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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/46 20060101AFI20231005BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20231005BHJP
   E05D 15/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E06B3/46
E04B2/74 561E
E05D15/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020002210
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110139
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】児玉 英士
(72)【発明者】
【氏名】福田 晴行
(72)【発明者】
【氏名】鹿釜 稔
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10163061(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02871316(EP,A1)
【文献】特開昭62-063795(JP,A)
【文献】特開2018-66178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B2/74
E05D15/00-15/58
E06B3/04-3/52
3/90-3/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、
前記枠体の内側に配置される引戸であって、表面材と、前記表面材の戸厚方向の裏側に配置され、前記枠体に対して戸厚方向の荷重を伝達可能に接続される裏側部材とを含む引戸と、
前記表面材に戸厚方向の荷重が入力されたときに前記裏側部材に対して前記表面材を戸厚方向に移動可能に接続する接続機構と、
を含み、
前記接続機構は、移動体と、戸厚変更機構と、を含み、
前記移動体は、入力荷重を受けて前記引戸に対してその可動域内で開閉方向に相対移動可能に構成され、
前記戸厚変更機構は、前記表面材に対して戸厚方向の荷重が入力された場合、前記表面材を戸厚方向に移動させるとともに、戸厚方向の荷重を開閉方向の荷重に変換して前記移動体に伝達する、引戸装置。
【請求項2】
前記表面材は、前記裏側部材に対して戸厚方向の両側に設けられ、
前記接続機構は、前記両側の表面材の一方に前記戸厚方向の荷重が入力されたときに、前記表面材を戸厚方向に移動させる、請求項1に記載の引戸装置。
【請求項3】
前記接続機構は、前記両側の表面材の一方に前記戸厚方向の荷重が入力されたときに、前記両側の表面材の両方を互いに反対方向に移動させる、請求項2に記載の引戸装置。
【請求項4】
前記表面材は、前記裏側部材によって前記接続機構を介して戸厚方向に移動可能に支持される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、引戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の引戸装置は、戸厚寸法が可変とされた引戸と、閉鎖状態の引戸が開放側に移動されることで、引戸を戸厚寸法が小さくなるように変形させるガイド部と、を含む。特許文献1の引戸装置では、引戸の戸厚方向の両側の面材がガイドレールによるガイド作用によって互いに近接する側に移動することにより、戸厚寸法が小さくなる。特許文献1の引戸装置によると、戸袋を形成する壁体と閉鎖状態の引戸との違和感が生じ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-66178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1の開示技術に関して検討したところ、次の点で改善の余地があるとの認識を得た。特許文献1の引戸装置は、戸厚方向の両側のガイド部のガイド作用により戸体の戸厚寸法を変化させる。この両側のガイド部は、戸体の戸厚寸法を変化させるように作用する必要があるため、構造上の制約を受けやすい。そのため、引戸の設計の自由度が小さいという問題があった。したがって、この問題の改善が望まれる。
【0005】
本開示の目的の1つは、設計の自由度を向上させた引戸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本開示のある態様は引戸装置である。ある態様の引戸装置は、枠体と、前記枠体の内側に配置される引戸であって、表面材と、前記表面材の戸厚方向の裏側に配置され、前記枠体に対して戸厚方向の荷重を伝達可能に接続される裏側部材とを含む引戸と、前記表面材に戸厚方向の荷重が入力されたときに前記裏側部材に対して前記表面材を戸厚方向に移動可能に接続する接続機構と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の全閉状態にある引戸装置の正面図である。
図2】実施形態の途中閉状態にある引戸装置の正面図である。
図3】実施形態の全開状態にある引戸装置の正面図である。
