスポビドンの添加量が5重量%である実施例3の環状口腔内崩壊錠と比較例3の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図13】クロスポビドンの配合量が10重量%であって、外径10mm/内径2mmの実施例4の環状口腔内崩壊錠と外径10mmの比較例4の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図14】クロスポビドンの添加量が50重量%である実施例6の環状口腔内崩壊錠と比較例6の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図15】崩壊剤としてコーンスターチを50重量%配合した実施例7の環状口腔内崩壊錠と比較例7の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図16】崩壊剤としてプリモジェルを50重量%配合した実施例8の環状口腔内崩壊錠と比較例8の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図17】実施例11の外径6mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図18】実施例12の外径8mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図19】実施例13の外径12mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図20】外径6mm/内径2mmの実施例11の環状口腔内崩壊錠と外径6mmの比較例11の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図21】外径8mm/内径2mmの実施例12の環状口腔内崩壊錠と外径8mmの比較例12の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図22】外径12mm/内径2mmの実施例13の環状口腔内崩壊錠と外径12mmの比較例13の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図23】外径10mm/穴の内径を0(無し),1,2,3,4mmとした口腔内崩壊錠の崩壊時間と打錠圧の関係を示したグラフである。
図24】実施例17R(ラウンド割線)の外径6mm/内径2mm/錠剤重量90mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図25】実施例18R(ラウンド割線)の外径8mm/内径2mm/錠剤重量180mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図26】実施例19R,22R~26R(ラウンド割線)の外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図27】実施例19S,22S(ストレート割線)の外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図28】比較例16R,20R~24R(ラウンド割線)の外径10mm/錠剤重量360mgの円盤状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図29】比較例14S(ストレート割線)の外径6mm/錠剤重量90mgの円盤状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図30】比較例15S(ストレート割線)の外径8mm/錠剤重量180mgの円盤状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図31】比較例16S,20S(ストレート割線)の外径10mm/錠剤重量360mgの円盤状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図32】実施例20R(ラウンド割線)の外径10mm/内径1mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図33】実施例21R(ラウンド割線)の外径10mm/内径4mm/錠剤重量360mgの環状口腔内崩壊錠の正面図および側面図である。
図34】外径10mm/内径2mmの実施例19R,22R(ラウンド割線)と外径10mmの比較例16R,20R(ラウンド割線)、および実施例19S,22S(ストレート割線)の環状口腔内崩壊錠と外径10mmの比較例16S,20S(ストレート割線)の円盤状口腔内崩壊錠の分割性を比較したグラフである。
図35】外径を6,8,10mm/内径2mmとした実施例17R,18R,19R(ラウンド割線)の環状口腔内崩壊錠と、外径を6,8,10mmの比較例14S,15S,16S(ストレート割線)の円盤状口腔内崩壊錠の分割性を比較したグラフである。
図36】外径10mm/穴の内径を1,2,4mmとした実施例20R,19R,21R(ラウンド割線)の環状口腔内崩壊錠と、外径10mm/穴の内径を0(無し)とした比較例16S(ストレート割線)の円盤状口腔内崩壊錠の分割性を比較したグラフである。
図37】外径10mm/内径2mmの実施例22R~26R(ラウンド割線)の環状口腔内崩壊錠と外径10mmの比較例20R~24R(ラウンド割線)の円盤状口腔内崩壊錠の分割性と打錠圧の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る環状口腔内崩壊錠及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0038】
本発明の環状口腔内崩壊錠は、薬物、崩壊剤ならびに賦形剤、結合剤、流動化剤、甘味剤、滑沢剤等の添加物を含んでもよい。
【0039】
本発明において、薬物としては、環状口腔内崩壊錠中の薬物として経口投与が可能な薬物であれば制限されるものではないが、例えば、解熱鎮痛消炎薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠鎮静薬、鎮痙薬、中枢神経作用薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、胃腸薬、制酸剤、抗潰瘍剤、鎮咳去痰剤、鎮吐剤、呼吸促進剤、気管支拡張剤、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿薬、血圧降下剤、血管収縮薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用剤、利胆剤、抗生物質、化学療法剤、糖尿病用剤、骨粗しょう用剤、抗リウマチ薬、鎮けい剤、ホルモン剤、アルカロイド系麻薬、サルファ剤、痛風治療剤、血液凝固阻止剤、抗悪性腫瘍剤、滋養強壮保健薬などから選ばれた1種もしくは2種以上の成分が用いられる。
