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特許7361016流動性ろう付け組成物及びそれを使用して金属物品を一緒にろう付けする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】流動性ろう付け組成物及びそれを使用して金属物品を一緒にろう付けする方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20231005BHJP
   B23K 35/28 20060101ALN20231005BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B23K35/363 H
B23K35/28 310A
C22C21/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020505770
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-22
(86)【国際出願番号】 US2018045417
(87)【国際公開番号】W WO2019032467
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】62/542,158
(32)【優先日】2017-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/053,635
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・シーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ケネス・ホークスワース
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-226487(JP,A)
【文献】特開昭57-052588(JP,A)
【文献】特表平08-506382(JP,A)
【文献】特開平10-156583(JP,A)
【文献】特表平08-511201(JP,A)
【文献】特表2013-522040(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141074(US,A1)
【文献】米国特許第05226974(US,A)
【文献】米国特許第06656290(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248176(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0084329(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/28
C22C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性ろう付け組成物であって、
非ポリマー性担体媒体であって、前記担体媒体が、少なくとも1つの極性有機溶剤を含み、周囲温度で液体である、非ポリマー性担体媒体と、
ろう材コア及び前記コア上に配置されているフラックスコーティングを含むフラックスコーティング粒子であって、前記ろう材コアが、前記フラックスコーティングとは異なる材料を含む、フラックスコーティング粒子と、を含み、
前記流動性ろう付け組成物が、前記流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて、1.5重量%以下のポリマー性結合剤成分を有し、
前記組成物が、前記担体媒体中の前記フラックスコーティング粒子の安定な懸濁液であり、前記組成物が、35℃の温度で少なくとも25週間の期間にわたって目視可能な溶剤分離がない、
流動性ろう付け組成物。
【請求項2】
前記ろう材コアが、Al-Si合金又はその前駆体を含み、前記フラックスコーティングが、金属ハロゲン化物又はその塩を含み、
前記少なくとも1つの極性有機溶剤が、ヘキシレングリコールを含み、
前記少なくとも1つの極性有機溶剤が、前記流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%の量で存在し、
前記流動性ろう付け組成物が、前記フラックスコーティング粒子とは別個のフラックス粒子を更に含み、前記フラックス粒子が、前記流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて、少なくとも3重量%の量で存在し、前記フラックス粒子のうちの少なくとも一部が、3乃至10の長さ対直径(L/D)比を有し、
前記ろう付け組成物が、検出可能な水を含まない、請求項1に記載の流動性ろう付け組成物。
【請求項3】
前記フラックスコーティングが金属ハロゲン化物又はその塩を含む、請求項1に記載の流動性ろう付け組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの極性有機溶剤はC2-C10脂肪族グリコールを含む、請求項1に記載の流動性ろう付け組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年8月7日出願の米国仮出願第62/542,158号の利益を主張し、更に2018年8月2日出願の米国出願第16/053,635号の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
技術分野は、概して、流動性ろう付け組成物及びそれを使用して金属物品を一緒にろう付けする方法に関し、より詳細には、優れた貯蔵安定性を呈する流動性ろう付け組成物及び流動性ろう付け組成物を使用して金属物品を一緒にろう付けする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ろう付けは、金属又は金属合金であり得る金属物品間に画定される接合部にろう材を融解し流すことによって、2つ以上の金属物品が一緒に接合される、金属接合プロセスである。より具体的には、ろう付けは、接合される金属よりも低い融点を有するろう材を金属の間の接合部に導入することによって、接合される金属の融点未満で行われる熱誘導金属結合プロセスである。その後の冷却時に、ろう材は、金属物品をそれらの接着表面で一緒に結合するフィレットを形成する。加熱中にろう材のみを確実に選択して融解するには、ろう材の融点は、典型的には、接合される金属物品中の金属の融点よりも少なくとも約30℃~40℃低く選択される。アルミニウム物品を一緒にろう付けするには、例えば、好適なろう付け合金は、約577℃で融解するAl-Si共晶組成物である。
