(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】止血器具
(51)【国際特許分類】
A61B 17/135 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A61B17/135
(21)【出願番号】P 2020056537
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】布施 光輝
【審査官】近藤 裕之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110327093(CN,A)
【文献】特表2005-511237(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01455659(EP,A1)
【文献】国際公開第03/051206(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0114881(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢体の止血すべき部位に配置するように構成された拡張部材と、
前記拡張部材を前記肢体に固定するように構成された固定部材と、を備え、
前記拡張部材は、拡張変形可能な拡張部と、前記拡張部の少なくとも一部の表面を覆う被覆部材と、前記拡張部と前記被覆部材との間の空間部に配置される薬剤層と、を有し、
前記被覆部材は、前記肢体に前記拡張部材を固定し、かつ、前記拡張部材を拡張させた状態で、前記薬剤層に含まれる薬剤を前記肢体の皮膚表層側へ放出可能にする放出部を有
し、
前記被覆部材は、前記拡張部の前記表面に固定されたシート部材と、前記シート部材に設けられた貫通孔と、を有し、
前記放出部は、前記拡張部材の拡張に伴って前記貫通孔を介した前記薬剤層と前記拡張部材の外部との連通を可能にする弁機構で構成されており、
前記弁機構は、第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有し、
前記第1領域は、少なくとも1以上のスリット部又は孔部を有し、
前記第2領域は、前記第1領域よりも硬い材料で構成される、止血器具。
【請求項2】
前記第1領域は、前記スリット部又は前記孔部を形成するシート状の弁体で構成される、請求項
1に記載の止血器具。
【請求項3】
前記弁機構は、前記拡張部材の前記第1領域と対応する位置に配置され、前記拡張部が拡張した状態で前記第1領域と接触するように構成された凸部を有する、請求項
1または請求項
2に記載の止血器具。
【請求項4】
前記凸部は、内部に空間を有する筒状部材から構成され、
前記筒状部材の側面には、前記空間と連通する複数の側孔が設けられている、請求項
3に記載の止血器具。
【請求項5】
前記薬剤は、アルギン酸を含有する溶液である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の止血器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止血器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者の手や腕等の肢体の血管に形成した穿刺部位を介して各種の医療用長尺体(例えば、カテーテル)を血管内に導入し、病変部位に対する処置や治療を行う手技が知られている。このような手技を行った場合、術者等は、穿刺部位から医療用長尺体を抜去する際、穿刺部位を止血する。
【0003】
穿刺部位の止血に使用される止血器具として、肢体に巻き付ける帯体を備える固定部材と、帯体に連結されており、流体を注入することにより拡張して、穿刺部位を圧迫するバルーン等の拡張部材と、を有するものが提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の止血器具を使用した止血方法では、術者等は、止血器具を患者の肢体に固定した状態で拡張部材内部に流体を注入して拡張させることにより、穿刺部位に対して圧迫力を付与する。術者等は、拡張部材を利用して穿刺部位に対して所定期間に亘って圧迫力を付与することにより、穿刺部位を圧迫止血することができる。
【0006】
例えば、肢体に形成した穿刺部位を止血する処置において、特許文献1に記載された止血器具を使用した圧迫止血を実施しつつ、各種の薬効を発現する薬剤を利用することにより、穿刺部位を効果的に止血することが可能であると考えられる。このような止血方法として、拡張部材を備える止血器具とともに、薬剤が搭載された創傷治癒用の被覆材を併用する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、止血器具の拡張部材に被覆材を固定し、被覆材を穿刺部位に押し付ける方法では、拡張部材の拡張時、患者の皮膚表面の凹凸により、被覆材が穿刺部位に密着せず、被覆材に搭載された薬剤の十分な薬効を得ることができない可能性がある。また、被覆材が拡張部材の表面に配置されるため、穿刺部位に拡張部材を配置する前段階で、誤操作により、被覆材の一部が擦過等で剥れる可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、穿刺部位の圧迫止血を可能にする拡張部材を備えるとともに、薬剤によって傷口修復効果や止血効果の向上を図ることができる止血器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する止血器具は、肢体の止血すべき部位に配置するように構成された拡張部材と、前記拡張部材を前記肢体に固定するように構成された固定部材と、を備え、前記拡張部材は、拡張変形可能な拡張部と、前記拡張部の少なくとも一部の表面を覆う被覆部材と、前記拡張部と前記被覆部材との間の空間部に配置される薬剤層と、を有し、前記被覆部材は、前記肢体に前記拡張部材を固定し、かつ、前記拡張部材を拡張させた状態で、前記薬剤層に含まれる薬剤を前記肢体の皮膚表層側へ放出可能にする放出部を有し、前記被覆部材は、前記拡張部の前記表面に固定されたシート部材と、前記シート部材に設けられた貫通孔と、を有し、前記放出部は、前記拡張部材の拡張に伴って前記貫通孔を介した前記薬剤層と前記拡張部材の外部との連通を可能にする弁機構で構成されており、前記弁機構は、第1領域と、前記第1領域を囲む第2領域と、を有し、前記第1領域は、少なくとも1以上のスリット部又は孔部を有し、前記第2領域は、前記第1領域よりも硬い材料で構成される。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成した止血器具は、拡張部材が患者の肢体に固定された状態で拡張した際、放出部を介し、薬剤層に含まれる薬剤を患者の肢体の皮膚表層側へ放出する。具体的には、拡張部材は、術者等が拡張部材を拡張させた際、拡張部が変形し、拡張部と被覆部材との間に位置する空間部に圧迫力を付与することで、放出部を介して空間部に配置された薬剤層の薬剤を放出する。それにより、術者等は、拡張部材を拡張し、被覆部材を患者の肢体の皮膚表層側に押し付けた状態で、穿刺部位に対し、空間部に配置された薬剤層の薬剤を放出させることができる。そのため、術者等は、患者の肢体の皮膚表層側に被覆部材を押し付けた状態で、穿刺部位周辺に薬剤を投与できるため、穿刺部位に対して適切に薬剤を放出でき、止血器具による穿刺部位の止血効果を効果的に高めることができる。また、上記のように構成した止血器具は、薬剤が拡張部材の拡張時に穿刺部位に放出されるため、使用前の擦過等による薬剤の剥れを防止しつつ、穿刺部位に衛生的に薬剤を放出できる。また、上記のように構成された止血器具は、薬剤が拡張部と被覆部材の間の空間部に保持されるため、被覆材等に染み込ませて使用することが困難であるタンパク質を有効成分とするバイオ医薬品等も薬剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る止血器具を示す図であり、固定部材の帯体の内面側から見た平面図である。