【0040】
より具体的には、オルメサルタン、アジルサルタン、アムロジピン等およびそれらの薬学的に許容される塩、またはそのプロドラッグ等が、本発明の環状口腔内崩壊錠に配合可能な薬物として用いることができる。特にオルメサルタンメドキソミルは、吸収されると速やかに加水分解されて活性代謝物のオルメサルタンが遊離し、薬効を発揮するプロドラックであるので、本願明細書において単にオルメサルタンメドキソミルという時は「オルメサルタン」を含んでいることを意味している。
【0041】
本発明における薬物が薬学的に許容される塩である場合、薬学的に許容される塩は、例えば薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、薬学的に許容される金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩が挙げられ、薬学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩が挙げられ、薬学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩が挙げられ、薬学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩が挙げられる。
【0042】
本発明の環状口腔内崩壊錠に添加できる崩壊剤としては、例えばデンプン(例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン等)、デンプン誘導体(カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ等)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ベントナイト等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。なお、前記の崩壊剤は、賦形剤及び/又は結合剤等の他の用途を兼ねていてもよい。
【0043】
より具体的には、例えば糖(例えば白糖、マルトース等)、糖アルコール(例えばソルビトール等)、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸等)等が、本発明の環状口腔内崩壊錠に添加可能な崩壊剤として用いることができ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0044】
本発明の環状口腔内崩壊錠に添加できる結合剤としては、例えばセルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルメロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、セルロース(例えば結晶セルロース等)、デンプン(例えばアルファ化デンプン等)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0045】
本発明の環状口腔内崩壊錠に添加できる流動化剤としては、例えば含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、重質無水ケイ酸、水酸化アルミナマグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0046】
本発明の環状口腔内崩壊錠に添加できる甘味剤としては、例えばアスパルテーム、エリスリトール、果糖、キシリトール、黒砂糖、サッカリン、サッカリンナトリウム水和物、スクラロース、精製白糖、精製白糖球状顆粒、D-ソルビトール、デキストレイト、白糖、ブドウ糖、マルチトール、マルトース水和物、D-マンニトール及びタウマチン等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0047】
本発明の環状口腔内崩壊錠に添加できる滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0048】
また、本発明の環状口腔内崩壊錠は、色素、遮光剤、香料を含有していてもよく、より具体的には、例えば酸化チタン、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン、各種香料等を含有することができる。
【0049】
本発明における環状口腔内崩壊錠の形状としては、中央部に穴を有していれば、丸錠、三角錠、砲丸錠等であってもよく、また錠剤の大きさにも特に制限はない。ただし、錠剤としての形態を維持する為に必要な強度を確保しながら、口腔内での崩壊性を向上させる為には、環状口腔内崩壊錠の外径と内径との比を10:1~6:2とすることが好ましく、10:1~10:4とすることがより好ましい。また、環状口腔内崩壊錠の内径は0mmより大きく4mm以下とすることが好ましい。
【0050】
具体的には、中央部に穴を有する環状口腔内崩壊錠として、図4に示される外径10mm/内径4mm/錠剤重量360mgの環状の口腔内崩壊錠であることが好ましく、図3に示される外径10mm/内径3mm/錠剤重量360mgの環状の口腔内崩壊錠であることがより好ましく、図2に示される外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgの環状の口腔内崩壊錠であることがさらに好ましく、図1に示される外径10mm/内径1mm/錠剤重量360mgの環状の口腔内崩壊錠であることが最も好ましい。
【0051】
また、本発明の環状口腔内崩壊錠は、例えば内径を2mm一定とした場合、外径が6~12mmの範囲内であれば、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状の錠剤よりも優れた崩壊性を示し、さらに打錠圧を高くしても該円盤状の錠剤よりも崩壊遅延を抑制することもできる。
【0052】
なお、本実施形態では、図5に示されるような中央部に穴を有さない外径10mm/錠剤重量360mgの比較例の円盤状口腔内崩壊錠を作製し、図1~4に示される本発明の実施例の環状口腔内崩壊錠と比較することにより、各打錠圧における本発明の環状口腔内崩壊錠の崩壊性の向上効果などについて評価を行った。
【0053】
本発明の環状口腔内崩壊錠の製造方法としては、薬物、崩壊剤ならびに賦形剤を含有する環状口腔内崩壊錠の製造方法であって、例えば、これら添加物を混合した混合粉末、ローラー圧縮等によりスラッグ化および粉砕する乾式造粒により得られた造粒物、あるいは該賦形剤に結合剤液を添加して湿式造粒して得られた造粒物を、錠剤の中央部に穴を開けるための突起を有する杵を用いて打錠する工程を含むことを特徴とする該環状口腔内崩壊錠の製造方法が挙げられる。