図4図4(a)は、図1のA矢視から引戸装置の一部を見た図であり、図4(b)は、図2のB矢視から引戸装置の一部を見た図であり、図4(c)は、図3のC矢視から引戸装置の一部を見た図である。
図5図5(a)は、図1のA矢視から引戸装置を見た図であり、図5(b)は、図2のB矢視から引戸を見た図である。
図6図6(a)は、図1のA矢視から引戸装置を見た他の図であり、図6(b)は、図2のB矢視から引戸を見た他の図である。
図7図7(a)は、図1のD矢視から引戸を見た図であり、図7(b)は、図2のE矢視から引戸を見た図である。
図8図8(a)は、図1のD矢視から引戸装置を見た他の図であり、図8(b)は、図2のE矢視から引戸を見た他の図である。
図9】実施形態の全閉状態にある引戸装置の拡大図である。
図10図10(a)~図10(c)は、引戸を閉じるときの動作図であり、図10(a)は引戸が全閉状態にあり、図10(b)は引戸が途中閉状態にあり、図10(c)は引戸が全開状態にある。
図11図10(a)~図10(c)は、引戸を開くときの動作図であり、図11(a)は引戸が全開状態にあり、図11(b)は引戸が途中閉状態にあり、図11(c)は引戸が全閉状態にある。
図12】実施形態の閉状態にある引戸装置の拡大図である。
図13】実施形態の引戸を開く途中閉状態にある引戸装置の拡大図である。
図14】実施形態の全開状態にある引戸装置の拡大図である。
図15】実施形態の引戸を閉じる途中閉状態にある引戸装置の拡大図である。
図16】実施形態の途中閉状態にある引戸装置の他の拡大図である。
図17】全閉状態のときに引戸を開閉方向に移動させた場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0009】
説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX方向、X方向に直交する水平な方向をY方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を定める。また、X方向を左右方向又は開閉方向と、Y方向を戸厚方向と、Z方向を上下方向ということがある。さらに、後述する裏側部材32に近づく方向を戸厚方向内側と、後述する裏側部材32から離れる方向を戸厚方向外側ということがある。このような方向の表記は引戸装置100の使用姿勢を制限するものではなく、引戸装置100は、用途に応じて任意の姿勢で使用される。図1の例では、X方向は引戸30の見付け方向に沿っており、Y方向は引戸30の見込方向に沿っている。
【0010】
(構成)引戸装置100は、枠体10と、引戸30と、接続機構50と、を含む。引戸30は、X方向に移動することによって、建物壁面1をY方向に貫通するとともに建物壁面1に開口する建物開口部2を開閉可能である。ここでは枠体10に建物開口部2が設けられる例を示す。図1及び図4(a)は、引戸30によって建物開口部2を完全に閉じている全閉状態を示す。図2及び図4(b)は、引戸30によって建物開口部2を開閉する途中でかつ建物開口部2が部分的に閉じた途中閉状態を示し、図3及び図4(c)は、引戸30によって建物開口部2を完全に開いている全開状態を示す。
【0011】
引戸30は、接続機構50と協働して戸厚を変更可能である。詳しくは、引戸30は、全閉状態と途中閉状態との間を移行する過程で戸厚を変更し、途中閉状態と全開状態との間を移行する過程で戸厚を維持する。引戸30は、全閉状態から途中閉状態に移行する過程で戸厚を小さくし、途中閉状態から全閉状態に移行する過程で戸厚を大きくする。
【0012】
枠体10は、建物の躯体(不図示)に固定される。枠体10は、引戸30の周囲を囲み、引戸30の後述する裏側部材32を開閉方向に移動可能に支持する。図4(a)に示すように、枠体10は、戸厚方向の両側に設けられる一対の枠ユニット10aと、一対の枠ユニット10aを接続する接続枠10bを備える。枠ユニット10aは、上枠11と、下枠12と、一対の縦枠13と、を含む。これらは、矩形状に枠組みされる。上枠11は、枠体10の上部においてX方向に延びる。下枠12は、枠体10の下部においてX方向に延びる。一対の縦枠13は、上枠11及び下枠12の両端から両者を繋ぐようにZ方向に延びる。
【0013】
図4(a)に示すように、建物壁面1は、一対の枠ユニット10aそれぞれのY方向の外側を向く外側面3と、一対の枠ユニット10aそれぞれに装着される仕切り壁19とによって形成される。両側の仕切り壁19と右側の縦枠13とにより包囲される空間は、引戸30を収容する戸袋4を構成する。
【0014】
枠体10は、中間横枠14と、仕切り枠15と、キャッチャー16と、を含む。中間横枠14は、一対の縦枠13の間に設けられる。建物開口部2は、下枠12、左側の縦枠13、中間横枠14及び仕切り枠15の内側に形成される。仕切り枠15は、上枠11及び下枠12の中央部において上枠11と下枠12との間をZ方向に延びる。キャッチャー16は、左側の縦枠13に設けられる。
【0015】
中間横枠14の底部には、後述する接続機構50のドアハンガー53の各戸車53a(図9等参照)をX方向に走行可能に吊り下げて保持する戸車レール17が設けられる。下枠12には、引戸30の下端に設けられた振れ止め44をガイドするための第1のガイドレール18が設けられる。仕切り枠15と右側の縦枠13との間には、ガラス製の仕切り壁19が装着される。仕切り壁19としては、石膏ボード及び合板などの透明ではない材料で構成されるものが用いられてもよい。振れ止め44は、枠体10や床材に設けられてもよい。
【0016】