【
図2】
図1に示す矢印2A-2A線に沿う断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る止血器具を患者の肢体に装着した際の様子を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る止血器具の使用例を模式的に示す断面図であり、
図4に示す矢印5A-5Aに対応する断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る止血器具の使用例を模式的に示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る止血器具の使用例を模式的に示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る止血器具の使用例を模式的に示す断面図である。
【
図19】放出部の変形例4の機能を説明するための断面図である。
【
図20】放出部の変形例4の機能を説明するための断面図である。
【
図21】放出部の変形例4の機能を説明するための断面図である。
【
図22】放出部の変形例4の機能を説明するための断面図である。
【
図23】放出部の変形例4の機能を説明するための断面図である。
【
図26】第2実施形態に係る止血器具を示す図であり、固定部材の本体部の外面側から見た平面図である。
【
図27】第2実施形態に係る止血器具を患者の肢体に装着した際の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態及び変形例を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0013】
(第1実施形態)
図1~
図3は、第1実施形態に係る止血器具100の各部の構成を説明するための図、
図4~
図8は、止血器具100の使用例を説明するための図である。
【0014】
<止血器具>
第1実施形態に係る止血器具100は、
図4、
図5~
図8に示すように、治療や検査等を行うカテーテル等を血管(例えば、橈骨動脈)内に挿入する目的で、前腕部A(「肢体」に相当)に形成された穿刺部位(「止血すべき部位」に相当)pに留置していたイントロデューサーのシースチューブを抜去する際、穿刺部位pを止血するための医療器具として構成している。
【0015】
本実施形態では、止血器具100を装着する肢体として前腕部Aを例示している。ただし、止血器具を装着する肢体は、例えば、後述する実施形態で説明するように、患者の前腕部Aよりも手指側に位置する手(例えば、左手)Hであってもよい(
図27を参照)。
【0016】
止血器具100は、
図1、
図2、
図3、
図4を参照して概説すると、前腕部Aの穿刺部位pに配置するように構成された拡張部材120と、拡張部材120を前腕部Aに固定するように構成された固定部材110と、を備える。
【0017】
<固定部材>
固定部材110は、
図1、
図4、
図8に示すように、患者の前腕部Aに巻き付けるように構成された帯体111と、帯体111に配置された連結部112a、112bと、を備える。
【0018】
図1には帯体111の内面111a側から見た止血器具100の平面図を示している。帯体111の内面111aは止血器具100を患者の手Hに装着した際、患者の前腕部Aの皮膚表層Af(
図5~
図8を参照)に向い合うように配置される側の面である。帯体111の外面111bは、内面111aの反対側の面である。
【0019】
帯体111は、例えば、可撓性を備える部材で構成することができる。帯体111を構成する材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のようなポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の各種熱可塑性エラストマー、あるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)を用いることができる。
【0020】
図1に示すように、第1連結部112aは、帯体111の長手方向の一端部(
図1の下側に位置する端部)付近に配置している。また、第1連結部112aは、帯体111の内面111aに配置している。
【0021】
第2連結部112bは、帯体111の長手方向の他端部(
図1の上側に位置する端部)付近に配置している。また、第2連結部112bは、帯体111の外面111bに配置している。
【0022】
第1連結部112aと第2連結部112bは、互いに連結分離可能な構成を有する。各連結部112a、112bは、例えば、面ファスナーで構成することができる。本実施形態では、第1連結部112aを面ファスナーの雌側で構成しており、第2連結部112bを面ファスナーの雌側で構成している。
【0023】
術者等は、止血器具100を患者の前腕部Aに装着する際、拡張部材120が接続された帯体111の内面111a側を患者の前腕部Aの皮膚表層Afに向かい合わせて配置した状態で、帯体111を患者の前腕部Aに巻き付ける。術者等は、帯体111を患者の前腕部Aの皮膚表層Afに巻き付けた状態で、帯体111に配置された各連結部112a、112b同士を接触させて連結する。術者等は、各連結部112a、112b同士を連結することにより、拡張部材120が接続された帯体111を患者の前腕部Aに固定することができる。
【0024】
各連結部112a、112bの構造は、止血器具100を患者の前腕部Aに装着した状態を維持することが可能であれば、特に限定されない。各連結部112a、112bは、例えば、面ファスナー以外で構成してもよい。また、本実施形態のように各連結部112a、112bを面ファスナーで構成する場合においても、雌側や雄側は任意に入れ替えることができる。また、帯体111において各連結部112a、112bを配置する位置や連結部の個数等も特に限定されない。
【0025】
図2に示すように、帯体111には、支持部115を設けている。支持部115は、帯体111の長手方向の中央付近に配置された保持部材115aと、保持部材115aと帯体111との間に保持された支持板115bと、を有する。
【0026】
保持部材115aは、帯体111の外面111bに接続している。保持部材115aは、帯体111の外表面111bとの間に支持板115bを保持可能にする隙間部を形成している。支持板115bは、支持板115bの長手方向(
図2の上下方向)の少なくとも一部に形成された平坦な形状の部分と、帯体111の内面111a側に凹状に湾曲した湾曲部と、を有する。支持板115bは、例えば、帯体111よりも硬質な材料で構成することができる。なお、支持板115bの具体的な断面形状や材質等は特に限定されない。
【0027】
