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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】板紙の製造方法、板紙、および段ボール
(51)【国際特許分類】
   D21F 3/02 20060101AFI20231005BHJP
   D21F 3/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
D21F3/02 Z
D21F3/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020512521
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 IB2018056616
(87)【国際公開番号】W WO2019043608
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】1751057-9
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シップス、トゥオモ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-519537(JP,A)
【文献】特表2007-519835(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00627306(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00-D21J7/00
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙を製造する方法であって、
セルロース繊維を含む完成紙料を提供するステップ、
少なくとも1本のワイヤ上に前記完成紙料を適用してウェブを形成するステップ、
プレスロールニップを使用せずに150kPaを超える圧力を前記ウェブにかけることにより、前記少なくとも1本のワイヤ上の前記ウェブを脱水するステップであって、前記ウェブが第1および第2の側面を備えており、前記脱水が前記ウェブの両側から同時に行われるステップ、および
次いで、脱水したウェブを加圧して板紙を形成するステップを含む、上記方法。
【請求項2】
前記圧力が200kPaを超える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウェブの第1の側面から除去される水の量が除去される水の総量の35~65重量%の間であり、ウェブの第2の側面から除去される水の量が除去される水の総量の35~65重量%の間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
加圧後の前記ウェブの乾燥含量が45重量%超である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記板紙の密度が680kg/m超である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記板紙の頂部および底部と板紙の中央部との間の密度の差が少なくとも10%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記板紙の幾何学的SCT指数が32Nm/g超である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記完成紙料が、繊維の総量に基づいて50重量%を超えるNSSCパルプを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記完成紙料が、繊維の総量に基づいて0.1~10重量%のミクロフィブリル化セルロースを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記の増大した圧力が、脱水セクションのロール上のワイヤの巻き付け角度を変更することにより、および/または減圧を使用することにより達成される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記板紙が段ボール媒体であり、前記方法が、板紙を波形化して前記段ボール媒体を生成するステップをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記板紙がライナーである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙を高圧に曝してワイヤ上の完成紙料(furnish:ファーニッシュ)を脱水することにより板紙が製造される、板紙の製造方法に関する。本発明は、板紙および前記板紙を含む段ボールにも関する。
【背景技術】
【0002】
板紙は、包装(パッケージ)用に非常に一般的に使用される材料である。板紙の重要な特性は、強度、柔軟性、および耐湿性である。板紙の強度を高める1つの方法は、密度を高めることである。ただし、密度が高くなると、板紙が非常に重くなり、包装の重量が増加し、生産コストも増加する。したがって、密度を過度に増加させることなく、耐屈曲性など、板紙の強度を増加させるインセンティブがある。