【0004】
ろう付けプロセスは、表面上及び材料内の両方で起こる多数の冶金及び化学プロセスを伴う。例えば、金属物品の表面上の融解ろう材の良好なぬれ及び広がりによって、毛管現象が起こるどうかが決定される。毛管流は、適切に離間した接合部で、許容可能なろう付けフィレット、すなわち提供された融解ろう材が、接合される両方の表面を確実にぬらすことが主要な物理的原理である。毛管流は、酸化膜の存在、表面粗さ、並びにろう付け雰囲気の条件及び特性によって影響を受ける。
【0005】
ろう付けされる金属物品にろう材を適用するために、様々な技法が用いられている。1つのかかる技法では、接合される表面のうちの少なくとも1つは、アルミニウムろう付け合金の層で事前に被膜されている。ろう付けシートとして概して知られている、かかる事前に被膜されている物品は、比較的高価であり、多くの場合、被膜以外のいくつかの形態でろう材を提供することが好ましい。既知の1つの代替策は、好適な液体又はペースト様の担体中に担持されている、粉末形態又は粒子状形態のろう材を、一方若しくは両方の接合面に又は一方若しくは両方の接合面に隣接して適用することである。かかる方法では、粉末形態のろう材の水性担体中での混合物、又は結合剤と混合された混合物が、接合される表面上にコーティングされる。水性担体に含まれるとき、次いでコーティングを乾燥させ、次いで表面をろう付け温度に加熱し、それによってろう付けが完了する。結合剤、例えばろう付けされる物品の表面にろう材を結合させるポリマー性材料が含まれるとき、概して、結合剤は、コーティングを表面上に堆積した後に物品を予熱することを通じて、ろう付け前に燃焼消失する。
【0006】
アルミニウム及びその合金などのいくつかの金属物品のろう付けは、空気に晒されると表面上に酸化膜が形成されるため、特に困難である。アルミニウム上の酸化膜のバリア作用は、ぬれを妨害し、毛管流を阻害する。融解ろう材と物品のベース金属との間の密接な接触を可能にするために、例えば、フラックスとして機能する無機塩の使用を通じて、酸化物を破壊する必要がある。酸素及び水蒸気を含まない不活性のろう付け雰囲気は、融解ろう材の再酸化及びフラックス自体の酸化の防止を容易にし得る。これは、窒素下での、又は真空を使用することによるろう付けによって達成することができる。フラックスは、ろう付け温度で金属酸化物を破壊及び/あるいは除去することが可能でありながら、ろう付け温度で物品の金属、例えばアルミニウムに対して本質的に不活性なままである必要がある。フラックスは通常、少なくとも部分的に融解したときのみ反応性であるため、例えば、アルミニウムろう付け用のフラックスは、ろう付け温度、例えば実質的に577℃よりも高くなく、好ましくは577℃未満の温度で、実際に部分的又は全体的に融解されるべきである。これまでアルミニウムのろう付けに商業的に用いられているフラックス材料は、一般的には、主に塩化物塩の混合物であり、場合によっては少量のフッ化物が添加されている。アルミニウムのろう付けに好適なフラックスの例は、商標名NOCOLOK(登録商標)で販売されているフッ化アルミン酸カリウムである。フラックスを用いないろう付け手順が考案されてきたが、それらの使用は、かかる手順の上首尾な実用には特別な条件及び設備が必要とされることから生じる、経済性及び他の考慮事項を理由に限定的である。
【0007】
事前に被膜することの代替物として、フラックスコーティングろう材粒子が開発されている。フラックスコーティング粒子は、ろう材を含むフラックスの優れた分布を提供し、それによってフラックスの効果を最大化しながら、またろう材を酸化から遮蔽する。フラックスコーティング粒子は、概して、粒子状形態のフラックスを使用して噴霧形成することによって形成される。フラックス粒子は、噴霧されたろう材液滴と接触し、融解して、ろう材液滴上にフラックスコーティング又は部分的フラックスコーティングを形成し、コーティング粉末として固化し、したがって相対的に均質な、ろう材とフラックスとの混合物を提供する。
【0008】
フラックスコーティング粒子は、典型的には、冷却された支持柱上に凝縮し集められて、フラックスコーティング粒子の柱状ブロックを形成する。柱状ブロックは、形成された形態のままでその後のろう付け用途に用いることができる。冷却された支持柱によって収集されない副生成物フラックスコーティング粒子は、多くの場合、再利用される。フラックスコーティング粒子用の代替的な送達担体が提案されてきたが、かかる代替的な送達担体は、母材に困難を提示する。例えば、フラックスコーティング粒子を液体樹脂又は結合剤と混合するか、あるいは、液体樹脂が所望の表面に適用された後に、フラックスコーティング粒子を液体樹脂上にダストすることが提案されている。次いで、液体樹脂を硬化させて硬化樹脂を形成し、所望の表面にフラックスコーティング粒子を確実に接着する。しかしながら、硬化樹脂の使用は、取り扱い及び適用において困難を提示し得る。例えば、概して、硬化樹脂を分解/熱分解するために、例えばろう付けコーティングされた表面を予熱することによって、硬化樹脂を除去する必要がある。樹脂分解生成物は、フラックス及び基材の両方と反応し得、ろう付けプロセスを阻害する。更に、フラックスコーティング粒子をろう付けされる表面に接着することにより、フラックスコーティング粒子がろう付けされる表面上に効果的に分散され、表面を覆うことが制限される。水性スラリー中にフラックスコーティング粒子を含めることも提案されている。しかしながら、フラックスコーティング粒子用の送達担体として液体樹脂及び水性スラリーの両方を使用すると、粒子分離が懸念される。分離すると、概して高粘度な組成物にフラックスコーティング粒子を効果的に再分散させることは困難である。当然のことながら、粒子分離は、フラックスコーティング粒子を使用して形成されたろう付けフィレットの品質一貫性に著しく影響する。更に、液体樹脂及び分離しやすいフラックスコーティング粒子スラリーの使用は、かかる粒子を大きな体積と小さな表面積での適用に使用することができない。