支持板115bは、拡張部130を拡張させた際、拡張部130が患者の前腕部Aの皮膚表層Afから離れる方向へ拡張することを抑制する。そのため、止血器具100は、拡張部130が拡張した際、拡張部130が固定された患者の前腕部Aに対して圧迫力を集中させることができる。
【0028】
帯体111、保持部材115a、及び支持板115bは、術者等が帯体111の外面111b側から拡張部材120を目視した際に、後述するマーカー部135(
図4を参照)を視認できるようにするために、透明、半透明、有色透明等で構成することが好ましい。
【0029】
<拡張部材>
拡張部材120は、
図1、
図2、
図3、
図7、
図8に示すように、拡張変形可能な拡張部130と、拡張部130の少なくとも一部の第1表面131aを覆う被覆部材160と、拡張部130と被覆部材160との間の空間部190に配置される薬剤層190Aと、を有する。
【0030】
<拡張部>
拡張部130は、流体の注入により拡張されるバルーンで構成してる。拡張部130は、
図3に示すように、流体が注入可能な内部空間133を有する。
【0031】
拡張部130において被覆部材160が接続された第1表面131aは、拡張部130を患者の前腕部Aに配置した際、患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に配置される面の外表面である。拡張部130の第2表面131bは、第1表面131aの反対側に位置する面の外表面であり、帯体111の内面111aに対向するように配置される面である。
【0032】
拡張部130の第2表面131bには、拡張部130よりも外形が小さく、かつ、変形可能な補助部材150を接続している。補助部材150は、流体の注入により拡張されるバルーンで構成している。
【0033】
補助部材150は、流体が注入可能な内部空間153を有する。補助部材150の第1表面151aは、拡張部130の第2表面131bに接続している。補助部材150の第2表面151bは、帯体111の内面111aに接続している。
【0034】
補助部材150は、例えば、
図2に示すように、帯体111の長手方向の一端部(
図2の上側に位置する端部)側の任意の位置に配置することができる。補助部材150は、補助部材150の一端部(
図3の右側の端部)付近が帯体111と接続されている。
【0035】
図3に示すように、拡張部130の内部空間131と補助部材150の内部空間151は連通部140を介して連通している。連通部140は、拡張部130に形成された孔部と補助部材150に形成された孔部により構成している。
【0036】
拡張部130は、連通部140の周囲で補助部材150と接続している。また、補助部材150は、帯体111と接続している。そのため、拡張部130は、補助部材150を介して帯体111と接続されている。補助部材150と帯体111及び拡張部130と補助部材150の各々は、例えば、融着や接着剤により接続することができる。
【0037】
拡張部130及び補助部材150は、例えば、略矩形形状に形成された二つのシート状の部材の間に各内部空間131、151を形成した状態で、二つのシート状の部材の外周縁部を接合することにより形成することができる。なお、拡張部130及び補助部材150は、流体の注入及び排出に伴って拡張及び収縮可能に構成される限り、具体的な構造は特に限定されない。
【0038】
拡張部130及び補助部材150の構成材料としては、例えば、帯体111の材料として例示したものと同一の材料を用いることができる。
【0039】
拡張部130及び補助部材150は、例えば、平面視における外形を略矩形に形成することができる。ただし、拡張部130及び補助部材150の具体的な外形は特に限定されない。
【0040】
拡張部130の内部空間131は、後述する注入部200(
図1、
図4を参照)が備えるチューブ203の内腔と連通している。なお、チューブ203は、補助部材150の内部空間151に接続してもよい。
【0041】
術者等がチューブ203を介して拡張部130の内部空間131内へ流体(例えば、空気)を注入することにより、拡張部130及び補助部材150を拡張させることができる。
【0042】
術者等は、止血器具100を患者の前腕部Aに装着した状態(
図4を参照)で、拡張部130を拡張させることにより、穿刺部位pに対して圧迫力を付与することができる。また、術者等が拡張部130とともに補助部材150を拡張させると、補助部材150によって拡張部130が付与する圧迫力の方向を、穿刺部位pに向かう方向に調整することができる。そのため、術者等は、拡張部130により穿刺部位pに対して効果的に圧迫力を付与することができる。
【0043】
なお、止血器具100は、補助部材150を有していなくてもよい。また、止血器具100が補助部材150を有する場合においても、補助部材150は、例えば、拡張変形可能なバルーン以外の部材で構成することが可能である。
【0044】
図2、
図3に示すように、拡張部130には、穿刺部位pに対して拡張部材120を位置合わせするためのマーカー部135を配置している。
【0045】
マーカー部135は、例えば、拡張部材120が収縮した状態(
図2、
図3に示す状態)で、拡張部130の面方向の中心部に位置するように設けることができる。
【0046】
マーカー部135は、例えば、拡張部130の第2表面131bに設けることができる。
【0047】
なお、マーカー部135は、例えば、拡張部130の内部空間131側に位置する各表面131a、131bの内表面や、帯体111の内面111aに配置することも可能である。
【0048】
マーカー部135は、マーカー部135全体が有色で形成された矩形形状のマーカーで形成している。ただし、マーカー部135は、例えば、透明な中心部と、その中心部を囲む有色の線状の枠部とから構成されてもよい。なお、マーカー部135の具体的な形状、色、止血器具100の各部への形成方法等は特に限定されない。
【0049】
<被覆部材>
図2及び
図3に示すように、被覆部材160は、拡張部130の第1表面131aに固定されたシート部材161と、シート部材161に設けられた貫通孔163と、を有する。
【0050】
シート部材161の外周縁部は、拡張部130の第1表面131aの外周縁部に接続している。シート部材161と拡張部130を接続する方法は、例えば、融着や接着を採用することができる。
【0051】
シート部材161の平面視の外形は、拡張部130の平面視の外形と略同一に形成することができる。本実施形態では、拡張部130の平面視の外形が略矩形であるため、シート部材161の平面視の外形も略矩形に形成している。また、シート部材161は拡張部130と略同一の大きさで形成することができる。
【0052】
シート部材161の貫通孔163は、シート部材161の平面視の略中心位置に配置している。本実施形態では、貫通孔163は、拡張部130の中心部に配置されたマーカー部135と平面視上において重なる位置に配置している。
【0053】
貫通孔163は、平面視において円形に形成している。ただし、貫通孔163の平面視における形状は、矩形、楕円形、その他の形状等であってもよい。
【0054】
シート部材161は、例えば、可撓性を備える材料で構成することができる。シート部材161の構成材料としては、例えば、帯体111の材料として例示したものと同一の材料を用いることができる。
【0055】
被覆部材160は、
図4、
図5~
図8に示すように、前腕部Aに拡張部材120を固定し、かつ、拡張部材120を拡張させた状態で、薬剤層190Aから前腕部Aの皮膚表層Af側へ薬剤層190Aに含まれる薬剤dを放出可能にする放出部170を有する。
