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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】空調装置を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20231005BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20231005BHJP
   F24F 110/30 20180101ALN20231005BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F110:10
F24F110:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020505486
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 IT2018050143
(87)【国際公開番号】W WO2019026094
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】102017000088696
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512129996
【氏名又は名称】デロンギ アップリアンチェース エッセエレエッレ コン ウーニコ ソーチオ
【氏名又は名称原語表記】DE’LONGHI APPLIANCES SRL CON UNICO SOCIO
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】デロンギ、ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】レニエ、マッダレーナ
(72)【発明者】
【氏名】プロースペリ、フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ミルミラン、ロシャナク
【審査官】町田 豊隆
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
F24F 110/10
F24F 110/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置(10)を調整する方法であって、
スイッチオン時点(t0)で前記空調装置(10)をスイッチオンするステップと、
前記空調装置(10)に含まれる熱調節手段(12)および換気機(14)を起動するステップとを含み、
前記換気機(14)は、調節すべき部屋に空気を向けるため、前記熱調節手段(12)に向けて空気の流れを発生させるのに適している方法において、
前記スイッチオン時点(t0)に対応する部屋の温熱条件を表す、使用者が感じる初期等価温度(TSET_0)を計算するステップと、
前記スイッチオン時点(t0)の後で、使用者が感じる前記初期等価温度(TSET_0)と整流時点(t)に対応する使用者が感じる等価温度値(T SET との差(ΔTSET)を最小限にまたは実際にゼロにするために、前記換気機(14)を回転速度の基準値(V閾値)より低いか、またはそれに等しい速度で回転させる、前記整流時点(t)を決定するステップとを含み、
前記差(ΔTSET)は、前記空調装置(10)のスイッチオンの後にくる一時的なステップで使用者が感じる温熱条件の変化を表し、
使用者が感じる前記初期等価温度(TSET_0)を計算するステップは、
前記スイッチオン時点(t0)に対応する部屋の空気の温度(T0)および部屋の空気の速度(v0)を検出するステップと、
前記スイッチオン時点(t0)に対応する検出した前記温度および速度の関数(T0,v0)として、使用者が感じる前記初期等価温度(TSET_0)を計算するステップと、を含み、
前記整流時点(t)を決定するステップは、
前記等価温度値(TSET)が変数である関数として、空気の流れの温度(T)および速度(v)の値の経時的な展開に関する情報を記憶するステップと、
記憶される値の中から、前記検出された温度および速度(T0,v0)とは異なり、使用者が感じる前記初期等価温度(TSET_0)に実質的に等しい等価温度値(TSET)を得ることが可能な空気の温度および速度の値の少なくとも1つのペア(T,v)を決定するステップと、
決定された速度(vを発生させる前記換気機(14)の回転速度である前記基準(V 閾値 を求めるステップと、
前記決定された値のペア(T ,v および前記記憶された情報に基づき、前記値のペア(T,v)が得られる前記整流時点(t)を求めるステップと、を含み、
使用者が感じる等価温度(TSET)は、以下の関数関係
TSET = f(T; v; MRT; RH; clo; met)