キャッチャー16は、閉位置にある引戸30を保持可能に構成される。ここで、「閉位置」とは、引戸装置100が全閉状態又は途中閉状態のときの引戸30の位置をいう。キャッチャー16は、閉位置を維持するように引戸30を保持する。キャッチャー16は、後述する引戸30の裏側部材32を保持した状態において裏側部材32の保持力よりも大きい開方向の荷重が裏側部材32に加わった場合に、裏側部材32を離脱するように構成される。本実施形態のキャッチャー16は、マグネットである。
【0017】
キャッチャー16は、閉位置にある引戸30の閉方向への更なる移動を規制可能である。したがって、キャッチャー16は、引戸30を保持する機能に加えて、引戸30のストッパーとしての機能を有する。
【0018】
引戸30は、枠体10の内側に配置される。引戸30は、戸厚を変更可能に構成される。引戸30は、戸厚方向の両側にそれぞれ設けられた表面材31と、両側の表面材31の間に設けられた裏側部材32と、を含む。引戸30は例えばケンドン動作により枠体10に装着される。引戸30の上部は中間横枠14のガイド溝(不図示)に嵌め込まれる。引戸30は、接続機構50を介してX方向に移動可能に枠体10に支持される。
【0019】
表面材31は、上框33と、下框34と、一対の縦框35と、ガイド枠36と、を含む。表面材31は、これらを矩形状に枠組みした枠体に面材37を取り付けたパネル部材である。上框33は、表面材31の上部においてX方向に延びる。下框34は、表面材31の下部においてX方向に延びる。一対の縦框35は、上框33及び下框34の両端から両者を繋ぐようにZ方向に延びる。ガイド枠36は、一対の縦框35の間をX方向に延びる。図9に示すように、ガイド枠36は、後述する移動機構58の第2のローラー62をガイドするための第2のガイドレール36aを有する。第2のガイドレール37は、ガイド枠36の下面にX方向にわたって形成される。ただし、これに限定されず、第2のガイドレール37は、戸厚変更ローラー65の可動域部分のみに形成されてもよい。表面材31は、裏側部材32に対して接続機構50を介して移動可能に支持される。
【0020】
表面材31の左側の縦框35は、利用者が引戸30を操作するための把持部38を有する。把持部35aは、左側の縦框35のZ方向の中央に形成された切欠部分38aに、利用者が手で掴むことができるように細長い棒状部材38bを設けることにより形成される。棒状部材38bは、切欠部分38aによって区切られた上側の縦框35と下側の縦框35とを繋ぐようにZ方向に延びる。
【0021】
把持部38を設けることにより、利用者が把持部38を掴んで引戸30に対して開閉方向に荷重を容易に付与できる。そのため、途中閉状態において引戸30を戸袋4に容易に収容できるとともに、全開状態において引戸30を戸袋4から開方向に容易に引き出すことができる。さらに、利用者が把持部38を掴んで引戸30に対して戸厚方向に荷重を容易に付与できるため、途中閉状態から全閉状態にするときに、表面材31を戸厚方向外側に容易に引っ張ることができる。
【0022】
裏側部材32は、表面材31の戸厚方向の裏側に配置され、枠体10に対して戸厚方向の荷重を伝達可能に接続される。裏側部材32は、開閉方向の荷重を受けることにより、引戸30を開閉方向に移動させるように構成される。裏側部材32は、枠体10に開閉方向に移動可能に支持される。裏側部材32は、後述する移動機構58を介して表面材31を戸厚方向に移動可能に支持する。裏側部材32は、金属製であり、全閉状態又は途中閉状態においてキャッチャー16によって保持される。
【0023】
裏側部材32は、上枠39と、下枠40と、一対の縦枠41と、中枠42と、ガイド部43と、を含む。上枠39は、裏側部材32の上部においてX方向に延びる。下枠40は、裏側部材32の下部においてX方向に延びる。一対の縦枠41は、上枠39及び下枠40の両端から両者を繋ぐようにZ方向に延びる。中枠42は、一対の縦枠41の間をX方向に延びる。下枠40の下面には、複数の振れ止め44がX方向にそれぞれ離れて配置される。振れ止め44は、枠体10の第1のガイドレール18に載せられる。
【0024】
ガイド部43は、裏側部材32の上枠39の両端の上面にそれぞれ設けられる。図9に示すように、ガイド部43は、後述する支持具54の第1のローラー57をガイドするための第3のガイドレール45を有する。
【0025】
左右両側の第3のガイドレール45は、開閉方向について所定の長さ寸法を有する。第1のローラー57が第3のガイドレール45の一方の端部から第3のガイドレール45に沿ってこの所定の長さ寸法分の距離を移動すると、第1のローラー57が第3のガイドレール45の他方の端部に接触する。この接触により、ガイド部43は、支持具54を介して開閉方向の荷重を受ける。
【0026】
接続機構50は、裏側部材32に対して表面材31を戸厚方向に移動可能に接続する。接続機構50は、表面材31に戸厚方向の荷重が入力されたときに、裏側部材32に対して表面材31を戸厚方向に移動させる。接続機構50は、移動体51と、戸厚変更機構52と、を含む。
【0027】
移動体51は、引戸30に対する可動域の末端位置にあるときに引戸30とともに開閉方向に移動可能に構成される。移動体51は、入力荷重を受けて引戸30に対してその可動域内で開閉方向に相対移動可能に構成される。移動体51は、ドアハンガー53と、支持具54と、接続具55と、接続部材56と、を含む。移動体51が引戸30に対して相対移動する距離は、第3のガイドレール45の長さ寸法に対応する。引戸30に対する移動体51の相対移動の可動域は、第3のガイドレール45によって定められる。