【0056】
本実施形態では、放出部170は、
図7、
図8に示すように、拡張部材120の拡張に伴って、貫通孔163を介した薬剤層190Aと拡張部材120の外部(空間部190の外部)との連通を可能にする弁機構180で構成している。
【0057】
弁機構180は、第1領域181と、第1領域181を囲む第2領域182と、を有する。
【0058】
第1領域181は、少なくとも1以上のスリット部181aを有する。
【0059】
第2領域182は、第1領域181よりも硬い材料で構成することができる。第2領域182を構成する材料としては、例えば、塩化ビニル、シリコーンゴム、天然ゴムを用いることができる。
【0060】
第2領域182は、貫通孔163の内周側に配置された円環状の部材で構成している。第2領域182の中心には、第2領域182を貫通する孔部が形成されている。
【0061】
第1領域181は、スリット部181aを形成するシート状の弁体185で構成している。
【0062】
シート状の弁体185は、第1シート185aと第2シート185bを有する。第1シート185a及び第2シート185bは、第2領域182に接続している。
【0063】
本実施形態では、
図3に示すように、各シート185b、185aを空間部190内に配置している。ただし、各シート185a、185bは、空間部190の外部(シート部材161の皮膚表層Af側に配置される外表面)に配置してもよい。
【0064】
第1シート185a及び第2シート185bは、
図5に示すように、第2領域182の中央付近の位置で、互いに重なるように配置される。各シート185a、185b同士が重ねられた部分には、薬剤dの放出を可能にする隙間状のスリット部181aが形成されている。
【0065】
第1シート185a及び第2シート185bの外形は、例えば、矩形(例えば、長方形や正方形)に形成することができる。第1シート185a及び第2シート185bは、シート状の弁体185が閉じた状態で各シート185a、185bにより貫通孔163が覆われるように被覆部材160に配置されている(
図4を参照)。
【0066】
なお、シート状の弁体185を構成する各シート185a、185bの外形、大きさ、厚み、配置等は、拡張部材120の拡張に伴ってシート状の弁体185のスリット部181aが押し広げられることにより、薬剤層190Aから薬剤dを放出することが可能な限り、特に限定されない。
【0067】
第1シート185aは、第1シート185aの外周縁部が第2領域182と接続されている。同様に、第2シート185bは、第2シート185bの外周縁部が第2領域182と接続されている。
【0068】
各シート185a、185bの構成材料としては、第2領域182と同様に、例えば、シリコーンゴム、天然ゴム、塩化ビニルを用いることができる。ただし、各シート185a、185bを構成する具体的な材料は特に限定されない。
【0069】
本実施形態では、被覆部材160は貫通孔163が形成されたシート部材161で構成している。拡張部材120は、拡張部130の拡張時、拡張部130の変形より、拡張部130と被覆部材160との間に位置する空間部190、及び、シート部材161に圧迫力を付与する。そのため、シート部材161は、拡張部130の圧迫力(拡張部130の変形)により、シート部材161の中心付近から放射方向に引っ張られて伸びる。シート部材161が伸びると、シート部材161に接続された第2領域182が面方向に拡張する。第2領域182が拡張すると、第2領域182に接続された各シート185a、185b同士が
図6に示すように相対的に離間する。
図7に示すように、各シート185a、185b間の距離が一定以上に広がると、各シート185a、185bの間に形成されたスリット部181aから薬剤層190Aに含まれる薬剤dが放出される。
【0070】
拡張部130を収縮させると、各シート185a、185bの相対的な位置関係は、
図5に示す拡張部130が拡張する前の状態に戻る。そのため、拡張部130を収縮させることにより、スリット部181aからの薬剤dの放出を制限することができる。また、スリット部181aが
図5に示す状態に戻ることにより、穿刺部位pから漏出した血液が空間部190内に流入することを防止できる。
【0071】
<薬剤層>
薬剤層190Aは、拡張部130の第1表面131aと被覆部材160との間に形成している。薬剤層190Aには所定の薬剤dが保持されている。
【0072】
薬剤dは、例えば、傷口の修復を早める金属イオン、血液の凝固を促進する止血剤などを含む溶液である。また、薬剤dは、金属イオンや止血剤と共に、アルギン酸を含有する溶液であってもよい。薬剤dがアルギン酸を含有する溶液である場合、薬剤dは、血液中に含まれる金属イオンとアルギン酸を反応させることにより、薬剤dをゲル化させることができる。そのため、アルギン酸を含有する薬液は、穿刺部位p周辺の患者の皮膚表層Afの凹凸に合わせてゲル化するため、穿刺部位pに薬剤dを密着させつつ、穿刺部位pから薬剤dが位置ズレすることを防止できる。また、ゲル化した薬剤dは、穿刺部位pの周囲に湿潤環境を形成しながら、穿刺部位pに薬剤dが含有する金属イオンや止血剤を徐放することができる。このため、薬剤dは、穿刺部位pに効率的に金属イオンや止血剤を提供できるため、金属イオンや止血剤と共に、アルギン酸を含有する溶液であることが好ましい。なお、薬剤dが金属イオンとアルギン酸を含有する場合、金属イオンは、アルギン酸と反応してゲル化しないものを使用する。
【0073】
なお、薬剤層190Aで保持する薬剤dの形態は、溶液のみに限定されず、例えば、粘性の高い液体、粉体、ゲル、固形物等であってもよい。また、薬剤dは、アルギン酸を含まなくてもよい。
【0074】
<注入部>
図1、
図3に示すように、止血器具100は、拡張部130に流体を注入するための注入部200を有する。
【0075】
注入部200は、逆止弁(図示せず)を内蔵するコネクタ201と、内部に空間が形成された可撓性を備える袋部202と、袋部202と拡張部130の内部空間131を連通するチューブ203と、を有する。
【0076】
コネクタ201の逆止弁が閉じている間は、コネクタ201の内部と袋部202の内部との連通が遮断される。術者等は、拡張部130を拡張させる際、コネクタ201にシリンジ(図示せず)の先筒部を挿入して逆止弁を開く。術者等は、コネクタ201の逆止弁を開いた状態で、シリンジの押し子を押すことにより、シリンジ内の空気を拡張部130の内部空間131内に注入することができる。
【0077】
術者等は、拡張部130の内部空間131内に空気を注入することにより、拡張部130を拡張させることができる。また、術者等が拡張部130の内部空間131内に空気を注入すると、空気が連通部140を介して、補助部材150の内部空間151内に流入する。これにより、術者等は、補助部材150を拡張させることができる。術者等が拡張部130及び補助部材150を拡張させると、チューブ203を介して拡張部130と連通している袋部202が膨張する。術者等は、袋部202が膨張することを目視により確認することにより、拡張部130及び補助部材150が拡張したことを確認することできる。
【0078】
術者等は、拡張部130及び補助部材150を収縮させる際、コネクタ201にシリンジの先筒部を挿入して、シリンジの押し子を引く。術者等は、上記の操作を行うことにより、拡張部130及び補助部材150からシリンジへ空気を移動させることができる。術者等が拡張部130及び補助部材150からシリンジへ空気を移動させると、袋部202が収縮する。