【0003】
板紙は、単層製品および複数層製品の両方であり得る。複数層の板紙を製造する場合、板紙の層の間の結合が層間剥離の問題を防ぐために良好であることが重要である。複数層の板紙製品の例は、液体の包装用板紙、フードサービス用板紙、カップストック、および段ボールである。
【0004】
段ボールは、段ボール媒体(フルート:fluting)と、フルート媒体の表面上に取り付けられた少なくとも1つの平らなライナーまたはライナーボードとを含み、サンドイッチ構造を形成する繊維ベースの材料である。段ボール媒体は、熱、水分、圧力を用いて、コルゲーターを使用して波形形状に形成される。サンドイッチ形状は、Kirwan M.,J.,Paper and Paperboard.Packaging Technology(紙および板紙.包装技術),Blackwell Publishing 2005に記載されているとおり、シングル、ダブルおよびトリプルウォールのような種々の方法で形成することができる。
【0005】
段ボールの品質にはさまざまな種類があり、これらはさまざまな種類のライナーと段ボール媒体で構成されている場合がある。さまざまな種類のライナーの例としては、クラフトライナー、ホワイトトップクラフトライナー、およびテストライナーがある。クラフトライナーは通常、漂白または未漂白のクラフトパルプから製造され、1つまたは複数の層を含む。ここで、最上層は、良好な印刷面と良好な耐湿性を提供するために最適化されることが多い。テストライナーは、主にリサイクルされた古い段ボールから製造され、ほとんどが2層で形成される。通常、第一の層は常に再生繊維で構成されているが、最上層は、より良い品質を提供するために、たとえばバージン繊維(未使用繊維)を含むときがある。段ボール媒体のため、通常、リサイクル繊維または半化学繊維(セミケミカルファイバー)が使用される。すべての段ボールの品質に共通しているのは、他の多くの包装材料と比較して持続可能な包装材料になるように、再生可能材料の割合が高いことである。
【0006】
段ボールの重要な特徴の1つは、強度、特に圧縮強度である。段ボールが強く、外部の影響に耐えることができることが重要である。また、段ボールは湿度が変動しても強度を維持できることも重要である。
【0007】
段ボールは、接着剤を使用して平らなライナーに段ボール媒体を接合することにより製造される。第二の接着剤適用ステップを使用して、裏面上で段ボール媒体を処理し、次いで第二のライナーを取り付けて両面段ボールを製造することができる。段ボールを製造するときの問題の1つは、フルートへのライナーの接着である。接着剤が少なすぎると層間剥離が生じ、接着が十分であることを保証するために過剰な接着剤を追加すると、段ボールのカールおよびウォッシュボード(washboarding)が発生する。追加した接着剤のライナーおよび/または段ボール媒体内への吸着が最適であることは非常に重要である。フルート/ライナーによって吸着されない場合、層間剥離が発生し、またフルート/ライナー内に過度に吸着される場合、同じことが起こる。
【0008】
したがって、板紙について上記の問題を解決する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術の板紙の少なくともいくつかの不都合を除去または軽減する板紙を製造すること、特に高強度で剥離の問題が少ない板紙を製造することが、本発明の目的である。本発明の別の目的は、剥離傾向が低減され、強度が改善された、段ボール媒体(波形媒体)と少なくとも1つのライナーとを含む段ボールを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、添付の特許請求の範囲の独立請求項によって定義される。実施形態は、添付の特許請求の範囲の従属請求項および以下の詳細な説明に記載されている。
【0011】
本発明は、板紙を製造する方法であって、セルロース繊維を含む完成紙料(furnish:ファーニッシュ)を提供するステップ、少なくとも1本のワイヤ上に完成紙料を適用してウェブを形成するステップ、プレスロールニップを使用せずに150kPaを超える圧力をウェブにかけることにより、前記少なくとも1本のワイヤ上のウェブを脱水するステップ、および次いで、脱水したウェブを加圧して板紙を形成するステップを含む方法に関する。ワイヤ上で150kPaを超える、好ましくは200kPaを超える圧力をウェブにかけることにより、脱水中にウェブ内に密度差が形成され、そこではウェブの中央部が頂部と底部よりも高い密度を有することがわかった。驚くべきことに、そのような密度差を作り出すことにより、ウェブおよび製造された板紙の圧縮強度が改善されることがわかった。また、本発明による板紙は、より多孔性の表面を有し、驚くべきことに、これにより多層板紙製品の層間の接着性が改善されることが示されている。
【0012】
ウェブは第1および第2の側面を含み、脱水は好ましくはウェブの両側から行われる。脱水は、ウェブの両側から同時に行われることが好ましい。
