(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 27/20 20060101AFI20231005BHJP
A41D 13/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A41D27/20 B
A41D13/00 112
A41D27/20 N
(21)【出願番号】P 2020181760
(22)【出願日】2020-10-29
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005935
【氏名又は名称】美津濃株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】白石 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中田 将文
(72)【発明者】
【氏名】江田 容子
(72)【発明者】
【氏名】大倉 明彦
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0035736(US,A1)
【文献】特開2018-139899(JP,A)
【文献】特開2002-337294(JP,A)
【文献】特開2007-210217(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143424(US,A1)
【文献】実開昭58-048715(JP,U)
【文献】特開2004-204405(JP,A)
【文献】特開2006-161204(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00
A41D27/20
A47G29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服本体と、少なくとも一つのポケットを含む衣服であって、
前記ポケットは、袋状のポケット本体及びフラップを有し、
前記ポケットは、JIS L 1092 B法に基づいて測定した耐水圧が300mm以上である生地で構成されており、
前記ポケットは、側縁部が前記衣服本体に縫着されており、
かつ前記衣服本体に側縁部のみで固定されており、
前記ポケットは、前記衣服本体との縫着部以外の縫目を有しないことを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記ポケットは、JIS L 1099 A-1法に基づいて測定した透湿度が10000g/m
2・h以下である生地で構成されている、請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記ポケットと前記衣服本体の縫着部は、地面の水平面に対する角度が80°以上110°以下である、請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
前記ポケットと前記衣服本体の縫着部において、前記ポケット本体の身体側生地と反対側の生地が接着剤で接合されている、請求項1~3のいずれかに記載の衣服。
【請求項5】
前記ポケットと前記衣服本体の縫着部の内側において、前記ポケット本体の身体側生地と身体側の反対側の生地が接着剤で接合された内側接合部が形成されている、請求項1~4のいずれかに記載の衣服。
【請求項6】
前記ポケットを構成する生地は、伸縮性を有し、JIS L 1096 8.14.1 A法に基づいて測定したタテ方向の伸長率が10%以上400%以下であり、ヨコ方向の伸長率が10%以上500%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の衣服。
【請求項7】
前記ポケットを構成する生地は、生地の少なくとも一方の表面に配置された樹脂層を有する、請求項1~6のいずれかに記載の衣服。
【請求項8】
前記衣服本体は、撥水処理されていない生地で構成されている、請求項1~7のいずれかに記載の衣服。
【請求項9】
前記ポケット本体及びフラップは、一枚生地で形成されている、請求項1~8のいずれかに記載の衣服。
【請求項10】
前記衣服は、下衣であり、前記ポケットは、骨盤を覆う領域に配置されている、請求項1~9のいずれかに記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケットを有する衣服に関する。特に好適には、スポーツ時に着用することができるポケットを有するパンツに関する。
【背景技術】
【0002】