【0009】
したがって、フラックスコーティング粒子を用い、粒子分離に抵抗する、流動性ろう付け組成物、及び流動性ろう付け組成物を使用して金属物品を一緒にろう付けする方法を提供することが望ましい。加えて、ろう付けされる表面全体への、フラックスコーティング粒子の効果的な表面ぬれ性及び流れを可能にする流動性ろう付け組成物、及び流動性ろう付け組成物を使用して金属物品を一緒にろう付けする方法を提供することが望ましい。更に、他の望ましい特徴及び特性は、後続の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲を、添付図面及び本背景技術と併せ読むことで明らかになるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
流動性ろう付け組成物及びそれを使用して金属物品を一緒にろう付けする方法が、本明細書で提供される。一実施形態では、流動性ろう付け組成物は、非ポリマー性担体媒体と、フラックスコーティング粒子と、を含む。担体媒体は、少なくとも1つの極性有機溶剤を含み、周囲温度で液体である。フラックスコーティング粒子は、ろう材コアと、コア上に配置されているフラックスコーティングと、を含む。ろう材コアは、フラックスコーティングとは異なる材料を含む。流動性ろう付け組成物は、流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて、約1.5重量%以下のポリマー性結合剤成分を有する。
【0011】
別の実施形態では、流動性ろう付け組成物を使用して金属物品を一緒にろう付けする方法が提供される。方法は、ろう付け組成物を提供することを含む。ろう付け組成物は、非ポリマー性担体媒体と、フラックスコーティング粒子と、を含む。担体媒体は、少なくとも1つの極性有機溶剤を含み、周囲温度で液体である。フラックスコーティング粒子は、ろう材コアと、コア上に配置されているフラックスコーティングと、を含む。フラックスコーティングは、金属ハロゲン化物を含み、ろう材コアは、フラックスコーティングとは異なる材料を含む。流動性ろう付け組成物は、流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて、約1.5重量%以下のポリマー性結合剤成分を有する。ろう付け組成物は、金属物品が接合される場所で、金属物品のうちの少なくとも1つの上に堆積される。少なくとも1つの金属物品を加熱して、流動性ろう付け組成物から溶剤を実質的に除去する。金属物品は、フラックスコーティング粒子のコアを融解するのに十分な温度及び時間で一緒にろう付けされる。
【0012】
別の実施形態では、非ポリマー性担体媒体、フラックスコーティング粒子、フラックス粒子、及び任意選択的に非ポリマー性増粘剤からなる流動性ろう付け組成物が提供される。担体媒体は、1つ以上の極性有機溶剤からなり、周囲温度で液体である。フラックスコーティング粒子は、ろう材コアと、コア上に配置されているフラックスコーティングと、を含む。フラックスコーティングは、金属ハロゲン化物を含み、ろう材コアは、フラックスコーティングとは異なる材料を含む。フラックス粒子は、フラックスコーティング粒子とは別個である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
様々な実施形態が、次の描画図形と共に以下に説明され、同様の番号は、同様の要素を示す。
【0014】
図1】一実施形態による、流動性ろう付け組成物、及びろう付けを通じて接合される、隣接する金属物品の間の接合部に組成物が配置されている流動性ろう付け組成物を使用してろう付けする方法の、概略的な側断面図である。
図2】ろう付け後の図1に示される金属物品の概略的な側断面図である。
図3図1の流動性ろう付け組成物の実施形態に示される、フラックスコーティング粒子の概略的な側断面図である。
図4】一実施形態による、針様フラックス粒子を含む流動性ろう付け組成物の拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、流動性ろう付け組成物、及び流動性ろう付け組成物を使用して金属物品を一緒にろう付けする方法を限定することを意図するものではない。更に、前述の背景技術又は以下の詳細な説明で提示される、いずれの理論によっても拘束されることは意図していない。
【0016】
流動性ろう付け組成物及び流動性ろう付け組成物を使用して金属物品を一緒にろう付けする方法が、本明細書で提供される。本明細書で使用される場合、「流動性」とは、流動性ろう付け組成物が液体/ゲル/ペースト状態で存在するように、ろう付け組成物が周囲温度で粘度を有することを意味する。流動性ろう付け組成物は、フラックスコーティング粒子を用い、流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて約1.5重量%以下のポリマー性結合剤成分を有し、それによって、より多量のポリマー性結合剤成分を含むろう付け組成物の取り扱い及び適用に関連する課題を緩和する。更に、水性スラリーとは異なり、流動性ろう付け組成物はまた、粒子分離に抵抗し、したがって、より一貫したろう付けフィレット品質を提供する。また更に、流動性ろう付け組成物は、少なくとも1つの極性有機溶剤を含み、周囲温度で液体である非ポリマー性担体媒体を含む。したがって、流動性状態にあり、分離に抵抗することにより、流動性ろう付け組成物は、ろう付けされるアルミニウム含有表面などの様々な表面全体での、フラックスコーティング粒子の効果的な表面ぬれ性及び流れを可能にする。
【0017】