【0079】
袋部202には、例えば、コネクタ201へのシリンジの挿入方向を示す矢印状のマーカーを設けることができる。
【0080】
<止血器具の使用例>
次に、
図4~
図8を参照して、止血器具100の使用例を説明する。なお、
図5~
図8は、
図4に示す矢印5A-5A線に沿う断面を模式的に示した図である。
【0081】
術者等は、患者の前腕部Aに形成した穿刺部位pの止血を開始するにあたり、
図4に示すように、拡張部材120を前腕部Aに固定する。この際、術者等は、拡張部材120を穿刺部位pに配置した状態で、帯体111を患者の前腕部Aに巻き付ける。術者等は、帯体111に配置した各連結部112a、112b同士を接触させることにより、止血器具100を患者の前腕部Aに固定することができる。
【0082】
図4では、イントロデューサーの図示を省略しているが、術者等は、穿刺部位pにイントロデューサーのシースチューブを挿入した状態で、拡張部材120を患者の前腕部Aに固定することができる。その場合、術者等は、拡張部材120を患者の前腕部Aに固定した状態で、穿刺部位pからシースチューブを抜去する。
【0083】
術者等は、穿刺部位pからシースチューブを抜去した後、拡張部130の内部空間133に流体を注入することにより、拡張部130を拡張させる。拡張部130の第1表面131aと被覆部材160との間に区画された空間部190は、拡張部130の拡張により、圧迫される。そのため、空間部190は、
図5に示すように、貫通孔163(
図3を参照)を介し、穿刺部位pの方向に突出する。なお、術者等は、穿刺部位pからシースチューブを抜去ながら、拡張部130を拡張させてもよい。
【0084】
拡張部130が拡張する際、第2領域182は、拡張部130の拡張に伴って、第1領域181のスリット部181aが押し広げられることを防止する。すなわち、第2領域182は、第1領域181よりも硬質な材料で構成されるため、拡張部130の圧迫による第1領域181の横方向への伸びを抑制する。そのため、拡張部130の内圧が十分な大きさに達する前に、各シート185a、185bの間の距離が意図せずに広がって薬剤層190Aから薬剤dが放出されてしまうことを防止できる。
【0085】
第1領域181は、術者等が拡張部130の内部空間133に流体をさらに注入し、内部空間133の内圧が所定の大きさに達した際、
図6及び
図7に示すように、第1シート185aと第2シート185bの間に形成されたスリット部181aが押し広げられる。スリット部181aが十分に広げられると、薬剤層190Aに配置された薬剤dがスリット部181aを通過して前腕部Aの皮膚表層Af側に放出される。
【0086】
図8に示すように、薬剤dがアルギン酸を含む場合、前腕部Aの皮膚表層Af上に配置された薬剤dは、穿刺部位pから漏出した血液と接触した際、血液中に含まれる金属イオンと反応してゲル化する。そのため、薬剤dは、皮膚表面の凹凸に合わせて穿刺部位周辺にゲル層を形成し、前腕部Aの皮膚表層Af上に留まる。また、ゲル化した薬剤dは、穿刺部位pの周辺に湿潤環境を形成しつつ、アルギン酸と共に含有する金属イオンや止血剤を穿刺部位pに経時的に徐放する。これにより、ゲル化した薬剤dは、穿刺部位pに金属イオンを徐放することにより、穿刺部位pにおける瘢痕組織の形成を抑制して早期に傷口を修復したり、穿刺部位pに止血剤を徐放すことにより、穿刺部位pにおける血液凝固を促進し、止血時間を短縮したり、することができる。加えて、ゲル化した薬剤dが穿刺部位pに金属イオンを徐放する場合、ゲル化した薬剤dは、金属イオンの抗菌作用により、穿刺部位pの周辺の抗菌性を高めることができる。そのため、ゲル化した薬剤dは、金属イオンの抗菌効果により、穿刺部位pを介した感染症の発生も予防できる。なお、
図8に示すように、第1領域181は、所定量の薬剤が皮膚表面層側に放出した際、空間部190の内圧が減少するため、スリット部181aが閉じる。
【0087】
術者等は、薬剤層190Aから薬剤dを放出した後、拡張部130の拡張状態を維持することにより、拡張部130から穿刺部位pに対して圧迫力を付与することができる。そのため、術者等は、拡張部130によって穿刺部位pを圧迫止血しつつ、穿刺部位pに薬剤dの薬効を発現させることができる。これにより、術者等は、止血器具100により、穿刺部位pの傷口修復を早めたり、止血効果を高めたりすることができる。
【0088】
薬剤層190Aは、拡張部130の第1表面131aに接続された被覆部材160によって区画された空間部190に配置される。そのため、術者等は、拡張部130の拡張量を調整することにより、空間部190の内圧を制御し、空間部190の薬剤dを放出させることができる。そのため、術者等は、拡張部130の拡張量を調整することで、空間部190内に薬剤dが残留することを抑制できる。それにより、術者等は、薬剤層190Aの薬剤dが空間部190内に残されないように無駄なく使い切ることができる。
【0089】
また、創傷治癒用の被覆材(薬剤を染み込ませた被覆材)を使用した止血器具の場合、被覆材が含有する薬剤の薬効を発現させるためには、被覆材から薬剤を溶出させる溶媒(血液等の体液)が必要である。そのため、被覆材が含有する薬剤の薬効は、被覆材に接触する血液の量に依存する。しかし、止血器具100は、拡張部130の拡張量を調整することで空間部190の薬剤の放出を制御できるため、被覆部材160と接触する血液の量に依存せず、薬剤の薬効を発現させることができる。したがって、止血器具100は、創傷治癒用の被覆材を使用した止血器具と比較して、穿刺部位pに対し、薬剤の薬効を十分に発現させることができる。
【0090】
以上のように、本実施形態に係る止血器具100は、前腕部Aの穿刺部位pに配置するように構成された拡張部材120と、拡張部材120を前腕部Aに固定するように構成された固定部材110と、を備える。拡張部材120は、拡張変形可能な拡張部130と、拡張部130の少なくとも一部の第1表面131aを覆う被覆部材160と、拡張部130と被覆部材160との間の空間部190に配置される薬剤層190Aと、を有する。被覆部材160は、前腕部Aに拡張部材120を固定し、かつ、拡張部材120を拡張させた状態で、薬剤層190Aから前腕部Aの皮膚表層Af側へ薬剤層190Aに保持された薬剤dを放出可能にする放出部170を有する。
【0091】
上記のように構成した止血器具100によれば、拡張部材120が患者の前腕部Aに形成した穿刺部位pに固定された状態で拡張した際、放出部170を介し、薬剤層190Aに含まれる薬剤dを患者の前腕部Aの皮膚表層Af側へ放出する。具体的には、拡張部材120は、術者等が拡張部材120を拡張させた際、拡張部130が変形し、拡張部130と被覆部材160との間に位置する空間部190に圧迫力を付与することで、放出部170を介して空間部190に配置された薬剤層190Aの薬剤dを放出する。それにより、術者等は、拡張部材120を拡張し、被覆部材160を患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に押し付けた状態で、穿刺部位pに対し、空間部190に配置された薬剤層190Aの薬剤dを放出させることができる。そのため、術者等は、患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に被覆部材160を押し付けた状態で、穿刺部位p周辺に薬剤dを投与できるため、穿刺部位pに対して適切に薬剤dを放出でき、止血器具100による穿刺部位pの止血効果を効果的に高めることができる。また、上記のように構成した止血器具100は、薬剤dが拡張部材120の拡張時に穿刺部位pに放出されるため、使用前の擦過等による薬剤の剥れを防止しつつ、穿刺部位pに衛生的に薬剤を放出できる。また、止血器具100は、薬剤dが拡張部130と被覆部材160の間の空間部190に保持されるため、被覆材等に染み込ませて使用することが困難であるタンパク質を有効成分とするバイオ医薬品等も薬剤として使用することができる。