【0028】
ドアハンガー53は、開閉方向の荷重を受けることにより、開閉方向に移動可能に構成される。ドアハンガー53が開閉方向の荷重を受けると、ドアハンガー53の各戸車53aが戸車レール17上を走行する。これにより、引戸30が開閉方向に移動し、開閉動作が行われる。ドアハンガー53は、中間横枠14内に設けられる。
【0029】
支持具54は、ドアハンガー53と引戸30とを接続するとともに、開閉方向にスライド移動可能に引戸30を支持する。支持具54は、ドアハンガー53の両端にそれぞれ設けられる。支持具54の下端には、第1のローラー57が設けられる。第1のローラー57は、第3のガイドレール45に開閉方向にスライド移動可能に接続される。
【0030】
接続具55は、ドアハンガー53と接続部材56とを接続する。接続具55は、ドアハンガー53の中央部に設けられる。
【0031】
接続部材56には、接続具55を介して駆動装置20から開閉方向の荷重が付与される。接続部材56の両端は、戸厚変更機構52の後述する左右の荷重変換機構60にそれぞれ接続される。接続部材56は、両側の表面材31の間に配置される。
【0032】
ドアハンガー53、支持具54、接続具55及び接続部材56は、一体的に接続されるため、開閉方向に一体的に移動する。そのため、これらは、移動体51が引戸30に対してその可動域内で開閉方向に相対移動しているとき、すなわち第1のローラー57が第3のガイドレール45の両端部の間を移動しているとき、引戸30に対して開閉方向に相対移動する。第1のローラー57が第3のガイドレール45の端部に接触して移動体51が可動域の末端位置に達すると、この相対移動が停止する。移動体51が可動域の開方向側の末端位置にある状態、すなわち第1のローラー57が第3のガイドレール45の右端部に接触した状態では、ドアハンガー53、支持具54、接続具55及び接続部材56は引戸30と一体的に開閉方向に移動可能である。
【0033】
戸厚変更機構52は、移動機構58と、回転部材59と、荷重変換機構60と、を含む。戸厚変更機構52は、両側の表面材31の間に配置される。
【0034】
移動機構58は、表面材31に対して戸厚方向の荷重が入力されたときに表面材31を戸厚方向に移動させる。また、移動機構58は、戸厚方向の荷重が入力された場合、この戸厚方向の荷重を回転力に変換して、回転部材59に伝達する。一方で、移動機構58は、回転力が入力された場合、この回転力を戸厚方向の荷重に変換して、表面材31に伝達する。本実施形態の移動機構58は、上下方向及び開閉方向に間隔を開けて4つ配置される。
【0035】
図5(a)及び(b)に示すように、移動機構58は、第1の回転バー61a及び第2の回転バー61bと、を有する。移動機構58は、第1及び第2の回転バー61a及び61bの長さ方向の中央部を交差させることで十字型状に構成される。この交差部では、第1及び第2の回転バー61a及び61bが各々の挿入孔(不図示)を介して回転部材59によって接続される。
【0036】
第1の回転バー61aは、回転部材59と一体的に回転するように回転部材59に固定されて接続される。第1及び第2の回転バー61a及び61bの一端部には、ガイド枠36の第2のガイドレール36aによってガイドされる第2のローラー62が設けられる。第1及び第2の回転バー61a及び61bの他端部には、第1及び第2の回転バー61a及び61bをガイド枠36に対して回転可能に支持する支持軸63が設けられる。第1の回転バー61aは上側に設けられ、第2の回転バー61bは下側に設けられる。第2の回転バー61bは、中枠42の上に設けられる。
【0037】
一方の表面材31に戸厚方向の荷重が加わると、この表面材31を介して第1及び第2の回転バー61a及び61bの一端に戸厚方向の荷重が伝達される。これにより、第1及び第2の回転バー61a及び61bは、回転部材59を中心に互いに逆向きに回転運動する。この回転運動により、第1及び第2の回転バー61a及び61bの他端を介して他方の表面材31に戸厚方向の荷重が伝達される。また、この回転運動のX方向の力により、第1及び第2の回転バー61a及び61bの一端は、第2のローラー62を介して第2のガイドレール36aに沿ってX方向に移動する。一方、第1及び第2の回転バー61a及び61bの他端は、支持軸63によって支持されているため、X方向には移動しない。その結果、第1の回転バー61aと第2のガイドレール36aとがなす角度が変化し、両側の表面材31が戸厚方向に移動する。
【0038】
回転部材59は、棒状の部材であり、移動機構58及び荷重変換機構60の一方から入力された回転力を他方に伝達する。回転部材59の上端部は、荷重変換機構60の後述する第1のリンク部材64a及び第2のリンク部材64bに接続される。回転部材59は、裏側部材32の上枠39及び中枠42にそれぞれ形成された挿入孔(不図示)を通して裏側部材32に接続される。
【0039】
荷重変換機構60は、回転部材59から入力された回転力を開閉方向の荷重に変換して、移動体51に伝達する。また、荷重変換機構60は、移動体51から入力された開閉方向の荷重を回転力に変換して回転部材59に伝達する。荷重変換機構60の閉方向側の一端は回転部材59に接続され、荷重変換機構60の他端は接続軸65を介して接続部材56に接続される。左右両側の荷重変換機構60は接続部材56の両端に接続されるため、表面材31に戸厚方向の荷重を付加すると、左右両側の荷重変換機構60が同じ動作を行う。