【0013】
ワイヤ上の脱水の間に、ウェブの第1の側面から除去される水の量は、好ましくは除去される水の総量の35~65重量%の間である。ワイヤ上の脱水の間に、ウェブの第2の側面から除去される水の量は、好ましくは除去される水の総量の35~65重量%の間である。同量の水がウェブの各側面から除去されることが好ましい。すなわち、最も好ましいのは、第1の側面から除去される水が総量の50重量%であり、第2の側面から除去される水が総量の50重量%であることである。このようにして、密度が増加したウェブの部分がウェブの中央部分に配置され、より対称的なウェブを作成することが可能になる。
【0014】
加圧(プレス)後のウェブの乾燥含量は、好ましくは45重量%超である。驚くべきことに、加圧後にウェブの乾燥含量を増加させることが可能であることがわかった。本発明の方法により、より多孔質の頂部および底部を有するウェブが製造されるため、加圧中にウェブからより多くの水を除去することが可能である。したがって、加圧セクションの後に、より高い乾燥含量の製品を容易に製造することができる。
【0015】
板紙の密度は、好ましくは680kg/m超である。段ボール媒体の密度は、好ましくは750kg/m超である。ライナーの密度は、好ましくは800kg/m超である。
【0016】
板紙の頂部および底部と板紙の中央部との間の密度の差は、好ましくは少なくとも10%である。密度の差は少なくとも15%であることが好ましい。
【0017】
板紙の幾何学的SCT指数は、好ましくは32Nm/g超、より好ましくは35Nm/g超、さらにより好ましくは37Nm/g超である。
【0018】
完成紙料は、好ましくは、総繊維量に基づいて50重量%を超えるNSSCパルプを含む。完成紙料は、65重量%超のNSSCパルプ、さらにより好ましくは80重量%超のNSSCパルプを含むことがさらにより好ましい。NSSCパルプは、本発明による脱水中に密度差を生じさせるのに役立つ適切な量の結合微粉(bonding fines)を含むことが見出されており、これにより、多量のNSSCパルプを使用することが本発明による板紙の製造のために非常に適したものとなる。NSSCパルプは、段ボールを製造するときに特に役立つ。
【0019】
完成紙料は、総繊維量に基づいて0.1~10重量%のミクロフィブリル化セルロース(MFC)をさらに含んでよい。完成紙料は、総繊維量に基づいて2~5重量%のMFCを含むことが好ましい。MFCを追加すると、板紙の強度が向上するだけでなく、生じる密度の相違にも寄与することが示されている。
【0020】
増大した圧力は、好ましくは、脱水セクションのロール上のワイヤの巻き付け角度を変更することにより、および/または減圧(真空)を使用することにより達成される。
【0021】
板紙は、好ましくは、段ボール媒体であり、この方法は、板紙を波形にして段ボール媒体を生成するステップをさらに含む。
【0022】
板紙は、好ましくはライナーである。
【0023】
本発明はさらに、板紙の頂部および底部が第1の密度を有し、板紙の中央部が第2の密度を有し、第2の密度が第1の密度よりも高い、頂部、底部および中央部を含む板紙に関する。第2の密度は、第1の密度よりも少なくとも10%高いことが好ましい。第1の密度は600kg/m超、好ましくは600~800kg/mの間であることが好ましく、第2の密度は700kg/m超、好ましくは700~900kg/mの間であることが好ましい。
【0024】
板紙は、好ましくは680kg/m超、好ましくは700kg/m超、さらにより好ましくは750kg/m超、またはさらにより好ましくは800kg/m超の密度を有する。板紙は、好ましくは、32Nm/g超、好ましくは35Nm/g超、またはさらにより好ましくは37Nm/g超の幾何学的SCT値を有する。
【0025】
板紙は、総繊維量に基づいて50重量%超、より好ましくは65重量%超、またはさらにより好ましくは80重量%超のNSSCパルプを含むことが好ましい。
【0026】
板紙は、好ましくは、総繊維量に基づいて0.1~10重量%の間のミクロフィブリル化セルロースを含む。
【0027】
板紙は、ライナーであってもよい。
【0028】
板紙はまた、段ボール媒体であってもよい。段ボール媒体は、80~220g/mの間、好ましくは100~150g/mの間の坪量を有することが好ましい。本発明により、段ボール媒体の強度が増大するので、製造された段ボール媒体の坪量を減少させることが可能であることが見出された。
【0029】
本発明は、上記の方法に従って製造された板紙にも関する。
【0030】
本発明はさらに、段ボール媒体および少なくとも1つのライナーを含む段ボールであって、この段ボール媒体および/またはライナーが、頂部、底部および中間部を含み、この頂部および底部が第1の密度を有し、底部が第2の密度を有し、ここで前記第2の密度が前記第1の密度より高い、段ボールに関する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、板紙の製造方法、板紙、および前記板紙を含む段ボールに関する。板紙は、段ボール原紙(containerboard)、すなわち、段ボールを製造するために使用される段ボール媒体および/またはライナーであることが好ましい場合がある。