ここで、
Tは、部屋の空気の温度であり、
vは、部屋の空気の速度であり、
MRTは、平均放射温度であり、
RHは、相対湿度であり、
cloは、個人の熱絶縁を表す係数であり、
metは、個人の活動レベルを考慮する係数である、
に従って計算され、
前記整流時点(t )まで、前記換気機(14)は、静止しているか、または前記基準値(V 閾値 )より低いか、またはそれに等しい速度で回転し、
前記整流時点(t )の後、前記換気機(14)の回転速度が、前記空調装置(10)に含まれるユーザインタフェース(20)による使用者の設定に基づく速度値(V ユーザ )まで上昇する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記整流時点(t)は、前記熱調節手段(12)を構成する材料がそれ自体の特性キュリー温度(T)に到達する時点の後にくる、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記整流時点(t)は、前記熱調節手段(12)によって吸収される電力が安定して、前記熱調節手段(12)の公称出力値(PNOM)に近いか、または等しくなる時点に近い、方法。
【請求項4】
請求項1~のうちいずれか一項に記載の方法において、
前記換気機(14)を起動する前記ステップは、少なくとも前記整流時点(t)まで、前記換気機(14)の回転速度を前記基準値(V閾値)より低く維持することを供する、方法。
【請求項5】
請求項に記載の方法において、
前記回転速度の前記基準値(V閾値)は、0.5m/秒よりも低い部屋の空気の速度を発生するようなものである、方法。
【請求項6】
請求項1~のうちいずれか一項に記載の方法において、
前記熱調節手段(12)および前記換気機(14)を起動する前記ステップは、前記熱調節手段(12)および前記換気機(14)を同時に起動することを供する、方法。
【請求項7】
請求項1~のうちいずれか一項の請求項に記載の方法において、
前記熱調節手段(12)および前記換気機(14)を起動する前記ステップは、前記スイッチオン時点(t0)に対応して前記熱調節手段(12)を起動し、前記スイッチオン時点(t0)の後の前記整流時点(t)に対応して前記換気機(14)を起動することを供する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置を調整する方法に関し、特に、使用者にとって最適な快適感を提供することが可能な空調装置の始動ステップを調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の室内または車両の内部の温度を調整する空調装置が知られている。
部屋用の空調装置は、例えば、所望の位置に移動できるように可搬式にしたり、温度調節する部屋の壁に取り付けたり、壁に組み込まれたりする。
【0003】
特に、暖房機または冷房機と、暖房機または冷房機に向けて空気を送るファンとを備え、部屋を暖めたり冷却したりする空調装置が知られている。
始動ステップにおいて、公知のタイプの空調装置は、通常、スイッチオンした瞬間から空気を冷暖房機に向けてファンをその公称出力で作動し始めるが、その空気がまだ所望の温度になっていないという欠点を有する。その結果、ファンによって発生し部屋に導入される空気の流れは、冷暖房機が予想される動作温度に達するまでは、十分に調節されていない。
【0004】
これにより、始めのうちは、一定の速度で室温とほぼ等しい温度の空気の流れが使用者に当たるため、使用者が不快に感じることがある。空調装置が放出する空気の吐出しが多いほど、不快感が増す。
【0005】
近年、製造業者は、使用者が高い満足感や快適さを感じられるようにするため、空調装置の性能の最適化を更に追求している。
例えば、空気がすでに少なくとも部分的に暖められ/冷却された一定の時間の後でのみ、温度調節すべき部屋に向かう空気の通路を開放する空調装置が知られている。
【0006】
これらの装置には、初期のステップにおいて、十分に機能しているものの、空気の流れを発生させるためにエネルギーを消費するがその空気が部屋を調節するために使用されない点で、あまり効率がよくないという欠点がある。さらに、これらの装置には、初期ステップ中に発生させる空気が温度調節すべき部屋に届かないようにしたり、少なくとも使用者には直接向かわないようにするため、その空気の流れのための代替路を必要とする点で、複雑化しているという欠点がある。
【0007】
放出される空気の流れを冷媒液の温度に相関させる装置の例が、例えば、特許文献1に記載されている。
