(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】蓋材及び包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20231005BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B65D77/20 J
B65D65/40 D
B65D77/20 M
(21)【出願番号】P 2020002168
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】川北 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 優樹
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-080405(JP,A)
【文献】特開2013-203456(JP,A)
【文献】特開平10-053258(JP,A)
【文献】特開平11-029171(JP,A)
【文献】特開2019-151351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の熱融着性樹脂よりなる開口周縁部に熱融着可能な積層シートよりなる蓋材であって、常磁性粒子及び合成樹脂を含むマグネット層と、強磁性粒子及び合成樹脂を含む被磁着層とを有しており、
前記蓋材は、前記容器の開口周縁部に熱融着させられているときは、熱融着帯において、
前記マグネット層及び前記被磁着層のうちいずれか一方の厚さの全部若しくは一部、
又は、
前記マグネット層及び前記被磁着層のうちいずれか一方の厚さの全部並びに同他方の一部
が前記容器の開口周縁部に残存するように剥離可能とされており、
前記容器の開口周縁部より剥離させられた後は、前記マグネット層及び前記被磁着層の間に作用する磁力によって、前記容器の開口周縁部に再び密着可能となされている、
再封可能な蓋材。
【請求項2】
前記マグネット層と前記被磁着層との間に易剥離層が介在させられている、請求項1の蓋材。
【請求項3】
前記マグネット層と前記被磁着層との間にバリア層が介在させられている、請求項1又は2の蓋材。
【請求項4】
最外面が保護層で構成される、請求項1~3のいずれかの蓋材。
【請求項5】
最内面が熱融着性樹脂層で構成される、請求項1~4のいずれかの蓋材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの蓋材と、内容物を収納可能でありかつ熱融着性樹脂よりなる開口周縁部を有する容器とで構成される、熱封緘された包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品等の内容物を収容した容器を熱封緘できるとともに該容器を再封可能な蓋材、及び該蓋材で熱封緘した包装体、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や医薬品、化学製品、一部の工業部品など変質しやすい内容物を、埃や細菌等の異物が混入しないように熱封緘した包装体が多く開発されている。かかる包装体としては、ガスや水分、光等を遮断する積層シート(ハイバリアーシート)を絞り成形してなる容器に前記内容物を収容し、該容器の開口周縁に同じくハイバリアーシートよりなる蓋材を熱融着させたものが公知である(特許文献1)。
【0003】
ところで、上記包装体に熱封緘した内容物は、開封後に消費しきれないことがあり、変質回避のために他の容器へ移し替えることがある。しかし、内容物が粉末の場合には周囲に散乱することがあり、また液状の場合には零れたり元の包装体に少なからず残存したりする。そこで斯界には、易開封が可能であるとともに、開封後に蓋材で容器を再度封緘できるリシール性(再封性)を備えた包装体の要請がある。
【0004】
そのような包装体として、例えば特許文献2のものは、ホットメルト接着剤で形成されるタック性の粘着剤層と、同じくホットメルト接着剤で形成されるが非タック性の粘着剤層とを保護層に積層した蓋材(リシール性封止シート)で容器を熱封緘したものであり、この蓋材により十分な初期開封強度が担保されるのみならず、開封時に糸曳きが生じず、再封も可能とされる。
【0005】
また、特許文献3の包装体は、合成樹脂で粘着剤層を挟んだ積層シートで容器を形成したものであって、フランジ部上面の全周に亘り所定深さのノッチを開口周縁側に刻設することにより、熱封緘後に蓋材を剥離させると前記粘着剤層がフランジ部上面に露出し、これに蓋材を圧着させることにより、再封が可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平6-345123号公報