【0032】
本発明による板紙を製造する方法は、セルロース繊維を含む完成紙料を提供するステップ、少なくとも1本のワイヤ上に完成紙料を適用してウェブを形成するステップ、プレスロールニップを使用せずに150kPa超、好ましくは200kPa超の圧力をウェブにかけることにより、前記少なくとも1本のワイヤ上のウェブを脱水するステップ、および次いで、脱水したウェブを加圧して板紙を形成するステップを含む。増大した圧力が、好ましくは、板紙製造機の紙の形成セクションに適用される。形成セクションは脱水セクションとも呼ばれる。プレスロールニップを使用せずにウェブをワイヤ上で150kPaを超える脱水圧力にさらすことにより、板紙またはウェブのz方向に密度差を有する板紙またはウェブを非常に簡単で効率的な方法で製造できることが示された。ウェブの全体でおよびウェブから自由に流れることにより水を除去できるようなやり方でかつ高圧で脱水が行われることに因り、z方向の密度差が形成される。z方向に密度差がある板紙が、良好な強度特性、特に良好な圧縮強度を備えていることは驚くべきことであった。また、本発明による板紙は、段ボールで使用した場合、層間剥離の問題が軽減されたこともわかった。
【0033】
増大した脱水圧力は、好ましくは、脱水セクションのロール上のワイヤの巻き付け角度を変更することにより、および/または減圧(真空)を使用することにより達成される。脱水セクション(または形成セクション)で使用されるロールは、ワイヤの両側に配置されておらず、互いに押し付けられていないため、結果的にロールニップは形成されない。増大した脱水圧力は、脱水されるウェブが位置する少なくとも1本のワイヤの下および/または上に適用される減圧の使用によっても達成され得る。減圧は、いずれかの適切な機器、例えば吸引ボックスによって作られ得る。プレスロールニップを使用せずに圧力の増大を達成することが重要である。「プレスロールニップ」とは、互いに押し付けられる2つのロールの間に形成されたニップを意味する。プレスロールニップの使用は、除去された水がウェブの全体を自由に流れることが可能でないため、前述の密度差を形成することができない。
【0034】
ウェブの脱水は、好ましくは、ウェブの両側から、すなわち、ウェブの第1および第2の側面から行われる。ウェブの両側からの脱水が同時に行われることが好ましい。ツインワイヤを使用して脱水を行うことが好ましい場合がある。ウェブの第1および第2の側面からウェブを脱水することにより、ウェブの微粉がウェブの中央部に集中し、増大した密度につながる。ほぼ同じ量の水をウェブの両側から除去して、微粉がウェブの中央部に確実に集中するようにすることも好ましい。
【0035】
密度差は、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%、好ましくは15~30%の間である。ウェブまたは板紙の中央部をより高密度にすることにより、段ボールで板紙を使用する際の層間剥離の問題が軽減されることがわかった。ウェブまたは板紙の頂部および底部と中央部との密度の差は、少なくとも10%であるべきである。層間剥離の問題を改善するには、少なくとも10%の密度差で十分であることが示されている。しかしながら、密度差は少なくとも15%であることが好ましい。ほとんどの用途では、良好な強度の製品を達成し、かつ層間剥離を減らすことができる密度差は15~30%の間である。ウェブの頂部および底部の密度を低くすることにより、より多孔性の表面を持つ板紙またはウェブが製造される。これは、表面に付加された接着剤の吸着が層間剥離を減少させるように改善されるため、段ボールを製造する際の大きな利点であることが分かっている。
【0036】
脱水後のウェブの加圧は、任意の従来の方法で紙または板紙製造機の加圧セクションで行うことが好ましい。本発明のさらなる利点は、より多孔性の表面を有するウェブが製造されることであり、これにより、加圧セクション内の水の増大した量を除去しやすくなる。加圧後のウェブの乾燥含有量は、好ましくは45重量%超、好ましくは50重量%超である。したがって、本発明によれば、加圧セクション後により高い乾燥含量を有するウェブを製造することも可能であり、したがって、ウェブのその後の乾燥要求が低減され、板紙の製造コストが低減される。
【0037】
前記板紙を製造するための任意の追加のプロセスステップ、例えば乾燥またはカレンダー処理も使用することができる。従来のいずれかの乾燥装置またはカレンダーを使用できる。
【0038】
ニュートラル・サルファイト・セミ・ケミカル(NSSC)パルプは、パルプ生産の高収率プロセスである。これは、化学的処理と機械的処理の両方を含む半化学プロセスである。NSSCパルプ化中に使用されるクッキング処理液は、亜硫酸塩、例えばNaSOおよび/またはNaCO、ならびに塩基、例えばNaOHを含む。クッキング処理中のpHは5~8の間が好ましく、温度は160~190℃の間が好ましい。機械的処理は、任意の既知の方法で、例えば精製または粉砕によって行うことができる。本発明において多量のNSSCパルプを使用することが有利であることが見出された。NSSCパルプは、本発明による脱水中に密度差を作り出すことを可能にする適切な量の結合微粉を含むと考えられている。