しかしながら、一般に、先行技術で公知の装置では、使用者が感じる実際の温度の変動を十分に監視できないため、使用者に対する満足感や快適さを最適にすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5533352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の1つの目的は、公知の装置の調整方法よりも優れた空調装置を調整する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、使用者が望む理想的な快適条件を保証し、使用者が感じる初期の温熱条件の変化の発生を防止することが可能な機能能力に機器が到達するまで、装置の初期の一時的なステップを調整することが可能な空調装置を調整する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願人は、先行技術の欠点を克服し、上記その他の目的および利点を得るべく本発明を考案し、試験し、具体化した。
本発明は、独立請求項に記載されて特徴付けられているが、従属請求項は、発明の他の特徴または主な発明のアイデアの変形を記述している。
【0011】
上記の目的に従い、空調装置が、熱調節手段と、調節すべき部屋に空気を向けるために、熱調節手段に向かう空気の流れを発生するのに適した換気機とを少なくとも備える、空調装置を調整する方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態において、熱調節手段は、暖房機もしくは冷房機、またはその両方を備えることができ、場合によっては1つの機器に組み込むこともできる。
本発明による空調装置は、例として、例えば家庭用タイプの、扇風機、もしくはエアコン、または自動車、橋形クレーンの室内もしくは調節すべき別の同様なもしくは類似の空間に組み込まれる空調システムとすることができる。
【0013】
本発明による方法は、特に、初期の一時的なステップにおいて、使用者にとって不快な温熱的影響を防止するか、または少なくとも制限するように、空調装置の始動ステップを調整することを供する。
【0014】
いくつかの実施形態によると、本発明による方法は、スイッチオン時点で空調装置をスイッチオンするステップと、スイッチオン時点の部屋の温熱条件を表す「初期等価温度」値を計算するステップと、熱調節手段を起動するステップと、換気機を起動するステップとを含む。
【0015】
「等価温度」とは、以下説明するように、相対湿度50%の等温室における空気の等価温度を意味し、個人が行っている活動に合った標準的な衣類を着用している個人は、実在の部屋と同じ熱応力(皮膚の温度として理解される)および同じ体温調節能力(皮膚の湿気として理解される)を有する。
【0016】
言い換えると、等価温度とは、温熱的快適性に関する個人の反応が分かっている仮想標準部屋を表すことによって、実在の部屋の条件と個人の心理物理的条件とを組み合わせるパラメータである。
【0017】
本発明による方法は、整流時点で計算される上で定義した「等価温度」が、スイッチオン時点で計算される初期等価温度と実質的に等しく、またはいずれにしてもできるだけ近くなるように、スイッチオン時点の後の換気機の整流時点を決定することも供する。
【0018】
等価温度は、以下でよりよく分かるように、空気の速度および温度の値のペアによって特徴付けられ、影響を受ける。例えば、ファンの速度を調整することによって決定される前記等価温度の変動は、場合によっては冷暖房要素の変動も、空調装置の調整パラメータに作用することによって制御することができる。
【0019】
いくつかの実施形態によると、該方法は、冷暖房機の温度値を組み合わせた換気機の速度が、その時点の「等価温度」値が初期等価温度値と実質的に等しくなるような整流時点を決定することを供する。
【0020】
本発明による方法は、整流時点まで、換気機を静止しておくこと、または整流時点について決定される換気機の速度よりも低い最低速度で回転するように駆動することも供する。
【0021】
このように、冷暖房要素が、所望の快適さの特徴を有する調節された空気の流れが使用者にあたるような温度条件に到達したときに、ファンの速度が上がる。
いくつかの実施形態によると、熱調節手段は抵抗要素を備える。
【0022】
いくつかの実施形態によると、熱調節手段はPTC(Positive Temperature Coefficient(正温度係数))タイプの抵抗を備える。これらの実施形態において、整流時点は、熱調節手段を構成する材料がそのキュリー温度に到達する時点の後になる。
【0023】
本発明の上記その他の特徴は、添付の図面を参照した非制限的な例としてあげられる、以下のいくつかの実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による方法を実施することのできる装置の一実施例の模式図。
図2】先行技術および本発明の方法による使用者が感じる等価温度の展開の比較を模式的に示すグラフ。
図3a】本発明による空調装置に含まれる熱調節手段の電力消費量の特徴的な展開の2つのサンプルを模式的に示す図。