【文献】特開2013-82914号公報
【文献】特開2019-77493号公報
【発明の概要】
【0007】
しかし、特許文献2や3の包装体は、再封手段として粘着剤層を利用しているため、夾雑物の付着や加熱に因り再封能が損なわれやすい。
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、再封手段として粘着剤層を特段利用せずとも熱封緘性、易開封性及び再封性を備えた包装体を与える蓋材、並びに該蓋材で熱封緘してなる開封及び再封が繰り返し可能な包装体を提供することである。
【0009】
前記課題に鑑み本発明者は、粘着力に代えて磁力を利用することにより所期の蓋材を提供できることを見出した。即ち本発明は下記蓋材及び包装体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1)容器の熱融着性樹脂よりなる開口周縁部に熱融着可能な積層シートよりなる蓋材であって、常磁性粒子及び合成樹脂を含むマグネット層と、強磁性粒子及び合成樹脂を含む被磁着層とを有しており、前記蓋材は、前記容器の開口周縁部に熱融着させられているときは、熱融着帯において、
前記マグネット層及び前記被磁着層のうちいずれか一方の厚さの全部若しくは一部、
又は、
前記マグネット層及び前記被磁着層のうちいずれか一方の厚さの全部並びに同他方の一部
が前記容器の開口周縁部に残存するように剥離可能とされており、
前記容器の開口周縁部より剥離させられた後は、前記マグネット層及び前記被磁着層の間に作用する磁力によって、前記容器の開口周縁部に再び密着可能となされている、
再封可能な蓋材。
【0011】
2)前記マグネット層と前記被磁着層との間に易剥離層が介在させられている、1)の蓋材。
【0012】
3)前記マグネット層と前記被磁着層との間にバリア層が介在させられている、1)又は2)の蓋材。
【0013】
4)最外面が保護層で構成される、1)~3)のいずれかの蓋材。
【0014】
5)最内面が熱融着性樹脂層で構成される、1)~4)のいずれかの蓋材。
【0015】
6)1)~5)のいずれかの蓋材と、内容物を収納可能でありかつ熱融着性樹脂よりなる開口周縁部を有する容器とで構成される、熱封緘された包装体。
【発明の効果】
【0016】
1)の蓋材は、所定の積層シートよりなり、容器の熱融着性樹脂よりなる開口周縁部に熱融着させられることで、該容器を熱封緘できる。また、該積層シートが所定のマグネット層と被磁着層を有しているため、剥離後、後述のように、両層の間に作用する磁力を利用することに依って、容器を再封できる。
【0017】
2)の蓋材は、マグネット層と被磁着層との間に易剥離層が介在させられており、その一方の面における界面破壊又はその凝集破壊を利用することによって、マグネット層及び/又は被磁着層を破壊することなく、容器の開口周縁部より剥離できる。
【0018】
3)の蓋材は、マグネット層と被磁着層との間にバリア層が介在させられているため、容器の収容物が例えば食品や医薬品のように変質しやすいものの場合であっても、品質を長期に亘り維持できる。
【0019】
4)の蓋材は、最外面が保護層で構成されているため、包装体の強度や耐衝撃性等が向上する。
【0020】
5)の蓋材は、最内面が熱融着性樹脂層で構成されているため、容器の熱融着性樹脂よりなる開口周縁部に高精度でヒートシールさせ得る。
【0021】
6)の包装体は、1)~5)のいずれかの蓋材で所定の容器を熱封緘したものであり、該蓋材が所定のマグネット層と被磁着層を有する再封性の積層シートよりなるため、開封及び再封が繰り返し可能である。また、再封手段として磁力を利用しているため、粘着力を利用する従来の包装体のように、夾雑物の付着や加熱に因る再封能の低下が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の蓋材で熱封緘された包装体の斜視図である。
【
図2】本発明の包装体の密封時の部分断面図である。
【
図3】本発明の包装体の開封時の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、
図1~3を参照しながら説明する。但し、それら図面によって本発明の技術的範囲が限定されることはない。
【0024】