【0040】
図7(a)及び(b)に示すように、荷重変換機構60は、細長い板状の第1~第4のリンク部材64a~64dを有するリンク機構である。第1~第4のリンク部材64a~64dは、同じ長さ寸法を有する。荷重変換機構60は、第1~第4のリンク部材64a~64dの各々を一辺とする四角形状に構成される。第1のリンク部材64a及び第4のリンク部材64dは互いに平行な状態を維持したまま動作し、第2のリンク部材64b及び第3のリンク部材64cは互いに平行な状態を維持したまま動作する。
【0041】
第1のリンク部材64aの一端及び第2のリンク部材64bの一端は、回転部材59によって接続される。第1のリンク部材64aの他端及び第3のリンク部材64cの一端は、ピン66aによって接続される。第2のリンク部材64bの他端及び第4のリンク部材64dの一端は、ピン66bによって接続される。第3のリンク部材64cの他端及び第4のリンク部材64dの一端は、接続軸65によって接続される。
【0042】
第1のリンク部材64aは、回転部材59と一体的に回転するように、回転部材59に固定されて接続される。したがって、回転部材59及び第1のリンク部材64aの一方が回転した場合、その回転運動は他方に伝達される。
【0043】
接続機構50は、移動機構58を支持する第1及び第2の支持部材67及び68を含む。第1の支持部材67は、回転部材59において中枠42の直下部分に設けられる。第2の支持部材68は、回転部材59において第1の回転バー61aの直上に設けられる。第1及び第2の支持部材67及び68により、中枠42を介して回転部材59を挟み込むように支持することにより回転部材59ひいては移動機構58の上下動が抑制される。
【0044】
(移動機構の動作)図5(a)及び(b)に示すように、両側の表面材31間の距離をL1とし、第1の回転バー61aと第2のガイドレール36aとがなす角度をθ1とする。図5(a)に示すように、全閉状態では、距離L1は最も大きく、角度θ1は最も小さい。
【0045】
図5(a)に示す全閉状態から図5(b)に示す途中閉状態に移行するときの移動機構58の動作について説明する。全閉状態において、例えば利用者が一方の表面材31を戸厚方向内側に押すことにより、一方の表面材31に戸厚方向内側の荷重が入力される。このとき、この表面材31を介して第1及び第2の回転バー61a及び61bにこの荷重が伝達される。その結果、第1及び第2の回転バー61a及び61bは、それぞれ、回転部材59を中心に時計回り及び反時計回りに回転する。これら回転運動により、第1及び第2の回転バー61a及び61bの他端を介して他方の表面材31に戸厚方向内側の荷重が伝達される。その結果、図5(a)に示すように、両側の表面材31には、第1及び第2の回転バー61a及び61bの両端部を介して、互いに近づく方向の力が加わる。これにより、角度θ1が大きくなるように第2のローラー62が第2のガイドレール36aに沿って閉方向に移動するとともに、両側の表面材31が互いに近づくように移動する。そのため、距離L1が小さくなる結果、引戸30の戸厚が小さくなる。その後、引戸30は途中閉状態となり、回転が停止する。図5(b)に示すように、途中閉状態では、角度θ1は最も大きく、距離L1は最も小さい。
【0046】
図6(a)に示す途中閉状態から図6(b)に示す全閉状態に移行するときの移動機構58の動作について説明する。途中閉状態において、例えば利用者が把持部38を掴んで一方の表面材31を戸厚方向外側に引っ張ることにより、一方の表面材31に戸厚方向外側の荷重が入力される。このとき、この表面材31を介して第1及び第2の回転バー61a及び61bにこの荷重が伝達される。その結果、第1及び第2の回転バー61a及び61bは、それぞれ、回転部材59を中心に反時計回り及び時計回りに回転する。これら回転運動により、第1及び第2の回転バー61a及び61bの他端を介して他方の表面材31に戸厚方向外側の荷重が伝達される。その結果、図6(a)に示すように、両側の表面材31には、第1及び第2の回転バー61a及び61bの両端部を介して、互いに離れる方向の力が加わる。これにより、角度θ1が大きくなるように第2のローラー62が第2のガイドレール36aに沿って開方向に移動するとともに、両側の表面材31が互いに離れるように移動する。そのため、距離L1が大きくなる結果、引戸30の戸厚が大きくなる。その後、引戸30は全閉状態となり、回転が停止する。図6(b)に示すように、全閉状態では、角度θ2は最も小さく、距離L1は最も大きい。
【0047】
なお、第1の回転バー61aの回転運動は、回転部材59に伝達される。その結果、回転部材59は、第1の回転バー61aの回転の回転方向と同じ方向に回転する。したがって、全閉状態から途中閉状態に移行するときには、第1の回転バー61a及び回転部材59はともに時計周りに回転する。一方で、全閉状態から途中閉状態に移行するときには、第1の回転バー61a及び回転部材59はともに反時計周りに回転する。
【0048】
(荷重変換機構の動作)図7(a)及び(b)に示すように、接続軸65及び回転部材59の間の距離をL2とし、第1のリンク部材64aとX方向軸とがなす角度をθ2とする。図7(a)に示すように、全閉状態では、距離L2は最も小さく、角度θ2は最も大きい。
【0049】