図3b】本発明による方法を適用することのできる空調装置から出る、空気の流れの速度および温度の経時的な展開の比較を模式的に示す図。
図3c】本発明による方法を適用することのできる空調装置から出る、空気の流れの速度および温度の経時的な展開の比較を模式的に示す図。
図4】本発明による空調装置に含まれる熱調節手段の温度の関数として、抵抗の特徴的な展開の一実施例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
理解しやすくするために、可能な場合、図面において同一の共通の要素を識別するために、同じ参照符号を使用した。ある実施形態の要素および特徴は、さらなる説明なしに、他の実施形態に便利なように組み入れることができることは理解される。
【0026】
ここで説明する実施形態は、図1に模式的に示す空調装置10を調整する方法に関し、特に、使用者が感じるマイナスの温熱的影響を防止するか、または少なくとも制限するように、空調装置10の始動ステップを調整することが可能な方法に関するものである。
【0027】
いくつかの実施形態によると、空調装置10は、例として、調節すべき部屋に向かう空気の流れを発生させるのに適した、例えば、家庭用タイプの、エアコン、または室内に向かう空気の流れを発生させるのに適した、自動車もしくは橋形クレーン、もしくは同様なもしくは類似の手段に組み込まれる空調システムとすることができる。
【0028】
空調装置10は、通例室温が低いときに部屋を暖めるのにも、特に室温が高いときに部屋を冷却するのにも、どちらにも適したタイプにすることができる。
本発明による空調装置10を調整する方法は、最初に、装置が、部屋を暖める暖房モードで作動しているか、または部屋を冷却する冷房モードで作動しているかを検証することを供することができる。
【0029】
具体的な実施形態において、検証ステップは、使用者が選択した機能設定を制御することを供する。
他の実施形態において、装置が作動しているモードを検証するステップは、温度検出手段、例えば、公知のタイプの温度センサによって実施することができる。
【0030】
ここで、空調装置10が部屋を暖める暖房モードで作動しているときに、それを調整する方法を説明する。ただし、本発明による方法は、空調装置10が冷房モードで作動しているときに、実施し、適切に適合させることもできることは明らかである。
【0031】
空調装置10は、この実施形態では、特に、暖房機12として構成される少なくとも1つの空調機12と、調節すべき部屋に空気を向けるために暖房機12を介して空気の流れを発生させるのに適した換気機14とを備える。
【0032】
空調装置10は、公知のタイプの冷房モジュールも備えることができるが、本発明の目的上重要ではないため、ここでは詳細に説明しない。
いくつかの実施形態によると、暖房機12は、抵抗型の加熱要素を備えることができる。
【0033】
他の実施形態によると、暖房機12は、先行技術で公知のタイプのサーミスタを備えることができる。
具体的な実施形態において、暖房機12は、先行技術で公知のPTC(「Positive Temperature Coefficient(正温度係数)」)サーミスタを備えることができ、これは非常に高い正温度係数を有するセラミック半導体を備える。
【0034】
PTCサーミスタは、図4のグラフで分かるように、サーミスタ自体の温度が上昇すると抵抗が増加する特性挙動を有する。これらの公知のサーミスタは、温度が徐々に上昇し、サーミスタを構成する材料のキュリー温度Tに到達すると、抵抗がかなり増加し、それを通過する電流に対応した低下が生じる。
【0035】
他の実施形態によると、換気機14は、複数の羽根15aが設けられて、ファン15を所望の速度で回転させるのに適した駆動部材16に接続される換気扇またはファン15を備える。
【0036】
いくつかの実施形態によると、空調装置10は、少なくとも暖房機12および換気機14に接続されて、その機能を制御するように構成される制御コマンドユニット18を備える。
【0037】
制御ユニット18は、空調装置10に適用されるときに、制御方法を実施する1つまたは複数の特定のプログラムを実行するために、ソフトウェアをロードすることのできるコンピュータ化されたユニットとすることができる。
【0038】
いくつかの実施形態によると、空調装置10は、ユーザインタフェース20を備え、それによって使用者は、空調装置10をスイッチオンまたはオフにすることができ、場合によっては、装置の機能パラメータを設定することができる。
【0039】
具体的な実施形態において、ユーザインタフェース20は、使用者が、例えば、摂氏または華氏の度で表現される所望の温度値と、達成すべき装置から出る空気の流れの速度を示す、例えば、換気機14の速度の上昇値に対応する「1」または「2」または「3」等に等しい目盛との両方を設定できるようにする。