衣服には通常小物を入れるポケットを設けられていることが多い。一方、運動時に着用する衣服の場合、運動による発汗により、ポケットが濡れ、その中の小物も濡れてしまうことがある。また、アウトドアの運動時には降雨により、ポケットが濡れ、その中の小物も濡れてしまうことがある。
【0003】
衣服全体を撥水加工することで、ポケットが濡れることを防止することができるが、運動による汗が衣服内に残存してしまう。そこで、防水性ポケットを用いることが行われている。例えば、特許文献1には、防水内袋をポケット生地にマジックテープ(登録商標)で取り付けることが提案されている。特許文献2には、ポケット本体及び二重フラップを有し、ポケット本体の上部がフラップに縫い付けられているポケット構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】登録実用新案公報第3047629号
【文献】特開2006-28652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に記載のポケットの場合、マジックテープ(登録商標)の固定力が足りず、体の動きによって防水内袋が脱落することや、マジックテープ(登録商標)によりポケットの伸びが抑制され、動きが阻害されることがある。また、引用文献2に記載のポケットの場合、ポケット本体の上部とフラップとの縫目から汗や雨が浸みることで、ポケット内部が濡れてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するため、発汗や雨によってポケットの内部が濡れることがなく、かつ体の動きを妨げないポケットを有する衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、衣服本体と、少なくとも一つのポケットを含む衣服であって、前記ポケットは、袋状のポケット本体及びフラップを有し、前記ポケットは、JIS L 1092 B法に基づいて測定した耐水圧が300mm以上である生地で構成されており、前記ポケットは、側縁部が前記衣服本体に縫着されており、前記ポケットは、前記衣服本体との縫着部以外の縫目を有しないことを特徴とする衣服に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、発汗や雨によってポケットの内部が濡れることがなく、かつ体の動きを妨げないポケットを有する衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の1実施形態の衣服の模式的背面図である。
【
図2】
図2は、本発明の1実施形態の衣服の身体側における縫着部の模式的部分拡大図である。
【
図3】
図3は、本発明の1実施形態の衣服の模式的正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の1実施形態の衣服において、衣服本体に対するポケットの取り付け状態を示す模式的部分拡大断面斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する模式的展開図である。
【
図6】
図6は、本発明の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する模式的展開図である。
【
図7】
図7は、本発明の1実施形態におけるポケット作製手順を説明する模式的斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の1実施形態におけるポケット作製手順を説明する模式的斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する模式的展開図である。
【
図10】
図10は、本発明の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する模式的展開図である。
【
図11】
図11は、本発明の1実施形態におけるポケット作製手順を説明する模式的斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の1実施形態におけるポケット作製手順を説明する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者は、上述した課題を解決するために検討を重ねた。その結果、(1)袋状のポケット本体及びフラップを有するポケットを所定の耐水圧を有する透湿防水性生地で構成する、(2)ポケットの側縁部のみを衣服本体に縫着し、ポケットが縫着部以外の縫目を有しないようにすることで、発汗や雨によってポケットの内部が濡れることがなく、かつ体の動きを妨げないポケットを有する衣服が得られることを見出した。