【0054】
乾式造粒するには、例えばローラー圧縮法(乾式造粒装置等による)、スラッグ法(ロータリー式打錠機等)、乾式条件により粒子を複合・表面改質球形化する乾式複合化法(乾式粒子複合化装置等)等が挙げられる。
【0055】
賦形剤に、結合剤液を添加して湿式造粒するには、例えば、押し出し造粒法(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)、転動造粒法(回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置等による)、流動層造粒法(流動層造粒乾燥装置、転動流動層造粒装置等による)、攪拌造粒法(攪拌造粒装置等による)等が挙げられ、好ましくは流動層造粒法、攪拌造粒法等が挙げられ、より好ましくは流動層造粒法が挙げられるが、いずれの場合も、結合剤液を添加して造粒し、得られた造粒物を乾燥する方法であることが好ましい。また、結合剤液の添加方法は、スプレー添加が好ましい。本発明において、流動層造粒法とは、造粒機下方部から熱風を送って粉粒体を流動させながら、結合剤液を噴霧し造粒する方法である。また、例えば上部から結合液を噴霧するスプレー対向型や下部から結合液を噴霧する平行型(ワースター型)を包含し、造粒機コンテナー下部が回転する転動型の流動層造粒法も包含する。
【0056】
また、賦形剤に、結合剤液を添加して湿式造粒する際に、該賦形剤とともに、薬物及び/又は崩壊剤、所望により、他の有効成分及び/又は他の添加剤を混合し、該結合剤液を添加する湿式造粒を行っても構わない。
【0057】
本発明の環状口腔内崩壊錠は、得られた混合粉末や造粒物を、錠剤の中央部に穴を開けるための突起を有する杵を用いて打錠機で打錠することにより製造される。造粒物に薬物及び/又は崩壊剤を配合しない場合、該薬物及び/又は崩壊剤は、得られた造粒物と別工程において混合し、上記の打錠機で打錠することにより環状口腔内崩壊錠を製造することもできる。いずれの場合においても、所望により、賦形剤及び/又結合剤などの他の添加剤をさらに混合し、上述の打錠機で打錠することにより環状口腔内崩壊錠を製造することもできる。
【0058】
本発明に用いることができる打錠機は、錠剤の中央部に穴を開けるための突起を有する杵を用いていればよく、例えばロータリー打錠機、油圧プレス機等の打錠機を用いることができる。また、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸またはその金属塩、ショ糖脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステル、硬化油脂等の滑沢剤を、杵臼にあらかじめ極微量塗布された杵臼を有する打錠機を用いる、いわゆる外部滑沢打錠方法を用いて環状口腔内崩壊錠を製造してもよい。
【0059】
本発明の打錠工程における打錠圧は、製造工程や流通過程等において錠剤としての形態を維持することが可能な強度を付与することができる圧力であればよく、例えば5~20kN、好ましくは5~15kNの圧力で打錠される。
【0060】
次に、実施例および試験例により、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例および試験例に限定されるものではない。
【0061】
1.口腔内崩壊錠の形状を環状(穴有り)とすることの効果
(1)口腔内崩壊錠の作製
薬物としてオルメサルタンメドキソミル又はアジルサルタンを用いた実施例5,9の環状口腔内崩壊錠と、薬物を配合しなかった試験例10の環状口腔内崩壊錠、および同じく薬物としてオルメサルタンメドキソミル又はアジルサルタンを用いた比較例5,9の円盤状口腔内崩壊錠と、薬物を配合しなかった比較例10の円盤状口腔内崩壊錠を以下のようにして製造した。各成分の分量は、表1~3に示す通りである。また、実施例5,9及び試験例10の環状口腔内崩壊錠の主要形態は外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgであり(図2参照)、また、比較例5,9,10の円盤状口腔内崩壊錠の主要形態は外径10mm/錠剤重量360mgである(図5参照)。
【0062】
薬物としてオルメサルタンメドキソミルを用いた実施例5の環状口腔内崩壊錠は、オルメサルタンメドキソミル、乳糖水和物を流動層造粒装置に投入し、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液を噴霧して造粒し、乾燥、整粒した後、マンニトール、クロスポビドンを添加、混合し、さらにステアリン酸マグネシウムを添加、混合し、外径10mm/内径2mmの杵を用いて油圧プレス機にて打錠することにより製作した。また、比較例5の円盤状口腔内崩壊錠は、錠剤の中央部に穴を開けるための突起を有していない外径10mmの杵を用いたこと以外は、実施例5の環状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により作製した。
【0063】
薬物としてオルメサルタンメドキソミルを用いた実施例5の環状口腔内崩壊錠および比較例5の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表1に示す。
【表1】
【0064】
薬物としてアジルサルタンを用いた実施例9の環状口腔内崩壊錠は、アジルサルタン、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールを攪拌造粒装置に投入し、黄色三二酸化鉄の水分散液を噴霧して造粒し、流動層造粒装置にて乾燥、整粒した後、マンニトール、クロスポビドンを添加、混合し、さらにステアリン酸マグネシウムを添加、混合し、外径10mm/内径2mmの杵を用いて油圧プレス機にて打錠することにより製作した。また、比較例9の円盤状口腔内崩壊錠は、錠剤の中央部に穴を開けるための突起を有していない外径10mmの杵を用いたこと以外は、実施例9の環状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により作製した。
【0065】
薬物としてアジルサルタンを用いた実施例9の環状口腔内崩壊錠および比較例9の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表2に示す。
【表2】
【0066】