図1は、本発明の蓋材(1)で容器(2)を熱封緘してなる包装体(3)の斜視図であり、蓋材(1)の部分剥離により内容物(4)が可視化されている。
【0025】
蓋材(1)は積層シート(10)よりなり、積層シート(10)は所定のマグネット層(10a)及び被磁着層(10b)を有する。各層は対を成し、両層間で磁力が作用する。
【0026】
マグネット層(10a)は、常磁性体粒子(101a)及び合成樹脂(102a)を含む層である。
常磁性体粒子(101a)は、マグネット層(10a)の分散相を構成し、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、異方性フェライト粒子、等方性フェライト磁石粒子、ネオジウム磁石粒子、サマリウムコバルト磁石粒子及びアルニコ磁石粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を例示できる。また、その平均一次粒子径は、磁化が安定している範囲であれば特に限定されず、通常0.1~10μmである。
合成樹脂(102a)は、マグネット層(10a)の連続相を構成し、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等からなる群より選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂又は硬化性樹脂が挙げられ、それらはフィルム若しくはシートとして使用できる。
マグネット層(10a)は、常磁性体粒子(101a)を合成樹脂(102a)に各種公知の方法で練り込んでなるマグネットフィルム又はシートで構成できる。また、合成樹脂(102a)をビヒクルとし、これで常磁性体粒子(101a)を有機溶剤中に分散させた常磁性塗料よりなる塗膜でも構成できる。なお、ビヒクルである合成樹脂(102a)として、常温で粘・接着性を帯びる塗膜を形成可能な合成樹脂を用いる場合、常磁性塗膜層は粘・接着層とみなせる。そのような合成樹脂としては、二液硬化型ポリエステル-ポリウレタン樹脂及び/又は二液硬化型ポリエーテル-ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂並びにエポキシ樹脂等を例示できる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等からなる群より選ばれる少なくとも一種を例示できる。
常磁性体粒子(101a)と合成樹脂(102a)の、マグネット層(10a)における含有率は特に限定されず、マグネット層(10a)の磁力の安定性と層自体の強度維持の均衡等を考慮すると、通常、順に30~80質量%及び70~20質量%であり、好ましくは40~60質量%及び60~40質量%である。
マグネット層(10a)は、必要に応じ外的手段に依り着磁させてもよい。着磁はマグネット層(10a)についてのみ行ってもよいし、蓋材(1)ごと行ってもよい。
【0027】
被磁着層(10b)は、強磁性体粒子(101b)及び合成樹脂(102b)を含む層である。
強磁性体粒子(101b)は、被磁着層(10b)の分散相を構成し、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、鉄粒子、ニッケル粒子、コバルト粒子及びそれらの合金よりなる粒子からなる群より選ばれる少なくとも一種を例示できる。また、その平均一次粒子径は特に限定されず、通常0.1~10μmである。
合成樹脂(102b)は、被磁着層(10b)の連続相を構成し、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、前記合成樹脂(102a)と同じものを、同じ態様で使用できる。
被磁着層(10b)は、強磁性体粒子(101b)を合成樹脂(102b)に練り込んでなる強磁性フィルム又はシートで構成できる。また、合成樹脂(102b)をビヒクルとし、これで強磁性体粒子(101b)を有機溶剤中に分散させた強磁性塗料よりなる強磁性塗膜層でも構成できる。なお、ビヒクルである合成樹脂(102b)として、常温で粘・接着性を帯びる塗膜を形成可能な合成樹脂を用いる場合、強磁性塗膜層は、粘・接着層とみなせる。そのような合成樹脂としては前記したものを例示できる。また、有機溶剤も前記したものが挙げられる。
強磁性体粒子(101b)及び合成樹脂(102b)の、被磁着層(10b)における含有率は特に限定されず、被磁着層(10b)のマグネット層(10a)への吸着力(引力)の安定性と層自体の強度維持の均衡等を考慮すると、通常、順に5~60質量%及び95~40質量%であり、好ましくは20~50質量及び80~50質量%である。