【0040】
いくつかの実施形態によると、ユーザインタフェース20は、制御コマンドユニット18に作動可能に接続されて、制御コマンドユニット18と通信し、使用者が選択する設定を制御コマンドユニット18に転送する。
【0041】
本発明による方法は、使用者に快適感を与えるのに適した、特に望まれる温度とは異なる温度の空気の流れにより使用者が不快さを感じることを防ぐ速度および温度の特徴を有する調節された空気の流れを提供することを可能にする。
【0042】
本発明による方法は、SET(「Standard Effective Temperature(標準有効温度)」の頭字語)と呼ばれる、感知される等価温度のパラメータを用いて、使用者の快適感を測定することを供する。
【0043】
等価温度TSETは、相対湿度50%の等温室における空気の等価温度と定義され、個人が行っている活動に合った標準的な衣類を着用している個人は、実在の部屋と同じ熱応力(皮膚の温度として理解される)および同じ体温調節能力(皮膚の湿気として理解される)を有する。
【0044】
言い換えると、等価温度TSETとは、温熱的快適性に関する個人の反応が分かっている仮想標準部屋を表す、実在の部屋の条件と個人の心理物理的条件とを組み合わせるパラメータである。
【0045】
その最も広範で完全な形の等価温度TSETは、以下の関数関係に従い計算することができる。
【0046】
【数1】
ここで、
Tは、部屋の空気の温度であり、
vは、部屋の空気の速度であり、
MRTは、平均放射温度であり、
RHは、相対湿度であり、
cloは、個人の熱絶縁を表し、着用している衣類に相関する係数であり、
metは、個人の活動レベルを考慮する係数である。
【0047】
本発明の分野内において、上で示した式中、引用されるパラメータのうちの1つまたは複数は、例えば、使用者が提供する設定に基づいて、もしくは空調装置10の初期設定時に供給される情報に基づいて決定されるか、または検討する時間間隔中そのように維持すると見なされるため、一定の値と想定することができる。
【0048】
いくつかの実施形態によると、該方法は、適切な検出機によって調節すべき部屋の実際の気候条件を検出して、上で示したパラメータのうちの1つまたは複数の値を決定することを供する。
【0049】
例えば、温度、速度、相対湿度、平均放射温度、またはその他の値のうちの1つまたは複数を、適切なセンサによって直接検出することができる。
変形実施形態によると、上記値のうちの1つまたは複数は、行われた他の測定値に基づいて推定/計算することができる。例えば、空気の速度は換気機14の回転速度に基づいて推定することができる。
【0050】
いくつかの実施形態によると、係数cloは、個人が典型的な冬の室内着を着用している場合には1に等しいと想定することができ、代わりに、個人が典型的な夏の室内着を着用している場合には、0.5に等しいと想定することができる。
【0051】
いくつかの実施形態によると、係数metは、1.2に等しいと想定することができ、すなわち、座ったままで行うタイプの活動に関連する係数である。
図2は、先行技術(点線で示す)および本発明(実線で示す)によるスイッチオン時点t0から始まる装置10の初期スイッチオンステップにおける等価温度TSETの経時的な展開を示す。
【0052】
分かるように、使用者が公知のタイプの空調装置をスイッチオンすると、等価温度TSETの展開(点線で示す)は、急速に最低レベルTLOWまで低下する傾向にある。
装置10のスイッチオン時点t0に対応して使用者が感じる初期等価温度TSET_0と、最低レベルTLOWとの差が大きいほど、使用者が感じる温熱的不快感は大きくなる。
【0053】
これに対し、本発明による方法は、使用者が感じる温熱条件の著しい変化を防止するか、または少なくとも制限するようなレベルに、感知される等価温度TSETを維持することが可能である。
【0054】
本発明による方法のおかげで、事実、等価温度TSETは、整流時点tまでは実質的に一定で、初期値TSET_0に等しいままである傾向があるので、空調装置10をスイッチオンしても使用者が感じる温熱条件は変わらない。言い換えると、本発明による方法は、空調装置10がスイッチオンされたことによる、環境条件(特に、調節すべき部屋の空気の速度および温度)の攪乱の影響を、少なくとも初期の一時的なステップで相殺するか、または少なくとも大幅に制限することを可能にするので、使用者の快適感は、変わらないままである。
【0055】
本発明による空調装置10を調整する方法は、最大でも換気機14の閾値に等しいファンの回転速度に一致し、そのため調節すべき部屋において、スイッチオン時点t0に対応して計算される、使用者が感じる初期等価温度値TSET_0に実質的に等しいか、またはいずれにしてもできるだけ近い等価温度値TSETを保証するような、空気の温度および速度T,vの特定の値があるように、整流時点tを決定することを供する。言い換えると、整流時点tを決定するには、少なくとも以下の式を満足しなければならない。