薬物を配合しなかった試験例10の環状口腔内崩壊錠は、マンニトール、クロスポビドンを添加,混合し、さらにステアリン酸マグネシウムを添加、混合し、外径10mm/内径2mmの杵を用いて油圧プレス機にて打錠することにより製作した。また、比較例10の円盤状口腔内崩壊錠は、錠剤の中央部に穴を開けるための突起を有していない外径10mmの杵を用いたこと以外は、試験例10の環状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により作製した。
【0067】
薬物を配合しなかった試験例10の環状口腔内崩壊錠および比較例10の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表3に示す。
【表3】
【0068】
(2)口腔内崩壊錠の崩壊性
口腔内崩壊錠の崩壊性は、第16改正日本薬局方に記載されている崩壊試験法に従い、試験液として水を用いた場合の錠剤の崩壊時間(秒)を測定することにより評価した。
【0069】
また、環状口腔内崩壊錠について、圧縮成形時の打錠圧(kN)と上記崩壊時間(秒)との関係について単回帰分析を行い、得られた打錠圧(kN)に対する崩壊時間(秒)の回帰式の勾配をaとし、そして環状口腔内崩壊錠と同じ重量及び同じ外径を有するが、穴を有さない円盤状口腔内崩壊錠についても上述と同様の単回帰分析を行い、得られた打錠圧(kN)に対する崩壊時間(秒)の回帰式の勾配をbとした。そして勾配bに対する勾配aの比(a/b)を算出することにより、環状口腔内崩壊錠の打錠圧の増加による崩壊遅延の抑制効果を評価した。すなわち、打錠圧を大きくすると錠剤の強度を保つことができ、割れ等を低減できるが、その反面崩壊時間は長くなる(崩壊遅延)。ここで勾配bに対する勾配aの比(a/b)が1よりも小さくなることは、打錠圧を大きくしても、環状口腔内崩壊錠は円盤状口腔内崩壊錠と比べて崩壊遅延が起りにくいことを示す。さらに、同じ打錠圧における環状口腔内崩壊錠の絶対的な崩壊時間も円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間より短くなることが多いので、総じて環状口腔内崩壊錠の崩壊性が円盤状口腔内崩壊錠よりも優れていることになる。
【0070】
以下、環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の崩壊性については、その一つは、第16改正日本薬局方の崩壊試験法に従った崩壊時間を比較することにより評価を行い、他の一つは、環状口腔内崩壊錠と円盤状口腔内崩壊錠について、打錠圧と崩壊時間との関係から求めた単位打錠圧当たりの崩壊時間の比(a/b)を求めることにより評価を行った。
【0071】
実施例5,9と試験例10の環状口腔内崩壊錠、および比較例5,9,10の円盤状口腔内崩壊錠について行った崩壊性の評価結果を表4および図6~8に示す。
【表4】
【0072】
表4および図6~8より、基本的に錠剤の形状が環状であるか又は円盤状であるかの違いのみである実施例5と比較例5、実施例9と比較例9および試験例10と比較例10とを比較すると、実施例5,9および試験例10の環状口腔内崩壊錠は、いずれも同じ打錠圧における比較例5,9および10の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間よりも短くなることが判った。すなわち、環状口腔内崩壊錠は、薬物の種類やその配合の有無に関わらず、同じ打錠圧によって円盤状口腔内崩壊錠と同じ錠剤としての形態を維持することが可能な強度などを有しているにも拘らず、円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた崩壊性を示すことが判った。なお、錠剤としての形態を維持しながら優れた崩壊性を示すことができる打錠圧としては5kN以上であれば足りるが、実際に成形された錠剤の硬度などを考慮すると5~14kNであることがより好ましい。
【0073】
また、上記の打錠圧と崩壊時間との関係について、単回帰分析に得られた環状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配aを、円盤状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配bと比較(a/b)すると、実施例5,9および試験例10の環状口腔内崩壊錠は、勾配aと勾配bの比較(a/b)が1.0より小さくなることから、単位打錠圧当たりの崩壊時間が短く、円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた崩壊性を有していることが判った(図6~8)。
【0074】
2.崩壊剤配合の影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
崩壊剤の添加の有無およびその配合量が、同じ打錠圧の環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、薬物としてはオルメサルタンメドキソミルを用い、崩壊剤としてクロスポビドンの配合量を錠剤重量中の0,2,3,5,10,50重量%としたこと以外は、上述した実施例5の環状口腔内崩壊錠または比較例5の円盤状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により、外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgの試験例0および実施例1~4,6の環状口腔内崩壊錠(図2参照)と、外径10mm/錠剤重量360mgの比較例0~4,6の円盤状口腔内崩壊錠を作製した。
【0075】
クロスポビドンの配合量を錠剤重量中の0,2,3,5,10,30,50重量%とした試験例0および実施例1~6の環状口腔内崩壊錠と、比較例0~6の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表5に示す。
【表5】
【0076】
(2)口腔内崩壊錠の崩壊性
試験例0および実施例1~6の環状口腔内崩壊錠と、比較例0~6の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊性については、上記「1.口腔内崩壊錠を環状(穴有り)とすることの効果」の中で述べたとおり、その一つは、第16改正日本薬局方の崩壊試験法に従った崩壊時間を比較することにより評価を行い、他の一つは、環状口腔内崩壊錠と円盤状口腔内崩壊錠について、打錠圧と崩壊時間との関係から求めた単位打錠圧当たりの崩壊時間の比(a/b)を求めることにより評価を行った。
【0077】
試験例0および実施例1~6の環状口腔内崩壊錠と、比較例0~6の円盤状口腔内崩壊錠について行った崩壊性の評価結果を表6および図9~13,6,14に示す。
【表6】
【0078】