【0028】
マグネット層(10a)の厚み(Ta)と被磁着層(10b)の厚み(Tb)はいずれも限定されない。例えば(Ta)は、磁力の安定性等を考慮すると、通常100μm~5000μm、好ましくは200μm~2000μmであり、(Tb)は、被磁着層(10b)のマグネット層(10a)への吸着力(引力)等を考慮すると、通常20μm~80μm、好ましくは30μm~70μmである。なお、マグネット層(10a)及び/又は被磁着層(10b)を厚くする手段は特に限定されず、マルチコートが簡便である。
【0029】
マグネット層(10a)と被磁着層(10b)の、蓋材(1)の厚さ方向における順序は任意である。具体的には、マグネット層(10a)を蓋材(1)の上面側に、被磁着層(10b)を同下面側にした配置であってよいし(
図2(a)(c)参照)、両層を入れ替えた配置であってもよい(
図2(b)参照)。なお、各層の厚みを上記(Ta)及び(Tb)の範囲にした場合には前者配置が好ましい。マグネット層(10a)の磁力密度が相対的に大きくなり、蓋材(1)の再封性が良好になるためである。
【0030】
積層シート(10)には、マグネット層(10a)と被磁着層(10b)の間に作用する磁力が有意であって容器(2)を再封可能である限り、他の層を含ませてよい。具体的には、易剥離層(10c)及び/又はバリア層(10d)が挙げられる。
易剥離層(10c)は、その一方若しくは両方の面の界面破壊又はその凝集破壊により、蓋材(1)を容器(2)の開口周縁部(21)より、マグネット層(10a)及び/又は被磁着層(10b)を破壊することなく易剥離させる機能層であり、各種公知の合成樹脂で構成される。該合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、硝化綿、ポリビニルアルコール樹脂並びにエチレンビニルアルコール樹脂等からなる群より選ばれる一種を例示できる。また、ポリオレフィンはエチレンプロピレンゴム(EPR)等のエラストマー成分を含んだものであってよい。易剥離層(10c)は、該合成樹脂のフィルム若しくはシートで構成してもよく、また、該合成樹脂の前記有機溶剤を用いた溶液よりなる塗膜で構成してもよい。易剥離層(10c)の厚みは特に限定されず、上記したような選択的剥離を好適に生じさせるためには、通常0.03~50μm、好ましくは0.05~15μmであればよい。
バリア層(10d)は、蓋材(1)に光やガス、水分の遮断能を与える層であり、容器(2)に収容する内容物(4)の変質や劣化を防ぐ。バリア層(10d)としては、各種公知の金属箔が好ましく、アルミニウム(合金)箔、鉄箔、ステンレス鋼箔、銅箔及びニッケル箔等からなる群より選ばれる少なくとも一種を例示できる。また金属箔の片面又は両面には、他の層との接着性を賦与したり、耐食性を向上させたりするため、化成処理等の下地層を形成できる。下地層の形成剤としては、各種公知のものを特に制限なく使用でき、例えば脱脂処理を行った金属箔の表面に、(i)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、を含む混合物の水溶液、(ii)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、を含む混合物の水溶液、並びに、(iii)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂及びフェノール系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂と、クロム酸及びクロム(III)塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物と、フッ化物の金属塩及びフッ化物の非金属塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物とを含む混合物の水溶液、のいずれかの水溶液を塗工した後、乾燥させることにより化成処理を施して、皮膜(下地層)を形成する。前記形成剤の使用量は特に制限されず、クロム付着量(片面当たり)で通常0.1~50mg/m2、好ましくは2~20mg/m2である。バリア層(10d)の厚みは特に限定されず、例えば5~30μmである。
易剥離層(10c)とバリア層(10d)とを共在させる場合、バリア層(10d)は蓋材(1)の剥離時に追従させる必要があるため、バリア層(10d)を易剥離層(10c)の上に配置させる。