上記で触れたように、流動性ろう付け組成物は、ろう付けに用いることができる。ろう付けは、金属又は金属合金であり得る金属物品間に画定される接合部にろう材を融解し流すことによって、2つ以上の金属物品が一緒に接合される、金属接合プロセスである。より具体的には、図1を参照すると、ろう付けは、接合される金属物品12が融解しないままでありながら、ろう付け組成物10中のろう材が融解する温度(本明細書では「ろう付け温度」と称される)に、流動性ろう付け組成物10及び適切に組み立てられた関係にある金属物品12を加熱することによって行われる。図2を参照すると、その後の冷却時に、ろう材は、金属物品12をそれらの接着表面で一緒に結合するろう付けフィレット14を形成する。加熱中にろう材のみを確実に選択して融解するには、ろう材の融点は、典型的には、接合される金属物品12中の金属の融点よりも少なくとも約30℃~40℃低く選択される。
【0018】
再び図1を参照すると、流動性ろう付け組成物10は、非ポリマー性担体媒体と、フラックスコーティング粒子16とを含む。任意選択的に、流動性ろう付け組成物10は、フラックスコーティング粒子16及び/又は非ポリマー性増粘剤(図示せず)とは別個のフラックス粒子18などの追加の成分を更に含んでもよい。非ポリマー性担体媒体を用いることにより、フラックスコーティング粒子16の粒子分離を経時的に最小限に抑えるために十分な安定性を達成することができる。例えば、非ポリマー性担体媒体中の溶剤の特定の組み合わせ、D50粒径分布、及び最大粒径パラメータ、流動性ろう付け組成物10中の粒子の量、及び増粘剤の存在/不在などの他の要因が、粒子分離に寄与し得ることが理解されるものであるが、本明細書に記載の非ポリマー性担体媒体なしに、十分な貯蔵安定性を達成することはできない。
【0019】
非ポリマー性担体媒体は、少なくとも1つの極性有機溶剤を含み、周囲温度で液体である。本明細書で言及される非ポリマー性担体媒体は、極性有機溶剤とみなすことができ、周囲温度で液体である流動性ろう付け組成物10中の任意の成分を含み、それらの任意の成分に限定される。本明細書で言及される「液体」とは、材料が流動性であるか、あるいは周囲温度で粘度を有することを意味する。本明細書で言及される「有機溶剤」とは、酸素、窒素、又は硫黄を任意選択的に含む、炭素含有溶剤を意味する。本明細書で考慮される有機溶剤の例としては、限定されないが、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、ケトンなどが挙げられる。実施形態では、少なくとも1つの極性有機溶剤は、約250未満の分子量を有するC2-C10脂肪族グリコールを含み、分枝状及び脂環式ジオールを含む。好適なグリコールの例としては、限定されないが、エチレン-、プロピレン-、ヘキシレン-、テトラメチレン-、ペンタメチレン-、2,2-ジメチルトリメチレン-、ヘキサメチレン-、エチルヘキシレン、及びデカメチレングリコール;又は、例えば、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、及びそれらの混合物などの環状ジオールが挙げられる。例えば、一実施形態では、少なくとも1つの極性有機溶剤は、ヘキシレングリコールを含み、C2-C4グリコールを更に含んでもよい。グリコールに加えて又はこれに代えて、実施形態では、少なくとも1つの極性有機溶剤は、イソプロピルアルコールなどのC2-C4アルコールを含む。実施形態では、少なくとも1つの極性有機溶剤は、流動性ろう付け組成物10の総重量に基づいて、少なくとも10重量%の量で存在する。より具体的には、全ての極性有機溶剤の総量は、流動性ろう付け組成物10の総重量に基づいて、約25~約30重量%などの少なくとも10重量%の量で存在する。実施形態では、流動性ろう付け組成物10は、検出可能な水を含まない。本明細書で使用される場合、「含まない」とは、言及されている成分が組成物中に含まれることを意図しないが、従来の診断方法を用いて検出限界未満である量など、微量で存在し得ることを意味する。上記で触れたように、流動性ろう付け組成物10はまた、流動性ろう付け組成物の総重量に基づいて、約1.5重量%以下のポリマー性結合剤成分を有し、任意のポリマー性材料を含まなくてもよい。
【0020】
上記で触れたように、図1及び図3に示されるように、流動性ろう付け組成物10は、フラックスコーティング粒子16を更に含む。図3を参照すると、フラックスコーティング粒子16は、ろう材コア20と、コア20上に配置されているフラックスコーティング22と、を含む。図3に示されるように、フラックスコーティング22は、ろう材コア20の表面を少なくとも部分的に覆うが、フラックスコーティング22は、ろう材コア20を完全に包み込んでもよいことが理解されるものである。ろう材コア20はろう材を含むが、フラックスコーティング22はろう材を含まない。コア20上に配置されているフラックスコーティング22とは区別されるように、ろう材コア20は、化学分析によって識別可能であり、フラックスコーティング22とは異なる材料を含む。更に、ろう材コア20は、目視観察によって識別することができる。
【0021】
ろう材コア20は、一緒にろう付けされる金属物品12の特定の材料に応じて、任意の従来のろう材を含んでもよい。実施形態では、ろう材コア20は、ろう材として、ケイ素と金属との合金などのケイ素含有材料を含む。一実施形態では、流動性ろう付け組成物10は、アルミニウム物品を一緒にろう付けするために用いられるものであり、ろう材コア20は、ろう材としてAl-Si合金又はその前駆体を含む。Al-Si合金は、任意選択的に、合金化及び/又は防食保護を提供するための追加の元素を含んでもよい。かかる追加の元素としては、限定されないが、亜鉛、ビスマス、ストロンチウム、ゲルマニウム、及び/又はスズが挙げられる。アルミニウム物品を接合するために好適なろう材の一例は、約577℃で融解するAl-Si共晶組成物である。実施形態では、ろう材コア20は、ろう材コア20の総重量に基づいて、少なくとも50重量%など、又は約90~約100重量%などの少なくとも10重量%の量でケイ素含有ろう材を含む。
【0022】
他の実施形態では、従来のろう材化学に従って、ケイ素含有材料の代わりに、限定されないが、亜鉛、アルミニウム、スズ、銀、銅、又はニッケルの任意の組み合わせの合金などの異なる合金を用いてもよいことが理解されるものである。