【0011】
本明細書において、上縁部及び下縁部という上下方向は着用者の身体の身長方向に対応し、側縁部という「左右方向」は着用者の身体の身幅方向に対応する。
【0012】
本発明において、衣服は、特に限定されず、上衣でもよく、下衣でもよい。ポケットの数も、特に限定されず、1つでもよく、2つ以上でもよい。衣服の用途などに応じて、ポケットの数を適宜調整することができる。ポケットの配置箇所も、特に限定されず、衣服の用途などに応じて、適宜調整することができる。特に、運動時に着用する運動用衣服に好適に用いることができ、運動用衣服としては、ランニング用パンツなどが挙げられる。
【0013】
ポケットを構成する生地は、耐水圧が300mm以上であることで、生地断面方向からポケットの内部への水が浸入することを抑制することができる。通常の環境における使用の場合、傘と同程度の耐水圧が確保することができ、水の浸入を抑制し得る。耐水圧が300mm未満の場合、強雨や大量発汗した状態において、水がポケットの内部に浸入する。ポケットを構成する生地の耐水圧は500mm以上であることが好ましく、1000mm以上であることがより好ましく、2000mm以上であることがさらに好ましく、5000mm以上であることが特に好ましい。本発明において、耐水圧は、JIS L 1092 B法に基づいて測定する。
【0014】
ポケットを構成する生地は、透湿度が10000g/m2・h以下であることが好ましい。これにより、ポケットの内部に湿気がこもることを抑制することができる。具体的には、運動時に発汗・蒸発した汗がポケットの内部にこもり、結露することを抑制することができる。ポケットを構成する生地の透湿度は1000g/m2・h以下であることが好ましく、100g/m2・h以下であることがより好ましい。一方、ポケットを構成する生地の透湿度の下限値は特に限定されないが、例えば、洗濯後の乾燥の観点から、10g/m2・h以上であってもよい。本発明において、透湿度は、JIS L 1099 A-1法に基づいて測定する。
【0015】
本発明において、ポケットに用いる生地としては、特に限定されず、例えば織物、編物などを用いることができる。織物としては、例えば平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。編物としては、例えば丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織などが挙げられる。前記ポケットに用いる生地は、特に限定されないが、例えば、目付けが50~400g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは70~380g/m2の範囲、さらに好ましくは90~350g/m2の範囲である。
【0016】
ポケットに用いる生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。
【0017】
ポケットを構成する生地としては、上述した耐水圧及び透湿度を有する生地を適宜用いればよいが、少なくとも一方の表面に配置された樹脂層を有する防水性生地を好適に用いることができる。樹脂層を設けることで防水性を付与しやすくなる。樹脂層を設ける方法としては、特に限定されず、例えば、コーティング加工、ラミネート加工などが挙げられる。
【0018】
コーティング加工には、特に限定されず例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。風合いの観点から、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。コーティング加工は生地の片面、両面でも良い。
【0019】
ラミネート加工に用いるフィルムとして、ウレタン樹脂製、アクリル樹脂製などを用いることができる。生地とフィルムの間にバインダーを取り付け、貼り合わせる。バインダーの組成は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを用いることができる。バインダーの形状は、ドット、格子柄、ストライプなど任意の形状で良い。
【0020】