図7(a)に示す全閉状態から図7(b)に示す途中閉状態に移行するときの荷重変換機構60の動作について説明する。全閉状態において一方の表面材31に戸厚方向内側の荷重が入力されると、上述したように、第1の回転バー61aが時計回りに回転するとともに回転部材59が時計回りに回転する。回転部材59は第1のリンク部材64aに固定されて接続されるため、第1のリンク部材64aは回転部材59と一体的に時計回りに回転する。その結果、角度θ2が小さくなるとともに、距離L2が大きくなる。これに伴い、接続軸65が開方向に移動するため、接続部材56が開方向に移動する。その後、引戸装置100は途中閉状態となり、回転が停止する。図7(b)に示すように、途中閉状態では、距離L2は最も大きく、角度θ2は最も小さい。
【0050】
図8(a)に示す途中閉状態から図8(b)に示す全閉状態に移行するときの荷重変換機構60の動作について説明する。途中閉状態において一方の表面材31に戸厚方向外側の荷重が入力されると、上述したように、第1の回転バー61aが反時計回りに回転するとともに回転部材59が反時計回りに回転する。これにより、第1のリンク部材64aは回転部材59と一体的に反時計回りに回転する。その結果、角度θ2が大きくなるとともに、距離L2が小さくなる。これに伴い、接続軸65が閉方向に移動するため、接続部材56が閉方向に移動する。その後、引戸装置100は途中閉状態となり、回転が停止する。図8(b)に示すように、途中閉状態では、距離L2は最も小さく、角度θ2は最も大きい。
【0051】
(引戸の動作)引戸30が全閉状態から全開状態になり、再び全閉状態になるまでの引戸30の動作を説明する。
【0052】
図9、10(a)を参照すると、全閉状態では、裏側部材32がキャッチャー16によって保持され、第1のローラー57は第3のガイドレール45の左端に接触している。このとき、図10(a)に示すように、引戸30は、戸厚方向の両側の建物壁面1に対して面一になるような戸厚を有する。ここでの「面一になる」とは、戸厚方向両側の引戸30の表面材31と建物壁面1とが面一となる位置に配置されることをいう。
【0053】
全閉状態において、例えば利用者が表面材31を戸厚方向内側に押すことにより、表面材31に対して戸厚方向内側に荷重が入力されると、表面材31を介して移動機構58にこの戸厚方向内側の荷重が伝達される。これにより、第1及び第2の回転バー61a及び61bは、それぞれ、回転部材59を中心に時計回り及び反時計回りに回転する。そのため、両側の表面材31に対して、第1及び第2の回転バー61a及び61bを介して互いに近づく方向の力が加わる。これにより、第2のローラー62が第2のガイドレール36aに沿って閉方向に移動するとともに、両側の表面材31が互いに近づくように移動する。その結果、戸厚が小さくなる。
【0054】
また、回転部材59は、第1の回転バー61aとともに時計周りに回転する。この回転運動は、荷重変換機構60に伝達される。その結果、荷重変換機構60では、第1のリンク部材64aが回転部材59と一体的に時計回りに回転する。これに伴い、接続軸65が開方向に移動するため、接続部材56が開方向に移動するとともに、第1のローラー57が第3のガイドレール45に沿って開方向に移動する。一方、裏側部材32はキャッチャー16によって保持されているため、引戸30は移動しない。その結果、移動体51は、引戸30に対して開方向に相対移動する。
【0055】
その後、第1のローラー57が第3のガイドレール45の右端に接触する。これにより、上記相対移動が停止し、戸厚が最も小さくなり、図10(b)及び12に示すように、引戸装置100が途中閉状態になる。
【0056】
その後、例えば利用者が把持部38を掴んで引戸30に対して開方向に荷重を入力する。この引戸30に入力された力がキャッチャー16による裏側部材32の保持力よりも大きくなった場合、キャッチャー16による裏側部材32の保持が解除される。その後、利用者が引戸30に対して開閉方向に荷重を加え続けることにより、図13に示すように、移動体51及び引戸30は、一体的に開方向に移動する。なお、図13では、簡略化のため、仕切り枠15を省略している。その後、図10(c)及び14に示すように、引戸装置100は全開状態になる。
【0057】
全開状態において、例えば利用者が把持部38を掴んで引戸30を閉方向に引き出すことにより、引戸30に対して閉方向の荷重が入力される。この荷重は、表面材31から移動機構58を介して裏側部材32に伝達される。その結果、図15に示すように、移動体51及び引戸30は、一体的に閉方向に移動する。その後、裏側部材32がキャッチャー16に接触して保持され、図11(b)及び16に示すように、引戸装置100が途中閉状態になる。
【0058】
途中閉状態において、例えば利用者が把持部38を掴んで表面材31を戸厚方向外側に引き出すことにより、表面材31に対して戸厚方向外側の荷重が入力される。この戸厚方向外側の荷重は、表面材31を介して移動機構58に伝達される。これにより、第1及び第2の回転バー61a及び61bは、それぞれ、回転部材59を中心に反時計回り及び時計回りに回転する。そのため、両側の表面材31に対して、第1及び第2の回転バー61a及び61bを介して互いに離れる方向の力が加わる。これにより、第2のローラー62が第2のガイドレール36aに沿って開方向に移動するとともに、両側の表面材31が互いに離れるように移動する。その結果、戸厚が大きくなる。
【0059】