【0092】
また、被覆部材160は、拡張部130の第1表面131aに固定されたシート部材161と、シート部材161に設けられた貫通孔163と、を有する。放出部170は、拡張部材120の拡張に伴って貫通孔163を介した薬剤層190Aと拡張部130の外部との連通を可能にする弁機構180で構成している。
【0093】
上記のように構成した止血器具100によれば、拡張部130との間に薬剤層190Aを配置する空間を区画する被覆部材160がシート部材161で構成されているため、拡張部材120の厚みが大きくなることを防止できる。また、術者等は、拡張部130を拡張させることにより、被覆部材160に設けられた弁機構180を介して薬剤層190Aと拡張部材120の外部とを連通させ、穿刺部位pに薬剤dを放出させることができる。術者等は、拡張部130を拡張させる前の状態において薬剤dが拡張部材120(空間部190)の外部へ放出されることを防止できる。そのため、止血器具100は、弁機構という簡単な構造で薬剤の放出を制御でき、止血器具100を使用した止血を開始するまでの間、薬剤dの衛生状態を清潔に保つことができる。
【0094】
また、弁機構180は、第1領域181と、第1領域181を囲む第2領域182と、を有する。第1領域181は、少なくとも1以上のスリット部181aを有する。第2領域182は、第1領域181よりも硬い材料で構成している。
【0095】
上記のように構成した止血器具100によれば、拡張部130が拡張する際、第2領域182は、拡張部130の拡張に伴って、第1領域181のスリット部181aが押し広げられることを抑制する。すなわち、第2領域182は、第1領域181よりも硬質な材料で構成されるため、拡張部130の圧迫による第1領域181のスリット部181aが広がる方向への伸びを抑制する。そのため、拡張部130の内圧が所定の大きさに達する前に、弁機構180が意図せずに開いて薬剤層190Aから薬剤dが放出されてしまうことを防止できる。
【0096】
また、第1領域181は、スリット部181aを形成するシート状の弁体185で構成している。
【0097】
止血器具100は、第1領域181がシート状の弁体185で構成されるため、簡単な構造で弁体185を形成でき、拡張部材120の厚みや重量の増加を防止できる。また、シート状の弁体185は、スリット部181aの大きさ及び位置を調整することで、第1領域181の所定位置から放出される薬剤dの量を簡便に制御することができる。
【0098】
また、薬剤dは、アルギン酸を含有する溶液である。
【0099】
術者等は、前腕部Aの皮膚表層Af上に薬剤dを配置し、穿刺部位pから漏出した血液に含まれる金属イオンと薬剤dのアルギン酸とを反応せることにより、薬剤dをゲル化させることができる。そのため、薬剤dは、穿刺部位p周辺の患者の皮膚表層Afの凹凸に合わせてゲル化するため、穿刺部位pに薬剤dを密着させつつ、穿刺部位pから薬剤dが位置ズレすることを防止できる。加えて、ゲル化した薬剤dは、穿刺部位pの周囲に湿潤環境を形成し、細胞の活性化及び増殖を促進することで、傷口の修復を促進させる。また、薬剤dがアルギン酸と共に金属イオンや止血剤を含む場合、ゲル化した薬剤dは、ゲル化した薬剤dから金属イオンや止血剤を徐放することで、傷口修復の促進や止血促進等の薬効を得ることができる。なお、ゲル化した薬剤dがアルギン酸と共に金属イオンを含む場合、ゲル化した薬剤dは、金属イオンの抗菌作用により、穿刺部位pを介した感染症の発生も予防できる。
【0100】
次に、上述した実施形態の各変形例を説明する。変形例の説明では、上述した実施形態で既に説明した内容と重複する内容の説明は省略する。また、変形例の説明において特に説明の無い内容は前述した実施形態と同一のものとすることができる。
【0101】
<放出部(弁機構)の変形例1>
図9~
図11には、放出部170(弁機構180)の変形例1を示す。
図9~
図11は、変形例1に係る放出部170が薬剤dを放出する前後の様子を簡略的に示す断面図である。
【0102】
変形例1に係る放出部170は、第1シート185a及び第2シート185bを備えるシート状の弁体185Aで構成している。
【0103】
第1シート185a及び第2シート185bは、
図9に示すように、シート状の弁体185Aが閉じた状態で両者の間にスリット部181aを形成している。また、第1シート185a及び第2シート185bは、シート状の弁体185Aが閉じた状態で両者が互いに重ならないように配置している。なお、前述した実施形態に係るシート状の弁体185は、シート状の弁体185が閉じた状態において、第1シート185a及び第2シート185bが互いに部分的に重なるように配置されている(
図5を参照)。
【0104】
図9~
図11に示すように、シート状の弁体185Aは、前述した弁体185Aと同様に、拡張部材120の拡張に伴って第1シート185aと第2シート185bの間に形成されたスリット部181aが押し広げられる。これにより、薬剤層190Aに含まれる薬剤dを患者の前腕部Aの皮膚表層Af側へ放出することができる。
【0105】
なお、
図10に示すように、第1シート185aのスリット部181aを形成する第2シート185b側の端部及び第2シート185bのスリット部181aを形成する第1シート185a側の端部は、空間部190側が湾曲した断面形状を有するように形成することができる。そのため、スリット部181aから薬剤dを放出する際、
図11に示すように、第1シート185aの湾曲した端部及び第2シート185bの湾曲した端部に沿って薬剤dが患者の前腕部Aの皮膚表層Af側へ移動し易くなる。それにより、術者等は、空間部190から薬剤dを円滑に放出させることができる。
【0106】
<放出部(弁機構)の変形例2>
図12~
図14には、放出部170(弁機構180)の変形例2を示す。
図12には、拡張部130が拡張する前の放出部170の平面図を示す。
図13及び
図14は、放出部170が薬剤dを放出する前後の様子を示す断面図である。
【0107】
変形例2に係る第1領域181Aは、可撓性を備える膜状の部材で構成している。第1領域181Aは、例えば、拡張部130の拡張に伴って拡張可能なシリコンゴム等で構成することができる。
【0108】
第1領域181Aは、
図13及び
図14に示すように、拡張部130が拡張することにより拡張部130から薬剤層190Aに対して圧迫力が付与されると、薬剤dを放出可能な孔部181b’を形成する。術者等は、孔部181b’を介して薬剤dを放出することにより、患者の前腕部Aの皮膚表層Afに薬剤dを配置することができる。
【0109】
図12及び
図13に示すように、第1領域181Aには、拡張部130が拡張した際に孔部181b’に対応した位置の破断を誘導する被破断部181bを設けることができる。被破断部181bは、例えば、第1領域181Aに形成された肉薄部や切れ目などで構成することができる。