【0023】
フラックスコーティング22は、周囲温度で固体層であり、ろう材コア20上に配置される。より具体的には、周囲温度ではフラックスは流れず、粘度を有しない。フラックスコーティング22は、ろう材コア20と化学的に区別可能である。フラックスコーティング22は、ろう材コア20の表面に物理的及び/又は化学的に結合され、コア20上にフラックスを融解することによって、又は蒸着などの他の従来の方法を通じて形成することができる。フラックスコーティング22の材料は、ろう付け温度で金属酸化物(例えば酸化アルミニウム)を溶解及び/あるいは除去することが可能でありながら、ろう付け温度で金属物品12の金属(例えば、アルミニウム)に対して効果的に不活性なままである。フラックスは、典型的には反応性である、すなわち、少なくとも部分的に融解しているときのみ酸化物を除去することが可能であるため、アルミニウムろう付け用のフラックスは、ろう付け温度で少なくとも部分的に融解し、ろう付け温度で完全に融解し得る。例えば、前述のAl-Si合金を使用する場合、フラックスコーティング22の材料は、実質的に約577℃よりも高くない温度で融解してもよく、実施形態では、約577℃よりも低い温度で融解してもよい。実施形態では、フラックスコーティング22は、金属ハロゲン化物又はその塩を含む。例えば、金属ハロゲン化物又はその塩は、金属フッ化物、金属塩化物、又はそれらの塩から選択されてもよい。特定の実施形態では、金属ハロゲン化物又はその塩は、フッ化アルミニウム又はその塩である。
【0024】
フラックスコーティング粒子16の粒径分布及び量は、流動性ろう付け組成物10の貯蔵安定性に寄与することができる。実施形態では、フラックスコーティング粒子16は、ふるい分け分析によって決定される、約10~約40μmのD50粒径を有する。更に、フラックスコーティング粒子16のうちの少なくとも90重量%は、約110μm未満の直径を有してもよい。更に、実施形態では、フラックスコーティング粒子16のうちの少なくとも95重量%は、約1000μm未満の直径を有してもよい。実施形態では、流動性ろう付け組成物10は、流動性ろう付け組成物10の総重量に基づいて、約15~約70重量%など、約20重量%~約70重量%など、又は約60~約70重量%などの、約10重量%~約80重量%の量で、フラックスコーティング粒子16を含む。
【0025】
フラックスコーティング粒子16に加えて、上記で触れたように、流動性ろう付け組成物10は、図1に示されるように、フラックスコーティング粒子16とは別個のフラックス粒子18を更に含んでもよい。フラックス粒子18は、流動性ろう付け組成物10におけるフラックス機能を補助することができ、流動性ろう付け組成物10の押出加工性及び貯蔵安定性にも寄与することができる。フラックス粒子18は、金属物品12内の金属に依存し得る、従来のフラックス化合物を含んでもよい。例えば、実施形態では、フラックス粒子18は、金属ハロゲン化物又はその塩を含む。フラックス粒子18に好適なフラックス材料の1つの具体的な例は、アルミニウム物品をフラックスするのに効果的な、フッ化アルミニウム又はその塩である。
【0026】
重力沈降は、液体媒体中の粒子の沈殿速度を測定し、ストークス法を使用することによってこの速度を粒子質量に関連付けることが一般的に知られている。粒子質量は、密度及び粒径によって決定される。沈降時間は、最も微細な粒子で最長であり、したがって10μm未満又は更にはサブマイクロメートル粒子のD95粒径分布を有する、塗料業界における安定な懸濁液が使用される。予想外に、激しい粉砕によって製造された最小サイズの球状フラックス粒子は、流動性ろう付け組成物10の予想された貯蔵安定性を提供しないことが見出された。代わりに、粒径分離をもたらし、すなわち、異なる粒径が不均質に分布し、より小さい粒子が壁の近くに見出され、硬質ケーキが容器の底部に形成される。いかなる理論にも束縛されるものではないが、かかる組成物の流体レオロジーは、フラックスコーティング粒子16の沈降によって加圧されると、低サイズの球状フラックス粒子が担体中で移動するのに十分な空間を作製するものであると想定される。流体レオロジーは温度に高く依存するため、流動性ろう付け組成物10の貯蔵安定性は特に温度に敏感であり、高温での加速劣化試験によって、室温で生じるには数週を要し得る差異を明らかにすることができる。
【0027】
1超の最大長さ対直径(L/D)比を有する非円形フラックス粒子は、貯蔵安定性の困難に対処するために開発されてきた。具体的には、図4に示されるように、約3~約10の長さ対直径(L/D)比を有する針様フラックス粒子は、向上した貯蔵安定性を提供する。いかなる理論にも束縛されるものではないが、針様フラックス粒子は互いに相互連結し、それら自体の移動及びサイズ分離を制限すると想定され、したがって、重力下での沈殿プロセスを大幅に減速させ、組成物を含有する容器底部での高密度ケーキの形成を最小限に抑え、それによって、室温及び高温での流動性ろう付け組成物10の貯蔵安定性を増加させる。
【0028】
実施形態では、フラックス粒子18は、約7~約14μmなど、約9~約12μmなど、又は9.5~11.4μmなどの約5~約15μmのD50粒径分布を有する。実施形態では、フラックス粒子18は、約10~約30μmのD95粒径分布を有する。実施形態では、フラックス粒子18は、流動性ろう付け組成物10の総重量に基づいて、約3~約25重量%など、約5~約20重量%など、又は約5~約10重量%などの、少なくとも3重量%の量で存在する。実施形態では、フラックス粒子18は、流動性ろう付け組成物10の総重量に基づいて、約1~約50重量%など、約2~約25重量%など、又は約3~約10重量%などの、少なくとも1重量%の量で、3超かつ最大10の長さ対直径(L/D)比を有する針を含有する。
【0029】