また、回転部材59は、第1の回転バー61aとともに反時計周りに回転する。この回転運動は、荷重変換機構60に伝達される。その結果、荷重変換機構60では、第1のリンク部材64aが回転部材59と一体的に反時計回りに回転する。これに伴い、接続軸65が閉方向に移動するため、接続部材56が閉方向に移動するとともに、第1のローラー57が第3のガイドレール45に沿って閉方向に移動する。一方、裏側部材32はキャッチャー16によって保持されているため、引戸30は移動しない。その結果、移動体51は、引戸30に対して閉方向に相対移動する。
【0060】
その後、第1のローラー57が第3のガイドレール45の左端に接触する。これにより、上記相対移動が停止し、戸厚が最も大きくなり、図11(c)に示すように、引戸装置100が全閉状態になる。
【0061】
(作用及び効果)本実施形態の引戸装置100は、戸厚を変更可能な引戸30を含む。これにより、全開状態では引戸30が戸袋4内に収容され、建物壁面1と引戸30とが面一になる。よって、見た目がスッキリした美しい建物開口部2が実現可能である。
【0062】
ところで、これを実現する1つの技術として、特許文献1に記載の構成がある。特許文献1に記載の構成では、傾斜ガイド面によるガイド作用を利用して戸厚を小さくする。特に、特許文献1に記載の引戸装置では、引戸の開放動作中の引戸を傾斜ガイド面と接触させることにより、引戸に対して傾斜ガイド面から戸厚寸法を小さくする荷重が入力される。その結果、戸厚が小さくなる。
【0063】
しかし、この構成では、引戸の開放動作中に引戸に戸厚方向の入力荷重を付与するように、引戸、傾斜ガイド面及び引戸のガイドレール等を設計する必要がある。そのため、特許文献1に記載の引戸装置では、引戸、傾斜ガイド面及びガイドレール等が構造上の制約を受けやすい。したがって、引戸の設計の自由度が小さいという問題があった。
【0064】
本実施形態の引戸装置100は、枠体10に対して戸厚方向の荷重を伝達可能に接続される裏側部材32を含む引戸30と、表面材31に戸厚方向の荷重が入力されたときに裏側部材32に対して表面材31を戸厚方向に移動可能に接続する接続機構50と、を含む。本構成によると、表面材31に戸厚方向の荷重が入力されても、この戸厚方向の荷重が裏側部材32を介して枠体10に伝達される。そのため、裏側部材31の戸厚方向の移動が抑制される。一方で、表面材31は接続機構50を介して戸厚方向に移動可能に裏側部材32に接続されるため、表面材31が戸厚方向に自由に移動できる。したがって、全閉状態でも戸厚方向に荷重を入力すれば戸厚変更動作がなされるため、戸厚変更のために引戸の開放動作中に引戸30に入力荷重を付与する必要性が低減される。よって、例えば、特許文献1に記載の引戸装置のように、引戸に面取り部を設け、開放動作中にその面取り部が当たる傾斜ガイド面を戸袋口近傍に設ける必要がない。そのため、本実施形態の引戸装置100は、構造上の制約を受けにくい。その結果、引戸の設計の自由度が向上する。
【0065】
表面材31は、裏側部材32に対して戸厚方向の両側に設けられ、接続機構50は、両側の表面材31の一方に戸厚方向の荷重が入力されたときに、表面材を戸厚方向に移動させる。本構成によると、一方の表面材31に戸厚方向の荷重を入力するだけで、戸厚を変更できる。
【0066】
接続機構50は、両側の表面材31の一方に戸厚方向の荷重が入力されたときに、両側の表面材31の両方を互いに反対方向に移動させる。本構成によると、一方の表面材31に戸厚方向の荷重を入力するだけで両側の表面材31が互いに反対方向に移動するため、見た目に統一感がある戸厚変更動作が実現される。
【0067】
表面材31は、裏側部材32によって接続機構50を介して戸厚方向に移動可能に支持される。本構成によると、戸厚方向の移動のために例えば表面材31の下部に表面材31を支持するローラー等を設ける必要がない。その結果、表面材31を床等に対して戸厚方向に自由に移動させ易い。
【0068】
(変形例)全開状態のときに利用者の手で把持部38を掴んで直接引戸30を閉鎖する構成を示したが、これに限定されない。例えば、移動体51に繋げられたひも状部材を中間横枠14から出したような構成が利用されてもよい。これにより、例えば、全開状態のときに利用者がこのひも状部材を閉方向に引っ張ることにより、移動体51に閉方向の荷重を入力できる。その結果、移動体51を介して引戸30に閉方向の荷重が伝達されるため、引戸30が閉方向に移動する。
【0069】
引戸装置100が途中閉状態から全閉状態に移行するときに、把持部38を用いて戸厚方向外側の荷重を表面材31に入力する例を示したが、これに限定されない。例えば、例えば、上記ひも状部材を移動体51に接続した構成が利用されてもよい。これにより、移動体51に閉方向の荷重を入力可能となる。その結果、後述するように、引戸装置100を途中閉状態から全閉状態に移行させて戸厚を大きくすることができる。以下、その理由を説明する。
【0070】
途中閉状態において移動体51に閉方向の荷重を入力した場合、閉方向の入力荷重により、第1のローラー57が第3のガイドレール45に沿って閉方向に移動するため、移動体51が閉方向に移動する。一方、裏側部材32はキャッチャー16によって保持されているため、引戸30は移動しない。その結果、移動体51は、引戸30に対して閉方向に相対移動する。この閉方向への相対移動により、荷重変換機構60では、距離L2が小さくなるとともに、角度θ2が大きくなる。その結果、回転部材59が反時計回りに回転する。この反時計回りの回転運動は、回転部材59を介して移動機構58に伝達される。
【0071】