ポケットを構成する生地は、特に限定されないが、ポケットの内部にものを入れやすいこと、身体にフィットしやすいことなどの観点から、伸縮性を有することが好ましい。ポケットを構成する生地は、タテ方向の伸長率が10%以上400%以下であり、かつヨコ方向の伸長率が10%以上500%以下であることがより好ましく、タテ方向の伸長率が20%以上200%以下であり、かつヨコ方向の伸長率が20%以上300%以下であることがさらに好ましい。本発明において、伸長率は、JIS L 1096 8.14.1 A法に基づいて、荷重17.6N、引張速度200mm/minの条件下で測定する。伸長率が10%未満の場合、着用した時にツッパリ感を感じる恐れがある。500%を超える場合、ポケット内に物を入れた時に伸びすることにより、ホールド感が劣る。また、運動時の振動により、揺れ動きが大きくなり、運動を阻害する恐れがある。
【0021】
本発明において、ポケット本体及びフラップは、一枚生地で形成されていることが好ましい。これにより、簡便かつ効果的に、衣服本体の縫着部以外には縫製糸による縫目を有しなしポケットを得ることができ、防水性を高めることができる。ポケット上方、フラップ、ポケット外気側(身体側の反対側)、及びポケット下方に縫製糸による縫目がないことにより、大量発汗時の衣服上方から滴り落ちる汗や降雨時の水が、ポケット内に浸入することを抑える。大量発汗時の衣服にしみ込んだ汗が、着用や人の動きによる生地断面方向への圧により、ポケット身体側へ押し出されるが、ポケット身体側に縫製糸による縫目がないことにより、汗がポケット内に浸入することを抑える。
【0022】
本発明において、衣服本体は、撥水処理されていない生地で構成されていることで好ましい。運動による汗が衣服内に残存することを抑制し、着用感を高めることができる。
【0023】
本発明において、衣服本体に用いる生地としては、特に限定されず、例えば織物、編物などの通常の衣服用生地を用いることができる。織物としては、例えば平織、斜文織、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織などが挙げられる。編物としては、例えば丸編、緯編、経編(トリコット編、ラッセル編を含む)、パイル編、平編、天竺編、リブ編、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖組織、挿入組織などが挙げられる。衣服本体に用いる生地は、特に限定されないが、例えば、目付けが50~300g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは60~250g/m2の範囲、さらに好ましくは70~200g/m2の範囲である。
【0024】
衣服本体に用いる生地を構成する繊維としては、特に限定されず、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、アセテート繊維、コットン繊維、レーヨン繊維、エチレンビニルアルコール繊維、ナイロン繊維などを用いることができる。
【0025】
衣服本体に用いる生地は、特に限定されないが、運動による汗が衣服内に残存することを抑制しやすい観点から、透湿度が1000g/m2・h以上であることが好ましく、10000g/m2・h以上であることがより好ましい。耐水性能は不要であるが、身体の発する汗を吸収、発散させることを考えると、耐水圧は100mm以下が好ましい。
【0026】
衣服本体を構成する生地は、特に限定されないが、例えば、タテ方向の伸長率が0%以上400%以下であり、かつヨコ方向の伸長率が0%以上500%以下であってもよく、タテ方向の伸長率が10%以上200%以下であり、かつヨコ方向の伸長率が10%以上300%以下であってもよい。本発明において、伸長率は、JIS L 1096 8.14.1 A法に基づいて、荷重17.6N、引張速度200mm/minの条件下で測定する。
【0027】
本発明において、ポケットの側縁部のみを衣服本体に縫着し、側縁部以外の他の部分は縫着により衣服本体に固定していないことで、ポケットが縫着部以外の縫目を有しない。本発明において、縫目とは縫製糸により縫着された接合のことを示す。ホットメルト接着フィルムによる接合は含めない。これにより、汗や雨が縫着部に沿って上部から下部へ流れ落ち、編目からポケット内部に浸入することが抑制される。ポケットと衣服本体の縫着部は、地面の水平面に対する角度が80°以上110°以下であることが好ましく、85°以上100°以下であることがより好ましい。地面の水平面に対する角度が80°以上110°以下である場合、上部から流れ落ちる水が縫着部を伝って、下部に落ちる。範囲外の場合、水が縫着部に沿って流れるより、重力による垂直方向の力の方が大きくなり、漏水しやすくなる。縫着部において、縫製糸の接合位置が一直線でなく、多角形状の場合、最も長い直線の地面の水平面に対する角度が上記の範囲に入ることが好ましい。また、縫着部において、縫製糸の接合位置が一直線でなく、曲線の場合、縫着部の上端又は下端と最も凸となる部位を結んだ直線の地面の水平面に対する角度が、上記の範囲に入ることが好ましい。