表6及び図9に示される試験例0の環状口腔内崩壊錠および比較例0の円盤状口腔内崩壊錠の試験結果より、崩壊剤としてクロスポビドンの配合量を錠剤重量中の0重量%とすると、同じ打錠圧における環状口腔内崩壊錠の崩壊時間は、円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間と殆ど差を生じないことが判った。また、打錠圧と崩壊時間との関係においても、単回帰分析で得られた試験例0の環状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配aと比較例0の円盤状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配bとを比較(a/b)すると0.98であることから、両者の単位打錠圧当たりの崩壊時間においても殆ど差を生じないことが判った。すなわち、崩壊剤としてクロスポビドンの配合量を錠剤重量中の0重量%とすると、同じ打錠圧の円盤状の口腔内崩壊錠に対し、穴開きの環状とするによる崩壊時間の短縮効果が殆ど得られないことが判った。
【0079】
一方、表6及び図10~13,6,14に示される実施例1~6の環状口腔内崩壊錠および比較例1~6の円盤状口腔内崩壊錠の試験結果より、崩壊剤としてクロスポビドンの配合量を錠剤重量中の2重量%以上50重量%以下とすると、同じ打錠圧における環状口腔内崩壊錠の崩壊時間は、殆どの場合、円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間よりも短くなることが判った。また、打錠圧と崩壊時間との関係について、単回帰分析に得られた実施例1~6の環状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配aと比較例1~6の円盤状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配bとを比較(a/b)すると0.90以下となることから、環状口腔内崩壊錠は、単位打錠圧当たりの崩壊時間においても円盤状口腔内崩壊錠よりも短くなり、優れた崩壊性を有していることが判った。なお、錠剤としての形態を維持しながら優れた崩壊性を示すことができる打錠圧としては5kN以上であれば足りるが、実際に成形された錠剤の硬度などを考慮すると5~14kNであることがより好ましい。
【0080】
また、特に実施例~5の環状口腔内崩壊錠の試験結果より、崩壊剤としてクロスポビドンの配合量を錠剤重量中の5重量%以上30重量%以下とすると、打錠圧と崩壊時間との関係における環状口腔内崩壊錠と円盤状口腔内崩壊錠の勾配の比(a/b)が0.50以下となり、環状口腔内崩壊錠は、単位打錠圧当たりの崩壊時間において極めて優れた崩壊性を有していることが判った。
【0081】
また、本発明の環状口腔内崩壊錠は、クロスポビドンの配合量を錠剤重量中の2重量%以上30重量以下とすることにより崩壊時間を60秒以内に抑えることができ(実施例1~5)、より好ましくはクロスポビドンの配合量を錠剤重量中の3重量%以上10重量%以下とすることにより、崩壊時間を略30秒以内に抑えることができることが判った(実施例2~4)。
【0082】
3.崩壊剤の種類の影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
配合する崩壊剤の種類が、同じ打錠圧の環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、崩壊剤としてコーンスターチ又はプリモジェルを用いたこと以外は、上述した実施例6の環状口腔内崩壊錠または比較例6の円盤状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により、外径10mm/内径2mm/錠剤重量360mgの実施例7,8の環状口腔内崩壊錠(図2参照)と、外径10mm/錠剤重量360mgの比較例7,8の円盤状口腔内崩壊錠を作製した。
【0083】
崩壊剤をクロスポビドン、コーンスターチ又はプリモジェルとした実施例6~8の環状口腔内崩壊錠と、比較例6~8の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表7に示す。
【表7】
【0084】
(2)口腔内崩壊錠の崩壊性
実施例6~8の環状口腔内崩壊錠と、比較例6~8の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊性は、上記「1.口腔内崩壊錠を環状(穴有り)とすることの効果」の中で述べたとおり、その一つは、第16改正日本薬局方の崩壊試験法に従った崩壊時間を比較することにより評価を行い、他の一つは、環状口腔内崩壊錠と円盤状口腔内崩壊錠について、打錠圧と崩壊時間との関係から求めた単位打錠圧当たりの崩壊時間の比(a/b)を求めることにより評価を行った。
【0085】
実施例6~8の環状口腔内崩壊錠と、比較例6~8の円盤状口腔内崩壊錠について行った崩壊性の評価結果を表8および図14~16に示す。
【表8】
【0086】
表8及び図14~16の実施例6~8に示される環状口腔内崩壊錠および比較例6~8の円盤状口腔内崩壊錠の試験結果より、崩壊剤としてクロスポビドン等のPVP(ポリビニルピロリドン)系崩壊剤や、コーンスターチ又はプリモジェル等のデンプン系崩壊剤を用いると、同じ打錠圧における環状口腔内崩壊錠の崩壊時間は、殆どの場合、円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間よりも短くなることが判った。また、打錠圧と崩壊時間との関係について、単回帰分析に得られた実施例6~8の環状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配aと比較例6~8の円盤状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配bとを比較(a/b)すると0.90以下となることから、環状口腔内崩壊錠は、単位打錠圧当たりの崩壊時間においても円盤状口腔内崩壊錠よりも短くなり、優れた崩壊性を有していることが判った。なお、錠剤としての形態を維持しながら優れた崩壊性を示すことができる打錠圧としては5kN以上であれば足りるが、実際に成形された錠剤の硬度などを考慮すると5~14kNであることがより好ましい。
【0087】
4.環状口腔内崩壊錠の外径の大きさの影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