【0110】
なお、第1領域181Aに形成する被破断部181bの形状、位置、大きさ、個数等は特に限定されない。また、第1領域181Aには、拡張部130を拡張させる前の状態において第1領域181Aを貫通する孔部181b’(例えば、
図15を参照)が予め設けられていてもよい。
【0111】
<放出部(弁機構)の変形例3>
図15及び
図16には、放出部170(弁機構180)の変形例3を示す。
図15及び
図16は、放出部170が薬剤dを放出する前後の様子を示す断面図である。
【0112】
変形例5に係る放出部170は、
図15に示すように、拡張部130の第1領域181と対応する位置に配置された凸部186を有する。
【0113】
凸部186は、拡張部130の第1表面131aに固定している。また、凸部186は、薬剤層190Aが配置された空間部190内に配置している。
【0114】
凸部186は、拡張部130の第1表面131aの第1領域181と対向する位置に配置している。そのため、
図16に示すように、拡張部130が拡張した際、凸部186と第1領域181とが相対的に接近し、両者が接触する。
【0115】
第1領域181は、複数の孔部181b’が形成された膜状の部材で構成している。複数の孔部181b’は、
図15に示すように、拡張部130が拡張していない状態において薬剤dが放出されることを防止し得る大きさ(例えば、内径)で形成することができる。
【0116】
図16に示すように、術者等が拡張部130を拡張させて凸部186を第1領域181に接触させると、第1領域181が拡張して孔部181b’が押し広げられる。それにより、薬剤層190Aに含まれる薬剤dを患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に放出することができる。
【0117】
本変形例に係る放出部170(弁機構180)は、拡張部130が拡張する前の状態では、第1領域181と凸部186が接触することを防止して、放出部170を介して薬剤dが放出されることを防止できる。また、放出部170は、拡張部130の拡張に伴って、第1領域181と凸部186とが接触して第1領域181が拡張すると、第1領域181に設けられた孔部181b’を介して薬剤を放出させることができる。
【0118】
なお、凸部186の断面形状、材質、大きさ、具体的な配置、個数等について特に制限はない。
【0119】
<放出部(弁機構)の変形例4>
図17~
図23には、放出部170(弁機構180)の変形例4を示す。
図17及び
図18は、放出部170が薬剤dを放出する前後の様子を示す断面図である。
図19~
図23は、変形例4に係る放出部170によって薬剤dを放出させる際の手順例を示す断面図である。
【0120】
図17及び
図18に示すように、変形例4に係る放出部170は、凸部186Aを有する。凸部186Aは、変形例3の凸部186と構造が相違する。具体的には、凸部186Aは、内部に空間186aを有する筒状部材で構成している。筒状部材の側面には、空間186aと連通する複数の側孔186b、186cが設けられている。
【0121】
側孔186bは、側孔186cよりも拡張部130の第1表面131a側に位置する。側孔186b及び側孔186cは、空間186aを介して互いに連通している。
【0122】
凸部186Aの下端部は、例えば、第1領域181と接触した際、第1領域181を貫通することが可能な形状を有するように構成することができる。
図17及び
図18に示すようおに、凸部186Aの下端部は、穿刺部位pに向かって突出するため、最先端が平面であることが好ましい。なお、凸部186Aの具体的な断面形状は特に限定されない。
【0123】
図17に示すように、凸部186Aは、拡張部130が拡張していない状態では、第1領域181と接触していない状態に保たれる。
図18に示すように、拡張部130が拡張すると、拡張部130に接続された凸部186Aの下端部がシート部材161と接触する。凸部186Aは、拡張部130の拡張に伴ってシート部材161に対して所定の押圧力で押し付けられると、シート部材161を貫通する。凸部186Aがシート部材161を貫通した状態において、凸部186Aの側孔186bは空間部190に配置され、凸部186Aの側孔186cは空間部190の外部に配置される。術者等は、このように凸部186Aを配置することにより、薬剤層190Aに配置された薬剤dを側孔186b、空間186a、側孔186cを介して、患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に放出することができる。
【0124】
次に、
図19~
図23を参照して、凸部186Aによる薬剤dの放出手順を具体的に説明する。
【0125】
術者等は、
図19に示すように、拡張部130を拡張させることにより、第1領域181に接触しない程度の距離まで凸部186Aを第1領域181に接近させる。この際、拡張部130の内圧は、拡張部130により穿刺部位pを圧迫止血する際の大きさと同程度の大きさに調整することができる。
【0126】
術者等は、拡張部130をさらに拡張させる。拡張部130がさらに拡張すると、
図20に示すように、凸部186Aが第1領域181を貫通する。凸部186Aの第1領域181を貫通した下端部は、空間部190の外部に配置される。
【0127】
図21に示すように、凸部186Aが第1領域181を貫通すると、薬剤層190Aに配置された薬剤dが側孔186b、空間186a、側孔186cを介して、患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に放出される。
【0128】
図22に示すように、術者等は、薬剤層190Aに含まれる薬剤dが皮膚表層Afに配置された後、拡張部130を収縮させて、凸部186Aを空間部190内へ移動させる。この操作により、凸部186Aの各側孔186b、186cが空間部190内に配置されるため、薬剤層190Aに薬剤dが残留していた場合においても、空間186a及び各側孔186b、186cを介して、薬剤dが空間部190から放出されることを防止できる。
【0129】
図23に示すように、薬剤dがアルギン酸を含む場合、患者の前腕部Aの皮膚表層Afに配置された薬剤dは、穿刺部位pから漏出した血液に含まれる金属イオンと反応することによりゲル化する。術者等は、ゲル化した薬剤dにより、金属イオンや止血剤を徐放させることで、穿刺部位pの傷口修復を早めたり、止血効果を高めたりすることができる。また、ゲル化した薬剤dが穿刺部位pに金属イオンを徐放する場合、ゲル化した薬剤dは、金属イオンの抗菌作用により、穿刺部位pを介した感染症の発生も予防できる。
【0130】
以上のように、本変形例に係る凸部186Aは、内部に空間186aを有する筒状部材から構成されており、当該筒状部材の側面には、空間186aと連通する複数の側孔186b、186cが設けられている。このような凸部186Aを備える止血器具によれば、凸部186Aの空間186a及び側孔186b、186cを介して薬剤層190Aが配置された空間部190と空間部190の外部とを連通させることにより、薬剤層190Aに含まれる薬剤dを患者の前腕部Aの皮膚表層Af側に放出させることができる。また、拡張部130を拡張させる前の状態においては、凸部186Aが第1領域181を貫通することを防止できる。したがって、術者等は、凸部186Aの各部186a、186b、186cを介して薬剤dが意図せずに放出されることを好適に防止できる。