【0028】
ポケットの身体側は衣服本体にホットメルト接着フィルムにより少なくとも一部が接合されてもよい。ホットメルト接着フィルムは熱によって軟化し、温度が降下すると硬化する材質であれば良い。好ましくは、ウレタン樹脂製である。任意の形状のホットメルト接着フィルムを接合させる2つの生地の間に置き、プレス機等で熱と圧力をかけ、接合させる。その際、縫目のような穴が生地に発生することはない。
【0029】
ポケットを取り付ける部位は、特に限定されないが、ポケットが骨盤の一部を覆うことが好ましい。骨盤の周りは運動時に振動が少ない部位であるため、ポケットの身体側は衣服本体に接合されなくても、ポケットが揺れることを抑えることができる。
【0030】
本発明の1以上の実施形態において、ポケットと衣服本体の縫着部の内側には、ポケット本体の身体側生地と反対側の生地が接着剤で接合された内側接合部が形成されていることが好ましい。これによって、汗や雨が前記縫着部の編目からポケット内部に浸入することをより効果的に抑制することができる。特に、前記縫着部の地面の水平面に対する角度が80°以上110°以下の範囲をはずれる場合に効果的である。
【0031】
以下、図面に基づいて、本発明の一実施形態の衣服を説明する。なお、本発明は、図面に示されたものに限定されない。
【0032】
図1は本発明の一実施形態の衣服(ランニング用パンツ)の背面図であり、
図2は同身体側における縫着部の模式的部分拡大図であり、
図3は同正面図であり、
図4は同衣服本体に対するポケットの取り付け状態を示す模式的部分拡大断面斜視図である。該実施形態のランニング用パンツ1は、ランニング用パンツ本体2と、ランニング用パンツ本体2の骨盤を覆う領域に配置されているポケット3を備えている。ランニング用パンツ1は、ショートパンツであるが、膝上までを覆うものであってもよく、膝下までを覆うものであってもよく、足首までを覆うものであってもよい。
【0033】
ポケット3は、ポケット本体4及びフラップ5を備えている。ポケット3は、側縁部のみで衣服本体2に縫着されている(縫着部6)。すなわち、ポケット3は、側縁部のみが衣服本体2に固定されており、上縁部及び下縁部を含むその他の部分は衣服本体2に固定されておらず、衣服本体2との間に隙間が存在する。
【0034】
該実施形態において、縫着部6の地面の水平面50に対する角度αは90°である。縫着部6の地面の水平面50に対する角度αは、80°以上110°以下であることが好ましい。
【0035】
該実施形態において、ポケット3は、1枚生地で構成されている。
【0036】
該実施形態において、ランニング用パンツ1は、さらに腰の周りを覆う領域に配置された紐入れ部7を備える。ランニング用パンツ1を腰部で固定しやすい観点から、紐入れ部7は伸縮性生地で構成することが好ましい。ランニング用パンツ1は、さらに紐8を備えることで、固定の程度を調整しやすくなる。
【0037】
図5~
図8において、ポケット3の作製手順の一例を説明する。
図5及び6は、本発明の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する模式的展開図である。
図7及び
図8は、同模式的斜視図である。
【0038】
(1)
図5に示す形状にカットしたポケット用生地11を準備する。ポケット用生地11として、ポリウレタン樹脂がコーティングされた生地を用いてもよい。
(2)
図6に示すように、ポケット用生地11のポリウレタン樹脂がコーティングされた表面上に接着剤としてホットメルト接着フィルム12を配置する。
(3)ポケット用生地の上縁部13及びポケット用生地の下縁部14をそれぞれ折って、ホットメルト接着フィルム12と合わせるとともに、ポケット用生地11及びポケット用生地11の側縁部に配置したホットメルト接着フィルム12を折り目15に沿って合わせた後に、ホットメルト接着フィルム12に熱を加えることで、ポケット用生地11の側縁部を接着させて、
図7に示すように、袋体30を得る。
(4)折り目16に沿って、袋体30を折ることで、
図8に示すように、ポケット本体4及びフラップ5を含むポケット3を得る。ポケット本体4は、身体側生地4a及び身体側の反対側の生地4bで構成されており、身体側生地4aの側縁部と及び身体側の反対側の生地4bの側縁部が接着されていることで、袋状になっている。ポケット本体4は、小物などを収容して保持する。
【0039】
図1及び
図2に示すように、ポケット本体4を衣服本体2に接するように配置し、ポケット3の側縁部を衣服本体2に縫製する(縫着部6)ことで、ランニング用パンツ1を得ることができる。