【0056】
【数2】
述べたように、上記式のいくつかのパラメータは、一定と考えることができる。
【0057】
いくつかの実施形態によると、使用者が感じる初期等価温度値TSET_0を計算するステップは、
・前記スイッチオン時点t0における部屋の空気の温度T0および部屋の空気の速度v0を検出するステップと、
・検出した温度T0と速度v0との関数として、初期等価温度TSET_0を計算するステップとを含む。
【0058】
いくつかの実施形態によると、整流時点tを決定するために、該方法は、以下の、
・空調装置10が作用することのできる等価温度TSETに影響する変量の経時的な展開に関する情報を記憶するステップと、
・スイッチオン時点t0で検出される温度および速度の値T0,v0とは異なるもので、時点t0で計算される初期等価温度値TSET_0に等しい等価温度値TSETを求めることを可能にする、空気の温度および速度T,vの少なくとも1つのペアの値を特定するステップと、
・パラメータT,vが分かってから、温度Tおよび空気の速度vの経時的な展開について記憶された情報を出発点とする、整流時点tを求めるステップとを含む。
【0059】
いくつかの実施形態によると、該方法は、特定された速度値vから、vに等しい部屋の空気の速度を発生させるような、換気機14の回転速度値V閾値を求めることを供する。
【0060】
いくつかの実施形態によると、変量の経時的な展開に関する情報を記憶するステップは、時間に対する速度の展開を定義する装置10にファン15の複数の速度値を導入し、かつ/または空調装置10をスイッチオンするときに検出される複数の室温値Tを導入して、室温および部屋の空気の速度の経時的な展開に関する情報を、装置をスイッチオンするときに利用できるようにすることを供する。
【0061】
いくつかの実施形態によると、空調装置10の生産ステップ中および初期設定ステップ中または生産ステップ中もしくは初期設定ステップ中に、温度および速度の経時的な展開に関する情報を空調装置10に導入して、制御コマンドユニット18に記憶することを供することができる。
【0062】
変形実施形態によると、空調装置10が機能している間に、温度および速度の経時的な展開に関する情報を継続的に監視および記憶して、空調装置10の特徴の関数として、始動ステップのより正確な調整を可能にすることを供することができる。
【0063】
そのため、この情報に基づいて、また温度および速度の値の1つのペアが分かると、それらがどの時点で一致するかを決定することが可能で、その結果、整流時点tを求めることが可能である。
【0064】
暖房機12がPTCサーミスタを備える実施形態において、本発明による方法は、整流時点tが、サーミスタがその特性キュリー温度Tに到達した時点の後になることを供する。
【0065】
これらの実施形態では、整流時点tは、暖房機12によって吸収される電力が安定し、暖房機の公称出力値PNOMに近くなるか、またはそれに等しくなる時点に近くすることができるであろう(図3a)。
【0066】
例えば、公称出力値PNOMは、約1,400ワットに等しくすることができる。一般に、公称出力値PNOMは、空調装置10のタイプおよびサイズによって、それより小さく、または大きくすることができる。使用中、スイッチオン時点t0に対応して、使用者が空調装置10をスイッチオンすると、本発明による方法は、制御コマンドユニット18が暖房機12および換気機14または暖房機12もしくは換気機14を起動することを供する。
【0067】
本発明による方法のいくつかの実施形態によると、スイッチオン時点t0で暖房機12を起動することを供し、その後でのみ換気機14を起動することを供する。
これらの実施形態によると、整流時点tは、換気機14の起動の時点に一致させることができ、そのため、この時点の前は、ゼロ回転速度で不作動である。
【0068】
他の実施形態によると、本発明による方法は、暖房機12および換気機14をスイッチオン時点t0と実質的に同時に起動することを供する。
いくつかの実施形態によると、暖房機12および換気機14を起動するステップの後、該方法は、上で説明した方法のステップで決定される整流時点tまで、前記速度V閾値よりも低い速度で回転するように、換気機14を駆動するステップを含む。
【0069】
他の実施形態では、本発明による方法は、整流時点tまで、換気機14の回転速度を閾値速度V閾値よりも低い実質的に一定の値に維持することを供する。
他の実施形態では、本発明による方法は、整流時点tまで、換気機14の速度を閾値速度V閾値に等しく、一定に維持することを供する。
【0070】