【0131】
<拡張部の変形例>
図24及び
図25には、拡張部材120の変形例を示す。
図24は、拡張部材120Aの拡張部130Aが拡張する前の状態の断面図を示し、
図25は、拡張部材120Aの拡張部130Aが拡張した状態の断面図を示す。
【0132】
図24に示すように、変形例に係る拡張部材120Aの拡張部130Aは、拡張部130Aが拡張する前の状態において、拡張部130Aの第1表面131aを構成する部分に折り畳み部139aが形成されている。
【0133】
拡張部130Aの折り畳み部139aは、
図25に示すように、拡張部130Aが拡張した際、伸長して折り畳まれた状態を解除する。これにより、拡張部130Aは、
図25に示すように、被覆部材160のシート部材161に向かって突出し、突出部を形成する。この際、拡張部130Aの突出部は、薬剤層190Aの薬剤を圧迫し、拡張部130Aとシート部材161との間の空間部190を圧縮するように形成される。このため、拡張部材120Aは、拡張部130Aが拡張した際、拡張部130Aの突出部により、空間部190を圧迫し、弁機構180を介して薬剤層190Aから薬剤dを放出する。すなわち、拡張部材120Aは、拡張部130Aを拡張し、第1領域181の方向に突出部が突出することで、弁機構180を介して薬剤層190Aから薬剤dを放出する。そのため、術者等は、拡張部130Aの拡張量を制御し、突出部の形状を制御することで、薬剤層190Aから放出される薬剤dの量を制御することができる。また、拡張部材120Aは、拡張部130Aが拡張して、折り畳み部139aの折り畳みが解除されるまでの間、被覆部材160のシート部材161に接続された第1領域181に、拡張部130Aの拡張に伴う圧迫が伝達されることを抑制できる。そのため、術者等は、拡張部130Aが所定の拡張量まで拡張するまでの間に、弁機構180が意図せずに開いて薬剤層190Aから薬剤dが放出されることを防止できる。このように
図24及び
図25に係る拡張部材120Aは、拡張部材120Aのシート部材161の弾性を調整したり、拡張部130に凸部を設けたりすることなく、拡張部130の形状を制御することで、薬剤層190Aから放出される薬剤dの量をを制御している。
【0134】
(第2実施形態)
図26には、第2実施形態に係る止血器具100Aを示す。
図27には、止血器具100Aの使用例を示す。第2実施形態の説明では、第1実施形態で既に説明した内容と重複する内容の説明は省略する。また、第2実施形態の説明において特に説明の無い内容は第1実施形態と同一のものとすることができる。
【0135】
第1実施形態では、患者の前腕部Aに形成した穿刺部位pを止血可能に構成した止血器具100を説明した。以下に説明する第2実施形態の止血器具100Aは、
図27に示すように、患者の前腕部Aよりも手指側に位置する手(例えば、左手)Hの甲Hb側を走行する手掌動脈(深掌動脈)の橈骨動脈側(例えば、解剖学上のスナッフボックス周辺の動脈、又は、スナッフボックスよりも指先側を走行する遠位橈骨動脈)に形成された穿刺部位p(「止血すべき部位」に相当する)を止血可能に構成している。なお、解剖学上のスナッフボックスは、患者が手Hの親指f1を広げた際に前腕部Aの橈骨側に位置する手の窪みである。
【0136】
図27は、止血器具100Aの帯体111を外面側から見た平面図である。
【0137】
止血器具100Aは、止血器具100Aを患者の手Hに固定するための固定部材110と、固定部材110の本体部110Aの内面に接続された拡張部材120と、を有する。
【0138】
固定部材110は、本体部110Aと、本体部110Aから所定の第1方向に延びる第1アーム部116と、本体部110Aから第1方向と異なる第2方向に延びる第2アーム部117と、本体部110Aから第1方向及び第2方向と異なる方向に延びる第3アーム部118と、を備える。
【0139】
各アーム部116、117、118には、各アーム部116、117、118同士を連結可能にする連結部材(例えば、面ファスナー)を設けることができる
本体部110Aには、本体部110Aの外面側から拡張部材120を視認可能にする窓部129を設けることができる。
【0140】
図28に示すように、術者等は、患者の手Hに形成した穿刺部位pを止血するにあたり、本体部110Aに接続した拡張部材120を穿刺部位pに配置する。術者等は、患者の手Hの外周に沿って第2アーム部117を巻き付ける。また、術者等は、第2アーム部117を第3アーム部118に連結する。また、術者等は、第1アーム部116を患者の手Hの親指f1と人差し指f2の間に配置する。術者等は、第1アーム部116を、手Hの外周に沿って巻き付けた第2アーム部117に連結する。以上の手順により、術者等は、止血器具100Aを患者の手Hに装着することができる。
【0141】
術者等は、止血器具100Aを患者の手Hに装着した状態で拡張部材120を拡張させることにより、前述した第1実施形態に係る止血器具100を使用した場合と同様に、拡張部130による圧迫止血を実施しつつ、薬剤dの薬効によって穿刺部位pの止血効果を高めることができる。
【0142】
なお、
図27では、イントロデューサーの図示を省略しているが、術者等は、穿刺部位pにイントロデューサーのシースチューブを挿入した状態で拡張部材120を患者の手Hに固定することができる。その場合、術者等は、拡張部材120を患者の手Hに固定した状態でシースチューブを穿刺部位pから抜去する。
【0143】
以上、複数の実施形態および複数の変形例を通じて本発明に係る止血器具を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0144】
止血器具による止血対象となる患者の身体の部位は肢体である限り、特に限定されない。例えば、第1実施形態の説明では、患者の右前腕部に形成した穿刺部位を止血するための止血器具を例示したが、止血器具は、左前腕部に形成した穿刺部位を止血可能に構成することも可能である。また、第2実施形態の説明では、左手の甲に形成した穿刺部位を止血するための止血器具を例示したが、止血器具は、右手の甲に形成した穿刺部位、右手の掌に形成した穿刺部位、左手の掌に形成した穿刺部位を止血する器具として構成することも可能である。
【0145】
また、各実施形態及び各変形例で説明した止血器具は、本願発明の効果が発揮され得る限り、任意に組み合わせることが可能である。
【0146】
また、止血器具の各部の形状、寸法、構造等は、前腕部や手を含む肢体の少なくとも一部に対して止血器具を装着した状態で、拡張部材により穿刺部位に圧迫力を付与することが可能な限り、特に限定されない。
【符号の説明】
【0147】
100、100A 止血器具
110 固定部材
111 帯体
111a 帯体の内面
111b 帯体の外面
120 拡張部材
130、130A 拡張部
131a 拡張部の第1表面(表面)
131b 拡張部の第2表面
150 補助部材
160 被覆部材
161 シート部材
163 貫通孔
170 放出部
180 弁機構
181、181A 第1領域
181a スリット部
181b 被破断部
181b’ 孔部
182 第2領域
185、185A シート状の弁体
185a 第1シート
185b 第2シート
186、186A 凸部
186a 空間
186b、186c 側孔
190 空間部
190A 薬剤層
200 注入部
A 前腕部(肢体)
Af 皮膚表層
H 手(肢体)
d 薬剤
p 穿刺部位(止血すべき部位)