実施形態では、流動性ろう付け組成物10は、本質的に、非ポリマー性担体媒体、フラックスコーティング粒子16、フラックス粒子18、及び任意選択的に増粘剤からなる。より具体的には、流動性ろう付け組成物10は、流動性ろう付け組成物10に、ろう材、フラックス機能、及び貯蔵安定性を提供する目的で前述の成分のみを含む。好適な増粘剤の例としては、限定されないが、異なる種類のセルロースエーテル(例えば、メチルによって置換されている場合はメチルセルロースと呼ばれ、ヒドロキシエチルによって置換されている場合はヒドロキシエチルセルロースと呼ばれ、ヒドロキシプロピルによって置換されている場合はヒドロキシプロピルセルロースと呼ばれる)、又は加水分解等級のポリビニルアルコールが挙げられる。存在する場合、増粘剤は、流動性ろう付け組成物10の総重量に基づいて、約0.1~1重量%の量で含まれてもよい。実施形態では、流動性ろう付け組成物10は、非ポリマー性担体媒体、フラックスコーティング粒子16、フラックス粒子18、及び任意選択的に増粘剤からなる。実施形態では、流動性ろう付け組成物10は、非ポリマー性担体媒体、フラックスコーティング粒子16、及び粒子18からなる。上記で触れたように、流動性ろう付け組成物10は、非ポリマー性担体媒体中のフラックスコーティング粒子16の安定な懸濁液である。より具体的には、実施形態では、組成物は、約35℃の温度で少なくとも25週間の期間にわたって目視可能な溶剤分離がない。従来の加速試験との相関関係により、それは、周囲温度で少なくとも50週間又は1年の貯蔵安定性を意味する。溶剤分離を決定するための別の好適な基準として、流動性ろう付け組成物10の試料を、周囲雰囲気及び約21℃の周囲温度下で、パネルを水平面に対して45°の角度で上昇させて傾斜したアルミニウムパネル上に配置してもよい。試料は、一定の時間間隔で目視可能な相分離について観察される。本明細書に記載の流動性ろう付け組成物10は、少なくとも90分間など、少なくとも90秒間、列挙された条件下で目視可能な相分離がないことを呈する。加えて、粘度は、回転粘度計を使用して測定してもよい。
【0030】
一実施形態によれば、上記のように、流動性ろう付け組成物10を使用して金属物品12を一緒にろう付けする方法も提供される。本方法によれば、図1図3を参照すると、ろう付け組成物10は、上で詳細に説明されるように提供される。より具体的には、フラックスコーティング粒子16及び担体媒体を混合して、フラックス粒子18などの他の追加の成分もまた混合して、流動性ろう付け組成物10を形成することができる。ろう付けは、従来の技法を通じて進めることができる。例えば、ろう付け組成物10は、金属物品12が接合される場所で、金属物品12のうちの少なくとも1つの上に堆積される。実施形態では、ろう付け組成物10は、まず、ろう付けされる金属物品12が互いに近接して位置する際にのみ、金属物品12のうちの少なくとも1つの上に堆積される。ろう付け温度で加熱する前に、少なくとも1つの金属物品12を加熱して流動性ろう付け組成物10から溶剤を実質的に除去してもよいか、あるいは流動性ろう付け組成物10から溶剤を除去することなく、流動性ろう付け組成物10をろう付け温度で直ちに加熱してもよい。フラックスコーティング粒子16のうちの少なくともろう材コア20は、任意の溶剤除去中に融解しないままである。次いで、金属物品12は、フラックスコーティング粒子16のコア20を融解するのに十分な温度及び時間で一緒にろう付けされる。他の実施形態では、ろう付け組成物は、ろう付けされる表面に事前に適用され、続いて乾燥されてろう付けされる表面上に膜を形成し、それによってフラックスコーティング粒子がろう付けされる表面に確実に接着される。次いで、その後、金属物品12が、ろう付けされる別の表面と接触している乾燥させた膜を含む表面と組み立てられると、ろう付けを行うことができる。
【0031】
以下の実施例は、上述のように、流動性ろう付け組成物及びそれを使用して金属物品を一緒にろう付けする方法の説明を補完することを意図し、限定することを意図するものではない。
【実施例
【0032】
流動性ろう付け組成物は、本開示に従って調製し、流動性ろう付け組成物を使用してろう付けする方法もまた、本開示に従って行った。加えて、比較ろう付け組成物を調製し、比較ろう付け組成物を使用してろう付けする方法も行った。
【0033】
第1の一連の実施例(実施例1及び実施例2)では、フラックスコーティング粒子及び溶剤を、スパチュラを使用して下の表Iに示される量で混合し、スパチュラを用いて混合中にフラックス粉末を添加して混合物の粘度を調節した。混合を1時間継続し、続いて増粘剤を添加し、得られた混合物をミキサー内で更に1時間継続して混合して流動性ろう付け組成物を形成した。
【0034】
第1の比較例(比較例1)では、比較の目的のために、フラックスコーティング粒子の代わりに、合金粒子(すなわち、非フラックスコーティング粒子)を用い、比較例の流動性ろう付け組成物を上述と同じように調製した。
【0035】
【表I】
【0036】
様々なろう付け組成物の粘度及び安定性を様々な条件下で試験した。実施例1に関しては、組成物を1週間-18℃に冷却するか、あるいは4週間+55℃に加熱することによって、いかなる負の影響も示さなかった。パッケージを取り外してほぼ1年の期間にわたって35℃で貯蔵する加速劣化を実施例1に実行し、これは、20℃の推奨貯蔵温度下での劣化期間のおよそ2~3倍に相当する。貯蔵後、パッケージ内の水素含有量を分析し、結果は実施例1では水素形成が遅いことが確認され、より長い貯蔵寿命を示している。市販の他のろう付けペーストは、6ヶ月の貯蔵寿命のみで提供される場合、1年後の実施例1のろう付け品質は依然として優れている。
【0037】
実施例1の組成物の粘度は、25~30Pa・sであった。実施例1を使用したろう付け品質は優れており、充填剤とフラックスとの物理的ブレンドを含有するろう付け組成物(例えば、比較例1)と比較して、ろう付けプロセスにおいて融解充填剤と共に間隙を非常に良好に充填し、欠陥は著しく低減する。
【0038】
実施例2の組成物(実施例1で使用された0.5gの代わりに0.05gの増粘剤を含む)の粘度は、2.5~4Pa・sであり、良好なろう付け品質及び貯蔵寿命が観察された。
【0039】
実施例3では、過度に多くの溶剤を用い、組成物はレオロジー特性を欠いていた。
【0040】