【0039】
本発明による板紙は、頂部、底部、および中央部を含む。頂部は好ましくは板紙の全厚の20~25%の間を構成し、底部は好ましくは板紙の全厚の20~25%の間を構成し、中央部は好ましくは全厚の50~60%の間を構成する。
【0040】
ISO534:2011に従って板紙の密度を測定した。板紙の頂部および中央部を研削し、次いでこの基準に従って残りの底部の密度を測定することによって、板紙の底部の第一の密度を測定した。板紙の頂部の第一の密度および中央部の第二の密度を測定する場合も、同じ手順が適用される。
【0041】
SCT値はISO9895に従って測定された。幾何学的SCT値は、横方向(cross machine direction:CD)で測定されたSCT値と機械方向(MD)で測定されたSCT値に基づいて計算される。幾何学的SCT値は、(MD×CD)1/2による横方向と機械方向の値から計算された。次に、SCT値を坪量で除算して、SCTインデックスを計算した。したがって、SCTインデックスの単位はNm/gである。
【0042】
本発明はまた、段ボール媒体(フルート)および少なくとも1つのライナーを含む段ボールに関し、ここで、段ボール媒体および/またはライナーは頂部、底部および中央部を含み、頂部および底部が第1の密度を有し、底部が第2の密度を有し、第2の密度は第1の密度よりも高い。したがって、段ボールは、上記の少なくとも1つの板紙を含む。段ボール媒体は、板紙を提供し、前記板紙に波形を付けて段ボール媒体を製造することにより製造される。波形付け(コルゲート化)プロセスは、任意の既知の方法で実行できる。
【0043】
段ボール媒体と少なくとも1つのライナーは、段ボール媒体とライナー(単数または複数)との間に接着剤を配置することにより、前記段ボールを形成するように互いに取り付けられている。段ボールは、少なくとも2つのライナーと少なくとも1つの段ボール媒体を含むことが好ましい。段ボールはまた、2つ以上の段ボール媒体および3つ以上のライナーを備えてもよい。ライナーは、接着剤によって段ボール媒体の少なくとも1つの表面に取り付けられている。接着剤は、好ましくは、フルート付き(縦溝流路付き)段ボール媒体の少なくとも1つの表面に適用され、その後、ライナーが前記表面に取り付けられる。接着剤は、例えば、多種多様な植物から抽出できる澱粉に基づく接着剤であってもよい。最も一般的な植物のいくつかは、トウモロコシ、小麦、米、ジャガイモ、タピオカ、エンドウ豆である。澱粉は好ましくは天然のものである、すなわち澱粉の変性は行われていない。接着剤はまた、水、水酸化ナトリウムおよびホウ酸を含んでもよい。湿潤強度または接着結合強度を改善するための添加剤など、他の添加剤も添加できる。また、例えば耐湿性またはゲル化挙動を改善するための他の機能性化学物質、例としてはホウ砂、グリオキサールまたはそれらの混合物を添加することもできる。当該分野における任意の従来の接着剤を使用することができる。
【0044】
完成紙料のセルロース繊維は、広葉樹および/または針葉樹繊維などの任意の種類の繊維であり得る。段ボール、ライナー(単数もしくは複数)、および/または段ボール媒体は、例えば化学パルプ、機械パルプ、熱機械パルプおよび化学熱機械パルプ(CTMP)、および中性亜硫酸セミケミカル(NSSC)パルプなど、いかなる種類のパルプを用いることによっても製造され得る。完成紙料は、未使用パルプおよび/またはリサイクルパルプのいずれを含んでいてもよい。
【0045】
完成紙料は、好ましくはミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む。完成紙料にMFCを加えることにより、製造された板紙の強度が向上する。また、完成紙料中の微細材料の量が増加すると、所望の密度差を達成することが容易になることが分かった。MFCは、高い脱水圧力で脱水されると、ウェブの中央に集中する傾向がある。完成紙料に添加されるMFCの量は、好ましくは総繊維量に基づいて0.1~10重量%のミクロフィブリル化セルロース、好ましくは2~5重量%の間である。
【0046】