【0031】
積層シート(10)の最外面は、マグネット層(10a)又は被磁着層(10b)で構成してもよいが、常磁性体粒子(101a)又は強磁性体粒子(101b)の変質防止等を考慮すると、別途保護層(10e)で構成するのが好ましい。
保護層(10e)は、蓋材(1)に強度を与えるとともに、容器(2)に収容する内容物(4)を光やガス、水分等より保護する機能層であり、各種公知の合成樹脂で構成される。該合成樹脂としては、例えば、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンナフタレート等からなる群より選ばれるフィルム若しくはシートが挙げられ、二層以上よりなる積層材として使用できる。また、保護層(10d)は、エポキシ樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、硝化綿、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の熱硬化性架橋性樹脂よりなるオーバーコート剤で構成することもできる。保護層(10e)の厚みは特に制限されず、例えば0.5~20μmである。また、保護層(10e)の下面側には、包装体(3)に識別性を付与するため印刷層を設けることができる。
【0032】
積層シート(10)の最内面は、マグネット層(10a)又は被磁着層(10b)で構成してもよいが、常磁性体粒子(101a)及び強磁性体粒子(101b)の変質防止等を考慮すると、別途熱融着性樹脂層(10f)で構成するのが好ましい。
熱融着性樹脂層(10f)は、蓋材(1)を下面より容器(2)の開口周縁部(21)に熱融着させる手段であり、各種公知の熱融着性樹脂で構成される。該熱融着性樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、延伸ポリプロピレン、無延伸ポリプロピレン、ホモポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、ポリ(エチレン-プロピレン)ランダム共重合体、ポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体、ポリビニルアルコール、アイオノマー樹脂及びアクリル系共重合樹脂等からなる群より選ばれるフィルム若しくはシートが挙げられ、二層以上よりなる積層材として使用できる。該熱融着性樹脂として、後述の容器(2)の開口周縁部(21)の上面を構成する熱融着性樹脂と同一又は同種のものを選択すると、包装体(3)のシール精度が高まり、密封性が一層良好となる。熱融着性樹脂層(10f)の厚みは特に制限されず、例えば10~80μm、好ましくは20~60μmである。
【0033】
積層シート(10)の製法は特に限定されず、ドライラミネート法や押出しラミネート法、ヒートラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法の場合には、各層の接合手段として接着層を利用できる。接着剤としては、各種公知のものを特に制限なく使用できるが、ポリウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、ポリオレフィン樹脂系接着剤及びエラストマー系接着剤等を例示できる。これらの中でもポリウレタン樹脂系接着剤が好ましく、特に二液硬化型ポリエーテル-ウレタン樹脂系接着剤及び/又は二液硬化型ポリエステル-ウレタン樹脂系接着剤が好ましい。接着層の(乾燥)膜厚は特に限定されず、通常1~5μmである。
【0034】
蓋材(1)は、積層シート(10)を所望の形状に加工したものである。形状は特に限定されず、その外周は通常、容器(2)の開口周縁部(21)と同形又は相似形であればよい。また、蓋材(1)には、開封手段であるタブ(11)を設けてもよい。その大きさと形状も特に限定されず、舌片状、半円状、三角状及び四角状等を例示できる。
【0035】
蓋材(1)の下面には、容器(2)の開口周縁部(21)付近に、易剥離補助手段としての開封用環状ノッチ(12)を構成できる。ノッチ(12)の位置は特に限定されないが、
図2及び3で示されるように、容器(2)の開口よりもやや内側、即ち該開口の中心側に構成するのが好ましい。また、ノッチ(12)の深さも特に限定されないが、
図2及び3で示されるように、その先端がマグネット層(10a)の一方の面若しくは厚さ中間、易剥離層(10d)の一方の面若しくは厚さ中間、及び被磁着層(10e)の一方の面若しくは厚さ中間のいずれかに達しておれば、それら層の界面破壊及び/又は凝集破壊が惹起され、蓋材(1)の易剥離が実現する。