環状口腔内崩壊錠の外径の大きさが、同じ打錠圧の同じ内径の穴を有する環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、環状口腔内崩壊錠の外径を6mm、8mm、12mmとしたこと以外は、上述した実施例4の環状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により、外径6mm、8mm、12mm/内径2mm/錠剤重量360mgの実施例11(図17),12(図18),13(図19)の環状口腔内崩壊錠を作製した。また、円盤状口腔内崩壊錠の外径を6mm、8mm、12mmとしたこと以外は、上述した比較例4の円盤状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により、外径6mm、8mm、12mm/錠剤重量360mgの比較例11,12,13の円盤状口腔内崩壊錠を作製した。
【0088】
環状口腔内崩壊錠の外径を6mm、8mm、10mm、12mmとした実施例11,12,4,13の環状口腔内崩壊錠(図17,18,2,19参照)および比較例11,12,4,13の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表9に示す。
【表9】
【0089】
(2)口腔内崩壊錠の崩壊性
実施例11,12,4,13の環状口腔内崩壊錠および比較例11,12,4,13の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊性については、上記「1.口腔内崩壊錠を環状(穴有り)とすることの効果」の中で述べたとおり、その一つは、第16改正日本薬局方の崩壊試験法に従ったそれぞれの崩壊時間を比較することにより評価を行い、他の一つは、環状口腔内崩壊錠と円盤状口腔内崩壊錠について、打錠圧と崩壊時間との関係から求めた単位打錠圧当たりの崩壊時間の比(a/b)を求めることにより評価を行った。
【0090】
なお、上記の崩壊錠の崩壊特性を調べるのに使用した打錠圧は、実施例11と比較例11の崩壊錠が4kN,6kN,9kNであり、実施例12と比較例12の崩壊錠が4kN,7kN,10kN,13kNであり、実施例4と比較例4の崩壊錠が5kN,8kN,11kN,14kNであり、そして実施例13と比較例13の崩壊錠が7kN,10kN,13kN,16kNである。
【0091】
実施例11,12,4,13の環状口腔内崩壊錠と、比較例11,12,4,13の円盤状口腔内崩壊錠について行った崩壊性の評価結果を表10および図20,21,13,22に示す。
【表10】
【0092】
表10及び図20,21,13,22より、環状口腔内崩壊錠の内径を2mm一定とした場合、外径が6~12mmの範囲内であれば、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも崩壊時間が短くなることが判った。また、実施例11,12,4,13の環状口腔内崩壊錠は、打錠圧力を高くしても、比較例11,12,4,13の円盤状口腔内崩壊錠よりも崩壊遅延を抑制することができることも判った。なお、錠剤としての形態を維持しながら優れた崩壊性を示すことができる打錠圧としては4kN以上であれば足りるが、実際に成形された錠剤の硬度などを考慮すると4~16kNであることがより好ましい。
【0093】
さらに、打錠圧と崩壊時間との関係について、単回帰分析に得られた実施例11,12,4,13の環状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配aと比較例11,12,4,13の円盤状口腔内崩壊錠の回帰式の勾配bとを比較(a/b)すると0.80以下となることから、環状口腔内崩壊錠は、単位打錠圧当たりの崩壊時間においても円盤状口腔内崩壊錠よりも短くなり、特に内径2mm/外径10mmの環状口腔内崩壊錠の場合は該勾配の比(a/b)が0.17となり、極めて優れた崩壊性を有していることが判った。
【0094】
5.環状口腔内崩壊錠の内径の大きさの影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
環状口腔内崩壊錠の穴の内径の大きさが、同じ打錠圧の環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の崩壊時間にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、環状口腔内崩壊錠の穴の内径を1mm、3mm、4mmとしたこと以外は、上述した実施例4の環状口腔内崩壊錠と同じ製造条件、製造方法により、外径10mm/内径1mm(図1)、3mm(図3)、4mm(図4)/錠剤重量360mgの実施例14,15,16の環状口腔内崩壊錠を作製した。
【0095】
環状口腔内崩壊錠の穴の内径を1mm、2mm、3mm、4mmとした実施例14,4,15,16(図1~4参照)の環状口腔内崩壊錠および比較例4(図5参照)の円盤状口腔内崩壊錠の成分を表11に示す。
【表11】
【0096】
(2)口腔内崩壊錠の崩壊性
実施例14,4,15,16の環状口腔内崩壊錠および比較例4の円盤状口腔内崩壊錠の崩壊性については、上記「1.口腔内崩壊錠を環状(穴有り)とすることの効果」の中で述べたとおり、その一つは、第16改正日本薬局方の崩壊試験法に従ったそれぞれの崩壊時間を比較することにより評価を行い、他の一つは、圧縮成形時の打錠圧と崩壊時間との関係から求めた単位打錠圧当たりの崩壊時間である、実施例14,4,15,16の環状口腔内崩壊錠の勾配aおよび比較例4の円盤状口腔内崩壊錠の勾配bをそれぞれに比較することにより評価を行った。
【0097】
実施例14,4,15,16の環状口腔内崩壊錠および比較例4の円盤状口腔内崩壊錠について行った崩壊性の評価結果を表12および図23に示す。
【表12】
【0098】
表12及び図23より、環状口腔内崩壊錠の穴の内径が小さいほど、同じ打錠圧における環状口腔内崩壊錠の崩壊時間が短くなる傾向にあることが判った。また、打錠圧と崩壊時間との関係から求めた単位打錠圧当たりの崩壊時間においても、実施例14,4,15,16の環状口腔内崩壊錠の勾配aは、穴の内径が小さくなるほど小さくなるが、穴を有さない比較例4の円盤状口腔内崩壊錠の場合は、その勾配bは、穴を有する実施例14,4,15,16の環状口腔内崩壊錠の勾配aよりも小さくならず、環状口腔内崩壊錠のように崩壊時間を短縮化できないことが判った。なお、錠剤としての形態を維持しながら優れた崩壊性を示すことができる打錠圧としては5kN以上であれば足りるが、実際に成形された錠剤の硬度などを考慮すると5~14kNであることがより好ましい。
【0099】
また、上述のような優れた崩壊性を発現させるためには、表10及び表12より、本発明の環状口腔内崩壊錠の外径と内径との比を10:1~6:2、或いはより好ましくは10:1~10:4とし、そして環状口腔内崩壊錠の内径を0mmより大きく4mm以下とすることにより、崩壊時間を60秒以内に抑制できることが判った。
【0100】