ミクロフィブリル化セルロース(MFC)は、本願の文脈において、少なくとも1つの寸法が100nm未満のナノスケールのセルロース粒子繊維またはフィブリルを意味するものとする。MFCは、部分的または全体的にフィブリル化されたセルロース繊維またはリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルの直径は100nm未満であるが、実際のフィブリルの直径または粒子サイズの分布および/またはアスペクト比(長さ/幅)は、その供給源および製造方法に依存する。最小のフィブリルは基本フィブリルと呼ばれ、約2~4nmの直径を有する(例えば、以下を参照のこと:Chinga-Carrasco, G., Cellulose fibres, nanofibrils and microfibrils,: The morphological sequence of MFC components from a plant physiology and fibre technology point of view, Nanoscale research letters 2011, 6:417)一方、ミクロフィブリルとしても定義される基本フィブリルの凝集形態(Fengel, D., Ultrastructural behavior of cell wall polysaccharides, Tappi J., March 1970, Vol 53, No.3.参照)は、例えば拡張精製プロセスまたは圧力降下崩壊プロセスを使用することによりMFCを製造するときに得られる主生成物である。供給源と製造プロセスに依存して、フィブリルの長さは約1マイクロメートルから10マイクロメートル超まで変化する。粗いMFCグレードには、かなりの割合のフィブリル化繊維、つまり仮道管(tracheid)から突出したフィブリル(セルロース繊維)や、仮道管から遊離した一定量のフィブリル(セルロース繊維)が含まれる可能性がある。
【0047】
MFCには、セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリル凝集体、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリルセルロース、ミクロフィブリル凝集体、セルロースミクロフィブリル凝集体など、さまざまな頭字語がある。MFCは、大きな表面積や、水に分散したときに低固形分(1~5重量%)でゲル状物質を形成する能力など、さまざまな物理的または物理化学的特性によっても特徴付けられる。セルロース繊維は、好ましくは、形成されたMFCの最終比表面積が約10~約300m/g、またはより好ましくは30~200m/gとなる程度にフィブリル化される(BET法により凍結乾燥材料について測定)。
【0048】
MFCを作成するためのさまざまな方法が存在する。たとえば、1回または複数回のパス精製、予備加水分解に続くリファイニングまたは高せん断崩壊またはフィブリルの遊離などである。MFC製造をエネルギー効率的かつ持続可能なものとするために、通常1つまたは複数の前処理ステップが必要である。したがって、供給されるパルプのセルロース繊維は、酵素的または化学的に、例えばヘミセルロースまたはリグニンの量を減らすように前処理されてよい。セルロース繊維は、フィブリル化の前に化学的に変性されていてよく、ここでセルロース分子は、元のセルロースに見られる以外の(またはそれより多くの)官能基を含む。そのような基には、とりわけ、カルボキシメチル(CMC)、アルデヒドおよび/もしくはカルボキシル基(N-オキシル媒介酸化により得られるセルロース、例えば「TEMPO」)、または四級アンモニウム(カチオン性セルロース)が含まれる。上記の方法の1つで変性または酸化された後、繊維をMFCまたはナノフィブリルサイズもしくはNFCに分解するのがより容易である。
【0049】
ナノフィブリルセルロースには、幾分かのヘミセルロースが含まれている場合がある。その量は植物源に依存している。前処理された繊維、例えば加水分解された、事前膨潤された、または酸化されたセルロース原料の機械的分解は、精製機、グラインダー、ホモジナイザー、コロイド化機、摩擦グラインダー、超音波ソニケーター、ミクロ流動化機、マクロ流動化機、または流動化機型ホモジナイザー等の流動化装置などの適切な装置で実行される。MFCの製造方法に応じて、製品には、微粉、もしくはナノ結晶セルロース、または、木質繊維もしくは製紙(抄紙)プロセスに存在するその他の化学物質が含まれている可能性がある。製品には、効率的にフィブリル化されなかったさまざまな量のミクロンサイズの繊維粒子も含まれている場合がある。MFCは、広葉樹繊維または針葉樹繊維の両方の木材セルロース繊維から製造される。また、MFCは、微生物源、麦わらパルプなどの農業用繊維、竹、バガス、または他の非木材繊維源から作ることもできる。好ましくは、MFCは、バージン繊維からのパルプを含むパルプ、例えば、機械パルプ、化学パルプ、および/または熱機械パルプから作られる。また、MFCは、破れた紙(broke)や再生紙から作ることもできる。
【0050】
上記のMFCの定義には、これに限定されるわけではないが、セルロースナノフィブリル(CNF)に関して新しく提案されたTAPPI標準W13021が含まれているが、これは、結晶領域とアモルファス領域の両方を持つ複数の基本フィブリルを含み、幅が5~30nmである高いアスペクト比であって通常50より大きいアスペクト比を有するセルロースナノ繊維材料を定義する。
【0051】
本発明の上記の詳細な説明を考慮すると、他の修正および変形が当業者には明らかになるであろう。しかしながら、本発明の本質および範囲から逸脱することなく、そのような他の修正および変形が実施され得ることは明らかであるはずである。
なお、本発明に包含され得る諸態様または諸実施形態は、以下のように要約される。
[1].