【0036】
容器(2)は、合成樹脂及び/若しくは金属箔で構成される単層又は複層のシートを成形したものである。該合成樹脂としては、容器(2)の内面には前記熱融着性樹脂層(10f)を構成する合成樹脂が好ましく、また、同外面には前記保護層(10e)を構成する合成樹脂が好ましい。また、該金属箔としては前記したものが挙げられる。また、成形手段としては、張り出し成形及び深絞り成形等のプレス成形が挙げられる。
図1で示されるようなカップ状の容器(2)は、フランジ部としての開口周縁部(21)、側壁(22)及び底壁(23)で構成されるが、これは本発明の一態様であって、その形状及び寸法は特に限定されず、包装体(3)のデザインや用途において適宜変更可能である。
【0037】
包装体(3)は、
図1で示すように、内容物(4)を収容した容器(2)の開口周縁部(21)を蓋材(1)で熱封緘したものであり、蓋材(1)の最下面と開口周縁部(21)の上面との間には熱融着帯(X)が構成される(
図2、3も参照)。熱融着帯(X)の形状は特に限定されず、通常は開口周縁部(21)と同形又は相似形であり、円環状、楕円環状及び多角環状等を例示できる。また、熱融着帯(X)の幅も特に限定されず、開口周縁部(21)の幅と同等又はそれ以下であればよく、通常1~7mmである。また、開口周縁部(21)の外側に未熱融着帯(図示外)を設け、易開封の契機としてもよい。
【0038】
包装体(3)は、蓋材(1)が容器(2)の開口周縁部(21)に熱融着させられているときは、熱融着帯(X)において、マグネット層(10a)及び被磁着層(10b)のうちいずれか一方の厚さの全部若しくは一部が容器(2)の開口周縁部(2)に残存するように剥離可能とされているか(第1態様)、マグネット層(10a)及び被磁着層(10b)のうちいずれか一方の厚さの全部並びに同他方の一部が容器(2)の開口周縁部(2)に残存するように剥離可能とされている(第2態様)。即ち、下記[1]~[6]のいずれかが熱融着帯(X)を介して開口周縁部(21)の上面に残存するように剥離可能とされる。
<第1態様:マグネット層(10a)が上側>
[1]被磁着層(10b)の厚さの一部
[2]被磁着層(10b)の厚さの全部
[3]被磁着層(10b)の厚さの全部及びマグネット層の厚さの一部
<第2態様:マグネット層(10a)が上側>
[4]マグネット層(10a)の厚さの一部
[5]マグネット層(10a)の厚さの全部
[6]マグネット層(10a)の厚さの全部と被磁着層(10b)の厚さの一部
【0039】
図2は、包装体(3)の密封(熱封緘)時における部分断面図であり、蓋材(1)の剥離可能箇所を模式的に示す。
図2(a)は、蓋材(1)が保護層(10e)、マグネット層(10a)及び被磁着層(10b)で構成される態様を示し、マグネット層(10a)と被磁着層(10b)は直接ラミネートされている。本態様は前記第1態様に相当し、蓋材(1)は、図中の点線の位置で剥離可能とされる。そして、蓋材(1)を開口周縁部(21)より剥離させると、[1]被磁着層(10b)の厚さの一部、[2]被磁着層(10b)の厚さの全部、又は[3]被磁着層(10b)の厚さの全部及びマグネット層の厚さの一部が熱融着帯(X)において開口周縁部(21)の上面に残存させられる。なお、「厚さの一部」の残存は専ら当該層の凝集破壊を契機とし、また、「厚さの全部」の残存は当該層と該層に接合させられている層との間の界面破壊を専ら契機とする(以下、同様。)。
図2(b)は、
図2(a)の蓋材(1)において、マグネット層(10a)と被磁着層(10b)の厚さ方向の位置を交代させるとともに、両層の間に易剥離層(10c)を介在させ、かつ、マグネット層(10a)の下面に熱融着性樹脂層(10f)を配置させた態様である。本態様は前記第2態様に相当し、蓋材(1)は同じく図中の点線の位置で剥離可能とされる。そして、蓋材(1)を開口周縁部(21)より剥離させると、[4]マグネット層(10a)の厚さの一部、[5]マグネット層(10a)の厚さの全部、又は、[6]マグネット層(10a)の厚さの全部と被磁着層(10b)の厚さの一部が熱融着帯(X)において開口周縁部(21)の上面に残存させられる。また、[5]と[6]の場合には、易剥離層(10c)の全部又は一部がマグネット層(10a)の上面に残され得る。
図2(c)は、