【0040】
図9~
図12において、他の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する。
図9及び10は、本発明の他の1実施形態におけるポケットの作製手順を説明する模式的展開図である。
図11及び
図12は、同模式的斜視図である。
【0041】
(1)
図9に示す形状にカットしたポケット用生地21を準備する。ポケット用生地21として、ポリウレタン樹脂がコーティングされた生地を用いてもよい。
(2)
図10に示すように、ポケット用生地21のポリウレタン樹脂がコーティングされた表面上に接着剤としてホットメルト接着フィルム22を配置する。
(3)ポケット用生地の上縁部23及びポケット用生地の下縁部24をそれぞれ折って、ホットメルト接着フィルム22と合わせるとともに、ポケット用生地21及びポケット用生地21の側縁部の内側に配置したホットメルト接着フィルム22を折り目25に沿って合わせた後に、ホットメルト接着フィルム22に熱を加えることで、ポケット用生地21の側縁部の内側を接着させて、
図11に示すように、袋体40を得る。
(4)折り目26に沿って、袋体40を折ることで、
図12に示すように、ポケット本体104及びフラップ105を含むポケット103を得る。ポケット本体104は、身体側生地104a及び身体側の反対側の生地104bで構成されており、身体側生地104aの側縁部と及び身体側の反対側の生地104bの側縁部の内側が接着されていることで、袋状になっている。ポケット本体104は小物などを収容して保持する。
【0042】
ポケット本体104を衣服本体に接するように配置し、ポケット103の側縁部を衣服本体に縫製する(縫着部106)ことで、ランニング用パンツを得ることができる。該実施形態において、縫着部106の内側には、ポケット本体104の身体側生地104aと身体側の反対側の生地104bが接着剤で接合された内側接合部107が形成されている。
【実施例】
【0043】
以下実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0044】
まず、測定方法を説明する。
【0045】
(伸長率)
JIS L 1096 8.14.1 A法に基づいて測定した。荷重は17.6N、引張速度は200mm/minとした。
【0046】
(耐水圧)
JIS L 1092 B法に基づいて測定した。
【0047】
(透湿度)
JIS L 1099 A-1法に基づいて測定した。
【0048】
実施例及び比較例で下記の生地及び接着剤を用いた。
生地a:ナイロンのマルチフィラメント糸(総繊度33dtex、構成本数:12本)100質量%で構成された平織物(目付70g/m2)
生地b:ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)のマルチフィラメント糸(総繊度84dtex、構成本数:24本)100質量%で構成された天竺編物(目付120g/m2)の片面にウレタン樹脂をコーティングした(塗布量80g/m2)生地
生地c:ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)のマルチフィラメント糸(総繊度33dtex、構成本数:24本)100質量%で構成された平織物(目付40g/m2)の片面にアクリル樹脂をコーティングした(塗布量5g/m2)生地
接着剤:ホットメルト接着フィルム(幅1cm)、日清紡テキスタイル株式会社社製(品名「モビロン」)
【0049】
生地a~cの上述したとおりに測定した伸長率、耐水圧及び透湿度を下記表1に示した。なお、生地a~cは、いずれも、タテ方向が身長方向に沿うように用いた。
【0050】
【0051】
(実施例1)
<ポケットの製造>
(1)生地bを、
図5に示す形状にカットし、ポケット用生地11を得た。
(2)
図6に示すように、ポケット用生地11のポリウレタン樹脂がコーティングされた表面上に接着剤としてホットメルト接着フィルム12を配置した。W1:21cm、W2:19cm、W3:1cm、L1:6cm、L2:8cm、L3:12cm、L4:1cm、L5:1cm、L6:1cm、L7:1cm、L8:6cmであった。
(3)ポケット用生地の上縁部13及びポケット用生地の下縁部14をそれぞれ折って、ホットメルト接着フィルム12と合わせるとともに、ポケット用生地11及びポケット用生地11の側縁部に配置したホットメルト接着フィルム12を折り目15に沿って合わせた後に、ホットメルト接着フィルム12に熱を加えることで、ポケット用生地11の側縁部を接着させて、