他の実施形態では、本発明による方法は、換気機14の回転速度を経時的に上昇するように変化させながら、なお閾値速度V閾値よりも低いままにすることを供する。特定の実施形態において、本発明による方法は、換気機14を、調節すべき部屋に存在する温度勾配の関数として、異なる増加勾配でその速度を上昇させるように選択的に駆動することを供する。
【0071】
装置が暖房モードで機能している本発明による方法のいくつかの実施形態において、速度V閾値は、0.5m/秒よりも低い部屋の空気速度を発生させるようなものにすることができる。
【0072】
いくつかの実施形態において、速度V閾値は、例えば、0.4m/秒よりも低いか、または0.2m/秒よりも低いか、または場合によっては約0.1m/秒と等しい部屋の空気速度を発生させるようなものにすることができる。
【0073】
いくつかの実施形態によると、速度V閾値は、換気機14を回転させることができる最低の値、すなわち、それ未満になると後者が停止する値に等しくすることができる。
いくつかの実施形態によると、本発明による方法は、図3bで分かるように、整流時点tの後に、換気機14の回転速度を上昇させるステップを含む。このステップで、整流時点tまでは、速度V閾値に等しいか、またはそれより低い換気機14の回転速度が、値Vユーザに到達する。値Vユーザは、ユーザインタフェース20で使用者が導入する設定の関数である値である。
【0074】
暖房機12がPTCサーミスタを備える実施形態では、本発明による方法は、暖房機12によって吸収される電力が安定し、通常の作動状態で提供される公称値PNOMに十分に近くなるまで、換気機14をV閾値よりも低い速度で、またはゼロ速度でも回転させることを供する。
【0075】
このおかげで、本発明による調整方法は、暖房機12が十分に加熱するまで、換気機14を静止している状態に保ち、またはそれをV閾値より低いもしくはそれと等しい速度で回転させることを可能にする。このように、初期ステップで出る空気の流量は、ゼロ、または無視できる程度であり、そのため使用者は、不十分に暖められた空気噴流によって生じる不快さを僅かしか感じないか、全く感じない。
【0076】
そのため、本発明による方法のおかげで、使用者が最初にTSET_0で感じる等価温度値と、整流時点tで使用者が感じる等価温度値との差ΔTSETを最小限に、またはさらにはゼロにすることが可能である。この差の値は、装置10のスイッチオンの直後の一時的なステップで使用者が感じる温熱条件の変化を示す。
【0077】
図3aを参照して、暖房機12(特に、述べたように、PTCサーミスタ)によって吸収される電力の起こりうる展開100、101の2つの例を、時間の関数として見ることができる。
【0078】
図3bを参照して、点線で示される公知の装置における速度の展開は、本発明による方法に関連して前述した換気機14の回転速度の展開とは大幅に異なることに留意すべきである。分かるように、公知の装置では、回転速度は、整流時点tよりも十分に前の時点で、速度Vユーザのごく近くの値に到達し、これは、換気機14の回転速度、したがって放出される空気の流れの速度が、スイッチオンした直後の暖房機12がまだ冷たいときに、通常の作動速度であることを意味している。
【0079】
図3bの換気機14の回転速度の上昇を示す曲線は、単なる例として示していることに留意すべきである。モータ16のタイプおよびそれが換気機14を制御する方法によって、スイッチオン/整流時点から速度値Vユーザに到達するまで、より多くまたはより少なく傾斜した、換気機14の速度の上昇を表す多くの他の曲線または勾配を当然供することができる。
【0080】
図3cを参照して、先行技術では、空気の温度の展開(点線で示される)は、スイッチオン時点t0から始まって実質的に線形に上昇しているが、本発明による方法では、空気の温度の展開は、換気機14の回転速度のものと実質的に同様であることが分かる。
【0081】
特に、本発明による方法では、空気の温度は、整流時点tに近くなるまで非常に低いままである。その後、暖房機12によって吸収される電力の安定化が起こる時点近くの時点まで、第1増加勾配とともに温度が上昇する。
【0082】
さらに、吸収された電力が安定化したこの時点の後、ユーザインタフェース20によって使用者が設定する温度に到達するまで、温度はさらに上昇する。例えば、安定化時点の後、第1増加勾配よりも低い第2増加勾配とともに、温度は上昇することができる。
【0083】
以上説明した空調装置を調整する方法に、本発明の分野および範囲を逸脱することなく、ステップの変更および追加または変更もしくは追加を行うことができることは明らかである。
【0084】
いくつかの特定の実施例に関して本発明を説明してきたが、当業者には、請求項に記載される特徴を有し、したがってすべてが請求項により定められる保護の領域内になる、調整方法の多くの他の等価の形態を確実に達成できることも明らかである。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4