図2(a)の蓋材(1)において、マグネット層(10a)と被磁着層(10b)の間にバリア層(10d)と易剥離層(10c)をこの順で介在させるとともに、被磁着層(10b)の下面に熱融着性樹脂層(10f)を配置させた態様である。本態様は前記第1態様に相当し、蓋材(1)は、図中の点線の位置で剥離可能とされる。そして、蓋材(1)を開口周縁部(21)より剥離させると、[1]被磁着層(10b)の厚さの一部、[2]被磁着層(10b)の厚さの全部、又は[3]被磁着層(10b)の厚さの全部及びマグネット層の厚さの一部が熱融着帯(X)において開口周縁部(21)の上面に残存させられる。また、[2]と[3]の場合には、易剥離層(10c)の全部又は一部が被磁着層(10a)の上面に残され得る。
【0040】
図3は、包装体(3)の開封時の部分断面図である。
図3(a)は、
図2(a)の包装体(3)より蓋材(1)を剥離させた態様である。本態様では、被磁着層(10b)の凝集破壊によりその厚さの一部が熱融着帯(X)において開口周縁部(21)の上面に残存させられる。そして、蓋材(1)下面側のマグネット層(10a)と、開口周縁部(21)の上面側の被磁着層(10b)との間に作用する磁力を専ら利用することによって、蓋材(1)を開口周縁部(21)に再密着(図示略)させることができ、これにより再封が行える。なお、本態様では、蓋材(1)のマグネット層(10a)の下面に被磁着層(10b)の一部が残存しており、これを介して前記再封が行われる。
図3(b)は、
図2(b)の包装体(3)より蓋材(1)を剥離させた態様である。本態様では、易剥離層(10c)とマグネット層(10a)の接合面で界面破壊が生じ、マグネット層(10a)の厚さの全部が熱融着性樹脂層(10f)を介し、熱融着帯(X)において、開口周縁部(21)の上面に残存させられる。そして、蓋材(1)下面側の被磁着層(10b)と、開口周縁部(21)の上面側のマグネット層(10a)との間に作用する磁力を利用することによって、再封が行える。なお、本態様では、蓋材(1)の被磁着層(10b)の下面の、熱融着帯(X)に対応する位置に、易剥離層(10c)の全部が残存しており、これを介して前記再封が行われる。
図3(c)は、
図2(c)の包装体(3)より蓋材(1)を剥離させた態様である。本態様では、易剥離層(10c)の厚さ中間における凝集破壊が生じ、被磁着層(10b)の厚さの全部が熱融着性樹脂層(10f)を介し、熱融着帯(X)において、開口周縁部(21)の上面に残存させられる。そして、蓋材(1)下面側のマグネット層(10a)と、開口周縁部(21)の上面側の被磁着層(10b)との間に作用する磁力を利用することによって、再封が行える。なお、本態様では、蓋材(1)のマグネット層(10a)の下面にバリア層(10d)の全部と易剥離層(10c)の一部が残存しており、それらを介して前記再封が行われる。
【0041】
内容物(4)としては、例えば、バター、マーガリン、チーズ、ジャム、ドレッシング、カレー、シチュー、スープ及びコーヒーフレッシュのような水分乃至油分を多く含む加工食品;味噌、もろみ、麹、甘酒等のような発酵食品;フィルム、医薬品、化学薬品及び洗剤のような嫌気性乃至嫌光性の工業製品;ウェットティッシュ及びウェットガーゼのような衛生品;洗剤を染み込ませたタオル(雑巾)のような掃除用品;その他ネジやボルト等の工業部品等の食品及び非食品が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の技術的範囲を制限しない。
【0043】
実施例1
(蓋材の作製)
保護層である2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(9μm厚)の片面に、市販の二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤に平均一次粒子径が2μmの異方性フェライト磁石粉を50質量%分散させたマグネットコート(MC)剤を硬化後の膜厚が300μmとなるよう塗工することにより、マグネット層を積層したPET基材(MC/PET)を作製した。
一方、アルミニウム箔(JIS H4160 A8079-O材,7μm厚)の片面に、市販の二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤(PU)を乾燥膜厚が2μmとなるよう塗工し、接着層を積層したアルミニウム箔(PU/Al)を作製した。
次に、前記PET基材(MC/PET)を、そのマグネット層(MC)が下面となるようにして、前記アルミニウム箔(PU/Al)の接着層(PU)に貼り合わせ、40℃で5日間エージングすることにより、マグネット層とアルミニウム箔を含む複合基材(PET/MC/PU/Al)を作製した。