板紙を製造する方法であって、
セルロース繊維を含む完成紙料を提供するステップ、
少なくとも1本のワイヤ上に前記完成紙料を適用してウェブを形成するステップ、
プレスロールニップを使用せずに150kPaを超える圧力を前記ウェブにかけることにより、前記少なくとも1本のワイヤ上の前記ウェブを脱水するステップ、および
次いで、脱水したウェブを加圧して板紙を形成するステップを含む、上記方法。
[2].
前記圧力が200kPaを超える、上記[1]項に記載の方法。
[3].
前記ウェブが第1および第2の側面を備えており、前記脱水が前記ウェブの両側から行われる、上記[1]または[2]項に記載の方法。
[4].
前記ウェブの第1の側面から除去される水の量が除去される水の総量の35~65重量%の間であり、ウェブの第2の側面から除去される水の量が除去される水の総量の35~65重量%の間である、上記[3]項に記載の方法。
[5].
加圧後の前記ウェブの乾燥含量が45重量%超である、上記[1]~[4]項のいずれか1項に記載の方法。
[6].
前記板紙の密度が680kg/m 超である、上記[1]~[5]項のいずれか1項に記載の方法。
[7].
前記板紙の頂部および底部と板紙の中央部との間の密度の差が少なくとも10%である、上記[1]~[6]項のいずれか1項に記載の方法。
[8].
前記板紙の幾何学的SCT指数が32Nm/g超である、上記[1]~[7]項のいずれか1項に記載の方法。
[9].
前記完成紙料が、繊維の総量に基づいて50重量%を超えるNSSCパルプを含む、上記[1]~[8]項のいずれか1項に記載の方法。
[10].
前記完成紙料が、繊維の総量に基づいて0.1~10重量%のミクロフィブリル化セルロースを含む、上記[1]~[9]項のいずれか1項に記載の方法。
[11].
前記の増大した圧力が、脱水セクションのロール上のワイヤの巻き付け角度を変更することにより、および/または減圧を使用することにより達成される、上記[1]~[10]項のいずれか1項に記載の方法。
[12].
前記板紙が段ボール媒体であり、前記方法が、板紙を波形化して前記段ボール媒体を生成するステップをさらに含む、上記[1]~[11]項のいずれか1項に記載の方法。
[13].
前記板紙がライナーである、上記[1]~[11]項のいずれか1項に記載の方法。
[14].
頂部、底部および中央部を含む板紙であって、この板紙の頂部および底部が第1の密度を有し、板紙の中央部が第2の密度を有し、第2の密度が第1の密度よりも高い、板紙。
[15].
前記第2の密度が、前記第1の密度よりも少なくとも10%高い、上記[14]項に記載の板紙。
[16].
前記板紙が680kg/m を超える密度を有する、上記[14]または[15]項に記載の板紙。
[17].
前記板紙が、32Nm/gを超える幾何学的SCT値を有する、上記[14]~[16]項のいずれか1項に記載の板紙。
[18].
前記板紙が、繊維の総量に基づいて50重量%を超えるNSSCパルプを含む、上記[14]~[17]項のいずれか1項に記載の板紙。
[19].
前記板紙が、繊維の総量に基づいて0.1~10重量%のミクロフィブリル化セルロースを含む、上記[14]~[18]項のいずれか1項に記載の板紙。
[20].
前記板紙がライナーである、上記[14]~[19]項のいずれか1項に記載の板紙。
[21].
前記板紙が段ボール媒体である、上記[14]~[19]項のいずれか1項に記載の板紙。
[22].
前記段ボール媒体が80~220g/m の坪量を有する、上記[20]項に記載の板紙。
[23].
上記[1]~[13]項のいずれか1項に記載の方法によって製造された板紙。
[24].
段ボール媒体および少なくとも1つのライナーを含む段ボールであって、この段ボール媒体および/またはライナーが、頂部、底部および中間部を含み、この頂部および底部が第1の密度を有し、底部が第2の密度を有し、ここで前記第2の密度が前記第1の密度より高い、段ボール。