比較例1では、この組成物は別個の合金粒子及びフラックス粉末から作製されたため、固体の総表面積はより高かった。結果として、表面ぬれ性のためにより多くの溶剤を消費し、適用するには高すぎる粘度をもたらした。比較例1の組成物の貯蔵寿命は評価しなかったが、別個の充填剤及びフラックスから調製された競合製品は、6ヶ月の貯蔵寿命で公示されていることが知られている。
【0041】
実施例1及び2の試験に基づいて、フラックスコーティング粒子を使用すると、フラックスコーティング粒子の重量の半分よりわずかに少ない溶剤の重量で高い固体含有量を有する好適なろう付け組成物を達成することができることが見出された。
【0042】
流動性ろう付け組成物になお更なる配合、並びに更なる比較配合を用いて追加実験を行った。追加実験は、以下の段落に説明する。
【0043】
比較例2
米国特許第5,226,974号に開示の組成物によるろう付け組成物を、列挙された重量百分率で以下の成分を使用して調製した。
39.17重量%のアルミニウム-ケイ素合金粉末、
29.17重量%のフラックス粉末(少なくとも約97%の純度を有するHoneywell KAlF4 fine、物品番号01740)、
25.83重量%のプロピレングリコール、
5.84重量%のグリセリン。
【0044】
比較例2の組成物は、1.34の合金対フラックス比、及び5000cps超の初期粘度を有した。このろう付け組成物の一部分を室温で10日間貯蔵し、固体は、ろう付け組成物の底部に完全に沈降しなかった。
【0045】
1kgの比較例2のろう付け組成物を密封容器内に貯蔵することによって、水素発生を評価した。測定のために、容器は、大きなプラスチック袋の内側に配置する。水素スニファチューブを袋の口を通して挿入し、開口部はゴムバンドで封止する。次いで、容器をバッグ内側で開放し、放出された水素のレベルを測定した。20℃で10日間貯蔵した後、比較例2の組成物は、この試験において水素を全く示さなかった。水素発生を加速し、試験時間を短縮するために、35℃の高温で貯蔵された比較例2の組成物を保持する他の容器で水素発生を試験し、1つの容器を毎月測定した。6ヶ月後、水素は3×10-3ppmの濃度に達した。ろう付け組成物の表面近くでは、初期水素レベルは約2.5×10-2ppmであった。
【0046】
融解発生及びフラックス活性を試験するために、少量の比較例2のろう付け組成物をアルミニウム試片に適用した。試験試料を製造ラック上に配置し、組み立てた熱交換器コアを満載してろう付け炉に通した。ろう付け後、試片上の融解の拡がり及びフラックスを測定した。製造評価のために、比較例2のろう付け組成物を、組み立てた熱交換器のバッフル及び取付具に適用した。ろう付け後に、熱交換器の接合部形成及びろう付けに関係する漏れの不合格率を調べた。ろう付け修復性能を試験するために、比較例2のろう付け組成物を、再度ろう付けするために欠陥のあるろう付け接合部に適用した。修復された接合部の品質を調べた。比較例2のろう付け組成物は、融解発生、フラックス活性、接合部形成、不合格率、及びろう付け修復に十分な性能を呈した。しかしながら、定性的観察を通じて観察すると、ろう付け後フラックス残留物が多かった。
【0047】
比較例3
ろう付け後フラックス残留物を低減する目的で、2の合金対フラックス比を有するこの配合の組成物を用いて、ろう付け組成物の別の比較例を調製した。比較例3は、列挙された重量百分率で以下の成分を使用して調製した。
44.83重量%のアルミニウム-ケイ素合金粉末、
22.41重量%のフラックス粉末(少なくとも約97%の純度を有するHoneywell KAlF4 fine、物品番号01740)、
26,72重量%のプロピレングリコール、
6.03重量%のグリセリン。
【0048】
比較例3の組成物は、5000cps超の初期粘度を有した。このろう付け組成物の一部分を室温で10日間貯蔵し、固体は、ろう付け組成物の底部に完全に沈降しなかった。
【0049】
融解発生及びフラックス活性を試験するために、比較例2で上述したものと同じ様式で行い、比較例3のろう付け組成物の広がりが足りないことが見出された。この欠陥は、低減されたフラックス量に起因するものと考えられ、比較例2と比較して、このフラックス量では、より多量のアルミニウム-ケイ素合金粉末を活性化し、依然としてアルミニウム試片の同じ面積を活性化するのに十分ではないと考えられる。覆われた面積は、比較例2と比較しておよそ14%小さかった。
【0050】
製造評価のために、比較例3のろう付け組成物を、組み立てた熱交換器のバッフル及び取付具に適用し、接合部形成及びろう付けに関係する不合格率について、比較例2で上述したのと同じ様式で評価した。比較例3のろう付け組成物を使用すると、不合格率は1.9~2.4%増加し、修復された接合部の品質も良好ではなかった。したがって、比較例3は、製造評価を合格しなかった。
【0051】
実施例4
百分率が重量による、フラックスコーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末及び以下の成分を使用して、3の合金対フラックス比を有する流動性ろう付け組成物を調製した。
75%のアルミニウムケイ素及び25%のHoneywell KAlF4 fineで調製され、1000μmの標準ふるいを少なくとも通過するのに十分に小さい微粒子径を有し、ふるい上に5%未満が残留する、67.44重量%のフラックス融解コーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末、
15重量%のプロピレングリコール、
15重量%の2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)。
【0052】
このように製造した実施例4のろう付け組成物は、5000cps超の初期粘度を有した。このろう付け組成物の一部分を室温で10日間貯蔵し、固体は、ペーストの底部に完全に沈降しなかった。
【0053】
比較例2で上述したように行った融解発生及びフラックス活性試験では、ろう付けペーストの広がりは許容可能であることが見出された。比較例2で上述したのと同じ様式で行った製造評価試験ではまた、ろう付け組成物は、不合格率を1.9~2.1%増加させたが、これは依然として許容可能であるとみなされる。したがって、実施例4は、製造評価試験を合格するとみなした。