次に、前記複合基材(PET/MC/PU/Al)のアルミニウム箔の他方の面に、硝化綿を酢酸エチルに溶解させてなるアンカーコート剤を乾燥膜厚が0.1μmとなるよう塗工し、剥離層であるアンカーコート層(AC)を更に積層した複合基材(PET/MC/PU/Al/AC)を作製した。
次に、平均一次粒子径1μmの鉄粉が45質量%分散したポリプロピレン(PP(Fe))フィルム(40μm)に高密度ポリエチレン(HDPE)フィルム(40μm)をラミネートした複合フィルム(PP(Fe)/HDPE)(総厚80μm)を、PP(Fe)フィルムが下面となるようにして、前記複合基材(PET/MC/PU/Al/AC)の剥離層(AC)に載置し、熱ラミネートさせることにより、積層シート(PET/MC/PU/Al/AC/PP(Fe)/HDPE)を作製した。
次に、該積層シートのマグネット層(MC)を、日本電磁測定器(株)製の着磁機を用い、450V及び0.5秒の条件で着磁させることにより、本発明に係る蓋材用の積層シート(PET/MC/PU/Al/AC/PP(Fe)/HDPE)を準備した。
最後に、該積層シートを100mm×100mmの正方形に切り取り蓋材を作製した。また、該蓋材の下面側に、その中心点と同一の中心点をもつ開封用環状ノッチ(直径(φ)63mm)を、深さが80μmとなるよう形成した。ノッチの形成は、横断面V形のノッチ刃を180℃に加熱したノッチ形成装置で行った。
【0044】
(容器の作製)
アルミニウム箔(JIS H4160 A8079-O材,120μm厚)(Al)の一方の面に、リン酸、ポリアクリル酸、クロム(III)塩化合物、水及びアルコールからなる化成処理液を、片面当たりのクロム付着量が10mg/m2となるよう塗工し、乾燥させることによって、下地層を形成した。また、アルミニウム箔の他方の面にも、同様の方法で下地層を形成した。
次に、該アルミニウム箔の一方の下地層に、市販の二液硬化型のポリエステル-ポリウレタン系接着剤(PU)を乾燥膜厚が3μmとなるよう塗工して接着層を形成し、その上に直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(30μm)を貼り合わせた。続けて、該アルミニウム箔の他方の下地層にも前記接着剤(PU)を乾燥膜厚が3μmとなるよう塗工して接着層を形成し、その上に無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(50μm)を貼り合わせることにより、積層シート(LLDPE/PU/Al/PU/CPP)を作製した。
次に、該積層シートを40℃で8日間ヒートエージングすることにより、容器成形用の積層シートを作製した。
次に、該容器成形用積層シートを、そのLLDPE面が容器内側となるよう、雄型と雌型からなる金型にセットし、深絞りを行うことにより、円環状のフランジ部と同心円状の開口とを有する円筒状の容器(フランジ外径(φ):81mm、開口径(φ):65mm、フランジ幅:8mm、高さ:25mm、底径(φ):56mm)を作製した。
【0045】
(包装体の作製)
前記蓋材を、その中心が、前記容器の開口中心と一致するように該容器のフランジ部に載置し、所定寸法の円環状ステンレスシーラー(170℃)を0.2MPaで1.0秒間押し当てることにより、包装体を作製した。該包装体の蓋材下面とフランジ部上面との間には、幅5mmの環状熱融着帯が全周に亘り同心円状に形成されていた。
次に、前記包装体の蓋材の角を指で摘み、容器フランジ部より徐々に剥離させ、完全に分離する直前で動作を停止した。このとき、蓋材は、容器フランジ部上面の端部に接合されたままの状態であった。続けて蓋材の下面を目視すると、前記した環状熱融着帯に相当する部位にアルミニウム箔が露出していた。よって、該蓋材は、易剥離層であるアンカーコート層(AC)において、ポリプロピレン(PP(Fe))フィルムより剥離させられたと判断した。
次に、容器フランジ部上面に接合されている蓋材で同容器の開口を再び塞いだところ、蓋材と同容器フランジ部とが磁力で密着し、再封が行えたことを確認した。
【符号の説明】
【0046】
(1)蓋材:(12)開封用環状ノッチ
(10)熱融着性積層シート:(10a)マグネット層、(101a)常磁性体粒子、(10b)被磁着層、(101b)強磁性体粒子、(10c)易剥離層、(10d)バリア層、(10e)保護層、(10f)熱融着性樹脂層
(2)容器:(21)開口周縁部
(X)熱融着帯
(3)包装体
(4)内容物