移動機構58の第1の回転バー61aは、この反時計回りの回転を受けて、回転部材59を中心に反時計回りに回転する。これにより、両側の表面材31に対して互いに離れる方向の力が加わる。その結果、両側の表面材31は互いに離れる方向に移動するため、戸厚が大きくなる。その後、第1のローラー57が第3のガイドレール45の左端に接触すると、上記相対移動が停止し、引戸装置100が全閉状態になる。
【0072】
以上から、上記ひも状部材を用いて移動体51に閉方向の荷重を入力した場合であっても、引戸装置100を途中閉状態から全閉状態に移行させて戸厚を大きくすることができることが理解される。
【0073】
上記ひも状部材を用いる場合、ひも状部材と移動体51との間に入力荷重を開閉方向の荷重に変換するプーリなどが設けられてもよい。これにより、途中閉状態において移動体51に閉方向の荷重を入力しにくい場合であっても、ひも状部材に加えた荷重がこのプーリによって閉方向の荷重に変換されて移動体51に入力される。したがって、移動体51に閉方向の荷重を入力しやすくなる。
【0074】
なお、移動体51に開閉方向の荷重を入力する構成は、上記ひも状部材に限定されない。例えば、移動体51を開閉方向に移動させるためのモーター等を有する電動駆動装置が用いられてもよい。ここで、例えばこの電動駆動装置を用いて移動体51に開閉方向の荷重を入力する構成では、例えば全閉状態で停電になると、電動駆動装置が動作できずに移動体51を開閉方向に移動できなくなる。また、全閉状態では戸厚が大きいため、利用者の手で引戸30に開閉方向の荷重を加えて引戸30を開閉方向に移動させても、図17に示すように、両側の表面材31が両側の仕切り枠15に衝突してしまう。そのため、上記電動駆動装置を用いた構成では、停電時に引戸30が開閉不能になる。一方で、本実施形態では、全閉状態で停電した場合であっても、表面材31に戸厚方向内側の荷重を入力すれば戸厚が小さくなり、引戸30が開閉方向に移動可能になる。その結果、停電になった場合でも、容易に引戸30を開閉できる。
【0075】
キャッチャー16を使用する例を示したが、これに限定されず、例えば、全閉状態から途中閉状態に移行するときに、利用者の手によって引戸30を保持するようにしてもよい。また、キャッチャー16は、引戸30を保持できればどの箇所に設けられてもよく、例えば中間横枠14に設けられてもよい。キャッチャー16は、例えば、ローラー、挟み込み等であってもよい。
【0076】
支持具54は、ドアハンガー53の左右両側に設けられているが、ドアハンガー53に1つだけ支持具54が設けられてもよい。或いは、ドアハンガー53に支持具54が3つ以上設けられてもよい。
【0077】
裏側部材32は、非金属製としてもよい。この場合、途中閉状態においてキャッチャー16と接触するように、金属製のキャッチャー受け部材を裏側部材32に設ければよい。また、裏側部材32は、中枠42を有さなくてもよい。
【0078】
移動機構58については、第1及び第2の回転バー61a及び61bを用いた例を説明したが、これに限定されず、接続部材56の直線運動を回転運動に変換するラックアンドピニオン機構などの歯車機構が利用されてもよい。
【0079】
荷重変換機構60については、第1~第4のリンク部材64a~64dを用いた例を説明したが、これに限定されず、回転部材59の回転力が伝達され2本のチェーンがジッパーのように噛み合うことにより1本の柱状になって表面材31の押し・引きができるジップチェーン等が利用されてもよい。
【0080】
移動機構58は、第2の回転バー61bを有さなくてもよい。
【0081】
移動機構58、回転部材59及び荷重変換機構60は、接続部材56の左右両側に2組設けられているが、接続部材56に1組だけこれらが設けられてもよい。或いは、接続部材56にこれらが3組以上設けられてもよい。
【0082】
移動機構58は、回転部材59の上下両側にそれぞれ設けられているが、回転部材59に1つだけ移動機構58が設けられてもよい。或いは、回転部材59に移動機構58が3つ以上設けられてもよい。
【0083】
ドアハンガー53、支持具54、接続具55及び接続部材56はそれぞれ別々の部材として一体的に接続されているが、これらは1つの部材にまとめて構成されてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…建物壁面、2…建物開口部、3…外側面、4…戸袋、10…枠体、10a…枠ユニット、10b…接続枠、11…上枠、12…下枠、13…縦枠、14…中間横枠、15…仕切り枠、16…キャッチャー、17…戸車レール、18…第1のガイドレール、19…仕切り壁、30…引戸、31…表面材、32…裏側部材、33…上框、34…下框、35…縦框、36…ガイド枠、36a…第2のガイドレール、37…面材、38…把持部、38a…切り欠き部、38b…棒状部材、39…上枠、40…下枠、41…縦枠、42…中枠、43…ガイド部、44…振れ止め、45…第3のガイドレール、50…接続機構、51…移動体、52…戸厚変更機構、53…ドアハンガー、54…支持具、55…接続具、56…接続部材、57…第1のローラー、58…移動機構、59…回転部材、60…荷重変換機構、61…回転バー、62…第2のローラー、63…支持軸、64…リンク部材、65…接続軸、66…ピン、67…第1の支持部材、68…第2の支持部材、100…引戸装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17