【0054】
実施例5
百分率が重量による、フラックスコーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末及び以下の成分を使用して、2.55の合金対フラックス比を有する流動性ろう付け組成物を調製した。
75%のアルミニウムケイ素及び25%のHoneywell KAlF4 fineで調製され、1000μmの標準ふるいを少なくとも通過するのに十分に小さい微粒子径を有し、ふるい上に5%未満が残留する、68.18重量%のフラックス融解コーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末、
3.03重量%のフラックス粉末(少なくとも約97%の純度を有するHoneywell KAlF4 fine、物品番号01740)、
25.91重量%のプロピレングリコール、
2.88重量%の2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)。
【0055】
このように製造した実施例5のろう付け組成物は、5000cps超の初期粘度を有した。このろう付け組成物の一部分を室温で10日間貯蔵し、固体は、ペーストの底部に完全に沈降しなかった。
【0056】
比較例2で上述したように行った融解発生及びフラックス活性試験では、ろう付けペーストの広がりは優れていることが見出された。比較例2で上述したのと同じ様式で行った製造評価試験ではまた、ろう付け組成物は、不合格率を1.9~1.7%減少させ、これは良好な性能であるとみなされる。したがって、実施例5は、製造評価試験を合格するとみなした。
【0057】
実施例6
百分率が重量による、フラックスコーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末及び以下の成分を使用して、2.33の合金対フラックス比を有する流動性ろう付け組成物を調製した。
75%のアルミニウムケイ素及び25%のHoneywell KAlF4 fineで調製され、1000μmの標準ふるいを少なくとも通過するのに十分に小さい微粒子径を有し、ふるい上に5%未満が残留する、59.72重量%のフラックス融解コーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末、
4.27重量%のフラックス粉末(少なくとも約97%の純度を有するHoneywell KAlF4 fine、物品番号01740)、
28.82重量%のプロピレングリコール、
7.2重量%の2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)。
【0058】
このように製造した実施例6のろう付け組成物は、5000cps超の初期粘度を有した。このろう付け組成物の一部分を室温で10日間貯蔵し、実施例5よりも多くの固体の沈降が、観察された。
【0059】
密閉容器内の1kgのろう付け組成物に35℃の高温での加速貯蔵条件を用いることによって、水素発生について追加の評価を、実施例6のろう付け組成物に行った。様々な時間間隔で水素発生を測定し、表IIに提供する。
【0060】
【表II】
【0061】
比較例2のろう付け組成物と比較して、水素レベルが低減され、加速貯蔵試料は、H2発生にわずかな増加のみを示している。この融和性は、フラックス融解コーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末の、水素を生成する反応に対する相対的不活性に起因すると考えられる。
【0062】
実施例7
百分率が重量による、フラックスコーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末、及びろう付けプロセスに適合すると知られている増粘剤を次の成分と共に使用して、2.06の合金対フラックス比を有する流動性ろう付け組成物を調製した。
75%のアルミニウムケイ素及び25%のHoneywell KAlF4 fineで調製され、1000μmの標準ふるいを少なくとも通過するのに十分に小さい微粒子径を有し、ふるい上に5%未満が残留する、61.16重量%のフラックス融解コーティングアルミニウム-ケイ素合金粉末、
7.02重量%のフラックス粉末(少なくとも約97%の純度を有するHoneywell KAlF4 fine、物品番号01740)、
25.12重量%のプロピレングリコール、
6.28重量%の2-メチル-2,4-ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、
0.41パーセントのヒドロキシプロピルセルロース(増粘剤)。
【0063】
このように製造した実施例7のろう付け組成物は、10000cps超の初期粘度を有した。このろう付け組成物の一部分を室温で10日間貯蔵し、実施例5よりも少ない固体の沈降が、観察された。
【0064】
比較例2で上述したように行った融解発生及びフラックス活性試験では、ろう付けペーストの広がりは優れていることが見出された。比較例2で上述したのと同じ様式で行った製造評価試験ではまた、ろう付け組成物は、不合格率を1.9~1.7%減少させ、これは良好な性能であるとみなされる。したがって、実施例7は、製造評価試験を合格するとみなした。
【0065】
前述の詳細な説明で、少なくとも1つの例示の実施形態が提示されてきたが、膨大な数の変更例が存在することを理解されたい。例示の実施形態又は複数の例示の実施形態は、あくまで例示であり、いかなるようにも範囲、適用性、又は構成を制限する意図がないこともまた理解されたい。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者らに例示の実施形態を実装するのに簡便なロードマップを提供するだろう。添付の特許請求の範囲に記載される範囲から逸脱することなく、例示の実施形態に説明された要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができるものと理解される。
図1
図2
図3
図4