図7に示すように、袋体30を得た。
(4)折り目16に沿って、袋体30を折ることで、
図8に示すように、ポケット本体4及びフラップ5を含むポケット3を作製した。
<ランニング用パンツの作製>
生地aを用いて、
図1及び
図3に示すようなランニング用パンツ本体2を作製した。
ランニング用パンツ本体2の骨盤を覆う領域に、
図1及び
図2に示すように、ポケット本体4を衣服本体2と接するように配置し、ポケット3の側縁部を縫製する(縫着部6)ことで、ランニング用パンツ1を得た。縫製は、パイピングで行った。実施例1において、縫着部6の地面の水平面に対する角度は90°であった。
【0052】
(実施例2)
<ポケットの製造>
(1)生地bを、
図9に示す形状にカットし、ポケット用生地21を得た。
(2)
図10に示すように、ポケット用生地21のポリウレタン樹脂がコーティングされた表面上に接着剤としてホットメルト接着フィルム22を配置した。W4:21cm、W5:17cm、W6:1cm、W7:1cm、L9:6cm、L10:8cm、L11:12cm、L12:1cm、L13:1cm、L14:1cm、L15:1cm、L16:6cmであった。
(3)ポケット用生地の上縁部23及びポケット用生地の下縁部24をそれぞれ折って、ホットメルト接着フィルム22と合わせるとともに、ポケット用生地21及びポケット用生地21の側縁部の内側に配置したホットメルト接着フィルム22を折り目25に沿って合わせた後に、ホットメルト接着フィルム22に熱を加えることで、ポケット用生地21の側縁部の内側を接着させて、
図11に示すように、袋体40を得た。
(4)折り目26に沿って、袋体40を折ることで、
図10に示すように、ポケット本体104及びフラップ105を含むポケット103を作製した。
<ランニング用パンツの作製>
ポケット3の代わりにポケット103を用い、ポケット103の側縁部を縫製した(縫着部106)以外は、実施例1と同様にしてランニング用パンツを得た。実施例2のランニング用パンツにおいて、縫着部106の内側には、ポケット本体104の身体側生地104aとポケット本体104の身体側の反対側の生地104bが接着剤で接合された内側接合部107が形成されていた。実施例2において、縫着部106の地面の水平面に対する角度は90°であった。
【0053】
(実施例3)
生地bに代わりに生地cを用いてポケットを作製した以外は、実施例1と同様にしてランニング用パンツを作製した。
【0054】
(比較例1)
ポケット3の側縁部に加えて、ポケット本体の上縁部近傍をランニング用パンツ本体に縫着した以外は、実施例1と同様にしてランニング用パンツを作製した。
【0055】
(比較例2)
ポケット本体の身体側生地をランニング用パンツ本体に縫着した以外は、実施例1と同様にしてランニング用パンツを作製した。
【0056】
(漏水性の評価)
ランニング用パンツをマネキンに着用させ、人工降雨環境での漏水の程度を評価した。ポケット内部にはろ紙を入れ、指定の降雨量の状態で20分間放置した時のろ紙の重量変化量を算出して、ポケット内部に浸入した水の重量とした。結果を下記表2に示した。
【0057】
【0058】
上記表2のデータから分かるように、実施例のランニングパンツを着用した場合、小雨はもちろん強雨の場合でも、ポケット内部への水の浸入が抑えられていた。
一方、比較例のランニングパンツを着用した場合、強雨はもちろん小雨の場合も、ポケット内部へ水が浸入していた。
【0059】
また、実施例のランニングパンツを着用してランニングを行った場合、ポケットが体の動きを妨げることがなく、ポケットが揺れることもなかった。
【符号の説明】
【0060】
1 衣服(ランニング用パンツ)
2 衣服本体(ランニング用パンツ本体)
3、103 ポケット
4、104 ポケット本体
4a、104a ポケット本体の身体側生地
4b、104b ポケット本体の身体側の反対側の生地
5、105 フラップ
6、106 縫着部
7 紐入れ部
8 紐
11 ポケット用生地(一枚生地)
12、22 接着剤(ホットメルト接着フィルム)
13 ポケット用生地の上端部(フラップ側)
14 ポケット用生地の下端部
15、16、25、26 折り目
30、40 袋体
50 地面の水平面
107 内側接合部
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の衣服は、ポケットを有する各種衣服として用いることができ、ランニング、ジョギングなどの様々なスポーツ用衣服として好適に用いることができる。ランニング、ジョギングなどの様々なスポーツ用パンツとして特に好適である。