6.口腔内崩壊錠に割線を設けることの影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
薬物としてオルメサルタンメドキソミル又はアジルサルタンを用いたラウンド割線を有する実施例19R,22Rの環状口腔内崩壊錠(図26)およびストレート割線を有する実施例19S,22Sの環状口腔内崩壊錠(図27)と、ラウンド割線を有する比較例16R,20Rの円盤状口腔内崩壊錠(図28)およびストレート割線を有する比較例16S,20Sの円盤状口腔内崩壊錠(図31)を以下のようにして製造した。
【0101】
上記実施例および比較例のうち、薬物としてオルメサルタンメドキソミルを用いた実施例19R,19Sの環状口腔内崩壊錠は、ラウンド割線又はストレート割線を有すること以外は、上述した実施例4の環状口腔内崩壊錠と同じ処方(表5参照)、製造方法により作製した。また、薬物としてオルメサルタンメドキソミルを用いた比較例16R,16Sの円盤状口腔内崩壊錠は、ラウンド割線又はストレート割線を有すること以外は、上述した比較例4の円盤状口腔内崩壊錠と同じ処方(表5参照)、製造方法により作製した。
【0102】
また、上記実施例および比較例のうち、薬物としてアジルサルタンを用いた実施例22R,22Sの環状口腔内崩壊錠は、ラウンド割線又はストレート割線を有すること以外は、上述した実施例9の環状口腔内崩壊錠と同じ処方(表2参照)、製造方法により作製した。また、薬物としてアジルサルタンを用いた比較例20R,20Sの円盤状口腔内崩壊錠はラウンド割線又はストレート割線を有すること以外は、上述した比較例9の円盤状口腔内崩壊錠と同じ処方(表2参照)、製造方法により作製した。
【0103】
(2)口腔内崩壊錠の分割性
口腔内崩壊錠の分割性は、N数/10錠の口腔内崩壊錠について、第17版日本薬局方に記載されている「6.02 製剤均一性試験法」の中の「2.質量偏差試験」に従って算出された標準偏差(%)および判定値(%)により評価した。標準偏差(%)は小さいほど分割後の各錠剤片の質量のバラツキが小さく、判定値(%)は小さいほど分割し易く、分割性に優れていることを意味している。
【0104】
以下、オルメサルタンメドキソミル又はアジルサルタンを用いた割線を有する環状口腔内崩壊錠および割線を有する円盤状口腔内崩壊錠の分割性については、第17版日本薬局方に記載されている製剤均一性試験法中の質量偏差試験に従って算出された標準偏差(%)および判定値(%)を比較することにより評価を行った。
【0105】
実施例19R,22Rのラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠と比較例16R,20Rのラウンド割線を有する円盤状口腔内崩壊錠、および実施例19S,22Sのストレート割線を有する環状口腔内崩壊錠と比較例16S,20Sのストレート割線を有する円盤状口腔内崩壊錠について行った分割性の評価結果を表13および図34に示す。
【表13】
【0106】
表13および図34より、錠剤の薬物がオルメサルタンメドキソミルであるか又はアジルサルタンであるかに関わらず、ラウンド割線又はストレート割線を有する実施例19R,22R,19S,22Sの環状口腔内崩壊錠は、いずれも同じ条件で成形したラウンド割線又はストレート割線を有する比較例16R,20R,16S,20Sの円盤状口腔内崩壊錠よりも標準偏差(%)および判定値(%)において小さくなることが判った。
【0107】
また、同じ薬物である場合、割線がラウンド割線であるか又はストレート割線であるかに関わらず、同じ条件で成形した実施例19Rと19Sの環状口腔内崩壊錠同士、22Rと22Sの環状口腔内崩壊錠同士、および同じ条件で成形した比較例16Rと16Sの円盤状口腔内崩壊錠同士、20Rと20Sの円盤状口腔内崩壊錠同士の標準偏差(%)および判定値(%)においてほぼ同じ値になることが判った。
【0108】
すなわち、割線を有する環状口腔内崩壊錠は、薬物の種類や割線の種類に関わらず、同じ打錠圧によって、割線を有する円盤状口腔内崩壊錠と同じ錠剤としての形態を維持することが可能な強度などを有しているにも拘らず、割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことが判った。なお、本発明で用いた割線は、断面視において頂角θが90°±20°の範囲内にあるV字型の溝である。
【0109】
7.割線を有する環状口腔内崩壊錠の外径の大きさの影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
割線を有する環状口腔内崩壊錠の外径の大きさが、同じ内径の穴と同じ割線を有する環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の分割性にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、ラウンド割線を有する実施例17R(図24),18R(図25),の環状口腔内崩壊錠は、外径を6mm(重量90mg)、8mm(重量180mg)としたこと以外は、上述した実施例19Rの環状口腔内崩壊錠(外径10mm,重量360mg)と同じ処方、製造方法により作製した。また、比較例14S(図29),15S(図30),16S(図31)の円盤状口腔内崩壊錠は、中央に穴が無く、ストレート割線を有している以外は、上記実施例17R,18R,19Rの環状口腔内崩壊錠と同じ処方、製造方法により作製した。
【0110】
(2)口腔内崩壊錠の分割性
実施例17R,18R,19Rの環状口腔内崩壊錠および比較例14S,15S,16Sの円盤状口腔内崩壊錠の分割性については、上記「6.(2)口腔内崩壊錠の分割性」の中で述べたのと同じ第17版日本薬局方に基づいた試験方法、算出方法により評価を行った。
【0111】
実施例17R,18R,19Rのラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠と、比較例14S,15S,16Sのストレート割線を有する円盤状口腔内崩壊錠について行った分割性の評価結果を表14および図35に示す。
【表14】
【0112】
表14及び図35より、ラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠は、内径が一定(例えば2mm)であれば、(例えば6~10mmの範囲内の)外径に拠らず、いずれの外径においても、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量のストレート割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことが判った。
【0113】
また、実施例17R,18R,19Rおよび比較例14S,15S,16Sでは、薬物がオルメサルタンメドキソミルにおいて、ラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠とストレート割線を有する円盤状口腔内崩壊錠の比較を行ったが、上記「6.(2)口腔内崩壊錠の分割性」の中で得られた結果を考慮すると、割線を有する環状口腔内崩壊錠は、内径が一定(例えば2mm)であれば、薬物の種類や割線の種類、そして(例えば6~10mmの範囲内の)外径に拠らず、いずれの外径においても、同じ割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すものと考えられる。
【0114】
8.割線を有する環状口腔内崩壊錠の内径の大きさの影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
割線を有する環状口腔内崩壊錠の穴の内径の大きさが、同じ外径の同じ打錠圧の同じ割線を有する環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の分割性にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、ラウンド割線を有する実施例20R(図32),21R(図33)の環状口腔内崩壊錠は、穴の内径を1mm、4mmとしたこと以外は、上述した実施例19Rの環状口腔内崩壊錠(内径2mm)と同じ処方、製造方法により作製した。また、比較例16Sの円盤状口腔内崩壊錠の製造は、上記「7.(1)口腔内崩壊錠の作製」の中で述べたとおりである。
【0115】
(2)口腔内崩壊錠の分割性
実施例20R,19R,21Rのラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠および比較例16Sの円盤状口腔内崩壊錠の分割性については、上記「6.(2)口腔内崩壊錠の分割性」の中で述べたのと同じ第17版日本薬局方に基づいた試験方法、算出方法により評価を行った。
【0116】
実施例20R,19R,21Rのラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠および比較例16Sのストレート割線を有する円盤状口腔内崩壊錠について行った分割性の評価結果を表15および図36に示す。
【表15】
【0117】
表15及び図36より、ラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠は、(例えば1~4mmの範囲内の)内径に拠らず、同じ打錠圧によって圧縮成形された同じ重量の同じ外径を有するストレート割線の円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことが判った。
【0118】
また、実施例20R,19R,21Rおよび比較例16Sでは、薬物がオルメサルタンメドキソミルにおいて、ラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠とストレート割線を有する円盤状口腔内崩壊錠の比較を行ったが、上記「6.口腔内崩壊錠に割線を設けることの影響」の中で得られた結果を考慮すると、割線を有する環状口腔内崩壊錠は、薬物の種類や割線の種類、そして(例えば1~4mmの範囲内の)内径に拠らず、同じ割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すものと考えられる。
【0119】
9.割線を有する環状口腔内崩壊錠の打錠圧の影響
(1)口腔内崩壊錠の作製
割線を有する環状口腔内崩壊錠を成形する際の打錠圧の大きさが、同じ条件で成形した同じ割線を有する環状口腔内崩壊錠および円盤状口腔内崩壊錠の分割性にどのような影響を及ぼすのかを調べるため、以下の試験を行った。すなわち、ラウンド割線を有する実施例23R,24R,25R,26Rの環状口腔内崩壊錠(図26)は、打錠圧を8kN,10kN,12kN,14kNとしたこと以外は、上述した実施例22Rの環状口腔内崩壊錠(打錠圧6kN)と同じ処方、製造方法により作製した。
【0120】
また、ラウンド割線を有する比較例21R,22R,23R,24Rの円盤状口腔内崩壊錠(図28)は、打錠圧を8kN,10kN,12kN,14kNとしたこと以外は、上述した比較例20Rの円盤状口腔内崩壊錠と(打錠圧6kN)と同じ処方、製造方法により作製した。
【0121】
(2)口腔内崩壊錠の分割性
実施例22R,23R,24R,25R,26Rのラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠および比較例20R,21R,22R,23R,24Rのラウンド割線を有する円盤状口腔内崩壊錠の分割性については、上記「6.(2)口腔内崩壊錠の分割性」の中で述べたのと同じ第17版日本薬局方に基づいた試験方法、算出方法により評価を行った。
【0122】
実施例22R,23R,24R,25R,26Rのラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠および比較例20R,21R,22R,23R,24Rのラウンド割線を有する円盤状口腔内崩壊錠について行った分割性の評価結果を表16および図37に示す。
【表16】
【0123】
表16及び図37より、ラウンド割線を有する環状口腔内崩壊錠は、(例えば6~14kNの範囲内の)打錠圧に拠らず、いずれの打錠圧においても、同じ重量の同じ外径を有するラウンド割線の円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すことが判った。
【0124】
また、実施例22R~26Rおよび比較例20R~24Rでは、薬物がオルメサルタンメドキソミルであり、割線がラウンド割線である場合において、環状口腔内崩壊錠と円盤状口腔内崩壊錠の比較を行ったが、上記「6.口腔内崩壊錠に割線を設けることの影響」の中で得られた結果を考慮すると、割線を有する環状口腔内崩壊錠は、薬物の種類や割線の種類、そして(例えば6~14kNの範囲内の)打錠圧に拠らず、同じ割線を有する円盤状口腔内崩壊錠よりも優れた分割性を示すものと考えられる。
【0125】
なお、上記「4.環状口腔内崩壊錠の外径の大きさの影響」の中で述べたとおり、本発明において錠剤としての形態を維持するのに適しており、そして優れた分割性を示す打錠圧としては4kN以上であれば足りるが、成形された錠剤の硬度などを考慮すると4~16kNの打錠圧であることが好ましく、特に優れた分割性を得るためには6~14kNの打錠圧であることがより好ましい。
図1
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